In Deepさんのサイトより
https://indeep.jp/holding-infants-can-affect-their-genes-eternally/
<転載開始>

   

2017年11月27日の米国科学メディアの記事より

Science Daily

赤ちゃんの一生の健康は、人生の最初の頃の「親との肉体的接触」で決まる

今回は、カナダ最大の大学であるブリティッシュ・コロンビア大学の医学部が発表した研究について、そのニュースリリースをお伝えしようと思います。

その内容のテーマは短く書けば、

「赤ちゃんをたくさん抱っこするのとしないので(肉体的接触が多いか少ないかで)、赤ちゃんの遺伝子に大きな差が出ることがわかった」

というものです。特に、「体の免疫と代謝に関係する DNA 」に明らかな差異が出ることがわかったのでした。

研究は、生まれて五週目の赤ちゃんの親たちに、子育ての中での記録をとってもらい、赤ちゃんの様々な感情や状態、そして、「どのくらい親と肉体敵に接触していたか」ということを記録してもらうところから始まりました。

そして、「その4年6ヶ月後」に、成長したその子どもたちの DNA を採取して調べたところ、

「親との接触の時間の差が、DNA の生物学的的な優劣と比例していた」

ということがはっきりと示されたというものです。

「5週目の赤ちゃんの時に、たくさん抱っこ(肉体的接触)された赤ちゃんのほうが生物学的に優位な遺伝子だった」と。

これは、ブリティッシュ・コロンビア大学の医学部小児科において、「早い時期からの健康のスタート」というものは何ということで調べるプロジェクトでわかったことだそうで、「これが医学的にわかったのは今回が初めて」ということだそうです。

さらには、他の動物類での実験などと照らし合わせた時に、「この子どもの時に生じる DNA の差異は、その人の健康に一生影響するかもしれない」というところにまで可能性が及んでいます。

つまりは、「自分の子どもをできるだけ健康にしたいのなら、生まれてすぐの頃に、できるだけ肉体的接触をたくさんもってあげること」ということになりそうなのです。この「健康」には、肉体的なものだけではなく、精神的、心理的な健康も含められます。

まあ・・・普通の感覚では、「赤ちゃんをたくさん抱っこしたほうがいい」なんてことは、なんというか、医学的にどうだこうだ言われなくてもいいことのような気もするのですが、しかし現実として、特に最近の日本において、「子どもへの愛情の欠如」というようなものが増大しているようにも見えなくもない面はあります。

これは単純にデータの数値だけで語ることのできるものではないとはいえ、たとえば、日本の児童虐待の件数は、下のように過去 20年くらいで何十倍にもなっています。

日本の児童虐待の相談対応件数の推移(1990年-2014年)
児童虐待相談件数

いろいろな事情があるだろうとはいえ、この最近数年間だけでも「数年で倍のペースで増え続けている」というのは、やや問題のあることのようには思います。

人の人生を非難することはできないにしても、どうしてこんなことになっちゃっているのだろうなあという疑問は感じます。

そして重要なことは、今回のカナダでの研究が示すことは、「人生の最初の時の親からの愛情が、その人の体をずっと支配する」ということでもあります。

 

エピジェネティクス的に変転し続ける子どものDNA

人間の DNA は、ある程度の大人になると不変なのかもしれないですが、子どもの頃は「変化し続ける」ことが最近わかってきています。

今年5月には、アメリカ・ノースウェスタン大学の研究者たちが、「子どもたちの DNA が《子どもの頃に過ごす環境で変化する》」ことを発見しています。

下は、その医学論文のページです。

pnas.org

難しいタイトルですが、幼少時に肉体的・精神的に苦しい経験をした子どもたちと、そうではない子どもたちとの間に「 抗炎症などに関与する DNA の変化の差異がある」ことが明らかとなったというものです。

子ども時代の苦しい経験、つらい精神的経験は「良くない変化」を与えることがフィリピンでの大規模調査でわかったというものでした。

ここでいう「変化」というものは、「曖昧なものではない」ということに注意していただきたいです。つまり、 DNA の変化を伴っているわけですから、「その人の体が根本的に変化した」ということなのです。

こういう研究が今いろいろと出ていまして、結局、遺伝子科学が明らかにすることは、子どもに対して最も大事なことは「親や周囲の人間からの愛情」であり、そして今回のブリティッシュ・コロンビア大学の研究は、その中でも、

「生まれてすぐの赤ちゃんをたくさん抱っこすることが、その子どもの人生を健康にする最大の要点」

だということがわかったということになります。

この研究が進めば、たとえば病弱で生まれて、お母さんが赤ちゃんを抱っこできないような病院の環境などがあるとすれば、それを改善することで、良くなるというようなケースも出てくるかもしれません。

そして、これから赤ちゃんを生むことになるような方々は、赤ちゃんが生まれて最初に頑張ることはそれだけ、つまり「たくさん抱っこしてあげる」ということが、その子の一生の健康に最も影響することだと認識していればいいということなのではないでしょうか。

こういうようなところにまで到達していて、そして「実際に生活に役立つ」というい素晴らしい医学もあるのですから、今後もいろいろと医学の良い面が世にたくさん出てくるといいなと思います。

ちなみに、過去記事の、

「革命」(3) – 革命的行動の最上位は「子どもたちへの無条件の愛」を獲得した社会に戻すこと
 In Deep 2015/07/12

というものの中に、「死ぬほど愛されて育った子どもは、将来きっと同じように子に接する」というセクションがあり、まあ何といいますか、愛情が次の世代の愛情をもたらしていくというようなことを書いたのですが、このことは、「健康を次の世代にもたらしていく」ということでもあったのだなあと今思います。そして、その逆の社会は、「不健康を次の世代にもたらしていく」と。今の時代がどちらに近いかはわかりませんが、未来を考えますと、なかなか切ないものがあります。

そういえば、その記事に「当時の外国人が描いた江戸時代のお父さんの絵」というものを載せまして、下がそれですが、江戸では(暇なお父さんが多かったせいもあるのかもしれないですが)いたるところで、こうやってお父さんが赤ちゃんを抱っこしていたようです。

外国人が描いた「赤ちゃんをあやす江戸時代の父」

逝きし世の面影

 

というわけで、ここからブリティッシュ・コロンビア大学医学部 ニュースリリースです。


Holding infants – or not – can leave traces on their genes
ブリティッシュ・コロンビア大学医学部 ニュースリリース 2017/11/27

「乳幼児を抱っこするかしないか」は、その赤ちゃんたちの遺伝子に影響する

ブリティッシュ・コロンビア大学と、その小児病院研究所の新しい研究によると、乳児と親との密接な接触が、分子レベルで子どもに影響を与えている力を持つことがわかり、子どものその生物学的な影響は 4年後には出現していることも明らかになった。

この研究では、乳幼児の時に、親(あるいは世話をしている大人)との肉体的な接触が少なかった幼児たちの細胞の分子プロフィールが実年齢より未熟であり、生物学的に遅れている可能性を示した。

幼児期のこれらの発達の違いが、成人になってからの健康に影響するかどうかは今のところ明らかになっていないが、この変化は、遺伝子発現に影響を及ぼすエピゲノム(生化学的変化)に深く根づき、生涯にわたって影響を及ぼす可能性を示している。

この発見は、胃是か行われたげっ歯類の同様の研究に基づいているが、生命の早い段階での肉体的接触という単純な行為がその生体の一生全体に影響を及ぼすかもしれないということが、ヒトにおいても示された最初の研究である。

ブリティッシュ・コロンビア大学病院の小児研究所で、子どもたちが健康に人生をスタートさせられるためのプロジェクト「ヘルシー・スターツ(Healthy Starts)」を指導している遺伝学教授であるマイケル・コボー(Michael Kobor)博士は「小さな子どもでは、エピジェネティックな老化が遅いと、あまり好ましくない発達の進展が反映されると考えられます」と述べる。

医学誌『デベロップメント・アンド・サイコパソロジー(Development and Psychopathology / 発達と精神病理学)』に掲載された論文によれば、今回の研究には、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州の 94人の健康な乳幼児たちが参加した。

ブリティッシュ・コロンビア大学の研究者たちは、5週齢の乳児の両親に、幼児の行動(睡眠、騒ぐ、泣く、摂食など)の日記を保管しておくように依頼した。その中には、親と子の身体的接触を伴う世話の時間も含まれていた。

そして、その子どもたちが 4歳半になった時に、彼ら彼女らの DNA を頬の内側から提供してもらい、それをサンプリングした。

チームは、 DNA メチル化と呼ばれる DNA の生化学的変化を調べた。そこでは染色体の一部に炭素と水素でできた小さな分子が関連付けされる。これらの分子は、各遺伝子の活性化を制御し、細胞の機能に影響を与えるのを助ける「調光スイッチ」として働く。

メチル化の程度、およびメチル化が DNA 上のどこで特異的に起こるかは、特に小児期における外的条件に影響を与える可能性がある。 これらのエピジェネティックなパターンは、私たちが年をとるにつれて予測可能な状態に変化する。

研究者たちは、5つの特定の DNA 部位で、親との肉体的接触が高い場合と、肉体的接触が低い場合とのメチル化の「差異」が一貫して存在していることを見出した。

これらの部位のうち2 つは遺伝子内にあり、免疫系において役割を果たすもので、もう 1つは代謝に関与している。

(※訳者注 / 親との肉体的な接触が多い乳幼児ほど、4歳の時の免疫と代謝が良好であり、接触が少ないとその逆になる傾向がはっきりとしている)

しかし、これらのエピジェネティックな変化が子どもの発達と健康に及ぼす場合の、それ以上の影響の具体的な部分はまだ分かっていない。

乳幼児の時により高い苦痛を経験し、親との肉体的な接触が少なかった小児は、「後成的年齢」を有し、彼らの実際の年齢( 4歳半)を考えると、予測よりも低かった。いくつかの最近の研究では、後成的年齢は小児の不良な健康状態に結びつく。

研究者たちは、今後これら「生物学的な未熟さ」が見出される子どもたちの健康、特に心理的発達に大きな影響を及ぼすかどうかを研究していくつもりだとしている。

主任医師のサラ・ムーア(Sarah Moore)氏は以下のように述べた。

「さらなる研究で今回の発見が確認された場合、体の弱い乳幼児たちのために、積極的な肉体的接触を提供することの重要性が強調されることになると思います」




<転載終了>