2006年07月17日

茨高校演劇部。第1話

 綺麗な薔薇には刺があるなんて誰が言ったか知らないけども、綺麗じゃない薔薇にだってもちろん刺があって、一文字足して茨にしてしまうと、これはもう刺だらけだ。綺麗な茨ならどうだ?やっぱり刺だらけか。だよな。刺あってこその茨なのだ。刺のない茨なんて、謎のないミステリなのだ。そんなのミステリじゃないよな?いや、ある意味ミステリ?どうでもいいけど学校はまだですか?そう、まだなのね。ふん。

 くだらん自問自答をしながら、くそ長〜いバラ坂をとぼとぼしくしく登り歩き、今日も学校に向かう。朝から体力を奪われるこの坂道登校をなんとか楽に登りきる手段はないかと考え、何か余計な事にでも思いを馳せていれば少しは気が紛れるかもと期待しているのだが、どうしてなかなかうまくいかない。妄想なんかいいかもしれない。けど僕の場合は、持病の過剰妄想癖(なんじゃそれ)が出そうで恐い。
 「ふう、ふぅ」
 自分の進路を間違えた。間違いなく間違えた。おっ、何かいいね、間違いなく間違えたって。流行るかも。
 「流行んねぇよ…」
 自分で言うのもあれですが、独り言ってやあね。まだ入学して1ヵ月も経っていないのに、これではこの先が思いやられすぎる。何か楽しいことを考えよう。楽しいこと…う〜ん、高校生になってこれといった楽しみがまだ全然ない。となると、自然と考えは楽しかった過去を思い出す形になっていき、僕の場合は、最近別れた元カノとの思い出ばかりフラッシュバックしてしまい、現実に泣けてくる。
 「ふえ〜ん、いづみちゃ〜ん。かむばぁ〜っく」
 あぁ、マジで戻ってきてくれないかな。I'll be backとかなんとか言ってさ、おぬしゃターミネーターかい!みたいな突っ込みしたいよ〜。
 「………」。自分でも自分が何を考えているんだろうと疑問に思うことがある。ってか、いづみちゃん絶対そんなこと言わないし言えないし。突っ込み安易だし。また独り言だし。
 「はぁぁぁ」
 もういちど深々とうんざり溜息を吐き出し、僕は坂道に集中することにした。


 今、僕が歩いているのはバラ坂と名付けられた頂上まで一本道で一直線な坂道。僕はこのバラ坂が大嫌い。坂のふもとから道添いに薔薇がいっぱい咲いていて、最初は見ていてそれは優雅だが、上に登るにつれ薔薇が少なくなり、かわりに茨が覆い繁り、いつのまにかジャングルに迷い込んだような道になって気味が悪い。ながにょろ〜としたやつがしゃ〜言いながら襲ってくるんじゃないかと気が気でない。まだ地面がアスファルトだから辛うじて正気を保てるが、もしこれで地面が土なら…考えるだけで滅入る。
 なぜそんな坂道を歩いているのかというと、そこに坂があるから。ではなく、先程言ったとおり学校に通う為であって、ではなぜそんな場所にある学校に通うのかというと、まるっきり僕の意志だったとは言えない。いや、僕の意志なんだけどさ、別にこんなとこ来たくて来た訳…あるんだけどそうじゃなくてさ、あぁもうめんどい!つまり、最初は来たかったんだけどね、今じゃ後悔してるんだ。そりゃあ、もう憂欝で溜息で退屈で消失で暴走で動揺で陰謀で憤慨。意味わかる人、ぜひお友達になりましょう。

 先に説明しておこう。バラ坂には二つの高校がある。坂のふもとに構えるは薔薇高校。その名に恥じぬ立派な嬢様学園だ…と聞いている。実際登校中に横を通る時に見てその噂が案外間違っていない事を知る。そして、長い長い坂の頂上にそびえ建つのは我らが茨高校である。名前と場所以外は普通な学校だと思う。これは通ってる本人が言うんだから間違いない。
 ではなぜそんな名前と場所が変な学校に通う羽目…なんて言うと失礼だから、通う事になったかを説明しよう。
 振り返るのは中三の冬休み。あの時の僕はまだこの上なく幸せだった………



 「いづみちゃん」「なぁに」「どこに進学するか決めた?」「ぅ〜ぅん」「それどっちなの」「ぅ〜ぅん」「そろそろ決めないとやばくないかい」「みっきぃは決めたの?」「僕はいづみちゃんと同じ所受けるよ」「ふ〜ん。ぅざぃ」「え」「ううん、なんでもない。実はもう決めてるんだ」「なぁんだ決まってるんじゃん。どこ?」「ぅ、ぅん」「どこ」「みっきぃ怒らないでね」「怒る?なんで」「あたしね、薔薇高受けようと思うんだ」「ばらこう」「うん。薔薇高校」「あそこって確かさ」「うん」「女子校だよね」「うん」「どうして」「なんでって、行きたい所に行っちゃだめなの?」「だめじゃないけど、僕はどうするのさ」「知らない」「知らないってひどくない?」「みっきぃが勝手にあたしと同じ所受けるって言ったんじゃん。あたしは知らないよ」「そこをなんとか」「なにそれ意味わかんな〜い」「いばら」「?」「確か近くに茨高校があったよね?」「ない」「いや、あるんだよ」「ふ〜ん」「そこ共学なんだ」「それで?」「一緒にさ」「いや」「お願い」「絶対い
やっ」「どしても?」「どしても」「そこをなんとか」「しつこい」「どすこい」「………」「ごめんなさい」「………」「わかった、諦めるよ」「うん」「じゃあ僕が茨でいづみちゃんが薔薇」「うん」「途中まで一緒に行こうね」「うん」「いづみちゃん」「うん?」「ちゅ〜」「やめて、そんな気分じゃないの」「はい」「今日はもう帰るね」「うん。気を付けて」「ありがと、ごめんね」「ううん。あぁそうだ、いづみちゃん」「なぁに」「初詣どうしよっか」「ごめん、正月は実家帰るんだ」「そっか」「じゃあね」「うん、ばいばい」



 ………ような、幸せじゃなかったような。
 結局、生まれて初めて過ごした彼女がいる冬休みは、クリスマスも正月もいつもとなんら変わりがなく、いつもなら何も感じないのに、なぜかさみしさを感じた。
 年が明けて、受験勉強だなんだと一緒にいる機会も少なくなり、運命の受験を迎えた。僕は、担任や両親の反対を押し切って、茨高校を受験したのだ。もともとそれなりに悪くない頭脳を持っていた僕、超安全圏、危なげなく合格することが出来た。面接の志望理由に少し戸惑ったが、そこは得意の口八丁で切り抜けた。
 ただ、いづみちゃんが薔薇高校を落ちたのはびっくりした。いづみちゃん頭そんなによくなかったもんなぁ。僕が勉強教えるのを頑なに拒んだから余裕だと思ってたのに。今考えると何で薔薇高受けたんだろう?結局彼女は僕の知らない間に受験していた私立高校(共学)に進学した。これは後で誰かから聞いた話だが、彼女はもともとそちらの私立高校が第一志望だったらしい。
 これってどういうことだろうね?

 いまさら辞めるとか絶対言えない状況になっていたので、僕は茨高校に入学する羽目…事になった。いづみちゃんが進学した高校とは、電車も違うし方向も逆。しかも同中で茨高校に進学したのは僕だけらしい。僕は独りぼっちになってしまった。
 それでも、彼女がいることを励みに頑張っていこうと健気に考えていた矢先にいづみちゃんから別れを告げられた。メールで。

 『みっきぃ。私たちもう終わりにしよ。高校違う所になっちゃったし、会えなくなって自然消滅みたいになっちゃうの嫌だから。お互い新しい恋人ができるといいね。みっきぃの高校にかっこいい男の子がいたら紹介してね。それじゃ』

 これっていったいどういうことだろうね?


 と、淋しい回想の間にようやく頂上まで登ることが出来た。学校到着。


 近年、少子化の煽りを受け、茨高校の新入生つまり僕の同級生は、僕を含め200人いない。でも結構いるじゃないか。と思うが女子が3〜4割しかいない。これは近くに女子校があるのと、その女子校の生徒と少しでもお近付きになりたい馬鹿な男子がなせる技(?)なのかもしれない。僕は日本全国の親御さんに言いたい。「女子産め。女子を」

 さて、僕はこんなに女好きだったか?まあ、年相応の好奇心を兼ね備えた普通の思春期高校生だと自分では自負しているつもりだ。もちろん僕の夢は彼女と楽しいハイスクールライフを送ることに変わりはないので、当面の目標は彼女を作ることだ。頑張るぞ。



 しかし、この目標がクリアされるのはすんげぇ後の事。しかししかし、女の子と楽しいハイスクールライフを送るのは意外に意外だった。意外過ぎて逆に勘弁してほしい位だった。
 まずは、その楽しい時を過ごす相手となる彼女達、茨高校演劇部のみなさまとの出会いについて語ろう。


続。





(あとがき)なのかな?
タイトルが稲中卓球部とか桜蘭高校ホスト部とかそんな感じになってしまったのは偶然(んなわけあるかっ)。まぁ意識したわけではないと言っておきましょう。
また、この作品はもちろんフィクション(略して、もちフィク)なので、現実の何かと一致する何かが出てきたとしてもそれは全然無関係です。
またまた、不定期連載の為、第2話がいつになるかわかりません。なるたけ早くやります。
またまたまた、この作品は僕のオリジナルですが、読んでる本に結構影響されちゃってることもあるんで、そこらへんは勘弁してください。どこらへんをどう勘弁するのかだって?知らん。そこらへん。
最後に。資生堂ツバキオイルのCMを見てエウ゛ァを連想するのは僕と親友だけ?
だんちょ〜でした。


gekidan_takeout at 05:06│Comments(1)管理人のサボリ度 

この記事へのコメント

1. Posted by 麻   2006年08月17日 21:09
4 このサイトのURLとっておいてよかった。
おもしろそうですね。
茨高校演劇部。<略してイバコウ?
続きが楽しみです。
まだまだ暑いのでお体に気をつけてください。

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