2016年02月23日

【インタビュー記念】 「俺を好きなのはお前だけかよ」書きおろし新作ショートストーリー

俺を好きなのはお前だけかよ「俺を好きなのはお前だけかよ」の駱駝先生が、アキバBlogインタビュー掲載を記念し、新作ショートストーリー書きおろし。駱駝先生より『頑張って書きましたので、よろしければ、是非お読みください。一つは、ジョーロとパンジーのLINE会話の一幕です。もうひとつは是非皆様の目でお確かめください』。
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電撃文庫「俺を好きなのはお前だけかよ」  パンジーこと三色院菫子
俺は既に読んでいる

時は休み時間。場所は自らの所属する教室。この授業までの短い合間に、高校二年生の男子たる俺は、とあるスマホアプリについて語りたいと思う。

それはスマホを持っている者なら、ほとんどの人が使用しているであろう黄緑糸のアプリだ。

これが登場してから、メールは徐々に利用頻度が下がり、もしかしたら電話以上に利用しているという人もいるのではないかというあのアプリ。

もちろん、俺も使っている。メールのように長文ではなく短文で、会話するかのように利用できるこのアプリは、本当に便利で画期的な物だと思う。

だが、たった一つ。たった一つだけ……、俺がどうしても不便に感じる機能が存在するのだ。

それは……、『既読』と呼ばれる機能だ。

この機能を端的に説明すると、メッセージを送った相手が、受け取った側の人間が、読んだか読んでいないかを知ることが出来てしまうという非常に驚異的な機能である。

うっかりとメッセージが来た時、ポップアップに出た『表示ボタン』を押してしまい、アプリを起動したことによって、『既読』マークを向こうに与えてしまうという経験。

これが、仲の良い相手や可愛い女の子ならまるで問題はない。

だがしかし! 自分の大嫌いな、可愛くない上に性格が最悪な女からメッセージが来た時に、これをやってしまった場合、うんざりすることしかできないだろう。

ちょうど、今の俺のようにな……。

『LOVE』

突如として送られてきたメッセージ(文字の周りに沢山の花びらのスタンプ)が画面に出て、うっかりと表示ボタンを押してしまった俺。

送付してきた人物の名前は『パンジー』と書いてある。

俺のIDを教えた覚えはないはずなのだが、すでに教えていない電話番号やメールアドレスを把握されている以上、これに関して驚くつもりはない。

問題は、メッセージに『既読』マークをつけてしまった俺が、今後どうするかということだ。

「…………」

可愛らしいスタンプだが、生憎と送り主はそうではないんだ。

これを送付してきたパンジーは、三つ編み、眼鏡、胸皆無。さらには、性格最悪というクソ四天王の合体状態のような女だ。

何故か俺を好きだと豪語しているストーカーだが、ブスな上に性格が悪い女なんぞ、菩薩の心を持ち合わせていない俺は大嫌い! ということで……、

「……既読スルーでいこう!」

よし。結論は出た。今すぐにスマホを鞄の奥底へしまい、見なかったことにしよう。

うっかり、誤作動で『既読』マークついちゃったんだ。てへぺろ。ごめんね☆

これだな。

『既読スルーはダメよ』

……先手を打たれた。

いや、だが待てよ? 俺はうっかり初めのメッセージは、『既読』マークをつけたが、今回はつけていない! だから、さっきの言い訳は十分に利用できる状態だ!

『未読スルーも、もちろんダメよ』

仮に俺がメッセージを本当に見てなかったら、どうするつもりだったのだろう?

考えなしにも程がある。いいや、後でメッセージをみたことにして、そんなことを言われても困るだけだボケ。二度と俺に関わるなと強く言ってやればいい。

『教室の外から貴方の様子は見てるわ』

なん……だと……? 恐る恐る教室のドアを確認。するとドアは開いており、そこから一人の三つ編み眼鏡が、俺に対して手を振っているではないか。

まさにストーカーの権化。そこまで来たなら直接話しかけて……こなくていいや。

『お返事が欲しいわ』

そうこうしている間にも、次々と送られてくるメッセージ。

もはや、既読スルーも未読スルーもできない俺は、渋々メッセージを打ち込んでいった。

『さっさと自分のクラスに戻れ』

『微男子を見終わったら、そうするわ』

それは一体誰のことかな? 君、俺を好きとか言ってて、よくそんな風に言えるね。

『頭、大丈夫?』

『貴方に恋する想いを告げてから毎日、頭の中がお花畑にいるみたいに幸せよ』

なるほど。つまり、頭がお花畑状態ということか。非常に恐ろしい存在だ。

『今すぐ改善しろ』

『貴方の返答次第では、改善される可能性があるわよ』

ほほう。つまりここで、俺がてめぇに対して、クソ野郎極まりない行為をして、嫌われるように仕向ければ、その絶望的な脳のてめぇでも恋心が冷めるということか。

ならば見せてやろうではないか。このクソ野郎オブザイヤー受賞者(自称)の実力を。

『外見も性格も、何もかも人類の最底辺を生きるてめぇに関わりたくねぇから、今すぐ失せろ』

完璧だ! これほどに最低な言葉は、中々にないだろう。あ、ちなみに本心だからね。

『改善されたわ』

おお! つまり、俺を嫌いになってくれたんだな! ありがとう!

じゃあ、今すぐにでも教室に戻ってくれ。そして俺とは二度と……

『そんな風に思っている人に対してもメッセージを返すなんて、貴方はとても律儀で優しい人なのね。これなら、私の気持ちがより改善されて、間違いでなかったと確信できるわ』

今すぐ、スマホの画面を叩き割りたい。なぜ、絶望に絶望を上乗せするのだろう?

『LOVE』

最後に再び送られてきたスタンプを見て、俺は敢えて既読スルーを選んでやった。


俺とお前のデート計画

ある日の昼休み、図書室で俺の横に座る女、パンジーこと三色院菫子が、淡々と無感情な声で、一つの言葉を発した。

「そろそろ、私達もデートをしてもいい頃合ね」

この胸ペチャ三つ編み眼鏡は、一体何を言っているのだろう?

デートとは、『恋愛関係にある、もしくは恋愛関係に進みつつある二人が、連れだって外出し、一定の時間を遊行目的で行動を共にすること。逢引およびランデヴーとも言う(※ペディア先生より)』だ。

つまり、恋愛関係にもなく、恋愛関係にまるで進んでいない俺達には無縁のもの。

そんな頃合はまるで訪れていないどころか、今後も来ることはないだろう。

「そうか。場所はどこにするんだ?」

しかしここで俺は、あえて『行かない』とは言わない。

このパンジーという女は、非常にポジティブシンキングで、外見が驚異的なまでに残念で、性格は納豆のようにネバネバした諦めの悪い女である。

つまり、少しでも対応を間違えると、すぐにふてくされて、精神的または物理的攻撃をしてくるので、要注意だ。

だから、即座に否定するのではなく、どこに行きたいかなど条件を聞いてから、予算や体調、はたまた時間的な理由をつけて断る。これが今回の俺の作戦だ。

「そんなにがっつかないでちょうだい。恥ずかしいわ」

早速、お得意のポジティブシンキングが発動した模様。

一応、全力の渋顔(渋い顔の略)を披露しているのだが、気づいていないのか?

……違うな。気づいていて、そのまま話を進めるつもりだ。

「あのね、私はここがいいと思うの。前々から行ってみたかったのよね。折角のデートですもの。お互いのことを知れる場所がいいわ」

ふむ……。どれどれ? 何かしら否定の材料がある場所だと……うわぉ……。

「…………本気でここに行くつもりか?」

「ええ。とても楽しみよね? それと、安心してちょうだい。日帰りの予定よ。まだお泊りの頃合は訪れていないもの」

すでに行くこと前提になっているのはさておき、こいつはなんて場所を提示していやがる。

俺達が今いるここは東京都。

だってのにこいつは……、あの偉大なる文豪の松本清張記念館(福岡)を指差しているのだ。

しかも、日帰りで行くつもりらしい。

本が大好きな図書委員とは言え、自分の趣味に他人を巻き込む範囲は考えてもらいたい。

「ついでに近くの遊園地にも寄っていきましょうね。私、絶叫系は苦手だけど、貴方が絶叫しているところは見たいもの。スペースアドマイヤーな兎ちゃんが私達を歓迎してくれるわ」

おまけに俺を延々とジェットコースターに乗せる計画まで企てている模様。

松本清張記念館に行き、さらには遊園地に行き、日帰りとはどれだけハードプランなのだ。

せめて関東圏内で全てを済ませてほしい。

「てめぇはさっき、折角のデートでお互いのことを知れる場所がいいと言っていたが、これでどうやってお互いのことを知るつもりか……。一応、聞いておこうか」

呆れと侮蔑を込めた視線を送ってるのに、どうしてそんなにウキウキしてるの? 君。

「松本清張記念館で、貴方は私がどんな本が好きかを知ることができて、スペースワールドで絶叫する貴方を見て、私は貴方の本性を知ることができるわ。ほら、よく言うじゃない? 人間、いざという時に本性が出るって」

今がまさに、いざという時なのだが、それを理解していないのだろうか?

なぜ、大嫌いな女と福岡まで旅立ち、絶叫系マシーンに延々と乗せられなければならない?

正直、一緒に福岡まで行くことの方が、絶叫マシーンの500倍怖い。

「それと、小倉駅で美味しい練乳パンを買いましょうね」

しかも無駄に、下調べまで万端だ。

「分かった。お土産には期待しているぞ」

「まさか貴方、来ないつもりなの?」

なんでそんなにビックリした顔が出来るのだろう? 永遠の神秘である。

まぁ、それはさておき、そろそろ作戦実行だ! 行く場所が九州なら選択肢は一つ!

ズバリ、予算面の都合で断る!

「そうだ。すまないな。本当は行きたくて行きたくてしょうがないのだが、生憎と九州に簡単に行けるほど、我が家の財政に余裕はない。ここ最近は、毎日家族皆でししゃもだけを食って飢えを乗り切っているほどに圧迫されているからな」

「分かったわ。じゃあ、私がお金を出すから、一緒に行きましょ」

「おいおい。女に金を出させるなんて、かっこ悪いことできるわけないだろ?」

「……そう。つまり貴方は、お金が溜まったら、自費で私の分も出して一緒にデートへ行ってくれるのね。とても嬉しいわ」

え? そう来ちゃいます?

「なら、今回は我慢してあげる。夏休みにとても割高のアルバイトを紹介してあげるから、楽しみにしててちょうだいね。洗うのと、拾うの、どっちがいいかだけ希望を聞いておくわ」

…………洗う。拾う。なんだか都市伝説でしか聞いたことのないアルバイトが彷彿するのだが……、いや、まさかねぇ〜。さすがに、そこまではねぇ〜。

「大丈夫。マグロさん達は皆いい子だから、安心して私のために頑張ってちょうだいな」

さて、帰りにタウンワークでも駅でもらってから、家に戻ろう。

出来れば、長期間の……漁船に乗るアルバイトとか、いいかもしれないな。

……え? 俺の名前は何だって?

そいつは……まぁ、本編のお楽しみってことで頼む。

「俺を好きなのはお前だけかよ」(著:駱駝 イラスト:ブリキ
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