持って生まれた気質は,けっして「陽」では無い。
両親が高齢であったため,「死」に対しては幼い頃からよく話して聞かされた。
今の家庭の平和はいつ崩れるか分からず,親が亡くなったら自力で生きていかなければならない。
家に金があるわけでは無かった。有体に言って潰れかけた雑貨屋である。
自分が頑張るより他に道は無い。
そう思い詰めていたガキだった。
両親が高齢であったため,「死」に対しては幼い頃からよく話して聞かされた。
今の家庭の平和はいつ崩れるか分からず,親が亡くなったら自力で生きていかなければならない。
家に金があるわけでは無かった。有体に言って潰れかけた雑貨屋である。
自分が頑張るより他に道は無い。
そう思い詰めていたガキだった。
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だからだろうか,高校三年の受験勉強の隙間に聴いたアリス解散コンサートで,ラジオから聴こえる「砂の道」に私は,参考書に囲まれつつ涙した。
「歩いても 歩いても 歩いても 振り向かず 振り向かず 振り向かず / それしか出来ない私の生き様」
高校時代にアホな脳みそに嘆きながら,それでも歩き続ける意を固めていた。
それが私の人生なのだと思って疑わなかった。
また,自分が器用者では無いことを早くも痛感していた私は,ただただ愚直に歩を進めるしかないのだと思っていた。
「歩いても 歩いても 歩いても 振り向かず 振り向かず 振り向かず / それしか出来ない私の生き様」
高校時代にアホな脳みそに嘆きながら,それでも歩き続ける意を固めていた。
それが私の人生なのだと思って疑わなかった。
また,自分が器用者では無いことを早くも痛感していた私は,ただただ愚直に歩を進めるしかないのだと思っていた。
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今になっても,この歌をふと思い出す。
ときに口ずさむ。
初めて聴いてから35年以上も経ち,それでも私の心の歌であり続けているのは,思えば不思議なことだ。
15の頃の私が予想した通りの半生であったとしても。
「負けない 負けない 誰にも負けない / あなたの匂いが私にはある」
生きる,生き抜く,ということは,綺麗ごとでは無い。
むしろ正反対であり,泥の中を這いつくばって様々な困難をなんとか乗り越える,というのが本当の所だろう。
「負けない」
という言葉は,一般受けする歌謡曲用の綺麗語では無いが,辛さの中を生き抜く人間の心情に最も近い。
そして,
「あなたの匂い」
という語句でこの歌が閉められる。
思い出,写真,言葉,まなざし,あるいは贈り物-では無く「匂い」が「私にはある」と。
「匂い」-それは最も深く人間の中に染み込むものだ。
「あなた」を言葉抜き,映像抜き,で感じさせるものだ,何よりもはっきりと。
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演歌が似合い,また必要とする齢になったが,何せニューミュージック全盛期で演歌を否定してきた世代である。
アリスの谷村新司氏がまだ20代の頃作ったこの作品が,「マイ・演歌」となっている。
無断引用を禁じます。某先生,この歌は,弾き語りするもんじゃないな,聴くものだな,私にとって。