In Deepさんのサイトより
http://indeep.jp/diary-of-nuclear-threat-and-on-the-beach-1957/
<転載開始>

   

2017年8月10日の米国CBSニュースより

CBS Chicago

先日、アメリカのシカゴ市が、ウェブサイトを通じて「核攻撃に遭遇した際の正しい行動」というものを文書で提示していました。

冒頭の CBS ニュースはそのことについて報じたもので、今回はそのシカゴ市のウェブサイトの内容をご紹介しようかと思いますが、それだけでは内容的にやや曖昧な部分がありますので、もう7年前になる In Deep の過去記事ですが、

核攻撃を受けた際の対処法
 2010/11/01

というものの中で、核攻撃を受けた場合の対処について説明している海外のサイトを翻訳してご紹介したことがありますので、それなどの内容も含めて補足しておきたいと思います。

核爆発の際の放射線の性質を曖昧でもいいので正しい方向で知る

ところで、今は北朝鮮とアメリカの問題などもあるせいかもしれないですが、わりとさまざまな海外のサイトで核戦争についてのことなどにふれているものを目にするのですが、先日 1957年のアメリカの小説『渚にて』を引用している下の記事がありました。

zerohedge.com

核戦争の雰囲気と「渚にて」を同列に書いているわけですけれど、その「渚にて」というのは下のようなものです。

渚にて – Wikipedia

『渚にて』(英: On the Beach)は、ネビル・シュートによって、1957年に書かれた小説である。

第三次世界大戦が勃発し、核爆弾のコバルト爆弾による高放射線曝露で北半球は壊滅した。

深海で潜行中だったために核戦争を生き残ったアメリカ海軍のスキップジャック級原子力潜水艦スコーピオン号は、放射線汚染が比較的軽微で南半球に位置するオーストラリアのメルボルンへ寄港する。

そこでは戦争の被害を受けず多くの市民が日常を送っていたが、放射線による汚染の脅威は徐々に忍び寄っていた。(略)

汚染の南下が確認されて人類の滅亡が避けられないと認識されると、多くの市民は南進による延命を選択せず、配布される薬剤を用いて自宅での安楽死を望み、死を覚悟しながら残りの人生を楽しむ。

つまり、核戦争を伴う世界大戦によって「世界は徐々に放射能に汚染されて滅びていく」というようなことが書かれてあるわけですけれど、実際には、

「核戦争ではそんなことにはならない」

のです。

というか、なりようがないのです。

この小説では「コバルト爆弾」という特殊な(実在しない)兵器が描かれているためにこのようなことになっていますが、架空のコバルト爆弾で使われるコバルト元素は、半減期が5年以上で、つまりそのような期間において有害な放射線を出し続けるということになっています。そして、それにより「被害が長期間続く」ということになるのですが、この小説から 60年経った今も、そんな武器はこの世にないです。

作ることができないのではなく、「そんな兵器を作っても仕方ない」ので、作られていません。

そして今後も出ません。理由は、「攻撃する相手の土地が長く有害化される武器は戦争に不向き」だからです。戦っている相手の土地に自軍を派遣できなくするような武器は、戦争において最も意味のないものです。

なので、映画や小説で描かれる、こういう「核の影響が長く続く」というものは幻想に近い概念で、現実に起き得る核攻撃や核戦争はそういうものではないということを知っておたいほうがいいようにも思います。

そもそも、現実での放射能に関しての概念をある程度知っておかないと、本当に核戦争が起きた時に、ただただ闇雲に恐れるだけということになってしまいかねません。恐れていては対処ができません。自分も家族も守ることはできません。

いずれにしても、このような、

> 放射線による汚染の脅威が徐々に忍び寄る

という認識は正しくない・・・というより、そういうようなことは目指そうとしても目指せないものだと思わざるを得ません。

数値的には、核爆発から2日後くらいには、ほとんど被害のないレベルまで放射線量は減少します。具体的には、爆発 49時間後で 100分の 1の放射線量に減少するとされています。

もっとも、1950年代のアメリカ軍がおこなっていた……おそらく兵士を使っての人体実験の意味も含んでいた核実験などのように「まだキノコ雲が上がっているのに、そこに向かって前進する」というようなことで被害がおこらないわけがないわけで、そういうものと、「核爆発から数十時間後とか、数日後の状況」とを同列に扱うわけにはいかないとは思います。

1950年代のデザートロック演習でキノコ雲に向かって前進する米軍兵士

nofia.net

この状況の兵士たちの被爆は深刻なものだったはずで、後述しますが、この状態は、放射線から出る、

・アルファ線(α線)
・ベータ線(β線)
・ガンマ線(γ線)

のすべての影響を受ける形になってしまっていると思われます。

 

いろいろ細かいことはともかく、地球そのものは何が起きても大丈夫ですので、それよりも各自で、あるいは各ご家庭でおこなえる対策を念頭において生活されるのも悪くない時代かと思います。

私は、子ども(小学6年生)にも、後ほど書きますセブン-テン・ルール(seven-ten rule)という「放射線の量は7時間ごとに 10倍ずつ減少する」という原則などをたまに覚えてもらっています。

これは単純に、子どもたちは私たちより長く先に生きる可能性が高いためで、それだけ人生において核戦争を同時代で経験する可能性があると思わざるを得ないからです。

現実として、この後の世界で、未来永劫、核兵器がまったく使われずに何百年も何千年と先に進んでいく未来がある……と……本当に本気で考えられるでしょうか。

今は起きないでしょうけれど、私の子どもたちの時代のどこかで起きるかもしれないし、あるいは「親子同時に経験する」かもしれないです。

というわけで、まずは、8月10日に、シカゴ市のオフィシャルサイトに掲載された「核の脅威に際して」という記事をご紹介します。

きわめて基本的なことが書かれていますが、その後にこちらでいくつか補足させていただこうと思います。

ちなみに、どんな状況でも「完全な爆心地にいた場合」は、対処も何もあるわけもなく、ここにあるのは「そうではない場合」です。

 


Nuclear Threat
City of Chicago 2017/08/10

核の脅威に際して

核爆発は、激しい光と熱、有害な圧力波と広範囲の放射性物質を伴う爆発であり、その影響で大気や水、そして土地を数キロ以上に渡って汚染する可能性があります。

核に関しての事象が起きた場合、可能な限り放射性物質を避けることが重要となります。

専門家たちは、現時点では、核攻撃は他のタイプの攻撃よりも起こりにくいと予測していますが、そのようなテロの発生の可否を予測することもまた不可能です。

そのため、核事象が起きた場合についてのアドバイスとして、世界保健機関(WHO)などが提唱する以下を念頭において下さい。

核爆発が発生した場合にその近くにいた時

・目を傷つけないように目を伏せて閉じてください。

・顔を下向きにして地面に伏せ、体の下に手を置いて下さい。

・熱と2つの衝撃波が通過するまでその姿勢のままにして下さい。

 

爆発の時に屋外にいた場合

・スカーフ、ハンカチ、その他の布など口と鼻を覆うものを見つけ、覆います。

・換気された場所で衣服をブラッシングし、衣類のほこりを取り除きます。重要なのは、これをしている間、口と鼻を必ず覆うことです。

・避難所、地下室、または他の地下に移動してください。好ましくは、風が吹いている方向から離れること。

・衣類は汚染されている可能性があるため、脱いでください。 可能であれば、避難所に入る前にシャワーを浴び、髪を洗い、衣服を交換してください。

 

すでに避難所または地下などにいる場合

・爆発による煙が通過したことがわかるまで、口と鼻をスカーフやハンカチなどで覆います。

・換気システムを遮断し、ドアや窓を密閉します。 煙が通過した後、ドアや窓を開けて空気が循環できるようにします。

・当局が安全だと言うまで避難所や地下内部に留まってください。

・情報とアドバイスについては、地元のラジオやテレビから得てください。 当局は、避難所に滞在するか、より安全な場所に避難するようかを指示する場合があります。

・外出する必要がある場合は、湿ったタオルで口と鼻を覆います。

・貯蔵された食べ物と飲料水を使用すること。水道水は飲まないでください。

・傷がある場合、その傷口をきれいに洗ってください。

 

避難勧告を受けている場合

・テレビやラジオ、インターネットで、避難する時間、使用する経路、一時的な避難所、従う手順について公式のニュースと指示を確認してください。

・退室する前に、窓やドアを閉じてロックし、空調、通気孔、ファンを止めてください。

・避難する時は小さな旅行バッグ(Go Bag)を持って下さい。


 

ここまでです。

この中で、「口と鼻を覆う」ことが何度も書かれていますが、これは実は大変重要なことですが、それらの理解として、補足として、まず「核爆発で放出される放射線の種類と、その防御法」を記しておきます。

注意すべきは、アルファ線、ベータ線、ガンマ線の3種類ですが、それぞれ体内に入った場合には被害がありますが、それについて、過去記事「核攻撃を受けた際の対処法」から抜粋します。

放射線のタイプ

核放射線は、3種類の主要な放射線を含んでいる。

アルファ線
紙、あるいはヒトの皮膜によって遮ることができる。アルファ粒子が吸入されるか、口から摂取されるか、あるいは傷などを通して体内に入った場合、組織と細胞に損傷を引き起こすことがあり得る。

ベータ線
皮膚、あるいは、より厚いシールド(木のような)で止めることができる。吸入されるか摂取された場合、ベータ粒子が内臓に重い損傷を引き起こすこ可能性がある。また、目の損傷や皮膚に火傷を引き起こすことがある。

ガンマ線
ガンマ線はもっとも危険で、人間の体の全身を透過することができ、体内のあらゆる器官と血液、骨を通して全身の細胞に損傷を与える可能性がある。放射線は神経細胞を刺激しないので、放射線が体に吸収されても、何らかの感覚を感じることはない。高水準のガンマ線に晒された場合は放射線障害に陥るか、あるいは死に至る。ガンマ線を遮断して身を守るためには、暑く遮断されたシェルターが必要となる。

このようになっていまして、つまり、

・アルファ線 → 皮膚の皮で遮られる。
・ベータ線 → 皮膚で遮られる。

ということになり、これらに対しては、人間の皮膚と皮膜が最大の防御の役割を果たすようなのです。

しかし、さきほどのシカゴ市のサイトに「目と鼻と口を守る」ことが繰り返し出てきたのは、目は皮膜に守られていないためと、口と鼻の中も皮膜で守られていないことに加えて、「口と鼻を覆っていないと、呼吸などと共に内臓に放射線が入る」からです。

特にアルファ線などは簡単な防御で遮られますので、口と鼻を覆うことは侮ってはいけないと思われます。

 

そして、問題のガンマ線。

ガンマ線は、いろいろなものを透過していく性質を持つので、現実にはそう簡単には遮断できないのです(ですので、核シェルターというものが存在します)。

ただ、部屋の中に緊急で「簡易型核シェルター」を作ることは絶対に不可能とまでは言い切れないです。

本物のシェルターのようにはいかないですが、「ガンマ線は、どんな素材だと、どれくらい遮るか」を知っていれば、それに準じれば、ある程度のものは作れるかもしれません。あるいは、これを知っておけば、どのような場所に避難するのがいいかということを、即断できるかもしれません。

それを参考までに記しておきます。

アメリカのサイトの「核放射からの防御」(Nuclear Radiation Shielding Protection)というページのもので、書かれてある数値はある程度正しいと思われます。

このページでは、保護係数という数値を使って、さまざまな素材の放射線からの保護能力を評価していますが、ここには、

「ガンマ線の量を 1000分の 1に減少させるにはどのくらいの厚さの壁が必要か」

という数値を書きます。

放射線が 1000分の 1に減少すれば、ほぼ影響はないと言えるかと思います。

ガンマ線に対しての保護係数( 1/1000)

・鉛 10センチメートル

・鋼 25センチメートル

・コンクリート 60センチメートル

・土 91センチメートル

・水 182センチメートル

・木材 279センチメートル

ということで、ここで現実的なのは「地下」(土の中にあるため)と、あるいは、分厚いコンクリートの壁があるビルなどの建物も、窓だらけでないのならば、それ自体ある程度のシールドになると言えるかと思います。

また、雑誌や新聞などの紙は、木材よりもさらに防御効果が弱く、3メートル以上の厚さが必要なようで、現実的とはいえないものです。ないよりはマシだと思いますが。

これをご念頭にしていただいて、先ほどリンクしました過去記事から「屋内に緊急シェルターを作る方法」を抜粋しておきます。

屋内の臨時のシェルター化

1. 適当な場所に、大きくて頑丈な作業台かテーブルを置く。テーブルがない場合、箱や家具の上にドアなどを置いてテーブル状のものを作る。

2. テーブルの上と横にできる限りの遮断物を積む。それは、家具、キャビネット、電気機器、本などが詰まった箱、埃や砂を詰めた枕、食べ物の詰まった段ボール、水、コンクリート、ブロックなど。これを回りを取り囲むように置いていく。

3. 作業がある程度終了したら、そこにいる全員がただちにテーブルの下に入り、内部から密閉する。

4. 中から空気を入れるための 10センチ程度の小さな空気穴を2つ残すか、ない場合は開ける。穴は両サイドに、ひとつは高い位置に開け、もうひとつは低い位置に開けることによって、空気の流れが良くなる。

5. この簡易シェルターには、放射線発見装置とラジオ、携帯電話、数日分から数週間分の水と食料、そして薬や公衆衛生用品を入れること。

となっていますが、一般のシェルターにしても、こういう避難にしても、「いつ出ればいいのか」ということが問題ですが、実は核兵器から出される放射能の性質から考えて、その期間は意外と短いのです。

その期間の参考のために、「セブン-テン・ルール」というものを書いて締めたいと思います。

約2日間、何とか凌げれば、その後は少なくとも放射線からの脅威は大幅に減っているはずです。このことに関しては 72年前に世界で唯一実際に原爆で攻撃を受けた場所の翌日の人々の行動と描写、などの風景を思い起こしていただいてもいいのかもしれませんが、それについて具体的にふれるつもりはありません。

 

セブン-テン・ルール(“seven-ten” rule)

核爆発の後、放射線の量は7時間ごとに 10倍ずつ減少する。

たとえば 500ラドのレベルは7時間で 50ラドまで下がり、そして2日後(49時間後)には 100分の 1の 5ラドまで減少する。

良いシェルターを持っているのなら、そこで7時間じっとしていれば生き残る可能性が高くなる。

今回はここまでです。

いつの日か、世界のどこかで、あるいは世界中でそういう事態を迎える時が来たとしても、最初からあまり悲観的にならずに、「放射線というものの性質と理屈」をある程度理解して、冷静に対処するほうが得策だと思われます。

現実の対処には怒りも恐怖も悲嘆も不要です。

<転載終了>