第23回JDA秋季ディベート大会の予選(ほぼ)全試合ジャッジしてみた(その1)第23回JDA秋季ディベート大会の予選(ほぼ)全試合ジャッジしてみた(その3)

2020年12月12日

第23回JDA秋季ディベート大会の予選(ほぼ)全試合ジャッジしてみた(その2)

第23回JDA秋季ディベート大会全試合ジャッジの続きとなります。

・大会の論題は「日本は、国会議員の一定数以上を女性とするクオータ制を導入すべきである」でした。

・参加チームは10チーム、各チーム3試合ずつ行っているので、全部で15試合となります。

・試合No.は大会の対戦表の番号に対応しています。

・チーム名のA〜Jは、実際の予選順位に対応しています(Aが1位、Jが10位)

・原則試合No.11〜44の順でジャッジしていますが、試合No.13と23は、試合途中からしか音源がなかったので、飛ばして、試合No.44まで聞いてから、最後にジャッジしています。

・全試合1.3倍速で流して、途中戻ったりはせずに、一度聞いただけで判断しています。通常のジャッジの場合と同様、聞き落としや聞き間違えはあると思います。

…というわけで、以下試合No.31からの肯定側/否定側の得点と判定および判定理由、となります。

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■試合No.31 (B vs. H)

得点:肯定側96点/否定側91点

判定:肯定側

判定理由:

否定側クリティークは、ジェンダー規範をなくすために、男女、という概念を使わないようにするべき、というものと理解した。確かに、その言葉遣いによって、ジェンダー概念が固定化されるリスクはあるとは言えそうだが、肯定側の政策が、ジェンダー固定化の方向に進んでいるわけではなく、プランを取ることによっても、ジェンダー差別構造の解消に資する、という事を述べているので、肯定側のやっていることが望ましくない、というわけではない。したがって、プランを取ることを想定する、という状態と、Kを取る、という状態で、どちらがジェンダー平等に近づくのか、という事に関しては結論がつけがたく、必ずしもKを取る必要は無い、と判断した。

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■試合No.32 (G vs. I)

得点:肯定側104点/否定側101点

判定:肯定側

判定理由:

クリティークでは、「NEGに投票することによって、女性ディベーターが勇気づけられ、連帯できる」と言っていたが、NEGに投票することが、どうして、女性ディベーターの勇気づけや連帯につながるのかがわからなかった。AFFは、社会構造自体を変えなければ、この問題は解決しない、と言っている。また、政策ディベートにおける分析を学ぶことで、長期的には、実際の政策を変えることにもつながる、とも言っており、こちらの方が、説得力があるように聞こえた。

(「連帯」の話を少し補足すると、NEGに投票できるケースは、おそらくAFFが「女性ディベーターの連帯などどうでもよい」といったことを言っているときに、それにAgainstすることによって、ジャッジが女性ディベーターの連帯へのサポートを表明する、といったことにあるのではないか。今回に関しては、AFFも女性ディベーターが連帯すべき、という事についてはagreeしているので、どちらに投票しても、ジャッジの立場は、女性ディベーターの連帯をサポートしていることになると思われる。ならば、あえてKに投票する理由はない、と考えるのが妥当ではないか?)

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■試合No.33 (J vs. C)

得点:肯定側89点/否定側96点

判定:否定側

判定理由:

カウンタープラン(ロトクラシー)とプランの争いとなる。単純に女性議員の人数、という観点で言うと、プランは衆議院、参議院とも女性が30%、カウンタープランだと衆議院10%、参議院50%。ということなので、数的には大差がない(厳密には衆議院の方が定数が多いので、プランの方がわずかに女性比率は多いと言えるし、両院で女性が増えることに意味を見出し得るが、そうした話はあまりされていないように感じた)。かつ、カウンタープランを採用することで、貧困層の代表も増え、より少数者利益が保証される可能性は高そうなので、この時点でカウンタープランに投票しても良いと考えた。

さらにデメリットもほぼ手つかずで残っているため、デメリットを回避するためにも、プランとは異なる立場をとるべき、という考え方もできる。

メリット解決性の一連の争いについても、これでケースがゼロになるとは思わないが、相当程度メリットを削減していると考えられる。

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■試合No.41 (I vs. D)

得点:肯定側96点/否定側101点

判定:否定側

判定理由:

Topicality的な議論については、ある程度論題との関係性が担保されていれば、肯定側議論を検討する余地はあると判断した。そのうえで、仮に肯定側に投票した場合に、女性ディベーターが本当に勇気づけられ、声を上げることに資するのか、が分からなかった。現状のディベート界で女性ディベーターが抑圧されている、という話はあったが、ジャッジが投票することによって、それが変わる、と確信するほどの議論はなかったように思う(裁判の例はディベートと若干違うようであるし、今回の投票によって、それが大々的に知られて大きな流れが生じる、という部分は証明されていないように思う。また、否定側からも、「むしろ女性が委縮してしまう」といった議論があり、これに対して肯定側が無反応であることから、どちらの議論が上回るのか、判断し難い)。

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■試合No.42 (E vs. G)

得点:肯定側:105点/否定側99点

判定:否定側

判定理由:

今回出てきているクリティークは、アクティビズム的な考え方ではなく、単に、「男女二元論的な考え方が前提条件として間違っている」という議論として考えた。実質的な政策内容の前に、その根底の価値観を論じるべき、という否定側の議論は残っていると考えられる。また、肯定側プランが、あくまで戸籍上の男女区別によって当選/落選を決定づけてしまうものであり、その中間の立場の人々を無視する価値観に基づいている、という論点も、認められていると考えられる。プラン採択後に、マイノリティへの思慮が働くかどうか、という点は、プランの価値観そのものとは無関係(これは、プランを採択して、その結果として発生する論点であり、プラン採択前に考えるべきは、あくまでプランそのものがどういう価値観に基づいているか、という話であるから)であり、クリティークを排除する理由とはできない。また、2AC/1ARで出てきた、「政策決定パラダイムを取るべき」とか、「個人的信条から離れて議論を行うべき」といった議論も、その前段階で価値観を論じるべき、という否定側の話と両立可能であり、ここでは反論として当てはまっていないと考える。

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■試合No.43 (H vs. A)

得点:肯定側90点/否定側102点

判定:否定側

判定理由:

カウンタープラン(フランス下院同様、女性候補の比率に応じて政党助成金を変化させる)にVoteする。カウンタープランによって女性議員がゆっくり増える、という点に関しては、はじめは抜け穴があるので、政党はそれを利用するが、次第に女性議員を増やす方向に政党の動向も傾いていく、という否定側の議論の方が説得力があるように見える(肯定側は、自らのケースで、現時点においては抜け穴を利用するインセンティブがあることを証明してしまっているように見える(現時点では政党は、男性候補の方が選挙で「勝てる」と思っていること、など))。したがって、長期的には、ほぼプランと同じ効果が得られると考えた。一方、急激に女性議員を増やすことに固有なメリットは肯定側から提示されていない。また、デメリットについては急激な女性議員の増加は、バックラッシュを招き、女性議員に対する精神的・物理的暴力を招く、といった話はおおむねその通り採用できると考えた。したがって、プランよりもカウンタープランの方が政策として優れていると判断した。

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■試合No.44 (F vs. B)

得点:肯定側98点/否定側99点

判定:否定側

判定理由:

プランを取ることによって、女性関連政策が現状と比べて飛躍的に進展する、という印象は受けなかった。日本の場合、結局プランを取っても、当選するのは党幹部の意向に従う保守的女性である可能性が高いと感じた。

デメリットについては、イニシャルの段階で、かなりリンクは薄いと感じたものの、肯定側からの反論も弱く、少なくとも憲法改正(改悪?)が発議され、国民投票に持ち込まれる程度には、与党の支配率が高まる可能性は若干あると感じた。そこからはほぼ五分五分で、憲法への自衛隊明記、さらには戦争に巻き込まれる可能性も、ごくわずかではあるが、なくはない、という認識には至った。

メリット・デメリットとも可能性としては大きくはないが、インパクトとしては、デメリットの方が大きい、と考えるのが妥当と判断した。

…次回は、せっかく全試合のデシジョンとポイントを出したので、その集計と、実際の大会結果との比較分析などしてみたいと思います。



geniocrat at 12:25│Comments(0)JDA | 観戦記

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