芳ちゃんのブログ さんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.com/2019/03/opcw.html
<転載開始>
ここに「OPCWのシリア報告書は西側の「化学兵器攻撃」という筋書きを不能にする」と題された最新の記事がある(注1)。
ところで、OPCWとは化学兵器禁止機関のことだ。これは化学兵器禁止条約(CWC)の実施のために加盟国への査察を行う国際機関であって、1997年に発足した。外務省のホームページによると、現在のCWCの締約国は193か国・地域。本部をオランダのハーグに置く。
なぜこの記事に注目するのかと言うと、西側がシリアで行って来た軍事的侵攻を正当化するために化学兵器攻撃は西側によって繰り返し利用されてきたからだ。
反政府側は化学兵器攻撃を自作自演し、アサドが率いる政府軍が化学兵器攻撃を行ったのだと喧伝。この手法が反政府派武装勢力と西側の定番となった。このプロパガンダでは悪名高いホワイトヘルメットが活動の中心となり、自作自演の様子をビデオに収め、それをソーシャルメディアに掲載し、アサド政権を非難する。西側の大手メディアはそれを現地からの報告として国内向けに流す。現地のことは何も知らない一般読者はこれらの報道を鵜呑みにする。こうして、西側はシリアに対するミサイル攻撃を正当なものに見せかけて来たのである。シリア紛争の歴史はこれの繰り返しだ。
化学兵器攻撃に関して西側の大手メディアが流して来た作り話が崩れると、シリア政府軍と戦う反政府派武装勢力の主張は大きく揺らぐ。ということで、国際機関であるOPCWの報告書が伝える内容は政治的には非常に重要な意味を持つことになる。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。地政学的な分析では定評が高いトニー・カルタルッチの見解をおさらいしておこう。
<引用開始>

Photo-1
OPCWはシリアのドーマにおいて201847日に起こった化学兵器攻撃に関して最終報告書を提示した。西側のメディアはこの報告書はシリア政府がドーマで化学兵器を使用した証拠になるとして歓迎していたが、この報告書はその種のことは一切報告していない。
実際には、本報告書は化学兵器攻撃によって死亡したとされる43人の誰をも攻撃現場で発見された塩素と関連付けることはできなかったのである。
攻撃があったとする主張は米国が支援する反政府派武装勢力によって彼らが敗退する前夜に流布された。翌日、シリア政府軍がドーマを奪回した。最初の主張は2本の黄色いガスボンベを改造し爆弾に仕立てたものを使って、サリンまたは塩素がばら撒かれたというものであった。
しかし、OPCWの検査官はサリンを検出することはできなかった。
本報告書によると、これらの2本の黄色い改造ガスボンベが攻撃に使用され、2カ所の建物(落下地点2および4)に落下し、OPCWの検査官はこれらのガスボンベとほとんど同様のガスボンベ(1本)を武装勢力が武器を作るために使用していた作業所でも発見した。
彼らが主張する「化学兵器」攻撃は、2018414日、米英仏によるシリアに対するミサイル報復攻撃をもたらした。これは化学兵器攻撃があったとされる現場へOPCWからの第1陣の検査官が到着した421日よりもずっと前のことであった。

塩素と被害者との間に関連性がない:
OPCWとしては、化学兵器に暴露されたと反政府派が主張する被害者に関する動画や写真は、OPCWの検査官が発見した微量の塩素も含めて、具体的な化学物質と関連付けることはできないという事実を言及することができる筈だ。報告書は下記のように具体的に主張することができるだろう(訳注:しかしながら、実際にはそう明白には述べていない):
医療関係者や目撃者、(目撃者によって提供された複数の動画に現れる人たちも含めて)犠牲者が報告した兆候や症状、それらの急速な発症、影響を受けた被害者の数、等は吸入した物質が不快感を起こし、何らかの毒性を持っていることを示している。しかしながら、精査した情報に基づいて言えば、死体からの生物医学的なサンプルは採取されていないことや死体解剖の記録もないことから、それらの兆候や症状の原因を具体的な化学物質と結びつけることは現時点では不可能である。
他にも、OPCWの報告書は、想定されている攻撃の犠牲者を診療した医療スタッフを含めて、化学物質の存在については真っ向から不信を表明した目撃者を引用することも可能だ。
本報告書は下記のような内容を報告することができよう(訳注:しかしながら、実際には言及してはいない): 
47日に緊急治療室に勤務をしていた何人かの医療関係者は患者からの報告は化学兵器攻撃を受けた場合に見られる症状とは辻褄が合わなかったことをインタビューで強調した。また、彼らは化学兵器による被害者に対する処置は行われなかったとも報告した。インタビューを受けた何人かは被害者からは何の異臭も発せられてはいなかったと言い、他の目撃者は被害者の衣服からは煙の臭いがしたと言う。 
OPCWが精査した他の説明内容も数多くの犠牲者は通常爆撃によって起こった煙や埃を吸い込んだことに起因するものであることを示唆している。
本報告書は下記のように具体的に述べることが可能だ(訳注:しかしながら、実際にはそうしてはいない): 
ある目撃者は47日には執拗な爆撃によって、あるいは、煙や埃を吸い込んだことによって病院で数多くの人たちが亡くなったと言った。緊急治療室の床には何十もの死体が横たわっており、埋葬待ちとなっていた。他の目撃者は47日のドーマの病院では死者は無く、あの日はどこからも死体が運び込まれてはいなかったと言った。
目撃者間には互いに矛盾する報告が目立ち、47日の出来事ではたった1件の死者についてさえも塩素と関連付ける証拠には欠けているのである。さらには、一貫性に欠け、矛盾だらけのこれらの状況はシリア政府がドーマにおける勝利の前夜に致死的な化学兵器攻撃を行ったとする主張の「証拠」としてこの報告書を用いることは不可能である。

武装勢力の作業所でよく似たガスボンベを発見: 
西側のメディアは塩素が発見され、現場におけるふたつの建物に落下した2個のガスボンベから発せられたとする本報告書の結論に焦点を当てているが、他の重要な知見は、予期されたことではあるが、いい加減に扱われた。OPCWの検査官が調査した武装勢力の武器の作業所には爆発物を作るために必要な化学品が大量に蓄えられていたことが明らかとなった。爆発物を製造するための一連の化学品や機材と並んで、1個の黄色いガスボンベも発見された。
本報告書は下記の事柄を認めるべきであろう(訳注:しかしながら、実際には認めようとはしない):
検査チームは倉庫に黄色のガスボンベが存在していることを確認し、シリア共和国の口上書(添付文書10、第2項)ではこれが塩素ボンベであるとして報告されているが、安全性の観点(ボンベのバルブをいじることに伴う危険性。図A.8.2を参照)から、内容物のサンプルを入手する、あるいは、確認することはできなかった。落下場所2および4で目撃されたボンベと比較すると、このガスボンベには相違点がある。このガスボンベはオリジナルの状態のままであって、まだ改造されてはいない点に注意されたい。
武装勢力の支配下にあった武器を製造する作業所でガスボンベが発見されたことが何を意味するかは明らかであるにもかかわらず、OPCWがこのガスボンベに興味を示さないことは監査官の勤勉さや意図に改めて疑念を投げかけることに繋がる。
このガスボンベには相違点があるが、これは落下地点2および4で発見されたボンベは爆弾に改造されていたという事実から来ることであり、明らかに、武装勢力の作業所で発見されたボンベはまだ改造されてはいなかった。
武装勢力が武器を製造するために使用していた作業所でほとんど同一のボンベが発見されたことが何を意味するかと言うと、落下地点2および4で発見された2個の改造ガスボンベは武装勢力によって改造されたという公算が高まる。OPCWの検査官はこの作業所で他にも改造された武器を発見した。たとえば、20リットル容量の数多くの金属製ドラムが発見され、いくつかはコード型のフューズが取り付けられていた。これらにはプラスチック製の爆発物が装填され、自家製の爆発物として使われていたようである。
西側のメディアは作業所で見つかったガスボンベの存在を捨て去ろうとした。そのガスボンベはシリア政府軍がでっち上げたものであると仄めかしたのである。
英国のハフィングトンポスト紙の上級編集者であるクリス・ヨークは問題の作業所に関して下記のような記述をする始末であった: 
反政府派の爆発物作業所はシリア政府軍によって数日前に確保され、彼らはやっきとなってこの作業所を化学兵器用の作業所に見せかけようとした。
実際には、OPCW自身はその種のことを提示しようとはせず、作業所で発見された装置は武器の製造所のそれとよく一致すると述べている。OPCWは、ガスボンベも含めて、何かが改造されたとは報告書の如何なる部分でも述べてはいない。このことに関しては、OPCWは「何等の改造もされてはいなかった」と具体的に述べている。
落下地点2および4にて発見されたボンベと非常によく似ているガスボンベが武装勢力の武器の製造所で見つかったということは、化学兵器攻撃を行ったのはシリア政府側だと主張しているけれども、西側のメディアが落下地点2および4で発見されたボンベは、少なくとも、武装勢力が化学兵器攻撃をでっち上げたという証拠を提供するものだ。
落下地点2および4で発見されたボンベはいったい誰が製造したのか、いったい誰がそれらを投下したのか、あるいは、それらの特定の場所に至った真の状況に関しては決定的な証拠が欠けていることから、より中心的な問いかけとしては、それらのボンベがいったい「どうして」これらの場所に到達することになったのかという点を究明することが必要となろう。

ーマにおける化学兵器攻撃 - いったい誰が得をするのか? 
主要な軍事的侵攻の最中であって、完璧な勝利を収めるであろう当日の前夜に、いったいどうしてシリア政府側は43人を殺害するために限定的な量の化学品が充填された2個のボンベを投下する必要があったと言うのであろうか?もっと単純に行える砲撃でその程度の数の住民を殺害することができるというのに。場合によっては、もっと多くの殺害も可能だ。
化学兵器の使用は、たとえもっと大規模に使用したとしても、通常兵器よりも効果が低いことは歴史的に証明されている。ドーマで使用されたと言われている塩素の使用は、そのような小規模では、思い当たるような目的が見えては来ない。少なくとも、シリア政府軍側にとっては・・・ 
他の如何なる主張が行われようとも、反政府派武装勢力や西側の資金提供国がシリア紛争の間中主張して来たようにシリア政府が化学兵器攻撃の後押しをすることからはシリア政府は何の利益も得ないのである。
ーマにおける化学兵器攻撃がシリア政府軍によって行われたと想定してみよう。しかしながら、これは戦術的にも、戦略的にも、政治的にも何の目的も果たさないのだ。
逆に、そのようなことを行った暁には、シリア政府側はその稀に見る行動によってシリア政府軍に対する西側からの大規模攻撃を正当化させてしまうのが落ちだ。
事実、化学兵器攻撃があったとされた日から1週間後、ガーディアン紙の報道によると、その報復として米英仏は100発ものミサイルをシリアにぶち込んだ。
その一方、ドーマを占領して来た武装勢力にはこの種の化学兵器攻撃をでっち上げるのに十分過ぎる程の理由が存在する。
彼らが敗走する前夜に化学兵器攻撃をでっち上げ、人々が苦しんでいる場面、特に、子供たちが苦しんでいる生々しい場面を作り出すことによって、武装勢力は世界中の一般庶民の間に懸念や同情、あるいは、彼らの理由付けを守れと要求する世間の激しい声を導く格好のプロパガンダを手にした。これは、彼らが所有し、世界中に広がるメディアを活用して、西側の資金提供国が熱心に増幅しようとしたプロパガンダである。
単に化学兵器を所有しているという間違った批判に基づいて米国が戦争を仕掛けようとした前例を受けて、武装勢力は、彼らのでっち上げの化学兵器攻撃の流れに乗って、米国はこれをシリアに対する軍事行動を起こすきっかけとして使うだろうと推察した。さらには、多分、彼らを救出してくれることだろうと。
米国は今日でも依然として「化学兵器」のことを言及する。具体的には、201847日のドーマでの出来事についてだ。これはシリア領土を非合法的に占領し続け、シリア政府を転覆しようとする武装勢力を支援するための口実の一部に他ならない。
喧伝されているシリア政府による「化学兵器」の使用は西側のメディアが反戦の政治家や評論家、解説者を攻撃する際の中心的な議論として決まったように使われている。
OPCWの報告書の結論は何らかの結論を導くには余りにも曖昧である。化学兵器攻撃に使われたとする手作り爆弾と酷似しているガスボンベが武装勢力の作業所で見つかったことは深刻な論議をもたらし、それが意味することはあの攻撃はでっち上げであったという見方である。この議論については適切に調査を行い、事実に基づいた答を見つけなければならない。
シリア政府はこの化学兵器攻撃からは何の利益も得ないし、政治的にも戦略的にも大失態となるだけであるという点に関してもシリア政府の動機については深刻な論議を呼ぶことだろう。結論を導く前にシリア政府の動機についても答を見い出さなければならない。
しかし、彼らが以前から何度も自ら示して来たように、西側のメディアは薄っぺらな証拠に基づいて、場合によっては何の証拠も無しに、まったく非論理的な嘘をつくことに長けている。そして、以前嘘をついたことをあからさまに見つかった後でさえもそういった嘘を繰り返すのである。
シリアのドーマに関するOPCWの最近の報告書に関しては西側のメディアがあれこれと「解釈」をすることであろうが、隣国のイラクで大嘘をついたことがバレてしまった後でさえも、西側のメディアは依然としてシリアに関して大量破壊兵器の筋書きを売り込もうとしている点については、これを一般大衆が抱く世界観の最先端に据えて、注意深く観察するべきであろう。
著者のプロフィール:トニー・カルタルッチはバンコックに本拠を置く地政学研究者であり、作家でもある。「New Eastern Outlook」のオンライン・マガジンに寄稿している。  
<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。
この記事でもっとも重要だと思われる点は、著者が指摘しているように、西側のメディアはこの報告書はシリア政府がドーマで化学兵器を使用した証拠になるとして歓迎していたが、この報告書はその種のことは一切報告していない。実際には、本報告書は化学兵器攻撃によって死亡したとされる43人の誰をも攻撃現場で発見された塩素と関連付けることはできなかったのであるという点だ。
しかしながら、OPCWの最終報告書には曖昧さが多く、今後西側のメディアが自分たちの主張に都合のいいように「解釈」するであろうという懸念が残る。
OPCWの最終報告書に見られるさまざまな問題点に関して、著者は現場で発見された事実に基づいてOPCWはこう言うべきであったとして、具体的な文言を提案している。要するに、著者はOPCWの言葉不足を指摘し、現地で起こった事柄を第三者的な検査官の立場で報告しようとした場合どのような内容の報告書になるのかを具体的に示してくれたのである。貴重な試みであると思う。と同時に、分かりやすい。
OPCWの最終報告書に関する著者の具体的な不満は、たとえば、次のような指摘となっている:
「武装勢力の支配下にあった武器を製造する作業所でガスボンベが発見されたことが何を意味するかは明らかであるにもかかわらず、OPCWがこのガスボンベに興味を示さないことは監査官の勤勉さや意図に改めて疑念を投げかけることに繋がる。
OPCWの最終報告書の曖昧さはいったい何処から来たのであろうか?
ここに、「圧力を受けて、OPCWはドーマに関して米国と矛盾を来すことに懸念 - ロシア代表の言」と題された最新の記事がある(注2)。
オランダのOPCWの本拠には各国から代表が送り込まれている。日本からも代表が詰めている。この最新記事(注2)はシリアに関してOPCWの一連の行動を真近に観察して来たロシア代表からの報告である。彼に言わせると、ドーマに関するOPCWの最終報告書は米国の顔色をうかがったものであって、中立的な報告書ではないという。ロシア代表が記者会見で述べた要旨を記録として下記に残そう:
あの攻撃がでっち上げであったと認めることは米国のシリアに対する爆撃を非合法的なものにしてしまうことから、OPCW2018年にドーマで起こったとされる化学兵器攻撃に関して偏見のない報告書を提出することはできなかった、とOPCWに派遣されているロシア代表がRTに語った。
月曜日(311日)に、ロシアの専門家らは記者会見を行い、本報告書について語った。モスクワ政府からOPCWへ常任委員として派遣されているアレクサンダー・シュルギンは会見後にRTに次のように述べている。化学兵器監視機関の指摘事項は「ギャップだらけで、矛盾が多く、一貫性がない」と。 
私の印象では、OPCWの技術事務局の専門家らは、単純に言って、米国代表が提案した文案に反論しようとはしなかった。米国代表は臆面もなくシリア政府が主犯だと言った。
事実調査団からの本報告書はドーマにおける化学兵器攻撃は誰の仕業であったのかに関しては何も述べてはいない。その仕事はこれから始まる別のチームの仕事であるからだ。
シュルギンは彼自身の見解を述べてくれた。「責任の帰属を究明するチームは米国側が必要とする結論を導くことだろう。そして、その結論は米国とその同盟国がシリア政府に対して新たに一方的な行動をとるための理由として使われるだろう。」 
この「注2」の記事が伝えている内容はOPCW内でどんな議論が行われ、OPCWの最終報告書がどのようにして最終結論に到達したのかを部分的に垣間見せている。これはOPCWの動きをすべて目撃して来たロシアからのOPCW常任委員によって語られた内容であり、内部情報である。この報告は非常に重要だ。
そして、国際政治の不条理をよく理解している皆さんは「・・・OPCWの技術事務局の専門家らは、単純に言って、米国人が提案した文案に反論しようとはしなかった。米国人は臆面もなくシリア政府が主犯だと言ったとの文言を目にして、米国の相も変らぬ傲慢さに辟易としているのではないだろうか。
OPCWという化学兵器を監視する役割を持つ国際機関が事実調査団を現地へ送り込んで調査を行ったとは言え、その調査が偏見のない、中立的な立場で調査を行うことを最初から放棄してしまい、米国の顔色ばかりをうかがっていたとしたら、その最終報告書がどのような内容になるのかは大よその見当がつく。
今回のOPCWの最終報告書はマレーシア航空MH-17便撃墜事件に関するオランダ政府を中心とした国際調査団の報告書が如何に偏見に満ちた結論を導いたかを彷彿とさせてくれる。これらのふたつの報告書の共通項は「偏見に満ちた報告書」にある。

参照:
1OPCW Syria Report Cripples Western ‘Chemical Weapons’ Narrative: By Tony Cartalucci, NEO, Mar/04/2019
2‘Pressured’ chemical watchdog afraid to contradict US on Douma chemical incident - Russian envoy: By RT, Mar/12/2019, https://on.rt.com/9pzi

<転載終了>