Face Book に乗せた文章をここにも載せておきます。
迷ったけど、やはり谷川俊太郎さんとのことを書いておきます。
2014年に「しずおか連詩」というイベントに詩人であり作家の覚和歌子さんが繋いでくれて、4人の詩人歌人に交じって3日間いっしょに詩作した。
それがTwitterで実況中継され、静岡新聞で連日報じられた。
それをみた谷川俊太郎さんが私のことを「この人いいじゃない」と覚さんに言ったらしい。
「ええ!!ほんと!?谷川さん会いたいなあ」と言ったら「ライブに呼んでみようか」と覚さんが言った。
弦二ソロライブが催された高円寺の小さなバー「ペリカン時代」の階段を、80代の谷川さんが登って来た時は全く現実感がなかった。
ゲの歌を聴いたあと上機嫌で「詩集を送りたいから住所を教えて」と言ってくれた。
後日届いたその詩(と写真)集には「おやすみ神たち」と書いてあった。
「神はどこにでもいるが/葉っぱや空や土塊や赤んぼにひそんでいるから/私はわざと名前を呼んでやらない/名づけると神も人間もそっくりになって/すぐ互いに争いはじめるから」その詩はこんな始まりだった。
高円寺のバーで歌った「みもふたもない」という歌に呼応するような内容で驚いた。(この歌はつい先日の博多還暦ライブでも歌った)
何かに導かれているようなことのなり行きに「そうか、そういうことか」と一人納得した。
その後、吉祥寺で行われた弦二ソロアルバムのレコ発ライブにゲストで来てもらって、ホンクの演奏をバックに「おやすみ神たち」の朗読をしてもらい、そのまま「みもふたもない」を演奏したのだった。ソロアルバムには谷川さんのコメントをいただいた。
弦二2nd.ソロアルバムとなる人力アンビエント作品「NOSSO NOISE」を送ったら、
「地べた」という絵本が送り返されて来て
「いつもはバッハやハイドンを聴いて仕事していますが『NOSSO NOISE』は新鮮でとてもいいです。“ぼくは土”を聴いたので“地べた”を送ります。」とメッセージが添えてあった。
“ぼくは土”というのはNOSSO NOISEに入っている曲で、ウチの子の自作詩の朗読が入っている曲だった。
作品にコメントをいただけないかきいたら、アルバムによせた詩が送られて来た。
私はお礼に福岡のトモノウコーヒーの豆を送ったり、向こうからは新たに文庫になった詩集が送られて来たりした。
思えば、谷川さんがコーヒーを飲む人かどうかは私は知らないのだった。
谷川さんは、私が子どものころ大切に読んだ福音館書店の「科学のとも」の常連で、とくに太田大八さん絵の「とき」という本が印象深い。なんにも言ってなくて、なのにすごく世界があって、ほんとにもう最高なのだ。
初めてお会いした時にその話をすると「あれはゲーリー・スナイダーに褒められてね〜」とうれしそうだった。
この絵本はウチの子にも何度も読んだし、50数年経った今も持っている。
音楽を続けていると、経済的な苦しさに「もう無理かな」と思うことがある。
そんなとき、なぜか絶妙なタイミングで尊敬する先輩との出会いがあり「お前らはかなりイイセン行ってるよ」と言われて「そうなのか、やっぱがんばってみよう」と思い直す。
他にもいろんな人が助けてくれた。
そういう人たちとの出会いは今振り返ると「あれは現実にあったことなのかな」と思ってしまう。
谷川さんも覚さんも、作品とそのことばで、読むひと書くひとを励まし続けて、世界をちょっとでもいい方向に転がそうとして来た人なのかもしれない。
あるひと、あることばとの一瞬の出会いが大きな意味をもち、その先を歩き続けるための杖となってくれる。
私も誰かの役に立てるだろうか。