In Deepさんのサイトより
http://oka-jp.seesaa.net/article/406005392.html
<転載開始>


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・YouTube Life Inside Raqqa Under Isis Control



シリアのラッカにて

何かと毎日ニュースとなる「イスラム国」ですが、イスラム国が、他の中東のイスラム系過激派と大きく違うのは、手段や是非はともかく、「自分の領土を持っている」ことです。

イスラム国が自らで「イスラム国の首都」としている場所は、シリアのラッカ県という県の中心都市のラッカという町です。ラッカ県 - Wikipedia によれば、

2014年8月24日、イスラーム過激派のイスラーム国は、ラッカ県にあるシリア政府軍の空軍基地を制圧、ラッカ県のほぼ全てを手中に収めた。

とあります。

ラッカ県とは下のシリアの地図のオレンジ色の地域です。

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こう見ると、イスラム国の持つ領土は決して狭いものではないことがわかります。

そのラッカ県の県都であり、イスラム国の本部がある(と思われる)ラッカの様子は、最近までわからなかったのですが、このところ、シリア国内に住む人たちによる「隠し撮り」などにより、ラッカ市内の様子が、動画サイトなどにアップされるようになっています。

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▲ ラッカにある黒く塗られたイスラム国の本部か、あるいはそのたぐいの建物。Wallstreet Journal の動画報道より。


冒頭のものは、国籍・身元不明の下のシリア在住の女性が、バッグに小型カメラを隠して市内の様子を撮影したもので、9月19日にアップされたようです。

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Life Inside Raqqa Under Isis Control
(イスラム国支配下のラッカの生活の実情)


もうひとつは、ウォールストリート・ジャーナルの動画記事として配信されていたものですが、ラッカに住む男性が撮影した映像がアップされています。

Life Inside the ISIS Home Base of Raqqa, Syria
(イスラム国の拠点であるラッカでの生活の実態)

今回はそれらの映像の中から、印象深いものをご紹介したいと思います。

なお、上の女性の動画に関しては、オリジナル言語がフランス語とアラビア語なのですが、そこに英語の字幕がつけられているものがありましたので、それを先に貼っておきます。

シリアに住む女性が「イスラム国 / ISIS」の支配下の生活を撮影




日本語を入れたかったのですが、時間的に難しく、写真のほうに説明を付け加えさせていただこうと思います。

ところで、写真をご紹介する前に下のふたつの報道を載せておこうと思います。
というのも、それを示唆する光景がいくつか出てくるからです。

イスラム国目指す女性続出=欧米から
時事通信 2014.09.21

イスラム教スンニ派の過激組織「イスラム国」に参加するため、欧米諸国からイスラム教徒の若い女性が続々とシリアへ渡っている。勧誘されたりネット上で自ら志願したりして、イスラム国の戦闘員の「婚約者」や「ジハーディスト(聖戦主義者)」となっているもようだ。

イスラム国に加わる女性が特に多いのは、英国とフランスだ。


フランス:若い女性や中流・富裕層出身者がイスラム国参加
毎日新聞 2014.09.18

「イスラム国」への欧米最大の戦闘員供給源となっているフランスでは、従来多かった家庭環境に恵まれない若者だけでなく、若い女性を含めた生活水準の比較的高い家庭出身者が戦闘地域に流入するケースも目立つ。

仏政府は14日、外国人も含めた仏在住者約930人がシリアとイラクの過激派の戦闘に関与したと公表。4月時点の500人からほぼ倍増し、今も約350人が現地に滞在し、女性約60人が含まれているという。

上の記事ではフランス人女性 60名となっていますが、動画を撮影した女性は下のように「現在のシリアには 150人程度のフランス人女性がいる」と述べています。

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そして、ラッカ市内のインターネット・クラブでは、そこのパソコンから「フランスの親と会話している娘」の様子も映し出され、音声と共に撮影されますが、女性は親に下のように言います。

多分、親は娘に「早くフランスに帰ってきなさい」と説得しているのだと思います。

「ママ、遠慮なしに言うと、私はフランスには帰らないとはっきり言っているの。私が帰るというようなことは頭の中から消し去って。とにかく、フランスには帰りたくないのよ。なぜって、こっちでとても良く生活できているのよ」

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また、他の女性なのか同一人物なのかわからないですが、

「テレビのニュースはすべてウソ。わかる? 神に誓っていいけど、あれらはデタラメ。テレビは大げさに騒ぎ立てているだけよ」

とも言っていました。

なぜ、イギリスやフランスの女性たちが、まして「生活水準の比較的高い家庭出身者」が、大挙してイスラム国に向かうのか、その理由はちょっとわからないですが、少なくとも、本人たちの中にはそれぞれの理由があるのは確かなのでしょう。

「どっちにいた方が自分にとっていいのだろうか」と考えた結論としての。




イスラム国「首都」の日常

ほんの少しでも顔が見えてはいけない

シリアの女性が撮影した映像の中で、撮影している女性自身が、車に乗った男たちから声をかけられるシーンがあります。まさか撮影しているのがバレたのか、と見ていてハラハラしましたが、下のような顛末でした。

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男性:こっちへ来い! 公衆の中ではもっとちゃんとしなきゃダメだ。
女性:どういう意味ですか?



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男性:顔が見えている。
女性:本当ですか? それはまことに申し訳ありません。私のニカブは少し生地が薄いのかもしれません。申し訳ありません。



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男性:顔を完全に覆うように注意せよ。神は覆い隠した女性を愛される。


ということで、街の中を巡廻して、少しでもイスラム法に則っていないものを見つけると、それを注意したり、場合によっては、罰を与えられるということがあるようです。

洋服を売っている商店が、「売るのは構わないが、(西洋的な服を)外に見えるように陳列するな」と言われている風景などもありました。



酒もタバコも禁止

イスラム法の生活で、酒が禁止されるのはわかるのですが、タバコまでだめだとは知りませんでした。下のように多分、市民や商店から没収されたと思われるタバコが町の広場で燃やされていました。

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日常化している公開処刑

シリア国内でイスラム国が市民の公開処刑をおこなっている、という報道は、8月頃からよく目にしました。

一般市民の手足切断、公開処刑も…イスラム国は「人道犯罪」 国連シリア調査委報告
産経ニュース 2014.08.28

国連人権理事会が任命したシリア内戦に関する国際調査委員会は、最新の報告書を公表した。

報告書は、イスラム国が北部アレッポなどで、一般市民らを対象に手足の切断や「公開処刑」を行っていると強調。過激派がシリアに流入した結果、内戦が一層悪化し、国際社会の平和や安定を脅かすまでに至っていると訴えた。

などの報道があったのですけれど、こういう報道は、「どちら側の言い分も信用できない」というのが私の最近の普通のメディアへの姿勢でしたが、シリアの男性が撮影した映像には、公開処刑が日常的に行われているという語りと共に、いくつかの映像がありました。

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市民たちも今では慣れて、普通に見物に来ているようです。
子どもたちが喜んで見ている様子なども写されています。

そして、この「子どもたち」、あるいは若者たちへのイスラム国の姿勢

これこそが、イスラム国が現在の立ち位置とムーブメントを一過性で終わらせようとはしていない部分を感じる部分です。

たとえば、下のようなことがイスラム国によっておこなわれているようです。

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「イスラム国は、16歳から18歳の少年たちに金銭を与える」


そして、小さな子どもたちには食べ物などを配給して回っているように見える映像があります。
下は食べ物を配るイスラム国のメンバーのまわりに集まる子どもたち。

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他にも、映像では、いたるところで兵士が町の子どもたちにお菓子みたいなものをあたげりするようなシーンが写っていて、決して、「恐怖だけで統治しているわけではない」こともわかります。


しかし、もちろん、上の動画を投稿した人たちは、女性の方も男性の方も、今のイスラム国に占拠されている状態がイヤで仕方ない人たちなわけです。女性のほうの身元は一切わかりませんが、

「女性たちはニカブ(イスラム教徒の女性が着用するベール)と祈りを強制され、今はここには一切の音楽も娯楽もありません」

と嘆き、男性の方は、映像の冒頭で、

「私は生まれ育ったこの町の中で外国人のような気分で生きている」

と述べています。

その一方で、このイスラム国に他の国から続々と外国人たちが参加しにやってきている。上に記しましたように、外国人の女性も多く参加し、その中には、映像にあったように「母国に帰りたくない」という若い女性さえ現実としている……。

結局、どこの国でもそうですけれど、こういうことに関しては「良い悪い、の価値観に関しての基準はない」という概念しか持ち出せなそうです。

大酒飲みで、女性の華美な服装が好きな私はイスラム原理主義の良さを理解できないですが、しかし、その厳格な戒律こそが自分の理想だ(理想の戒律と出会った)と感じる人もたくさんいるわけで。


そんな「日常の風景」として、印象深かった映像は次のシーンです。

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ニカブで全身を覆った女性が、カラシニコフ自動小銃 AK-47 を背中に背負っているのですが、その向こうに見えるのは、子どもたちが遊ぶ広場なのです。彼女の前を走る子どもの姿もあります。

つまり、この光景は「子ども連れで公園にやってきたお母さん」という、どこの国でも見られる日常の光景とも言えます。

私たちの周囲の光景と違うのは、「お母さんが自動小銃を背負っている」という点だけです。




またもアメリカが開けたパンドラの箱

ところで、アメリカ主導でイスラム国への空爆が開始されたことで、イスラム国は以下の声明を出しました。NHK の報道からの抜粋です。

イスラム国「敵対国の市民殺害を」
NHK 2014.09.23

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中東のシリアとイラクで勢力を拡大させるイスラム過激派組織「イスラム国」が音声による声明を出し、イスラム教徒に対してイスラム国への攻撃を続けるアメリカやフランスなど有志連合に加わる国々の市民を殺害するよう呼びかけ、各国が警戒を強めるものとみられます。(中略)

イスラム教徒に対し、「アメリカ人やヨーロッパの市民、特にフランス人、さらにオーストラリア人やカナダ人、そしてイスラム国に敵対する連合に加わった国々の市民を殺害できるなら、神の名の下に殺害せよ」と述べて、イラクで空爆を続けるアメリカやフランスをはじめ、対イスラム国の有志連合に加わる国々の市民を殺害するよう呼びかけました。

要するに、

「あなたの住んでいる場所は関係なく、イスラム教徒は自分たちのいる場所で、敵を殺害せよ」

という声明を出したわけですけれど、その翌日、

アルジェリアの「イスラム国」系組織、フランス人を殺害
 ロイター 2014.09.25

という事件が起きています。

殺されてしまったのは、アルジェリアの観光地を休暇で訪れていた 55歳の男性で、戦争とは何の関係もない方のようです。

そして、続いて、

フィリピンのイスラム過激派、ドイツ人殺害警告
 ロイター 2014.09.25

フィリピンはビーチリゾートも多く、イスラム教徒から見て「敵地の人間」がたくさんいる場所です。

いずれにしても、今やもはや「イスラム国」の声明は、こけおどしなどではなく、「神の命令の代弁」として機能しつつあるようにさえ見えます。

しかも、イスラム国は、インターネットでの情報発信が巧みな上に、「何かするだけで、世界中のメディアがムチャクチャ大きく取り上げる」というようになっていて、つまり、「世界中のメディアがイスラム国の広報のような存在となっている状態」です。

イスラム国の広報部が努力しなくとも、世界中のメディアが、たとえば上のような「世界中で市民を殺害せよ」みたいな危険な声明も世界中に広めてくれる。

そして、今後、必ず、上のアルジェリアとフィリピンで起きたようなことが次々と各国で起きるはずで、そこに陰謀論が絡んでいようがいまいが、テロや殺人が次々と起きてしまうかもしれないのです。

ほんの少し前までは局地的な脅威でしかなかったイスラム国の脅威は、結果として世界の多くに影響を拡大させていってしまっています。

もう何だか、いろいろな世界中のパンドラの箱が開きまくっている感じです。

<転載終了>