社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1064685284.html
<転載開始>
 【労働組織上部団体「連合」の “反「脱原発」思想” の時代錯誤】

 【連合の問題性はどこにある? 企業別労働組合を基底とする上部組織の弊害か,労働組合本来の使命を忘却か】



 ①「脱原発,蓮舫体制ピンチ『30年ゼロ』表明断念,党内反発」(『朝日新聞』2017年3月1日朝刊)

 民進党の蓮舫代表が「2030年原発ゼロ」方針について,3月12日の党大会での表明を断念した。脱原発を求める世論よりも支持母体の連合を優先したことに対し,さっそく党内の脱原発派や共闘を組む野党から批判の声が上がった。蓮舫執行部は国会での重要法案の判断や東京都議選を控え,危機に瀕している。

 「2030年ゼロ」の表明断念が一斉に報道された〔2月〕28日午前,蓮舫代表は党会合に出席。参院予算委員会での審議に向けて「一致団結して臨んでいきたい」とあいさつしたが,原発には触れなかった。会合では,党大会で正式決定する活動方針案を了承。そこにも「2030年ゼロ」の文言を盛りこまず,「一日も早く原子力発電に依存しない社会を実現することをめざす」などと従来方針を記しただけだった。
 補注)現時点:2017年3月1日において稼働している日本の原発は3基だけである。とくに2013年9月から2015年8月の時期,このほぼ2年は「原発ゼロ」のエネルギー供給体制でもって,日本の電力は賄われてきた。そのために当時,火力発電に使用する化石燃料の価格が高いだとか,炭酸ガス発生による温暖化対策に問題ありなどといった事由を挙げては,原発の有用性を強調するばかりであった,いわば原子力村内において飼育されてきた人士たちは,いまもなお盛んに「脱原発の動向」に水を差そうと必死に反対している。

 しかし,以上に挙げられた事由は,原発を推進するための積極的な根拠とはなりえていなかった。その間にも,日本における再生可能エネルギーの開発・利用は,じわじわと浸透・成長・増大してきた。「3・11」以後はすでに,原発に依存しなくてもよい「エネルギー電源別構成比率」に向けて日本も舵をとってきたなかで,この動きをまっこうから阻止したいかのような,反「再生可能エネルギー」の立場である「原発推進」勢力がまだ根強く残存している。

 原子力村「勢力の一部を形成する連合」は,大企業体制のなかで原発産業を事業部門としてかかえ,この商売によっても金儲けをしなければならない諸会社に組織されている「従業員の企業内組合」を,有力な組織として擁してもいる。原発事業に関連する企業名を具体的に挙げれば,三菱重工業・日立・東芝などがあるが。この労組は原発再稼働「組」である。

 連合はいうなれば,企業別組合として「原発推進論」を支持している労働組合,それもエリート層に属する労組を,中心的な組織基盤にしている。しかしながら,ごく一般の市民層の原発観はといえば,その再稼働に反対である世論意識が過半を占めている。「3・11」のさいに発生した東電福島第1原発事故の現状や,その後における現場の後始末も進まない状態をよくしっている国民たちの側は,東電のいつ果てるとも分からない「七転八倒」の経営ぶりを,いまもみせつけられている。

 上記3社,三菱重工業・日立・東芝の従業員たち(その正社員で企業内労組員でもある人たち)は,原発推進(再稼働)でないと困るという利害を抱えているらしく,この利害状況が民進党の対原発方針にも重大な影響を与え,方向づける力を発揮している。こうなると,大企業(企業内)労組は,一般市民(国民・大衆)の全体的な意思である反原発・脱原発の潮流に抵抗する「政治社会的な勢力だ」という理解(位置づけ)にならざるをえない。

 なかんずく,原発に事故はありえません,起きたとしても東電福島第1原発事故現場のように “アンダーコントロール” なのです,などといった「事実無根」の虚説を吐いた某国(某国)の最高指導者がいた。けれでも,いまどきこのような〈真っ赤な嘘〉は,誰も信じていない。ともかく,原発を早めに廃絶するという立場に対しては,明確に反対の意思を明示する連合に加盟している日本の有力会社の労組は,まさしく〈時代に対する反動の姿勢〉を明確にかかげていると批判されて当然である。

 〔記事本文の引用に戻る→〕 党エネルギー・環境調査会は同日〔2月28日〕役員会を開き,論点メモで以前に盛りこんだ「2030年原発ゼロ」を削除。新たに「原発ゼロ基本法案(仮称)」の法案化検討が盛られたが,これも賛否が割れた。連合は,蓮舫氏の方針転換を歓迎。幹部は「支持されない理由はもっと大きなところにある」と語った。
 補注)つまり,期限を切らない「原発ゼロ」目標の考え方は,いつまでもズルズルと原発を引きずっていく電力供給体制を是とする立場を意味する。これでは,民進党も,自民党の原発に対する立場と同じである。民進党が野党として存在する意味は,原発問題に関していえば,まったく判らなくなっている。民進党の支持者が増えない一因ではないか。ある人は,原発問題に絡めてこういっていた。民進党は連合関係の500万人の支持(票)を失ってもいいではないか(もっともその全員が民進党の票田ではない),その代わりに別にまた,500万人以上の支持者は獲得できると。

 おさまらないのは,蓮舫氏に期待を寄せてきた「脱原発派」だ。逢坂誠二衆院議員は「年限を切ることで原発ゼロの姿勢が明らかになる。党大会で発信されないなら残念だ」と失望感をあらわにした。党幹部の1人も「あぜんとしている。連合にそこまで気を使う必要があるのか」と憤る。

  ◇ 共闘他党から失望感 ◇

 「脱原発」は,安倍政権への対抗軸を示し,野党共闘の旗印になりうる政策。自由党の小沢一郎代表は蓮舫氏との会食で直接,当初の決意を聞いていただけに,〔2月〕28日の記者会見では「民進党の特色が表われた状況ではないか」と皮肉った。社民党の又市征治幹事長も同日の会見で「残念だ。国民世論は圧倒的に脱原発だ」と語った。

 蓮舫執行部は昨〔2016年〕秋の発足以来,衆院2補選で大敗。新潟県知事選で脱原発の世論をつかめずに出遅れ,「カジノ解禁法」では一転して自民と採決に合意するなど腰が定まらず,反転攻勢の糸口がみえない。今後は天皇陛下の退位をめぐる法整備や,「共謀罪」法案で力量が問われるだけに,ベテランは「すべての判断で『大丈夫だろうか?』と疑念を抱くほど危機的だ」と頭を抱える。(記事引用終わり)

 --ところで,原発推進論(原子力村)の立場をマスコミ界では採用する1新聞社の『日本経済新聞』が,昨日〔2017年2月28日〕の1面で,こういう解説記事を組んでいた。この記事は冒頭部分を飛ばしてそれ以降を引用する。

 ②「原発漂流 東日本大震災から6年(上)消えた『低廉』の2文字 見えぬ廃炉費用」(『日本経済新聞』2017年2月28日朝刊1面)
 
 1)膨らむ費用試算
 事故から6年たっても,原子炉内の状態はほとんどわかっていない。東電は溶け落ちた核燃料(デブリ)をとり出す方法を今夏〔2017年の〕に決めるつもりだ。しかし,いまのままでは難しい。どこにどれだけのデブリがあるかすらわからないからだ。

 経済産業省は昨〔2016〕年末,福島第1原発の廃炉や賠償にかかる費用の総額が21兆5千億円にのぼるという試算をまとめた。3年前に示した約11兆円のほぼ2倍だ。とても東電1社で負担できる額ではないが「これで終わり」と思っている専門家は少ない。廃炉に向けた作業の入り口にも立たない段階ではじいた数字だからだ。費用が膨らみ続ければ,ツケはいずれ利用者に回る。
 補注)この点に関する議論もすでにしたことがあるが,原子力村が「3・11」を契機にして成立しにくくなった利害集団であることは明晰である。ところがこんどは,原発事故整理事業というか廃炉関連処理事業というべきものが,その後における〈原発関連産業〉として隆盛になりそうな気配である。いまや「原発安全神話」など唱える人はいないし,いたら変な目でみられる。現実はその反対であった。さらには,安全どころか事故を起こした原発やその他の廃炉の問題なども加重されるべき原因になって,今後においてもよりいっそう原発は高コストになっていくだけである。

 三菱重工業・日立・東芝などの労組は,原発再稼働に賛成であるうえで「民進党を政治的に支持する」立場である。そうであるならば,このさい,自民党支持に変えたほうがすっきりする。一般市民(国民・大衆)の代表的な意思からは,かけ離れた企業内「市民意識」しかもちあわせていない。大企業労組員が自民党支持者となんら変わりえないような政治意識(原発に関しての話だが)をもっている。関連させていうと,東電福島第1原発事故の被災者に対する連合の基本姿勢は,どのようなものあるのか? この問題は ③ において議論する。

 〔記事本文の引用に戻る→〕 原発を受け入れている地元の首長に宛てて政府が出す再稼働の要請書から最近,2つの文字が消えた。「低廉」だ。これまでは原発の電気の安さを訴えるのが慣例だった。ところが,〔2017〕1月に九州電力玄海原発が安全審査に合格したさい,佐賀県の山口祥義知事が受けとった要請書にこの決まり文句はなかった。「安全対策などの費用を考えれば,原発の電気が安いとはもう声高にいえなくなった」。経産省幹部はこう漏らす。
 補注)「声高にはいえなくなった」(?)と,ここでは書かれているが,すでに原発のコストはじわじわ上昇してきたし,これからもさらに高くなる。東電福島第1原発事故現場の後始末は,コスト面でみれば,日本のすべての電力使用者が毎月支払う電気料金のなかにまぎれこませるかたちでごまかしているし,今後においてもその手法が濫用されていく度合が高まる。

 わけても,東電福島第1原発事故の後始末のためには21.5兆円が必要だといっていたが,これからも,もっと高額になる可能性(必然性?)はあっても,その逆はありえない。要は原発事故は,地球環境への放射能汚染問題のみならず,外部経済的にはとんでもない被害(負担)を国民国家全体に対して与えている。

 福島の事故の前に54基あった日本の原発のうち,いま動いているのは九州電力の川内1,2号機(鹿児島県)など3基にとどまる。世論や地元の反発は根強く,再稼働は遅々として進まない。それでも,電気が足りなくなって生活や産業に影響が出るといった混乱は起きていない。電力需要の減少もあり,原発不要論は勢いづいている。

 2)火力依存の弊害
 原発はもう要らないのか。目を向けなければならないのは,火力発電に頼りすぎる弊害だ。北海道から沖縄まで電力大手10社は4月まで3カ月続けて一斉に電気代を引き上げる。昨〔2016〕年11月の石油輸出国機構(OPEC)による減産合意で原油価格が急上昇し,それにつれて火力発電の主な燃料になる液化天然ガス(LNG)が値上がりしたためだ。

 中東の政情不安や米トランプ政権のエネルギー政策が,原油やLNGの価格にどんな影響を及ぼすかは見通しにくい。地球温暖化を防ぐ観点からも,火力発電に頼りつづける状況は危うい。大切なのは太陽光や風力といった再生可能エネルギーを含め,さまざまな電源をどう組み合わせるかという視点だ。
 補注)あいもかわらず「地球温暖化を防ぐ観点からも,火力発電に頼りつづける状況は危うい」といったふうに,根拠の曖昧であるお決まりの主張が表現されている。だが,原発のほうはどうであったかについてこの記述は回避し,だんまりを決めこんでいる。原発が環境に対して与えるのは,事故を起こしたときの放射能拡散・汚染の問題だけでなく,事故を起こしていないときでも膨大な熱源となって地球環境を汚染している。

 ここでの主張「大切なのは太陽光や風力といった再生可能エネルギーを含め,さまざまな電源をどう組み合わせるかという視点」というものは,原発を排除した主張に関するものかどうか不詳である。だが,日本経済新聞社の立場は原発をなるべく使用する(再稼働させる)考え方であるから,庶民・大衆(一般国民・市民)の原発に関する意識とは,相当に離れた地点から発言している。だから,次段のようにも主張している。

 政府は2015年に30年時点で電気の20~22%を原発で賄うのが最適とした。電力の安定的な確保を考えたとき,原発をなくす選択肢はありえない。今〔2017〕年から始めるエネルギー基本計画の改定はそこが出発点になる。

 --「電力の安定的な確保を考え」るさい「原発をなくす選択肢はありえない」という提唱そのものからして,もともと完全に間違えている。すでに,自然・再生可能エネルギーの開発・利用を活発におこなっている国々があるが,原発なし(ゼロ)でもその「電力の安定的な確保」は可能になっている。火力発電の構成比率も下げられている。しかし,日本においてそうはさせないぞと妨害しているのが,実は「原発をなくす選択肢はありえない」といったふうな,いまどき時代遅れのエネルギー電源構成論に依拠した主張である。

 この点に関する議論について本ブログは,さんざんぱら説明してきたが,ここでは重ねてつぎの批判を引用しておく。
    再生可能エネルギーの流れの変動性について考えることに慣れていない人びとは,気まぐれな天候が再生可能エネルギー利用の信頼性を低下させるので,完全なバックアップが必要となり,既存エネルギーの容量を小さくすることはできないという考えてしまう。

 ところが,詳細な分析によると,再生可能エネルギーの変動は,エネルギー源ごとに異なり,その攪乱は従来型エネルギー型システムに対する攪乱(技術的故障,石油禁輸,ストライキ)よりも小さくかつ予測可能であることが分かっている。致命的で解決不能な貯蔵の問題を生じるのは,既存のシステムのほうなのである。
    註記)エイモリー・B・ロビンス&L・ハンター・ロビンス,室田泰弘・槌屋治紀訳『ブリトル・パワー-現代社会の脆弱性とエネルギー』時事通信社,昭和62年,305頁・下段。
  
 --本ブログ内ではたとえば,次記の関連する論述があった。

  ◇-1 2016年11月10日の「日本国の『3・11』原発事故の教訓を読みとるベトナム国民,そうではない『日本国:原子力ムラ』の『懲りない面々』は,原発を海外に輸出する魂胆」

  ◇-2 2017年02月15日の「原発の『トランプ的な婆(ババ)性』を擁護する人,国際環境経済研究所理事竹内純子は,再生可能エネルギーの現状を把握していないのか?」
 ③「〈インタビュー〉連合,だれのために 連合会長・神津里季生さん」(『朝日新聞』2017年3月1日朝刊「オピニオン」)

 以上に論じてきたなかで指摘されていたのは,日本の労働組合の上部団体である連合が,政治路線としては民進党支持であっても,原発廃絶路線を積極的には採らない支持団体である点であった。連合はまさしく,「環境問題やエネルギー問題に関しては時代反動的な役目を果たす立場=思想」しか有していない。これは,おおげさにいうまでもなく,反社会とまで断定してもよい「エリート労組の上部組織」である連合の問題性である。ともかく,以下にこのインタビュー記事を紹介する。

 --労働組合は働く人を守るためにあるはずなのに,暮らしの底上げの実感は薄く,働き過ぎて命を削る人はあとを絶たない。686万人の労働者を束ねる国内最大の労組の中央組織,連合(日本労働組合総連合会)はなにをしてきたのか。時の政権に後れをとっていないか。7代目トップに就いて1年あまり,神津里季生会長に聞いた。
神津里季生画像
 ※ 人物紹介 ※ 「こうづ・りきお」は1956年生まれ,1979年に新日鉄(現新日鉄住金)入社,新日鉄労連会長,基幹労連中央執行委員長,連合事務局長などを経て,2015年から現職。 
 ※-1「話題:その1」

 ◆ 連合はいま,労働運動のお株を安倍政権に奪われていませんか。残業を規制して長時間労働の是正をめざす「働き方改革」にしても,「官製春闘」にしても,そうみえます。

 ◇ 「本質的に奪われることはありません。僕たちがいいつづけてきたことにようやく光があたって,最低賃金引き上げにつながり,働き方改革の議論が政府で始まった。ですが,どうみても人びとには安倍さん主導と映る。その点でやりにくいのは事実です。実現は簡単ではないですが,私たちは働く立場から,残業時間の上限規制だけでなく,終業時間と始業時間のあいだに一定の休息時間を設けるインターバル規制の導入も求めています」。

 ◆ 望む政策が実現するのは,けっこうなことですね。

 ◇ 「その局面ではよいことですが,なんでも政府に頼る『お任せ民主主義』は危険です。戦時下でも,総力戦の遂行のために一面では労働者に手厚い政策が打たれました。本当は,1人ひとりが声を張ってとりにいく姿勢がなければ将来につながらない。それと『官製春闘』という言葉はマスメディアがはやらせたのであり,落とし穴にはまりかねない,よくない表現です。経営者も組合員も,自分たちとは関係ないと思ってしまわないか」。
 補注)戦時体制期における国家の社会政策に「手厚い政策が打たれました」というのは,目的じたい論:動機論としては大きな間違いはない。しかし,その効果論:結果論としては短絡的な解釈である。1937年の母子保健法に依拠して提供されたこの母子手帳の場合では,そのまた逆に考えてみる余地がある。こちらでは,結果論として評価できるとしても,その動機論には人間生命論に反する社会思想が控えていた。

 最近,本ブログ筆者は樋口篤三『靖国神社に異議あり-「神」となった三人の兄へ』(同時代社,2005年)を読んだが,この著者は自分の兄を3人も戦争犠牲者にした国家を指弾している。さて,その母子手帳・母子保健法については,こう解説されている。

 それは,1941年の人口政策確立要綱でみられた「1夫妻5児」のような,戦時体制下における極端な人口増加施策の一環であった。その結果としては(今日における評価である),目的や結果はともかく,出産と保育の環境をいちじるしく急速に整備できた。だが,樋口篤三『靖国神社に異議あり-「神」となった三人の兄へ』は,すでに成人男子は兵隊にとられていた戦争の時代における話題であったゆえ,「男の兄弟」が多かったこの著作の著者の場合では,「3人もの兄」を戦争で失わわせた自分の国を徹底的に糾弾している。
 
 ◆ いちばん声を張り,行動すべきは連合でしょう? 物足りなさを感じる人は多いと思います。

 ◇ 「労働組合の運動は,どうしてもひとごとだと思われてしまう。私だけが大風呂敷を広げてもだめですが,時宜にかなった風呂敷を広げることは必要です。タイミングのひとつが春闘ですね」。

 ◆ 始まった今春闘では,どんな「風呂敷」を広げていますか。

 ◇ 「『底上げ春闘』を昨〔2016〕年に続けてかかげています。加盟する労組はそれぞれ,すべての働く者のために格差の是正を実現すること,中小や下請け企業に厚みを回すことを経営側に要求する。昨〔2016〕年は,子会社の賃上げが親会社を上回ったケースも目にみえて増えました。1年やそこらでは全然追いつかないから,続けなくちゃいけない。あんまりつんのめってはいけないですが,風呂敷の広げ方はつねに考えなくてはいけない。あえて極論をいうと,数字はなくてもいい。大事なのは,要求の考え方です」。
 補注)なにやら,ずいぶん歯切れの悪い話し方に終始している。

 ※-2「話題:その2」

 ◆ 振り返れば,連合は4つに分かれていた労働組合がひとつにまとまって誕生した組織です。

 「1970年代の石油危機までは賃金は上がり,実質的にほぼ完全雇用でした。ナショナルセンター(労組の全国中央組織)がばらばらでも,労組に存在感があった。けれども,その『いけいけどんどん』の時代にはほころびがみえなかった問題の比重が,石油危機以降,決定的に高まった。これが,連合結成の引き金になったと思うんですね」。

 ◆ 連合は,具体的になにをしていく存在ですか。

 ◇ 「ひとつは個別の労組では解決できない大きな問題,税制や医療,労働法制,社会保障などに刺さりこんでいくことです。連合は『力と政策』を,結成以来のキーワードとしてきました。もうひとつは,うんとミクロの視点で,1人ひとりの働く者に向き合うこと。だれでも電話できる労働相談ダイヤルなどがそうです。組合員から連合本部にいただく月100円ほどの会費は,むしろ組合員以外のために使う。すべての働く者のために力を発揮することが大切です」。
 補注)おそらく原発関連の問題は,この連合にとっても「大きな問題」のひとつを意味するものと思われる。ところが,ここでは言葉として表現には出ていない。連合として,原発,具体的にはエネルギー問題や身近にいえば電気料金などの問題や,さらには原発産業の現場で働く人びとにかかわる問題が,その「大きな問題,税制や医療,労働法制,社会保障など」の範疇に属していないわけがない。この点は,あえて指摘するまでもないほど明白である。

 ◆ 政策の実現に「刺さりこんでいる」自信はありますか。

 ◇ 「かつての自民党政権のときも,正面から政策要請をし,水面下も含めて影響力を発揮してきました。民主党政権下での社会保障と税の一体改革も,連合の『働くことを軸とする安心社会』の考え方を,かなりの部分で共有した。昨〔2016〕年末,安倍首相との会談でも連合の考えははっきり伝えました」  。

 ◆ 一方で,脱原発の方針や共産党との共闘をめぐって,応援してきた野党の民進党とは関係がぎくしゃくしています。

 ◇ 「ぎくしゃくはしていません。本来,民進党は二大政党制で政権を担える存在になるべきで,どう信頼をとり戻せるかです。戦術として,ただでさえ強い自民党に立ち向かっていくのに,野党がバラバラでいいはずがない。でも,野党の候補者が共産党に一本化となった場合,連合が応援することは絶対にありえません。共産党とはめざす国家像が違う。連合は左右の全体主義を排し,広い道の真ん中を歩く。結成以来,ぶれずにやってきたことです」。
 補注)ここでの表現はおかしい。共産党とはめざす国家像とはなにか? 「連合は左右の全体主義を排し,広い道の真ん中を歩く」というけれども,その「真ん中」という政治的な形容が,はたして「連合は左右の全体主義を排し」ていることまで意味できるのか? とくに現在の安倍晋三政権のように,実質的な政治体制を,専制的な国家全体主義の運営方法で強引に推しすすめている現況に対面させられていながらも,このように抽象論的にのみ当たりさわりなく「労組上部組織の政治的立ち位置」を語るのは,ある意味では欺瞞的とまで感じざるをえない。

 ※-3「話題:その3」

 ◆ 1年あまり前に決定した運動方針で,「連合はどういう存在か」を自問していました。存在意義を探しあぐねているようです。

 ◇ 「探しあぐねている,ということではありません。そもそもの問題意識には,2003年に外部の有識者に連合の活動を評価してもらった,連合評価委員会の最終報告があります。この中坊委員会で示された方向のなかで,着実に前に進んでいます」

 ◆ 市民派弁護士といわれた元日弁連会長の故中坊公平氏が座長を務めた委員会ですね。報告から2014年,なにが前進しましたか。

『朝日新聞』2017年3月1日朝刊連合図表 ◇ 「地域のとり組みが重要だという提言を受け,2012年までに260の地域の組織を整備しました。駆けこみ寺的に1人でも加入できる地域ユニオンもできた。現場任せだった労組の仲間を増やす根源的なとり組みも,能動的に動き始めています。減り続けていた組合員数も盛り返してきました」。

 ◆ 中坊委員会は「不平等・格差の拡大という不条理に対する怒りが感じられず,迫力が欠ける」と厳しく批判しました。最近では電通の女性社員の過労自殺に,働く人の「不条理への怒り」が高まりました。連合は,働く人の命を守るためになにをしたのですか。

 ◇ 「職場でなんといっても大事なのは命,安全ですよね。電通の労組は連合傘下ではありませんが,残念きわまりない話です。独り悩むのではなく,相談ダイヤルに一報いただけたら,悲惨なことにならずに済むのではないか。その思いはすごくあります」。

 ◆ もうひとつ,中坊委員会が求めた「企業別組合主義からの脱却」は,進んだのでしょうか。

 ◇ 「良い悪いは別にして,日本の労働運動は企業別の交渉を軸とした体系になっています。問題は,この枠組でカバーされていない人が世の中にわんさといること。獲得した成果を,外に広げていくことが必要ではないでしょうか」。
 補注)この「わんさ」という表現は “いいえて妙” である。連合がまだ労働者・サラリーマンのなかでも,大企業に重心がある上部組織である。つぎの図表における数値の変動は,どう観察しているか? ( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
労働組合画像資料
出所)http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/15/dl/gaikyou.pdf

 ◆ 「外に広げる」努力,しているようにはみえません。

 ◇ 「ブラック企業と批判された居酒屋チェーンのワタミの労組結成を支援したのは,昨〔2106〕年でした。従業員にひどい仕事のさせかたをしている企業とは,直接,全面的に闘っています。こうしたとり組みは,外からもみえるようにしたい。私は幻想を抱かないし,幻滅もしません。現実を直視します」。

 ※-4「話題:その4」

 ◆ 労働運動の世界にのめりこんだきっかけは,なんですか。

 ◇ 「新日鉄に入って6年目で本社労組の執行委員になりました。連合を通じてタイの日本大使館で3年間働き,帰国後に希望して新日鉄労連の専従に戻りました。その翌年の1995年が,鉄鋼業界で初めてベアを要求したのにゼロ回答だった『ベアゼロ春闘』でした。書記次長として交渉文章をつくった身としては冗談じゃないと。これがバネになった。悲願だったホワイトカラーとブルーカラーの制度体系を一緒にするという大改革も経験し,こだわりをもつようになった。貴重な経験ばかりでした」。

 ◆ 連合のトップとして,これからなにを貫く覚悟ですか。

 ◇ 「トランプ政権の誕生など,世界中が『自分たちさえよければ』という流れになっています。それではめぐりめぐて,自分たちにつけが回る。労働運動は,それではいけないといってきた。この原点はありとあらゆる機会をとらえていいつづけます」。
 (記事引用終わり)(聞き手・吉沢龍彦)

 --以上のインタビュー,ざっと聞いただけでも「質疑応答の内容がややぎくしゃくしている」という印象を受ける。つぎの ④ は,「左翼を自称する人物」のブログの文章を引照するが,連合に対して特定の批判をくわえている。現在,民進党の脱原発政策にブレーキをかけている,この連合という労働組合上部組織の本質(その背景)を垣間みさせる一文である。なお,この主張がすべて正しいという前提で引用する文章ではなく,③ までの記述を,比較対照させる材料にするために読んでほしい一文である。

 ④「救いようのない無能労組『連合』」(『はみだし左翼の脱線発言』2016年04月 26日)

 
このブログの文章を以下に引用する。

 北海道と京都の補選の結果が出た。民進党は1勝1敗,共産党が候補者を下ろしたことで結果としてはかなりの健闘ではなかったかと思う。北海道で与党候補が当選したのは個人的には残念だが,京都では,大嫌いなネオリベ・ポピュリズム政党おおさか維新が民進党候補の1 / 3の票しか取れず,大敗したのは嬉しいばかりだ。北海道でも,負けたとはいえその差はわずかであり,この流れが定着すれば今後は野党候補もかなりの勝率が望めるだろう。
 補注)2016年4月24日であったが,第3次安倍政権が発足して初の国政選挙となった「衆院の2つの補欠選挙」が実施されていた。

 ところが,こんな健闘にケチをつけまくっている集団がある。それが労働組合(もどき)連合である。連合の幹部は「共産党などと組むのはもってのほか」「共産党の存在じたいを認めていない」とテレビで述べているのを観て,「連合は労働者や一般市民にとって益にならないどころか,その存在が害悪となる」と痛感した。
 補注)ここでいわれている論点が分かりづらいという人には,以前「総評」という労組の上部団体があった事実を指摘しておく。いまの連合とはかなり異なる労働側の組織であった。

 連合がその前身時代から共産党系労組とは闘争方針の違いから対立していたことは事実だが,いつまでそんなことを引きずっているのか? 一般人からすれば,労組の主張の違いなどほとんど分からない。私はかつて共産党系の労組に加入していたが,20年以上前は連合系への批判がさかんにおこわわれていた。だから対立の原因を連合系にだけ押しつけるつもりはない。

 だが,ここ10年ほど前からはそうした批判はずいぶんと減った。一時的に批判が再燃したのは,連合が震災時に国家公務員の給与10%削減を飲んだときくらいだ。そしてこの批判は理にかなったものと思う。連合は,公務員労働三権の回復を条件に給与の削減を受け入れたのが,結局給与が減らされただけで,肝心の労働三権の返還約束は反故にされ,連合は思い切りバカをみた。そんな間抜けな事実への自己批判もないままに,あいも変わらず何十年も前の反共思想に凝り固まっている。

 連合系の組合はいまも土下座春闘を繰り返している。企業が史上最高の業績を残しても,賃上げ幅をわざわざ落として,自分から膝を折って企業に「お伺い」を立てている。アホらしい。労働運動とは闘いとるものだ,お願いするものではない。

 私が強く批判した猪野 亨弁護士は北海道の補選に対して,共産党の姿勢を「自党の宣伝に利用している」とわけのわからないことをいっていた。だが,民進と共産の共闘により,相当な善戦をしたのは事実である。そんななかで,いまだに時代錯誤の反共意識にとりつかかれている愚かな連合にはなにもいわないのか?

 かつては共産党がかたくな政党だといわれた。だが,現在は完全に立場が入れかわっている。連合の頭には「共産党=敵」と刷りこまれている。連合の敵は自民党ではない。脳内で勝手に肥大化させた架空の共産党である。もはやその頑固さはカルト臭すら漂わせる。

 労働者は連合に入るべきではない。こんな思想狂信者の集団に入っても御用組合のなかで苦しむだけである。もはや連合には労働組合を名乗る資格はない。とっとと「企業連合経営者」とでも名前を変えて,その正体をさらけ出すがいい。(引用終わり)

 ③ までの記述に対する「刺激剤」(比較検討のための素材)としてこの意見を引用してみた。原発問題に関するかぎり,民進党の脚を引っぱって止まない連合は,原子力村になかに自分の脚もドップリ突っこんだまま抜くこともできないでいる。いずれにせよ連合は,大企業の労組やその組合員たちの利害を正直に反映させた方針にしたがい運動をしている。
= 参考になる説明 =

 「御用組合」とは英語で “company union” と書くが,黄色組合 (イェロー・ユニオン) ,会社組合ともいわれている。使用者の意のままになるような従業員組合である。労働組合は,使用者に対し自主性を保つべきであるが,組合幹部が買収されたりして,組合の結成や運営の意思決定,組合の人事などが使用者の都合のよいように動かされる場合がある。
 註記)https://kotobank.jp/word御用組合-66378 参照。

 「企業別組合」(enterprise union)とは,企業内組合ともいい,企業単位で所属従業員により組織された労働組合をいう。企業の枠をこえた横断的な職業別組合および産業別組合と対比される。日本の労働組合は大多数がこの形態をとり,企業別組合の連合体が産業別組織をつくっている場合が多い。
 註記)https://kotobank.jp/word/企業別組合-50146 参照。

 日本の労働組合においては,企業内組合であるがゆえに会社組合の性格も併有・共存させているといっても,反対する専門家(労働問題研究者)はいないはずである。
 そういえば『労働貴族』という言葉もあった。あるブログの題名には,こういうものがあった。民主党政権時代における記述の題名である。「労働貴族,三日やったら辞められん。その貴族の親分にわざわざ総理大臣が訪問して謝罪。総理より立場が上なのね。」
 註記)『報道を斬る!(旧デイリー・メディアチェック)』,http://houdoumimamoru.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-17ad.html この記述は,労働貴族(階層:社会集団)が実在する日本社会の事実を具体的に指摘している。

 要は,連合という労組上部団体は,労働者側の立場においてみるとき,そのエリート的な組織集団性がきわだっている。とくに非正規労働者群には縁遠い。労働組合の組織なのだから,基本的な政治路線として反体制派であったところで,それじたいにおいては,「労働者・サラリーマン」の「生活と権利の改善・向上ため」のその路線なのであれば,なにも悪いことはないはずである。

 ここではあえて,以上のごとき論点からは離れて現実的な評価をしてみるに,連合は「労働組合〔の総代表である上部組織〕の立場からする」「本来の機能」を果たしえていない。

 インタビューを試みた担当の記者は,そのあたりを突っつきたい気分を感じさせていた。とりわけ,原発問題に対する連合の基本姿勢は,時代に逆行する立場でしかなく,また原発問題に対する考え方にも疑問が抱かれる。

 なお,本ブログ内では,20世紀中には滅亡するのではないかという窮地まで追いこまれていた日産自動車と,この労組関連の問題をとりあげ,議論したことがある。参考にまで読んでもらえれば幸いである。

 ※-1 2015年03月20日,主題「日産自動車を潰したのは誰か」,副題1「企業別労働組合の弱点」,副題2「塩路一郎の歴史的回顧談」 

   ※-2 2015年03月24日,主題「日産自動車の今昔」,副題1「会社経営は経営者しだいという普遍的真理」,副題2「石原 俊,塩路一郎,カルロス・ゴーン」 


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