2017年12月31日

【コラム】 少女と出会い旅をして「おとうさん」は大きく成長する「ソマリと森の神様」第4巻

暮石ヤコ「ソマリと森の神様」第4巻 コミックゼノンWEBコミックぜにょん編集部のYです。一年の締めくくり、大晦日。終わりよければすべてよし!ということで、2017年最後の【THE 他力本願コラム】は、発売中の「ソマリと森の神様」第4巻をご紹介!仮初の父娘の旅物語にスポットを当てちゃいます!
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2017年を締めていただくのは、ライターのたまごまごさんです!

男はね、少女に出会うと、守ろうって頑張る生き物なんだよ。多分。助けてあげたい、って。そのためならなんでもできるって。ただ、危険な世界から身を挺して守りながら、笑顔にさせることはできるのか、と言われると、うーん自信ないかな……。

『ソマリと森の神様』は、人間の少女とゴーレムが、ファンタジー世界を旅するロードムービー的作品。緻密で美しく描かれた世界を、二人は歩き続けます。

二人の旅する世界の書き込みがすごい! ほぼ毎回入るので、必見
ゴーレム、少女と出会う

約千年近く生きている、森の守り人(もりびと)ゴーレム。彼が見つけたのは、人間の少女でした。名前はソマリ。この世界で、人間はほぼ絶滅種。いわゆる「人外」たちが世界の大部分を占めています。

ゴーレムには感情がありません。ただ、ソマリはゴーレムのことをおとうさんと呼びました。ゴーレムはそれを聞いて、自分が停止する残り僅かな時間を使って、残った人間を見つけようとします。ソマリの両親に、彼女をきちんと手渡したい。

とは言っても、ソマリを人間のまま連れて歩くのは危険。彼女には角の付いたフードをかぶせ、牛角(ミノタウロス)に属する、とゴーレムは言ってごまかします。これがめっちゃかわいいです。

このフードの角でごまかします。ああめんこいなー

この世界、少々面倒くさい。まず「人間」と「人外」はかつて、お互いの存在を知らずに暮らしていた。ある日人間と人外が出会い、異文化交流を深めることに。ところが双方の文化や見た目の違いがこじれてしまい、いつしか戦争にまで発展。

人間は人外に戦いで勝てるわけもなく、惨敗。生き残った人間は、人外の私利私欲のために「ヒト狩り」され、食されるようになりましたとさ。

今となっては、家畜やペットのように人間を扱うのが当たり前になりました。人外側は「そういう文化」だと思っているので、悪気はないのです。

人外からみたら、ニワトリとか牛とかみたいな扱いがあたりまえの、人間

もしソマリが人間だとバレたら、食われてしまうかもしれない。ゴーレムはソマリの素性を隠し、守り続けます。

ゴーレム、自分を考える

真面目で、合理的な手段しかしらず、黙々とソマリを守るゴーレム。表情のない彼は、アラサー・アラフォー男子のハートに効いてくる。

冒頭でも書きましたが、男性って少女と出会う時、自分を見直すハメになるんですよ、絶対に。男の子でもそうなんだけど、幼い女の子という自分の対極の存在のほうが身にしみる。どう接すればいいのか、距離感わかんないじゃん。女の子だったらケツ叩くわけにいかないし。

感情はわからない。けど気づくことはある

ゴーレムは嬉しいとか悲しいとか、一切感じません。ところが感情豊かなソマリを見ていると、千年近く生きてきた感じたことのない複雑な感覚が湧いてきちゃう。今まで気づかなかったことが、ソマリといることで、わかってしまった。

ゴーレムは、自分が人間のソマリと理解しあえるのか、守れるのかと「迷っていた」ことを理解しはじめます。でもソマリの顔を見て「胸が軽くなった」ような気がしてくる。それは「安心」っていう感情だよ。

ソマリに出会うまで、ゴーレムはただの番人以外の何者でもなかった

彼はソマリに「おとうさん」と呼ばれたことで、「おとうさん」になった。個としての性質を得た、と彼は言います。これって大人の人間誰しもに通じることだ。

ゴーレム、おとうさんになる
合理性を重んじるゴーレム。でも不要だと思っていた「思い出」を作ったことで、
ソマリもゴーレムも一つ成長できました

自分が何なのかって、すごく難しい問い。男だとか女だとか、大人とか子供とか、何が好きで何がしたいとか。どこで理解できるようになったんだろう。多分、外的な評価と自分の考えをすりあわせた時、はじめて心から納得できるんだと思う。

ゴーレムは一応感情がないとは明言されていますが、読んでいるともうすでに自我がはっきり芽生えているのがわかります。ソマリが自分を「おとうさん」と慕ってくれた、いわば「評価してくれた」から、彼は自分の存在意義を「おとうさん」になることに見出したのでしょう。ソマリはゴーレムにとっての指標であり、自分を映す鏡です。

もちろん、そこでの自分が完璧になれないからこそ、成長するというもの。ゴーレムはこの旅で「合理的」以外のことを学んでいきます。この作品は、二人が人種間の歪みを知る物語であると同時に、ソマリと旅をすることでゴーレムが大人になっていく話でもある。

完璧なおとうさんなんていない。
そうわかることこそが、子供と大人が共に成長するということ
ゴーレム、もう一人のおとうさんに出会う

3巻から4巻にかけて出て来る、ハーピー少女のウゾイ人間男子のハイトラ(ソマリ同様素性は隠しています)二人組の話が、なかなか強烈です。もちろん血はつながっていません。ハイトラは生活をするのも大変な状態で、薬を探して旅をしています。彼は元気で跳ねっ返りなウゾイの保護者であり、同時に彼女に助けられている状態。ソマリたちとも仲良くなります。

ああ、二人とも愛しいなあ。
こんな子たちを、血の繋がらない保護者として、守れるだろうか

ウゾイはハイトラが大好き。ソマリとゴーレムの関係と、同じです。ただウゾイとハイトラの関係には「人外」「人間」の溝がモロに出ていて、大変複雑。ゴーレムはソマリに出会って「おとうさん」になれたけど、ハイトラはウゾイに愛されれば愛されるほど、自分にそんな価値はないと苦しみます。

何があったのかは読んで下さい。ただ「自分に価値がない」という感覚は、大人の悩みでよくあるもの。理由は特殊ではあるけど、彼に共感できる部分は多いはず。

ソマリとゴーレムの旅はまだまだ続きます。ウゾイとハイトラの旅もきっと続きます。もしソマリがぼくの目の前にいたら、ゴーレムみたいになれなくて「自分には資格がない」って思っちゃいそうだ。でもきっと「おとうさん」って言われたら、がんばっちゃうんじゃないかな。がんばりたい。心の中にソマリを思い描いて、明日もがんばろう。


人外と少女のお話だけど、読めばきっと励まされ、あなたに寄り添ってくれる『ソマリと森の神様』お正月にゆっくり読んでみてほしいです!

では今年も一年、ありがとうございました!来年も、ゼノン、ぜにょん、他力本願コラムをよろしくお願いいたします!

コミックゼノンWEBコミックぜにょん編集部 Y / ライター:たまごまごさん


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