2019年10月25日

【コラム】 10/26(土)公開!劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」丸戸史明インタビュー 「ヒロインが可愛いという価値観は、どの世代にも揺るぎない事実」

「冴えない彼女の育てかた」の加藤恵 オタクの安芸倫也とクラスメイトの加藤恵が、ギャルゲー制作を通じて心を通わせる青春グラフィティ!劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」が26日から公開。原作者かつ劇場版の脚本を手がけた丸戸史明氏にインタビュー!「この映画は一人で観に行ったほうがいい」その真意は? (取材・文:かーずSP
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■イチャイチャに耐えるために、
握るものを映画館へ持っていけ
劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」キービジュアル
劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」が26日から公開

───まず、劇場版の脚本を書き終えた瞬間のお気持ちはいかがでしたか?

丸戸史明(以下、丸戸):次の仕事やらなきゃなーって(笑)。脚本はただの前工程ですので、終わったという感じはなかったです。ちゃんと公開された時に、ホッと一息つくつもりでいますので。

───劇場版のシナリオ執筆は、TVシリーズとは異なりましたか?

丸戸:それが今回は、TVシリーズと同じような作り方をしています。劇場版は約120分の上映時間なので、一回の本読み(脚本会議)につき20分ずつ足していったんです。要するにTVアニメを1話ずつ足して、6話分を作っている感じですね。だから6話分の第3期みたいな感覚です。
スタッフも同じメンバーなので、「劇場版なんだからさー」「ちょっと違うんだよなぁ」みたいに現場をかき回す人もいなくて(笑)、順調に進みました。

───それでは劇場版における各キャラクターについて、丸戸先生から見どころをお願いします。まずは恵から

丸戸:恵のリアクションの可愛さには期待大です。すでに公開されている予告編の比率を考えても、本編からそういうシーンばかりをかき集めたんだなって思うかもしれませんけども、大体ずーっとあんな感じで進みます。


───恵と倫也のイチャイチャが多めなんですね

丸戸:原作のシーンをほぼノーカットで描いていますので、甘々な描写が抑え気味になっていません。しばらくずっと続きますよ。

萩原猛(初代担当。以下、萩原):安芸倫也役の松岡禎丞さんが、何か握るものを持っていけとおっしゃってますね。

丸戸:二人のイチャイチャに耐えるために、手元に握れるやつを持参した方がいいと言ってました(笑)

───(笑) イチャラブなシーンに関しては、美少女ゲームで培われたものを存分に活かしたんでしょうか?

丸戸:美少女ゲームでいうところの個別ルート以降の話ですよね。最初のHシーンの後のイチャイチャみたいな。そういう部分を延々と垂れ流す、エロゲー胸焼けの時間帯を劇場版でやりました

(一同笑い)


■「調子に乗ってんじゃねぇ!」
リア充倫也のダメ可愛さに注目

───原作後半の、恵のめんどく……人間味が溢れる部分も?

丸戸:だいぶ描いています。恵のああいう部分が、どういう風にユーザーに感じられるか。僕は「やりすぎなんじゃないか」って心配を抱えたままです。周囲の人は「良いシナリオですよ」って忖度してくれるわけですけども(笑) 僕は何か、とんでもないことをしてしまったかも、みたいな部分を抱えたまま劇場公開を迎えますので、皆さま優しい目で見ていただければ。

───TVシリーズの2期後半、放送室で倫也と恵がぶつかるシーンの描写でも、同じことで悩まれたんですか?

丸戸:2期の8話は大丈夫でした。あそこは自信があったんですよ。「すごくテンションがおかしくなる」「でも嬉しさが隠しきれない」っていろんな葛藤の中で、恵が心情を吐露する。あのシーンは皆さんに受け入れてもらえるだろうと思ったんですね。

「冴えない彼女の育てかた♭」8話
倫也と恵がぶつかる
放送室で倫也と恵がぶつかる

丸戸:劇場版では、ある意味で恵の利己的な部分が、少し表に出るものなんですよ。でも原作がそうなので、特にぼかすこともなく、モロに描いています。どう受け止められるかわかりませんが、でもこれが僕の『冴えカノ』なんですよね。

───安芸倫也の活躍についてはいかがですか?

安芸倫也

丸戸:恵がたくさん出るってことは、倫也も出番が多くなります。倫也に対する恵のリアクションが可愛い一方、恵に対して倫也がどんなリアクションするか。

───TVシリーズでは、ギャグっぽく激しいリアクションをする倫也が印象的でした

丸戸:今回はラブストーリーに寄っている分、そういうところは抑え目になっています。ちょっと微妙な童貞臭さといいますか(笑) 純情少年が、好きな女の子に対してどう受け答えしていいかわからない。そんなダメ可愛さにも注目していただければと。

───最初から見ていると、あのオタク少年がよくぞここまで恋愛方面で成長したなって感慨深いです

丸戸:調子乗ってんじゃねぇよって思いますよね(笑)

───あれだけリア充を否定していた倫也が!

丸戸:お前どうなんだよ、本当にお前どうなんだよ!って言いたいですよ(笑)


■オープニングは海水浴か、ライブシーンかの二択だった

───澤村・スペンサー・英梨々の劇場版の見どころについてはどうでしょう。

澤村・スペンサー・英梨々

丸戸:倫也と恵がメインですが、後は英梨々と詩羽の物語になっています。英梨々は本当に……今回は多分すごく……でもお分かりかと思いますけど、葛藤と涙みたいな部分、切ないですよね。本当に皆さん、英梨々に感情移入しすぎるがために、この作品を嫌いにならないでほしいなって切にお願いしたいです。最近、(英梨々役の)大西沙織さんが僕に対して当たりが厳しいような……(笑)

───霞ヶ丘詩羽の活躍するシーンはどんな感じでしょうか

霞ヶ丘詩羽

丸戸:詩羽先輩はとにかく徹頭徹尾かっこいいですね!まぁ、英梨々の保護者になっちゃってますけども(笑)。詩羽先輩はもう、すごく成長した大人の女性みたいな形。それと最後のオチに期待してください。

───2期のラストでも、詩羽先輩が見事にオチを持っていきました

丸戸:はい、アニメの詩羽先輩はそういったポジションでも活躍キャラクターだと思っていただければ。

───波島出海についてはいかがですか?

波島出海

丸戸:出海は同人サークル『blessing software』の仲間として良いポジション、チームの顔というスタンスです。なんか出海が一番の苦労人になっているような……(笑)

───癖の強すぎるメンバーに囲まれていますからね(笑)。氷堂美智留の活躍するシーンはどうでしょう?

氷堂美智留

丸戸:劇場版の冒頭は、『icy tail』(美智留のバンドグループ)のライブから始まるんですよ。

───おおっ!オープニングから興奮させますね。最初に何を描くか、悩まれた末に「icy tail」を持ってきたんですか?

丸戸:そうですね。もう一つの案としては、原作10巻の海水浴から始めようかって案もありました。英梨々と詩羽が、「なにまた劇場版なの、最近劇場版アニメって多すぎない?」みたいな会話から始まるっていう。

───いつものメタから始まるノリで(笑)

丸戸:そうそう。でも最初に観客を引き込みたいって監督の意向もあって、ライブシーンか海水浴かって会議した結果、ライブから始まることになりました。
劇場版の挿入歌である美智留の歌が、いきなり冒頭に流れます。これは圧倒されると思いますよ。

───「冴えカノ」ソングとしては、劇場版の公開に先駆けて、冴えない彼女の育てかた ギャルゲーカバーソングコレクションも発売されました

丸戸:こちら、結構売れてるらしいです。初週で1万超えましたからね。

───音楽CDが売れないご時世に、その数字はすごいですね。「冴えカノ」人気を肌で感じます。次に波島伊織の活躍についてはいかがですか?

丸戸:劇場版の予告PVでも伊織がスーツ姿で登場しているので、原作をお読みの方にはピンと来られる方がいるかもしれません。原作の「とある」シーンで、倫也ではなく、伊織が出てくることになるんですよ。伊織は「あの人」の一番弟子なので、こっちの方がたしかに自然なんですよね。
あと伊織は、終盤の終盤でも大活躍します……何故こいつが活躍するのか(笑)

波島伊織

───伊織には根強いファンがいるんですか?

丸戸:僕が確認しているのは、ここにいる人だけです。

萩原:はい。本読みで、プロデューサーが伊織の出番をとにかく削りたがるんですよ。それを絶対に阻止するという使命感を持って、本読みに臨んでいました。

───そこまでですか!?

萩原:他に伊織を守る人がいないんですよ。だってあの終盤のシーン、カットしましょうって言われたら丸戸さん……。

丸戸:しょうがないっすねーって削ります。

萩原:でしょ!?そこを守り切りました。全国の伊織ファンの皆さん、楽しみにしていてください!


■劇場版で描くテーマは明白だったので
原作の取捨選択には悩まなかった

───劇場版でアニメ化する8巻以降、かなりのボリュームになりますよね

丸戸:でも8巻って『冴えカノ♭』(2期)に色々と入っていて、8巻部分もけっこうアニメで描いているんですよね。アニメと原作で何が違うかというと、恵と英梨々がすでに仲直りしていることなんです。プロデューサーの判断として、二人が仲違いしたままアニメ2期を終わらせるわけにはいかないっていう。

───それは確かに。原作から削るシーンに悩まれましたか?

丸戸:特には悩みませんでした。8巻以降で描きたい部分をフォーカスして、取るところは全部そのまま取って、取らないところは全く取らない。そういう作り方をしています。

───広く浅くではなく、先程お聞きした「倫也と恵の物語」に絞って描かれていると

丸戸:なので、当然ながら原作から色々と削っている部分があります。原作読者の皆さんにとっては「なんでここ削ってるんだよ」って部分、絶対にあります!間違いなく。それはもう仕方がないことですけども、僕が今回の映画で描きたかったのはこっちなんですということで、それ以外の描写については、原作を楽しんでいただければと思います。

───次に、アフレコに立ち会った時の様子を教えて下さい

丸戸:松岡くんがずっと集中していて、食事しないんですよ。食べると集中が切れちゃうから食べない、座らない。休憩時もずっと立ったままで練習していて、「誰か彼を休ませろ!倒れられても困る」って指令が飛ぶっていう(笑)本当にそれこそ、彼のエネルギーがなくなっちゃうのを心配するくらいでした。

───死力を尽くしたプロフェッショナルの仕事を感じます。女性陣に関してはいかがですか?

丸戸:女性陣には泣く演技がいくつか出てくるので、どの順番で収録するか、音響監督を含めて皆さんと相談していたことが印象的です。一度泣いてから普通の演技にはなかなか戻れませんけど、感情線としてはストーリーを追いたいですし。『冴えカノ』はキャラクターの感情が変わっていく部分が複雑なので、そこに気を遣いながらの収録でしたね。

───ハードなアフレコ収録が目に浮かぶようです

丸戸:昼12時にスタートして丸2日間、終了したのは夜中だったんですよ。最後はブースの中にビールを持ち込んでみんなで乾杯って軽く打ち上げしました。もう店も閉まってるんで、そのままタクシーを呼んで解散、みたいな(笑)


■アニメがなかったら、恵は最後までフラットなままだった?
原作後半の恵は、アニメの賜物

───アニメを通じて、原作への影響はありましたか?

丸戸:これはもう、非常にあります。というか恵のキャラクター造形全般、原作小説の後半の恵は、全てアニメの影響ですね。特にアニメ1期の3話。あのヒロイン然とした恵のことを、みんなこんなに好きなんだっていうのが意外な反響でした。

───坂道のシーンですね。恵がとんでもなく可愛く描かれていて、持っていかれました

「冴えない彼女の育てかた」3話

丸戸:こういうヒロインの恵を求めている人が、こんなにたくさんいるんだって反響をアニメで実感しました。それで恵のキャラクターをアニメの方へ、8巻以降ずっと寄せていったんです。だからアニメがなかったら、序盤のフラットな恵のまま最後まで行く、そういう『冴えカノ』もあったかもしれません。

───作品の方向性に影響するほど恵の人気が高まったんですね。もともとの原作人気は、英梨々や詩羽の方が上だったんですか?

丸戸:そうですね。1巻では英梨々が一番人気、次いで恵、詩羽。2巻が詩羽、英梨々、恵の順だったかな?それ以降アニメが始まる6巻くらいまではずっと詩羽が一番人気で、二番手が英梨々でした。

萩原:そこまでは、「さすが丸戸作品」と美少女ゲームのコアなユーザーはみんな思う展開ですね。

丸戸:丸戸作品、やっぱり正ヒロインはダメか、みたいな流れ(笑)

───(笑) それくらい加藤恵は目立たないヒロインだったのが、アニメでブレイクしました

丸戸:そうですね。だけどアニメ化するにあたって、「この作品は加藤恵の作品ですよね」ってことを、アニメのプロデューサーが始めにおっしゃったんです。詩羽が一番人気だった頃の原作を読んで、そう言い切ってきたんですよね。「なのでアニメでは、特に3話で恵をガッと上げる演出にしましょう」ってプロデューサーの意見が見事にハマったんで、「すげぇなこの人」って見る目の確かさに驚かされました。

───原作ファンも作者も盲点だった、加藤恵のポテンシャルを見抜いていた。プロデューサーの慧眼も大ヒットの一因だったんですね

丸戸:加藤恵はフラットなままがいいんじゃないかなって可能性も否定してなかったんですけど、「ああ、やっぱり恵はメインヒロインでいいんだ」って改めて感じました。

■ストーリーを進めるには必要のない部分にこそ、
「冴えカノ」らしさが詰まっている
倫也のオタクエピソード

───1期、2期、そして劇場版と続いたアニメ「冴えカノ」のお仕事を振り返ってみて、嬉しかったことはありますか?

丸戸:「俺の作品では、これがキモだ!」っていう細かいギャグとか小ネタ。そういう自分の持ち味をうまく残そうとしていただけたことです。小ネタとかギャグって、本来ストーリーを進める上では不要じゃないですか。でもそこを削るって判断されたら、「そこに俺の色があるんじゃねーか!なんで消そうとするんだよ」って思うんですよ。

───ストーリーを追うだけだったら誰でもできる。一見して無駄に思える枝葉にこそ、作者の個性やこだわりが詰まっているってことですよね?

丸戸:はい。どうしても削る必要はあるんですけど、そこで原作の色を消すような修正がなかった。世には原作テキストをコピペして、その中から小ネタだけを削っていくって最悪の作り方もある中、これは貴重なことですよ(笑) そういうことを僕が嫌がるって、現場の人たちが分かってくれている事がありがたかったです。それこそ色々と、例えば阿良々木くんネタとか、演出まで入れて活かしてくれましたし(笑)

───きっちり再現していて、さすがアニプレックスだなって大笑いしました

丸戸:ああいうところに付き合ってくれるのが本当に嬉しかったです。

───倫也の美少女ゲーム業界のネタ語りも、アニメでけっこう入っていておかしかったです

丸戸:ああいう、ストーリーを進める上では要らないものがあってこそ、『冴えカノ』なんじゃないのかなって。そこを生かしてくれたからこそ、ファンがついてくれた部分もあると思います。スタッフの方々が頑張ってくださって、本当に感謝しています。


■「冴えカノ」の業界ネタ、どこまで真実!?

───原作後半は、アニメ業界のメタなネタもたくさん入っていました

丸戸:原作前半は美少女ゲーム業界のリアリティなネタが主だったんですけど、TVアニメの仕事を通じて、アニメ業界のリアリティなネタが反映されていくっていう(笑)

───読者は勘ぐりますよ。これ、丸戸先生の実体験じゃないかな?って

丸戸:いくつかは体験してますよ? 制作側、ユーザー側双方で。

───やっぱり!(笑) あの手の業界ネタ、何割くらい本当なんでしょうか?

丸戸:いやー嘘は一つも述べておりませんっていう感じですけども。

───マスターアップ宣言をしておきながら、実はマスターアップしてなくて必死に作っていたとかいないとか

丸戸:初回版を出した時に音声がまだ全部入りきっていなかったり、後から演出強化パッチが出てきたり。

───パッチって言葉で納得してましたけど、発売して間もなくパッチが出るのは、マスターアップしてないとも言えますね(笑)

丸戸:ギガパッチとかありましたよねぇ。僕、パッチ当ててない状態でちゃんと発売日にプレイしましたからね。友達の家で「進まねえよ全然!あれ? これ演出おかしいだろ!なんでこのエンディングになった!?」とか大騒ぎして。「おい、パッチ出たぞ!」「マジか!落とせ落とせ!」って徹夜しながらプレイしてました。

───その様子が目に浮かぶようです

丸戸:ギガパッチを当てて、「よし最初からプレイするぞ!セーブポイントの途中からプレイしてもまたおかしくなるから、一度セーブをクリアにして、もう一度最初からやるぞ!」って、そんな時代でしたよ。

───リアルに倫也のオタクエピソードっぽい出来事じゃないですか

丸戸:だから別にフィクションを入れる理由はなくて、僕の中では真実です。もちろんゲーム会社の視点、ディレクターの視点に立つと、また違う意見もあるでしょうけれども。

───同じ事象でも、お互いの立場で物事の見え方が変わってくるということですね

丸戸:ユーザー側にはユーザー側の思いがあるわけじゃないですか。ライター視点、作家視点で見ると真実ですということで。

■ゲームのシナリオライターにとって
アニメの脚本はやりやすい

───小説とアニメ脚本の執筆は別物なのでしょうか?

丸戸:もともとゲームの脚本出身の僕にとっては、小説よりもアニメの方が違和感を感じません。小説は、ゲームやアニメとは違い地の文の情景描写の重要性が高いですから。『冴えカノ』1巻でもご指摘をいただいて今でもそうなんですけど、部屋には机があって、この道はこう曲がっていて、キャラクターがどんな服を着て、どんな髪型で、といった描写を僕は省略しがちなんですよね。

───確かに、美少女ゲームには立ち絵や背景が画面に表示されていますから、書く必要がありません

丸戸:だから僕は小説でも、立ち絵と背景をある程度想定して書いちゃってます。というわけで『冴えカノ』は文芸からは程遠い、かなりキャラクター小説に近い作りになっています。アニメもゲーム同様に、画面にキャラクターも背景もTVに映ってます。だからアニメの脚本には違和感がなかったんですね。

───ゲームのシナリオと小説の書き方が違うっていうのは、詩羽先輩が倫也にダメ出しされたエピソードを思い出します

丸戸:詩羽先輩とは逆パターンですね。小説からゲームのシナリオへ転向した場合とは逆の事が起こりました。

「冴えない彼女の育てかた♭」第4話
TVアニメ2期シリーズ「冴えない彼女の育てかた♭」第4話
倫也にダメ出しされる詩羽先輩

───アニメの方がむしろ丸戸先生の原点に近かったんですね

丸戸:ただアニメで厳しいのは、尺ですね。ゲームはキロバイトあたり○○円といった単価契約じゃなければ、たくさん書いても大丈夫なんですよ。グロスで1本○○円って契約だと、尺を気にする必要はありません。

───書こうと思えば文字数の制限を気にする必要はないと

丸戸:その代わり、長く書いても追加料金は発生しません。それを納得ずくで書くのであれば、長くなっても全然いいんですよね。

萩原:ラノベでもたまに、たくさん書いてきて紙に入りきらなくて改行を削っていった結果、見開きページがほぼ全て文字で埋まってる、昔の海外翻訳小説みたいな事が……なんでラノベでこんなことになってんの、みたいな(笑)

丸戸:でもアニメは改行を減らそうが、放送枠を超過することは出来ませんので(笑)、 アニメ脚本で苦労したのはそこだけですね。

───オーディオコメンタリーで「1期はシナリオ6校くらいまでかかった」とおっしゃっていたのはそこですか?

丸戸:そうですね。『冴えカノ』の前にアニメ『WHITE ALBUM2』の脚本を手掛けたんですが、あちらより『冴えカノ』の方が更に会話が多めなので、そこがかなり苦労しました。

■「ヒロインが可愛い」という事実は、
どの世代から見ても揺るぎない

───2012年からスタートした「冴えカノ」も長いシリーズになりました。その中で変化したことを教えて下さい。アニメが始まってからは若いファンも増えたとのことですが

丸戸:まさか僕の作品を中学生が読む日がこようとは……『冴えカノ』が始まった当時はネタが18禁、いや18歳ですら通じないだろう、みたいなことを言われていました。だから中学生、高校生に通用するんだ、本当にすごいなって感慨深いです。ほぼ深崎(暮人)さんの絵だろうな。

萩原:自分でオチをつけないでください(笑)

丸戸:「あ、若い子も読んでくれるんだ」っていうのはすごく嬉しいです。そのことで、「ヒロインが可愛い」って価値観は世代を問わないってことにも気付かされました。物語が面白いかどうかは、年代によって癖があるかもしれません。でも「本当にヒロインが可愛い」という事実は、どの世代から見ても揺るぎない。『冴えカノ』は「ヒロインが可愛いだけの作品じゃねえか」ってよく言われるんですけど、それって褒め言葉なのかなって。

───むしろ、どの世代にも通用する武器になると感じます

丸戸:そういう意味で『冴えカノ』で幅広い層に、汎用的に通じる作品が作れたんじゃないのかなって感触があります。

─── 一方で、一部のマニアだけに深く刺さる作品を作りたいってお考えはありますか?

丸戸:一作でどっちもできるのが最強なんでしょうけど、そういう作品は奇跡みたいなものですよね。汎用的に広く繋がる作品と、狭い層に思いっきり深く当たる作品。別々の作品で両方作れれば最強かなって、そんな風に思えるようになりました。

───これから劇場版を見に行く皆さんに、メッセージをいただければと思います

丸戸:劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」には、数々の入場特典が用意されているとのことなので、入場特典のために繰り返し何回も行っていただければ(笑) 円盤待ちというよりも、本当に一回は映画館に足を運んでいただきたいと思うんですよ。普通の映画にはない映画体験ができますので。

───普通じゃない映画体験!?

萩原:「この映像、大画面で観ていいんだろうか」って背徳感がこみ上げてくるんじゃないでしょうか。本来なら部屋で膝を抱えて一人で観るものを、大画面で見る背徳感はすごいと思います。

丸戸:カップルで行った時の気まずさたるや……男二人で行ってもなんかね、もしかして嫌な雰囲気になるかも(笑)

萩原:男二人で行く場合、席を離した方がいいです。この映画を見ている時の顔、知人に絶対に見られたくないです。

丸戸:僕はずっと言ってますけど、劇場版『冴えカノ』は一人で映画館に行った方がいいんじゃないかなって。あとは松岡さんのお薦めに従い、テニスの軟球ボールとかハンドグリップとか、何か握るものをご用意の上で観に行くのもいいかと(笑)

 

 

▲以下、本編に繋がる重大なネタバレが含まれています。ご承知いただける方のみ、お読みください▲

■気になる英梨々と詩羽先輩のifルート!?

───最後に一点だけお訊きしたいことがあります。倫也の恋愛争奪戦について。英梨々と詩羽先輩に勝ち目があるとしたら、どこが分岐になっていたと思われますか?

詩羽先輩

丸戸:詩羽先輩は1巻の始めだから、『恋するメトロノーム』ルートですよね。もしも恵に出会わなければっていう、普通に考えれば、あれが答えです。

コミックス「冴えない彼女の育てかた 恋するメトロノーム」(ビッグガンガンコミックス)全10巻。丸戸史明書き下ろし、武者サブ作画による、霞ヶ丘詩羽をメインヒロインに据えたスピンオフ作品。

丸戸:英梨々はどうなんでしょうね…6巻の時にもしかしたらっていう部分もあったかもしれないんですけども。

───アニメ2期では「#6 雪に埋もれたマスターアップ」、英梨々が病気の時ですね

アニメ2期「#6 雪に埋もれたマスターアップ」

萩原:6巻、ワンチャンありましたね。二人で甘えているあのタイミングで、行こうとすれば行けていた。

丸戸:ただ後ろめたさがあるのがちょっと不穏なんですけど。でもあの時は英梨々にかなり傾いてたと思いますよ。

萩原:全てを捨てて那須高原の別荘に向かったわけですから。あの時だけ二人は小学校時代に戻ったんですよ。あの一瞬だけ関係性が戻ったから、もう一回、小学校のやり直しをするチャンスが多分あったんですけど…そうじゃなかったら小学校まで戻るしかないんじゃないかな。

丸戸:高校入学までに仲直りしておけば、あるいは。

───高校までこじらせてしまったのが障壁になっていますか

丸戸:それはもう、相当な障壁になってます。

萩原:やっぱり素直になるのが大事ですよね。

───なるほど。貴重なお話の数々、本日はありがとうございました!

取材・文:かーずSP

劇場アニメ「冴えない彼女の育てかた Fine」公式サイト / Twitter



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【関連リンク】
劇場アニメ「冴えない彼女の育てかた Fine」公式サイト / Twitter
原作「冴えない彼女の育てかた」作品情報
丸戸史明氏が所属:企画屋web
イラスト:深崎暮人氏のホームページ「Cradle」 / Twitter
丸戸史明 - Wikipedia / ニコニコ大百科
深崎暮人 - Wikipedia
冴えない彼女の育てかた - Wikipedia


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