2018年03月25日

【コラム】 いいところも悪いところも全部含めて、京都が好き。「はんなりギロリの頼子さん」

あさのゆきこ「はんなりギロリの頼子さん」 コミックゼノンWEBコミックぜにょん編集部のYです。暖かくなってきた今日このごろ。行楽シーズンも迫ってきていますが、「京都」なんていかがでしょう?テンプレすぎる観光地? いいえ、違います!京都には、きつくて優しい彼女がいるのです!今回のライターは、たまごまごさんです!
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あさのゆきこ先生の「はんなりギロリの頼子さん」1巻
4月から、AKB48の京都出身・横山由依主演でドラマ化

京都を舞台に描く、割と赤裸々な人情物語「はんなりギロリの頼子さん」(作:あさのゆきこ先生)の五巻が間もなく発売になります。4月からはAKB48の京都出身・横山由依が主演でドラマ化。「マジすか学園」の京都っ子「おたべ」の睨みがかっこよかったのを思い出すなあ。

たばこ屋の看板娘・頼子さんを中心に、京都の人の優しさも面倒臭さも、鋭く切り取る作品。人が集まり住むところには、思いやりの心がいつしか生まれるもの。ただし、江戸っ子のそれとはだいぶ違います。

たばこ屋でギロリの頼子さん

町角で売れないたばこ屋を経営している頼子さん。あまり飾らないタイプの美人さんで、目を引くくらいにはかっこいい。ただしいつも不機嫌そうで眼光が強い。どうにも近寄りがたい。愛嬌ゼロです。

あさのゆきこ「はんなりギロリの頼子さん」
お、お姉さん、話しかけづらいんですが……

世界遺産から徒歩二分のところに住む頼子さん。数多くの観光客が通り過ぎていく地域です。もっとも頼子さんは、客だろうと道を訪ねてくる観光客だろうと、ギリリと睨みつける。

彼女は人と接するのが嫌いなわけではありません。海外から来た人と外国語で話せるくらいで、どんな相手にでも京都を説明し、案内します。

例えば地元のお菓子屋がメディアに取り上げられた時。遠くから来た女の子たちは行列の規模を知らず、買い逃してしまいます。車で二時間かけてきた彼女たちを見て、頼子さんはある行動に出ます。

去っていくその姿、まるで王子様のような頼子さん

次に来ても徒労になるであろう彼女たちのために、早く並んで買っておいてあげたのみならず、地元民しか知らない裏メニューまでプレゼント。頼子さん、決して見返りを求めない。感謝を受け取るでもない。教えてあげたらそれきりです。本人が喜んでくれたらそれでよし。イケメンすぎる。

みんなに本当の京都の魅力を知ってもらいたい彼女。テレビで取り上げられる有名なお店や観光地は、人がわんさか集まる。でもそれに乗っかって、おおげさに値打ちこくお土産物屋や、ぼったくりな飲食店も出てきてしまっている。別に悪くはないけれども、それしか知らないのはもったいない。

住人しか知らない夕焼けがきれいに見える場所、大学受験に悩む高校生が行くべきところ、険悪な義父と婿が二人で入れる飲み屋、ネット中毒サブカル女子の目を覚まさせる空間。その人に合った、京都がある。

個性的な客が次々登場。頼子さんはこういうの人を見捨てられない

彼女に出会って京都の魅力を知った観光者たちは、人生の目線ががらりと変わって新たな一歩を踏み出すこともあります。

骨董にかぶれた東京の男性は、頼子さんに勧められた場所を訪れ、自分の価値観が間違っていたことを悟ります。 ケンカしていたカップルは、頼子さんに鴨川河川敷に行くよう言われ、お互いをじっくり見つめ直す時間を手に入れます。

この作品に出てくる、頼子さん含む京都の住人は、少々口が悪い。上から目線のひねくれ者にすら見える。だから「冷たい」と感じられがち。でも実際は、喜んでもらおうと観光客に一生懸命手を差し伸べています。

ちょっぴり天の邪鬼なんです

『「京都に住まう誇りを持ち 観光客に優しくしましょう」だって観光客の話をしている彼らの横顔はとてもうれしそうで』

京都に引っ越してきたばかりの山田さんは、頼子さんたちを見ながら考えます。なんだかんだでお節介焼き。特に頼子さんはやりすぎなくらいにとても親切。彼女に出会った観光客は、感謝の気持ちで、再び京都を訪れた時また彼女のもとにやってきます。まるで旅行者のセーブポイント。

本当にみんな、京都の町が好きで、人が好きなんだなあ。
目つきと言葉はみんな悪いけど

頼子さんのオーラは、客側が慣れないと緊張しがち。でもちょっとでも彼女に接触を持つと、いろいろ考えてくれる優しさに感謝したくなる。少なくとも登場して頼子さんに出会ったキャラクターは、みんな笑顔になっています。

真っ黒イケずな有希さん

ゲストキャラクターの中でも一際インパクトあるのが、扇子屋の娘の平野有希。ふわふわっとした、見た目だけなら今作最強クラスのかわいさを誇る大学生です。

かわいすぎでは(結婚しよ)

あまりに物腰が柔らかいので、頼子さんの家の近所に住む山田さん(京都在住三ヶ月)はすっかり彼女を信じ込みます。

「お茶の一杯でも召し上がっていかはる?」と話しかける有希。扇子を見ている時は「お眼鏡にかないますやろか」、「なんでもようお似合いになりはるんちゃう?」うん、優しくない?

これが全部ワナ。頼子さんは見抜きます。それぞれ「お茶なんかだすつもりない定型句」、「よそもんにこの価値が分かるわけない」、「何持っても一緒でしょ」という意味。全部イヤミです。うっわこわ。めんどくさ。何も信じられなくなる。

こいつはあかん(結婚やめよ)

頼子さんとは犬猿の仲。「ああいうやつがいるから京都人は嫌がられるんだ」、「京都の人間じゃないってわかっててああいうのは許せない」

いつも険しい感じで、喋り方もぶっきらぼうな頼子さんは、基本裏表がない。一方イケズで毒だらけの有希は、裏表しかなく、誰にも本音を見せない。

住んでいる場所での格付けをしたり、大阪人をバカにしたり。牽制合戦と腹の探り合いのドロッとした部分が描かれます。何度か登場していますが、毎回頼子さんとは衝突しています。頼子さんも、裏の裏の底を察してしまうのが、他人に迷惑をかけていると分かるのが、嫌なんです。

この作品は京都の町と人の魅力をたっぷり描いていますが、汚い部分も隠しません。人間の優劣をすぐつけてしまうような面倒くさいところ(頼子さんいわく「負の遺産」)もしっかりと表現されています。有希はその最たる例として、ありとあらゆる周囲の人に毒を飛ばします。もちろんそういう人間は彼女だけではない。

ただ、有希の生きてきた環境は頼子さんたちとは別です。京都の格式高い家で育てられ、自由にならなかったがゆえに引き継いでしまった歪み。人に毒をなすりつけるのはいいことじゃないけど、彼女は彼女で孤独。「まぁあれやね イケズなんてもんはわかる人にしかわからへん 京都人のひとり上手でおますなぁ」

頼子さんが人との情をつなぐ熱い演歌だとしたら、有希のねじれた人生は諦めのブルース。イラッとさせられる部分の多いキャラですが、読み進めていくと彼女のことも愛しくなるはず。多分。今後性格変わりそうな空気はあります。

本音が言えないってのは生きづらそうだ
頼子さんのヒミツ

頼子さんは一見「京都にめちゃくちゃ詳しい、目付きの悪いドラ○もん」みたいですが、実は頼子さん金閣寺に行ったこと無いなど、意外なところに落とし穴がある。なんでも知っているわけじゃあないです。

彼女はお酒と京都料理が大好き。お茶漬けのためにお漬物を大量に買いに行ったり、おいしい豆腐を購入しようと駆け回ったり。一人女子グルメ漫画が好きな人も楽しめる要素がある作品です。

おひとりさまの幸せてんこもり

意外にも頼子さん、京都弁ではありません。ここには、割とヘビーなワケがあります。彼女が一人で暮らすのが好きな理由や、ギロリとにらみがちな原因ともつながっているので、是非読んでみて下さい。オムニバス形式のマンガですが、全編を通じて、頼子さんの人生の物語が描かれています。

人は見せかけの愛嬌があればいいってもんじゃない。目つきは悪いけれども、実は誰にでも優しくみんなに愛される頼子さんは、京都の人の、ちょっと遠回りな心の表れのようです。


みんなの知ってる京都の知らないところ。あなただけの京都を頼子さんと探してください!

コミックゼノンWEBコミックぜにょん編集部 Y / ライター:たまごまごさん




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