芳ちゃんのブログさんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.com/2018/08/blog-post_16.html
<転載開始>
一国の行政が機能しなくなると、治安は乱れる。官憲の手が届かないと察するや、悪事を働く者が横行する。それは陸上でも、海上でもまったく同じことだ。

そのような典型的な状況を伝える記事に出遭った [注1]。カリブ海における「海賊」の出没を報じている。

海賊と言えば、アフリカのソマリア沖やフィリピンの南部での事例を近年よく耳にしてきたが、それ以外は映画の世界での話しであることから、「オヤ!」という感じがした。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

【トリニダードトバゴ、セルドス発】 カリブ海のコバルトブルーの海面からチカチカと反射する太陽の光の中でその船は水平線を切り裂くようにして現れた。近くまでやって来た。しかし、「アシーナ」の乗組員でそれに関心を払う者は誰もなかった。

「俺たちは何時ものようにお目当ての赤い魚を漁っているところで、奴らも多分そうだろうと思っていた」と、乗組員の一人である36才のジミー・ラーラが言った。彼らは、4月の終わり頃、無法地帯と化したベネズエラの沖数マイルのトリニダードの海域で釣り糸を下ろしていた。

もう一方の船が近寄ってきた。「助けを求めているのかな」と、28フィートの丸木舟が舷側にやって来た時やや不審に思ったことをラーラは思い起こす。背は小さいが筋骨のたくましい男がピストルを振り回してスペイン語で叫んだ。

「これで合点がいった。奴らは海賊だ。」 

「黒髭」の大砲が鳴りを潜め、ジョリー・ロジャーがカリブ海のラム酒の輸出港でその地位を失ってからというもの、何世紀間もこの地域はロマンに欠ける新手の海賊に直面して来た。

ベネズエラからニカラグアやハイチにかけて政治的ならびに経済的な危機が急速に広がって、無政府状態や犯罪が起こっている。法秩序が崩壊し、カリブ海のある地域ではすでに何年間もそうであったよりもさらに酷い状況に陥っていると、専門家は伝えている。

腐敗した政治家の関与があるようだ。特に、汚職が著しいベネズエラの海域ではなおさらのことだ。

「ベネズエラ沿岸は犯罪が蔓延して、誰でもが自由に参加できる程の無法状態だ」と、南米やカリブ海における組織犯罪を調査している非営利団体の「インサイト・クライム」の共同ディレクターであるジェレミー・マクダーモットは言う。

南米やカリブ海地域では海賊行為に関する総括的なデータはほとんどない。しかし、非営利団体の「オーシャンズ・ビヨンド・パイラシー」によって実施された2年間の調査の結果、2017年については71件の大きな事件が記録されている。これらのデータには商船の略奪やヨットに対する襲撃が含まれている。前年に比較すると163パーセントの増加を示した。圧倒的に多くの事件がカリブ海の海域で起こっている。

これらの事件には栄光視されるような海上での強盗から17世紀の海賊に匹敵するような野蛮な襲撃までが含まれ、その範囲は実に広い。



Photo-1: 船に乗る漁師たち。何人かはベネズエラの海賊による略奪に遭ったり、殺害された。

たとえば、この4月、覆面をした男たちがガイアナ沖30マイルの海域に居た4艘のガイアナの漁船に乗り込んできた。生き残った乗組員によると、乗組員たちは熱い油をかけられ、ナタで切り付けられ、船外へ投げ出された。さらには、彼らの漁船が盗まれた。20人の犠牲者の中で生き残ったのは4人だけであった。残りは死亡したか、生死が不明のままである。

ガイアナのダビッド・グランジャー大統領はこの殺害を「大量虐殺」だとして非難した。ガイアナの官憲はこの事件は隣国スリナムのギャング暴力と何らかの関連があったのではないかと仄めかしている。

「奴らは船を取り上げると言い、皆海へ飛び込めと言った」と、生き残った47歳のデオナリン・ゴバードハンがロイターに向けて喋ってくれた。殴られ、海へ投げ込まれてからは、「俺は必死に頭を水面から突き出し、何とか息をしようとしていた。海水を大量に飲んでしまった。星や月を見ていた。希望をつなぎ、祈りをするだけだった。」 

ホンジュラスやニカラグア、ハイチ、セントルシアの近辺では過去18ヶ月間海賊行為が報告されている。しかしながら、何処でもベネズエラ沖よりも酷い状況は報じられてはいない、と調査専門家が述べている。

南米諸国の経済危機はインフレ率を100万パーセント近くに押し上げ、食物や医薬品の不足を招いている。栄養失調が蔓延し、疾病がはびこっている。訓練された職員や交換部品の不足から飲料水や電力の供給はしょっちゅう中断する。警察や軍隊は自分たちが受け取る給料が何の価値も無くなってしまったことから、職場を放り出した。ニコラス・マドウーロ大統領の社会主義政権の下で、経済停滞と政治の腐敗が進行している。

この状況はベネズエラ人にやけくそとも言えるような策に走らせている。

政府職員の腐敗振りに関してベネズエラのある港湾職員は、無名で取材を受けることを条件に、ベネズエラの海岸警備職員らは停泊している船舶へ乗り込んできて、金品を巻き上げたり、食料を要求していると話してくれた。この状況に対応する策として、商業船はずーと沖に停泊し、夜になるとその存在が確認できないようにエンジンを停止し、照明を切ってしまうとのことだ。

しかし、常に首尾よく行くとは限らない。




Photo-2: 最近密輸と海賊行為が広まって、極めて多くの暴力沙汰が起こっている、と地元民は言う。

この7月、近海のベネズエラの島々への物資の輸送を行っていた地元の企業であるコンフェリーの船がグアンタ港の近くでナイフや銃を振り回す3人組に襲われた。4人の乗組員は何時間にもわたって縛られたまま放置され、食料品やエレクトロ二クス製品を盗まれた。

この1月、これも北東部の海岸にあるのだが、プエルト・ラ・クルスにおいて、停泊中のタンカーに7人の武装した強盗が乗り込んできた。Advertisement

連中はその船の警備を担当する職員を縛り上げ、倉庫を物色した。ロンドンに本拠を置く国際商工会議所の商業犯罪サービス部門によると、これ以降何ヶ月にもわたって同様の事件が報告されている。

ベネズエラからは目視できる距離にあって、140万人の人口を擁するトリニダード・トバゴは隣国発の犯罪に長いこと悩まされ続けている。1990年代以降、麻薬の密売者がマリファナやコロンビアのコカインをベネズエラの港からトリニダードへ運び、そこからさらにカリブ海諸国へ、あるいは、その先へと密輸を行ってきた。

密輸と海賊行為は最近さらに広がって、暴力が酷くなってきている。南部のセルドス港に住む5人のトリニダード人漁師らは、匿名を条件に、自分たちが経験した身の危険を引用して、インタビューでこう言った。彼らの目撃談によると、ベネズエラ船籍の船が軍用の小銃や麻薬、女、珍獣、等を運び込むのが急増している。

「時には、これらのベネズエラ人は小銃や珍しい動物を好んで食料品と交換する」と41歳の漁師が言った。 

もう一人の漁師は、この1月、スペイン語を喋る海賊に何時間も拘束され、その間、彼の兄弟は500ドルの身代金を要求されたと言った。

何件もの強盗や海賊行為が報道された後、今年になってから、トリニダード沿岸警備隊はこの海域をパトロールするために警備艇を派遣した。しかし、これらの犯罪者たちはパトロールの警備艇をやり過ごしてから自分たちの行動を開始する、と地元の住民らは言う。

トリニダードの官憲にこのことに関するコメントを何回か求めたが、回答はなかった。

しかしながら、野党の政治家は海賊行為の急増に悲鳴を上げている。ベネズエラからの自動小銃の流れを見ると、その一部は軍事品の専門店から流されている模様で、トリニダードにおける殺人事件の急増に一役買っている。
















Photo-3: 漁船は陸に引き上げられ、レインコートを着た漁師がトリニダードの海岸で霧の中を歩いている。

数年前に無法状態と化したソマリアの沖で始まった船舶のハイジャック事件を引用しながら、「これを見ると、アフリカ東部の海岸地帯で始まった問題を思い起さざるを得ない」と、野党のユナイテッド・ナショナル・コングレス党の議員であるルーダル・ムーニラルは言う。「われわれが今目にしている海賊行為や密輸はベネズエラの政治や経済が崩壊したことによって引き起こされたんだ。」

カリブ海の暖かい海域で仕事に精を出して、生計を立てている者たちにとっては、海賊行為は新しい脅威だ。この頃は、襲撃を避けるために地元の漁師たちは近海で漁をし、時には夜中に漁をする。

アシーナ号が海賊に乗り込まれた4月のある日の午後、彼は恐怖を感じた、とラーラは言う。

「スペイン語を喋る男が俺にピストルを向けてきて、その次にピストルを海面に向けた。俺には直ぐに分かった。彼は俺に海へ飛び込めと言っているんだと。」 

彼は海へ飛び込んだ。彼の一番の仲良しで、22歳のナレンドラ・サンカーも彼の後を追って、海へ飛び込んだ。二人は沖合いの石油掘削リグに向かって泳いでいたが、サンカーがこむら返りを起こした。

「俺はもうリグに辿りついいていたんだが、彼を助けるためにもう一度海へ飛び込んだ」と彼は言う。「サンカーは溺れるところだった。」 

 


Photo-4: 58歳のデオラジ・バルシング。彼はベネズエラとトリニダードとの間の海域でベネズエラの海賊によって誘拐された漁船の船長の父親である。

彼らは海賊が自分たちの漁船を拿捕する様子を見ていた。この漁船には高価な船外機が2機も装備されていた。船長のアンドレル・プラマーは依然として船上にいた。二人は近くを通りかかった漁船に助け上げられた。この襲撃について官憲に報告したところ、彼らはこう言われた。「海賊の後を追いかける船がないんだ。何も出来ない。」 

あれ以降、プラマーについての情報は全然ない、と男たちは言う。トリニダードの国家安全保障省にこの件に関するコメントを求めたが、回答はなかった。

「奴らが俺の息子を拉致したんだ!」と、何艘もの船に囲まれた、濁った水をたたえているトリニダードのドックの傍に佇む船長の父親が言った。 

「俺たちには何も分からないんだ」と、バルシングは言う。「息子がまだ生きているのか、死んでしまったのか、全然分からない。」 

 (注; 表題を除き、この記事には何の編集も施してはいません。これは新聞雑誌連盟の配信です。) 

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。


ベネズエラ経済は原油の輸出で成り立っている。輸出の95パーセントを原油が占めるという。その結果、政府の政策は原油輸出が稼ぎ出す利益が源泉となる。しかし、エネルギー市場は起伏が大きい。原油輸出に過剰に依存する経済は必然的に大きく翻弄される。ベネズエラを襲ったハイパーインフレはそのいい例だ。

これらのことを十分に知っている米国は、シャベス前政権を踏襲して米国の政策に異論を唱えるベネズエラのマドウーロ政権に対しては経済制裁を課し、国内の分裂を煽って、政権交代を引き起こそうとしている。インターネット上ではこのことを伝える情報が数多く入手できる。最近起こったドローンを用いたマドウーロ大統領の暗殺未遂事件も米国の息がかかっていると言われている。

ところで、政治や経済の混乱が起こった場合、最大の被害者は常に弱者である一般大衆であることを忘れてはならない。

この引用記事が伝えてくれているように、零細漁民である一般庶民が一番大きな影響を受けている。時に、一個人としては完全に過剰な影響となる。最悪の場合、殺害に見舞われる。

国家としての秩序が失われ、無法化に陥り、暴力が蔓延する状態はメディアは「リビア化」という言葉を用いている。リビアのかってのリーダーであったカダフィは「アラブの春」の運動をきっかけにして、国内政治の混乱を強いられ、米国が支持する反政府派によって殺害された。リビアの国家機構は麻痺状態となって、今も無政府状態が続いている。この一連の動きの背景には米国の思惑が流れている。米国がカダフィを嫌った最大の理由は原油輸出の清算には米ドルを止めて、金本位制のディナールにするというカダフィの構想であった。カダフィ政権の打倒には当時のヒラリー・クリントン国務長官の影が色濃く登場してくることは、今や、周知の事実だ。

トリニダード・トバゴの一般庶民にとっては非常にはた迷惑なことではあるが、隣国のベネズエラの不安定化が大きな黒い影を落としている。今後、恐らくは、さらに悪化することであろう。このベネズエラの不安定化のシナリオを書いたのはドル覇権を維持しようとする米国である。米国は世界中で紛争や戦争を引き起こし、今や、世界平和の敵として世界中から嫌われる身になってしまった。



参照:

注1:New Breed Of Pirates Sail In The Caribbean, As Venezuela Disintegrates: By Anthony Friola, The Washington Post, Aug/13/2018



<転載終了>