2021年09月13日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その7)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第七回です。

前回までで一通りの試合の判定が出たので、結果を集計してみて、実際の結果と差があるかを見てみます。

■結果一覧

各試合の判定結果と、実際の結果を並べると、以下のようになります。

APは肯定側コミュニケーション点、NPは否定側コミュニケーション点、実際の結果は3人ジャッジなので、肯定側(A)、否定側(N)にそれぞれ入った票数を示します。「一致」は、私の結果と実際の結果の一致度を示します。A:完全一致(3-0メジャー側)、B:部分一致(2-1メジャー側)、C:部分不一致(2-1マイナー側)、D:完全不一致(3-0マイナー側)、です。

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実際の結果との一致度を見ると、AまたはB(メジャー側)が18/23、CまたはD(マイナー側)が5/23となっており、大きく試合の結果に影響するようなDecisionはそれほど無いようです(Dの試合も、(結果的には)勝敗は変わらないため、私がジャッジに入っていたら勝敗が変わっていた可能性があるのは2試合だけ)。

ただ、実際の試合では3-0であったにも関わらず、反対側に投票、とした試合が3試合あり、この内容については、時間があれば分析してみたいところです。

続いて、各組ごとの結果です。こちらも、自分の結果と実際の結果を並べています(8組でYouTubeライブ配信のなかった試合については、実際の大会の結果(コミ点は1/3した値)を使用しました)。実際の大会は3人ジャッジなので、ボート数(V数)も表示しています。順位は、「勝数」「V数」「コミュニケーション点」の優先順で決めています。

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こちらは、8組中6組で順位の変動がありました。

自分の結果を基にトーナメントの対戦を組むと、トーナメント第一試合8試合のうち、実際のカードと一致したのは一試合だけで、後はすべて異なる組み合わせとなっています。また、実際には トーナメントには出場していないチームが2チーム入ることになります。

実際にこの組み合わせでトーナメントが行われていたら…と想像を巡らせるのも面白いかもしれません。

中学の予選記録は、以上となります。



2021年09月12日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その6)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第六回です。

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■J3-5(N vs. M)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側18点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度減じられると考える。

 プランを取った場合に、教員の労働時間が減少する程度については、1NRの議論(トータルで勤務時間があまり変わらない)と、さらに1ARの議論(教員は、周囲の期待に応えるために頑張ってしまう傾向がある)で補強されることによって、相当程度解決性が怪しそうな印象となった。

 授業準備の話についても、部活動顧問を持っていても持っていなくても、状況的にはそれほど変わらない、という1NR議論が残ると考える。

・デメリットの評価:

 相当程度残ると考える。

 肯定側からは「地域クラブ等でも同様の効果を得ることができる」という話があったが、否定側議論の中に「学校の保護下に置くことが重要」という話や「実際に民間に移行した結果問題が発生した」という話があることから、これだけでデメリットを消すものではないと考えた。それ以外の部分については、おおむね否定側の主張が通ると考える。

・結論:

 メリットが相当程度減じられており、デメリットが十分上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:よく読めている。内容的にもオーソドックスでよい。応答で「過労死ラインを下回らないとメリットが発生しない」と認めてしまったのは悪手。

 否定側質疑:質問の内容、特に、過労死ラインを下回らないとメリットが発生しない、という事を肯定側に認めさせた点は良い。

 否定側立論:良く分析・リサーチされている。ドイツの事例なども興味深い。ただ、発生過程で発生する問題が、深刻性の内容とリンクしているのか、は若干疑問を持った。

 肯定側質疑:聞いているポイントは良いが、やや自分の意見の押し付けになってしまっている部分が見受けられる。例えば、「発生過程2の資料は小学校のことを言っていて、中高と関係ないのでは?」という聞き方だと、その資料でも中高の生徒に当てはまる理由を言われてしまうだけなので、少し段階を踏んで「この資料で言及されているのは小学校ですよね?」「中学、高校について、同様のことを言っている資料はありますか?」と、事実を確認していくと良いと思う。

 否定側第一反駁:分析内容はバランスが取れていて良い。ただ、「教員の過労死者が63人しかおらず、国家として保護する義務が無い」という議論は、否定側の深刻性が、そうした労働問題以上に、国家として解決すべき問題である、という分析が入っていないと、議論としては弱いと感じた。

 肯定側第一反駁:メリットは良く守れていたと思うが、全体的に議論の効率をもう少し上げたいところ、また、「教員は際限なく頑張ってしまう」という資料は、ガイドラインに対する反論としては、あまり適当でないと感じた(「教員がガイドラインを破ってしまう、という話をしたいのであれば、もっと直接的に、教員が実際にガイドラインを破っている、といった資料を準備できると良い)。デメリットについても、議論の内容は悪くないが、クレームと資料の内容が不一致(クレームではマナーの話をしていながら、資料の内容ではそうした話に言及していない)な部分があるのが気になった。

 否定側第二反駁:メリットにおいて、1ARの資料の逆用は良いアイデアと感じた。全体的に1NRや否定側立論を忠実に伸ばしていて、良い印象を持った。

 肯定側第二反駁:立論や1ARの内容をきちんと踏まえて自分たちの議論を伸ばそうとしている点は良い。価値比較のところで、もう少し踏み込んで、生命が尊い、というところから、デメリットとの価値比較(デメリットでは必ずしも生命が失われるわけではない)を展開できると良かったかもしれない。

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■J3-6(Q vs. P)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側20点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度減じられたと考える。

 教員の時間的負担に関しては、教員の気質上、結局別の業務を入れてしまい、肯定側が言うほどの労働時間削減にならないのでは、と感じた。

 精神的負担については、より大きな負担となりそうな、児童との関係や保護者対応部分がなくならない以上、プランによって軽減できる負担が若干曖昧になった。

 金銭的負担については、単純に部活動に対して手当てが出ない、という話であり、プラン後も単に部活動がなくなるだけで、教員の給料が増える、という事も無いため、そもそも発生するのか、に疑問がある。また、重要性にも、この話に相当するインパクトが示されていないと考えた。

 全体として、長期的には問題が解決する方向、という1NR議論と合わせて、かなりの程度メリットは減じられていると判断した。

・デメリットの評価:

 ほぼ残ると考えた。

 肯定側の唯一の反論は、「部活動によりアイデンティティが養えるか不明」というものだったが、資料もついておらず、否定側立論の内容から考えても、デメリットのリンクは成立するとすべきと判断した。

・結論:

 メリットが相当程度減じられており、デメリットで十分上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:資料の内容がコンパクトに無駄なくまとまっており、議論密度が高い点は評価できる。また、教員の負担を三種類に分けて論じているのは、ユニークで良いと感じた。できれば、発生過程、重要性もこの三つに沿った形で説明してもらえると更に良い。

 否定側質疑:相手のことを「相手側さん」と呼ぶのは違和感がある。質問内容については、概ね良い。特に、「〜という証明はあるか?」と、事実を確認していく表現になっているところは優れていると感じた。

 否定側立論:読み方、スピードはベストに近いと思う。内容的にも、アイデンティティの定義がやや人工的に過ぎる(おそらく非認知スキルと同一視されるのを嫌ってのことと思われるが)ものの、精緻な分析がされていると感じた。

 肯定側質疑:質問するポイントは悪くないが、最後の「アイデンティティとは、非認知能力と同じものか?」という質問は、こういう表現だと「違う」という答えしか返ってこないので、アイデンティティの内容を詳細に確認して、1NRが、非認知スキルと類似した部分をピックアップして、自分の議論につなげる、というやり方の方が良いと感じた。

 否定側第一反駁:内容的には秀逸な反駁だった。スピーチ構成が、現状分析3-C→現状分析3-A→発生過程→現状分析3-B→重要性A、と入り組んでおり、若干フローが取りづらかった。

 肯定側第一反駁:メリットについては良くカバーしたが、「精神疾患の原因は部活動」という資料は、内容がそのようになっているのか、が分からなかった(教員の労働時間が増えている要因として、若年教員の増加と授業時間の増加までは分かったが、それ以外の要因が聞こえなかった)。デメリットについては、やはりもう少し議論が欲しい。通常の非認知能力への反論で、応用できるものが無いか、を検討すべきだった。

 否定側第二反駁:自分たちの立論、1NRを丁寧に伸ばせており、良い。まとめ部分の「国として義務教育の質を保証すべき」という話は、部活動が正規の教育課程外活動であることを考えると、やや無理があるかもしれない、と感じた(今回はそのような話は無かったが、例えばメリットに学習能力の向上、といった話が入っていたりすると、肯定側に逆用されるかもしれない)。

 肯定側第二反駁:デメリットでは、少ない議論をうまく膨らませてリカバリーを試みた点は良い。メリットもよくカバーしたが、最終的な比較までたどり着けなかった点は悔やまれる。例えば、メリットの冒頭で言っていた「部活動顧問は、教員にとって義務ではなく、あくまで自主的活動」という話を利用して、「正規課程外の部活動に依存して教員を消耗させるより、教員の部活動負担を軽減して、教員の肉体的・精神的負担を軽減することで、正規課程を充実させるべき」といった比較を行っても(Newと取られる可能性は高いが)良かったかもしれない。

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■J3-7(T vs. S)

・コミュニケーション点:肯定側14点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 ある程度削られると考える。

 解決性に対して、1NRから「約6割の教員については、その他の業務が入ることによって、授業準備時間は増えない」という議論が出ている。その後肯定側が「37%が授業準備時間を増やせている」と返しているのと表裏の関係にあると考えられ、結局、約4割は授業準備時間を増やし、残り6割については他の業務が入ってしまうため、それほど授業準備に回せない、睡眠時間については、あまり変化はない、と判断した。

 さらに、授業準備時間が増えたとして、それが学力向上に直結しているか、についても(ダウトレベルではあるが)疑問が呈されており、肯定側立論の中にも、これに応えられるような議論が探せず、解決性については、若干怪しい面があると感じた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 肯定側の唯一の反論は「現状分析2の資料によれば、年収400万円未満の層でも、35%くらいは学校外活動に参加できている」というものだが、年収800万円以上の層と差があることは否定されていない。年収が低い=一切学校外活動ができない、とまでは言えないにしても、ある程度の格差発生は認めざるを得ないと考えた。

・結論:

 メリット・デメリットともある程度残ると考えられるものの、残る程度についてメリットの方が小さく見えること、また、重要性・深刻性を比較しても、これからの時代(AIをうまく活用する?)において、より必要な能力は、部活動で得られるコミュニケーション能力やリーダーシップに関する能力であると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:内容は悪くはないが、議論間やクレームと資料の間の間がほとんどなく、フローを取るのに難儀した。また、解決性は授業準備と授業の質や生徒の成績の間の関連性がもう少し実証分析などで示されると良いと感じた。

 否定側質疑:相手のことを「相手側さん」と呼ぶのは違和感がある。質問内容は悪くないが、若干意図不明な質問が散見された(例えば「現状で質の高い教育はできているのか?」など)。

 否定側立論:プレゼンテーションは非常に良かった。応答も、自分の立論を正確に理解していることをうかがわせる誠実な対応ができていた。

 肯定側質疑:質問のポイントは良い。「低所得者層の割合はどれくらい?」といったデータを問う質問は秀逸だった。後半若干ネタ切れになった感があるので、もう少し質問項目を用意しておくと良い。

 否定側第一反駁:構成的に、きちんと相手のメリットの構造順になっており、フローが取りやすい。内容的には(少し予想外のケースだったのか)、もう少しバリエーションが欲しかった。例えば、解決性へのダウトは、どうせなら「部活動の時間が削られても、そのうちどれくらいの時間が授業準備に回るのかわからない」「授業準備時間が増えることと授業の質改善のリンクが無い」「授業の質が改善したとしても、それで生徒の成績が上がる証明がない」など、もっと細かくステップを分けたり、最後のAI時代に必要な能力の話などは、デメリットの深刻性との関連をもう少し説明したりしても良かった。

 肯定側第一反駁:スピーチの冒頭で、メリットのことを言っているのか、デメリットのことを言っているのか、明示されなかったので、一瞬どこにフローを書けばよいのか迷った。内容的には、メリットの守りで、前半のあまり重要でない議論に時間を使い過ぎてしまった。そのためデメリットへの反論がおろそかになってしまったので、こうした議論を時間をかけずに返す練習が必要。

 否定側第二反駁:落ち着いてうまくまとめていた。デメリットの深刻性と1NRの重要性への反論がうまくはまり、価値基準が明確になったのも良い。

 肯定側第二反駁:ここまでの展開はそれほど特殊ではないと思われるにもかかわらず、スピーチ中に迷う場面が多かった。議論展開のシミュレーションを積み重ねると良いと思われる。

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■J3-8(W vs. V)

・コミュニケーション点:肯定側16点/否定側18点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度削られると考える。

 内因性について、休日分の負担が現状でも解消されていく方向であることは否定されていない。解決性については、部活動以外に、学習指導要領の内容が多すぎること、部活動顧問有無で勤務時間にあまり差がなく、負担がそれほど変わらないこと等は認められている。したがって、現状確かに部活動に費やしている時間は多いが、プランを取ったとしても、浮いた時間の(すべてではないが)かなりの時間が、必ずしも休養に充てられずに、他業務を遂行する時間になってしまう可能性が高いと考えた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 固有性については、部活動に費やす時間が長ければ長いほど効果が大きい、という事は、メリットの内因性の、今後部活動時間が減っていく方向、という話は、デメリットを削る方向に働く。

 集団行動には、1ARの言うような問題点もあるが、そうした問題を克服することで、否定側の言う非認知スキルが身につく、という面もあるし、自死の問題にも触れていたが、その程度があまり強く証明されておらず、デメリットを上回るとまでは判断できなかった。

 また、1ARが言うように、生活保護を受けるような、最貧困層の子どもにとっては、プランの有無に関わらず部活動に参加できていないという状況ではあるものの、その少し上の層の子どもたちが、部活動が出来ずに、貧困層に落ちていくまたは現状から上がっていけなくなる、という部分のデメリットは存在すると考えた。

・結論:

 相当程度減じられたメリットに対して、デメリットの残存する量が上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:プレゼンテーションは良い。内容については、トータルの部活動時間を具体的に述べているのは良い。ただし、間接業務にかかる時間にこだわる理由はよくわからなかった。応答においては、若干行き違いがあったが、そうした場合は、例えば「インパクト、という用語の意味が分からないので、答えられない」といった返答をしておくと良いと思う。

 否定側質疑:相手のことを「相手側さん」というのは違和感がある。内容的には、やや行き違いが多かった。相手が用語を理解していないと思ったら、一般的なことば(例えば「重要性の内容を説明してください」とか)に言い換える、といった工夫は欲しかった。

 否定側立論:プレゼンテーション、内容とも問題ないと思う。ただ、オリンピック選手の話については、対応する内因性・深刻性が無く、若干浮いている気がした。

 肯定側質疑:質問するポイントに若干改善が必要と感じた。「非認知スキルは運動部でしか身につかないのか?」「忍耐力は、どのくらい部活動をやったら身につくのか?」といった質問をしても、あまり有益な答えは返ってこないと思うので、例えば、忍耐力が身につく、という話と深刻性のアメリカの研究とどのような関係があるのか、といったところを攻めて、固有性と深刻性の関係が薄い、という印象をつけるような方向へ持っていきたい。

 否定側第一反駁:構成も良く、内容的にもかなり多くの議論を出すことができ、良い一反だった。ただし、エビデンスがやや省略されすぎて文脈が不明になってしまっているものが散見された(例えば「空いた時間に補習や教育相談をする」という資料など)。

 肯定側第一反駁:返す議論の選択に課題がありそう。1NR冒頭の「誰を救いたいのか、よくわからない」といった、あまり有効でない(特に資料もない)反駁に時間を使い過ぎていると思う。むしろ後半に出てくる解決性の議論に時間を割くべき。

 否定側第二反駁:自分たちの議論を丁寧に伸ばしており、良い。デメリットの1AR最初の議論に対する反駁(人間関係の問題を克服する過程で成長する)も秀逸だった。

 肯定側第二反駁:良くリカバリーできていた。最後に重要性を伸ばして、「部活動は教員の犠牲にただ乗りすることで成り立っている」という話も良いが、これが否定側深刻性と比較して、どう優れているのか、という点の説明もできると良かった。

…次回は、試合結果の集計と分析を行いたいと思います。



2021年09月11日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その5)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第五回です。

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■J3-1(B vs. A)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側19点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 ある程度減じられると考える。

 内因性については、ガイドラインの効果は若干はあると考えられるが、現場では理想通りにはいかない、という肯定側の議論の方がもっともらしく感じる。

 解決性については、部活がなくなることによる補完的業務(生徒指導等)の負担が返って増える、という1NR議論への返しが不十分のように見える。また、飯田市の例などみても、実際に授業が改善するのは30-40%程度のようであるし、改善する場合も、その程度について言及していないので、どこまで生徒の能力に影響があるのかは、判断し難い面がある。

・デメリットの評価:

 かなりの程度残るのではないかと考える。

 肯定側の反論であったアクティブ・ラーニングについては、現状行われているものが、プランを取ることによってどれだけ改善するのかが不明。また、そもそも部活動は、こうしたアクティブ・ラーニングでは救えないタイプの生徒(勉強が苦手な生徒)を対象としていることからも、ややIrrelevantな印象を受ける。

・結論:

 減じられている/元々改善の程度が分からないメリットに対して、少なくとも部活動の存在によって救われている(勉強が苦手な生徒や、自らの興味・関心に合わせて部活動を楽しんでいる)生徒にとっての居場所や成長の機会を奪うデメリットの方が大きいと考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:スピーチ自体は分かりやすいが、内因性の一連の議論がなんとなく脈絡なく配置されてしまっていて、ストーリーとして入りづらい印象を受ける。これだと、部活動と授業準備の関連性があまり感じられないので、例えば「部活動に多くの時間が割かれている」→「『そのために』授業準備時間が足らなくなっている」→「『結果的に』授業の質が下がっている」…といった順序で、ストーリーを仕立てた方が、リンクが頭に入ってきやすいと思う。

 否定側質疑:1NRに連動しそうな質問を多く出すことができ、良い質疑だったと思う。特に、授業の質や、生徒の能力が悪化することによる実害がない、という言質を肯定側から引き出せたのは良かった(できれば、これをもっと1NRに使ってもらえるとより良かった)。

 否定側立論:良い。このタイプのデメリットは、リンク部分(格差が発生するところ)までは比較的強固に作れるが、深刻性が課題になりそうに感じた。今回に関しても、立論段階ではやや曖昧な印象を受けたが、後半の展開まで読んだ上でこのような深刻性にしたのだとすれば、相当戦略的に練られたデメリットと感じた。

 肯定側質疑:聞いているポイントは良い。「部活動で得られる効果が、他の学校生活の中の活動で得られるなら、デメリットは生じないか?」といった聞き方は、たいていは「それでもデメリットは生じる」という反応しか引き出さないので、良い聞き方ではない(今回に限って言えば、「生じない」という言質を引き出せてしまっているが…)。本来であれば、部活動が効果を生み出す要素を聞き出して、それに合った議論を1NRに提案する、といったことができるのが良い。

 否定側第一反駁:内容は、良い。ただ、議論の順序がかなり錯綜している。メリットの構成が内因性→解決性→重要性、なのに、1NRのスピーチ順が解決性→内因性→重要性となっており、自然な流れになっていない。また、内因性の反論も、3番目の議論に反論してから2番目の議論に反論するなど、前後している部分がある。

 肯定側第一反駁:メリットの内因性の守りは良かったが、解決性への返答は不足していると感じた。デメリットについては、良く守ったが、最後の議論は内容が良くわからなかった。

 否定側第二反駁:自分たちの議論をほぼ漏れなく伸ばせている点は良い。最後の比較は若干蛇足的な印象を受けた。

 肯定側第二反駁:よくリカバリーした。ただ、「部活動の参加者は7割で、アクティブラーニングは9割の生徒が享受する」という議論は、若干眉唾な印象。そもそも「7割」「9割」と言っているところの母集団が異なる(部活動は「全生徒」、アクティブラーニングは9割の「学校」)。すなわち、学校で1クラスでもアクティブラーニングを実施していたら、実施校に分類されると思われるので、9割の「生徒」ではないと思う。

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■J3-2(E vs. D)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側17点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 多少は削られるものの、残ると考える。

 1NRの「他業務が横滑りしてくる」という話は、実際にそういう事が起こった、という話ではなく、飯田市の実例から考えても、実際には労働時間は減少すると考えた方が妥当と考える。

 ガイドラインの話については、多少は労働時間を減らす効果があるのかもしれないが、守っていない学校も多く、現状のままでは今後もそれほど急激に労働時間が減る、というものでもなさそう。

 現状でも「総合型公務支援システム(?)」なるものが導入され、労働時間が減少する、という話は残っているが、そもそも否定側も「何時間削減すればよいのかわからない」と言っている通り、わからないなら、可能な限り労働時間を削減しておいた方が良いのでは?と考えると、プランを取った方が、部活動の時間も削減されるので、より好ましい状態になる、という事は否定されないと思う。

・デメリットの評価:

 かなり小さいと考える。

 否定側は、実質金銭的な問題のみからデメリットが発生する、という主張をしていると考えると、プラン後に生徒の受け皿になるスポーツクラブのかなりの部分が、非常に低料金しか徴収していないことにより、問題の発生がかなり怪しい。2NRで総合型地域スポーツクラブの話をしているが、エビデンスとして出されたものではなく、これをもって肯定側議論が返っているとは考えられない。

 また、固有性についても、部活動以外の様々な活動から、部活動と同様のメリットが得られるのであれば、わざわざ部活動を設けておく意義もあまり感じない。さらに、否定側自身、部活動の機能はスポーツクラブで代替可能、と認めてしまっているので、部活動固有の意義がさらに薄れている感がある。

・結論:

 メリットに比べ、デメリットが十分削減されていると考え、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:概ね良いが、スピーチの冒頭部分がやや聞きにくかった。通信環境の影響も若干あり、音声的に不明瞭な部分が多かった。聞き取りに慣れてくれば、理解度も上がるので、特にオンラインではある程度「慣らし」の時間を作って、ジャッジが聞き取りに慣れてから徐々にスピードを上げるのが良いと思う。

 否定側質疑:聞いているポイントは良いが、食いつきが若干足りない。相手の答えになっていない答をスルーしてしまっていて、相手の弱さが明確になっていない。例えば、「授業は破綻しているのか?」という質問に「授業の準備時間が云々」というやや不明瞭な答えに対しては、「授業が成立してない、とまで言っている資料は無いですよね?」と畳みかける程度の突っ込みは欲しい。

 否定側立論:肯定側と対照的に、冒頭ゆっくり読むところから始めて、スピードを上げていく、というところは良かった。技術的には優れていると思うが、冒頭と、スピードを上げたところのギャップがやや大きく、スピードが上がった途端にフローが取りづらくなった、という印象。また、数字等でスピードを落としてフローを取りやすくしているのは評価できるが、その他の部分で、ゆっくり読むところと速く読むべきところのメリハリのつけ方も、工夫の余地がありそう。例えば、最後の深刻性の説明のところは、別にゆっくり読む必要は無いと思う(時間調整だったのかもしれないが)一方、非認知スキルの内容が列挙されている部分などは早すぎてフローが取れず、むしろこちらをゆっくり読んでほしかった。

 肯定側質疑:話しかける相手に対して「相手側さん」と言うのは、違和感がある。質問のポイントは良いが、自分たちの意見をストレートにぶつけすぎてしまっていて、対話にならなくなってしまっている部分がある。例えば、「現状分析2の資料は、年収400万未満の家庭の子どもは、現状部活動に参加していない、と言っているだけで、それが即金銭的問題で外部の活動に参加できない、ということにはならないのでは?」という聞き方をしてしまうと、相手は構えてしまう。もう少しオブラートに包み、段階を踏んで、「固有性2の資料は、『現状の、部活動が存在する状態で』年収400万未満の家庭の子どもが、部活動以外の活動に参加している割合が少ない、という資料ですよね?」「部活動がなくなった後に、年収400万円未満の家庭の子どもがどうなるか、という事までは示していませんよね?」くらいにとどめておいた方が良いと思う。

 否定側第一反駁:冒頭、メリットのどこに対する反論かを明示せずにスピーチが始まっていた様に見えるが、内因性なのか、解決性なのか、をはっきり言ってからスピーチを始めた方が、フローの書き始めで戸惑わなくて済むと感じた。内容的には悪くはないが、「過労死ラインを下回るためには、何時間労働時間を減らせばよいのかわからない」という主張は、それ自体ではあまり否定側に有利には働かないように感じた(どれだけ減らせばよいかわからないなら、可能な限り減らすのが良い、という結論につながりそうなので)。

 肯定側第一反駁:デメリットの反論は良いが、質疑の内容を盛り込めると(現状分析2の資料は、部活動がある状態での話であり、年収400万未満の層であっても、部活動がなくなったら外部クラブに移行する可能性を否定しない)より良い。メリットも、1、2点目の議論に対する反論は良いが、できれば3点目の反論もカバーしたかったところ。

 否定側第二反駁:デメリットの要因が金銭的なものに限られる、というニュアンスになってしまったのが悔やまれる。また、外部クラブの費用に関しては、エビデンスを使ってもっときちんと反論すべき。最後の比較を削ってでも、この議論に反論すべきだった(比較部分は(少なくともこの試合では)あまり勝敗に貢献しなさそうな内容なので、もっと個々の議論を充実させるべきだった)。

 肯定側第二反駁:必要な仕事はできていると思う。「塾などの学力格差がプランによって解消する」という話は、興味深いが、この時点で出てくるのはNewぽいので、可能なら立論に盛り込むか、少なくとも1ARに出してもらう必要があったと思う。

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■J3-3(H vs. G)

・コミュニケーション点:肯定側19点/否定側20点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 削られはするものの、ある程度残ると考える。

 教員の時間については、プラン前に対しプラン後全く変化しない、という議論は無いと考える(ガイドラインはあっても、結局部分的解決になるため、プランを取る場合よりは、確保できる時間は短くなる)。また、部活動顧問以外の教員も、授業準備の時間を十分とれていない、という議論についても、部活動顧問がさらに授業準備時間が少なくなることは否定しない。

 部活動を行っている生徒の方が成績が良い、という議論については(やや論点先取りになるが)、最貧困層はそもそも部活動に参加できていない、という、デメリットに対する肯定側議論により、やはり、肯定側スタンスで触れられている、貧困層に対しては有効な反論とは言えない。

 総じて、1NRで言及されたような、解決性に対する若干の疑問は残るものの、重要性で言われているように、部活動の存在が、学校が一致団結して教育レベルの底上げに取り組むことの妨げになっている面はあると考え、一定程度の解決性は認めるべきと判断した。

・デメリットの評価:

 減じられるが、ある程度残ると考える。

 1ARでも言われているように、部活動による非認知スキルの獲得については、否定側が言うほど大きなものではないと考える(1ARの、部活動参加者とそうでない者の間にはほとんど差が無い、という議論より)。ただ、差が皆無、という訳ではなさそう。したがって、現状部活動に参加している者が部活動がなくなることにより、多少のスキル低下を被る可能性はあると考える。

 ただし、最貧困層については、1ARの議論が残っており、プランの有無に関わらず、そもそも部活動の利益を享受していないと考えられる。

・結論:

 判断基準として最終的に伸ばされたのは、肯定側の「学校は、貧困層にとっての最後の砦なので、貧困層を最も重視した政策を採るべき」という議論と考える。その観点で行くと、プランをとっても取らなくても、デメリットという観点からは、貧困層にとっては状況がほとんど変わらないのに対して、メリットの方が(程度は不明であるものの)、貧困層に対して利益を及ぼす可能性が高いと考え、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:授業改善→学力向上、というケースは他にもいくつかあったが、その中でも出色の出来だった。他の同様のケースに比べて、プラン→学力向上のリンクがきちんと分析されていると感じた。ただ、構成的に、そのリンク部分に「重要性」とラベル付けされている点は気になった。

 否定側質疑:相手ケースの弱点を理解した、良い質疑だった。授業準備時間と、学力向上のための要素(6要素?)との関係が薄そう、という事を浮き彫りにする質問は秀逸だった。最後の、現状分析2に関するやり取り(貧困家庭の子ほど中退率が高い)に対しては「確かなバックデータを持っているのか」と聞くよりも、スピーチの中で出てきた事実のみを聞く方が良い。すなわち、「立論中では、データは出てないですよね?」という確認ができると、ベター。

 否定側立論:デメリットのリンクが二本立てになっており、収入レベルが低い家庭だけでなく、高い家庭でも、活動機会が失われる可能性がある、としたところは良い。深刻性も工夫されていると感じたが、最終的に単なる家庭環境格差の話で終わっており、収入の高い家庭の子どもがスポーツ・芸術活動をしなかった場合にユニークなインパクトが若干見えづらい感はあった。

 肯定側質疑:相手のことを「相手側さん」と呼ぶのは違和感がある。質問内容は、試合後に振り返れば意図が分かるが、その場では、あまり相手から良い回答を引き出せていない印象だった。例えば、1ARの「貧困層は現状でも部活動に参加できていない」という議論を際立たせたいなら、質問としては、「現状でも、部活動への参加率は100%ではないですよね?」「現状部活動に参加していない人がどういう人たちなのか、という分析は無いですよね?」といった確認をしておけば良いと思う。

 否定側第一反駁:内容は良い。特殊なケースに対して、かなりSpecificに対応できていたと思う。スピーチ構成として、おそらく最初に重要性→解決性→再び重要性、となっていた様に思われるが、これだとフローが取りづらいので、できれば要素ごとに議論はまとめてほしい。

 肯定側第一反駁:議論量はそれほど多くないが、Strategicに構成されていると感じた。1ARの段階からきちんとスタンスを伸ばして、肯定側戦略が明確になっている点は良い。

 否定側第二反駁:最終的に、(最)貧困層が救われるかどうか、という点にフォーカスしてしまったのは、戦略的ミスだと思う。この場合の否定側は、貧困層だけでなく、高収入家庭でも問題が発生する可能性がある、という点を強調し、自分たちの深刻性1や2を伸ばすことで、トータルでメリット・デメリットを考えさせるようなスピーチをするべきだった。

 肯定側第二反駁:大局的な部分はよくとらえられていると思う。スタンスをきちんと伸ばし、貧困層にフォーカスさせたところは良い。学力向上へのリンクについては、教員の時間が増えるかどうか、という部分だけでなく、部活動が教員の一致団結を妨げている、という(重要性2の)議論も伸ばした方が良かった。

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■J3-4(K vs. J)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側18点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 削られるものの、ある程度残ると考える。

 ストレスや運動不足の方が、健康への悪影響が大きい、という議論については、プランによってかえってストレスや運動不足が悪化する、という話とは思えず、肯定側立論の「長時間労働それ自体がリスク」という話で返ると考える。

 他の業務や生徒指導が入る、という話は、確かにそのような面もあると考えられるが、現状でかなりの長時間(50時間/月?)が部活動に割かれており、これら業務がそこまで時間を要するとは考えづらい。

 部活動以外にも持ち帰り仕事などで教員の時間が取られている、という話については、プランを取ることで部活動分の時間が発生することを否定するものではなく、特に解決性に影響を与えるわけではないと考えた。

 総じて、他業務などが若干入る可能性はあるものの、ある程度の労働時間削減は達成され、それによる精神疾患や過労死のリスクは小さくなると考えた。

・デメリットの評価:

 発生の可能性は否定されないが、かなり怪しいと考えた。

 まず、部活動が廃止された場合に、どの程度の生徒が(地域スポーツクラブ等に行かずに)エネルギーを発散できずに街を徘徊したりするのか、に、やや疑問がある。2NRで地域スポーツクラブは不足している、という話は出たが、これでカバーできない領域がどのくらいあるかは明確ではなかった。

 また、部活動と少年犯罪の因果関係についても疑問が残る。否定側立論からは、飲酒・万引きといった軽犯罪の可能性が高まることまでは理解できるが、少年院に入るような深刻な非行については、おそらく(1ARの議論から)減少しており、部活動との関連性は低いのではないか、と考えた。

 さらに、部活動特有のマイナス面として、人間関係が複雑になることによるいじめ等の問題もあり、その分も差し引くべきと考えた。

・結論:

 デメリットは若干は残るものの、おそらくほとんどが軽犯罪であり、更にいじめ等の派生する問題も考えると、メリットを上回るほどではないと判断し、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:構成はきれいにできている。「部活動顧問を断れない」という部分に資料を3枚割いて分析を行っているが、おそらく実際の試合であまり争点になるところではないので、ここを削って他所(特に解決性)を強化した方が良いかもしれない。

 否定側質疑:質問内容は悪くないが、聞き方が、相手にかわされやすい形になってしまっている。例えば、「メリットは、過労死ラインを下回ることで発生するのか、それとも労働時間が減れば減っただけメリットになるのか?」といった話になってしまうと、相手は当然後者と言ってくることが予想されるので、「具体的に、何時間時間外労働が減れば、どれだけリスクが小さくなるか、証明した資料はあるか?」といった質問を出した方が、Linearityと言いつつも、その程度が不明、という反論につなげられるのではないか。

 否定側立論:分析は面白い。ただ、部活動廃止から非行へのリンクとして挙げられている、精神的・肉体的余裕や、規範意識から犯罪へのつながりの説明は難しそうに感じた。また、徘徊や万引き等の軽犯罪から、深刻な犯罪へつなげるのも、若干苦しそうな印象を受けた。

 肯定側質疑:相手のことを「相手側さん」と呼ぶのは違和感がある。質問のポイントは良いが、やや極端な、自分たちに都合の良い結論を押し付けようとするあまり、うまく相手の答えを引き出せていないように見える。例えば、「部活を引退したら、全員が犯罪者になるのか?」という聞き方よりも、「部活動引退後に犯罪率が上がった、という具体的なデータはあるのか?」という聞き方の方が有益な情報を引き出せると思う。

 否定側第一反駁:議論の順序が、「深刻性1」→「解決性1」→「深刻性3」と錯綜しており、ややフローが取りづらかった。内容はオーソドックスではあるが、「長時間労働ではなくストレスや運動不足の方が問題」といったユニークな議論もあり、良かった。

 肯定側第一反駁:メリットは効率的に守れていたと思う。デメリットに対しては、おそらく準備がしにくかったと思われるが、その中でも相手の議論をきちんと分析できていた。

 否定側第二反駁:メリットの1NRの伸ばし、デメリットの伸ばしとも、よく頑張ったと思うが、総合型地域スポーツクラブで対応できない生徒の数が不明なのと、T/Aがドロップされてしまったことが悔やまれる。

 肯定側第二反駁:自分たちの議論をまんべんなく伸ばせているが、やや散漫な印象になってしまった。デメリットのT/Aなど、伸ばすべき議論が強調されると良い。

…次回へ続きます。



2021年09月10日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その4)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第四回です。

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■J2-5(O vs. N)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側16点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 かなりの程度削られると判断した。

 現状の教員の労働時間が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか、は分からなかったが、部活動を廃止した場合に、新たな生徒指導などの業務が発生し、その対応で時間を取られる、という部分については否定側寄りに取った。また、過労死については、10年間で63人という数字はあるものの、そのうちどれくらいが部活動要因なのか、はよくわからない(富山県の例もあるので、ゼロではない、と判断はできるものの、額面通りに受け止めるべきではないと考えた)。さらに、労働時間の減少幅も、肯定側の言う額面通りではないと思われる。

・デメリットの評価:

 ほぼ残ると考えた。

 1ARでの肯定側からの反論として、有効と感じられるものが無いと思われる。メリットの一部で、「現状の帰宅部の人達も問題行動を起こしていないのではないか」という話はあったが、これも証拠資料があるわけではなく、実態が不明。

・結論:

 結局、地域クラブに行けないような人たちが、社会的スキルを身につけるような経験が出来なくなったり、問題行動を起こしたりして、損失を被ること、問題行動により、肯定側メリットの解決性も削られてしまう事から、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:非常に聞き取りやすいスピーチだった。議論と議論の間の「つなぎ」のスピーチがしっかり入っていて、余裕をもってフローを取ることができた。

 否定側質疑:質問の仕方がやや強引という印象を受けた。自分の結論の押し付けになってしまっている部分がある(例えば、「富山県の部活動要因の過労死はレアケースですよね?」といった質問など)ので、肯定側議論の中の事実を確認しながら、相手の弱点を引き出す質疑を心掛けたい(例えば、「部活動が原因と『確実に』わかっているケースは、富山県の一例以外に存在するのか?」など)。

 否定側立論:非常に戦略的な立論と感じた。深刻性の最後の部分は、メリットをFlipする議論につながることが予感され、面白い。

 肯定側質疑:相手の、ややいい加減と思われる返答をスルーしてしまっている箇所が散見される。例えば、「プランによって、低所得層の人がどれくらい増える?」という質問に「プランによって貧困層が増える」という返答は、答えになっていないので、「それでは答えになっていない」ということを指摘し、結局具体的な数値は出ていない、という事を確認すべき。

 否定側第一反駁:良い。否定側立論から想定されたFlipの議論がきちんと入っており、効果的にメリットを削っていると感じた。ただし、スピーチの構成が、相手の議論(内因性/発生過程/重要性)に沿っていないので、そこを合わせられると、更に良い。

 肯定側第一反駁:メリットで、1NR議論に対抗する資料を出せた点は良い。また、スピーチ内容も分かりやすかった。ただ、メリットに触れているのか、デメリットに触れているのか、わかりづらいところがあり、デメリットへの反論がおろそかになっている印象となってしまった。

 否定側第二反駁:必要な箇所はきちんと伸ばせており、良い。ただ、教員の労働時間に関しては、1NRと1ARの資料の比較をきちんとしてほしかった。

 肯定側第二反駁:メリットのリカバリーは最低限はできていたと思う。デメリットは、発生してしまうのは仕方がないと割り切り、それでもメリットが上回る、というスピーチができると良かった。例えば、問題行動については、現状部活動に入っている生徒全員が問題行動を起こすわけではなく、通常ごく少数の生徒しか問題行動を起こさないと考えられる。そうした生徒への対応は、普通、教員全員ではなく、一部の生徒指導担当の教員に限られるのでは?とすれば、総体としては、救われる教員の方が多いのでは?といったかわし方もあったかもしれない(Newと取られる可能性も高いが…)。その上で、社会経験といった曖昧なものより、実際に死亡例も出ている教員の過労死防止の方が、緊急性は高い、というようなまとめ方はできたかもしれない。

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■J2-6(R vs. Q)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側17点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 減じられはするが、発生すると考えた。

 教員の負担や、部活動中の事故いずれについても、否定側議論は、現状と差が小さい、といった反論はしているものの、メリットがほぼゼロに近くなる、とまで言えるような分析は無いと考えた。

・デメリットの評価:

 かなり減じられると考えた。

 そもそも、部活動が無条件に非認知能力向上に貢献しているわけではなく、入部後の取り組み次第、という面がある(1AR反論)。また、プラン後も、経済的要因で部活動に相当する活動を続けられなくなるケースは、否定側の言うほど大きくはないと思われる(部活動でもすでにユニフォーム等の費用がかなりかかる、ということと、地域クラブ等でも部活動と費用面で大差ない、という1ARの議論)。デメリットがゼロになるとまでは言えないが、相当程度減じるべきと考えた。

・結論:

 メリット・デメリットを比較した際に、デメリットが減じられる程度がメリットよりも大きいと考え、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:かなり盛沢山の内容が詰まっており、戦略的に優れた立論と感じた。ただ、要素を多く盛り込んだ分、スピーチが犠牲になった感はある。

 否定側質疑:不明点の確認はできていた。やや確認に終始してしまった感はある。例えば、否定側一反の議論につなげるならば、精神疾患で休職する教員の数は、他の業種に比べて多いのか?といった質問を投げて、他業種でも、同様に精神疾患が発生しているのだから、社会的に大きな問題と言えない、といった話へ持って行けたかもしれない。

 否定側立論:非認知能力の実態をできるだけクリアに出そう、という意思が見られたことは評価できる。応答においても、それなりの説明はできていると感じた。

 肯定側質疑:質問するポイントは良かったと思う。非認知能力について、反論のきっかけを作りたいのであれば、例えば「部活動で、なぜ非認知能力が育つのか?」といった質問よりも、生徒会や学校行事と部活動の違いを問うとか、「部活動に入っている人・入っていない人でどれくらい非認知能力に差があるのか」と問いたい場合は、「そもそも非認知能力は測定できるのか?その差分は明確に数値で表せるのか?」といったところを突いても良かったかもしれない。

 否定側第一反駁:議論の流れは、肯定側立論の上から下へ、と順を追って構成されており、フローが取りやすかった。内容的には、証拠資料をもう少し入れられると良かった。読む資料や、資料の内容・分量の吟味をすると良いと思う。

 肯定側第一反駁:デメリットに対する反論が秀逸だった。メリットは最低限の守りにはなったと思うが、相手の圧がもう少し強いと危なかったかもしれない。

 否定側第二反駁:メリットについては、1NRに沿って比較的きちんと議論を伸ばせていた。デメリットについては、1ARの反論が多く、対応が難しかったとは思うが、個々の議論をきちんと処理してほしかった。

 肯定側第二反駁:スピーチ内容は(良い意味で)期待通りだったが、若干スピーチ順が前後する場面があり、フローが錯綜した。

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■J2-7(U vs. T)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側16点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 解決性が厳しいと感じた。

 教員が授業準備に充てられる時間は、プランを取ることによって増加はすると考えた(否定側からは、マイナスになる、とまで言っている議論は無かった)。問題は、その時間が授業準備に充てられるのか、それによって授業準備時間は必要なレベルに達するのか、達したとして、それがアクティブラーニングの普及につながるのか、アクティブラーニングが実現したとして、生徒の能力がどの程度向上するのか、といった疑問が否定側から呈されており、立論まで立ち返っても、それらに対する回答が無く、そもそも解決性があるのか、に疑問符が付いた状態で終わっている。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考えた。そもそも、肯定側反論は、部活動の効果はアクティブラーニングでも実現できる、という点に尽き、部活動の効果そのものを否定するわけではない。部活動が廃止されることによるデメリットの発生そのものを妨げるものではない、と感じた。

・結論:

 仮に、アクティブラーニングが全国的に十分普及し、そこで生徒のライフスキルが獲得されるなら、その方が理想状態に近い、という肯定側議論には賛同するものの、メリットの解決性が疑問な状態では、現状を維持して、部活動によりライフスキルを供給した方が、総合的には利益が大きいと判断し、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:非常に意欲的な内容で興味深い。ただ、やはり解決性については、ハードルが高いと感じた。部活動の存在が、アクティブラーニングが実現しない原因になっているのか?とか、教材研究時間があと4時間ほど取れればアクティブラーニングが実現するのか(そもそも、ここで言う「教材研究は、アクティブラーニングを想定していない可能性が高い)?とか、アクティブラーニングが実現すれば、必要な能力が身につくのか?など、様々な疑問に答える必要がありそう。

 否定側質疑:質問の意図はなんとなくわかるが、あまり思ったような答えを引き出せていないと感じた。例えば、解決性の話は、「飯田市では37%の教員の授業準備時間が4.5時間増えたのか?」という聞き方ではなく、「飯田市で授業準備時間が増えた、という37%の教員は、具体的に何時間くらい授業準備時間が増えたのか?」という聞き方の方が、増加時間が分からない、という結論を導きやすいのではないか。

 否定側立論:内容的には悪くないが、ややフローが取りづらいと感じた。もう少し立論の内容を絞り込んでも良いかもしれない。

 肯定側質疑:部活動からライフスキルが学べる理由を問う質問は良かった。その返答(そのような目的で実施しているから)はもっと突っ込めたと思う(ライフスキル獲得を目的としている、というだけでは、実際にライフスキルが獲得できているかどうかは分からないのでは?)。

 否定側第一反駁:メリットに対する指摘事項は良い。スピーチはややぎこちない感じがした(通常のメリットと異なるパターンなので戸惑ったのかもしれないが)。

 肯定側第一反駁:良くカバーできていた。デメリットの反論の最後の部分(学業での格差の話)は、もう少し敷衍しても良かった。例えば「部活動のような、任意の課外活動にライフスキル獲得を任せるのは、不安定であり、むしろ格差を助長する可能性があるので、きちんと正規の教育課程にライフスキルを獲得できる活動を組み込む方が、国の教育政策としては望ましい」といったスピーチもできたかもしれない。

 否定側第二反駁:相手のメリットの解決性の弱い部分を的確に攻めることができていた。デメリットについては、Newと取られる可能性が高そうな議論がやや多いと感じた(非認知スキルと賃金の関係や、スポーツ活動と非認知能力の関係など)。これらの議論は、必要であれば立論に組み込んだ方が良い。

 肯定側第二反駁:比較の筋は良く、スピーチも聞きやすかった。否定側のNew Argumentの指摘ができると、更に良い。

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■J2-8(X vs. W)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側19点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 内因性、解決性が一定程度削られると考える。

 内因性で言われていたガイドラインは、それによって、将来的に問題を軽減する効果はあると考えた。ただし、それだけで、部活動を廃止するのと同等の効果が得られるとは考えられないので、その分の内因性は残る。

 解決性については、かえって負担が増えるかも知れない、という1NRの議論に対して実質的な反論が無かったので、この議論をある程度取る。ただし、肯定側立論で言われている部活動要因の膨大な時間外労働が、この資料一枚で完全に返るとも考えづらい(否定側議論は、肯定側ほど、部活動消滅による負担増加のメカニズムが明確でないので、あまり確信を持って取ることができない)。

 総じて肯定側議論はゼロではないと考える。ただし、1AR以降の反駁が十分でないので、ある程度メリットは削減されると考える。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 肯定側反論の学校行事については、言われていることは正しいと思うが、学校行事と部活動両方ある状態に比べて、部活動がなくなった状態は、体験機会の量、という観点から劣ることは否定できないと思われる。

 スポーツクラブ等も安価、という話もあったが、否定側議論(実際に経済力によって学校外活動の量に差が生じている)を取る。

・結論:

 否定側深刻性の主張だった「認識しづらいからこそ深刻」という話は、若干言葉の綾的な印象を受けるが、その主張に含まれる「コミュニティ内での孤立」「頑張った体験など語れず就職等で不利になる」といった話は、深刻性として取れると考える。メリットがかなり減じられると考えるならば、こうした体験機会を保持する方が得策と考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:非常に聞きやすいスピーチだった。応答も、答えにくそうな質問に対して、きちんと自分の立論にもとづいた適切な返答ができていた。

 否定側質疑:質問するポイントは悪くない。より意図を持った質問(1NRの議論につなげられるような質問)ができると良い。例えば、内因性に対して「全員顧問制を止めれば問題は解決するのか?」という質問をするのであれば、1NRが「全員顧問制は将来なくなる」といった議論を持っていることが望ましい。そのような議論を出すことができれば、この質疑は意味がある。

 否定側立論:速いスピーチだったが、聞きやすかった。内容を(社会的スキルなどの、部活動によって得られる能力、とせずに)体験機会に絞った点は面白い。深刻性は良く工夫されていると感じたが、「認識しづらいからこそ深刻」という話は若干詭弁的に感じた。

 肯定側質疑:質疑の際に相手を「相手側さん」と呼ぶのは避けた方が良い(質疑は相手との対話なので、この呼び方は違和感がある)。内容は、テンポよく質問できていて良かった。ただ、相手のデメリットを、「部活動によって得られる能力」の話と誤解している節があるので、そこが修正できると(また、1AR担当者にそう伝えられると)良かった。

 否定側第一反駁:議論のバランスは良かった。重要性への反駁は、「なぜ国がやるのか」という議論だけだと弱い。「過労死の人数が少ない」といった反駁等盛り込めると良いかもしれない。

 肯定側第一反駁:デメリットは良く反論できていたが、内容を「部活動によって得られるスキル」のことと勘違いしている節があり、若干Irrelevantなレスポンスになってしまった。また、メリットについては、解決性への反論に対してもう少し厚く反論しておきたかったところ。

 否定側第二反駁:スピーチは聞きやすく、デメリットの伸ばし、メリットへの反論の伸ばしも良い。最後の比較は若干蛇足的な印象になってしまった(結局、「メリットが無くてデメリットがあるからNEG」と言っているのとあまり変わらない気がした)。

 肯定側第二反駁:かなりうまくリカバリーしたと思う(特にデメリット)。もう少し粘るとすれば、デメリットの深刻性が、実は具体的にはあまり内容が無い、という事をしつこく説明する、といったやり方はあったかもしれない。

…次回へ続きます。



2021年09月09日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その3)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第三回です。

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■J2-1(C vs. B)

・コミュニケーション点:肯定側15点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度削られると考えた。

 教員の負担については、仮に短期的には部活動の時間が浮いたとしても、そこに別の新たな業務が入ってくる、という否定側分析が返っていないと考える。

 生徒の負担軽減については、初期状態で現状分析と重要性が一致していないように見えること、発生過程の分析が不足しているように見えることから、この試合においては考慮しない。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考えた。

 部活動の効果については、学校行事等でも代替可能な部分はありそうではあるが、特に肯定側からの資料等もないため、デメリットのリンクが完全に否定されることは無いと考える。それ以外の部分については、特に肯定側からの大きな反論は無いと思われ、ある程度のデメリットの成立は認めるべきと考えた。

・結論:

 メリット・デメリットの残存部分の程度を考慮して、デメリットの方が上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:生徒の負担に着目した点は、他チームにはあまりない視点で、良いと感じた。ただし、生徒視点の分析は現状分析と重要性で若干矛盾を生じているように感じた。

 否定側質疑:重要性に対する質問(クラブチームのレベルが高い、という事は、生徒自身の負荷は増える方向ではないか?)は秀逸と感じた。発生過程での、週11時間強の時間外労働が大きいかどうか、についてのやり取りは、若干不毛になってしまっていた感がある。

 否定側立論:深刻性の分析は、部活動で得られるスキルの社会的影響まで踏み込んでおり、良い。読み方は、資料や議論間の間が少なく、若干フローが取りづらいと感じた。

 肯定側質疑:スキルが、部活動でしか得られないか、と聞いて、「部活動でしか得られない」という答えの後に「証拠は?」とつなげるやり方は、良い。さらに答え(縦の人間関係や外部交流などの理由)が返ってきたときに、「それらは他の活動でも得られるのでは?」と指摘できれば、更に良かった。

 否定側第一反駁:内容は、肯定側の「教員」「生徒」の分析両方に対応できており、良い。可能であれば、現状分析→発生過程→重要性、と、肯定側立論のストラクチャーに沿った議論構成でスピーチできると、更に良い。

 肯定側第一反駁:デメリット/メリットどちらの議論をしているのか、が若干不明瞭なところがあった。全体的に議論量をもう少し増やしたいところ。

 否定側第二反駁:否定側立論、否定側一反の議論をきちんとカバーできているところは良い。もう少し深刻性の説明を、肯定側重要性と比較して、デメリットがメリットを上回る、という事を強調できると、更に良い。

 肯定側第二反駁:冒頭の「否定側第二反駁のフロー」という表現は、メリット/デメリットどちらを指すのか不明なため、「メリットのフロー」「デメリットのフロー」という表現の方が良い。メリットは良くカバーしたと感じたが、デメリットへの言及が不足しているように感じた。

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■J2-2(F vs. E)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度削られたと考える。

 「315億円を、公民館や地域スポーツクラブのために補助する」というサブプランについては、その有効性が立論で示されておらず、1ARに高速で予算内訳が読み上げられたのみで、その妥当性を判断できなかった(施設拡充がうまくいくのか、とか、人材がきちんと集まるのか、といった、実行性が認識できなかった)ため、それほど有効ではないと考える(これは、主にデメリットに関係する)。

 内因性は、肯定側寄りに解釈した。スポーツ庁のガイドラインは、それほど守られておらず、仮に守られたとしても、部活動時間がゼロになるわけではないので、プランを取った方が、時短にはつながると考えた。

 解決性については、否定側寄りに解釈する。特に、プラン後、補習や教育相談などの仕事が増加する、という話に対して肯定側から有効な反論が無いと思われる。従って、肯定側の主張する「プラン後は、余った時間を教員が自分の意思で自由に使える」という議論も成立し難いと考えた。

・デメリットの評価:

 一定程度残ると考える。

 1AR反論の「部活動経験者は、所属以外の人と仲良くできない」という話は、見方を変えると、部活動経験者の方が、その所属集団を固めて、実績を出すことができる」という解釈もできそう。また、連帯感以外の非認知スキルについては特に言及がないため、これをもってデメリットがゼロとは言えないと考えた。

 その他委員会等による効果についても、人数・時間的に部活動の方が有効性は高そう、と判断した。

・結論:

 肯定側重要性で言われている、教員のストレスやより良い教育、といった話と、否定側深刻性の非認知スキル低下による社会的損失を比較して、どちらが大きいかは、ディベーターの議論だけからは判断できなかったが、量的には、相当程度削られたメリットよりも、デメリットが上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:非常に聞きやすかった。数字などもしっかりフローに残すことができ、好感を持った。重要性を「より良い教育」だけに絞ってしまうのは、ややリスキーではないかと感じた。また、追加プランの315億円の詳細及び解決性は、本来であれば立論に組み込むべき。少なくとも質疑で聞かれた時の答えは用意しておくべきだった。

 否定側質疑:質問するポイントは悪くないが、今一歩1NRの議論に結びつけられていないと感じた。例えば、解決性の「部活動以外の仕事で教員はストレスを感じないのか」という質問に対して「部活動以外の仕事は本来業務だから」といった答えが返ってきたが、ここで「なぜ本来業務だとストレスを感じないのか?」「本来業務でも、例えばモンスターペアレンツへの対応などは、かなりのストレスではないのか?」といった質問を続けられると良かった。

 否定側立論:内容は優れていると感じたが、スピーチ速度がやや早く、滑舌が若干不明瞭なため、わかりにくいスピーチとなってしまっている。冒頭部分からいきなり早口で始めない、議論や証拠資料の間の間を意識して取る、といった点に注意するだけでもだいぶ改善すると思う。

 肯定側質疑:質問のポイントは悪くない。また、それなりに相手の言質も引き出せているが、今一歩深めたいところ。例えば、非認知スキル育成の鍵は、教室外の課外活動で、集団活動を行う事である(したがって、地域スポーツクラブ等でも醸成できる、ということが連想される)といったことを確認した上で、否定側の論じている格差が、肯定側の追加プランを前提していない、という事を確認する、といった流れでの質疑ができると良かった。

 否定側第一反駁:構成がきちんとフローの上から下へ、という順で(途中まで)流れており、フローが取りやすかった。また、質疑との連携もきちんととれており(追加プランへの攻撃の部分など)、好感が持てる。

 肯定側第一反駁:メリットの途中までは良くカバーできていたが、解決性への反論をドロップしてしまっている(ように見える)のは痛いところ。デメリット反論についても、もう少し網羅的に行えると良かった。追加プランの315億円の使途をきちんと説明できているのは良いが、フローが取りづらく、かつ、ここに時間を使ってしまったために、他の議論がおろそかになってしまった感はある(ので、やはりこうした議論は立論に入れておくべきだった)。

 否定側第二反駁:デメリットの伸ばしはよくできていた。メリットについては、1NRの解決性への攻撃をもっときちんと伸ばすべきだった(あまりこれらの議論に触れていないように見えた)。

 肯定側第二反駁:結局追加プランの315億円の効果についてはよくわからないまま終わってしまった。デメリットのところの「塾へ行ける/行けない、といった格差がすでにある」という話は唐突感があった(今回はいわゆるLateと考えた)。

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■J2-3(I vs. H)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側20点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 削られるものの、ある程度残ると考える。

 1NRからの、「労働時間は減らない」「顧問を持たない教員もかなりの時間外労働を行っている」という反論については、結局、顧問を持つ教員と、持たない教員の間に労働時間の差がある、という事を否定していないように思える上、その差分も、肯定側の主張(週7時間程度?)と大差が無いように見える。また、「危険な状態になる前に自覚できる」という反論については、症状の知覚と、危険性の自覚とが区別されていないように見え、肯定側反論の方が妥当と感じた。飯田市の実例については、相当数の教員は部活動がなくなっても体調が改善しない可能性がある、という話として理解し、ある程度解決性は削ると考えたが、すべての教員に当てはまる話ではない以上、これをもってメリットがゼロとは判断できないと考えた。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考える。

 アクティブラーニングにより、自主性・主体性・協調性が身につけられる可能性があることは理解したが、部活動と同程度のレベルで身につけられるかは未知数であること、否定側の主張するように、両方実施すれば、その分能力も向上すると考えられることから、この反論をもってデメリットがなくなる、とは考えられない。

・結論:

 メリット・デメリットとも残るが、メリットの方がやや削られている度合いが大きいと判断し、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:内因性(労働時間が増えるほど、リスクも増える)や重要性(疲労の蓄積に本人はなかなか気づけない)の議論に工夫がみられて良い。追加プランで助成金を出す、としているが、この解決性はできれば立論に盛り込みたいところ。

 否定側質疑:肯定側の問題点をうまく矮小化しているように見える。ただ、よくよく考えると「インパクトは2時間」といった話は、問題のすり替えになってしまっていて(これは、実際には過労死ラインとの差分であって、部活顧問の労働時間は過労死ラインよりもかなり上なので、減少分はもっと大きい)、Cleverな肯定側が相手だとうまく返されてしまいそうに感じた。

 否定側立論:発生過程を二つに分けて、何もしない人と、外部クラブに行く人両方についてデメリットが発生する、としたところは、良く工夫されていると感じた。

 肯定側質疑:聞いている内容は良いが、うまく相手の答えを引き出せていないと感じた。例えば「自主性や主体性を伸ばす、というのは、部活動に固有なんですか?」と聞いても「そうです」という答えしか返ってこないと思われるので、「部活動の何が、自主性や主体性を伸ばすんですか?」という質問で、自主性や主体性を伸ばす要素を聞き出し、例えば「授業と違って、自分たちで考えながら取り組む活動だから」といった答えが返ってきたら、「じゃあ、自分たちで考えながら取り組む活動が、他に(学校のカリキュラム内に)あればいいんですね?」と続ければ、1ARのアクティブラーニングの話につながりやすいのではないか。

 否定側第一反駁:議論の量や、プレゼンテーションは上手いと感じた。ただ、肯定側からまとめて返されてしまいそうな議論が多そう(顧問と非顧問の労働時間の差など)なのと、Linearity(時間外が増えれば増えるほど、リスクも増える)を押されると、若干弱いかもしれない。

 肯定側第一反駁:メリット・デメリットの議論のバランスは良い。デメリットについては、この反論だけだとおそらくデメリットを完全に切ることは難しいので、1AR段階でメリット・デメリットの比較材料を用意しておくか、そもそもデメリットへの反論のバリエーションを増やしておけると良かった。

 否定側第二反駁:メリットはきちんと1NRに沿って伸ばし、デメリットは1ARの反論にきちんと対応できている点は、良かった。

 肯定側第二反駁:メリットの守りはよくできていた。最後の比較部分は、準備原稿棒読み感があり、やや蛇足に感じた。

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■J2-4(L vs. K)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度減じられると考えた。

 1NRの議論より、部活動廃止により時間が浮いたとしても、その時間に(周囲の過度な期待などによる)別業務が入ったり、部活動によって抑えられていた(ヤンキーなど?)生徒の指導に費やす時間などが入るため、額面通りの効果は無いと考えた。さらに、肯定側も、一定の時間が新たに授業準備に費やされる、ということを認めているため、教員の休息に当てられる時間はほとんどない、と考えた。

 授業の質向上については、授業準備に充てられる時間は増えるものの、それが授業の質向上に直結するか、さらに、授業の質が多少向上したとして、それが生徒にどのような影響を及ぼすのか、が若干不明確に感じた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 肯定側からは、「部活動であっても、ユニフォームやシューズ等の費用がかかるため、決して安価ではない」「すでに正規教育課程で、主体性・自主性などを養うための活動が行われている」の二点の反論があったが、前者については特に資料があるわけではなく、また、少なくとも地域クラブ等よりも部活動が安価であることは否定していないと考えた。後者については、そういった活動が行われていることは分かったが、どの程度の効果が挙がっているのか、が不明であること、部活動に効果が無い、とは言っていないことから、デメリットをゼロにする議論ではないと考えた。

・結論:

 肯定側は最終的に、授業の質が向上する、というメリットにフォーカスしたが、解決性にかなり疑問が残り、デメリットが上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:教員の過労死と授業の質の二本立ての立論としたこと自体は悪くないと感じた。スピーチのコミュニケーション的にも優れている。解決性で、外部指導員の導入で問題が解決した、という議論が出てくるが、これは相手に逆用される(部活動を廃止せずとも、外部指導員を積極的に導入することで問題が解決する)可能性があるかもしれないと感じた。

 否定側質疑:質問に対する相手の答えがあまりかみ合っていないところがスルーされがちになっているところが気になった。例えば、「長時間労働の原因は部活動なのか?」という質問に対して「57.7%の教員が過労死ラインを超えている」と返答が来たが、ここはさらに「その57.7%の教員の労働時間の内訳は正確にわかっているのか?」などと問いかけて、部活動が原因とは限らない、という言質を得ていけると良かったのではないか。

 否定側立論:内容は良いが、若干フローが取りづらいと感じた。議論と議論の間などを少しあけるだけでもだいぶ改善するのではないかと思う。また、相手の質疑に対する応答が若干Irrelevantな感じがした。

 肯定側質疑:良い。ライフスキル獲得に対する部活動の固有性に絞って、深く掘り下げていく姿勢は好感が持てる。相手が若干質問をはぐらかそうとしている態度が見受けられるので、もっと厳しく追及して、「具体的にどのようなスキルが、部活動のどのような活動から発生するのか、はっきりさせてほしい」といった質問を(それがきちんと説明できないなら、デメリットは証明不足ですよね?といった雰囲気を出しながら)重ねられると良いと思う。

 否定側第一反駁:教員の労働時間、授業準備の両方の分析にきちんと対応できているところは良い。また、資料の後のサマリー的な部分(部活動によって得られていた非行防止効果がなくなることによる指導業務の増加)の分析も秀逸と感じた。

 肯定側第一反駁:スピーチは非常にわかりやすく、好感が持てる。メリットを授業準備の方に絞ってしまったのは、戦略的には悪手だったかもしれない。デメリットについては、ユニフォームやシューズ等でかかる金額を計算してみて、スポーツクラブの料金と大差ない、というところまで言えると良かった。

 否定側第二反駁:メリット部分の説明は秀逸だった。ただし、後半の「良い授業とはどういうものなのか?」「良い授業を行ったとして、生徒の能力が向上するのか?」といった話は、1NRから出しておきたいところ(ジャッジによってはNewと取るかもしれない)。

 肯定側第二反駁:スピーチ自体は聞き取りやすく、良いが、メリットについては、1ARが授業の質改善に絞っているところ、再び教員の労働環境にも触れており、若干ぼやけた感じになってしまった。

…次回へ続きます。



2021年09月08日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その2)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第二回です。

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■J1-5(M vs. O)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側16点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 ある程度残ると考える。

 争点となったのは、現状の部活指導員で十分問題は解決するのではないか、という点だが「人数的に不十分」「地方には人材がいない」という1ARの反論が残ると考える。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考える。

 確かに、現状でも格差は存在する、という面はあると思われるが、肯定側反論がダウトにとどまっており、デメリットを完全に否定する理由は乏しいと感じた。

・結論:

 メリット・デメリット共にある程度残ると思われるものの、メリットの重要性での説明(国の責任として、過労死は極力防止しなければならない)に対して、デメリットのインパクトが若干曖昧に感じたため、メリットの方が重要と判断し、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:悪くはないが、リスクがLinearであると主張するなら、過労死ラインの定義や説明はそれほどしなくても良いのでは、とも感じた。また、解決性は、部活指導員の話を入れるなら、現状部活指導員が足りていない、という話も立論にセットで入れるべきでは、と感じた。

 否定側質疑:不明点をきちんと確認しているところは良い。後半の質問(このプランでないと問題は解決しないのか?)は、この聞き方だとあまり良い答えは返ってこないと思われる。例えば「このプランで解決する範囲は?」とか「○○の要因(何か具体例)と比較して、プランはどの程度有効か?」といった聞き方の方が、望ましい方向に持っていけるのではないか。

 否定側立論:スピーチとしては、良い。金銭的格差、地域格差の二本立てとなっているが、地域格差については、その存在を明言した資料が無いように感じた(発生過程Aの資料は、単に総合型地域スポーツクラブの数が(全国的に)不十分、とだけ言っているように聞こえた)。

 肯定側質疑:質問の方向性は良いが、相手の回答の後に「では、この問題は重要ではない、という事ですね」といった、自分の側だけに都合の良い結論を押し付けようとするのはNG。このような言われ方をすれば、相手は反発するだけなので。

 否定側第一反駁:解決性に対する反論は、良い。途中から(おそらく質疑への対応と思われるが)、デメリットの再説明のようになってしまったのは、時間がもったいなかった。

 肯定側第一反駁:メリットは良く守られていた。デメリットへの反論がダウトのみなのは、危険ではないか。

 否定側第二反駁:深刻性の説明がうまくできていなかったことが悔やまれる。最後はインパクト勝負になる展開だったので、ここでメリットを上回るインパクトを打ち出したかった。

 肯定側第二反駁:伸ばすべきポイントがきちんと押さえられており、好ましいスピーチだった。

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■J1-6(P vs. R)

・コミュニケーション点:肯定側19点/否定側18点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 削られはするが、残ると考えた。

 外部指導員については、いくつかの地域では問題解決に寄与すると思われるが、全国的に展開するのは難しそう、という肯定側分析が残る。解決性については、飯田市の実例などから、状態が改善する教員が皆無、という訳ではなさそう。ただし、部活動がなくなったとしても、かなりの程度他業務が入る可能性はあり、肯定側の主張を額面通りには取れないと感じた。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考える。

 発生過程について、プラン後に部活動がなくなれば、親の収入によらず、子どもに何かさせよう、という機運が高まる、という肯定側分析は、それなりに信ぴょう性はあるものの、資料があるわけではなく、それだけでデメリットを完全になくすとは考えづらい。

・結論:

 メリット・デメリットとも残るが、デメリットのインパクトは「文化的格差」という点に収斂した。この「文化的格差」が何を意味し、どの程度社会に深刻な影響を及ぼすのか、が不明なまま試合が推移した(「子供の将来を規定する」という主張はあったが、将来のどのような面を規定するのか、そのインパクトは何か、が明確でなかったと感じた)。対して肯定側のインパクトについては、国民の健康と生活を守る、という国家としての役割がある程度強調されているように感じ、国として取るべきアクションとしては、まずは労働者としての教員の健康を守ること、と考え、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:読み方については、ほぼ理想的スピーチだった。アンケート等の要約的な資料が比較的多く、その点については、ジャッジによって好みが分かれると思われる(個人的には、調査型のディベートであれば、資料を原文通り忠実に引用すべき、という感覚を持つので、あまり好ましくないと考える)。

 否定側質疑:あまり核心に触れられずに終わってしまった感がある。特に重要性2点目の資料は、もう少し崩しに行きたかったところ。例えば「公務災害を認められた教員に部活動顧問が多い、という相関関係は示されているが、その原因が部活動である、という因果関係までは名言していないのでは」といったところまで踏み込めると良かった。

 否定側立論:スピーチは特に問題ないが、現状分析で人格形成の話をしているのに、最終的な深刻性が文化格差に着地しているのは若干の違和感を持った。

 肯定側質疑:発生過程に対する質疑の意図が分かりづらいと感じた。まずは、現状の地域クラブ等の活動が、部活動が存在することを前提に、それに付け加える形で行われていることを明確にし、そのような状況でもなお、収入が低い家の子供ですら25%は学校外活動を行っている、という事を明確にするような質疑をできると良かった。

 否定側第一反駁:ほぼ理想的な構成・スピーチだった。ただ、せっかく質疑でプランが読まれていないことを確認したにも関わらず、冒頭「プランを見てください」というのは、質疑との連携が取れていない印象を与えてしまう。

 肯定側第一反駁:メリット・デメリットともよく守られていたと感じるが、デメリットは2NRが上手く伸ばしてきた場合には、かなり残ってしまうリスクがあったかもしれない。

 否定側第二反駁:否定側立論、第一反駁の議論に比較的忠実に議論を展開していて好感が持てるが、1ARの議論に対しての反論、という観点では若干物足りないと感じた。また、インパクトの比較は、相手の重要性をどうして上回るか、という観点がやや希薄に感じた。

 肯定側第二反駁:やるべきことは一通りできていたと思う。

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■J1-7(S vs. U)

・コミュニケーション点:肯定側19点/否定側18点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 ある程度は残ると考える。ガイドライン等の現状施策については、その効果は保証されていないように見える(1AR反論により)。外部指導員については、ある程度の問題解決にはつながりそうだが、すべてを解決するとは考えられない(2NRの議論はNewとは取らなかった(1ARのレスポンスに対する反論と解釈できるため)が、この議論は、外部指導員が配置されている、という事を示すだけで、十分な数が確保できているか、問題を解決できているか、には言及していないように見えた)。

・デメリットの評価:

 リンクはある程度残ると考える。スポーツ・文化・芸術に関しては「する」「見る」「支える」という要素があることは分かったが、肯定側の言う通り、これらすべてが部活動を介してでなければ実現できないか、は疑問を感じた。とはいえ、肯定側も特に資料があるわけでもないので、ある程度は発生を認めるべきと考えた。

・結論:

 メリット・デメリットとも残るが、デメリットのインパクトが政策決定にあたり、どのように評価するべきなのかが理解できなかった(為末氏の言っていることは分かるが、スポーツや芸術が人にとって具体的にどう必要なのか、それが日本の政策として(肯定側の主張する教員の働き方の犠牲を黙認してまで)どのように正当化されるのか、が説明できないと感じ、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:多く出てくる数値が極めて明確にフローに取れた。証拠資料の引用の仕方も簡潔で、良質な情報が密度高く盛り込まれていると感じた。

 否定側質疑:確認事項については、良い。一部(本来反駁で行うべき)自分の意見の主張になってしまっていて、質疑としては不適切な部分があった(「多くの教員は、長時間労働をしていても元気ですよね」といったところ)ので、改善要。

 否定側立論:文化的な側面に注目したのは興味深いが、発生過程はやはりもう少し説明が必要では、と感じた(例えば、否定側の主張する側面のうち、「見る」「支える」の部分だけなら、プロスポーツを視聴するだけでも可能ではないか、という疑問を感じてしまうので、そうした疑問に対する答えを用意しておきたい)。深刻性についても、スポーツ文化が衰えることにより、日本の国家としてどのような損失があるのか、の説明が具体的にできると良かった。

 肯定側質疑:内容的には悪くないが、一部やや強引な質疑があった。例えば、「オリンピックに出場するアスリートは、部活動出身でなく、クラブチーム出身が多いのでは?」という質問をするなら、何らかの根拠を持っておきたいところ(聞き方としては、例えばサッカーの五輪チームメンバーの出身クラブ・部活の割合などを持っていたら、「オリンピックのサッカー日本代表のメンバーで部活動出身の人の名前を挙げられますか?」などと質問をしてみる、といった方法が考えられる)。

 否定側第一反駁:議論の構成としては、フローが取りやすく、良い。内容については、もう少しバリエーションが欲しい(内因性に関する攻撃に終始してしまったので、解決性や重要性に対する攻撃も取り混ぜたいところ)。

 肯定側第一反駁:メリットの守りは必要十分で、良かった。デメリットについては、若干手薄になってしまった感がある。資料が出せないとしても、スポーツ・芸術活動に親しむきっかけになり得る部活動以外のイベント例(プロスポーツ視聴や、学校の授業など)を示したり、深刻性と重要性の比較を1AR段階から出す、といったことはできたと思う。

 否定側第二反駁:せっかく1NRが多くの反論を出しているので、メリットの議論をもっと幅広く伸ばせると良かった。デメリットの伸ばしは良いが、結局メリットを上回るのか、という部分の説明がもう少し欲しかった。

 肯定側第二反駁:デメリットのリンク部分の説明はよくできていた。最終的なメリットとの比較部分があまり印象に残らなかった感があるので、そこは工夫の必要があるかもしれない。

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■J1-8(V vs. X)

・コミュニケーション点:肯定側-点/否定側-点

・判定:-

・メリットの評価:

 

・デメリットの評価:

 

・結論:

 

・コメント:

 システムトラブルのため、YouTubeライブでの配信無し。

…次回へ続きます。



2021年09月07日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その1)

去る8月7日〜9日にかけて、第26回全国中学・高校ディベート選手権(ディベート甲子園)がオンライン開催されました。

今年のディベート甲子園全国大会は、YouTubeでライブ配信され、出場者・ジャッジと見学申し込みをされた方は、すべての試合を(後からでも)見ることができるので、中学予選の(ほぼ)全試合をジャッジしてみました(一試合だけ、配信の不具合でYouTubeライブが見られなかったので、全部で23試合です)。

論題は「日本は中学校高等学校の部活動制度を廃止すべきである。是か非か」でした。

見方としては、

・1倍速で、試合を一度だけ通して聞く

・ジャッジの判定スピーチを聞かない状態で、自分の判定と得点を出し、各スピーチの感想まで書く

というやり方です(すべて書けた後に実際のジャッジの判定スピーチも聞きました)。

通常のジャッジと同様、聞き間違いや聞き落としの可能性があり、実際にディベーターがしゃべった事実と異なる内容に基づいた判定になっている可能性もあるので、コメントなどいただけると嬉しいです。

試合番号は、実際の対戦表の番号と一緒です。チーム名は一応記号化してあります(パンフレットの組み合わせ表で、1組の上からA、B、C、2組の上からD、E、F、…といった具合)。

コミュニケーション点は、各スピーチ(立論/質疑/応答/第一反駁/第二反駁/マナー減点)について5点満点でつけた合計を表示しています。

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■J1-1(A vs. C)

・コミュニケーション点:肯定側21点/否定側15点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 残ると考える。

 否定側レスポンスのうち、ガイドラインの話については、必ずしも守られるわけではない(将来的にガイドラインが強化され、改善する方向ではあるものの、それで十分かはわからない)。

 解決性については、肯定側の言う通り、教師個人が授業が分かりやすくできていると考えていても、改善の余地がない、ということにはならないし、そもそも授業準備に時間を当てなければ教員の余暇時間が増えて、重要性2が得られることに変わりはない。

・デメリットの評価:

 発生はかなり怪しい。

 現状で、部活動が社会性や自発性、主体性を養う場、と考えられていることはわかったが、それがどのくらい効果的に行われているか、を示す資料が不足していると感じた。格差についても、現状存在する格差を、プランがどの程度悪化させるのかは良くわからない。

 また、最終的に社会性等の能力に影響があったとして、それがどのようなインパクトを持つのか、の証明も不足しているように見える。

・結論:

 デメリットのリンクがかなり削られ、かつインパクトが曖昧なのに比較して、メリットが十分上回ると考え、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:読み方はベストに近い。内容も、安易に教員の過労死にもっていかず、生活の充実、といった現実的な重要性を採用しているところは好感が持てる。

 否定側質疑:悪くはないが、若干ラベルの確認が多かったのは少し残念。

 否定側立論:格差発生のメカニズムのところや、資料の内容は、もう少し詰められると良かった。

 肯定側質疑:最初のQが秀逸。部活動が、自発性、主体性の発揮を「目指している」だけで、実現できているか不明、という印象が強く残った。

 否定側第一反駁:最初の二枚の資料のコンビネーションが良い。部活動ガイドラインの内容+それがきちんと実行され、効果を上げている、ということが効果的に示された。解決性への反論は今回のケーズに対しては弱い。

 肯定側第一反駁:質疑との連携ができていた。時間配分も良い。デメリット固有性への反論はもう少し説明が欲しい。「格差は現状でもあるので、デメリットはない」という言い方だと、あまりジャッジに響かないのでは。「現状でも格差は非常に大きく、その状態でプランを取ったところで、深刻性で言われているインパクトに対して、どの程度の影響があるのかわからない」といった説明の仕方の方が良い。

 否定側第二反駁:ガイドラインの話での資料追加は、ジャッジによってはNewと取るかもしれないが、個人的には好きな展開。議論の最初に、デメリットの話か、メリットの話か、のサインポスティングがあった方が良い。

 肯定側第二反駁:良い意味で、想定通りのスピーチ。そつなくこなした感。

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■J1-2(D vs. F)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側16点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 残ると考える。

 肯定側議論に従うなら、部活動に携わる時間そのものが問題なわけではなく、そもそもやりたくない部活動顧問を強制的にやらされること自体が問題のため、1NRの反論はほぼ当てはまらない、と考えた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考えた。

 肯定側のほぼ唯一の反論は、総合型スポーツクラブが普及すれば解決する、というものだが、これの普及に関する資料がない(口頭での発言のみ)ため、普及の程度や速度が大きいと判断するわけにはいかないと考えた。

・結論:

 肯定側のパワハラ、否定側の所得格差のいずれもそのインパクトが曖昧に見えるが、2ARでの説明(パワハラについては、法まで制定して抑制に努めているので、より重要と考えるべき)を取り、肯定側に投票。

 ただし、本来であれば、所得格差も、それを埋めるために様々な政策が取られているわけであり、そうした政府方針を否定側が引き合いに出していたら、容易に否定側投票に傾いたと思われる。

・コメント:

 肯定側立論:やや極端ではあるが、はじめゆっくり読んで次第にスピードを上げる、という模範的スピーチ。内容的には、内因性や解決性で「苦役」「ストレス」といった話で終始しているのに対して重要性で急に「パワハラ」に話が飛ぶのはやや唐突感があった。

 否定側質疑:「苦役」と「ストレス」の違いを追求する、という着眼点はおもしろい。この観点を突き詰めるなら、「ストレス」=「苦役」と言えるのか?「苦役」=「パワハラ」と言えるのか?つながりの程度はどのくらいなのか?といった質問を理路整然と投げかけたい。

 否定側立論:読み方は良い。今シーズンのデメリットの傾向として致し方ない面はあるが、「社会的スキル」と「所得格差」のつながりや、所得格差が深刻な理由はもう少し説明が欲しかった。

 肯定側質疑:内容は悪くはないが、意図不明な質問が散見された。「七割の人が民間クラブに行けない」という答えが返ってきたときに「七割って何人?」と聞くのはあまり意義を感じない。聞くのであれば、「その七割は、全員が全く社会的スキルを身につけられないのか?」「通常の学校生活や他の学校行事では全く社会的スキルが身につかない、などという証明があるのか?」といった質問を投げかけたいところ。

 否定側第一反駁:内容は悪くはないが、スピーチ順が重要性→解決性→内因性、と、肯定側立論の順と完全に反対になってしまっているので、若干フローが取りづらい。また、クレームがやや不明瞭な箇所が散見されたので、原稿にはしっかりクレームを書いておく/明瞭に読む、といった工夫をすると改善すると思われる。

 肯定側第一反駁:メリットの分析は秀逸だった。ただし、ややメリットに時間をかけすぎ、デメリットへの反論がおろそかになった感はある。

 否定側第二反駁:ストレスの原因に着目した議論(ストレスは、拘束時間が長いから発生するのか、精神的負荷が高いから発生するのか)は、良い着眼点と思うが、Lateと取られる可能性が高いので、1NRに言ってもらうべきだった。また、まとめ(?)の「ストレスのない仕事はない」という話は、「もし肯定側の定義に従うなら、少しでもストレスのかかる業務が残る限りパワハラは無くならないのだから、そもそもメリットの解決性は無い」という結論まで持っていければ、有効だったかもしれない(ただし、そこまでの議論がしたい場合は、1NRからきちんと説明しておくべきだが)。

 肯定側第二反駁:パワハラの重要性の説明部分は良かった(やや準備原稿棒読み感はあるが…)。デメリットのリンクは、この状態ではおそらく切れないので、社会的スキルとパワハラの比較をきちんと行えると、更に良い。

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■J1-3(G vs. I)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側17点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 削られるものの、多少は残ると考える。

 平均値で見れば、部活動顧問でなくても時間外労働が危険水準にあることから、部活動廃止に固有な効果がどれくらいあるのか、はかなり疑問符がつくものの、個々のケースを見れば、時間外を80時間→20時間程度に減少できた例もあること、また、時間外労働が増えれば増えるほどリスクも増す、という面も(程度は不明だが)否定できないことから、ゼロとすることはできない、と考えた。

・デメリットの評価:

 残るが、かなり不明瞭な状態と考える

 部活動の教育効果として、異年齢集団での活動による対人関係や集団活動のためのスキル以上の話が、試合中で出た議論からは読み取れなかったため、通常の学校行事や生徒会活動(これらも当然に異年齢集団活動を含むと思われる)と何が違うのか、が不明瞭になった。肯定側反論の「不平等感や拘束感」は、否定側の言う教育効果との関係が良くわからない(こういう感覚を克服する過程で教育効果が生まれるのでは?)が、ある程度、教育効果を損なうケースもある、といった程度に認識した。

・結論:

 メリット・デメリットを比較すると、デメリットは、そもそもそれほど効果があるなら、本来の教育課程で行うべき話であり、それを課外活動のままにして教師の犠牲を強いるのは不当、という肯定側議論を取り、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:スピーチとしてはよくまとまっていた。未経験競技の顧問になることによる負担、という話については、本来業務でも同様の事態は発生し得るのでは、という疑問を持った。

 否定側質疑:質問のテンポは良い。内容的には、やや思い込みで質問しているかも、と感じられる部分があった。例えば解決性の大阪府教諭の例で、時間外を減らせたのは妊娠が理由か?といった質問は、あまり有効でないと感じた。

 否定側立論:深刻性1の、部活動からオリンピック選手が輩出された話は、それまでの話(異年齢集団活動)との関係が良くわからなかった。深刻性2は秀逸と感じたが、国の責任なのであれば、それほど効果のある活動を課外活動にとどめて正規教育課程に組み入れないのは逆に無責任では、とも感じた(同様の指摘が肯定側からもあったが…)。

 肯定側質疑:相手から言質を引き出したい、という気持ちが先走り過ぎていると感じた。例えば「デメリットは人間形成の話ですよね?」といった決めつけから入ってしまっていることで、相手とのすれ違いが起こる場面が多く、コミュニケーションという観点からは難があると感じた。

 否定側第一反駁:重要性への反論は秀逸と感じた。スピーチ順が、フローの下から上、という逆順になっており、若干フローを取りづらいと感じた。

 肯定側第一反駁:デメリット深刻性への反論は良かった。メリットで、労働時間が増えれば増えるほどリスクも増える、と断言するには、若干材料が不足しているのでは、と感じた。

 否定側第二反駁:メリット部分は1NRに忠実に伸ばしており好感を持った。デメリットについては、1ARへの反論が不足していると感じた。

 肯定側第二反駁:メリット・デメリットのインパクト比較は良かった。

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■J1-4(J vs. L)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 メリットは相当程度減じられたと判断した。

 肯定側の内因性分析を信じるなら、専門でない競技の部活動顧問になってしまうことで、正しい指導ができず、体罰・暴言が行われる、という事なので、1NRで出てきた外部指導員や、政府取り組み(教員に専門的知識がある競技の顧問をさせる)で相当程度問題は解消すると考える(外部指導員が普及しない、といった分析は肯定側からは出ていないので、少なくとも将来的にかなりの程度外部指導員による指導が行われると考えた)。肯定側反論は、現状で起こっている体罰の話であって、外部指導員が普及すれば、そうした問題は解決の方向に向かうであろう、という事を否定するとは考えられなかった。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると判断した。

 金銭的な負担は、部活動も地域クラブも大差ない、という肯定側反論は残る。しかし、地域クラブが現状部活動に参加している生徒全員をカバーできるとは考え難い(需要が急激に増加しても、急に対応できるとは思えないし、将来的にもすべての需要をカバーする状態を考えづらい)。したがって、何らかの要因(親の教育への関心など)によって、現状部活動で得られる利益を享受できない生徒が発生することについては認めても良いと考えた。また、仮に地域クラブに参加できたとしても、1NRでの議論であったように、部活動ほどのメリットは享受できない(教員のような教育のプロがいない、学校生活と連動していない、といった理由により)ため、その分もデメリットと考えるべきと判断した。

・結論:

 結局のところ、最も理想的な世界は、体罰や暴言がない部活動が実施されている状態と考えられる。肯定側立場と否定側立場のどちらが、理想世界に近いか、と考えれば、現状の、部活動が存在する状態で、部活動の内容を改善していく方向がベストではないかと考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:スピーチとしては良い。体罰・暴言に絞ったメリットは目新しく、よく工夫されていると感じたが、内因性(体罰・暴言が起こる理由が「教師がその競技に不慣れ」という点しかない)については、若干無理がありそうに感じた。例えば、応答で言っていた様に、勝利至上主義が発生する理由が「部活動の場合、全国大会が存在し、そのせいで競争が過熱している」といった部分も立論で強調した方が、納得感は出そうに思える(とはいえ、部活動がなくなっても、地域クラブ同士の全国大会が発生しない、と証明するのは難しいかもしれない)。

 否定側質疑:質問の内容、数はちょうどよい。質問−回答の一往復でやり取りが終了してしまっているところが多いので、もう少し相手の反応に応じた対応ができると更に良い。

 否定側立論:スピーチは良い。深刻性2については、部活動が「学校生活の一部」と言い切るのであれば、それがなぜ課外活動にとどまり、正規過程に組み込まれないのか、という疑問は生じる。また、質疑に対する応答が、若干かみ合っていないように思われる部分があった。

 肯定側質疑:対話の相手に向かって「相手側さん」と呼びかけるのは違和感がある。後半部分は相手と話がうまくかみ合わずに争点がずれていってしまった感があった。

 否定側第一反駁:あまり遭遇しないタイプのメリットと思われたが、うまく議論内容を合わせていて、秀逸な1NRだった。構成もきちんとメリットのフローの上から下へ、とセオリー通りで、フローも取りやすかった。

 肯定側第一反駁:メリットの守りがやや弱い。デメリットも、今回の反論ではおそらくすべて切ることは無理そうなので、メリット・デメリットを比較する材料を用意できると良かった。

 否定側第二反駁:冒頭部分で、メリットのことを言っているのか、デメリットのことを言っているのか、やや不明瞭な部分があった。また、スピーチ中でメリット・デメリットの行き来が多く、フローが取りづらい部分があった。可能なら、メリットのスピーチ、デメリットのスピーチはそれぞれまとめて、スピーチが錯綜しないようにできると良い。

 肯定側第二反駁:メリットのリカバリーはよくできていた。メリット・デメリットの比較が若干決め手に欠ける感があった。

…次回へ続きます。



2021年08月19日

中学論題(部活動廃止)練習試合用ブリーフ(その5)

今回は、ブリーフ、というより、二反の時の簡単な戦略メモ的なものをご紹介していきたいと思います。内容は大したことはないですが、試合前はこの程度の漠然とした全体像をイメージしつつ、試合の流れの中で細かい議論を調整していく、という感じです。

試合中に、細かい議論で、全体像を見失いそうになったときに、ここに立ち返ってポジションを立て直すことができれば、という程度のものです。

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■■■肯定側戦略■■■

・ケース内因性:

Linearなリスクとして残す(過労死ライン云々はあまり関係なく、とにかく労働時間が減れば減った分だけリスクが減る、で押し通す)。外部指導員や、給特法などいろいろなレスポンスは考えられるが、どれも100%問題の存在を否定するものではない(エビデンスをぶつけられるのが望ましいが、DAにどれだけ労力を割く必要があるかで対応を変える)。

・ケース解決性:

経験的に、飯田市では実際に部活をセーブすることで労働時間が減っている/体調が良くなった教員がいる、というのを前面に押し出す。よくあるT/A(かえって業務が増える)に対しては、]辰剖饌寮がない(どのような業務がどれだけ増えるのか不明)、部活動の膨大な時間が新しい業務で埋まるのか不明(月40〜160時間を部活に費やしている(内因性より)ので、それをすべて新業務で埋めなければいけないが、そんな業務があるのか?)、そもそも、猿橋氏や前屋氏の単なる憶測にすぎない、い覆鵑世んだ言って、実際に部活をやめれば労働時間は減っている(飯田市の例など)、といった点で優位性を出す。

・デメリット:

(主に、非認知能力や、社会的スキル、といったものを想定)

まずは固有性・深刻性を、質疑段階から潰していく(固有性については、部活動の何がユニークなのか?時間であれば、日常の授業などの方が長いし、他学年との交流であれば行事でもできる、自主性についても本当に自主的に部活に参加しているのか?などいろいろ疑問がある。深刻性については、そもそも非認知能力とは何か?定義がきちんとされていないのではないか?デメリットの各資料間で概念が統一されているのか?リンクが飛んでいるのではないか?など、いろいろ突けそう)。

1ARでは、部活動の悪影響(いじめや自殺など)を主軸に、自主性は育たない、とか、本業の方が大事、などといったレスポンスを出していく。

・最終的なまとめ:

ケースがゼロになることは考えづらいので、デメリットの固有性と深刻性が怪しいことを強調し、更にT/Aもされている、という状態までもっていき、メリットの重要性がクリアであることを材料に比較で優位に持ち込む。

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肯定側については、この手の(教員の負担軽減の)メリットがゼロになるケースは考えづらいので、デメリットをどこまで小さく見せられるか、と、重要性/深刻性の比較で、どれだけ否定側深刻性が曖昧、という印象を与えられるかがカギになるだろう、と考えていました。

続いて、否定側。

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■■■否定側戦略■■■

・デメリット:

リンクがどれだけ強固か、プランによって、どれだけのドロップアウトが出るか、をきちんとジャッジにイメージさせられるかが大事。固有性と発生過程の資料を使って、「9割が部活動に参加している状況ですら、16,000人のドロップアウトが発生しているのだから、部活参加率がゼロになったら、この数倍のドロップアウトが発生してもおかしくない」といった主張までもっていきたい(やや強引だが)。

デメリットのインパクトについては、犯罪や社会不安、といった部分を伸ばし、治安維持は、国としての義務であり、優先されるべき事項、というような説明をしておく。

・メリット:

数が少ないことを強調する(他業種との比較)。内因性(給特法があれば、結局は他の業務が入ってしまう)、解決性(むしろ労働強化になる)といった議論を説明し、少しずつでもメリットを削るようにする。

・最終的なまとめ:

メリットの重要性は、社会的に許容される程度のインパクト(他業種よりも少ない割合の過労死)であるのに対して、治安維持や社会不安を防ぐ、といった、国家的に優先される事項で問題が発生するデメリットの方が問題、といった結論にもっていくようにする。

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否定側戦略としては、元々インパクト勝負で比較しやすいデメリットを、ということでデメリットを決めているので、戦略としても、インパクト勝負で勝ちに行く、という方向で考えていました。論題の主語(日本)として取るべき政策は、と考えたときに、内因性の一番目の反論と絡めて比較できれば、美しい二反になるのでは、という思惑もありました。

ただ、デメリットの発生量については、やはり低進学率校に限定されるとか、プロセスがやや不明瞭、といった問題があるため、思惑と実際のジャッジの取られ方については、ややギャップがあったように思います。

もう少し時間があれば、この辺りを修正してさらに試合経験を積みたかったところではあります。

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中学論題ブリーフについては、この辺で終了したいと思います。



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2021年08月18日

中学論題(部活動廃止)練習試合用ブリーフ(その4)

中学論題用ブリーフの第4回です。肯定側第一反駁用に用意した原稿を紹介していきます。

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■■■メリット反論への返し■■■

[部活指導員]

__部活指導員は、財政的に困難

名古屋大学、内田、2018

しかし、部活動を外部委託する取組は、依然として一部の自治体にとどまっている。それは、部活動を外部委託できるだけの予算や人材を確保することのできる自治体が少ないためであろう。また、部活動指導員の任用にかかる費用は、国から補助が出るとはいえ、都道府県と市町村が、それぞれ費用の三分の一を負担することとなっている。そのため、多くの自治体では、予算を理由に部活動指導員の制度を利用しないことが懸念されている(長沼、二〇一七)。」(59)

内田良(うちだりょう・名古屋大学大学院准教授)上地香杜(かみじこと・名古屋大学大学院博士後期過程)加藤一晃(かとうかずあき・名古屋大学大学院博士後期過程)野村駿(のむらはやお・名古屋大学大学院博士後期過程)太田和彩(おおたかずさ・名古屋大学大学院博士前期過程)『調査報告 学校の部活動と働き方改革──教師の意識と実態から考える』岩波書店、2018年

__部活指導員数は絶対的に不十分

ジャーナリスト、前屋、2019

「そんな部活動指導員の定員を増やしたからといって、「ブラック部活動」の問題が改善するとはおもえない。それどころか、新たな問題を生みそうな予感すらある。そもそも来年度には1万2000人にするとはいっても、全国に公立中学校は9400余りもあり、1校あたりに2人は配置できない数でしかない。1校での部活動の数は複数であり、たとえ2人が配置されたとしても、教員を部活動から完全に切り離すことは無理である。教員の働き方改革の推進に大きく貢献するとはおもえないのだ。」

前屋毅(まえやつよし・フリージャーナリスト)「部活動指導員はブラック部活動から教員を解放できるのか、部活動指導員というブラック職場を生むだけなのか」『YAHOO!ニューズ』2019年8月31日 https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20190831-00140590

■■■DA(社会スキル・非認知能力等)への反論■■■

__部活動の人間関係には、ネガティブな側面があり、かえって危険

筑波大学教授、庄司と早稲田大学、小野、2015

実際にこれまでには、部活動において先輩後輩関係による悩みを関連とする生徒の自死やいじめが数多く報道されてきた(例えば朝日新聞、1995)。したがって、部活動での活動以前に、部活動内における人間関係、特に上記のような先輩後輩関係を契機に、部活動での活動に支障が出たり、活動の継続そのものを断念せざるをえない生徒は少なくないであろう。実際、青木(1989)は、高校の運動部員の部活動継続と退部に影響する要因について検討を行い、退部者の退部理由として、男子・女子ともに「人間関係の軋轢」が大きな要因となることを明らかにした。また、稲地・千駄(1992)は、部活動における先輩後輩関係は、「不平等感」や「過酷さ」、「拘束感」を強く伴ったものであるとしている。このように先行研究においても、部活動には先輩後輩関係によって引き起こされる問題が色濃く存在していることが報告されている。」

小野雄大(おのゆうた・早稲田大学大学院スポーツ研究科(博士課程))庄司一子(しょうじいちこ・筑波大学人間系教授)「部活動における先輩後輩関係の研究──構造、実態に着目して──」『教育心理学研究』第63巻第4号(2015年) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/63/4/63_438/_pdf/-char/ja

__部活動は半ば強制的な活動のため、自主性は育たない

ベネッセ教育総合研究所、木村、2018

その一方で、「自主性」の理念に反して皆が入るのが当たり前といった強制性があることや、「自主性」の理念のもとに活動が過剰になりやすい状況があることも多くの識者が指摘する(たとえば、中澤篤史『そろそろ、部活のこれからを話しませんか―未来のための部活講義』大月書店、2017年、内田良『ブラック部活動―子どもと先生の苦しみに向き合う』東洋館出版社、2017年)。そのような状況では、子どもや教員の過度な負担や事故・体罰などの問題が起きやすい。そもそも子どもたちが優先的に身につけるべきは教育課程内の活動で育まれる力であり、そこにマイナスの影響があってはならないだろう。部活動のやりすぎで、本来の学習に十分取り組めないようであれば本末転倒である。」

木村治生(きむらはるお・ベネッセ教育総合研究所主席研究員)「データで考える子どもの世界 第1回 部活動の役割を考える 子供たちに適切な活動の機会を提供するために その2 部活動の意義」2018年8月24日 https://berd.benesse.jp/special/datachild/comment01_2.php

__部活動によって、生徒に過剰な負担がかかり、本来学校で身につけるべき力がつかなくなり、本末転倒です。

同資料(ベネッセ教育総合研究所、木村、2018)

「その一方で、「自主性」の理念に反して皆が入るのが当たり前といった強制性があることや、「自主性」の理念のもとに活動が過剰になりやすい状況があることも多くの識者が指摘する(たとえば、中澤篤史『そろそろ、部活のこれからを話しませんか―未来のための部活講義』大月書店、2017年、内田良『ブラック部活動―子どもと先生の苦しみに向き合う』東洋館出版社、2017年)。そのような状況では、子どもや教員の過度な負担や事故・体罰などの問題が起きやすい。そもそも子どもたちが優先的に身につけるべきは教育課程内の活動で育まれる力であり、そこにマイナスの影響があってはならないだろう。部活動のやりすぎで、本来の学習に十分取り組めないようであれば本末転倒である。」

木村治生(きむらはるお・ベネッセ教育総合研究所主席研究員)「データで考える子どもの世界 第1回 部活動の役割を考える 子供たちに適切な活動の機会を提供するために その2 部活動の意義」2018年8月24日 https://berd.benesse.jp/special/datachild/comment01_2.php

__日本の部活動は、あまりに時間が長く、かえって多様な経験をする機会を奪っています。

ベネッセ総合研究所、木村、2018

「これらを「部活動をやっている子どもは時間の使い方がうまい」と解釈することはできる。ダラダラと家でスマホをいじっている時間があったら部活動をやってほしい、と保護者だったら思うだろう。しかし、部活動をやっている子どもは(その時間が長いほど)、メディアを使って文化に触れたり、のんびりしたりする時間が十分にないという見方もできる。自由時間は限られ、その内訳はゼロサム関係(一方が増えればもう一方が減る関係)である。部活動が長くなり過ぎることで、多様な経験や生活のゆとりが失われる可能性にも配慮が必要だ。」

木村治生(きむらはるお・ベネッセ教育総合研究所主席研究員)「データで考える子どもの世界 第1回 部活動の役割を考える 子供たちに適切な活動の機会を提供するために その2 部活動の意義」2018年8月24日 https://berd.benesse.jp/special/datachild/comment01_2.php

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量的には少ないですが、1ARで読める資料の量は限られているので、実際の練習試合では、さらに絞り込んで使っていました。DAに対しては、基本的にこれらのエビデンスのクレームを変えたり、(エビデンス無しの)深刻性や固有性のアタックなどと組み合わせて対応していました。

次回は、ブリーフ、という趣旨からは外れますが、二反で考えていた戦略などについて少し書きたいと思います。



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2021年08月17日

注琢論題(部活動廃止)練習試合用ブリーフ(その3)

中学論題用ブリーフの第3回は、否定側一反用のブリーフを掲載していきたいと思います。

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■■■内因性への反論■■■

1) 教員の過労死数は少ないです。10年間で63人しかいません。

毎日新聞、2018

過労死と認定された公立校の教職員が2016年度までの10年間で63人に上ることが、地方公務員災害補償基金(地公災)への取材で明らかになった。」

毎日新聞 2018年4月21日「公立校 過労死教職員63人 専門家「認定、氷山の一角」」https://mainichi.jp/articles/20180421/k00/00m/040/197000c

全国の公立校の教員は大体110万人くらい(小・中・高の合計)なので、10万人当たり0.5人くらいです。

一方、運輸業、郵便業での過労死は、年間61人で、就業者数の346万人で計算すると、10万人当たり1.76人と、3倍以上の危険性があります。すなわち、教員の過労死確率はそれほど高くなく、社会的にも許容可能な数値と言えます。

2) 教員の時間外労働が多くなる原因は給特法であり、これを何とかしないかぎり、問題は解決しません。

名古屋大学大学院准教授、内田、2017

「「給特法」等の規定は、教員の時間外勤務が1966年当時のようにわずかであれば、教職という仕事の特殊性に沿った合理的な仕組みであったと言える。残業はできないし残業代も支払われない。だけど、学校外での業務を含めていろいろと雑多なことがあるから、給料月額の4%分はあらかじめ上乗せしておこうということである。ところが今日の教員は、実質的には日々その4%分(時間にして一日あたり20分弱)をはるかに超えて残業しているため、「教職調整額」はその対価としてまったく不十分である。しかもその日常的な残業の内容というのは、けっして臨時または緊急性があるわけでもなく、超勤四項目に該当しているわけでもない。違法な勤務が常態化している。「給特法」等の規定により、教員は特別な場合を除いて、定時に仕事を終えていることになっている。教員に時間外勤務は想定されていない。定時で職務を終えて、あとは帰るだけ。もし職員室に残っている人がいるとすれば、それは自主的に残っているだけなのだ、と。このように法律が定めているため、教員が時間外勤務を把握する必要がない、いや時間/外勤務をしているはずがないのだ(もちろん現実はまったくの逆で、夜遅くまで働いている)こうして、教員の時間外勤務が青天井で増大していくのである。」(127/128)

内田良(うちだりょう・名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授)『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』東洋館出版社、2017年

週刊ダイヤモンド、2021

「公立学校教師のいわゆる「残業代」は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」により、給料表額(基本給)の4%に当たる教職調整額で済まされてきた。つまり「定額働かせ放題」。であるが故に「校長が教師の業務リストラをするインセンティブが働かない」と指摘されている。公立学校教師の間には”諦めモード”が漂う。」(36)

『週刊ダイヤモンド』2021年6月12日号

3) 教員の労働時間増加の元凶は授業時間とその準備などであり、部活動だけをやり玉に挙げても問題は解決しない

ジャーナリスト、前屋、2017

4月28日に文科省が公表した教員勤務実態調査で、マスコミが「10年間で倍になった」と騒ぎたてた中学教員が部活のために割いている時間とは、「土日の部活」でしかない。平日を見てみれば、10年前の34分から2016年度は41分と7分増えたにすぎない。/文科省も土日に関しては「部活動・クラブ活動の時間が増加している」と指摘しているが、平日については部活についての指摘はない。平日で勤務時間が増加していると指摘しているのは、「授業」「授業準備」「成績処理」「学年・学級経営」だけである。これには理由がある。2008年の学習指導要領(中学での完全実施は2012年度完全実施)で、文科省は「脱ゆとり教育」へと転換した。そして授業時間が1割増え、学ばなければならない内容も大幅に増えたのだ。そのため教員が授業に割く時間も、授業準備や成績処理、さらには学年・学級経営に割く時間も増えた。そこについては文科省も対処策を示すわけでもなく、多くのマスコミも触れない。部活に問題がないとは言わないが、教員の長時間労働の原因になっている授業時間の増加と授業内容急増には触れないで、部活だけを責めるのは問題がある。だから、「長時間労働の解消なら、部活より授業に休養日を設けてはどうだろうか」という記事は、部活だけをスケープゴートにしないで、根本的な要因である授業時間のことも問題にすべきではないか、という主旨だった。」

前屋毅(まえやつよし・フリージャーナリスト)「教員の長時間労働は、部活だけが原因ではない 知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第2回」『BEST TiMES』2017年6月14日https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/5911/1/ / https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/5911/2/

■■解決性への反論■■

1) プランを取ったとしても、浮いた時間は授業準備などで消えてしまい、結局残業時間は減りません。

飯田市教育委員会『部活動アンケートのまとめ』2021

「・何より普段の業務に向かえる時間が増えたことがありがたかったです。学校業務の負担も増える中、部活動の時間が減ったことは大きかったです。

・とにかくありがたいです。授業準備に思いっきり使うことができました。」

飯田市教育委員会『令和2年度 部活動アンケートのまとめ』令和3(2021)年4月13日 https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/50079.pdf

同資料の別の個所を引用します。

部活動指導がない代わりに、教材研究や授業準備に時間がかけられた。帰宅時間はあまり変わらなかった

飯田市教育委員会『令和2年度 部活動アンケートのまとめ』令和3(2021)年4月13日 https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/50079.pdf

2) ターンです。部活動ができないことで、かえって体調が悪くなる教員がいます。

飯田市教育委員会『部活動アンケートのまとめ』2021

「・部活動をやっていた方が体調がよいことが多く、体もそれを覚えているので、休みが多いと体の調子が狂ってしまう。特に、部活動がなく完全オフ後の調子がとてもよくない

部活動をすることで生徒と接し、明るく過ごすことができるが、その機会を奪われている。生徒も同じように、部活動が無いことにイライラしているかもしれない。」

飯田市教育委員会『令和2年度 部活動アンケートのまとめ』令和3(2021)年4月13日 https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/50079.pdf

3) ターンです。部活動がなくなる事で、生徒の生活習慣が乱れたり、問題行動が発生したりします。

飯田市教育委員会『部活動アンケートのまとめ』2021

部活動を行わないからといって、帰宅後にその時間を活用して勉強時間に充てたという生徒は少なく、実際にその期間中に生徒と話す中では、「帰ってから○○と夜中まで対戦(TV ゲーム内のことのようです)してたんだけどさ〜」という話題が多く上がりました。これを「空いた時間を活用した生徒間の人間関係づくりの一環」とするかは、正直疑問に感じます。また早い時間に自宅に帰っても、保護者の方は仕事で家におらず、子どもの生活習慣が乱れたり保護者のいない時間帯に友達の家に遊びに行ったりという報告も上がってきています。」

飯田市教育委員会『令和2年度 部活動アンケートのまとめ』令和3(2021)年4月13日 https://www.city.iida.lg.jp/uploaded/attachment/50079.pdf

4) ターンです。部活動を廃止すると、その埋め合わせ業務がかえって強化され、教員の労働時間はむしろ増加します。

ジャーナリスト、前屋、2019

愛知県内で小学校の部活動を廃止する動きが加速している。豊橋市も小学校の運動部の部活動をすべて廃止することを決めたそうだ。教員を働かせすぎる元凶として部活動が槍玉に挙げられている昨今、「教員の働き過ぎ改善のために豊橋市も英断」と受けとった方も少なくないのではないだろうか。たしかに豊橋市は廃止する理由に、「教員の働き方改革をすすめる」ためとしている。しかし同時に、「学力向上をはかるため」という理由も掲げている。どちらの比重が高いのか、ここは考えなくてはならない重要なポイントのようにおもえる。この件を「NHK NEWS WEB 東海 NEWS WEB」(7月9日付)は、「新年度から小学校で英語や道徳の科目が加わり、教員の準備が必要なことに加え、教員の働き方改革も進める必要があるとして、今年度末で水泳を、来年度末で陸上やバスケットボールなどすべての運動部の部活動を廃止することを決めました」と報じている。文化部についても廃止に向けた検討をするという。そして同ニュースは、「空いた時間については、学力が十分でない子どものための補習や教育相談にあてるなどして、児童の学力向上をはかるとしています」と続いている。部活動廃止で空いた時間を、教員は補習や教育相談にあてることになるのだ。教員の働く時間を減らすことにはならない。補習や教育相談となれば、これまで部活動に時間を割いてきた教員だけでなく、それ以外の教員も時間を割かなければならなくなるのは目に見えている。働き方改革どころか、労働強化でしかないことになる。」

前屋毅(まえやつよし・フリージャーナリスト)「小学校の部活廃止は、教員の働き改革推進どころか、逆の労働強化でしかない」『YAHOO!ニュース』2019年7月11日 https://news.yahoo.co.jp/byline/maeyatsuyoshi/20190711-00133750

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実際には、これらの資料のほかに、相手のケースを見て思いついたレスポンスなどを適宜織り交ぜながらやっていたので、毎試合すべての資料を読んでいたわけではありません。内因性の3)や解決性の3)などは、省略することが多かったです。また、飯田市の資料なども、適当に引用範囲を変えたりなどしていました。

内因性1)の議論は、あまりディベート甲子園では出てこなかった議論だと思いますが、他の中学の試合を見ていると、教員の過労死リスクが具体的に数値として述べられていることが少なく、他の職業と比較した時にどうなんだろう、という疑問を持って入れてみました。比較的ジャッジ受けは良かったのですが、実際にはやはり教員の過労死リスクは、全体的に見ても高い方のようで、相手がちょっと調べてきていると、逆効果になってしまう可能性もあります。また、最終的に肯定側の重要性と否定側デメリットをきちんと比較してはじめて意味を持つ議論ですし、言い回しなども注意が必要と思われるので、あまり積極的にお薦めできる議論ではありません。

次回は肯定側第一反駁用のブリーフを紹介します。



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