芳ちゃんのブログさんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.jp/2018/02/nato_15.html
<転載開始>
国際政治はまさに奇奇怪怪である。

ヨーロッパにおいてはロシアを悪党に仕立て上げる試みが米国の指導の下に続いている。

20142月のウクライナでのマイダン革命以降、さまざまな試みが実行され、短期的には西側に有利な成果が上がったかのように見えるが、その多くは化けの皮が剥がれる結果となった。

20147月にはマレーシア航空MH17便撃墜事件の悲劇が起こり、2016年秋の米大統領選に絡んで始まったロシアゲート事件はその後終わる気配を見せない。また、英国政府の国防相を務めるギャビン・ウィリアムソンは国防予算を獲得するために、ロシアがサイバー攻撃を行い、英国のエネルギー・インフラを破壊して、何千人もの生命を奪うという筋書きをでっち上げた。 

さらには、つい最近のことではあるが、オランダのハルバ・ゼイルストウラー外相はロシアのプーチン大統領がこう言った、ああ言った、自分はその場に居て見聞したと述べていたが、それが真っ赤な嘘であったことが明白となり、オランダ議会でマルク・ルッテ首相の不信任投票にまで発展したことから、ゼイルストウラー外相はその責任をとって辞職に追い込まれたと報じられている [1]

これらの一連の出来事を眺めてみると、これらはすべてが米国のディープ・ステ―ツの思惑を忖度した行動である。この文脈でこれらの政治的な出来事を眺めてみると、個々の出来事がより大きな政治的ジグソーパズルにぴったりと納まってくる。

オランダの外相がついた嘘を承知の上でロシア・バッシングを継続し、そのボスであるオランダ首相がそれを放置していたが、国内政治上都合が悪くなったことから外相を更迭した。もしも、政府にとって都合が悪い住民投票が予定されてはいなかったとしたら、この嘘を真面目に見直すことはなかっただろうし、当人も外相の職を辞することはなかったのかも知れない。残念ながら、そこにはひとかけらの倫理感も見られない。

政治家が喋る内容はどこまでが真実であって、どこからが憶測や作り話であるのかは、多くの場合、素人のわれわれが判断することは難しい。前後の脈絡とか第六感に頼るしかない。あるいは、多くの情報を漁って、検証しなければならない。そして、時が流れ、ほとぼりが冷めた頃になってその真相が浮かび上がって来ることが多い。

今日はこのオランダ外相に関する記事 [1] を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。
<引用開始>

オランダのマルク・ルッテ首相は、今週(211日の週)、議会で不信任投票にかけられることになった。理由は閣僚のひとりである外相がロシアのウラジミール・プーチン大統領に関して、過去の2年間、危険極まりない嘘をついていたことをついに白状したからである。

ハルバ・ゼイルストラー外相は、月曜日(212日)、汚名の下に辞職した。彼はプーチンが「大ロシア」構想を作ることを意図していたことを個人的に聞いたと喧伝して来たが、それは嘘であったとついに認めたのである。 そして、オランダ議会ではルッテ首相に対する「不信任動議」にまで発展した。最終的には、ルッテ首相はこの政局を生きながらえた。 しかしながら、もしも多数が首相の指導力を否認したならば、彼の連立政権は崩壊していたことだろう。

たとえルッテ首相が首相として生き残ったとしても、オランダの政権に与えられた打撃はそう容易に修復できるものではなさそうだ。今週暴露された醜聞のもっとも重要な点は、オランダ政府の上級閣僚がロシアを中傷し、国際関係に水を差し、すでに緊張が高まっている地政学的関係をさらに悪化させようとする意図の下に、軽率にも真っ赤な嘘をついたことにある。

ゼイルストラーは、2年前の2016年、ロシアの指導者であるウラジミール・プーチンが「大ロシア」の再建を自慢気に喋っていたと主張した。この「大ロシア」にはウクライナ、バルチック諸国およびカザフスタンが含まれると言う。

今回辞任したオランダのトップの外交官はプーチンが2006年にロシア大統領の別荘(夏の家)で要人らとの会合を持った際にプーチンが喋るところを聞いたと述べていた。

今週、ゼイルストラーはついに白状し、実際には報じられている集会には出席してはいなかったことを議会で認めたのである。しかしながら、彼は依然として彼の親友がお客さんのひとりとしてプーチンの別荘に居合わせていたこと、そして、彼からこの「大ロシア」計画の話を伝え聞いたと述べている。それはそれとしても、自白をした嘘つきの言葉をいったい誰が信じてくれるのだろうか?

ゼイルストラーのボスであるルッテ首相も自分の外相は「大きな間違い」を仕出かしてしまったが、「嘘をついたこと自体は取返しがまったくつかないような罪悪ではない」と言って、この大失敗を何とか鎮静しようとした。

ルッテ首相は、今、自分の無頓着な考え方がもたらした寝覚めの悪さをたっぷりと味わっているところであろう。確かに、彼の政府は深刻な嘘をついているところを捕まってしまったのである。これはヨーロッパが戦争に突入するのか、それとも平和を維持するのかという極めて基本的な政治テーマにつながる。

不祥事を巻き起こしたゼイルストラー元外相はロシアの外交政策をひどく歪曲して伝えたことで非難されているのだ。 

米国とヨーロッパからの支援の下に行われたウクライナにおける2014年の非合法的なクーデター以降、米欧の商業メディアはヨーロッパにおけるモスクワ政府の「拡張主義」や「侵略」について非難を続け、反ロシアの宣伝を執拗に繰り広げて来た。

怒涛のような「ロシア恐怖症」がワシントン政府やペンタゴン、NATO、および、EUによって喧伝され、対ロ関係はすでに30年も前に終わっている「冷戦」以降では最悪の事態となっている。

したがって、ゼイルストラーの行為は単に「間違って発せられた」嘘として留まるわけではない。彼が公言した情報の歪曲は地政学的関係をさらに深刻にしてしまったのである。中傷が満載されたこの種のコメントは戦争をも招きかねないとして議論をすることが可能だ。これはニュルンベルグの戦犯法廷の法理においては主要な犯罪に相当する。

嘆かわしいことには、オランダ政府の上級閣僚によってもたらされた嘘はオランダ政府だけに限られるわけではない。ポーランド元外相のラデク・シコルスキーも2014年にロシアに関してまったく同じような、中傷的な嘘をついたことを想い起こして貰いたい。

シコルスキーはロシアに対抗してNATO 軍を増援することに熱心な支持者であるが、報道によると、2008年に彼はウラジミール・プーチンが秘密裏にウクライナ領を割譲する計画を練っていることを個人的に聞き及んだと主張したのである。プーチンがウクライナをポーランドとロシアの間で分割するという取引を当時のポランド首相であるドナルド・タスクに提案したとシコルスキーは述べた。

米国のメディアによって出版されたこの主張について、シコルスキーは速やかに撤回せざるを得なかった。 そして、問題のプーチンとの会合に関しては、彼は出席してはいなかったことを認め、彼の言葉は「超現実派的な冗談」を意図したものであったと述べた。

しかし、これは冗談でもなければ、間違いでもない。これは非常に深刻な情報操作なのである。しかも政府高官が関与しており、ロシアとの緊張や戦争を煽り立てようとするものである。シコルスキーの顕著な点は「American Enterprise Institute」と称される親NATO的なシンクタンクとの関りを持っていることだ。彼はアンネ・アップルバウムと結婚しており、彼女はワシントンポストのような大手メディアに向けて反ロ宣伝の長い論文を書くことを生業としている。

ゼイルストラーやシコルスキーはロシア恐怖症を鵜呑みにする他のヨーロッパ諸国の外相らの仲間である。例えば、英国のボリス・ジョンソンであるが、彼は今年の始めに異様な主張を唱えた ロシアが英国のインフラを「狙っている」と述べたのである。フランス外相のジャン・イヴ・ル・ドリアンはシリアにおける化学兵器の使用に関してロシアを非難したが、エマヌエル・マクロン仏大統領は、今週になって、フランス政府はシリアにおける化学兵器の使用に関しては実際には何の証拠も掴んではいないことを認めた。 

マクロン自身もロシア恐怖症に一役買っている。彼は、何の証拠もなしに、昨年の大統領選においては自身の選挙運動がクレムリンの工作員によって不正侵入されたと主張した。それ以降、彼はロシアのニュース・メディアが彼の記者会見に出席することを拒否している。

これらの政府高官らは無責任にもすべての事柄についてロシアを悪魔視することに熱心である。これらの行為はワシントン政府やバルチック諸国の政治家が発する根も葉もない言動と結びつく。例えば、リトアニア大統領のダリア・グリバウスカイテは、最近、ロシア領土のカリーニングラードに設置されているロシアのイスカンダール・ミサイルはヨーロッパの半分の領域を狙っていると述べて、 警告を発した。そして、ペンタゴンが最近作成した「核態勢の見直しにおいて、この警告はジェームズ・マチス国防長官によってさらに誇張されている。

嘘偽りに満ちた高官らによる熱っぽい主張に基づいてヒステリー状態と化したこの風潮は正常な政治的、ならびに、外交的な関係に悪い影響を与えている。巡り巡って、これはウクライナの内戦を悪化させるだけではなく、ヨーロッパにおいては広域にわたるロシアとの戦争を導きかねないのである。

更迭されたオランダ外相はプーチンに関しての嘘をなぜ今週白状したのだろうかという疑問が湧くかも知れない。その問いかけは非常に当を得ている。

その答は実はより大きな問題であって、オランダ政府や同国のNATO同盟諸国が曝されている信頼性の危機にもつながっている。それはロシア恐怖症を煽って遂行されているプロパガンダ戦争の全体に関わって来るのだ。

来月、オランダでは住民投票が行われる。これは一般大衆の間で行われる電子的な通信内容について政府の監視機能を強化するべきかどうかを問うものだ。スパイ行為の強化についてオランダの一般大衆の賛成票をより多く獲得するために、オランダ政府は、今、ロシアの「不正介入」や「干渉」という言い古された主張に頼ろうとしているのである。 

20152016年の米大統領選の最中に米民主党本部のデータベースに不正侵入したと言われているロシアのハッカーに対してオランダのシークレット・サービスが不正侵入を敢行したと同国のメディアが報じたことは非常に意味深であると思う。何時ものことではあるが、この主張を裏付ける証拠は何も提示されなかった。他の信頼できる報告によれば、この米民主党本部のデータベースは外部から不正侵入を受けたのではなく、民主党本部内の職員がデータをリークしたのだとわれわれは認識している。つまり、ロシアを中傷しようとするオランダの諜報機関のストーリーは極めて疑わしいと言わざるを得ない。(注:米民主党本部のデータべースに対する不正侵入に関しては、2017729日に掲載した「元諜報専門家のグループがロシア人によるダッキングに関して疑問を表明」を参照ください。)

しかし、オランダの諜報機関によって遂行されたと言われているこの「善行」はオランダの一般大衆に取り入って「誠意」を示すひとつの便法としてメディアに売り込まれたものであろう。その目的は「極悪なロシア人」から自分たちを「守る」には来月行われる住民投票で政府によるさらに強力な市民監視について選挙民の支持を得なければならないことにある。

もしもオランダの外相がさらに続投をしていたとするならば、彼がついた嘘が恥ずかしながらも3月の住民投票の近くになってから一般大衆の間で知れ渡ることにもなりかねず、そのような事態が将来したら、一般大衆はスパイ機能を強化しようとする政府の要望を拒絶することになろう。

多分、政府当局の高度な政治的判断として、ロシアに関してついた嘘に関わる一連のストーリーからは一刻も早く抜け出すために、今ここで外相を辞任させることになったのであろう。

この更迭の時期がどのように説明されようとも、ヨーロッパにおけるロシアの拡張主義に関する嘘をオランダ政府が公に認めたという事実は「ロシア恐怖症」や「ロシアとの戦争」が米国やNATO同盟国であるヨーロッパ諸国の手によってどのようにして醸成されているのかに光を当てることとなったにである。

不幸なことには、ヨーロッパ諸国の政府の高官らは嘘や歪曲、あるいは、自分たちに都合の良い偏見に基づいて何百万人もの市民を戦火に曝すリスクを取ることには決してやぶさかではない。

この記事は最初に「Strategic Culture Foundation」にて出版された。

また、下記についても参照されたい:

<引用終了>


これで全文の仮訳は終了した。

多くの出来事や関連する要素をひとつの文脈の下に纏め、一見すると見過ごしてしまいそうな政治の世界における出来事を解説してくれたこの記事の著者に謝意を述べたい。実に秀逸な論評である。

著者は嘆かわしいことには、オランダ政府の上級閣僚によってもたらされた嘘はオランダ政府だけに限られるわけではないと述べている。

洋の東西を問わず、どこの国も同じような政治的状況を抱えている。日本も然りだ。個々の国の間の違いはそのスキャンダルが公に知れ渡っているのか、いないのかの違いだけだ。あるいは、現時点でそれに相当するようなスキャンダルが存在する、または、当面は見当たらないという違いだけだ。

このような現実の政治の姿を承知した上で国際政治の動きを読み取って行きたいと思う。

しかしながら、われわれのような素人にとっての最大の課題は国際政治を毎日のように追いかけようとすると、関連情報の量が余りにも多いという点ではないだろうか。一人ではとても手に負えない。

さまざまな代替メディアから入手できる情報に接していると、不思議なことには、これらの情報をさらに追跡せずに一日を過ごすことは出来なくなってくる。要するに、19日のブログ「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告 - アンドレ・ヴルチェク」でご紹介しているように、大手メディアによって形作られている「疑似的現実」と代替メディアが伝えようとする「本当の現実」との間に現れているギャップについてもっと知りたい、もっと調べてみようという意欲が湧いて来るのである。

「情報量が多すぎる」、「どこから手をつけたらいいんだ」とお思いの方が多いと思う。僭越に聞こえるのを承知の上で言えば、このブログを通じて一次的なスクリーニングを行った後の情報をお届けすることが何らかのお役に立っているのかも知れない。そうとは言え、もっとも大きな弱点はこのブログが扱うことが出来る分量は高が知れていることにある。投稿数は1ヶ月当たり4篇前後である。読者の皆さんには幅広く、積極的に関連情報を漁っていただきたいと思う。



参照:

1 Dutch Lies Over Putin’s Aggression Expose NATO War Agenda: By Finian Cunningham, Information Clearing House, Feb/15/2018

<転載終了>