中学論題(部活動廃止)練習試合用ブリーフ(その5)第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その2)

2021年09月07日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その1)

去る8月7日〜9日にかけて、第26回全国中学・高校ディベート選手権(ディベート甲子園)がオンライン開催されました。

今年のディベート甲子園全国大会は、YouTubeでライブ配信され、出場者・ジャッジと見学申し込みをされた方は、すべての試合を(後からでも)見ることができるので、中学予選の(ほぼ)全試合をジャッジしてみました(一試合だけ、配信の不具合でYouTubeライブが見られなかったので、全部で23試合です)。

論題は「日本は中学校高等学校の部活動制度を廃止すべきである。是か非か」でした。

見方としては、

・1倍速で、試合を一度だけ通して聞く

・ジャッジの判定スピーチを聞かない状態で、自分の判定と得点を出し、各スピーチの感想まで書く

というやり方です(すべて書けた後に実際のジャッジの判定スピーチも聞きました)。

通常のジャッジと同様、聞き間違いや聞き落としの可能性があり、実際にディベーターがしゃべった事実と異なる内容に基づいた判定になっている可能性もあるので、コメントなどいただけると嬉しいです。

試合番号は、実際の対戦表の番号と一緒です。チーム名は一応記号化してあります(パンフレットの組み合わせ表で、1組の上からA、B、C、2組の上からD、E、F、…といった具合)。

コミュニケーション点は、各スピーチ(立論/質疑/応答/第一反駁/第二反駁/マナー減点)について5点満点でつけた合計を表示しています。

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■J1-1(A vs. C)

・コミュニケーション点:肯定側21点/否定側15点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 残ると考える。

 否定側レスポンスのうち、ガイドラインの話については、必ずしも守られるわけではない(将来的にガイドラインが強化され、改善する方向ではあるものの、それで十分かはわからない)。

 解決性については、肯定側の言う通り、教師個人が授業が分かりやすくできていると考えていても、改善の余地がない、ということにはならないし、そもそも授業準備に時間を当てなければ教員の余暇時間が増えて、重要性2が得られることに変わりはない。

・デメリットの評価:

 発生はかなり怪しい。

 現状で、部活動が社会性や自発性、主体性を養う場、と考えられていることはわかったが、それがどのくらい効果的に行われているか、を示す資料が不足していると感じた。格差についても、現状存在する格差を、プランがどの程度悪化させるのかは良くわからない。

 また、最終的に社会性等の能力に影響があったとして、それがどのようなインパクトを持つのか、の証明も不足しているように見える。

・結論:

 デメリットのリンクがかなり削られ、かつインパクトが曖昧なのに比較して、メリットが十分上回ると考え、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:読み方はベストに近い。内容も、安易に教員の過労死にもっていかず、生活の充実、といった現実的な重要性を採用しているところは好感が持てる。

 否定側質疑:悪くはないが、若干ラベルの確認が多かったのは少し残念。

 否定側立論:格差発生のメカニズムのところや、資料の内容は、もう少し詰められると良かった。

 肯定側質疑:最初のQが秀逸。部活動が、自発性、主体性の発揮を「目指している」だけで、実現できているか不明、という印象が強く残った。

 否定側第一反駁:最初の二枚の資料のコンビネーションが良い。部活動ガイドラインの内容+それがきちんと実行され、効果を上げている、ということが効果的に示された。解決性への反論は今回のケーズに対しては弱い。

 肯定側第一反駁:質疑との連携ができていた。時間配分も良い。デメリット固有性への反論はもう少し説明が欲しい。「格差は現状でもあるので、デメリットはない」という言い方だと、あまりジャッジに響かないのでは。「現状でも格差は非常に大きく、その状態でプランを取ったところで、深刻性で言われているインパクトに対して、どの程度の影響があるのかわからない」といった説明の仕方の方が良い。

 否定側第二反駁:ガイドラインの話での資料追加は、ジャッジによってはNewと取るかもしれないが、個人的には好きな展開。議論の最初に、デメリットの話か、メリットの話か、のサインポスティングがあった方が良い。

 肯定側第二反駁:良い意味で、想定通りのスピーチ。そつなくこなした感。

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■J1-2(D vs. F)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側16点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 残ると考える。

 肯定側議論に従うなら、部活動に携わる時間そのものが問題なわけではなく、そもそもやりたくない部活動顧問を強制的にやらされること自体が問題のため、1NRの反論はほぼ当てはまらない、と考えた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考えた。

 肯定側のほぼ唯一の反論は、総合型スポーツクラブが普及すれば解決する、というものだが、これの普及に関する資料がない(口頭での発言のみ)ため、普及の程度や速度が大きいと判断するわけにはいかないと考えた。

・結論:

 肯定側のパワハラ、否定側の所得格差のいずれもそのインパクトが曖昧に見えるが、2ARでの説明(パワハラについては、法まで制定して抑制に努めているので、より重要と考えるべき)を取り、肯定側に投票。

 ただし、本来であれば、所得格差も、それを埋めるために様々な政策が取られているわけであり、そうした政府方針を否定側が引き合いに出していたら、容易に否定側投票に傾いたと思われる。

・コメント:

 肯定側立論:やや極端ではあるが、はじめゆっくり読んで次第にスピードを上げる、という模範的スピーチ。内容的には、内因性や解決性で「苦役」「ストレス」といった話で終始しているのに対して重要性で急に「パワハラ」に話が飛ぶのはやや唐突感があった。

 否定側質疑:「苦役」と「ストレス」の違いを追求する、という着眼点はおもしろい。この観点を突き詰めるなら、「ストレス」=「苦役」と言えるのか?「苦役」=「パワハラ」と言えるのか?つながりの程度はどのくらいなのか?といった質問を理路整然と投げかけたい。

 否定側立論:読み方は良い。今シーズンのデメリットの傾向として致し方ない面はあるが、「社会的スキル」と「所得格差」のつながりや、所得格差が深刻な理由はもう少し説明が欲しかった。

 肯定側質疑:内容は悪くはないが、意図不明な質問が散見された。「七割の人が民間クラブに行けない」という答えが返ってきたときに「七割って何人?」と聞くのはあまり意義を感じない。聞くのであれば、「その七割は、全員が全く社会的スキルを身につけられないのか?」「通常の学校生活や他の学校行事では全く社会的スキルが身につかない、などという証明があるのか?」といった質問を投げかけたいところ。

 否定側第一反駁:内容は悪くはないが、スピーチ順が重要性→解決性→内因性、と、肯定側立論の順と完全に反対になってしまっているので、若干フローが取りづらい。また、クレームがやや不明瞭な箇所が散見されたので、原稿にはしっかりクレームを書いておく/明瞭に読む、といった工夫をすると改善すると思われる。

 肯定側第一反駁:メリットの分析は秀逸だった。ただし、ややメリットに時間をかけすぎ、デメリットへの反論がおろそかになった感はある。

 否定側第二反駁:ストレスの原因に着目した議論(ストレスは、拘束時間が長いから発生するのか、精神的負荷が高いから発生するのか)は、良い着眼点と思うが、Lateと取られる可能性が高いので、1NRに言ってもらうべきだった。また、まとめ(?)の「ストレスのない仕事はない」という話は、「もし肯定側の定義に従うなら、少しでもストレスのかかる業務が残る限りパワハラは無くならないのだから、そもそもメリットの解決性は無い」という結論まで持っていければ、有効だったかもしれない(ただし、そこまでの議論がしたい場合は、1NRからきちんと説明しておくべきだが)。

 肯定側第二反駁:パワハラの重要性の説明部分は良かった(やや準備原稿棒読み感はあるが…)。デメリットのリンクは、この状態ではおそらく切れないので、社会的スキルとパワハラの比較をきちんと行えると、更に良い。

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■J1-3(G vs. I)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側17点

・判定:肯定側

・メリットの評価:

 削られるものの、多少は残ると考える。

 平均値で見れば、部活動顧問でなくても時間外労働が危険水準にあることから、部活動廃止に固有な効果がどれくらいあるのか、はかなり疑問符がつくものの、個々のケースを見れば、時間外を80時間→20時間程度に減少できた例もあること、また、時間外労働が増えれば増えるほどリスクも増す、という面も(程度は不明だが)否定できないことから、ゼロとすることはできない、と考えた。

・デメリットの評価:

 残るが、かなり不明瞭な状態と考える

 部活動の教育効果として、異年齢集団での活動による対人関係や集団活動のためのスキル以上の話が、試合中で出た議論からは読み取れなかったため、通常の学校行事や生徒会活動(これらも当然に異年齢集団活動を含むと思われる)と何が違うのか、が不明瞭になった。肯定側反論の「不平等感や拘束感」は、否定側の言う教育効果との関係が良くわからない(こういう感覚を克服する過程で教育効果が生まれるのでは?)が、ある程度、教育効果を損なうケースもある、といった程度に認識した。

・結論:

 メリット・デメリットを比較すると、デメリットは、そもそもそれほど効果があるなら、本来の教育課程で行うべき話であり、それを課外活動のままにして教師の犠牲を強いるのは不当、という肯定側議論を取り、肯定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:スピーチとしてはよくまとまっていた。未経験競技の顧問になることによる負担、という話については、本来業務でも同様の事態は発生し得るのでは、という疑問を持った。

 否定側質疑:質問のテンポは良い。内容的には、やや思い込みで質問しているかも、と感じられる部分があった。例えば解決性の大阪府教諭の例で、時間外を減らせたのは妊娠が理由か?といった質問は、あまり有効でないと感じた。

 否定側立論:深刻性1の、部活動からオリンピック選手が輩出された話は、それまでの話(異年齢集団活動)との関係が良くわからなかった。深刻性2は秀逸と感じたが、国の責任なのであれば、それほど効果のある活動を課外活動にとどめて正規教育課程に組み入れないのは逆に無責任では、とも感じた(同様の指摘が肯定側からもあったが…)。

 肯定側質疑:相手から言質を引き出したい、という気持ちが先走り過ぎていると感じた。例えば「デメリットは人間形成の話ですよね?」といった決めつけから入ってしまっていることで、相手とのすれ違いが起こる場面が多く、コミュニケーションという観点からは難があると感じた。

 否定側第一反駁:重要性への反論は秀逸と感じた。スピーチ順が、フローの下から上、という逆順になっており、若干フローを取りづらいと感じた。

 肯定側第一反駁:デメリット深刻性への反論は良かった。メリットで、労働時間が増えれば増えるほどリスクも増える、と断言するには、若干材料が不足しているのでは、と感じた。

 否定側第二反駁:メリット部分は1NRに忠実に伸ばしており好感を持った。デメリットについては、1ARへの反論が不足していると感じた。

 肯定側第二反駁:メリット・デメリットのインパクト比較は良かった。

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■J1-4(J vs. L)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 メリットは相当程度減じられたと判断した。

 肯定側の内因性分析を信じるなら、専門でない競技の部活動顧問になってしまうことで、正しい指導ができず、体罰・暴言が行われる、という事なので、1NRで出てきた外部指導員や、政府取り組み(教員に専門的知識がある競技の顧問をさせる)で相当程度問題は解消すると考える(外部指導員が普及しない、といった分析は肯定側からは出ていないので、少なくとも将来的にかなりの程度外部指導員による指導が行われると考えた)。肯定側反論は、現状で起こっている体罰の話であって、外部指導員が普及すれば、そうした問題は解決の方向に向かうであろう、という事を否定するとは考えられなかった。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると判断した。

 金銭的な負担は、部活動も地域クラブも大差ない、という肯定側反論は残る。しかし、地域クラブが現状部活動に参加している生徒全員をカバーできるとは考え難い(需要が急激に増加しても、急に対応できるとは思えないし、将来的にもすべての需要をカバーする状態を考えづらい)。したがって、何らかの要因(親の教育への関心など)によって、現状部活動で得られる利益を享受できない生徒が発生することについては認めても良いと考えた。また、仮に地域クラブに参加できたとしても、1NRでの議論であったように、部活動ほどのメリットは享受できない(教員のような教育のプロがいない、学校生活と連動していない、といった理由により)ため、その分もデメリットと考えるべきと判断した。

・結論:

 結局のところ、最も理想的な世界は、体罰や暴言がない部活動が実施されている状態と考えられる。肯定側立場と否定側立場のどちらが、理想世界に近いか、と考えれば、現状の、部活動が存在する状態で、部活動の内容を改善していく方向がベストではないかと考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:スピーチとしては良い。体罰・暴言に絞ったメリットは目新しく、よく工夫されていると感じたが、内因性(体罰・暴言が起こる理由が「教師がその競技に不慣れ」という点しかない)については、若干無理がありそうに感じた。例えば、応答で言っていた様に、勝利至上主義が発生する理由が「部活動の場合、全国大会が存在し、そのせいで競争が過熱している」といった部分も立論で強調した方が、納得感は出そうに思える(とはいえ、部活動がなくなっても、地域クラブ同士の全国大会が発生しない、と証明するのは難しいかもしれない)。

 否定側質疑:質問の内容、数はちょうどよい。質問−回答の一往復でやり取りが終了してしまっているところが多いので、もう少し相手の反応に応じた対応ができると更に良い。

 否定側立論:スピーチは良い。深刻性2については、部活動が「学校生活の一部」と言い切るのであれば、それがなぜ課外活動にとどまり、正規過程に組み込まれないのか、という疑問は生じる。また、質疑に対する応答が、若干かみ合っていないように思われる部分があった。

 肯定側質疑:対話の相手に向かって「相手側さん」と呼びかけるのは違和感がある。後半部分は相手と話がうまくかみ合わずに争点がずれていってしまった感があった。

 否定側第一反駁:あまり遭遇しないタイプのメリットと思われたが、うまく議論内容を合わせていて、秀逸な1NRだった。構成もきちんとメリットのフローの上から下へ、とセオリー通りで、フローも取りやすかった。

 肯定側第一反駁:メリットの守りがやや弱い。デメリットも、今回の反論ではおそらくすべて切ることは無理そうなので、メリット・デメリットを比較する材料を用意できると良かった。

 否定側第二反駁:冒頭部分で、メリットのことを言っているのか、デメリットのことを言っているのか、やや不明瞭な部分があった。また、スピーチ中でメリット・デメリットの行き来が多く、フローが取りづらい部分があった。可能なら、メリットのスピーチ、デメリットのスピーチはそれぞれまとめて、スピーチが錯綜しないようにできると良い。

 肯定側第二反駁:メリットのリカバリーはよくできていた。メリット・デメリットの比較が若干決め手に欠ける感があった。

…次回へ続きます。



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