第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その5)第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その7)

2021年09月12日

第26回ディベート甲子園全国大会中学の部 予選(ほぼ)全試合記録(その6)

第26回ディベート甲子園中学の部予選記録の第六回です。

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■J3-5(N vs. M)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側18点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度減じられると考える。

 プランを取った場合に、教員の労働時間が減少する程度については、1NRの議論(トータルで勤務時間があまり変わらない)と、さらに1ARの議論(教員は、周囲の期待に応えるために頑張ってしまう傾向がある)で補強されることによって、相当程度解決性が怪しそうな印象となった。

 授業準備の話についても、部活動顧問を持っていても持っていなくても、状況的にはそれほど変わらない、という1NR議論が残ると考える。

・デメリットの評価:

 相当程度残ると考える。

 肯定側からは「地域クラブ等でも同様の効果を得ることができる」という話があったが、否定側議論の中に「学校の保護下に置くことが重要」という話や「実際に民間に移行した結果問題が発生した」という話があることから、これだけでデメリットを消すものではないと考えた。それ以外の部分については、おおむね否定側の主張が通ると考える。

・結論:

 メリットが相当程度減じられており、デメリットが十分上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:よく読めている。内容的にもオーソドックスでよい。応答で「過労死ラインを下回らないとメリットが発生しない」と認めてしまったのは悪手。

 否定側質疑:質問の内容、特に、過労死ラインを下回らないとメリットが発生しない、という事を肯定側に認めさせた点は良い。

 否定側立論:良く分析・リサーチされている。ドイツの事例なども興味深い。ただ、発生過程で発生する問題が、深刻性の内容とリンクしているのか、は若干疑問を持った。

 肯定側質疑:聞いているポイントは良いが、やや自分の意見の押し付けになってしまっている部分が見受けられる。例えば、「発生過程2の資料は小学校のことを言っていて、中高と関係ないのでは?」という聞き方だと、その資料でも中高の生徒に当てはまる理由を言われてしまうだけなので、少し段階を踏んで「この資料で言及されているのは小学校ですよね?」「中学、高校について、同様のことを言っている資料はありますか?」と、事実を確認していくと良いと思う。

 否定側第一反駁:分析内容はバランスが取れていて良い。ただ、「教員の過労死者が63人しかおらず、国家として保護する義務が無い」という議論は、否定側の深刻性が、そうした労働問題以上に、国家として解決すべき問題である、という分析が入っていないと、議論としては弱いと感じた。

 肯定側第一反駁:メリットは良く守れていたと思うが、全体的に議論の効率をもう少し上げたいところ、また、「教員は際限なく頑張ってしまう」という資料は、ガイドラインに対する反論としては、あまり適当でないと感じた(「教員がガイドラインを破ってしまう、という話をしたいのであれば、もっと直接的に、教員が実際にガイドラインを破っている、といった資料を準備できると良い)。デメリットについても、議論の内容は悪くないが、クレームと資料の内容が不一致(クレームではマナーの話をしていながら、資料の内容ではそうした話に言及していない)な部分があるのが気になった。

 否定側第二反駁:メリットにおいて、1ARの資料の逆用は良いアイデアと感じた。全体的に1NRや否定側立論を忠実に伸ばしていて、良い印象を持った。

 肯定側第二反駁:立論や1ARの内容をきちんと踏まえて自分たちの議論を伸ばそうとしている点は良い。価値比較のところで、もう少し踏み込んで、生命が尊い、というところから、デメリットとの価値比較(デメリットでは必ずしも生命が失われるわけではない)を展開できると良かったかもしれない。

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■J3-6(Q vs. P)

・コミュニケーション点:肯定側17点/否定側20点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度減じられたと考える。

 教員の時間的負担に関しては、教員の気質上、結局別の業務を入れてしまい、肯定側が言うほどの労働時間削減にならないのでは、と感じた。

 精神的負担については、より大きな負担となりそうな、児童との関係や保護者対応部分がなくならない以上、プランによって軽減できる負担が若干曖昧になった。

 金銭的負担については、単純に部活動に対して手当てが出ない、という話であり、プラン後も単に部活動がなくなるだけで、教員の給料が増える、という事も無いため、そもそも発生するのか、に疑問がある。また、重要性にも、この話に相当するインパクトが示されていないと考えた。

 全体として、長期的には問題が解決する方向、という1NR議論と合わせて、かなりの程度メリットは減じられていると判断した。

・デメリットの評価:

 ほぼ残ると考えた。

 肯定側の唯一の反論は、「部活動によりアイデンティティが養えるか不明」というものだったが、資料もついておらず、否定側立論の内容から考えても、デメリットのリンクは成立するとすべきと判断した。

・結論:

 メリットが相当程度減じられており、デメリットで十分上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:資料の内容がコンパクトに無駄なくまとまっており、議論密度が高い点は評価できる。また、教員の負担を三種類に分けて論じているのは、ユニークで良いと感じた。できれば、発生過程、重要性もこの三つに沿った形で説明してもらえると更に良い。

 否定側質疑:相手のことを「相手側さん」と呼ぶのは違和感がある。質問内容については、概ね良い。特に、「〜という証明はあるか?」と、事実を確認していく表現になっているところは優れていると感じた。

 否定側立論:読み方、スピードはベストに近いと思う。内容的にも、アイデンティティの定義がやや人工的に過ぎる(おそらく非認知スキルと同一視されるのを嫌ってのことと思われるが)ものの、精緻な分析がされていると感じた。

 肯定側質疑:質問するポイントは悪くないが、最後の「アイデンティティとは、非認知能力と同じものか?」という質問は、こういう表現だと「違う」という答えしか返ってこないので、アイデンティティの内容を詳細に確認して、1NRが、非認知スキルと類似した部分をピックアップして、自分の議論につなげる、というやり方の方が良いと感じた。

 否定側第一反駁:内容的には秀逸な反駁だった。スピーチ構成が、現状分析3-C→現状分析3-A→発生過程→現状分析3-B→重要性A、と入り組んでおり、若干フローが取りづらかった。

 肯定側第一反駁:メリットについては良くカバーしたが、「精神疾患の原因は部活動」という資料は、内容がそのようになっているのか、が分からなかった(教員の労働時間が増えている要因として、若年教員の増加と授業時間の増加までは分かったが、それ以外の要因が聞こえなかった)。デメリットについては、やはりもう少し議論が欲しい。通常の非認知能力への反論で、応用できるものが無いか、を検討すべきだった。

 否定側第二反駁:自分たちの立論、1NRを丁寧に伸ばせており、良い。まとめ部分の「国として義務教育の質を保証すべき」という話は、部活動が正規の教育課程外活動であることを考えると、やや無理があるかもしれない、と感じた(今回はそのような話は無かったが、例えばメリットに学習能力の向上、といった話が入っていたりすると、肯定側に逆用されるかもしれない)。

 肯定側第二反駁:デメリットでは、少ない議論をうまく膨らませてリカバリーを試みた点は良い。メリットもよくカバーしたが、最終的な比較までたどり着けなかった点は悔やまれる。例えば、メリットの冒頭で言っていた「部活動顧問は、教員にとって義務ではなく、あくまで自主的活動」という話を利用して、「正規課程外の部活動に依存して教員を消耗させるより、教員の部活動負担を軽減して、教員の肉体的・精神的負担を軽減することで、正規課程を充実させるべき」といった比較を行っても(Newと取られる可能性は高いが)良かったかもしれない。

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■J3-7(T vs. S)

・コミュニケーション点:肯定側14点/否定側17点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 ある程度削られると考える。

 解決性に対して、1NRから「約6割の教員については、その他の業務が入ることによって、授業準備時間は増えない」という議論が出ている。その後肯定側が「37%が授業準備時間を増やせている」と返しているのと表裏の関係にあると考えられ、結局、約4割は授業準備時間を増やし、残り6割については他の業務が入ってしまうため、それほど授業準備に回せない、睡眠時間については、あまり変化はない、と判断した。

 さらに、授業準備時間が増えたとして、それが学力向上に直結しているか、についても(ダウトレベルではあるが)疑問が呈されており、肯定側立論の中にも、これに応えられるような議論が探せず、解決性については、若干怪しい面があると感じた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 肯定側の唯一の反論は「現状分析2の資料によれば、年収400万円未満の層でも、35%くらいは学校外活動に参加できている」というものだが、年収800万円以上の層と差があることは否定されていない。年収が低い=一切学校外活動ができない、とまでは言えないにしても、ある程度の格差発生は認めざるを得ないと考えた。

・結論:

 メリット・デメリットともある程度残ると考えられるものの、残る程度についてメリットの方が小さく見えること、また、重要性・深刻性を比較しても、これからの時代(AIをうまく活用する?)において、より必要な能力は、部活動で得られるコミュニケーション能力やリーダーシップに関する能力であると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:内容は悪くはないが、議論間やクレームと資料の間の間がほとんどなく、フローを取るのに難儀した。また、解決性は授業準備と授業の質や生徒の成績の間の関連性がもう少し実証分析などで示されると良いと感じた。

 否定側質疑:相手のことを「相手側さん」と呼ぶのは違和感がある。質問内容は悪くないが、若干意図不明な質問が散見された(例えば「現状で質の高い教育はできているのか?」など)。

 否定側立論:プレゼンテーションは非常に良かった。応答も、自分の立論を正確に理解していることをうかがわせる誠実な対応ができていた。

 肯定側質疑:質問のポイントは良い。「低所得者層の割合はどれくらい?」といったデータを問う質問は秀逸だった。後半若干ネタ切れになった感があるので、もう少し質問項目を用意しておくと良い。

 否定側第一反駁:構成的に、きちんと相手のメリットの構造順になっており、フローが取りやすい。内容的には(少し予想外のケースだったのか)、もう少しバリエーションが欲しかった。例えば、解決性へのダウトは、どうせなら「部活動の時間が削られても、そのうちどれくらいの時間が授業準備に回るのかわからない」「授業準備時間が増えることと授業の質改善のリンクが無い」「授業の質が改善したとしても、それで生徒の成績が上がる証明がない」など、もっと細かくステップを分けたり、最後のAI時代に必要な能力の話などは、デメリットの深刻性との関連をもう少し説明したりしても良かった。

 肯定側第一反駁:スピーチの冒頭で、メリットのことを言っているのか、デメリットのことを言っているのか、明示されなかったので、一瞬どこにフローを書けばよいのか迷った。内容的には、メリットの守りで、前半のあまり重要でない議論に時間を使い過ぎてしまった。そのためデメリットへの反論がおろそかになってしまったので、こうした議論を時間をかけずに返す練習が必要。

 否定側第二反駁:落ち着いてうまくまとめていた。デメリットの深刻性と1NRの重要性への反論がうまくはまり、価値基準が明確になったのも良い。

 肯定側第二反駁:ここまでの展開はそれほど特殊ではないと思われるにもかかわらず、スピーチ中に迷う場面が多かった。議論展開のシミュレーションを積み重ねると良いと思われる。

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■J3-8(W vs. V)

・コミュニケーション点:肯定側16点/否定側18点

・判定:否定側

・メリットの評価:

 相当程度削られると考える。

 内因性について、休日分の負担が現状でも解消されていく方向であることは否定されていない。解決性については、部活動以外に、学習指導要領の内容が多すぎること、部活動顧問有無で勤務時間にあまり差がなく、負担がそれほど変わらないこと等は認められている。したがって、現状確かに部活動に費やしている時間は多いが、プランを取ったとしても、浮いた時間の(すべてではないが)かなりの時間が、必ずしも休養に充てられずに、他業務を遂行する時間になってしまう可能性が高いと考えた。

・デメリットの評価:

 ある程度は残ると考える。

 固有性については、部活動に費やす時間が長ければ長いほど効果が大きい、という事は、メリットの内因性の、今後部活動時間が減っていく方向、という話は、デメリットを削る方向に働く。

 集団行動には、1ARの言うような問題点もあるが、そうした問題を克服することで、否定側の言う非認知スキルが身につく、という面もあるし、自死の問題にも触れていたが、その程度があまり強く証明されておらず、デメリットを上回るとまでは判断できなかった。

 また、1ARが言うように、生活保護を受けるような、最貧困層の子どもにとっては、プランの有無に関わらず部活動に参加できていないという状況ではあるものの、その少し上の層の子どもたちが、部活動が出来ずに、貧困層に落ちていくまたは現状から上がっていけなくなる、という部分のデメリットは存在すると考えた。

・結論:

 相当程度減じられたメリットに対して、デメリットの残存する量が上回ると考え、否定側に投票。

・コメント:

 肯定側立論:プレゼンテーションは良い。内容については、トータルの部活動時間を具体的に述べているのは良い。ただし、間接業務にかかる時間にこだわる理由はよくわからなかった。応答においては、若干行き違いがあったが、そうした場合は、例えば「インパクト、という用語の意味が分からないので、答えられない」といった返答をしておくと良いと思う。

 否定側質疑:相手のことを「相手側さん」というのは違和感がある。内容的には、やや行き違いが多かった。相手が用語を理解していないと思ったら、一般的なことば(例えば「重要性の内容を説明してください」とか)に言い換える、といった工夫は欲しかった。

 否定側立論:プレゼンテーション、内容とも問題ないと思う。ただ、オリンピック選手の話については、対応する内因性・深刻性が無く、若干浮いている気がした。

 肯定側質疑:質問するポイントに若干改善が必要と感じた。「非認知スキルは運動部でしか身につかないのか?」「忍耐力は、どのくらい部活動をやったら身につくのか?」といった質問をしても、あまり有益な答えは返ってこないと思うので、例えば、忍耐力が身につく、という話と深刻性のアメリカの研究とどのような関係があるのか、といったところを攻めて、固有性と深刻性の関係が薄い、という印象をつけるような方向へ持っていきたい。

 否定側第一反駁:構成も良く、内容的にもかなり多くの議論を出すことができ、良い一反だった。ただし、エビデンスがやや省略されすぎて文脈が不明になってしまっているものが散見された(例えば「空いた時間に補習や教育相談をする」という資料など)。

 肯定側第一反駁:返す議論の選択に課題がありそう。1NR冒頭の「誰を救いたいのか、よくわからない」といった、あまり有効でない(特に資料もない)反駁に時間を使い過ぎていると思う。むしろ後半に出てくる解決性の議論に時間を割くべき。

 否定側第二反駁:自分たちの議論を丁寧に伸ばしており、良い。デメリットの1AR最初の議論に対する反駁(人間関係の問題を克服する過程で成長する)も秀逸だった。

 肯定側第二反駁:良くリカバリーできていた。最後に重要性を伸ばして、「部活動は教員の犠牲にただ乗りすることで成り立っている」という話も良いが、これが否定側深刻性と比較して、どう優れているのか、という点の説明もできると良かった。

…次回は、試合結果の集計と分析を行いたいと思います。



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