もはや,悲願達成と言って良い。
この秋田から出たことに,意味がある。
十田撓子さんが「H氏賞」を受賞された
おめでとうございます!


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東北人は一段下に置かれていた。
人買いが交渉しては,娘,農家の次男三男四男をミヤコに連れて行き,
それはそれは大切にされたそうだ,
遊女として下女として,寝ずに働く牛馬として。

「東北人は,無口で我慢強く,辛抱強い」

そう褒め殺しされながら。

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青森県ー

太宰治先生の「生まれてすみません」
吉幾三氏の,「オラは田舎のプレスリー」
など,自虐でアートする印象が強い。
受け取る側が
「あれれ,どうしようどうしよう?」
と戸惑っている内に,してやったりの顔を見せ,すっと消える。
高橋竹山氏の撥裁きから雪の中に燃える炎を我々は見て,
棟方志功氏の版画の中に,異なる星に棲む「ニンゲン」を見る。

-つまりは,江戸の都に対し,道化のゲリラとして生息し,さんざやらかして手玉に取る,
工作員なのだ。

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秋田県はどうだろう?
こんなにも寡黙な人々。
最初は驚いた。

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精神分析的精神療法をしたところで,痛感させられる。

東京,神奈川,仙台は言葉が多く,しばしばまくしたてられた。
「要らない言葉を使いすぎ」
「一生懸命喋るのに,中身が変わらないとは,多分,触れたくない何かがあるのだろう」
くらいだった。
「自分が変わりたい」
と切に願う人々であった。
そのために行う私の介入は,とても少なくすんだ。

それがこの地ー秋田
秋田では,まずもって、全く話さない。
無口のまんま,一時間過ごすことを続けた剛の者もいた。
あんまり話さないので,こちらが「自由連想」してしまう。あら?
この沈黙には対処法はあるものの,だからと言って,限界は,ある。

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秋田には,土方巽氏の舞踏がある。
また,楽器演奏での大物もいる。

言語表現だけが,無かった。
感情は数少なく平坦にして,表現をこらえにこらえて,その葛藤を酔いの中に,消してしまう。

次女が幼稚園に入ったとき,言葉数が少ないことを家内が心配に想い,幼稚園教諭の先生に相談したことがある。
その答え。

「○○ちゃんの『言葉』は絞って絞って絞り出した一言なんです」

と。

早くも転勤慣れしたおしゃべりの長女と,二歳下で家族の関心を一手に集める末娘の間にいる。
そんな次女の選んだ方法が。段ボール箱での作家活動(?)なのであった。
もくもくと幼稚園で創作に没頭する。
友達に話しかけるとそれなりに元気に応えるが,メインはあくまで一日一作品を作ること,であった。

ぺらぺら長女ともくもく次女。
遠目で見ながら,ああ,対照的だなぁ,と遠目で見ていた。
あいのこがいないか?

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詩人とは?
よく分らんが個人的には

「何かを感じてしまうと,言葉で表現していないと,死に至る人」

と思う。

詩人やりながら飲食店経営とか,そういう人もいるのであろうが,そういったツキや能力とは別物。

散文,歌の歌詞みたい,語彙が足らなすぎ,固有名詞は原則禁じ手,風情が陳腐・・・
医者になってから,買った詩集。ゼロ! 

あ,長女にねだられて石垣りん氏の詩集があったか。

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不毛の地,秋田からH氏賞がまさか出るとは思わなかった。
心地よくぐにゃりと,ドラゴンスクリューかけられた感じ。

十田さん,本当におめでとうございます。
不眠になったら,いおりクリニックに是非ともお出で下さい。
必要とあらば,往診も承ります。


無断引用を禁じます。某先生,先生のパソコンで「H氏賞」と入れると「H,し,しよう!」って変換されるな。
十田さんの作品を拝読するのが,楽しみ,ワクワクしている。