ユリイカ2011年6月この雑誌は、新しい芸術家を紹介してくれるので毎月チェックしています。でも、僕の住んでいる町の図書館にも書店にも置いてないので最近では定期購読をしています。
文春別冊に比べて厚さが薄いので鞄に入りやすく移動の時に便利です。

今月号の特集は、山下敦弘という若い映画監督で彼の映画「マイ・バック・ページ」が取り上げられています。

この映画は、1971年(昭和46年)に陸上自衛隊朝霞駐屯地で歩哨中の自衛官が新左翼によって殺害されたテロ事件(朝霞自衛官殺害事件)を扱ったものです。当時、朝日ジャーナルの記者だった川本三郎さん(現・文芸評論家、作家)が犯人とかかわった日々を綴った衝撃的なノンフクションを山下敦弘さんが映画化しました。
この事件は、ジャーナリストが犯人を手助けしたとして、物議を醸した事件でもありました。

大澤真幸さんは、「川本三郎の若き日の記録、とても悲しいが、しかしどうしようもなく心を動かされてしまう青春の記録を、川本よりもはるかに若い山下敦弘が監督して映画にした。映画のタイトルは、原著と同じ『マイ・バック・ページ』である。川本の原著は、彼が大学を卒業してすぐに新聞社に勤めていた頃のこと、憧れの新聞社に入社しながら、三年もしないうちに解雇されるまでのことが記されている。・・・(略)・・・・」と評論しています。

小熊栄治さんは、「この映画の特徴のひとつは、時代考証の徹底にある。・・・・省略・・・・ さらに感心したのは、小道具の時代考証である。各セクトのへルメットやバリケード内の落書き、ビラや貼紙、流れる流行歌、主人公の部屋の壁に飾ってあるアルバム・ジャケットといった、「あの時代」 を描くさいの定番小道具だけではない。家具や電話器、紙幣、タバコ、カメラ、ギター、テレビ、本などまで当時のもので揃えるために、スタッフは古道具屋を探しまわったことだろう。・・・・省略・・・・ 関連していえるのは、登場人物たちの「顔」の存在感である。「東都新聞」の記者たちをはじめ、とくに年長者たちの 「顔」 が、いまどきの三〇代や五〇代にほ見られないような、いかにも 「当時の大人」 の顔だった。・・・・略・・・・」

古市憲寿さんは、「何と言っても妻夫木くんの、のっペりとした演技が良かった。昭和顔の俳優を集めたと言う通り、ほとんどの出演者は過剰なまでに「あの時代」っばい表情と服装をしているし、出てくる風景もわかりやすく「あの時代」っぼい。だけど妻夫木くんが演じるジャーナリスト・沢田だけが、どうにも「今時っばい」 のである。
 感情がこもっているのかどうかわからないような話し方、どこか虚ろで何かを求めていながら、それを素直に表現できないような視線・・・・略・・・・」

僕は、最近映画もテレビドラマもほとんど見ないので映画監督の山下敦弘さんも主演の妻夫木聡くんもはじめて聞く名前です。

あの当時、僕はゲバ棒やヘルメットを被るデモはしなかったものの思想的には人並みに学生運動に共感するところがありました。活動家にも知人がいてそのひとりは連合赤軍の事件で惨殺されてしまいました。このユリイカを読んでいるうちに「この映画は見逃せない!」という気持ちになっています。