2021年4月9日、原発ゼロの会は近藤昭一共同代表、阿部知子事務局長、笠井亮世話人の3名の出席の下、経済産業大臣宛に要旨書「「汚染水の海洋放出」問題に関する要請および提案」を提出しましたので、ご報告します。





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内閣総理大臣 菅義偉様
経済産業大臣 梶山弘志様
2021年4月9日

超党派議員連盟「原発ゼロの会」
共同代表:近藤昭一、事務局長:阿部知子
世話人:逢坂誠二、柿澤未途、真山勇一
笠井 亮 、日吉雄太、山崎 誠 、篠原 孝


「汚染水の海洋放出」問題に関する要請および提案


原発ゼロの会は、汚染水の海洋放出を断じて容認しない。

菅首相は経産省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の報告を経て、ALPS処理水の海洋放出を最も現実的な方法として決定しようとしているが、廃炉工程の見直しも指摘される中、安全性を軽視した処理を急ぐことは福島第一原発の事故から教訓を学ばない愚かな姿勢である。現時点においてその7割は汚染水のままである。また、未検討事項、未考慮事項、未公開情報がある。そこで、以下、要請すると共に提案する。

要請
  1. 汚染水が増え続けているのは、メルトダウンした燃料が落ちた原子炉建屋地下への地下水流入が続いているためである。建屋地下の側面を不完全にしか凍らせることができない遮水壁以外の方策も検討すべきである。
  2. ALPS処理で62の放射性核種を除去しているというが、現在、タンクに保管中の未処理汚染水に含まれた62核種とトリチウム以外にも、炭素14が残留していたことが後から明らかになった。告示濃度比総和の最大約2万倍もの未処理水がそのまま薄めて海洋放出をされてしまうのではないかとの懸念もある。「告示濃度比総和」でごまかすことなく、全ての核種の総量を明らかにすべきである。
  3. 小委員会報告書では、トリチウムを除去しない前提でALPS処理水の海洋放出のコストが最も低く試算されていたが、タンク総量7割で残留しているストロンチウム90を含む核種を除去するコストや時間を、今後増大する汚染水も含めて、どのように算出されているのか、その内訳を明らかにすべきである。その内訳には、汚染水増大が燃料デブリ取り出しまで続いた場合の凍土壁事業の維持管理・更新費、電力料金も含めて公開すべきである。
  4. 海洋放出はトリチウムを取り除けないことを前提にしているが、実験段階の技術には確立しているものがある。世界に先駆けてトリチウム分離技術を実用段階に引き上げるべく国も動くべきである。
  5. 福島第一原子力発電所7、8号機北側の土砂捨て場には広大なスペースがあることを現地視察で確認した。廃炉に必要な施設建設や、廃棄物の置き場にするというが不確かであり、経産省は新たな保管スペース確保に一層の工夫を東電にさせるべきである。
  6. 東電の廣瀬社長(当時)は平成27年8月25日に福島県漁業協同組合連合会の野崎哲代表理事会長あて「福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について」で、「建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事」との要請に、「トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。(略)こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処理も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします」と回答した。経産省は約束を死守させ、漁業者や国民の意見を聴く機会を設けるべきである。

提案
以上、廃炉工程を見直し、汚染水増大を止め、それまでに生じる汚染水を保管し、モルタル固化による放射能の減衰待ちをするか、トリチウムの除去技術を実現させ、トリチウム以外の核種と共に除去処理を完了させるべきである。


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