社会科学者の随想さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1070396653.html
<転載開始>
 【21世紀を超えて22世紀までもこの地球においては,遺跡としてではなくて,「放射性物質が生きたままに汚染しつづける場所」が残されていく末恐ろしさ】

 【《悪魔の火》の因業の無限性は,人間側の力では阻止できない】


 ① 事前の議論-事故原発の廃炉は,とてつもなく長い旅路への覚悟が必要-

 本日の題名で記述する問題の対象は,1回では書き切れないとはじめから予想しているので,何回にかけて書いていくつもりである。

 本日,最初にとりあげる記事は『朝日新聞』2018年3月7日朝刊36面に出ていたが,広告の部分(段落)はいっさい入れない体裁でもって,この紙面全体を「特集記事の原発問題」に充てており,「3・11」東日本大震災によって誘発された「東電福島第1原発事故の3基(1号機・2号機・3号機)の今後」を吟味している。

 さきにこの紙面の全体の画像と,真ん中に配置されたその3基の画像とをかかげておき,以後における記述を分かりやすくしておきたい。なかでも右側の真ん中付近に記入されている「廃炉への道 課題は山積み」という「予定年表」に注目したい。

 いままではひとまず,2040年がこの廃炉工程・作業が終えられる時期であるかのように語られてきた。だが,この記入の内容では,2050年以降もさらに継続していくかもしれないという判断でさらには,「」がその延長を意味させる記号として記入されている。(画面 クリックで 拡大・可 ↓  )
『朝日新聞』2018年3月7日朝刊36面デブリ問題
 いままでなんども指摘してきた廃炉問題,それも東電福島第1原発事故現場のその廃炉「工程・作業」にかかる年数は,たとえば2040年「完了」であるかのような予定にされていた。けれども,これはかなりサバを読んだ(恣意的に短く解釈した)年数でしかない。
 本日夜7時のNHKニュースは,その完了予定の年次を「2051年」以降と放送していたが,これから時が進行するにしたがいその「完了」といえる時期は,ますます先送りされていくものと「予想して」おくのが,順当な解釈といえそうである。

 いずれにせよ,本当のその年数がどのくらいになるのか,まだ誰にも的確に予測すらできていない。原子力工学の専門家たち,それも原発再稼働に熱心な者たちでさえ,その点については実は,結局「いつになるかほとんど明示できない」というように説明するほかない事情にある。それ以外・以上については皆目,未知・不知の状態に置かれてきた。

 なんといっても東電福島第1原発の事故現場は,通常の廃炉「工程・作業」に入る以前に,まず「爆発事故を起こした3基もの原発の後始末」から始めねばならず,それを完了してからようやく廃炉そのものをに進められる段階を迎えられる。いつも指摘しているように,チェルノブイリ原発事故の現場は石棺化され,すでに2代目の石棺が「異様なりっぱな〈負の偉容〉」を誇っているが,それはこの事故現場が未来永劫的に近いという意味では,終わりがいつ来るか分かりえないまま「半永久的に一時的な始末」をされている。

 ところが,東電福島第1原発事故現場は「石棺化」といった処理方法は,被災者たちの猛烈な反対もあって採用できない事情もあって,ともかく事故現場の後始末からとりかかっているしだいである。だが,この後始末じたいのためだけにかかる時間の長さ(永さ)が,いったい,これからさらにどのくらいの期間になるのかといえば,いまのところその解答を適切に案内できる専門家がいない。

 「廃炉への未知 課題は山積み」という表現が意味するのは,この先,いったいどのようにしたら「通常の廃炉」工程・作業にまで到達できるのかさえ,不確定の要因だらけであることである。この種の報道がなされるたびに,廃炉が完了できる時期が何年になるのかについては,さっぱりよく理解できない報道がつづくばかりであって,しかもどんどん先延ばしになってきた。

 ②「〈東日本大震災7年 原発 燃料デブリ,調べるほど多難」(『朝日新聞』2018年3月7日朝刊36面)
 
 東京電力福島第1原発事故から7年。散乱したデブリの様子がようやくみえてきたが,事故の全容解明は遠い。

 1)  撮影は一部,取出し見通せず
 炉心溶融(メルトダウン)した福島第1原発:1~3号機では昨〔2017〕年から今〔2018〕年にかけ,原子炉格納容器の内部調査が本格化した。溶け落ちた核燃料(デブリ)の取出しや事故の解明には,デブリの状態や放射線量などの情報が欠かせない。だが,調査できた範囲はわずかで,デブリの姿も一部が垣間みえただけだ。
 補注)この報道の内容は,東電福島第1原発事故が発生してから7年後において,ようやく把握できてきた状況をしらせている。このような工事を進めるための前提条件じたいが,非常な困難を背負わされている。こうした現状は,ただ悲観的にならざるをえない〈事実の厳在〉を教えている。

 地道に努力をしていけば,それなりにわずかでも顕著な進展がみこめるとか,今後においてはなんとか工夫の余地も開けるとかいったごときに,事情の打開を期待させうる「事故後」の推移にはなっていなかった。原発が発生させる深甚・重大な事故の基本的な性質は,われわれに不安と心配を与えてきた。


 〔記事に戻る→〕 東電の解析によると,1~3号機のうち,もっとも溶融が激しいとみられるのは1号機だ。核燃料のほとんどが原子炉圧力容器の底を突き抜けて落ちた可能性が高いとされる。ロボットによる調査は,昨〔2017〕年3月にあった。作業用の足場からカメラを格納容器にたまった水中に垂らした。だが,砂のような堆積(たいせき)物が多く,その下にあるかもしれないデブリを撮影することはできなかった。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
『朝日新聞』2018年3月7日朝刊デブリ記事2
 もっとも調査が進んだのは2号機だ。昨〔2017〕年1月にまず遠隔カメラが,その後にロボット「サソリ」が格納容器のなかに入った。メルトダウンした圧力容器直下の様子が初めて明らかになり,足場が大きく抜け落ちて堆積物がこびりつき,いたるところに黒い塊が散乱している状況がわかった。

 さらに,遠隔カメラによる追加調査が今〔2017〕年1月にあった。圧力容器のなかにあった燃料集合体の最上部につくハンドルが,格納容器の底付近に落下しているのがみつかった。東電は,こうした状況から,長さが約4メートルある燃料集合体がほぼ溶けて圧力容器を突き抜けて落ちたと判断。周囲に散乱していた小石状の堆積物はデブリとみられると発表した。

 もっとも水が多くたまっている3号機には昨年7月,水中ロボットが投入された。茶色っぽい塊が,圧力容器の下部にある構造物からつららのように垂れ下がり,その下では溶岩のように積み重なっているのが発見された。これが福島第1原発で初めて確認されたデブリとなった。

 国と東電は,2021年に1~3号機のいずれかでデブリの試験的な取出しを始めるとの目標をかかげる。だが,一連の調査で,内部の壊れ方が深刻だとわかったほか,たとえば2号機でデブリの近くより遠くの線量が高いといった新たな謎も出てきた。本格的にデブリを取出すにも,作業員の被曝を抑える安全な工法や取出してからの保管先も未定だ。福島県は,デブリなどの廃棄物を最終的に県外に搬出するよう求めているが,受け入れ先の自治体探しは議論すら始まっていない。
 補注)ここまでの記事からも分かるのは,未知=未定(不確定)の要因が非常に多くあって,これらの難関の克服なしには「事故によってできたデブリ」の後始末に対して,いったいどのようにしたら的確な見通しをもって着手できるのかが,いまだに決められないでいる事実である。いまのところで正直にいえば,すべての作業が手探り状態であって,それもほんのわずかにしか進捗させえていない。

 2)廃炉,遠い本格着手
 福島第1原発事故から7年。国と東電が2011年12月に発表した「廃炉完了まで30~40年」の廃炉工程は,その大枠の5分の1ほどの時間が過ぎた。廃炉に向けた作業は,進展がみられた部分と遅々として進まない部分に明暗が分かれる。
 
補注)つまり,「7年 × 5=35年」(なら2046年)ないしは「6年 × 5=30年」(なら2036年)で,廃炉までの工事を終えられるかのように見通しを立てていた。けれども,それは,希望的観測にとどまっていた予定であるどころか,科学的な根拠や実際的な理由をほとんどともなわないで立てられていた「単なる予想(想定?)」であった。

 通常の廃炉でも年数が相当にかかる。いまから1年前の『東洋経済 ONLINE』2017年03月11日の記事「震災6年,福島原発の廃炉作業は『登山口』だ-燃料デブリ取り出しへの遠い道のり」は,最後にこう断わっていた。
◆ 燃料デブリは突き止められず ◆

 2016年2月23日の記者会見で東電の増田氏は,廃炉の核心部分である燃料デブリ取出しに向けての調査が難航している事実を認めた。同氏は2017年度に予定されている燃料デブリ取出しの方針決定について,「いまのままではざっくりとした方針しか決められないと思っている」と言及。方針決定の前に,追加調査を実施する考えを明らかにした。

東洋経済 ONLINE2016年3月1日内田俊志所長画像 「もう少し2号機内部の情報が欲しい。原子炉圧力容器の下部がどのようになっており,燃料デブリの落下や(圧力容器を支える台座の)外にはみ出しているかが分かればはるかに緻密な取出し方針を決めることができる」(増田氏)。

 現地取材時に記者会見に応じた福島第1原発の内田俊志所長は,「われわれは未知のことに挑戦している。いつも想定外の連続だ。課題を克服しつつ一歩一歩進むしかない」と廃炉作業の難しさを語った。
 補注)ここでの表現「想定外」には引っかかりを感じとる。「想定外」という発想が許されてきたがゆえに,原発事故が起こされていた事実史が記録されていた。この点にこだわるのであれば,このような “因縁に満ちた表現” は,聞く人によってはアレルギー反応を起こしておかしくないが,この人はそうではないらしい。なにか意図的なモノを受けとってもいい。

 廃炉作業の現段階について,「どういう装備が必要かがわかってようやく登山口に来たところだ」という増田氏の言葉は,廃炉の核心部分の入り口にたどり着いたという手応えとともに,前途の困難さを物語っている。
  註記)http://toyokeizai.net/articles/-/162133?page=5
 --その後の1年間に進捗がみられたのは,前段に引照した『朝日新聞』の記事にあったように,「福島第1原発で初めて確認されたデブリとなった」「それに出会えた点」に関してであった。その間,1年が経過した。しかし,これからもさらに1年ごと,蝸牛のごとく歩んでいくかもしれない。ずいぶん頼りない話になった。本当に遅々たる歩みが目前に展開されている。

 ネット上には「イギリスの廃炉実例」が指摘されてもいるが,ここではさらに,ドイツの具体例の場合を紹介しておく。ここでは,そのごく概略に関して一部分を聞いておく。。
◆〈廃炉のおはなし〉廃炉の話をしようや
2:廃炉の期間,費用,廃棄物 ◆

=『Sayonara Nukes Berlin』2014年10月07日 =

 世界最大の廃炉作業をしている原発として,ドイツ北東部にあるグライフスヴァルト原発の5基がある。1995年に廃炉の許可がおり,作業が開始されたているが,原子力発電所には最終停止時に約1万人の従業員(うち半分は建設中だった原発の建設作業員)がいた。この廃炉の作業にかかわる会社の規模は現在1500人ほどで,また原発跡地には誘致された新しいエネルギー関係の工場などもできていている。

 その廃炉の作業状況は2013 年の時点で70%から80%終了とされてい。ただし,1号機の廃炉に即時解体撤去法をとったところ,コストが予想を大幅に上まわってしまった。そこでほかの原子炉では,即時に解体せず,汚染度の高い圧力容器と蒸気発生器を撤去したあと中間貯蔵施設に保管して,汚染度が低くなったら解体することにしている
      グライフスバルト原発廃炉工程図表
 グライフスヴァルト原発の建設,稼動と廃炉の時間は「50年間貯蔵することにしている」が,その予定はほぼこの上図のように示されている。もっとも,50年の安全貯蔵をいつ決めたのかの情報がなく, 一番少なく見積っても2045年までは完了しない。さらにその後においてどのほど時間がかかるかは不明である。廃炉の全費用もまだ不明であり,現在の試算では5000億円である。
 註記)http://snbblog.sundayresearch.eu/?p=1228 参照。
 前掲の図解に記入されている「各線種の期間」を比較してみればいい。「建設」⇒「稼働」⇒「廃炉」のなかでも,最後に位置する「廃炉」(の工程・作業)が一番長期間を記録していく予定であって,しかも「?」になっている。

 いわば「原発の品物(製品)の寿命」は,通常の物品(設備・装置・機械・部品など)の廃棄手順に関する「それ」とは,いちじるしく異次元的な様相を呈しているというほかない。そのくらいに異様といっていいほどにまで,その後始末に必要となる時間:期間が「非常に長い(永い)」のである。
 
 〔記事に戻る→〕 比較的進んだのは原子炉建屋の使用済み燃料プールに残された燃料の搬出だ。4号機は2014年に搬出が完了。3号機でも今〔2018〕年2月,建屋上部にドーム状のカバーの設置が完了し,今秋にも566体の搬出が始まる予定だ。残る1号機の392体と2号機の615体も,2323年度からの搬出が予定されている。

 事故直後に大問題だった汚染水対策は処理設備とタンクの増設が一段落し,建屋内の水を循環させる燃料冷却も始まった。1~4号機の周囲の土壌を凍らせて固める凍土壁と,その内側の地下水をくみ上げる井戸が昨年から本格稼働し,汚染水の発生量も抑えられつつある。だが,こうした作業はあくまで廃炉の準備に過ぎず,デブリの取出しや建屋の解体といった廃炉作業そのものはいまだ本格着手できていない。

 3)  被曝線量とがん,関係の分析本格化
 事故当時18歳以下だった約38万人を対象にした福島県の甲状腺検査は,2016年度に始まった3巡目が今月〔2018年3月〕末に終了するみこみだ。開始から6年半でがんと確定したのは160人。5月からは4巡目が始まる。

 1巡目と2巡目でがんの疑いが判明したのは,それぞれ116人と71人。うち1巡目101人,2巡目52人が手術でがんと確定した。2巡目までにがんの疑いがある人が多くみつかったこともあり,3巡目の新たながんの疑い例は10人に減った。うち7人は,がんと確定した。

 調査は,チェルノブイリ原発事故後に子どもの甲状腺がんが多発したことから,福島県民の被曝の影響を評価し,長期的な健康を見守る目的で始まった。有識者による県の検討委員会は2016年3月,1巡目の結果について,チェルノブイリと比べて被曝線量が小さく,被曝からの時間が短いことなどから「放射線の影響は考えにくい」と中間評価。ただ「現段階ではまだ完全に影響は否定できない」として検査の継続を求めた。

 福島県立医大は,被曝線量ごとに地域を分け,発症との関係を分析する作業を本格化している。ただ,線量推計のよりどころとなる震災時の行動調査は十分でなく,がんが疑われる子どもでも把握は半数程度だ。

 検査のあり方も議論になっている。甲状腺がん検診は少なくとも大人では,将来のがんによる死亡率を下げる効果はないとされる。検診を受ける負担や,がんが疑われたさいの心理的な影響などの不利益もある。

 被曝の影響をみきわめるには多くの検査例が必要だ。だが,1巡目で8割超あった受診率は,3巡目の昨年末時点で6割に届かない。学校での実施に「半強制的だ」との批判もある。星 北斗・検討委座長は「2巡目までのデータがそろい,一定の評価は出さないといけない」と話す。(引用終わり)

 この福島県の甲状腺検査,もちろん東電福島第1原発事故にかかわって問題になっている医学的な問題・疫学的な争点について本ブログは,以下の記述で言及していた。関連する議論はこちらの諸記述を参照してほしいが,原発という発電のための装置・機械がこのような病理問題までも広範囲にわたって惹起させる有害性は,観過しがたい “原発というエネルギー源” に関する問題点を意味する。
  ※-1 2015年11月18日
   主題「『文殊』などと『知恵のない名前』がつけられた日本の高速増殖炉(2)」
    副題「『もんじゅからおしゃかに変わる原型炉』」(愛媛県 福島喜久雄,『朝日新聞』2015年11月17日「朝刊川柳,西木空人選」)】
     リンク ⇒ http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1045360251.html

  ※-2 2016年06月08日
   主題「原発広告に出演していた勝間和代とか草野 仁は,いままた,別の広告で活躍中」
    副題1「あっちがダメならこっちがあるさ,広告出演の絶えない人気者たち」
    副題2「原発広告用の人形としてはA級戦犯の面々が,いつまでも,恥じらいもなく,広告に登場するこの厚かましさ」
    リンク ⇒ http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1058233985.html

 ※-3 2016年05月06日
   主題「『福島原発事故-内部被曝被害』の現実から目を背ける原子力村(とくに政府と専門家たち)の暗い影」
    副題1「福島第1原発事故『核爆発災害(被曝被害)』を直視する必要性」
    副題2「放射性物質の悪影響を受けている福島の罹災者たちの実情は隠蔽されている」
    副題3「政府や専門家という者たちが真実に触れようとしない『3・11』以来の核爆発災害(被曝被害)」
    リンク ⇒ http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1056878876.html
   ③「未稼働原発に5年で5兆円 維持費,東電など7社」(『朝日新聞』2018年3月8日朝刊1面冒頭)

『朝日新聞』2018年3月8日朝刊未稼働原発経費など 原発をもつ電力会社10社のうち,原発が稼働していない7社が「原子力発電費」として,原発の維持・管理に2012~16年度の5年間で5兆円超を支出していた。費用は主に電気料金で賄われている。電力各社は,再稼働すれば採算がとれると支出を続けるが,半数ほどの炉は再稼働の手続きに入っていない。(▼37面=膨大な人手,この記事は紹介しない)

 各社の有価証券報告書を分析した。東京電力福島第1原発事故後,東電など7社は所有する未稼働原発に,計5兆918億円の原子力発電費を支出していた。建設時の支出を会計処理する減価償却費も含まれるが,保守管理,警備などの人件費や委託費に加え,火力や水力では発生しない使用済み核燃料の再処理費や福島事故賠償に関する負担金がかかっている。
 補注)ここでは,イ)「火力や水力では発生しない使用済み核燃料の再処理費」や ロ)「福島事故賠償に関する負担金」に注意したい。ロ)は法外である点はさておいても,イ) でも ② に記述していたように,その経費は時間の長期化に応じて当然に増大していく。それも「火力や水力では発生しない」費用,あえて比較していえば「必要もない」,ただ後始末のためだけに発生していく経費である。

  “「建設」⇒「稼働」” が「工事全体」が本来の用途のために要する経費を発生させ,そして,通常の設備(装置・機械)であればその解体・処分のために必要とする経費は,原発の “⇒「廃炉」” に相当する部分の経費に比べてみると,はるかに少ない。

 ところが,原発の場合は事故を起こしていない「廃炉」の工程・作業であっても,すでにバカにならないほどの水準にまで,その後始末のための経費を要求している。双方のそれぞれにおける「解体・処分」と「廃炉」とのあいだには,工学的な費用計算をするにしても,まったく質的に隔絶したごとき相違が発生している。


 ある意味では,電力会社からはともかく「だから,いまある原発は稼働させろ,それでできるだけ稼がせろ」という理屈が出てきている。だが,この理屈は別の意味では本末転倒である。企業経営体としての短・中期の営利問題は,長期における社会経済体の社会的費用を極度に引き上げさせる逆効果を結果させつつある。まさしく「廃炉」の問題がその『不都合な真実』を実証しつつある。

 〔記事に戻る→〕 電力各社は「100万キロワットの原発1基の再稼働で,年間1千億円程度の収益改善につながる」としており,これまでの支出も再稼働すれば埋めあわせができるとの立場だ。

 原発をもつ電力会社10社のうち,関西電力・九州電力・四国電力の3社は原子力発電費として5年間で計2兆4730億円を支出。計20基のうち,現在は止まっているものも含めて7基を再稼働した。ただ,原発をとり巻く環境は大きく変わり,福島事故時に54基あった商用原発のうち,14基の廃炉が決まった。7基は再稼働したが,残る33基のうち,15基は再稼働のための審査の申請に進んでいない。

 背景には,新規制基準に沿って多くの安全対策をほどこす必要があるが,老朽化した原発や小型の原発ほど採算が合わなくなるという事情がある。手続に入った炉でも,建屋直下で活断層の存在が指摘されたり地元が再稼働に慎重だったりして,見通しが立たない施設がある。(引用終わり)

 結論である。--原発は「人間・人類史の技術利用」において,すでに失敗し,破産した技術体系であった。そのような審判が下されている。現に原発を保有している電力会社は,設備投資に投じた原価のうちから埋没させられる部分の発生や,最終的に補償できない費用の発生には我慢がならないでいる。

 というのも,原発を稼働状態にさせられれば,当面して収益・利潤が獲得できる。それがために必死になって,現有する原発の再稼働に画策してきていた。対する原子力規制委員会の実際的な仕事としては,その交通整理程度の仕事はできているものの,原発そのものを廃絶させる任務を担当している国家機関ではない。

 また,たとえ日本の原発全基が廃止させうる方途が,それもいまただちに決定され実行されたとしても,その廃炉処理のために今後において発生し,要求されていく総経費は,おそらく想像すらつかないような〈莫大な水準〉になる可能性がある。

 ともかく,エネルギー政策において『やっかいモノである原発』をたくさん背負いこんでしまった「日本国」である。この国の電力会社は,もともと「国策的な民営会社」として原発の導入・利用に協力してきた。だが,現段階に至っては「原発の不利性」がその有害性を発揮する因果のなかで目立っている。

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<転載終了>