令和2年7月2日の原発ゼロの会が実施したヒアリングの中で、復興庁の「福島再生加速化交付金」のうち農林水産省が交付決定を行う「木質バイオマス関連施設整備事業」は、燃料に「放射性物質の付着した樹皮及びキノコ原木等の木質系廃棄物等」を利用することを推進する事業であることを確認しました。
そこで、以下の要請理由(*)と労働環境および周辺住民環境保全等の観点から交付金事業中止を求める要請書を取りまとめ、令和2年7月30日、復興大臣および農林水産大臣宛に要旨書を提出、横山信一復興副大臣および林野庁長官に申し入れを行いましたので、ご報告いたします。
今回の要請には近藤昭一衆議院議員(共同代表)、初鹿明博衆議院議員、真山勇一参議院議員、笠井亮衆議院議員、嘉田由紀子参議院議員、阿部知子衆議院議員(事務局長)が参加しました。

⇒要請文はこちらをご覧ください。

*交付金事業の中止要請理由
  1. 樹皮やキノコ原木は被災12市町村に限らず、汚染が激しく、焼却の結果、高濃度な焼却灰が生じる可能性が高い。ところが、放射能汚染物質対処特措法で厳重に管理すべき8000ベクレル/kgを超えても、事業者が申請しない限りは、国の管理責任は生じず、健康被害や環境汚染が起きても汚染者責任もあいまいとなる。
  2. 当交付金の採択基準では、「発電燃料とする未利用間伐材等の地域材及びその他の燃料について種類ごとの使用量及び調達方法」を明らかにするよう求めている。ところが、既にこの交付金で木質バイオマス発電所を建設中の田村市における事業では、燃料調達計画や事業計画が、開示請求によっても黒塗りでしか提供されなかった報告がある。採択基準を充足していないにもかかわらず、交付決定が取り消されていないなど、交付金の運用がズサンであることが明らかである。
  3. 同採択基準で示された「地域材」の範囲が不明確である。飯舘村は現在、交付金活用を前提に、実施主体募集要領で、「放射性物質の影響を受けている材木等やバーク(樹皮等)」が「福島県内で年間約10万トン発生」しているとし、全県から汚染樹皮を収集しようとしている。結果的に、事実上、放射能汚染された森林の焼却処分を木質バイオマス発電の名で行うことになり、問題がある。
    なお、理由の3番目については、7月28日に飯舘村が事業者を選定し、実施主体が公表されましたが、選定された「飯舘バイオパートナーズ株式会社」は、汚染者である「東京電力ホールディングス」、「東京パワーテクノロジー」、および「熊谷組」、「神鋼環境ソリューション」の4社が出資し、6月25日に設立したばかりの事業体であることがわかりました(https://www.tepco.co.jp/press/release/2020/1547330_8710.html )。
  4. 当交付金の趣旨には、処理後は「未利用間伐材等を活用してエネルギーを持続的かつ安定的に供給する仕組みを構築」し、「林業の活性化や雇用の確保等を図る」とある。しかし、森林総研などの研究で、森林内の放射性物質の8~9割は土壌表層5cm以内に残留し、循環するという結果が示されており、豪雨等による流出が懸念される。また、林業者が被ばく防護を必要とする環境で林業活性化や森林再生を計画することは非倫理的である。
  5. 木質バイオマス発電は、FIT法により「環境への負荷の低減を図る」目的で推進されているが、集めて焼却を行っても放射能は低減しないどころか、濃縮されて環境への負荷は上がる。FIT法の趣旨に反する木質バイオマス発電に公金を投じるべきではない。

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【参考】要請活動における議事メモ

1. 横山復興副大臣への要請活動
近藤共同代表:福島の復興を願っているが、大きな懸念を持つ。
阿部事務局長:(要請内容5点を説明後、)要請書をまとめた後でわかったが、飯舘村が選定した事業者の株主4社のうち2社が、汚染原因者である東電だった件について、6月25日に設立されたばかりで実績がない。
副大臣:発電は地域再生を目指すもの。関係省庁と連絡し、必要に応じて適切に対応する。
笠井:事業の中止を求める。森林が放射性物質をどの程度吸い上げているのか実態調査をしてもらいたい。
真山:またここで風評被害を起こしかねない。東電がこの事業を受けるとなるとコロナで電通が事業を再委託されたみたいに、6月25日ににわか作りの会社が選定されたとなると不信を招く。
初鹿:バイオマス発電で間伐材利用はいいが汚染されていない木が前提だ。燃やせば灰は高濃度になる。環境負荷が大きい。この事業は適切ではない。選定過程があまりにも不透明・6月25日にできた会社が、7月21日に一番高い得点を取り、落札した。誰が選定したのかも公表されていない。違和感がある。立ち止まって考えるべきだ。

副大臣:要請内容について回答する(要請内容:青要請への回答:赤)。
1. 樹皮やキノコ原木は被災12市町村に限らず、汚染が激しく、焼却の結果、高濃度な焼却灰が生じる可能性が高い。ところが、放射能汚染物質対処特措法で厳重に管理すべき8000ベクレル/kgを超えても、事業者が申請しない限りは、国の管理責任は生じず、健康被害や環境汚染が起きても汚染者責任もあいまいとなる。
⇒8千ベクレルについて環境省令で調査をすべきものがある。含めていないものも8千ベクレル以上は指定廃棄物として国が管理。

2. 当交付金の採択基準では、「発電燃料とする未利用間伐材等の地域材及びその他の燃料について種類ごとの使用量及び調達方法」を明らかにするよう求めている。ところが、既にこの交付金で木質バイオマス発電所を建設中の田村市における事業では、燃料調達計画や事業計画が、開示請求によっても黒塗りでしか提供されなかった報告がある。採択基準を充足していないにもかかわらず、交付決定が取り消されていないなど、交付金の運用がズサンであることが明らかである。
3. 同採択基準で示された「地域材」の範囲が不明確である。飯舘村は現在、交付金活用を前提に、実施主体募集要領で、「放射性物質の影響を受けている材木等やバーク(樹皮等)」が「福島県内で年間約10万トン発生」しているとし、全県から汚染樹皮を収集しようとしている。結果的に、事実上、放射能汚染された森林の焼却処分を木質バイオマス発電の名で行うことになり、問題がある。

⇒採択基準と交付金の交付決定は農水省が行う

4. 当交付金の趣旨には、処理後は「未利用間伐材等を活用してエネルギーを持続的かつ安定的に供給する仕組みを構築」し、「林業の活性化や雇用の確保等を図る」とある。しかし、森林総研などの研究で、森林内の放射性物質の8~9割は土壌表層5cm以内に残留し、循環するという結果が示されており、豪雨等による流出が懸念される。また、林業者が被ばく防護を必要とする環境で林業活性化や森林再生を計画することは非倫理的である。
⇒林野庁調査で土壌に9割があることは承知。間伐材利用は林業振興に資する。
福島県は空間線量0.5マイクロシーベルト以上、樹皮6400ベクレル/kgを超えている場合は伐採しないと。8千ベクレルを超えるものは国が管理する。


5. 木質バイオマス発電は、FIT法により「環境への負荷の低減を図る」目的で推進されているが、集めて焼却を行っても放射能は低減しないどころか、濃縮されて環境への負荷は上がる。FIT法の趣旨に反する木質バイオマス発電に公金を投じるべきではない。
⇒(5とプラス6点目について)交付金前提と報道では読んでいるが、飯舘村から相談を受けていないので申し上げられることはない。

阿部:特措法は民主党政権時代に作ったが問題は、8千ベクレルを超えてしまっても事業者が申請しない限り分からないこと。2番に関していえば、資料が公表されない。住民が開示請求したら黒塗りだった。情報を開示していただきたい。不安と風評被害の原因となる。コメを全量測って安心を得たように、どの程度のものが焼却されるのか(燃料調達計画や事業計画)は明らかにされるべきだ。


2.林野庁長官への要請活動
長官:まだ申請がきておらず、報道ベースでしか知らない。
阿部:職員にヒアリングしてしたが、申請された段階で検討するということではあった。福島は森の国。ところが汚染され苦しんでいる。森林は除染されず放射能は燃やしても消えない。応援はしたいが、人体環境に影響を及ぼさないでもらいたい。FIT法で環境低減を図るとしていることに反する。
笠井:森林全体で放射能を吸い上げているか、主体的に調査をして欲しい。
長官:森林総研が定点的に調査し、公開している。その結果、9割が土壌に吸着していると。樹体の中に入り、循環してる調査はできている。言葉は悪いが10年で何が言えるのか、これからだが、これまでの知見だと吸着しやすい粘土で、樹体に蓄積される状況ではない。10年ほったらかし。線量がさがってきたので、作業道を入れることにより将来線量が自然減衰してさがっていけば、下がった暁には宝の山になる。
阿部:樹皮は高濃度。今回は樹皮をもやすという計画。作業する人の被ばくの危険性がある。どの程度のものを燃やすのかは住民が開示請求しても黒塗り。田村市はもう交付決定をしているが、明らかにされなければならない。
長官:田村市の事業、計画書を黒塗りにしているというのはどういうことなのか、分からない。企業としての判断なのか。仰られた通り、透明性は必要。飯舘村の事業者については、報道されていたのを見て「へっ」と思った。
初鹿:6月25日に設立。7月21日に選定委員会があり、トップで落札、2番目と1.5番目も差がある4社のうち2社が東電で、事業を取るための会社だ。不信を買う。汚染を作った東電がこの事業を請け負うのでは不信のもとだ。
長官:そういう意味で私も「へっ」と思った。
初鹿:汚しておいてやりますって。自主事業でやるならまだしも交付金をいれてやるのか。
長官:だからといって東電だからダメとは言えない。飯舘村が受け入れるのかどうか。
初鹿:村長や議会がいいといっても住民がどう思うかだ。
長官:地域への説明をしていただかなくては。採択前に十分に理解されたかチェックする。
阿部:東電は、先日もJヴィレッジを除染せずに返して、高濃度汚染されていたことがグリーンピースの調査で明らかになった。
長官:そういうところの処分はないんですか?
真山:燃料がなければ発電できない。林野庁は森林を管理する。事業を始めるにあたり被災地の葉っぱ、木材、どれぐらいの汚染をしているのかを調査していただくとよい。
長官:福島県では6400ベクレル/kg以下でなければ伐り出しはいけないと定めている。燃料を供給する側が契約のもと供給義務を負うことになると思うが、福島県から指導されていると思う。
嘉田:滋賀県知事時代、カウンターパートの支援をした。山の幸、水の幸、自然の価値があった。ワラビ、ゼンマイ、いつになったら食べられるか、モニタリングしていただきたい。
長官:東北に住んだことがない人は分からない。自由に山菜が採れるキノコが採れることは東北に住む人にとっては暮らしの一つ。かといって林地から汚染土を持ち出せば森林がおかしくなる。先日も東京新聞で汚染されたキノコが見つかったと報道されていたが、東北の暮らしはまだ戻っていない。

(以上、事務局手書きメモ起こし)