JDA秋期大会参戦記(予選第一試合その2)JDA秋期大会参戦記(予選第一試合その4)

2007年11月29日

JDA秋期大会参戦記(予選第一試合その3)

JDA秋期ディベート大会予選第一試合の第三回です。
今回は、否定側第二立論から肯定側第一反駁までです。

否定側第二立論

デメリットに関して

1) 2AC最初のエビデンスは、「薬物中毒者」などと言っているが、普通の人も殺人を犯している。
[(…93年)財産犯…異常な人少ない…殺人…切迫した状況…異常な人間出会ったとは思わない…]

2) イタリアの話は、死刑を廃止したのが戦後混乱期で、その後社会が安定するにつれて殺人が減少するのは当たり前。

3) マフィアに関してどうだったかが重要。少なくともマフィアの殺人については増えている→1NCの資料を伸ばす。

4) 日本では、組織犯罪の規模は大きい。
[(鷲見2005年)国ごとの個別の事情があり、同列に扱えない。日本は暴力団構成員が8〜9万人、予備軍20万人。彼等に足かせ無くなる]

5) 再犯に関して、無期が終身刑化している点は認めるが、肯定側も「仮出獄を認めない」というエビデンスを読んでいる。

6) 「べき」論とは言っても、現実的に抑止力が働かずに人がどんどん殺されるような世界になったらどうするのか。

7) 否定側も、人間の尊厳を守るために、犯罪抑止を行おうとしている。


ケースに対して

「人間の尊厳」に対して

1) 他人の人権を剥奪した者に人権を主張する権利は無い。
[誠実に生きている者、強盗・殺人犯も平等に基本的人権を与える訳にはいかない…地球より重い生命を奪った加害者…対等のはずがない…人権個別性…]

2) 死刑囚の人権は守られるかもしれないが、一般人が殺されては意味がない→一般人を守るべき。
[(東大教授藤本1977年)それぞれの論点…大量殺人に対しては…認めるべきでない…]

「残忍化」に対して

1) 死刑の存在は、規範意識を形成する。
[(椎橋2001年)教育を通じて、して良いこと・悪いことを学びながら規範意識を形成する…理由無く人を殺せば死刑になる可能性がある、というメッセージを伝え続けることで、抑止が働く場合もあるのでは]

2) 仮に残忍化効果があるとしても、それは時期が早まるだけで、そうした人はいずれ殺人を犯すので、殺人数自体は変わりない。
[(…93年)死刑の刺激効果…どちらにしても殺人を犯すのであって…早く行わせるにすぎない]

「戦争」に対して

1) 死刑を存置したままでも殺人をなくす世の中を作ることは可能。暴力団が暴れて国内が乱れることの方が問題。

DAの伸ばしが想定よりは粗かったので、少し余裕はできました。しかし、組織犯罪の部分に関しては、きちんと反論されていて、ここに集中して2NRをされると、DAをかなり大きく取られてしまう可能性もまだ残っています。また、ケースに対して比較的多くのレスポンスがありました。内容的にも、1ARできちんとカバーできるかどうかが、勝敗に大きく影響しそうです。

肯定側質疑

Q:残忍化の反論で出てくる、規範意識に関する椎橋のエビデンスには「数量的に説明できない」とか「かもしれない」といった表現が多いが。
A:統計には表れなくても、効果はある。
Q:規範意識を醸成するのに、死刑以外の刑罰ではいけない、ということが、証拠資料中で述べられているか。
A:「人を殺せば死刑になる可能性がある」というメッセージを伝え続けることによって、ある時点で犯罪を抑止する効果がある、といっている。
Q:たとえば、銀行強盗をしても死刑にならないが、それでも銀行強盗をしないのはなぜか?
A:…
Q:人権の話について、犯罪者は人権を剥奪されても仕方がない、という議論は「人権」のことを言っている、ということで良いか。
A:良い。
Q:残忍化に関して、二番目の資料は犯罪に踏み出そうとしている人たちに、最後の一歩を踏み出させる効果が、残忍化にある、と示唆していないか。
A:そうではなくて、死刑の影響は、それらを早く行わせるにすぎない、といっている。
Q:早く行わせるにすぎない、といっても、残忍化が無ければ一生殺人をしなくてすむ人がいるかもしれない。
A:時期が早くなるだけで、いずれはやるので、殺人数は変わらない。
Q:殺人を行うタイミングが遅れていって、その人が死ぬまで殺人をしないかもしれない。

あまり1ARとかみ合わない質疑になってしまいました。「犯罪者の人権」に関する質疑も若干意味不明です。このときの意図としては、「人権」は制限されても仕方がないが、「人間の尊厳」が奪われることがあってはならない、ということが言いたかったのだと思います。ただ、そういう意図であれば、「人間の尊厳」と「人権」の違いについて、もっとつっこんだ質疑をする必要があり、うまく伝わらなかったと思います。

残忍官に関しても、どのようなレスポンスをするかについて、Y君とあまりコンセンサスが取れていなくて、少々見当外れな質疑になってしまいました。ここは、NEGの分析がアメリカのものであることや、その日本への適用の妥当性などを質疑するべきでした。

否定側第一反駁

まとめ

1) 死刑は正当化できる
[(椎橋2001年)自由刑≠国家による誘拐、罰金刑≠国家による強盗、同様に殺人と死刑執行は違う…違法な行為に対する正当な刑罰…原状回復…儀式としての死刑]

抑止力DAに関して

1) 抑止力に関して、ある程度の蓋然性はある。
[統計的数字…現実…裁判制度などにより異なる…統計も真実を含む…ある程度の蓋然性]

2) 抑止効果はマイナスにはならない。
[(ところ)17、8人という研究…正しい可能性もある。差し引きマイナスになるほどとは思われない…]

3) 暴力団に関しては、一般人に対する威嚇とは異なるので、この部分のリンクは残る。

4) 再犯に関して、終身刑化することは認められているので、再生可能性はなく、人間の尊厳は確保されない。

2NCが1NCで出した議論をほとんどすべてカバーしてしまったので、このような1NRにならざるを得なかったのでしょうが、勝敗に関わる機能、という観点からは効率を落としていたと思います。今にして思えば最初の「死刑は正当化できる」という議論は、Newと指摘しても良かったかもしれません。また、抑止力への反論も、想定の範囲内でした。後半に関しては、2NCの繰り返しになっていて、AFFとしては、ほっと一息、という感じです。

続くY君の1ARは、結構時間をかけて準備してもらい(どちらかというと、私は準備時間をほとんど使わない派で、Y君はたっぷり時間をかけてスピーチを考えたい派と、準備時間の使い方は対照的でした。その意味でも私たちのチームはバランスが取れていたと思います)以下のようになりました。

肯定側第一反駁

ケースに関して

論点1、論点2に関して

1) 否定側はこれらの議論をドロップしている→プリザンプションは肯定側にある。


論点3に関して

人間の尊厳に関して

1) NEGの資料は、人権を尊重するべきとは言っているが、そのために死刑囚の命を奪うことまでは正当化していない。

残虐化理論に関して

1) NEGの椎橋の資料では「数量化できない」といっている。これは、プリザンプション議論「合理的証明が無ければ、AFFに投票すべき」に引っかかる。

2) 二枚目の資料は、アメリカのことを言っており、日本に当てはまらない。

3) 日本に特化すれば、抑止力よりも残忍化が上回る。
[(坂元2003年)米国では、抑止力の支持が強まっているように見えるが、日本は犯罪発生件数自体が少なく、当てはまらない。]

戦争論に関して。

1) 肯定側からの反論なし。


デメリットに対して

一般抑止に対して

1) 2NCの「普通の人も殺人を犯す」というエビデンスは、「切迫した状況で」と言っている。無計画・非合理的な動機で殺人を犯すということなので、むしろAFFの分析をサポートしている。

2) 1NRの所氏のエビデンスは「独断的に言えば」としか言っておらず、客観的データではない。

3) 所氏が、どのようなデータを見て、このような結論に至ったかはわからない。

4) バークやフェイガン、といった、最新の分析によれば、死刑に抑止力は無いことが証明されている。2ACの4枚目のエビデンスを伸ばす。

5) その他の2AC論点はドロップされている。

組織犯罪に対して

1) マフィアは特殊な例
[巨額な収入、影響力、イタリア最大の企業年間収入GDP7%]
日本の暴力団は、これほどの影響力は無い。

2) ヤクザの規模がある程度大きいことは認めるが、彼等には独自の美学があり、死刑で彼等の犯罪を抑止することはできない→2ACのエビデンスを伸ばす。

再犯に対して

1) 基本的に、AFFの議論がすべて認められている。

インパクトに対して

1) Net Benefitでなく、べき論で考えるべき。否定側の反論は有効でない。拷問が正当化されないのと同様、死刑も正当化されない。

1ARとしての仕事はきっちりこなしてくれました。一通りの議論はカバーされていて、残忍化議論についてもかなり強力な議論を残してくれました。最悪DAの組織犯罪部分が残ったとしても、残忍化の議論で対抗できるでしょう。

DAに対する議論もかなり多く、とりあえず一般抑止効果と再犯については大丈夫だろう、という感触を持ちました。

第二反駁は次回に回します。



geniocrat at 12:58│Comments(0)TrackBack(0)JDA | 参戦記

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