野田正彰さん紹介(3) なぜ怒らないのか
7月20日(木)夕方、野田正彰さんの講演会を「NPO法人 土といのち」と「平和を考える市民セミナー」共催で行ないます。次回の打ち合わせは、5月11日夕方です。準備から参加されたい方は、どうぞお越しください。
野田正彰さんは、1944年高知市の生まれ。精神科医で、日本の現代社会のかかえる問題の根っこを、文化的側面、精神病理学的側面から鋭く分析。高知には野田さんファンが多いですね。
今回は、数多くの著作の中から『なぜ怒らないのか』と『災害救援』とを重ねて、ご紹介します。
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自然災害が起こったとき、原因は常ならぬ自然現象であるからと(1)仕方ないとあきらめる、(2)専門分野ごとにもっともなことを提案する、(3)人間のおごりに対する天の怒りと教訓をたれ納得する、こんな態度でいいのか。・・・すべて異常な自然現象が原因なら、老人がこんなにも多く死んでいくはずがないではないか。土砂崩れになりやすい所、浸水しやすい土地、壊れやすい家に住んでいたと考えるべきでないのか。どうして怒らないのだろう、樹木を伐り、山を荒らし、山野の貯水力をなくしてきた政府や企業を。崩れやすい所、地盤の弱い所に家を建てさせてきた行政を。真新しい作業服と長靴で現地を視察する政治家をなぜ怒らないのか。「金一封」で民の不幸を愁える権力者をありがたがっていた時代と、どれだけ違っているのか。なぜこんな政治を許しているのか、どうして私たちは怒らないのだろうか。
阪神大震災でも、天災を人災に変えた都市建設、産業、行政に対する怒りの表明はきわめて少なかった。当然あってしかるべき怒りを、天命論にそらしていくのが日本的なのであろう。だが、怒るべきときにきちっと怒るのは重要なことだ。その怒りが、持続する検証によってするどい批判であり続けてほしい。
首藤信彦・東海大学教授は「行政側は、過去に被害を受けたり、消防車が1台も入れない地区はどこか、ちゃんと知っている。それなのに住民に不安を与え、地価が下がると懸念して、知らせていない。住民はどこに危険があるかわからないから危機管理ができない。それを避けるには、被災者が政治や行政に徹底的に責任を取らせること。国や自治体の役人を相手取って損害賠償請求訴訟を起こすといい。・・・巨額の賠償金を払うくらいなら、事前対策に財源と人材をつぎこんだ方がいいということになる」と主張している。しかし、残念ながら日本の司法はそうなっていない。裁判官に損害賠償請求訴訟を起こしたいほどに、行政側の立場に立っている。
大災害のたびに、政府の無能と国民の政治を育てる力の欠如をさらけだし、にもかかわらず黙々と不幸に耐える人々の姿に感心される社会。建物の復興はすばやいが、人と人との関係は貧しい社会。また、不幸のたびに自分の不運を嘆き、人間に不信をいだいて後の人生を生きていく多くの人々が残される社会。こんな社会を、健康な社会と言えるだろうか。豊かな社会と呼べるだろうか。 (土といのち 6月号掲載)
引用文献:『なぜ怒らないのか』みすず書房 2005、『災害救援』岩波新書 1995
NPO法人「土といのち」URL: http://www15.ocn.ne.jp/~tuchi/index.html