2018年04月08日

【コラム】 新たな表現方法が伝統を切り拓く。伝統芸能にスポットを当てた「火色の文楽」

北駒生「火色の文楽」 コミックゼノンWEBコミックぜにょん編集部のYです。マンガとは、未知の世界に連れて行ってくれるものです。それは日常にある「未知」も、つまびらかに魅せてくれます。今回は、普段の生活では中々触れ合う機会のない、“伝統芸能”にスポットを当てた作品「火色の文楽」をご紹介します! 、
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今回のライターは、女子マンガ研究家・小田真琴さん執筆です!


マンガと伝統芸能はたいそう相性が良い。雲田はるこ『昭和元禄落語心中』における落語、嶋木あこ『ぴんとこな』や紗久楽さわ『かぶき伊左』における歌舞伎、成田美名子『花よりも花のごとく』における能……もはやマンガ化されていない古典芸能など存在しないのではないかと思っていたところに、ありましたよ、文楽が!

北駒生「火色の文楽」2巻
北駒生先生の「火色の文楽」現在第2巻まで発売中

北駒生先生「火色の文楽」の主人公は、かつては「バレエ界の星」として将来を嘱望されていた青年・弓矢。大けがによりバレエを諦めざるを得ず、絶望のどん底にあった最中に出会ったのが文楽だった。再び立ち上がった青年は、まったく畑違いの世界で、今再び頂点を目指す。

文楽といえば元大阪府知事による補助金見直し騒動が記憶に新しいところだが、その一件からもわかるとおり本拠地は大阪である。

義太夫節で物語を語る「太夫」、音を奏でる「三味線弾き」、3人がかりで1体の人形を操る「人形遣い」が、言わば三位一体のセッションで作り上げる人形劇だ。この鮮やかな競演こそが最大の見所である。

本作中でもこのセッション感、ライブ感は、最大限の熱意で以て表現されている。中でも驚かされたのは太夫の語りの表現だ。太く、力強く、そして激しくうねる手書き文字!

文楽に込められた熱量そのもののようなマンガならではのこの表現は、北先生の大発明である。文楽はテレビで少々見た程度の私だが、その語りの凄みがまざまざと思い出された。ぜひ実物をご覧いただきたい。

描かれる人間模様もまた熱く、北先生のポテンシャルが十二分に発揮されている。前作「あさめしまえ」のような穏やかなグルーヴも心地良かったが、このテンションはまた格別だ。誌面に溢れる力強い音圧から、伝統芸能マンガであること以上に、これは音楽マンガだと直感させられた。

音のないマンガの世界で音を響かせることの困難。それを見事に超越して見せた『火色の文楽』の、これからを大いに期待したい。


少し遠くにある“伝統芸能”をその熱と漫画ならではの表現で描き出した「火色の文楽」ぜひ、ご覧ください!

コミックゼノンWEBコミックぜにょん編集部 Y / ライター:小田真琴さん




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