櫻井ジャーナルさんのサイトより
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201605270000/
<転載開始>
 民主党の大統領候補選びで優位に立っていると言われるヒラリー・クリントン。彼女は軍需産業、金融資本、ネオコン/シオニストなどからの支援を受け、民主党の幹部たちも彼女を後押ししているが、逆風も強くなっている。電子メールの問題も大きい。クリントンの電子メールは簡単にハッキングできる状態で、外部へ機密情報が漏れている可能性は高く、今後、何がどこから出てくるかわからない。

 ヒラリーの夫、ビル・クリントンは1993年1月から2001年1月まで大統領を務めたが、当初、ネオコンの影響力は弱かった。1992年初頭にネオコンは国防総省のDPG草案(正式発表の前にリークされ、好戦性が問題になった)という形で世界制覇プランを作成、それをベースにしてネオコン系シンクタンクPNACは2000年に「米国防の再構築」という報告書を公表、2000年に行われた大統領選挙で勝利したジョージ・W・ブッシュは2001年9月11日の攻撃を利用し、この報告書に基づく政策を推進しているが、ビル・クリントン時代は跳んでいる。

 1992年のDPG草案が作成された当時の国防長官はリチャード・チェイニー。ポール・ウォルフォウィッツ次官、I・ルイス・リビー、ザルマイ・ハリルザドらが執筆したというが、そのアイデアはONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルのものだと言われている。ウォルフォウィッツとリビーは「米国防の再構築」でも執筆陣に名を連ねている。ブッシュ政権ではチェイニーが副大統領、ウォルフォウィッツは国防副長官、リビーは副大統領首席補佐官だった。
 そのほか、PNACの報告書には、ウクライナのクーデターを現場で指揮していたビクトリア・ヌランド国務次官補の結婚相手であるロバート・ケイガン、イラクへ軍事侵攻する前に偽情報を流していたOSPの室長だったエイブラム・シュルスキー、さらにステファン・カムボーン、ウィリアム・クリストルといったネオコンの大物たちが名を連ねていた。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の話によると、1991年にポール・ウォルフォウィッツは5年以内にイラク、イラン、シリアを殲滅すると口にしていたが、実際にイラクを攻撃したのは2003年。クリントン政権でウォルフォウィッツ・ドクトリンが止まってしまったからだと見られている。1996年にリチャード・パールを中心とするネオコンのグループがイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(当時)に対し、「決別」という提言を行っているが、これは「民間」の立場からだった。

 ビル・クリントンは大統領選挙の最中からスキャンダルで攻撃されている。その中心にいた人物がメロン財閥のリチャード・メロン・スケイフ。この富豪は情報機関やネオコン人脈とも緊密な関係にある。

 特別検察官のケネス・スターが所属する「フェデラリスト・ソサエティー」は憲法を無視する法律家集団だ。例えば、議会に宣戦布告の権限があるとする憲法や1973年の戦争権限法はアナクロニズムだと主張、プライバシー権などを制限、拡大してきた市民権を元に戻し、企業に対する政府の規制を緩和させることを目指していた。

 この集団は1982年にエール大学、シカゴ大学、ハーバード大学の法学部に所属する学生や法律家によって創設され、巨大資本や富豪を後ろ盾にしていることもあり、勢力を拡大していった。ジョージ・W・ブッシュ政権で司法長官に就任したジョン・アシュクロフト、あるいは司法省の法律顧問として「拷問」にゴーサインを出したジョン・ユーも所属している。

 スキャンダル攻勢でビル・クリントンは手足を縛られた状態で、弁護費用のために破産寸前だったと言われているが、それでも好戦派が求めるユーグスラビアに対する先制攻撃は実行しなかった。状況が大きく変わったのは国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリン・オルブライトへ交代した1997年だ。

 オルブライトはコロンビア大学でズビグネフ・ブレジンスキーに学んだ好戦派。国連大使だった1996年には経済制裁で死に至らしめられたイラクの子ども約50万人について意見を求められ、アメリカが目指す目的のためには仕方がないと言ってのけた。

 1998年に彼女はユーゴスラビア空爆を支持すると表明、99年3月にNATO軍は先制攻撃を実行している。広告会社を使い、偽情報を流して好戦的な雰囲気を作りだし、先制攻撃で破壊と殺戮を繰り広げるというパターンはここから始まる。オルブライトを国務長官にするように働きかけたのがヒラリー・クリントンにほかならない。

 オルブライトの師にあたるブレジンスキーはデイビッド・ロックフェラーと緊密な関係にあり、CIAとも結びついている。日米欧三極委員会を設立したのはこのふたりだ。

 ウクライナでクーデターを指揮したビクトリア・ヌランド国務次官補もヒラリーと親しい。何度も書いてきたが、ヌランドの結婚相手はネオコンの大物で、「米国防の再構築」の執筆者のひとりでもあるロバート・ケーガンだ。

 ヒラリー・クリントンはアメリカの好戦派、嫌露派と深く結びつき、今は大金持ちである。支配層の内部にも彼女が大統領になることを懸念している人がいるだろう。通常戦争でアメリカ/NATOはロシアに勝てないという分析はシリアでの戦闘を見ると説得力がある。そうなると、戦争で負けられないアメリカの好戦派は核戦争を始める可能性があるということだ。世界にとって最悪の事態はヒラリー・クリントンの大統領就任であり、「極右」のドナルド・トランプではない。電子メールの問題が注目されている一因はここにある。


<転載終了>