2015年03月25日

【コラム】 オーバーラップ文庫WEB小説大賞 「リーングラードの学び舎より」第1巻発売を記念し、いえこけい先生インタビュー

リーングラードの学び舎よりオーバーラップ文庫と小説家になろうのコラボで開催するオーバーラップ文庫 WEB小説大賞。その第一回大賞を受賞した、いえこけい先生の【「リーングラードの学び舎より」第一巻】が3月25日発売を記念し、いえこけい先生・編集K氏にロングインタビュー!(取材・文: かーずSP・アシD[オーバーラップ文庫])
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あらすじ
四年前まで戦乱にあけくれ、革命の元に誕生したリスリア王国。その新政国家において、貴族社会では前代未聞のプロジェクト『義務教育推進計画』が立ち上がり、術式師であるヨシュアン・グラムが教師に任命された。貴族の娘やエルフの子など個性的な生徒たちに振り回されたり、騒動に巻きこまれながらも、教師として奮闘するヨシュアンやいかに!?

その第一巻発売を記念して、いえこけい先生・編集K氏にロングインタビューを敢行!さらに本作のイラストレーター・天之有先生からもコメントをいただいたインタビュー記事をお送りします!

■教師視点で『教育』がテーマという隙間を狙いつつ、
王道ファンタジーを舞台に

───大賞受賞が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

いえこけい(以下、いえこ):驚いて、ついつい飼い猫に報告してしまうほどでした。

───(笑)編集サイドから見て、どこを評価しての大賞なのか教えてください。

編集K(担当編集):まず、主人公のヨシュアンというキャラクターが良い。そしてヨシュアンが指導する5人の生徒たちのキャラクターが良い。そこが一番の根幹にはあります。なので、普通の授業シーンも楽しく読めますし、なおかつエピソード毎にテーマがあって、キャラクターたちの成長もしっかり描かれているんです。結果として、しっかりとした「教育もの」になっていて、これは簡単なようですごく大事なことじゃないかと思います。

───『先生と生徒の教育もの』というのはライトノベルでは新鮮な印象を受けました。

いえこ「小説家になろう」において、学園もので生徒視点の作品は多かったんですが、教師視点で『教育』をテーマにしたものは自分が探した範囲では見あたらなかったんです。なので、そこに重きを置いたものを書いてみようという、隙間を狙って行った感はありますね(笑)。でも最初とっつきづらいと読んでくれないので、舞台は間口が広いファンタジーを選びつつ、「教育」というあまり見当たらないテーマで勝負したところはあります。

■『リーングラード』に登場する個性的な人物たちを紹介!

ヨシュアン・グラム
リスリア王国の外からやってきた異邦人で、出生は謎。独身。皮肉屋で面倒味が良く、図太いくせに神経質な面もある。今回、王の策略により教師になることが決まり、やんちゃで気難しい生徒たちを相手に今日も頑張る苦労人。教師陣も一癖あり、最近では素の行動も現れてきている。担当教科は術式。

───まずは主人公のヨシュアン・グラムですが、モデルなどはいらっしゃいますか?

いえこ:中学の時に通っていた塾の講師です。

一同笑い

いえこ:その先生は拳をふるう系で腕もぶっとい人だったんですが、様々な要素を加えて、こういうビジュアルイメージになりました。たまにヨシュアンが生徒にお仕置きするのも、その名残かもしれません(笑)

───ヨシュアン先生の授業を受けてみたいですか?

いえこ:お断りします!質の高い授業をしてくれるんでしょうけど彼は基本無茶ぶりで、『北風と太陽』では「北風」タイプのバイキング方式なので、ちょっと勘弁してください(笑)。ただ、あの生徒たちにとっては相性のいい先生だと思うんですよ。授業についてこれなかったら、ついてこさせるタイプの先生なので。

天之有(以下、天之):文章ではっきりとビジュアルが書かれていたので、楽に行けると思いましたが、自分が描くとすぐ地味になってしまうため、最後まで苦労しました。いえこ先生のお知り合いの方のイメージイラストをいただいたり、ウェブ上にあったレビューやファンイラストを見た上で、なるべく外さないように注意して今の形になりました。服装はどちらかというと職人服よりなので、厚手のエプロンがついて完成になります。ヨシュアン先生はマントを着た時にビシッと決まってくれればいいかなと今は考えています。まだ地味だ!って意見が出てきたら眼鏡バリエーションで対応する覚悟もあったりなかったり……

クリスティーナ・アンデル・ハイルハイツ
ランスバールの遠縁で王族の一つ、ハイルハイツ家の末娘。上に三人の兄がいる。髪色は黄金。フリル大好き14歳。

いえこ:最初に古典的なツンデレを目指しつつ、目的意識の高い子というのを第一にしました。

天之:外見のイメージは割りとあっさりつかめましたが、ドリルとフリル地獄に大苦戦!甘ロリ好きなんですけどね。描くのは別で(笑)。ポイントは、フリルで膨らんでますが、実際は滅茶苦茶ヒョロイところでしょうか。これから制服も改造してくるらしいのでデザイン的にはまだ気が抜けません。表情はおそらく一番変化すると思うので、これからに期待してください。

マッフル・グランハザード
グランハザード商会の一人娘。王族相手に喧嘩する元気系商人っ娘。髪色は赤。お金大好き14歳。クリスティーナとは犬猿の仲で、しょっちゅう喧嘩しては二人してヨシュアンから仲裁(制裁?)されている。

いえこ:クリスと同じ質を持っていて、なおかつ別の個というイメージですね。クリスと張り合えるようなキャラクターにしたかったんです。

天之:名前が可愛いのでなぜか好きです。油断すると85%は布で覆ってしまう癖があるので、途中で露出を増やしました。長旅の時などはファンタジー世界らしくコートを羽織ります。

───肩出しへそ出し衣装やスカートが斜めなのも良いですね。

天之:元気っ娘から連想してチアガールです(笑)。ギリギリ見えるスパッツがこの服装の全てです!

セロ・バレン
貴族と平民の間に生まれた不幸な生い立ちを背負っていそうな気弱っ娘。『バナビー・ペイター』をこよなく愛する12歳。

いえこ:クリスとマッフルがヨシュアン先生に対して否定的な位置づけにいたので、主人公に対して肯定的な位置づけという意味で、一番味方になりやすいキャラクターです。登場頻度も結構高いんですが、被害者の立ち位置にいやすいので巻き添えを食らったりする被虐キャラですね。

一同笑い

───リボンが可愛いですね。

天之:ひたすら小型犬をイメージして描きました。珍しく迷うことなく一撃で決まった例ですが、もっと思い切って修道服のようにしてしまっても良かったのかもしれません。

リリーナ・エス・ル・ラーツァ
エルフの集落からやってきた不思議系エルフっ娘。生徒たちの中でも一番、出るところ出てる15歳。

いえこ:クラス全体を俯瞰する役目から生まれたんですが、書いているうちにぜんぜん違うキャラクターになりました。クラスを俯瞰しつつエルフと人間の種族間で摩擦を起こさせるキャラクターだったんですが、いつの間にか目的もなければ勉強する気もないような、とにかくフラフラした子に(笑)

天之:このビジュアルでヨシュアン先生に〆られたらさぞ愉快だろうなぁ。これを最優先で描きました。絵とあわせて読んでるといちいち愉快です(笑)

エリエス・アインシュバルツ
優秀な術式師を多く排出しているレザナード領からやってきた無口系優等生っ娘。黒髪で片目を隠している。知的好奇心に飢えた14歳。

いえこ:彼女が本領を発揮するのは2巻以降なんですけど、真面目なガリ勉タイプだけでは面白くないので不思議系を加えてます。裏設定で複雑に絡んでいたりするという、正統派でありながら別の位置づけにある特殊なキャラです。

天之:こちらも油断して布で覆われた例です。初期は謎の魔術師のイメージだったので、セット服のコートを羽織ると顔半分しか肌が出ない予定です。

───天之有先生へ、デザインのオーダーはありましたか?

いえこ:ドリルとショートとリボンと長い髪と、あとは生徒たちのカラーイメージくらいで、あの設定からよくここまで描いていただいたなと。特に服装なんてエリエスの足元のひらひら、一切想像してなかったですからね(笑)。それはもう上手く描いていただきました!

天之:エリエスの脚から生えてるのはほんと何なんでしょうね。全体としてとりあえずすでに先行して読まれている読者のイメージから外れないように注意はしていました。

───意外性のあるキャラクターは?

アレフレット

いえこ:アレフレットです。『リーングラード』は男性キャラクターも重要な位置にあるので、女性だけではなく男性キャラも魅力的に描いて欲しいというのが一番念頭にありましたので、アレフレットは他の筋肉キャラと被らないようにデザインしていただきました。戦闘がメインのお話じゃないので、『教師力』が一番に来ないと駄目というところで、小悪党顔でも教師としては優秀な人物であることが出ていますね。

───筋肉キャラといえばヘグマント先生もユニークですね。

ヘグマント

いえこ:日常生活だとアレフレッドが結構良い働きをしているはずなんですが、ヘグマントは派手なシーンが多いんで目立ってますね。

リィティカ

───美人のリィティカ先生も魅力的です。

天之:ヘグマント先生は格ゲー並みに盛り、逆にリィティカ先生はフワフワ森ガール風。他の先生方も並べたときに一瞬で違いがわかるようにデザインしました。一番お気に入りはアルフレットですね。担当さんにもう少しイケメンにして欲しいと返ってきましたが、悪っぽい顔で通しました。

■「一人称小説にすることで、10代でも大人でも
楽しめる内容になっています」

───先生と生徒の物語なので、学生から大人まで幅広く楽しめると感じました。

いえこ:それは意識しています。中高生から見たら大人って何を考えているかわからないじゃないですか。「これをやれ、あれをしろ」って理由もなく押しつけられても子供には伝わらないんです。ですが大人の視点で描くことで、その理屈に至るまでの心の流れを見せる事ができるので、中高生にはそういうところを楽しんでいただけるのではと。また本作では「大人が大人になろうとする」過程を描いたり、子供が大人に成長する姿が(大人からの視点で)見られますので、大人の方でも楽しめる内容になっています。

───一人称でヨシュアンの内面が語られているのも大きいですね。

いえこ:一人称の文体にするならば、一人称で出来る事をやりたかったんです。「内心はこう考えているけど、子供のためにはこう動く」とか、親の立場の人はそういう風に子供に接している人が多いんじゃないかと。そういった角度からも共感を持っていただけると、主人公への愛着が増すのではないかな、と思います。

───個人的にセロの成長エピソードが凄く心打たれました。

いえこ:ありがとうございます、そういう風にどこかのエピソードで引っかかってくれるのが嬉しいです。色んなキャラクターのそれぞれのエピソードで、読者の皆さんがどこか経験したことがある、例えば体育が苦手な子はセロの話は「分かる!」など、読者に共感していただけるようなお話を書いていきたいです。

■「この第一章は、一冊のうちに読み終えてほしい」
───一巻のページ数が多いですね。

編集K:元々Web版の第一章がものすごく長くて分冊を検討するレベルでした。ですが、いえこ先生と話し合った結果、「この第一章は、一冊のうちに読み終えてほしい」という思いがありましたので、「ではゴリゴリ削ってください」と(笑)

いえこ:自分で選んだ道ですが、「うぐぐ……!」とはなりましたね。作品自体が盛り沢山になっている分、取捨選択は難しかったのですが、涙を飲んで優先度の高いエピソードに絞ったという感じです。

編集K:登場人物も多くて、出番もしっかり確保されている分、分厚くなったというのは間違いないですね、いえこ先生が欲張りな人なので(笑)

いえこ:それはヨシュアンが教師だから、生徒だけが目立つのではなく、教師側にも視点を当ててしっかり確立する必要があるからで、結果このボリュームになりました。でもその結果、新しいエピソードが入っていますので、Web版の読者さんも新鮮に楽しんでいただける部分だと思います。

───今回から書籍版を刊行されますが、Webでの連載は続けていくのですか?

いえこ:はい。Web小説から多くの方に応援していただいた作品なので、書籍化したからWebの更新はストップするというのは不義理なんじゃないかなと。多少キツくても両立していきます!

───多少どころではないキツさが想像できますが……。

いえこ:睡眠時間は日に日に削れてます(笑) でも全体の構想もラストまでしっかり考えていますので、引き続きWeb版も楽しんでください。

■大型新人作家「いえこけい」の足跡に迫る!

───愛読書や影響を受けた本は?

いえこ上遠野浩平さんの『ブギーポップシリーズ』、神坂一さんの『スレイヤーズ』、秋田禎信さんの『魔術士オーフェン』といった90年代の作品をよく読んでいました。思春期には赤川次郎さんの作品を『三毛猫ホームズ』を筆頭にミステリーも攻めたりしましたね。影響を受けたのは、阿智太郎さんの『僕の血を吸わないで』というシリーズが、当時自分の抱いていた固定観念をブチ壊してくれた作品として心に残っています。

───固定観念というのは?

いえこ:小説やゲームシナリオって固いイメージがあったんですが、阿智太郎さんの作品を読んで、「こんな表現の仕方もあるのか、格好つける必要なんてなかったんだ!」と感じ、いい意味で固定観念が壊れて、自分のスタイルが大きく変わったきっかけの作品でした。

───プロとアマチュアで意識の違いはありますか?

いえこ:明確な違いというのは自分の中にはまだ無いですね。決められた期日までにタスクを完了する事に、プロとアマチュアの違いというのは無いと思っています。Webで連載を始めたときも兼業作家でしたので、そういったことは常に意識していたように思います。

───義務ではないWeb連載時のモチベーションの保ち方は?

いえこ:読者からの感想を見て発奮する事が多かったです。あとは、自分の設定したポイントまでは絶対に辿り着くという、ある種負けず嫌いのような感情を持って書いています。意思が強い方では決してないのですが、最低限自分の決めたところまでは書き切ろう、と。

───「趣味だから書きたいときに書く」ということではなかったんですね。

いえこ:好きなことを好きな時間に書くというのは、後回しにできるってことじゃないですか、そういうのが苦手なんです(笑)

───それでは最後に、皆さんへメッセージをお願いします。

いえこ:まさかプロ作家デビューして、ここまでくるとは思わなかったというのが正直な想いです。「なろう小説」という括りで様々な作品が世に出ていますが、それらの作品に負けない作品にしていこうと思っています!キツい意見も励みになりますが、あまり打たれ強いほうではないので温かい目で見守っていただければと(笑)

編集K:『リーングラード』は回を重ねる毎に面白くなる作品なので、1巻のボリュームでひるまずに2巻、3巻と手にとっていただければと思います。登場キャラクターもどんどん増えていき、もっと面白くなるというのは間違いないので、今後の展開にも期待していただければと思います。

───本日はありがとうございました。

取材・文:かーずSP・アシD(オーバーラップ文庫
※文中敬称略

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