reading

2007年11月11日

とび出す「STAR WARS」

39317b42.jpg以前紹介したロバート・サブダとの共著も多い絵本作家Matthew Reinhartの新作が届いた。なんと映画「STAR WARS」のポップアップ絵本。STAR WARS公式サイトでも販売されているので、公認グッズなのだろう。
内容は6見開きを使って、スターウォーズの世界、映画に登場するクリーチャーたち、宇宙船、モスアイズリー、おもなキャラクター、ジェダイとシスの確執を紹介している。なんでも作者のReinhartはスターウォーズおたくだそうで、写実な絵と、とび出すミレニアム・ファルコン号などの迫力の仕掛けを楽しむことができる。仕掛けは余白もないくらいにびっちり。エピソード4〜6に登場する話やキャラクターを取り上げたこまかさは、さすがスターウォーズおたくだ。C-3POとR2-D2、ヨーダ、チューバッカ、イウォークも登場するし、ハン・ソロは通常の姿だけでなく、カーボン冷凍された姿まで収録されている。レイア姫がフードを脱ぐ仕掛けもすごい。
最後の見開きがアマゾンで紹介されているのだけど、ダースベーダーのマスクの下には老アナキンの顔が見えるし、見開きの上側に隠された仕掛けを開くと姿を現すダースベーダーとルークが持っているライトセーバーはLEDで光るしかけになっている。すごく楽しい。


gen96_cat at 21:52|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年08月03日

Harry Potter and the Deathly Hallows

c27a5381.jpgついにベールを脱いだ、「ハリー・ポッター」シリーズ最終巻。いち早く読んで、「××が死んじゃったの〜」なんて話をしようと思ったのに、「バラさないでよ!」といって誰も話を聞いてくれない。感想を言い合う相手もいなくて、ちょっと残念だ。せめてここで思い切りネタバレを……なんてことをしたら恨まれてしまいそうなので、ネタバレしない程度に感想をば。
このシリーズを原文で読んだのは今回が初めてなのだけど、絶対に原文の方がおもしろい。一応は児童書なので複雑な構文が出てくるわけではないし、大学生ならほぼ問題なく読めるだろう。わかりにくい単語といえば魔法用語くらいだが、これまで邦訳で読んできた人なら、だいたいのところはわかるはずだ。なにしろ長いので、本の分厚さを見ただけでひるんでしまう人も多いだろうが、まだ夏休みもあることだし、ポッタリアンは邦訳を待たずに原文を読んだ方がいいと思う。とくに、ハリーって癇癪持ち?と思って読んできた人には原文をオススメしたい。
邦訳ではハリーの母リリーはペチュニアおばさんの姉ということになっているが、7巻にははっきりと「『リリー、やめてよ!』と、二人のうちの年上の方が金切り声をあげた」と書かれていて、ペチュニアおばさんが姉、リリーが妹だとわかる。たしか訳者が著者に確認をして、3巻からリリー姉、ペチュニア妹と訳されてきたはずなのだけど……。どちらが姉でも大した違いではないけれど、第1作が出されたときに「もう最終巻を書き上げて金庫に保管している」といっていただけに、著者本人に確認をしたことがどうして覆ったのか不思議だ。


gen96_cat at 23:59|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2006年12月28日

銀座百点

6e0c981d.jpg今日は仕事納め。早い時間に編集部を出ることができたので、銀座に出て正月用の足袋を買ってきた。去年と同じでむさしやさんに注文するのを忘れていたので、津田屋さんで出来合いのを2足だけ購入。このとき、「銀座百点」の来年1月号をもらった。この手の商店街がつくるフリーマガジンはいくつかあるが、この雑誌は銀座という土地柄もあって、歌舞伎役者が登場することも多いのでチェックが欠かせない。今号も仁左衛門丈が登場する座談会が掲載されている。
しかしそれより「歌舞伎座の怪人」なる獅童丈のエッセイだ。一年にわたる連載となるそうだが、いきなり「ひとりではさみしいけれど、ふたりでももっとさみしいことがあると気づきました」と家庭問題に触れているのでびっくりしてしまった。彼が歌舞伎を志したいきさつなど興味深い話題もあるが、全体の印象は「芸能マスコミが喜びそう」という感じ。うーん。

gen96_cat at 23:58|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年12月13日

ロバート・サブダ展

afd76bc0.jpg今日から始まった「ロバート・サブダ しかけ絵本の世界展」(池袋西武、今月25日まで=28日までに会期延長)を観てきた。絵本の巨大なレプリカ(写真のアリスは2畳分くらいある)や下絵、各パーツを一枚の大きな紙に印刷した組み立て前(というか、切り離し前)の出力紙、サブダの仕事場を再現した(らしい)部屋などのサブダゆかりの展示のほか、アンティークしかけ絵本の数々が展示されている。
個人的にはそれぞれのパーツの形や無駄の少ないレイアウトを見られた出力紙と、アンティークのしかけ絵本(サブダのコレクションも含まれているそうだ)の展示がおもしろかった。蛇腹状ののぞき絵本は3種類展示されていたが、パレ・ロワイヤルの絵本は中庭をのぞけるようになっている。ためしにケータイのカメラで撮ってみたのだけど、思ったよりも遠近感が出て、きれいに写るので驚いた。
物販コーナーではサブダ作品(「不思議の国のアリス」が再販されていた)を始めとするしかけ絵本各種や、この会場でしか手に入らないという「手作りしかけ絵本キット サブダにチャレンジ!」や小さなサイズの日本語版「クリスマス」などが販売されていて、大賑わい。私は「12 Days of Christmas」を買ってきた。クリスマスツリーに電飾がつく特別版である。
驚いたのは「ほかのお客さまのご迷惑にならない範囲」なら写真撮影もOKということだ。念のためにブログに載せるのはどうなのかも聞いてみたが、個人ブログかどうかを確認されたうえで、掲載もOKとのこと。口コミ効果を期待しているそうだが、有料の展示会だというのに太っ腹なことである。

gen96_cat at 22:26|PermalinkComments(10)TrackBack(4)

2006年11月14日

Church Boy

4f0af4f8.jpg最近はまりまくりのKirk Franklinが1998年に出版した自伝(未邦訳)である。Amazon.comのレビューを見ると、賛辞が多いなかに一人だけ「彼の音楽は好きだが、この本は自慢ばかりで、読むのは時間と金の無駄」と酷評している人がいて、かえって読みたくなってしまった。うっかり丸善で取り寄せたら、アマゾンより1000円以上も高くて、ちょっと目眩がした。
この本は1996年11月のツアー中に、ステージ裏の穴(なぜそんなものが…?)に転落したKirkが瀕死の重傷を負うという事件から始まる。彼は奇跡的に命をとりとめ、その事件が広く報道されて、ゴスペルに関心のない人にも名を知られるようになったのだそうだ。こんな事件があったとは知らなかったのでびっくり。
全体に平易なことばを使って書かれていて、素行の悪かった少年時代(マリファナを吸ったり、ガールフレンドを妊娠させたり、先生ともめて高校を中退したりしている)を振り返って、彼を立ち直らせてくれた信仰と大叔母ガートルードの愛情、そして音楽について真摯に語る内容だ。若い世代が教会から離れていき、救済を求める場を失っていることを憂い、「ストリート・カルチャー」が彼らに悪影響をもたらしていることも指摘している。
音楽と信仰について書かれた部分では、「自分が曲を書いているとは思わない。自分は神のペンにすぎない」ということばに心を打たれた。彼自身も、そして彼の音楽も、神の手の中にあるものなのだ。この思いは非キリスト教徒である私には、頭で理解することしかできないが、この神との一体感こそが「ゴスペル」なのだろうと思った。

alligators.jpgもうひとつ、こちらはアマゾンで取り寄せた絵本「How Do Alligators Praise the Lord?」。Kirkが書いたRhymeにイラストがついているのだが、このイラストがイマイチなのであまりおもしろさが伝わらない。付属のCDは朗読かと思ったら、陽気なリズムとメロディーに乗せて、Kirkが家族(The Familyではなく、彼の妻子)とラップで朗読している曲が入っている。これがなかなか楽しい仕上がりなので、1352円は本代というよりCD代と考えた方がいいかもしれない。別バージョンが入っているわけでもないから、安いとはいえないが、妻や子どもたちの名前を呼んで紹介する楽しそうなKirkの声が聞けるのはいいかも。

関連記事
映画「THE GOSPEL」
Kirk Franklin


gen96_cat at 23:59|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2006年05月06日

見て読める歌舞伎 2

a451c122.jpg昨年末に紹介した「国立劇場監修 開場40周年記念歌舞伎公演記録集」シリーズの第二弾。先月はいわゆる連休前進行でばたばたしていたので、ゆっくり書店にも行けなかったが、連休に入って久しぶりに覗いた池袋のリブロで手に入れた。
今回は「仮名手本忠臣蔵(上)」「伽羅先代萩」「金門五山桐」「天衣紛上野初花」「小袖曾我薊色縫」の五冊。例によって雀右衛門丈が出演している「金門五山桐」「天衣紛上野初花」からゲット。また、生で舞台を観た演目「小袖曾我薊色縫」も購入。俳諧師白蓮を勤めるはずだった先代三津五郎丈が初日の直前に亡くなって、急な配役変更があった舞台である。清心を八十助(現・三津五郎)丈、十六夜を芝雀丈が勤めたが、二人のイキがぴたりと合った、とてもいい舞台だったことを思い出す。「金門五山桐」はちょうど今月、新橋演舞場で「石川五右衛門」がかかっているので、予習もできて、ありがたい。
このシリーズ、少々値が張るのが辛いところだが、筋書と上演台本、それにブロマイドが一つになったと思えば、納得できる価格だろう。次が出るのはいつかな♪と、早くも心待ちにしている。

gen96_cat at 23:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年02月28日

名女形・雀右衛門

b8a06bab.jpg以前から雀右衛門丈が渡辺保さんと一緒に新しい芸談の本を出すという話は聞いていたが、それがついに先週上梓された。「名女形・雀右衛門」(新潮社)である。私は雀右衛門丈の芸談と聞いていたのだが、むしろ「渡辺保の中村雀右衛門論」である。そこに本人の言がいくつか入っているという構成だ。雀右衛門丈は饒舌な人ではないから、こういう形の方がいいのかもしれない。
三姫をはじめとして、揚巻、典侍局、白拍子花子など雀右衛門丈の当たり役27を取り上げ、亡くなった歌右衛門丈や梅幸丈らとの比較によって、彼の芸を浮き彫りにしている。「十種香」の濡衣への高い評価は、わが意を得た思いで嬉しくなった。もちろん、雀右衛門丈の八重垣姫は絶品なのだが、私は魁春丈の襲名披露で演じた濡衣も大好きだったのだ。いかにもワケのある女スパイ。こういう役にもきちっとスポットを当ててくれたのは、とてもありがたい。
表紙の写真は「金閣寺」の雪姫。前回の「私事」は時姫の表紙だったから、次は八重垣姫の表紙で出していただきたいな〜

gen96_cat at 23:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年02月14日

意味がなければスイングはない

8399cdcf.jpg彼ほどの大家に向かってこのようなことを言うのは失礼きわまりないのだが、実は村上春樹は小説よりも、エッセイの方が好きだ。類い稀な表現力と洞察力をもつ彼の筆にかかると、ありふれた日常のひとこまが、忘れられない珠玉の思い出に変身する。
今回は特に、彼がこだわりをもつ「音楽」がテーマだけに見逃せない(といいつつ、買ってからふた月以上もほったらかしにしていたのだが)。雑誌の連載を単行本化したもので、連載の各回ごとに一人(二人のこともある)の音楽家に焦点を当て、その作品あるいは演奏を掘り下げて考察する内容。クラシックからジャズ、ロック、カントリーまで、さまざまな音楽家を取り上げているのだが、決して知名度が高い人物や音楽史上の重要人物ばかりを扱っているわけではない。彼が気になる音楽家を取り上げている、非常に個人的な文章だ。いかにも彼らしい。
どの文章も、音楽家への敬意とあたたかなまなざしに満ちている。スタン・ゲッツやブルース・スプリングスティーンのようによく聴いてきた人の話には思わず涙してしまうし、シダー・ウォルトンやルドルフ・ゼルキンのようにあまり知らない人なら聴いてみたくなる。ただ、聴いていた人でも、それはLP時代の話。読んでいるうちにCDが欲しくなって、いろいろ買ってしまった。やられた……って感じである。

ところで私は通勤電車のなかで、いつものようにiPodで和洋取り混ぜた音楽を聴きながら、この本を読んでいた。ちょうどブルース・スプリングスティーンの章を読み始めたところだった。この章は彼のライブで観客が声を揃えて「ハングリー・ハート」を歌うという話から始まり、歌詞が引用されている。その歌詞を読んでいると、イヤホンから高らかな笛の音が聞こえてきた。長唄「越後獅子」である。とたんに脳裏には「おらが女房」を越後に残し、お江戸に去っていく角兵衛獅子(顔はなぜかこの人だ)の姿が浮かんで消えてくれず、とても混乱した。やっぱりBGM選びは大事だ。


gen96_cat at 23:59|PermalinkComments(16)TrackBack(1)

2006年01月29日

着付師一代

9fbb03e7.jpg日常的にきものを着るようになって10年以上になる。最初に某大手呉服チェーン店が主宰する着付け教室に通ったことがあり、補正のやり方なども教えてもらったのだが、日常的に着るようになってからは面倒なので補正はまったくしていない。とはいうものの、人に着付けを教えることになったのだから、補正についてもやらなくてはなるまい。
というわけで、復習のつもりで、友人おすすめの一冊を読み直した。新派の舞台を中心に着付師として活躍した根津昌平氏の「きもの語り」である。帯の文句が凄い。「初代水谷八重子は言った――『わたしの手ばなせない男』」。つまり、着付けにかけてはそれだけ水谷八重子の信頼を得ていた、ということだ。
この本を読むと、「やはり補正は必要なのだなあ」と思う。実際に自分の着付けを見ても、初芝居の日の相良刺繍入り訪問着などはどこかもたついていて、すっきりと着れていない。補正をすると、もう少しすっきりするのだろうし、その方がきものもきれいに見えて嬉しいだろうと思う。毎日のこととなると、さすがに面倒かな?と思わなくもないが、訪問着などの「お出かけ」モードのときは考えてもいいような気がする。
でも、そうすると訪問着を着なくなりそうな予感……(笑)。

gen96_cat at 22:09|PermalinkComments(12)TrackBack(0)

2006年01月06日

正直日記

abcaf24e.jpg年末に買った、江口寿史の新刊「正直日記」をやっと読み終えた。といっても、メインは公式サイトで公開していた日記だから、実は大半の部分が既読である。ご本人が「クズがうつるからチビチビ読むように」という主旨のことをあとがきで書いているけれど、「そういえば、こんな話が出てたっけ」と思いながら、チビチビ読んだ。本人の声が聞こえてくるような文体が楽しい一冊だ。
もう15年くらい前のサラリーマン編集者時代の話だが、江口さんに文庫本のカバーイラストを提供してもらったことがある。その編集部では文庫本のカバーデザインはパターンが決められていて、ちょっと変わったアングルがついたそのイラストを生かす使い方はどうしても限られる。デザイナーはそれが不満だったのか、なんと、イラストに書き足しをしてしまった。しかも、オリジナルとは違うペンを使ったので、足した部分がはっきりわかる。色校正で初めてそれを知り、こんなことをする前に相談してくれと怒ったが、すでに遅し。イラストはもう台無しになっている。
泣きたい思いで江口さんのところへ伺った。色校正とイラストを見せてお詫びしたところ、本当は私よりももっと泣きたいはずの江口さんの口からは、意外にも「まあ、いいよ」とのお言葉。「でも、この足し方は間違ってるから、僕が直す」とまで言ってくださった。「ただ、これから送別会で出かけなきゃいけないから、帰ってからね」。しかし、江口さんの酒癖は本人がネタにしているくらいだから、帰ってからといっても何時になるかわからない。そこで「何時ごろ伺えばいいですか?」とおたずねすると、「うーん、わかんない。そうだ、一緒に来ればいいじゃん!」ってことになって、私は初対面の方の送別会に出かけていき、明け方まで何軒かハシゴ。知らない人にいっぱい会った。
世間様では「落としの天才」とか、いろいろ言われるビッグE氏ではあるが、私にとっては「肝の大きい、あたたかい人」という印象が残るお方。フリーになって以来、仕事をお願いする機会がないが、ぜひまたご一緒させていただきたいものである。

gen96_cat at 23:46|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年12月30日

見て読める歌舞伎

bc882c7d.jpg昨日、買い物の帰りに池袋のリブロに寄ったところ、おもしろい本を見つけた。「国立劇場監修 開場40周年記念歌舞伎公演記録集」。簡単に言うと、豊富な舞台写真入りの上演台本なのだが、当時の筋書を復刻した部分があったり、浄瑠璃、台詞、ト書きを色分けして読みやすくしていたりと、内容もよく工夫されている。写真はすべてカラーで、当時の舞台を観た人も、そうでない人も、楽しめるのが素晴らしい。第一期第一集として、「青砥稿花紅彩画」「桜姫東文章」「雷神不動北山桜」「義経千本桜(上・下)」の5冊が出ていた。ほかにも荷物があって重かったので、まずは雀右衛門丈が出演した「桜姫東文章」「義経千本桜」を買ってきた。
桜姫というと、玉三郎丈の代表作と言われているが、38年前に復活上演されたときに桜姫を勤めたのは雀右衛門丈だった。1993年に国立劇場で幸四郎丈との再演は観たが、38年前はさすがに観ていないので、ここまでの丁寧な記録はとてもありがたい。できれば活字だけではなく、DVDも出してもらいたいものだ。
「義経千本桜」は1976年に二世松緑丈が知盛、権太、忠信の三役を勤めた、伝説の舞台。ここでは雀右衛門丈はすし屋のお里を勤めている。黄八丈のきものに、「野崎村」のお染の衣裳のようにたっぷりと柄の入った前掛けが、濃厚なまでに色っぽい。こんな姿で「お月さんも寝やしゃんした」などと言われたら、維盛だってたまらないだろう。
とまあ、こんなことを思いながら、ページを繰るのが楽しい一冊。第二集は何が出るのか、今から楽しみだ。

gen96_cat at 23:59|PermalinkComments(11)TrackBack(0)

2005年09月04日

アースダイバー

4700a441.jpg昨日の「新語探険」で「アースダイバー」が紹介されていた。私も読んだが、なかなかおもしろい本である。書名の『アースダイバー』は、ネイティブ・アメリカンの神話にある大地創造伝説だそうだ。
都内を歩いていると、東京が起伏に富んだ地形であることに気付く。なるほど渋「谷」は低くて、青「山」は高いところにあるのね、という具合だ。鶯谷から上野にかけても登り勾配。ほかにも赤坂、六本木、四谷など、東京はいたるところに坂がある。坂が多いなあと思ってはいたが、そこで止まってしまうのが、凡人の悲しさ。タモリはかつて『タモリ倶楽部』で「坂の名前の研究」をやったことがあったが、「坂が多いなあ」という思いを知的探求へと発展させたいい例だろう。
この本の著者・中沢新一は、さらにその先へ向かった。東京のあちこちで縄文時代や弥生時代の土器や遺跡が出土することから思い立ち、今より海面が高かった縄文時代の東京の地図を作成して今の東京と比べたのだ。すると、おもしろいことに、今、寺社や墓地がある場所は縄文時代から陸地で、しかも岬のように海に突き出した箇所にある「聖なる土地」(つまり、寺社や墓地があった場所、ということ)だったという。その後、海面が現在のように低くなると、入り江だったところも海水が引いて陸地となった。ただし、高度の低い谷地だったので水が湧いたり、池や川ができたりしてじめじめしている。支配者層や金持ちはじめじめした低地を嫌って高台に住んだので、いきおい低地には金をもたない被支配者層が住まう。こうした古の構造が、そのまま今の東京を形作っている、と著者はいう。その土地がもつ記憶・性格が、ある町を歓楽街にし、またある町をそっくり大学にする。それは偶然ではなく、必然なのだ。
この本を読むと、東京の歩き方(別に東京以外でもいいはず)が変わる。なぜ、ここに公園があるのか。なぜ、ここにシネコンがあるのか。そんなことを考えながら歩いていると、足元の地面がぐにゅぐにゅと動き出すような錯覚を覚える。動き出した地面の下から、どんな「土地の記憶」が飛び出してくるのだろうか。住まいのあたりには古戦場址もあるのだが、そういう記憶が飛び出してきたら恐くてイヤだなあ。

gen96_cat at 23:58|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年08月12日

Imagine This

2d1f96a5.jpg7月11日にアップした『ワケありってコトで』の著者で、「ヒップホップ文学の女王」ヴィッキー・ストリンガーの新作『Imagine This』を読んだ。いろいろな意味で驚きに満ちた本である。
まず最初に驚かされるのは、ストリンガーの文章力、ストーリー・テリング力が格段に向上していたこと。自費出版だったデビュー作と違い、今回はアメリカでも有数の大手版元・サイモン&シャスター社から出版されている。いい編集者がついたのか、それともストリンガー自身が研鑚を積んだのか。いずれにしても、この上達ぶりは凄い。前作にはだれるところがいくつかあった(特に母親との長電話には参った)が、今回の作品にはそれがないのだ。主人公のパメラ(別名カルメン)の苦悩、悲しみ、怒り……それらがストレートに伝わってきて、読みながらハラハラしたり、涙したり。ひたすら「知らない世界のすっごい話」として惹きつけられた前作から、長足の進歩といえるだろう。
しかし、もっと驚かされたのは、8割以上読んだところで訪れる、とんでもないどんでん返し。これまでは、20年くらい前に読んだ本宮ひろ志の『ブンブン』とかいう漫画の、<メジャーリーガーを目指す主人公が、アメリカに渡る飛行機内で知り合い、光の速さで落としてやり捨てたはずのスチュワーデスが、実はメジャーリーグ球団オーナーの孫娘だった! 彼女の助けを得て、主人公はメジャーの頂点を目指す!!>というストーリーが、自分史上最低のどんでん返しだった。しかし、ついに今回はそれを越えてしまったのだ。アメリカ・アマゾンのブックレビューに、「もっといいストーリーができるまで書くのを待つべきだった」という意見があったが、諸手を挙げて賛成する。
どういうことかというと、パメラは前作で懲役20年以上、最悪の場合は終身刑もありうるという厳しい現実を突きつけられている。しかし、この作品はストリンガーの「自伝的小説」で、彼女の服役期間は7年であったことを、著者プロフィール等によって読者は知っている。なぜ終身刑がたったの7年になったのか。その謎のカギとなるのがこのどんでん返しなのだが、それがあまりに嘘臭くご都合主義的で、すべてをぶち壊してしまったのだ。こんなに嘘臭い部分を残したのは、そして編集者がそれを受け入れたのは、これが一部にもせよ実話だからではないか、という気もする。しかし、百歩譲ってそうであったにしても、もう少し書きようがあるだろう。前作から数えて、ペーパーバックで450ページ近くを読んできたのに、いきなり「うっそぴょーん」とやられたようなものだ。これでは読者はたまらない。この最後の2割弱がなければ、どんなにかおもしろかっただろうと思う。この部分に関しては、明らかに失敗である。
ところが、まだまだ驚くことがある。なんと、こんな「ぶち壊し」があるにもかかわらず、この作品はおもしろいのだ。おそらくそれは、前述した彼女の文章力向上によるところが大きいだろう。塀の中に閉じ込められ、ひたすら息子を思い、裁判を待ちつづけるパメラの物語と、保釈金を払って塀の外のストリート生活へ帰っていったチノを軸とするもうひとつの物語が交錯して進行し、パメラの喪失感、絶望と、そこからの再生を鮮やかに描き出しているのだ。ミケイラ(今作の主要登場人物)やドラゴス兄弟などのその後はちょっと気になるが、「パメラの再生の物語」であるから、必ずしもそれが必須なわけではないだろう。
長年のストリート生活と刑務所暮らし。ネタの宝庫ともいえる半生をもつストリンガーが、筆力をつけた。どう考えても、これは強い。あとはキャリアを積むだけだろう。次にどんな変貌を見せてくれるのか、今から楽しみである。できればいつか、『Let That Be The Reason』と『Imagine This』をひとつの物語としてリライトしてもらいたいと思っている。

ところで前作の日本語版『ワケありってコトで』には、翻訳の段階でカットされた箇所がずいぶんあった。そのなかにヤング・マイクというストリート・ボーイの話がある。ペーパーバックで1ページ程度の短い出番だったが。しかし、彼は『Imagine This』にもちょっぴり出ているのだ。せっかく出てきたのに、また削られちゃうんだろうか。なんかカワイソウ。


gen96_cat at 19:06|PermalinkComments(6)TrackBack(0)

2005年08月04日

ワックス型が完成!

8a927782.JPG昼休みにアトリエ絹月の宮田さんのところへ行って、7月5日にお願いした指輪のワックス型を見せてもらう。途中でデザイン変更などをしたために、よけいな時間がかかってしまった。宮田さんにはいつも迷惑ばかりかけている。
宮田さんが「中指用なら、石を極端に段違いにせず直線的に配置した方が、つけたときのバランスがいいですよ」とアドバイスしてくださったので、最初はもっと直線的なデザインを考えていた。しかしせっかくおもしろい石を選んだのだから、もう少し動きのあるデザインにしたいと思うようになり、こんなふうに変更していただいたのである。アームの幅に若干変化をつけ、ダイヤ1石をアシンメトリーに配したデザインが素敵だ。2週間くらいで完成の予定だから、お盆明けに写真をアップできそうだ。

編集部の引越し以来、時間に追われていたせいか気づくのが遅れてしまったが、神保町の北沢書店が、70%オフの改装セール(8月30日まで)を開催している。マディソン・スマート・ベル、ロディ・ドイル、エイミ・タンなどの読みそびれている作品をまとめて買ってきた。両手に持ちきれないくらいの量になったが、お会計は3405円。めちゃめちゃ幸せ。


gen96_cat at 20:03|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年07月11日

ワケありってコトで

32ad77df.jpg今日付けの「新語探検」で、「ヒップホップ文学」を取り上げている。代表作として紹介されている『ワケありってコトで』(青山出版社)は先月読んだが、とてもおもしろかった。「運命の恋人」と思った男に捨てられたシングル・マザーが、売春斡旋や盗品売買、麻薬取引でのしあがり、大金を手にするが……という物語である。
なにがおもしろいかというと、とにかく話がリアル。そして登場人物たちがリアルなのだ。クライム・ノベルの類には大物から小物まで、たくさんの犯罪者たちが登場するが、そのほとんどは作家の想像の産物である。その点、自伝的小説であるこの作品に登場するのは、著者のヴィッキー・ストリンガーが実際に会ったり、見聞きしてきた人物がモデルだから、すべてが生々しいほどにリアル。登場する売春婦や麻薬の密売人がどれも魅力的なのは、著者が「仲間」を愛し、大切にしてきたからだろうか。
著者はこの本の原稿を大手の出版社に持ち込んだが断わられ、自費出版をしてストリートで売ったそうだ。そしてその反響の大きさに「これはイケる」と確信し、「トリプル・クラウン・パブリケーションズ」を興して、同じような境遇の作家たちの作品を出版しているという。転んでもタダでは起きない、この逞しさが素敵ではないか。文学の新しい潮流として注目されているというが、ヒップホップ音楽と同様にかなり好き嫌いが分かれるらしく、アメリカのアマゾンのレビューには絶賛もあれば、「時間と金の無駄」とこき下ろす評もある。
ところでこの話には続きがある。「Let That Be The Reason」もお読みいただきたい。


gen96_cat at 18:08|PermalinkComments(2)TrackBack(2)

Let That Be The Reason

7c719318.jpg長くなったので分けたが、これは「ワケありってコトで」の続きである。先にアップした方が「続き」というのも変な話だが、こちらは後から読んでいただきたい。
『ワケありってコトで』がおもしろかったので、主人公たちのクールな会話を原文で読みたくなり、丸善でペーパーバックを取り寄せてもらった。ところが、ページを開いた途端に「?」の連続。
小説の書き出しはこうだ。「カルメン・エスコート・サービスでございます」。原文はこう。「Hello May I Help You?」。アメリカでもきちんとした会社や店なら、電話を取ったときに社名や店名を名乗る。「New York Times Sales Department, May I help you?」という具合に。しかし、きちんとした会社や店ではないから、主人公は名乗らないのである。そして少し後には電話に出た途端に切られてしまい、「たぶん、間違い電話をかけたと思ったか、怖気づいたかで切ったんだろう」と彼女は想像する。彼女が名乗らないからこその話のはずだが、翻訳版では名乗ってしまうのでわかりにくい。
また、主人公は「Carmen」という偽名を名乗っている。これを「カルメン」と表記しているのは、まあいい。しかし、登場人物たちの彼女への呼びかけが全部「カルメン」なのはどうだろう。「よおC」のような、いかにもヒップホップ感あふれるセリフが満載なのに。ほかにも普通の文学作品なら括弧に注で入れるであろう解説を、地の分に入れていたりする。「変な書き方だな」と思いながら読んだところが、訳者のご親切な注入り文だったこともわかり、納得した。
しかし、納得できないこともある。翻訳版には何か所か割愛されている部分があるのだ。ペーパーバックを読んでいると、翻訳版で読んだ覚えのない文章に出会う。「Chapter 11」など、翻訳版では跡形もない。「Chapter 11」以外の削除箇所は1箇所あたりペーパーバック1ページ程度で、メインの筋にはあまり関係ないから、割愛されたところでたいした影響はないかもしれない。しかし、一緒にクラブに行った男友達から銃を預けられるくだりとか、あまり「筋のよろしくない」部分が削られているのは恣意的な感じがする。そうした部分も含めてこその「ヒップホップ文学」作品ではないのか。訳者のあとがきなんぞに3ページも使うくらいなら、きちんと全文翻訳してほしいものである。
原文は翻訳をはるかにしのぐおもしろさだった。英語が得意なら、原文で読むことをお勧めしたい。そうでない人も翻訳版で十分楽しめると思うが、こういう事情は知ってほしいと思う。

★追記(2005年7月12日)
実は、この記事の公開時にはまだ原文を読んでいる途中だったのだが、読み終えてみると「Chapter 11」以外にも丸ごとなくなっている章があることがわかった。原文の32章が翻訳版では28章に減っているのだ。話の展開上、必要と思われる箇所もカットされている。実に不思議な「翻訳」である。


gen96_cat at 18:06|PermalinkComments(10)TrackBack(0)