社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1064642162.html
<転載開始>
 【1945年8月に起きた「敗戦後占領体制」は,21世紀のいまにも続く日本国にとっての首かせであり,米日安保条約体制が受けついできた】

 【わざわざ改憲しては「対米従属であるこの日本の国家体制の困難・不自由」をさらに悪化させ固定しようとしていながら,しかもその点を理解しようともしない(できない?)安倍晋三首相の浅薄さと愚昧さ】

 【沖縄独立論もさもありなんである】

 【日米安保条約のもとでは「戦後レジームからの脱却」という空想論の実現可能性は皆無である】


 ①「嘉手納騒音訴訟 国に301億円賠償命令 地裁沖縄支部 飛行差し止め認めず 」(『日本経済新聞』2017年2月23日夕刊)

 沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民約2万2千人が米軍機の騒音で被害を受けたとして,夜間から早朝にかけての飛行差し止めや約446億円の損害賠償などを国に求めた「第3次嘉手納爆音訴訟」の判決が〔2017年2月〕23日,那覇地裁沖縄支部であった。藤倉徹也裁判長は国に対し,過去に生じた損害について総額約301億9千万円の支払いを命じた。飛行差し止め請求は退けた。原告側は控訴する方針。

 原告は騒音の程度を示す「うるささ指数(W値)」が75以上の嘉手納町や沖縄市など5市町村の約7500世帯で,弁護団によると,約2万2千人の原告数は各地の基地騒音訴訟で最多。賠償額は,これまでの基地騒音訴訟で第4次厚木基地訴訟の約82億円を抜き,最高額となった。
嘉手納基地F15画像
出所)嘉手納基地から離陸するF15,
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/gallery/85492?ph=2

 訴状などによると,住民側は米軍機の騒音で耳鳴りや聴力障害などの被害を受けているほか,夜間や早朝の飛行が深刻な睡眠妨害をもたらしていると主張。墜落事故などへの不安も大きく,精神的被害も増幅しているとして,将来分を含めた損害賠償を求めた。

 過去の判決が国に対して「騒音状況の改善を図るべき政治的な責務を負っている」と指摘したのに,その後の国の改善策は不十分なままだとしており,あらためて夜間から早朝にかけての飛行差し止めや,昼間の騒音の抑制なども求めていた。

『日本経済新聞』2017年2月23日夕刊嘉手納 藤倉裁判長は判決理由で,原告らの騒音被害について「受忍限度を超える損害を生じている」と判断。国の騒音対策は不十分だと指摘し「周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されている」と批判した。一方で飛行差し止めについては「嘉手納基地の管理運営は米国に委ねられており,国が運航を制限することはできない」として請求を退けた。

 今回の訴訟に関連し,原告団の一部は直接,米政府を相手取って飛行差し止めや損害賠償を求める訴訟も同支部に起こしていたが,今〔2〕月9日に「日本の裁判権が及ばない」として訴えを却下する判決がいい渡された。嘉手納爆音訴訟は1982年提訴の第1次訴訟で,約13億円の支払いを命じた1998年の二審判決が確定。第2次訴訟では約56億円の支払いを命じた2009年の二審判決が確定している。いずれも飛行差し止めは認めなかった。
    『朝日新聞』2017年2月23日嘉手納問題写真『朝日新聞』2017年2月23日嘉手納問題画像
   出所)2点とも,http://dIgital.asahi.com/articles/photo/AS20170223001287.html

 米軍機の飛行差し止め請求をめぐっては,各地の裁判所で「日本の支配が及ばない」として退ける司法判断が定着している。自衛隊機については,第4次厚木基地訴訟の一,二審で一部差し止めが認められたが,昨〔2016〕年12月の上告審判決で最高裁は「自衛隊機の飛行が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くとは認められない」として退けた。

 --以上の記事の内容は,要するにこう報道している。一方で,騒音被害は「受忍限度を超える損害を生じている」と判断したうえで,「周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されている」と批判している。他方で,飛行差し止めは「嘉手納基地の管理運営は米国に委ねられて」いるから,日本「国が運航を制限することはできない」として請求を退けている。

 この裁判所の判断は,日本国内にある米軍軍事基地に関するものであって,他国(アメリカ国内の軍事基地)に関する「それ」ではない。深く考えてみるまでもなく,在日米軍基地の専有使用による周辺住民に対する騒音問題の日常的な発生が,このように「日本の裁判所の判断:判決」を下させている。これでは,現状における米軍基地の実態・状況はこれからも変化させうる「それ:日本国の裁判所の基本姿勢」は,まったく期待できない。

 問題の核心はどこにあるのか。いいかえれば,在日米軍基地が地域社会:周辺区域に与えている深刻な軍事騒音公害問題は,嘉手納基地の場合は一例でしかないが,日本という国家体制側においては,いったいどのように受けとめられ,解釈され,位置づけられているのか? こうした問題意識を抱くのはごく自然な立場である。日本の司法:裁判所じたいが,日本国内の米軍基地から発生している深刻な騒音被害の問題から「敵前逃亡するみたいな判断回避」を,否応なしに強いられている。実質的に思考停止状態をみずから選んでいる。実に奇妙な司法界における光景である。

 ②「『前進』でも続く爆音 嘉手納訴訟『天使と悪魔の判決』」(『朝日新聞』2017年2月24日朝刊)

 判決がいい渡された〔2月〕23日も,米軍嘉手納基地(沖縄県沖縄市など)周辺では戦闘機の爆音が響いていた。第3次米軍嘉手納爆音訴訟。耳をつんざく爆音にさらされる原告たちの健康被害の一部が,ようやく認められたが,米軍機の騒音は違法とされながらも今回も止められなかった。静かな夜はまだ来ない。
嘉手納訴訟2011年1月20日の画像
出所)この画像は2011年1月20日のもの,
http://ameblo.jp/noraneko-okayama/entry-11053676093.html

 米軍嘉手納基地にほど近い嘉手納町中央公民館で開かれた弁護団の記者会見。池宮城(いけみやぎ)紀夫弁護団長は「飛行差し止めは認められなかったが,われわれの主張が真正面から受け止められている点が多くある」とし,判決を一定評価した。弁護団は,爆音が住民に与える健康被害を訴えてきた。判決では,睡眠妨害や高血圧症の発生リスクが認められた。子どもに大きな影響があることや,爆音で戦争体験を思い出す人に,より大きな不安を与えることも認定されるなど,「前進」があった。

 また,判決は,政府の騒音軽減へのとり組み不足について「違法な被害が漫然と放置されている」と厳しく批判した。ただ,弁護団の神谷誠人弁護士は「(第三者行為論が)国から当事者意識を奪っている。判決は国を批判しているが,司法が免罪符を与えている」と指摘。「これだけの被害を認めながら,判例を無批判に踏襲し,飛行差し止めは認めなかった。天使と悪魔のような判決だ」と話した。新川秀清原告団長は「賠償額が増えても,私たちの願いは被害の根を断ち切ること,飛行差し止めだ。戦後72年を経ても背負わされている基地被害の解消のためにがんばる」と話した。

  --この記事は「天使」が日本(政府それとも裁判所?)側にはいるかのように書かれているが,「悪魔」のほうはといえば,これが単に「空を飛ぶ殺人兵器である軍用機」だけを意味するのではない点は,いうまでもなく,すぐに理解できるはずである。今回の判決はもちろん,日本の裁判所が裁いていた。けれども,相手(被告?)であるべきアメリカ合衆国:米軍は,治外法権の存在でしかなく,最初から日本の裁判所はまったく手出しをできていなかった。なにゆえ,どうして,このような日本国と在日米軍基地の関係になっているのか?

 ③「〈社説〉嘉手納判決 許されない『漫然放置』」(『朝日新聞』2017年2月25日朝刊「社説」)

 「米国または日本政府による被害防止対策に特段の変化はみられず,違法な被害が漫然と放置されている」。裁判所のこの重い指摘を,政府は真摯(しんし)に受けとめる必要がある。極東最大の米空軍基地,嘉手納基地の周辺住民約2万2千人が騒音被害を訴えた裁判で,那覇地裁沖縄支部は約302億円という,過去最高の賠償額の支払いを国に命じた。

 これだけの金額になったのは,原告数が最多だったのにくわえ,生活・健康被害の深刻さ,そして半世紀近くも激しい騒音にさらされている住民たちの苦しみを認めたからだ。判決は,音に対する感受性が高い子どもたちへの影響や,騒音が戦争経験者に戦時の記憶をよみがえらせ,大きな不安を与えることにも言及した。

 なかでも注目すべきは,この間の政府の無策ぶりを,厳しい言葉で批判したことだ。日米両国は1996年に,夜10時から翌朝6時までの飛行制限で合意しており,政府は対策にとり組んでいる証拠にあげた。だが判決は,測定点によってはその時間帯に月100回超の騒音が観測されていると指摘。「規制措置の少なからぬ部分が十分に履行されていない」「政府が米国に対し,履行を求める措置をとった証拠はない」と述べ,国側の主張を退けた。

 政府は日米合同委員会などの場で,米側に対し,規制の順守を強く働きかけるべきだ。国民の生命・身体を守るのが政府の最大の使命ではないか。一方で判決は,原告がもっとも強く求めてきた米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めについては,「国に米軍機の運用を制限する権限はない」とする最高裁判例を踏襲して退けた。

 安保条約と日米地位協定で,基地の管理運営の権限はすべて米国に委ねられており,司法手続で救済する道は事実上ふさがれている。対応できるのは,やはり政府しかない。「漫然放置」は許されない。日米協議の俎上(そじょう)にのせるべく,交渉を進めるべきだ。

 政府は「沖縄の負担軽減」を繰り返す。だが普天間飛行場の辺野古への移設計画を強行し,騒音被害には手をこまぬいたままでは,県民の理解はとうていえられない。安全保障の不安定化が進む要因ともなりかねない。判決にはこんな一文もある。「日米同盟で国民全体が利益を受ける一方,一部少数者に特別な犠牲が強いられている」。沖縄で,そして本土で,基地被害に苦しむ多くの人がいることを,忘れてはならない。

  --明治時代において日本は,幕末に米欧諸国とのあいだで結んできた不平等条約を解消させるたのに,大変な苦労をしてきた。すなわち,江戸幕府は,日米和親条約(1854年)や日米修好通商条約(1858年)を,不平等条約として結ばされており,明治初期には条約改正が外交上の重大な課題となっていた。1911〔明治44〕年にもなってようやく,日本は,アメリカとのあいだに新しく日米通商航海条約をむすび,関税自主権を完全に回復できた。

 そのあいだにおける,帝国主義国として日本の東アジア諸国に対する国際政治(侵略路線)は,さておいた話をする。明治時代末期になってようやく,57年も経過してから解消できた当時の不平等条約に比べて,敗戦後日本のなかにいまもなお破棄されずに維持されている日米安保条約体制(1年ごとに更新されている)は,在日米軍基地を今年(2017)まで,早「72年もの長期間」存在させてきている。

 中国の事情を参考にしておきたい。アヘン戦争後に締結された南京条約(1842年)によって,香港はイギリスに割譲された。つまり,香港は租借ではなく,イギリスに奪いとられていた。南京条約第3条は,「清国皇帝陛下は英国女王陛下に香港を割譲し,英国女王陛下およびその後継者は永久にこれを占有し,英国女王陛下の適当と認める法律・規則をもってこれを統治する」と書いてあった。

 しかし,20世紀も終わりに近づいた1997年7月1日,中華人民共和国とイギリスが交渉した結果として,香港はイギリスから中華人民共和国に返還され,一国二制度の原理をもってする「最初の特別行政区」になった。つまり,イギリスに香港が奪われてから155年が経ってようやく香港は中国の領土に戻ったのである。
思いやり予算新協定沖縄タイムス2015年12月17日画像
出所)『沖縄タイムス プラス』2015年12月17日 07:55,
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/gallery/22009?ph=1


 さて,在日米軍基地というアメリカが治外法権的に専有・使用する軍用区域は,日本国の各地に散在しているが,これら基地は完全に近いかたちで,あたかもアメリカの国内基地であるかのように維持・運営されている。なにせ,米国海軍の艦艇(それも原子力空母)が母港とする横須賀基地もあるほどであるから,在日米軍基地というものの実態がいかような中身であるのか推してしるべしである。しかも,その維持・運営費までも日本政府側は「思いやり予算」などでもって,手厚く援助している。自国内の貧困・格差問題などは視野にはいっていないかのような,日本政府のアメリカ軍に対する〈思いやり〉だけは,非常によく配慮され充実している。

 ④ 吉田敏浩『「日米合同委員会」の研究-謎の権力構造の正体に迫る-』(創元社「戦後再発見」双書,2016年12月)は,なにを書いているか

 昨年〔2016年〕の12月に公刊されていた本書は,画像使用でそのカバーと帯びを示しておくが,ここに印刷されている文句(解説)とおりであって,「米日間の軍事上の上下関係」を解明している。本書の販売向けの宣伝から説明を借りて,説明してみる。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
   吉田敏浩表紙表吉田敏浩表紙浦
 
 a)「内容説明」
 日本政府の上に君臨し,軍事も外交も司法までも日本の主権を侵害するとり決めを交わす “影の政府” の実像とは? 謎の権力構造の正体に迫る。

 b)「目  次」

 PART1 日米合同委員会とは何か  -銃を持った日本人警備員のいる都心の米軍基地,日本のエリート官僚とアメリカの高級軍人が集う合同委員会,ほか。

 PART2 なぜ日本の空は,いまでも米軍に支配されているのか  -「横田空域」目に見えない空の壁,「横田空域」の法的根拠を開示しない日本政府,ほか。

 PART3 日本占領管理はどのようにして継続したのか 「占領管理法体系」から「安保法体系」へ  -米軍の特権を認めた日米行政協定,日米合同委員会の前身にあたる予備作業班,ほか。

 PART4 最高裁にもあった裏マニュアル  -『最高裁部外秘資料』に載っていた密約,民事裁判権に関する秘密合意,ほか。

 PART5 密室の協議はこうしておこなわれる 富士演習場をめぐる密約  -米軍による富士演習場の優先使用権密約,アメリカ議会の議事録から明らかになった密約の存在,ほか。

吉田敏浩画像 c)「著者紹介」
 吉田敏浩[ヨシダ・トシヒロ]は1957年,大分県臼杵市生まれ,明治大学文学部卒,ジャーナリスト。『森の回廊』(NHK出版)で,1996年,大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
 出所)画像は,http://www.mynewsjapan.com/reports/702

 d)「要  旨」
 日米合同委員会ではなにが話しあわれているのか? 国民の目の届かない密室で日本の主権を侵害するとり決めを交わす実態に迫る。日本の超エリート官僚と在日米軍の軍人たちが毎月2度おこなう秘密の会議「日米合同委員会」。そこで合意されたとり決めは日本の法律・憲法よりも,強い効力をもっている。しかし,軍事,外交,司法のさまざまな側面で,日本の主権を侵害しつづけるその協議の内容は厚い秘密のベールに包まれ,ほとんど公表されることがない。米外交官からみても「きわめて異常」と評されるその驚くべき実態に,第1人者の大宅賞作家,吉田敏浩がせまる!
 註記)https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784422300559

 ここでは外務省のホームページに公表されている日米合同委員会組織図(2016年2月現在)をかかげておく。なお,吉田敏浩が21頁にかかげているそれは,同年10月現在(最新)のものである。( ↓  画面 クリックで 拡大・可で,より鮮明にみえる)
日米合同委員会組織図2016年2月現在
出所)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/soshikizu.pdf

 ④ 若干の議論

 1)対米属国日本
 前項の d)  は,「密室(秘密)」のなかで「日本側官僚とアメリカ側軍人」が「月2回」,「日本の法律や憲法よりも強い効力」をもつとり決めをあつかうために開催している日米合同委員会が「軍事,外交,司法のさまざまな側面で,日本の主権を侵害しつづけ」ていると,指摘・批判している。しかも「きわめて異常」で「驚くべき実態」を,この吉田敏浩『「日米合同委員会」の研究-謎の権力構造の正体に迫る-』が,あらためて解明している。

 本書の内容をいちいち詳細に紹介することはできないので,ここでは,白井 聡『永続敗戦論』(太田出版,2013年)や矢部宏治『日本はなぜ,「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル,2014年)など,近年の出版物として評判となった著書が,吉田敏浩が解明してきた現実的な論点を,また別様な問題意識と分析視角から究明していた点を付記しておく。。
 補注)白井 聡と矢部宏治の所説について本ブログは,すでになんども言及している。興味ある方は「〈本ブログ名〉と白井 聡または矢部宏治」との組みあわせで検索していただければ,そのすべてがとりだせるはずである。

 要は,これらの著書の題名どおりに「戦後日本政治史」の意味を受けとればよいのであるが,換言すれば「敗戦後における日本の国際政治史(とくに軍事・外交面史)」の核体は,米日軍事同盟関係によって,それも両国間における上下関係のかたちをもって堅持されつづけている。これによって日本国の基本的なあり方も,その根柢から制約されてきたのであり,これからも〔何十何年になるかじたいもよく判断できないが当分は〕同じにいくほかない。

 2)安保〔関連〕条約体制
 アマゾンのホームページには,この吉田敏浩『「日米合同委員会」の研究-謎の権力構造の正体に迫る-』に対する書評(レビュー)が,2016年2月27日午前8時まで4件が記入されているが,とりあえずその見出しのみとりだし,紹介しておく。

 ◆-1「この国の暗闇の中心」(居残り佐平次,投稿日 2016/12/29)

 ◆-2「吉田さんの執念に敬意を覚える」(ロビン トップ500レビュアー VINE メンバー,投稿日 2017/2/11)

 ◆-3「日本国憲法の上位に君臨し続けている『委員会』の詳細」(東  史郎,投稿日 2017/1/9)

 ◆-4「占領継続中」(Endlesswave,投稿日 2017/1/1)

 これらの見出しそれぞれにも的確に表現されているように,いまもなお,日本国は実質的には在日米軍による「占領継続中」である。「憲法の上位に君臨し続けている〔この日米合同〕『委員会』の」存在が「この国の暗闇の中心」に控えている事実じたいに関して,われわれ側があまりにも「疎遠・無知であり,無関心でもある」現状を,いまでも遅くはない,よくよく認識するようにしなければならない。
 補注)「日本国憲法の上位に君臨し続けている」安保体制については,長谷川正安の著作がだいぶ以前から「憲法体制と安保体制」の関連性として問題を把握したうえで議論してきた。本ブログではとくに,つぎの記述を参照されたい。
   ⇒  2015年09月03日,主題「宗主国:アメリカ幕府に隷属する国家日本,その軍隊の『集団的自衛権行使容認』は,日本国憲法の埒外で昔から通用してきた」

 副題1「安倍晋三は,日本の自衛隊という軍隊を,あからさまに米軍の下請け戦力である位置において再固定化しつつある」

 副題2「安保法体系が日本国憲法より上位にあって,日本という国家体制を意のままに動かすアメリカ合衆国の横暴,そして安倍晋三政権の卑屈」 
 安倍晋三の場合は,論外(法外!?)といってもいい酷い程度にまで,この国の既定路線である「対米従属に喜んで」従っていながらも,口先だけでは,この日米間における従属関係からはまったく脱出できてもいない「現実的な状況」のなかで,なんと「戦後レジームからの脱却」という提唱(実は空念仏)を,自分が信じる「ふつうの国(美しい国へ?」)を実現させるためだと主張してきた。これは,これはタチが悪い虚言であるというよりは,政治家としての彼の基本姿勢に欠陥(完全なる欠落)ありといわざるをえない。

 最後に,こういう安倍晋三よりは多少はマシだった,以前,民主党(現民進党)が政権を握っていたとき最後の首相となった野田佳彦が,つぎのように述べていたことを付記しておく。これは,2012年7月中の話であった。これは,自国領土内における〈旧占領軍の軍事問題〉に対する発言であった。
★ 首相「日本からどうこういう話でない-オスプレイ配備」★
=THE ASAHI SIMBUN DIGITAL,2012年7月16日20時29分=


 野田佳彦首相は16日,米軍が沖縄に配備予定の新型輸送機オスプレイについて「配備は米政府の方針であり,同盟関係にあるとはいえ(日本から)どうしろこうしろという話では基本的にはない」と述べ,日本側から見直しや延期は要請できないとの認識を示した。

 フジテレビのニュース番組に出演して語った。首相は「わが国もたとえば国土交通省や第三者の知見で安全性を再確認する。そのプロセスを飛ばして飛行運用することはない」と,政府として独自に安全性を検証する考えも示した。
  註記)http://www.asahi.com/special/minshu/TKY201207160273.html
 この発言は,安保体制が憲法体制を圧倒的に吹き飛ばしている「米日間の上下関係」(「吹けば飛ぶような日本国憲法」)を,如実かつ適切に表現していた。要は,憲法体制の上位に位置し,盤踞してるのが安保体制である。安保体制に憲法体制に服従している。「押しつけ憲法」を非難する人びとは,安保体制に対してはほとんど苦情をいえない状態であり,憲法じたいが「押しつぶされている」現状についても,あえて問題視しようとはしない。

 現在の防衛省自衛隊3軍はもとはといえば,アメリカの押しつけで創設されていた。「警察予備隊(1950年8月)⇒保安隊(1952年10月)⇒自衛隊(1954年7月)」。「押しつけ」といえば「象徴天皇制」も同じく押しつけられて,敗戦後に施行された日本国憲法内で規定されていた。極右(保守・国粋・反動)の政治家たちは,天皇を国家元首に据えたい点でいえば,その天皇問題に関した「押しつけ」的な本性を排除したいらしい。だが,憲法にまとわりつく「押しつけ」性に関して,ただ都合よく・恣意的にのみ,あれこれと取捨選択をしたがる議論の仕方は自家撞着性であって,つまり首尾一貫性を欠いた,論理が破綻の迷論である。

 3)改憲問題
 『日本経済新聞』2017年2月25日朝刊は「改憲『3項目前後』自民本部長」との見出しで,こう伝えていた。
    自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長は24日の本部会合で,憲法改正について「合意をえられた項目から順に,部分改正を重ねる必要がある。1回に3項目前後が常識的だ」と述べた。「初回の改憲を混乱なく,着実に成功させないとならない」とも語った。

 同党は2012年に改憲草案をまとめているが,国防軍の創設など保守色の強さを野党が批判している。憲法全体ではなく,部分的に改正する姿勢を示すことで,野党に改憲論議を促す狙いだ。
 天皇を国家元首に据えるなど「反動形成の憲法改悪」(改定)は,極右・保守政権にとってみれば,長年において念願であったはずの「この憲法を変える目的」が実現される点を意味する。だが,よく考えてもみよ。いまの日米安保〔関連〕法体制のなかで,現行憲法を〈改正〉しようとする自民党案の具体的な条文なのであるかぎり,対米従属の現状がより深刻化されるほかない,いいかえれば決定的に堅固にする方向(国民の利益にならない方途)しか出てこない。これは判りきった道理である。

 憲法「改正」を狙う政治家たちは,自主・独立路線を当然強く意識しているものの,その改憲の意図・中身に関してみれば,現状における日米軍事同盟関係を,よりいっそう強化させるほかなく,すなわち,対米従属関係をさらに固定化する役目しか発揮できない。

 なかんずく,安倍晋三が唱えた「戦後レジームからの脱却」が,いまの日本の「敗戦後安保体制」の,そのなにひとつすら除去も改善もできていないなかで,この脱却を叫ぶのであれば,これは「狂気の沙汰にも似た虚偽の空想的な観念」の飛翔にしかなっていない。

 仮に「戦後レジームの否定」や「脱却」だというとき意味されているのは,「戦前・戦中体制への志向」にこだわっている点であり,さらに抽象的にとらえれば,明治帝国主義時代を郷愁するといった〈時代錯誤〉以外のなにものでもない。ところが,そもそも,1945年敗戦以前においては,帝国日本の領地内にはアメリカの軍事基地などひとつもなかった。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
横田と泥表紙
 註記)横田の本は,七つ森書館,2016年2月発行,泥の本は,かもがわ出版,2014年11月発行。

 だが,安倍晋三君は,日米安保〔関連〕法体制は現状のままにしておいて,さらにその紐帯を締めつける方向において「戦後レジームからの否定・脱却」を,それこそ口角泡を飛ばす勢いで主張してきた。しかしながら,これほどに極端な暴論,いいかえれば「砂上の楼閣」を意味した提唱はなかった。その主張を大声で叫べばさけぶほど,この国の対米従属関係はアメリカに都合のよい方向でのみ,その奥行きを拡げていくこと(つまりアリ地獄状態を深めること)にしかなりえないからである。

 つまり,安倍晋三首相は日本国にとってまさしく『亡国の総理大臣』である。逆に,アメリカにとってこの坊やは,その点(米日軍事同盟関係)に関しては,とてもものわかりがいい,別言すれば操縦しやすい「世襲3代目の政治家」だということになる。さすが,あの岸 信介の外孫だというわけである。

 要は,日米合同委員会を介して,安保条約下にある日本の「憲法を頂点とする国内法の体系,すなわち『憲法体系』を密約によって無視する,法治国家としてあるまじき行為」がまかり通っているような,この国:日本の現状においては「明治時代さながらの不平等がいまも続いている」(吉田『「日米合同委員会」の研究』140頁,89頁)。


<転載終了>