街の弁護士日記さんのサイトより
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2018/10/post-268b.html
<転載開始>

2018年10月17日 (水)

日米FTAとISDS条項

以下、新NAFTA(USMCA)協定でISDS条項に死亡宣告がなされたことを前提にして、日米FTAにおけるISDS条項の扱いについて僕の見通しを述べる。

 

 

 

前記リンクの記事で、僕が祝ったのは、世界のために祝ったのであって、日本のためには祝っていません ( ̄^ ̄)

日米FTAでISDS条項は入るか否かと言えば、確実に入るというのが、結論です。
その意味では、「ISD条項の罠 総集編」でトランプがISDSは要らないと言うのに、安倍がISDSを主張するという僕の戯れ言は、根本的に間違いで、ミスリードでした m(__)m
トランプは恐ろしいのです。
見くびってはなりません (`・ω・´)

 

 

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防衛戦士-補助電源起動さんのツイートから

 

少なくとも遠くない将来に、世界において、ISDS条項は、遺物扱いされて、廃止に向けての動きが本格化していくはずです。

「主権国家」を前提にする限り、ISDSは大いなる矛盾だから、そうなるはずです。

新NAFTA(USMCA)協定においてISDS条項が廃棄されたのは歴史的な出来事であり、世界に対する福音です 888888 (^^)//””””””パチパチ

 

 

日米FTA協定で、ISDS条項がどうなるのかは、新NAFTA(USMCA)協定の案文確定直前である9月24日(米国時間)に署名された改正米韓FTAでISDS条項がどう扱われたかが直接的な参考になる。

 

 

米韓FTA改正案に署名、自動車で米の要求反映 

日本経済新聞 2018/9/25 6:22

【ニューヨーク=恩地洋介】トランプ米大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は24日夕(日本時間25日未明)、ニューヨーク市内で会談し米韓自由貿易協定(FTA)改正案に署名した。米国仕様の自動車を韓国で販売できる台数をメーカーあたり年5万台に倍増するなど、自動車を中心に米国の要求を反映。韓国のウォン安誘導を禁じる「為替条項」について、強制力のない付帯協定も加えた。

 

改正FTAは両国の国内手続きを経て年明けにも発効する見込み。トランプ氏は署名式で「新協定は貿易赤字を削減し、米国産品の輸出を大幅に拡大する」と強調。「米国と韓国が貿易のための友好協力関係の例を示した」と語った。

 

柱の自動車分野は、韓国製ピックアップトラックに課す関税の撤廃期限を現行の2021年から41年に延長する措置も盛った。鉄鋼に関しては、韓国は米国向けの輸出を201517年の平均の7割に抑える。為替条項の付帯協定は米国への輸出拡大を狙った韓国の通貨安誘導を防ぐ狙いがある。競争的な通貨切り下げを禁じ、透明性と説明責任を求める内容だ。

 

改正交渉は今年1月に始まり、わずか3カ月で大筋合意に至った。その過程では、米国が在韓米軍の撤退論や鉄鋼関税の適用を持ち出して韓国に早期妥結への圧力をかける威圧的な姿勢を見せた。

 

 

「改正交渉は今年1月に始まり、わずか3カ月で大筋合意に至った。その過程では、米国が在韓米軍の撤退論や鉄鋼関税の適用を持ち出して韓国に早期妥結への圧力をかける威圧的な姿勢を見せた。」というのは、来年1月にも開始される、日米FTA交渉の行方を予想させてあまりある。

軍歴に秀でた文在寅にして、無抵抗でひねり潰された体である。
ましてや、お坊ちゃまをや。

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記事では、ISDS条項について触れるところは全くない。

韓国紙が伝えている。

 

 

韓米FTA改正、ISDS請求の乱発は制限したというが…政策主権の確保は“不十分”

 

ハンギョレ新聞 登録:2018-09-04 07:01 修正:2018-09-04 09:42

 

韓米FTA改正の協定文全文公開 

 

 

 

政府「政策主権の保護要素を反映」 

 

些細な請求の阻止に改善の焦点当てる 

 

表現が曖昧で政策主権の確保には限界 

 

ISDS廃棄の推進はNAFTAを参照すべき」

 

韓米自由貿易協定(FTA)改正交渉//ハンギョレ新聞社

 今年3月末「原則的な妥結」が発表された韓米自由貿易協定(FTA)改正協定文の全文が3日、公開された。

 

 政府は米国の投資企業・資本によるISDS(海外に進出した企業が、その国の急な制度の変更などによって損害を受けた場合、国を相手取り国際的な仲裁機関に訴訟を起こすことができる紛争解決手続き)請求の乱発を制限し、政府の正当な政策の主権の保護の要素を協定文に反映したと説明した。しかし、ISDSの請求要件である内国民待遇・最小待遇基準・最恵国待遇(MFN)が「(請求可能な協定違反かどうかは)正当な公共の福祉目的に基づいて差別しているかどうかを含めた全体状況にかかっている」とか、「些細な請求を根絶して防止するための効果的なメカニズムを提供する」など、“曖昧に”なっていると指摘されている。エリオットなどがサムスン物産の合併件を理由に、韓国政府を相手にすでに請求したISDS紛争は影響を受けない。

 

 3月末の協定の妥結当時、韓国政府は「ISDS改善」を代表的な交渉の成果として掲げた。実際に改正協定文を見てみると、ISDSを盛り込んでいる「投資」チャプター(11)11.35(ISDS請求要件の韓米FTA協定文上、内国民待遇・最小待遇基準・最恵国待遇の違反)と関連し、大きく7つの項目にわたって変更が行われた。ISDSの乱発を抑制する条項は、同一な政府政策措置に対し2国間の投資保障協定(IBT)など他の投資協定を通じてISDSの手続きがすでに開始・進行された場合、韓米FTAを通じたISDS提起は不可能で▽仲裁判定部が本案前の抗弁の段階で迅速な手続きを通じて決定できる事由に「明確に法律上の理由のないISDS請求」が追加された。また、他の投資協定上の紛争解決手続きの条項を適用するため、韓米FTAの最恵国待遇条項を援用できないという点▽ISDS請求の際、韓米FTA違反の可能性などすべての請求の要素について、投資家の立証責任を明示し「設立前の投資」に対するISDS請求要件を具体的な行為(許可・免許申請など)をした場合に制限した。請求の範囲を縮小したわけだ。

 

 政府の正当な政策の権限の保護については、「同種の状況」で米国投資資本を(韓国企業・資本に比べて)差別的に待遇したかについての判断基準に「正当な公共の福祉目的に基づいて区別しているかどうかなどを考慮する」という内容が追加された。また、投資者の期待に合致しないという単純な事実だけでは、投資に損害が発生しても、最小基準待遇の違反ではないという点を明確にした。

 

 しかし、「正当な公共の福祉目的」の場合、内国民待遇に違反するかどうかについては、「この目的の有無を含む全体状況にかかっている」として、多少曖昧に記述されている。たとえ公共の福祉目的であっても、「全体状況によって」は、ISDSの請求もあり得るということだ。さらに、協定文の附属書は「(韓米FTA共同委員会が)投資紛争で些細な請求を根絶して防止するためのすべての潜在的改善を考慮する」と明示し、今後ISDSの手続きの改善のための追加改定の根拠を作った。つまり、今回のISDSの条項の改善は「些細な請求」を阻止する方向に焦点が当てられているだけで、韓国政府の国家政策の主権を完全に確保したわけではないことを示唆する。

 

 特に、ドナルド・トランプ政府の米通商当局は妥結が間近になった北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、「事実上のISDS廃棄」と国際投資者の広範囲なこれまでの権限を大幅に縮小する方向へ「NAFTAISDS」に対する重大な変更を図っている。そのため、韓国政府が、NAFTAISDSモデルに基づいている韓米FTAISDSも、廃棄に準ずる方向での追加改定交渉に乗り出すべきだと指摘されている。ソン・ギホ弁護士(民主社会のための弁護士会)は「今回、ISDSが進展した内容に改正されたが、実際には起きる可能性が低いISDS乱用の事例を主に取り上げているだけで、現在進行中のエリオットのISDS事件などを解決することは難しい」とし、「NAFTA再交渉で米国がISDSに対して根本的な変更を加えているため、韓国政府が主体的に廃棄などを含めた追加的なISDS改正を要求する必要がある」と話した。

 

 ユ・ミョンヒ通商交渉室長は同日、「ISDSの条項は最近、ISDSをめぐる国際的コンセンサスの重要な中核要素を忠実に反映した」と説明した。

 

 一方、革新の価値が認められれば、薬価から10%を優遇している韓国保健当局の「グローバル革新新薬の薬価優遇制度」は、韓米FTAに合致する方向で年内に改正案を作成することにした。健康保険審査評価院は今年3月末、韓米FTA妥結直後から同制度の施行を猶予し、改正事項を検討してきた。自動車の場合は、米国産自動車を修理するための部品交替(部品自己認証)の際、米国の安全基準を満たせば、韓国の安全基準を満たしたものと韓国自動車管理法で見做しており、年間販売量4500(2009年基準)以下の米国車に緩和された環境(燃費・温室効果ガス)の基準を適用する「小規模制作会社」制度(202125年適用)の詳細な基準および緩和の割合を、韓米両国が協議して後日確定することにした。

 

 韓米両国は3月末に原則的妥結を発表してから、これまで改正協定文文案を調整しており、米国は議会協議手続きをすでに完了して、発効に向けた自国内手続きを終えた。韓国側は近いうちに大統領の裁可・署名を経て、国会に批准同意案を提出する予定だ。両国は発効に必要な国内手続きを今年末まで完了し、国内手続き進行途中で発生する両国間の通商関連懸案は協議を通じて解決策を模索することにした。

 

チョ・ゲワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

 

 

ざっくり見た範囲では、改定米韓FTAでは、TPPと同じ程度の手直しが加えられたフル装備のISDS条項が採用されている。

政権側が、「濫訴防止策を取った」と苦しい説明しているのも安倍政権とそっくり同じである。

政策主権が回復されないとするハンギョレ紙の主張は、当然である。
批判が穏やかすぎるくらいである。

 

 

そうなのである。

進歩派と呼ばれ、南北和解を主導している文在寅率いる韓国も、赤子の手をひねるようにあっさりと押し切られて百害あって一利なしのISDS条項の煮え湯を飲まされたのである。

 

 

新NAFTA(USMCA)協定で、ISDS条項が除かれたのは、もともと米加自由貿易協定にはISDS条項は入っていなかったという由来から説明する仕方もある。
NAFTA1994でメキシコが加わったときにISDS条項が挿入されて、先進国同士の初めてのISDS条項が生まれたという経過から、もともとの米加の関係に戻すためにISDS条項を廃止したと説明するのである。

僕は、これには与しない。

この説明では、なぜメキシコに対するISDS条項までもが、NAFTA1994以前に想定されていた、せいぜいが国有化に対する対抗措置として残されるに限られ、かつ国内裁判所の手続を経た後に初めてISDS提訴できるとする極めて使い勝手の悪いものにされてしまったかが、説明できないと考えるからだ。

 

 

トランプがISDSを嫌うのは、国家主権が脅かされるからである。

主権が制限されるような国際的な枠組みについて、いいとか悪いとかいう以前の問題として、次々と脱退を宣言し、さらに主権を制限する枠組みからの離脱を検討する姿勢にもそれは表れている。

トランプがISDS条項を廃止したというと、何かと裏の意図を勘ぐる向きがあるが、単純かつ素直に、米国の主権が制限されるから廃止したのである。

 

 

トランプを持ち上げるつもりはないが、トランプの「米国第一」の主張は、主権尊重の考え方を内在させている。
以下は、今年の国連総会でのトランプの演説の一部である。
トランプはグローバリズムを拒絶し、国家主権の尊重を訴えたのである。

したがって、トランプは、相手国が主権国家として毅然として、『ISDSが主権を侵害する!!』と叫ぶ限り、それ相応の対応をするということをメキシコの例は示している。

 

 

では、なぜ文在寅政権が交渉した、米韓FTAにISDSは入ったのか。

そして、なぜ日米FTAにISDSが入るのは必至なのか。

 

 

答えは2つ。一つは理論的なもの。もう一つは、実践的なもの。

 

 

理論的に、日本も韓国も、米国にとっては、半主権国家、従属国、半占領国、傀儡国家、エセ主権国家に過ぎないからである。

だから、在韓米軍を撤退させるぞと言えば、韓国政府は震え上がって、トランプを思いとどまらせようとする。

日本も同じだ。
在日米軍を撤退させるぞと一言言えば、官僚組織まるごと震え上がって、どうぞ我が国を餌食にしてくださいとトランプに国家を献上する仕組みだ。
いや、日本の官僚はさらに優秀だ。
トランプが在日米軍を撤退すると言わせないために全力を尽くす。
トランプが在日米軍を撤退させると言いそうな気配を察すれば、直ちに忖度して先回りして、日本国家をトランプの餌食に献上する、そういう国だ。この国は ヽ(`Д´)

 

何しろ、日本では首都圏に横田空域があることの歪さを指摘し、横田空域の撤廃を主張すると、右翼が横田空域は、そんなに邪魔ではないと叫び、横田空域の存在をありがたがって、擁護する有様だ。

いくら嫌韓・反日でいがみ合っても、米国から見れば、日韓は一心同体、同じ穴のミミズに過ぎない。

 

 

 

もう一つ、実践的理由。
日本も韓国もISDS条項を入れても、米国主権を脅かすような企業はないからである。

米国をISDSで提訴して、米国の肝を寒からしめる日本企業があるか。

ない。

仮にISDS条項があったとして、あのリコール騒動のときに裁判所や米国政府、州政府から課された莫大な賠償金や罰金を、公正衡平待遇義務・最小限待遇義務に違反するとして、トヨタがISDS条項で訴えたか。

訴えるはずがない。米国市場がでかすぎて、不買運動でも起こされて、米国市場を敵に回すようなことはできないからである。

何より、米国政府からどれほどの嫌がらせをされるか想像もできないから、ISDS提訴などできるはずがない。

だから、日米FTAでも米韓FTAでも、ISDS条項を導入しても、トランプは枕を高くして寝られるのだ。

 

 

僕は、日本が米国の餌食にならない唯一の方法は、日米FTAを結ばないことだと考えている。

この主張については、別の論点が絡むので、また別の機会に理由を述べる。


<転載終了>