2007年10月

2007年10月30日

巡業 松竹大歌舞伎

9dc13d01.jpgこのところ梅枝丈萌えが止まらない。古風な美貌でほんのりした色気があり、芝居も踊りも達者で程がよい。その彼が「吉野山」の静御前を勤めるというので、巡業の松竹大歌舞伎初日(午後の部)を観てきた。忠信はこれまた若手有数の踊り手である亀治郎丈。会場の浅草公会堂は花道設置が可能なはずだが、今回は花道を設けずに壁際に仮花道をつくっていた。ちょっと残念。
「袖萩祭文」は以前に亀治郎の会でやっているそうだが、私は初見。袖萩が立派な鼈甲のバチを持っていたので驚いた。9月に観た玉三郎丈の「阿古屋」でも感じたのだけど、彼らが普段出しているキンキン高い声よりも、役で歌っているときの声の方がやわらかみがあって好きだ。段四郎丈の石芯省が大きく立派で、この父と娘が死なねばならぬことがよくわかる。
さて、目当ての「吉野山」。梅枝丈の静は「ご愛妾の色香」というまではないが、仇にならない、品のある色気を感じさせる。いつもながらの丁寧で程のよい踊りぶりだが、初日ゆえかやや硬さもあるように見受けられた。前回の巡業で踊った「正札附」は千穐楽に再見したら見違えるほど素晴らしくなっていたので、今回も後半にもう一度……という気分になりかけている。地理的に行けそうなのは府中だけど、平日なのが悩みどころだ。亀治郎丈の忠信は、これでもかといわんばかりにケレン味たっぷり。すらりとした体型以外は、猿之助丈にそっくりだった。
ところで他でも指摘されていたことだが、この会場のスタッフには上演中の態度を考え直してもらいたい。「袖萩祭文」で客席がしーんとなって見守っている娘おきみ(今回はダブルキャストで、私が見たのは谷口可純ちゃん)の見せ場で、外のロビーからずっと話し声が聞こえていた。しかも数人でどっと笑う声まで聞こえるのだから、唖然とするほかない。客席の扉が二重になっているので油断しているのだろうか。いい加減にしてもらいたい。

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2007年10月28日

NHK古典芸能鑑賞会

6a501a84.jpg久しぶりにNHKの「古典芸能鑑賞会」に行った。会場はNHKホール。坂を上るよりは、と原宿駅から代々木公園の脇を通って行ったところ、歩道のいたるところでバンドが演奏中。しかも、きもの姿の私がバンドの前を横切るという、「日本の伝統と現在とが交錯する瞬間」(笑)をカメラに収めようとする外国人が次から次に登場するし、やっとたどり着いたNHKホールのまわりはフリーマーケットでごった返しているしで、えらい目にあった。
三津五郎丈の踊りはとても楽しみにしていたのだが、いずれも今ひとつの出来。家の芸だという「傾城」だったが、顔はきれいだけど、体が男っぽくて色気がないのでがっかり。愛娘二人(とってもかわいい)との共演が微笑ましいというだけで終わってしまった。「半田稲荷」はお得意の風俗舞踊だが、本人、後見ともに小道具を扱う手際が悪すぎてゆとりがない。珍しい演目でもあるし、他の踊り手ならそこそこ満足したかもしれないが、舞踊の名手・三津五郎丈だけにむしろ「こんなものじゃないはず」との思いが残った。
最後の「寺子屋」は、團十郎丈が家の型で松王丸を演じた。首実検の際に何度かためらううち、玄蕃が首桶を取って松王丸に突きつけ、松王丸は右手で源蔵に抜き身を突きつけながら実検するというやり方。市蔵丈が悪いわけではない(むしろ健闘していたと思う)のだけど、こういうやり方をするなら玄蕃は段四郎丈左團次丈あたりでないと、バランス的にちょっと苦しい。駕籠の中から「しーばーらーくー」と声をかけるところは鎌倉権五郎が出てくるような気がしちゃうし、「山伏に変装して御台所を救出した」というくだりではつくり山伏の弁慶が浮かんじゃったりするという、何を見ているのかよくわからない松王丸(けど、でっかい)。両隣の女性客は大泣きしていたが、私は泣けなかった。ところが、「桜丸が不憫でござる」のところで菊五郎丈の桜丸が切腹しているのが見えた気がして、ここはちょっと泣いてしまった。菊五郎丈の桜丸なら團十郎丈は梅王丸だろうから、そういう組み合わせで見たことはないような気がするのだけど、不思議なものだ。
源蔵夫妻は梅玉丈芝雀丈。「大物浦」の義経などは情を感じさせてくれる梅玉丈だが、今回は薄め。戸浪はしっとりと情があって、夫婦のバランスで見たらこれでもよいのかもしれない。伝授の一巻を取り出すところで、神棚の扉を開けっ放しにするのは初めて見たように思うのだけど、私の勘違いだろうか。
嬉しかったのは、小太郎を演じていたのが原口智照くんだったこと。8月の「裏表先代萩」を観ていないので、今年3月に「渡海屋・大物浦」の安徳帝以来だけど、相変わらずかわいくて声もきれい。今回は寺入りがなかったので出番は少なかったが、とても上手で印象に残った。
それにしてもNHKホールって、風呂場のように音が響くので台詞も音楽も聴きづらい。花道もないし、歌舞伎座か国立劇場を借りて開催してもらえないものかと思う。収容人数が減ってしまうので難しいのだろうけど。

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2007年10月22日

鰐草履

d54031af.jpgおそらく昭和30年代くらいのことだと思うけど、ワニ革の草履とバッグのセットが流行したことがあるらしくて、アンティークきものを扱う店などでよく見かける。たいていは薄茶×茶のツートンカラーなのだけど、真っ黒のを見つけたので買ってみた。ちょうどマットクロコのトートバッグ(といっても、きもので持っておかしくないサイズ)を手に入れたので、セットでデビュー。普段、小松屋の三枚巻を履くことが多いので、雪駄のように薄い草履は慣れなくてまだちょっと歩きにくい。ワニ革のゴツゴツとした突起が、健康サンダルのように足裏を刺激してくれるのがおもしろかった。あの突起部分を土踏まずのところにもってきたら、そのまま健康サンダルだなあ。でも鼻緒から色が出て、足袋が汚れてしまった。しかも、突起に沿って足袋裏も黒く汚れている。ふきん石鹸でごしごしこすったらかなりきれいになったのでよかったけど、新しい足袋のときはちょっと履けない。

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2007年10月21日

昔語黄鳥墳

f309b15a.jpg国立劇場の10月歌舞伎公演を観てきた。初めて観る「昔語黄鳥墳」(うぐいす塚)が目当てである。なにしろ、大歌舞伎では78年ぶりの上演というから、今回見ておかなければ次はいつ機会があるかもわからない。おとぎ話のような他愛のないお話なのだが、これがなかなかおもしろかった。染五郎丈は製作発表記者会見で、息子の斎くんに「パパ、きれいでしょ。鼓、上手でしょ」というところを見せたいと語っていたそうだが、確かにとてもきれい。宗之助丈……じゃなくて、梅ヶ枝が一目惚れするのも道理の美しさだ。でも、鼓の方はまあそこそこ。太鼓は音が大きいだけだし、少し声がかすれているので謡もイマイチ。先月、演奏会かと思うほど立派な阿古屋を観たばかりなので、それと比べると分が悪い。
とはいえ、お話そのものは染五郎丈のすっきりとした美しさとやわらかさ、器用さなどが生かされていて、結構楽しかった。以前見た「乳貰い」は感心しなかったが、今回は舞台は上方でも、紀伊国屋に伝わる脚本を元にしているためか、無理なく演じられていたように思う。ただ、こういうバカバカしいお話を見せるには、「技術だけではない何か」が要求される。その何かがまだ足りない。10年、20年先に、また一度見てみたい。紀伊国屋の宗之助丈が相手役の梅ヶ枝を演じているのが嬉しいところだが、見染めの場となる序幕の衣裳があまり似合っておらず、一番美しく見えなくてはいけない場面で美しく見えなかったのがもったいなかった。友禅の振袖に病鉢巻をしているところはとても美しく見えたので、色や柄の工夫でもっときれいに見えただろうと思う。芝雀丈演じる腰元幾代の活躍、おしりかじり虫、百舌のように巨大な鶯の仕掛けまで、見所もたくさん。最初の10日間くらいはずいぶん試行錯誤したそうなので、前半に観た人は再見してもいいかもしれない。
気になったのは、幸四郎丈演じる与三右衛門。羽織袴姿でやってくるのだが、どう見ても大名のいでたちとは思えない。この拵えはお忍びだから、とか、何か理由があるのだろうか? 仮にそうだとしても、そんな理屈は吹っ飛ばしてどどーんと大名らしく登場した方が歌舞伎っぽくていいと思うのだけど。
その前の「俊寛」は、いつもの「鬼界ヶ島の場」だけでなく、俊寛の妻・東屋が命を落とす「六波羅清盛館の場」も出る。美貌の人妻が縄できりきり縛り上げられた姿で登場という美味しい場面なのに、高麗蔵丈は色気を感じさせてくれない。残念だし、もったいない。
続く「鬼界ヶ島の場」は、段四郎丈の瀬尾が傑作。義太夫味たっぷりで、大きさ、憎々しさも十分。梅玉丈の丹左衛門、芝雀丈の千鳥はともに情があってよい。幸四郎丈も俊寛の心理を丁寧に描いてよいが、この人はどうも体の使い方が歌舞伎らしくないと感じる。手をひらひらと振ったり、沖へ去っていく船を見ようと伸び上がったり、思わず走り出すといった動作がきものに馴染まないように見えるのだ。きものを着ていても伸び上がったり走ったりはするけれど、彼の動きは洋服の人のよう。どうしても、そこで現実に引き戻されてしまう。「流人は一致」のくだりをカットしたのも疑問を感じた。


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2007年10月14日

歌舞伎座昼の部

木下順二作の「赤い陣羽織」は翫雀丈の小人物ぶりがおもしろい。また、錦之助丈はこういうとぼけた役が好きなんだろうかと思ってしまうほど、「ひと夜」の駄目夫役以来のノリのよさで笑わせてくれる(代官の赤い陣羽織を着たブロマイドがあまりに素敵(笑)だったので、思わず買ってしまった)。孝太郎丈も姫や傾城より合っていると思うが、ちょっとやりすぎているので賢しい感じがした。もう少しさらりとやった方が、かわいいんじゃないかと思う。話そのものはほのぼのと楽しいけど、これは歌舞伎なのか?という思わずにいられない。先月の「竜馬がゆく」といい、今月夜の部の「牡丹燈篭」といい、歌舞伎味のない芝居ばかり続くとさびしい気持ちになる。私は歌舞伎や歌舞伎舞踊を見たくて歌舞伎座に足を運んでいるので、新作であっても歌舞伎味を感じられるものを見せてほしいと思う。
「恋飛脚大和往来」(封印切・新口村)は藤十郎丈時蔵丈。いうまでもなく、忠兵衛は藤十郎丈の当たり芸のひとつだ。こってりとした色気、やわらかみと短気ぶりを自在に操るセリフを堪能した。今回は三津五郎丈が八右衛門を勤めている。上方味は乏しいのは仕方ないところだろうが、見事な「総すかん」ぶり。たしかにこんな男に身請けされるのはイヤだろうなと納得させられた。「新口村」はこのところ、仁左衛門丈が忠兵衛と孫右衛門の二役を勤めるバージョンを見る機会の方が多いが、やはり、忠兵衛と孫右衛門は別の役者が演じる方が物語の深みが出る。孫右衛門を演じた我當丈は少し大松島に似てきたかも。

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2007年10月13日

桶川宿本陣 かがり火狂言

b236ed01.jpg友人の誘いで、桶川宿本陣で「かがり火狂言」を観てきた。会場の桶川宿本陣は、皇女和宮が徳川家への輿入れのために江戸へ下った際に宿泊したところだという。ご寝所となった「上段の間」は現在もそのまま保存されており、この一間を舞台として、毎年「かがり火狂言」を行っている。過去の上演時の写真では役者の後ろに違い棚が写っていて、下は畳敷き。舞台ではなく普通のお座敷っぽい雰囲気だが、これほどの至近距離で狂言を見られるとは贅沢な話だ。
一段高くなった造りのご寝所は8畳で、ここが舞台。そのまわりにはL字型に13畳分のスペースが広がっていて、ここは一部が舞台への通路になっている以外は「座敷席」。かぶりつきというわけだが、床にそのまま座らなくてはならない。さらに、角部屋である「上段の間」の外の庭に、L字型に屋根つきの客席を設置して「桟敷席」を設けている。ここも前方は床に座らなくてはならないが、後方は椅子席になっている。全席自由だが、なんとか椅子席を確保できた。なにしろ、屋根はあっても壁はないので、窓を開け放しているような状態。18時半開演だから、かなり冷える。床に座ったらもっと寒かったかもしれない。
今回の出演は友人が贔屓にしている茂山家の面々。茂山正邦茂山茂による「柿山伏」と、茂山あきら丸石やすし茂山童司による「吹取」。どちらもとてもおもしろかったが、とくに「柿山伏」で山伏が次々に柿を食べるところや、烏や猿、鳶の真似をさせられるところが大笑い。さらに開演前には丸石やすしによるわかりやすく楽しい解説があり、狂言は初めてという人にも親しみやすい構成になっていた。出演者にもよるが、来年もぜひ来たいものだ。
行きに桶川駅の改札を出たところで、出演者たちと遭遇。銘々が衣裳や道具類を入れた鞄を持っている。歌舞伎のように大掛かりな装置を必要としないからこそできることではあろうが、なんだかとても親しみを覚えてしまった。

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2007年10月12日

オペラグラス購入

eschenbach.jpgこれまでは安くてコンパクトで視度調整リングもついているナシカ製の8×21双眼鏡を使っていたのだが、倍率が高すぎるせいか目が疲れる。そこで倍率が低めのものに変えることにした。選んだのは、ドイツの光学器メーカー・エッシェンバッハオペラグラス「トゥーランドット」。色は万年筆のインクのようなミッドナイトブルーで、金色の部分は18金メッキ。ワニ革っぽいエンボスを施した、専用のビニールケースがついている。このケース、ペタッとした触感で、かなり高級感に欠ける。もうちょっとなんとかしてほしいと思うが、マジックテープではなくホックを留め具にしているところだけは評価したい。
視度調整リングはついていないが、倍率が低い(3倍)ので目の負担は少ない。舞台上の役者はじっとしているわけではないので、絶えずピントがズレている。多少のズレは人間の目が補ってくれるものだけど、私は左右の視力が若干異なるうえに軽い乱視があるので、それだけのことでもかなり疲れてしまう。倍率が高ければ、その分、ズレも大きくなるわけで、観劇後に軽い船酔いのような状態になることもあった。それなら裸眼で見ればいいのだけど、やはり接近して見たい場面もあるというもの。
このオペラグラスには、アクロマートといって片面凹と両面凸を組み合わせて、色収差の補正が施された高品質無収差レンズが使われているという。デザイン的に、この「トゥーランドット」とチェーンストラップ付きの「ソナタ」とでかなり迷ったのだけど、「ソナタ」にはアクロマートが使われていないとのことで、「トゥーランドット」を選んだ。レンズはガラスではなく樹脂製だが、視野はとても明るく鮮明で、幕見席から「奴道成寺」を見ると、三津五郎丈の全身を捉えてもまだ視野にたっぷりとゆとりがある。所化が絡んで鞠を取り合うところでも、三人とも全身が入るのでとても見やすいし、目の疲労感もこれまでよりかなり軽減された。結構いいかも。

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2007年10月11日

シャネル「ソーンジュ」

a6005348.JPGアジア女性のためにつくられたという、シャネルのシンク ピンク コレクシオン。広告で見ると、ピンクといっても大人向きの印象が強く、なかでもアイシャドーの「ソーンジュ」は愛らしくもシックな組み合わせがとても気になっていた。しかし、ボビイブラウン ストーンウォッシュヌード パレットに満足しきっていたこともあって出遅れてしまい、気づいたときには完売。それならそれで、すっきり諦められるというものだと思っていたら、なんと昨日、三越劇場の帰りに立ち寄った日本橋の高島屋で見つけてしまった。あるところにはあるのね。
で、試しにつけてもらったら、ほとんど発色しないのでびっくり。それなのに目元がふわっと明るく、やわらかな印象になる。発色しないので甘くなりすぎることもなく、クールな大人のピンクに仕上がる。締め色のブラウンもまぶたに乗せるとグレーがかったやわらかな色が出て、とてもきれい。こういう主張しすぎない色って、きものメイクにはとても重宝する。手に入れたばかりのLip FusionのGlam資生堂の紅ぼたんとも合いそうなので楽しみ。

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2007年10月10日

三越歌舞伎「傾城反魂香」

35bf52bf.jpg三越劇場で「傾城反魂香」を観てきた。ここは天井にステンドグラスがあったり、客席入り口の扉にのぞき窓がついていたりと、クラシカルな雰囲気の小さな劇場。あまり歌舞伎らしい感じはしないが、巡業で使う市民会館に比べれば、芝居用に作られているという意味でこちらの方がずっといい。
今回は「将監閑居の場」の前にある、猿之助丈が復活した場を上演するというので行ってきたのだけど、発端となる「近江国高嶋館の場」はわりとおもしろかった。なんといっても、狩野四郎二郎元信(笑也)が自らの血潮で描いた虎が、絵を抜け出して不破入道道犬(猿弥)相手に大暴れするところが楽しい。この虎、道犬の一人くらい簡単に踏み殺せるくらいに巨大。あんな巨大な猛獣に立ち向かう道犬って、結構すごい。悪人だけど、応援したくなってしまった。
元信は登場したときからなにやら険しい表情をしているが、そんな怖い顔をしなくていいんじゃないかと思う。表情以前に眉の引き方がすでに険しい。おそらく狙いは凛々しさを出すことだと思うけど、ちょっと違う気がした。また、懐手で思案にくれるところなどは手首まですっぽりときものの中に入ってしまっていて、色気も何もあったものではない。ただ、それでもこの役自体は彼に合っていると思った。とくに銀杏の前との縁談を断るところなどは、元信の思慮深さや清潔さを感じることができた。もっとやわらかみが出ればなあと思う。
次の「館外竹藪の場」は、復活版の再上演時に猿之助丈が付け加えた場面らしいが、立ち回りは「義経千本桜」の「小金吾討死」に似すぎで新鮮味がない。それより、ここでは不破伴左衛門(猿四郎)と雅楽之助(段治郎)がそれぞれかなりの深手を負っているように見えるのだが、どちらも死なないのが不思議でならない。雅楽之助は次の「将監閑居の場」に登場するし、伴左衛門は姿こそ見せないが銀杏の前を捕えていると雅楽之助のセリフに出てくる。なんだかつながりがおかしくなっているし、無理に入れなくてもいいのではないかと思った。
4年前のことだが、南座で猿之助丈が今の藤十郎丈と「吃又」を出すことになっていた。ところが直前に脳梗塞に倒れ、又平だけが翫雀丈に代わったことがある。そのときに雅楽之助を勤めたのが歌六丈。唇まで真っ青で、瀕死の重傷という感じで登場したので驚いたが、あれはこの本を踏まえたやり方だったのだろう。
そして、いよいよ「将監閑居の場」。いつもは雅楽之助が「一大事」と話す内容がよそ事に聞こえてしまいがちなのだけど、今回はどんな一大事があったのかを見せてもらったのでとてもわかりやすい。ただ、虎は序幕であんなに踏んだり蹴ったりと大暴れしていたくせに足跡を残さないんだろうか?とか、急にサイズが半分のパンサー顔になっちゃったなとかってあたりは、かえって気になってしまった。
市川右近丈の又平は袴をつけず、着流しで登場。これはこれで一つの考え方だろうが、毎晩のように見舞うほど敬愛する師匠の家なのだから、袴をつけてきてもおかしくないと思う。また、銀杏の前の救出に行かせてほしいと師匠に頼むところでなかなか言葉が出てこずに「えへへ…」と笑ったり、「切らっしゃりませ」で縁に直接座ったりと、どうも心根が好きになれなかった。これまで土佐の苗字をもらえていなかったのは、吃音以外にも理由があったんじゃないの?って感じの人だった。
それはともかく、来月に向けて話のつながりがわかったのはよかった。


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2007年10月09日

着物手帳

0f1aec82.jpg着物と和の生活マガジン「Sakura」から、今年も着物手帳が発売された。一昨年紹介したきものダイアリーは一般的なビジネスダイアリーに使われている細長い判型だったが、今回の着物手帳はほぼ文庫本サイズ(縦が1センチほど長い)。透明のビニールカバーがかかっていて、専用ページからオリジナル和柄カバーをダウンロードして使うようになっている。季節に合わせて柄を変えてもいいし、千代紙や古布などを使って独自仕様にしてもいい。
昨年版を買っていないのでいつからこうなったのかはわからないが、以前は巻末にまとめられていた月々の着こなしの一覧が各月の最後のページに入っていたり、きもの愛好者の体験談が各ページのはみだし欄に載っていたりと、読み物としても充実してきた。「今月のわたしのきもの日記」(写真)といって、毎月2回のコーディネイトを記録できるようになっているページもある。こういう記録をつけておくとあとで見直すのが楽しいし、これからの参考にもしやすいかも。税込本体価格1200円(送料別)。問い合わせはPR現代 Sakura編集部まで。

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2007年10月08日

資生堂「紅あかね」

856f7f5f.jpgだいぶ前のことだけど、仕事仲間のえったんが資生堂鎌倉工場で口紅を買ってきてくれた。かまくら工場オリジナルブランドで通販は一切しておらず、鎌倉工場に行かなくては買えないのだそうだ。しかも、このオリジナルブランドを作っていたかまくら工房が閉鎖されてしまったので、現品限りらしい。内側に鏡がついた布張りのケースに簡易紅筆もセットされて6300円。
このシリーズはもともと、紅あかね、紅ぼたんのほかに紅つばきの3種類があったが、紅つばきはすでに完売。手に入るのは紅あかねと紅ぼたんの2種類だけとなった。いずれも紅花色素を使っていて、きもの女には使いやすい深みのある発色。シアータイプが幅を利かせる昨今にあって、これは貴重だ。紅あかねはブラウン味の赤で、やわらかで肌なじみのいい色。どんなきものにも合わせやすく、顔色を明るく見せてくれる。そろそろ年齢的に真っ赤な口紅は厳しくなってきた私にはとてもありがたい。紅ぼたんは現物を見ると「ショッキングピンク!?」というくらいの派手な色に思えるが、唇に乗せると少し抑え目のフューシャピンク。かつて流行したフューシャピンクはぱきっと派手できものには向かないかもしれないけど、これは少しトーンを抑えた発色なので案外使える。
今はなくなってしまった紅つばきも、きもの雑誌の化粧品特集を手伝った際に分けてもらったことがある。こんなに入手困難な品とは知らず使い切ってしまい、リピートしようと資生堂のカウンターに行ったらBAさんたちが誰も知らなかったので驚いた。鎌倉工場でしか買えない商品とあれば、それも当然か。それきり手に入らないままになっていたが、久しぶりに手に入って大満足。夏の間はほとんど化粧をしなかったので出番がなかったけど、これから活躍してもらおう。えったん、ありがとう!


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2007年10月07日

福原信三と美術と資生堂展

ff9dd451.jpg世田谷美術館で「福原信三と美術と資生堂展」を見てきた。資生堂は広告類や製品のパッケージデザインの秀逸さが知られているが、創設者・福原有信の三男で同社に意匠部(現在の宣伝部)をつくり、写真家としても活躍した福原信三に焦点を当てた展覧会である。半蔵門線で見かけた車内広告によれば、山名文夫の作品も出展されているとのことなので、足を運ぶことにした。
山名文夫は日本宣伝賞の部門賞にも名を残す、日本を代表するグラフィック・デザイナー。モダン・アールデコのデザインを得意とする人で、資生堂にも籍を置いていたことがある。同社の花椿マークを現在の形に完成させたのは彼だという。また、ドルックスのボトル(今では当時よりもすっきりとした形に変わっているが)をはじめとするパッケージ・デザインや広告類を手がけるなど、「資生堂のデザイン」を語る上で欠かせない人物だ。高校時代に資生堂の「私の美人像シリーズ」という新聞広告でイラストを見てからずっと気になっていた人なので、彼の作品をまとまった形で見られたのは嬉しい。あの新聞広告も原画ともども展示されていて、懐かしい思いでしばし見つめた。
もちろん、山名作品以外のポスターや広告、広報誌、パッケージ・デザインをはじめ、福原信三の写真作品や、梅原龍三郎や富本憲吉ら資生堂ギャラリーを飾った芸術家の作品まであって、「資生堂と美術」のほぼ全貌がつかめる内容となっている。広告、企業の文化活動、プロダクト・デザイン、美術、化粧史など、いろいろな視点から楽しめる展示会だと思う。広告作品はセルジュ・ルタンスの時代までで終わっていた。そこから先はコンテンポラリーなので取り上げなかったのかもしれないが、個人的には資生堂の広告はその頃までの方がおもしろかったなあという印象をもっている。前田美波里の「太陽に愛されよう」団次郎のMG5、一世を風靡した山口小夜子のシリーズなどは日本の広告史に残る傑作だが、それらを超える作品はこのところ見ていないように思う。販促物も化粧品が贅沢品であった時代の方がゴージャスで、見ているだけでも楽しい。
ミュージアム・ショップにはカタログのほか、山名の作品集、絵葉書、ハンカチなどが並んでいて、思わずいろいろ買い込んでしまった。

その後、ちょっと寄り道をしてから歌舞伎座へ行き、「奴道成寺」を幕見。前回は踊り以外の部分で多少不満を感じたのだが、いずれも素晴らしく進化した。総踊りも今日はきっちり合っていてとても気持ちいい。三津五郎丈も表情まで美しくなっていて、嬉しさのあまりゾクゾクした。こんなに素晴らしい踊りをたったの700円で見られるなんて、ありがたい。仕事帰りでも十分間に合うので、あと何回か見ておきたいと思う。

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2007年10月03日

歌舞伎座夜の部

3caa5434.jpg三津五郎丈の「奴道成寺」見たさに切符を取ったのだが、「牡丹燈籠」が、以前に吉右衛門丈の伴蔵で見たのとはだいぶ違っていてびっくり。「牡丹燈籠」の作者である三遊亭円朝が登場したりしてやけに近代的なつくりだなあと思ったら、今回は文学座のために書き下ろされた脚本を使っているらしい。筋書の上演記録を見ると何度か上演されているようだが、私は初めて見た。
恋わずらいのお露に気晴らしをさせようと、お米が大川に船を出す場面があり、まだ生きている二人が登場する(前回見た歌舞伎版では最初から死んでいた)。このお露役の七之助丈がとても美しい。普段は生硬さが気になることが多い人だが、今回は恋路を思いつめるお嬢様で、焦がれ死にして幽霊になるという役どころと合っていると思った。吉之丞丈のお米が、生前も死後もいかにもそれらしい。他にできる人が思い浮かばないくらい、傑作だと思う。お露が慕う萩原新三郎に愛之助丈。こちらは焦がれ死にされるほど愛される役どころなのだから、もう少し色気がほしい。
新三郎を死に至らしめる伴蔵・お峰夫婦に仁左衛門丈玉三郎丈。長年名コンビをうたわれてきた二人だからか、愛人・お国をめぐる夫婦喧嘩がリアル痴話喧嘩に見えておかしかった。最後に仲直りをするに至っては「犬も食わない」の文字が頭の中をぐるぐるした。歌舞伎版ではお峰とお国を魁春丈が二役で勤めていたが、今回はお国を吉弥丈が演じている。これはミスキャストではないかと思う。22〜3歳のすごい美女には見えないし、「屋敷者だから品がいい」ようにもまったく見えないので、源次郎がこの女のために平左衛門を殺すのにも、伴蔵が妻を殺すのにも説得力を感じない。
それからひとつ疑問だったのは、栗橋にやってきたおろくにお米の幽霊が取りついたと思われる場面。お米は伴蔵のおかげでお露を新三郎に会わせてやりたいという望みをかなえたのだから、伴蔵夫婦に恨みもなければいまさら用事もないはず。なぜ出てきたのかわからなかった。
三津五郎丈の「奴道成寺」を見るのは、2001年の襲名披露以来。そのときよりも余裕を感じる踊りぶり。序盤に烏帽子の紐がほどけてしまったり、後見が結び直したら今度は肝心なところでほどけなかったりというトラブルはあったものの、お手本のようにきっちりとしていて美しい。三ツ面を使って踊り分けた「恋の手習い」は鮮やかで、とてもおもしろかった。ただ、今月は東京だけでも4劇場、それに御園座までやっている影響からか、長唄が混成部隊という感じでちょっとこなれていないような気がした。
配役が発表になったときは所化が子供ばかりなので驚いたものだが、この子供たちが期待をはるかに上回る大健闘。とても気持ちのいい一幕になっていた。皆とても素晴らしかったが、なかでも壱太郎丈は、総踊りになってもひときわ華があった。また、手拭を投げてくれたから言うわけじゃないけど萬太郎丈の端正な踊りぶりも将来が楽しみ。ひときわ小さい所化が2人いて、1人は小吉丈だが、もう1人の名前がわからなかったので、帰りに坂東流の受付で聞いてみた(筋書の見本はもうしまわれていた)ら鶴松丈だった。演舞場と掛け持ちらしいが、その甲斐のある立派な出来だと思う。今回は前から4列目と舞台に近かったので、舞台全体を見渡せる少し後方の席で再見したい。

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2007年10月02日

Lip Fusionのペンシル

6196fca5.jpg半年ほど前に、太めのリップペンシルにはまっていた時期があるのだけど、ラインの引きやすさ、塗りやすさは最高なのに、なかなか好みの色が見つからなくて残念な思いをしていた。NARSのDragon Girlはくっきりときれいな赤だけど、色が強いのでデイリーユースにはあまり向いておらず、しっかりメイクの礼装モードのときか、逆に地味な紬のときに使っている。Paul & Joeのクランベリージュースは色自体はきれいでデイリーにも使いやすいのだけど、樹脂製の軸がきれいに削れず、でこぼこが唇に当たるのがどうしても我慢できない。
そこでいろいろ探してみたのだけれど、やはり最初に出会ったLip Fusionに戻ってしまった。サイトに出ている新色「Glam」がよさそうなのだが、前にここのリップペンシルを取り寄せてくれた業者さんでは新色は扱っていないという。たまたま知り合いのライターさんがアメリカに取材に行くというので、ちゃっかり頼んで買ってきてもらった。写真ではかなり強い赤に見えるけど、私の唇に乗せるとピンク味が強く出る。塗りすぎるとショッキングピンクになってしまうが、ささっと塗るくらいにするとぱきっと鮮やかで、かつ深みのあるいいピンクになる。NARSのDragon Girlよりもデイリーに使いやすそうだ。それに何より、ラインが引きやすくてきれいに塗れるのが最高。
サイトでは新色2色に「New smile whitening!」と書いてある。どうやら、歯を白く見せる効果があるということらしい。劇的な効果というほどではないけれど、歯が黄色っぽく見えないような気はする。こういうのって嬉しい。

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