第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その2)第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その4)

2021年09月09日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その3)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第三回です。

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■J2-1(C vs. B)

・コミュニケーション点:肯定側15点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度削られると考えた。

 教員の負担については、仮に短期的には部活動の時間が浮いたとしても、そこに別の新たな業務が入ってくる、という否定側分析が返っていないと考える。

 生徒の負担軽減については、初期状態で現状分析と重要性が一致していないように見えること、発生過程の分析が不足しているように見えることから、この試合においては考慮しない。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考えた。

 部活動の効果については、学校行事等でも代替可能な部分はありそうではあるが、特に肯定側からの資料等もないため、デメリットのリンクが完全に否定されることは無いと考える。それ以外の部分については、特に肯定側からの大きな反論は無いと思われ、ある程度のデメリットの成立は認めるべきと考えた。

・結論:

 メリット・デメリットの残存部分の程度を考慮して、デメリットの方が上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:生徒の負担に着目した点は、他チームにはあまりない視点で、良いと感じた。ただし、生徒視点の分析は現状分析と重要性で若干矛盾を生じているように感じた。

 否定側質疑:重要性に対する質問(クラブチームのレベルが高い、という事は、生徒自身の負荷は増える方向ではないか?)は秀逸と感じた。発生過程での、週11時間強の時間外労働が大きいかどうか、についてのやり取りは、若干不毛になってしまっていた感がある。

 否定側立論:深刻性の分析は、部活動で得られるスキルの社会的影響まで踏み込んでおり、良い。読み方は、資料や議論間の間が少なく、若干フローが取りづらいと感じた。

 肯定側質疑:スキルが、部活動でしか得られないか、と聞いて、「部活動でしか得られない」という答えの後に「証拠は?」とつなげるやり方は、良い。さらに答え(縦の人間関係や外部交流などの理由)が返ってきたときに、「それらは他の活動でも得られるのでは?」と指摘できれば、更に良かった。

 否定側第一反駁:内容は、肯定側の「教員」「生徒」の分析両方に対応できており、良い。可能であれば、現状分析→発生過程→重要性、と、肯定側立論のストラクチャーに沿った議論構成でスピーチできると、更に良い。

 肯定側第一反駁:デメリット/メリットどちらの議論をしているのか、が若干不明瞭なところがあった。全体的に議論量をもう少し増やしたいところ。

 否定側第二反駁:否定側立論、否定側一反の議論をきちんとカバーできているところは良い。もう少し深刻性の説明を、肯定側重要性と比較して、デメリットがメリットを上回る、という事を強調できると、更に良い。

 肯定側第二反駁:冒頭の「否定側第二反駁のフロー」という表現は、メリット/デメリットどちらを指すのか不明なため、「メリットのフロー」「デメリットのフロー」という表現の方が良い。メリットは良くカバーしたと感じたが、デメリットへの言及が不足しているように感じた。

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■J2-2(F vs. E)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度削られたと考える。

 「315億円を、公民館や地域スポーツクラブのために補助する」というサブプランについては、その有効性が立論で示されておらず、1ARに高速で予算内訳が読み上げられたのみで、その妥当性を判断できなかった(施設拡充がうまくいくのか、とか、人材がきちんと集まるのか、といった、実行性が認識できなかった)ため、それほど有効ではないと考える(これは、主にデメリットに関係する)。

 内因性は、肯定側寄りに解釈した。スポーツ庁のガイドラインは、それほど守られておらず、仮に守られたとしても、部活動時間がゼロになるわけではないので、プランを取った方が、時短にはつながると考えた。

 解決性については、否定側寄りに解釈する。特に、プラン後、補習や教育相談などの仕事が増加する、という話に対して肯定側から有効な反論が無いと思われる。従って、肯定側の主張する「プラン後は、余った時間を教員が自分の意思で自由に使える」という議論も成立し難いと考えた。

・デメリットの評価:

 一定程度残ると考える。

 1AR反論の「部活動経験者は、所属以外の人と仲良くできない」という話は、見方を変えると、部活動経験者の方が、その所属集団を固めて、実績を出すことができる」という解釈もできそう。また、連帯感以外の非認知スキルについては特に言及がないため、これをもってデメリットがゼロとは言えないと考えた。

 その他委員会等による効果についても、人数・時間的に部活動の方が有効性は高そう、と判断した。

・結論:

 肯定側重要性で言われている、教員のストレスやより良い教育、といった話と、否定側深刻性の非認知スキル低下による社会的損失を比較して、どちらが大きいかは、ディベーターの議論だけからは判断できなかったが、量的には、相当程度削られたメリットよりも、デメリットが上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:非常に聞きやすかった。数字などもしっかりフローに残すことができ、好感を持った。重要性を「より良い教育」だけに絞ってしまうのは、ややリスキーではないかと感じた。また、追加プランの315億円の詳細及び解決性は、本来であれば立論に組み込むべき。少なくとも質疑で聞かれた時の答えは用意しておくべきだった。

 否定側質疑:質問するポイントは悪くないが、今一歩1NRの議論に結びつけられていないと感じた。例えば、解決性の「部活動以外の仕事で教員はストレスを感じないのか」という質問に対して「部活動以外の仕事は本来業務だから」といった答えが返ってきたが、ここで「なぜ本来業務だとストレスを感じないのか?」「本来業務でも、例えばモンスターペアレンツへの対応などは、かなりのストレスではないのか?」といった質問を続けられると良かった。

 否定側立論:内容は優れていると感じたが、スピーチ速度がやや早く、滑舌が若干不明瞭なため、わかりにくいスピーチとなってしまっている。冒頭部分からいきなり早口で始めない、議論や証拠資料の間の間を意識して取る、といった点に注意するだけでもだいぶ改善すると思う。

 肯定側質疑:質問のポイントは悪くない。また、それなりに相手の言質も引き出せているが、今一歩深めたいところ。例えば、非認知スキル育成の鍵は、教室外の課外活動で、集団活動を行う事である(したがって、地域スポーツクラブ等でも醸成できる、ということが連想される)といったことを確認した上で、否定側の論じている格差が、肯定側の追加プランを前提していない、という事を確認する、といった流れでの質疑ができると良かった。

 否定側第一反駁:構成がきちんとフローの上から下へ、という順で(途中まで)流れており、フローが取りやすかった。また、質疑との連携もきちんととれており(追加プランへの攻撃の部分など)、好感が持てる。

 肯定側第一反駁:メリットの途中までは良くカバーできていたが、解決性への反論をドロップしてしまっている(ように見える)のは痛いところ。デメリット反論についても、もう少し網羅的に行えると良かった。追加プランの315億円の使途をきちんと説明できているのは良いが、フローが取りづらく、かつ、ここに時間を使ってしまったために、他の議論がおろそかになってしまった感はある(ので、やはりこうした議論は立論に入れておくべきだった)。

 否定側第二反駁:デメリットの伸ばしはよくできていた。メリットについては、1NRの解決性への攻撃をもっときちんと伸ばすべきだった(あまりこれらの議論に触れていないように見えた)。

 肯定側第二反駁:結局追加プランの315億円の効果についてはよくわからないまま終わってしまった。デメリットのところの「塾へ行ける/行けない、といった格差がすでにある」という話は唐突感があった(今回はいわゆるLateと考えた)。

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■J2-3(I vs. H)

・コミュニケーション点:肯定側18点/否定側20点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 削られるものの、ある程度残ると考える。

 1NRからの、「労働時間は減らない」「顧問を持たない教員もかなりの時間外労働を行っている」という反論については、結局、顧問を持つ教員と、持たない教員の間に労働時間の差がある、という事を否定していないように思える上、その差分も、肯定側の主張(週7時間程度?)と大差が無いように見える。また、「危険な状態になる前に自覚できる」という反論については、症状の知覚と、危険性の自覚とが区別されていないように見え、肯定側反論の方が妥当と感じた。飯田市の実例については、相当数の教員は部活動がなくなっても体調が改善しない可能性がある、という話として理解し、ある程度解決性は削ると考えたが、すべての教員に当てはまる話ではない以上、これをもってメリットがゼロとは判断できないと考えた。

・デメリットの評価:

 ある程度残ると考える。

 アクティブラーニングにより、自主性・主体性・協調性が身につけられる可能性があることは理解したが、部活動と同程度のレベルで身につけられるかは未知数であること、否定側の主張するように、両方実施すれば、その分能力も向上すると考えられることから、この反論をもってデメリットがなくなる、とは考えられない。

・結論:

 メリット・デメリットとも残るが、メリットの方がやや削られている度合いが大きいと判断し、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:内因性(労働時間が増えるほど、リスクも増える)や重要性(疲労の蓄積に本人はなかなか気づけない)の議論に工夫がみられて良い。追加プランで助成金を出す、としているが、この解決性はできれば立論に盛り込みたいところ。

 否定側質疑:肯定側の問題点をうまく矮小化しているように見える。ただ、よくよく考えると「インパクトは2時間」といった話は、問題のすり替えになってしまっていて(これは、実際には過労死ラインとの差分であって、部活顧問の労働時間は過労死ラインよりもかなり上なので、減少分はもっと大きい)、Cleverな肯定側が相手だとうまく返されてしまいそうに感じた。

 否定側立論:発生過程を二つに分けて、何もしない人と、外部クラブに行く人両方についてデメリットが発生する、としたところは、良く工夫されていると感じた。

 肯定側質疑:聞いている内容は良いが、うまく相手の答えを引き出せていないと感じた。例えば「自主性や主体性を伸ばす、というのは、部活動に固有なんですか?」と聞いても「そうです」という答えしか返ってこないと思われるので、「部活動の何が、自主性や主体性を伸ばすんですか?」という質問で、自主性や主体性を伸ばす要素を聞き出し、例えば「授業と違って、自分たちで考えながら取り組む活動だから」といった答えが返ってきたら、「じゃあ、自分たちで考えながら取り組む活動が、他に(学校のカリキュラム内に)あればいいんですね?」と続ければ、1ARのアクティブラーニングの話につながりやすいのではないか。

 否定側第一反駁:議論の量や、プレゼンテーションは上手いと感じた。ただ、肯定側からまとめて返されてしまいそうな議論が多そう(顧問と非顧問の労働時間の差など)なのと、Linearity(時間外が増えれば増えるほど、リスクも増える)を押されると、若干弱いかもしれない。

 肯定側第一反駁:メリット・デメリットの議論のバランスは良い。デメリットについては、この反論だけだとおそらくデメリットを完全に切ることは難しいので、1AR段階でメリット・デメリットの比較材料を用意しておくか、そもそもデメリットへの反論のバリエーションを増やしておけると良かった。

 否定側第二反駁:メリットはきちんと1NRに沿って伸ばし、デメリットは1ARの反論にきちんと対応できている点は、良かった。

 肯定側第二反駁:メリットの守りはよくできていた。最後の比較部分は、準備原稿棒読み感があり、やや蛇足に感じた。

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■J2-4(L vs. K)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度減じられると考えた。

 1NRの議論より、部活動廃止により時間が浮いたとしても、その時間に(周囲の過度な期待などによる)別業務が入ったり、部活動によって抑えられていた(ヤンキーなど?)生徒の指導に費やす時間などが入るため、額面通りの効果は無いと考えた。さらに、肯定側も、一定の時間が新たに授業準備に費やされる、ということを認めているため、教員の休息に当てられる時間はほとんどない、と考えた。

 授業の質向上については、授業準備に充てられる時間は増えるものの、それが授業の質向上に直結するか、さらに、授業の質が多少向上したとして、それが生徒にどのような影響を及ぼすのか、が若干不明確に感じた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 肯定側からは、「部活動であっても、ユニフォームやシューズ等の費用がかかるため、決して安価ではない」「すでに正規教育課程で、主体性・自主性などを養うための活動が行われている」の二点の反論があったが、前者については特に資料があるわけではなく、また、少なくとも地域クラブ等よりも部活動が安価であることは否定していないと考えた。後者については、そういった活動が行われていることは分かったが、どの程度の効果が挙がっているのか、が不明であること、部活動に効果が無い、とは言っていないことから、デメリットをゼロにする議論ではないと考えた。

・結論:

 肯定側は最終的に、授業の質が向上する、というメリットにフォーカスしたが、解決性にかなり疑問が残り、デメリットが上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:教員の過労死と授業の質の二本立ての立論としたこと自体は悪くないと感じた。スピーチのコミュニケーション的にも優れている。解決性で、外部指導員の導入で問題が解決した、という議論が出てくるが、これは相手に逆用される(部活動を廃止せずとも、外部指導員を積極的に導入することで問題が解決する)可能性があるかもしれないと感じた。

 否定側質疑:質問に対する相手の答えがあまりかみ合っていないところがスルーされがちになっているところが気になった。例えば、「長時間労働の原因は部活動なのか?」という質問に対して「57.7%の教員が過労死ラインを超えている」と返答が来たが、ここはさらに「その57.7%の教員の労働時間の内訳は正確にわかっているのか?」などと問いかけて、部活動が原因とは限らない、という言質を得ていけると良かったのではないか。

 否定側立論:内容は良いが、若干フローが取りづらいと感じた。議論と議論の間などを少しあけるだけでもだいぶ改善するのではないかと思う。また、相手の質疑に対する応答が若干Irrelevantな感じがした。

 肯定側質疑:良い。ライフスキル獲得に対する部活動の固有性に絞って、深く掘り下げていく姿勢は好感が持てる。相手が若干質問をはぐらかそうとしている態度が見受けられるので、もっと厳しく追及して、「具体的にどのようなスキルが、部活動のどのような活動から発生するのか、はっきりさせてほしい」といった質問を(それがきちんと説明できないなら、デメリットは証明不足ですよね?といった雰囲気を出しながら)重ねられると良いと思う。

 否定側第一反駁:教員の労働時間、授業準備の両方の分析にきちんと対応できているところは良い。また、資料の後のサマリー的な部分(部活動によって得られていた非行防止効果がなくなることによる指導業務の増加)の分析も秀逸と感じた。

 肯定側第一反駁:スピーチは非常にわかりやすく、好感が持てる。メリットを授業準備の方に絞ってしまったのは、戦略的には悪手だったかもしれない。デメリットについては、ユニフォームやシューズ等でかかる金額を計算してみて、スポーツクラブの料金と大差ない、というところまで言えると良かった。

 否定側第二反駁:メリット部分の説明は秀逸だった。ただし、後半の「良い授業とはどういうものなのか?」「良い授業を行ったとして、生徒の能力が向上するのか?」といった話は、1NRから出しておきたいところ(ジャッジによってはNewと取るかもしれない)。

 肯定側第二反駁:スピーチ自体は聞き取りやすく、良いが、メリットについては、1ARが授業の質改善に絞っているところ、再び教員の労働環境にも触れており、若干ぼやけた感じになってしまった。

…次回へ続きます。



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