櫻井ジャーナルさんのサイトより
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201603180001/
<転載開始>
 本ブログでは何度も書いているように、アメリカ軍の情報機関DIAは、シリアに「穏健派」が事実上、存在しないことを承知している。この機関が2012年8月に作成した報告書の中で、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者/ワッハーブ派、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)であり、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。

 アメリカをはじめとする西側の政府やメディアはシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すために「穏健派」を支援すると主張し続けているが、そうした勢力はないに等しく、結局、「過激派」を支援することになる。

 その「過激派」とは、アル・ヌスラのようなアル・カイダ系の武装集団や、そこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)。2012年から14年までDIA局長を務めたマイケル・フリン中将はアル・ジャジーラのに対し、ダーイッシュの勢力が拡大したのはバラク・オバマ政権が決めた政策によると語っている。

 ダーイッシュの歴史はイラクのサダム・フセイン体制がアメリカ主導の侵略軍に破壊された直後、2004年10月から始まる。当時はAQIと呼ばれた。2006年10月にAQIが中心になってISIが編成され、シリアでの戦闘に加わった13年4月からIS、ISIS、ISILなどと呼ばれはじめた。
 ところで、AQIは「al-Qaeda in Iraq」という英語表記の略称。ISIは「Islamic State of Iraq」であり、ISISは「Islamic State in Iraq and Syria」、ISILは「The Islamic State of Iraq and the Levant」だ。ちなみに、ダーイッシュはアラビア語の略称(の日本語表記)。ちなみに、イスラエルの情報機関モサドは機関を意味するヘブライ語(の日本語表記)だが、英語表記にすると「Israel Secret Intelligence Service」。これを略すとISISになる。これは随分前から指摘されていたが、偶然以上の何かを感じさせる。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けニューヨーカー誌に書いた記事よると、その段階でイスラエルはアメリカやサウジアラビアと手を組み、シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したという。

 2011年3月にシリアで戦闘が始まるが、その段階からトルコが侵略の拠点を提供、今ではサウジアラビアとともに最も好戦的な国だ。サウジアラビアは石油利権の拡大とシーア派の殲滅が目的で、トルコはオスマン帝国の復活を妄想していると言われている。アメリカのネオコン/シオニストは1992年に世界制覇プランを国防総省のDPG草案(いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリン)という形で書き上げたが、それの実現を目指している。旧ソ連圏は勿論、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようという計画だ。

 ウォルフォウィッツ・ドクトリンが書かれる前年、1991年にそのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを5年以内に殲滅すると語ったという。遅くともこの段階でネオコンはこの3カ国を侵略、破壊するつもりだ。その作戦を実現するために、2001年9月11日の攻撃は好都合だった。

 このネオコンと一心同体の関係にある国がイスラエル。2013年9月、駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている。オーレンはベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近だ。今年1月19日には、INSS(国家安全保障研究所)で開かれた会議でモシェ・ヤーロン国防相がイランとISIS(IS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)ならば、ISISを私は選ぶと発言したという。


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