In Deepさんのサイトより
https://indeep.jp/air-pollution-can-affects-developing-baby-in-the-placenta/
<転載開始>
投稿日:
2019年9月18日の米サイエンス・ニュースより


sciencenews.org

過去にない規模と深度で世界中に大気汚染が拡大する中

今、世界の大気汚染がすさまじいことになっていまして、特にアジアは、最近ではないような大気汚染状況にあります。

その中でも、シンガポールやマレーシアなどは、インドネシアで大規模な山火事が起きているせいもあるのですが、とんでもない大気汚染レベルとなっています。

数日前には、シンガポールが、3年ぶりに「不健康なレベル」の大気汚染状況となりましたが、その後も日々悪化し続けていまして、本日 9月18日には、 6段階にわけられている国際的な大気汚染レベルの「最上位(最悪)レベル」となりました。

以下は、9月18日のアジアの大気汚染レベルです。

数字などが小さいために、認識しにくいとは思いますが、上位の色分けは以下のようになっています。緑から黄色は安全なレベルで、オレンジから紫が健康に有害なレベルです。

2019年9月18日のアジアの大気汚染(150以上が健康に影響する汚染)


aqicn.org

国などの位置がわかりにくいと思いますが、このマップで示していますのは、以下のエリアです。


Google Map

先ほどのマップでは、シンガポールの大気中の PM2.5レベルは「 320」を記録しており、大気汚染レベルとしては最上位の「危険な」に分類されています。

この「危険な」を示している場所は、今日の時点では、他には、世界にひとつもありません。日によっては、やはり大変に大気の状態が悪いエリアが多いメキシコやインドで表示されることがありますが、今日の時点では、どうやらシンガポールが世界で最も大気の状態が悪いようです。

また、「非常に健康に悪い」とされるレベルの場所も、マレーシアにいくつかあることがわかります。

大気汚染で名高い中国でも、今日の時点では、最高に汚染されている場所で、PM2.5レベルは 170台であり、シンガポールやマレーシアの大気汚染の深刻さが伺えます。

この原因のひとつとなっているのが、インドネシア山林火災だとされていますが、そのインドネシアも大気汚染の状況は深刻です。

9月17日のシンガポールのビジネス・インサイダーは、マレーシアで、約 520校の公立学校が大気汚染のため休校になったり、インドネシアでは、4ヵ月の赤ちゃんを含む何人かが大気汚染によって死亡したと見られる、などのことが報じられています。

しかし、この世界で過激化する大気汚染の報道を見ていて思いましたことは、今日の科学報道で見かけた報道でした。

それは、

「大気汚染は、妊娠中の女性の胎盤の中に入りこみ、直接、赤ちゃんに達する」

ことがわかったというものでした。

まずは、その記事を先にご紹介しておきます。アメリカの老舗科学メディア「サイエンス・ニュース」の 9月18日の記事です。

 


Air pollution can reach the placenta around a developing baby
Science News 2019/09/18

大気汚染は成長中の赤ちゃんが育つ胎盤にまで到達している可能性がある

ベルギーで行われた研究では、女性の臓器内に黒色炭素の粒子あるいはススが発見された

妊娠中の女性が汚染された空気を吸うと、それは女性の肺をはるかに超えて、汚染粒子は体内に進行し、発育中の赤ちゃんを取り巻く子宮にまで到達することがわかった。

ベルギーの女性たちから出産後に採取された胎盤のサンプルの調査で、赤ちゃんと接する側の組織に煤(すす)などの粒子、あるいは黒色炭素粒子が存在していることが明らかにされたことが、9月17日の科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ (Nature Communications)に掲載された論文で報告された。

胎盤に見出される黒色炭素粒子の量は、女性たちの大気汚染への暴露量と相関しており、住んでいる場所の黒色炭素粒子の排出量に基づくと推定される。

米ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の環境疫学者であるエイミー・カルクブレナー(Amy Kalkbrenner)氏は、「大気汚染が、発育中の赤ちゃんに害を与えることは間違いありません」と述べる。大気汚染と定期的に遭遇する母親からは、未熟児または低出生体重児が生まれる可能性があるという。

これらの発育上の問題は、子宮内の炎症を含む、母親の身体の大気汚染に対する炎症反応と結びついていると考えられてきた。しかし、カルクブレナー博士によると、今回の新しい研究は、「大気汚染そのものが、発育中の赤ちゃんの体内に侵入している可能性」を示唆しているという。

この研究では、ガソリン、ディーゼル、石炭などの化石燃料の燃焼で放出される汚染物質である黒色炭素の粒子に特に注目した。

ベルギーのハッセルト大学とルーヴェン・カトリック大学の研究者たちは、フェムト秒パルスレーザー照明 (※ 超短パルスレーザーの一種で、一瞬のみ光るパルスレーザー)を使用して胎盤の組織をテストした。

この技術では、非常に高速なレーザーバースト(毎秒 100分の1秒)を使用することによって、組織内の電子を励起し、それにより発光する。コラーゲンの場合は赤、胎盤細胞の場合は緑など、さまざまな組織が特定の色を生成することが知られている。黒色炭素の粒子は白色光を放出する。

研究者たちは、20の胎盤サンプルで検出された黒色炭素粒子の量が、女性たちが住んでいるベルギー北東部のそれぞれの場所の大気汚染度と一致するかどうかも調べたが、汚染レベルが低い居住地域で暮らす 10人の女性よりも、汚染レベルが高い 10人の女性のサンプルから、より多くの黒色炭素粒子が見つかった。

大気汚染の度合いが少ない場所に住む女性たちでは、胎盤組織内に 1立方ミリメートルあたり平均 9,500個の黒色炭素粒が見出されたのに対して、より大気汚染の度合いが強い場所に住む女性たちの場合では、1立方ミリメートルあたり平均 20,900個の粒子が見つかった。

この結果のように、住んでいる場所と、胎盤から見出される黒色炭素の粒子の量が相関するということは、実際に、暮らしている場所の大気汚染の度合いと、女性の胎内の黒色炭素粒子の汚染度合いに相関関係があると確信できるとカルクブレナー氏は言う。

または、内臓組織だけではなく、血液内の黒色炭素粒子さえも、暮らしている場所の大気汚染の度合いと比例する可能性を示しているという。


 

ここまでです。

様々な汚染物質が、妊娠している女性の胎内の赤ちゃんに達し続けているということについては、4年以上前の以下の記事でご紹介したことがあります。

胎内で200種類以上の汚染物質に包まれながら成長して生まれてくる赤ちゃんたちのサバイバル。そして、生まれてからはフッ素で松果体を破壊される子どもたちのサバイバル
In Deep 2015/02/01

これは、カナダの環境ワーキング・グループという団体が、2005年にアメリカの病院でおこなった調査により、

「赤ちゃんのへその緒から 287種類の化学物質が検出された」

ということが明らかになったものでした。

少し抜粋しますと、以下のようなものでした。

環境ワーキング・グループが実施した調査で、二つの主要な研究所の研究者たちは、2004年8月と9月にアメリカの病院で生まれた 0人の赤ちゃんの臍帯(へその緒)中で平均 200種類の産業化学物質と汚染物質を検出した。テストの結果、この赤ちゃんのグループから合計287種類の化学物質が見出された。

臍帯を切った後に赤十字が収集したこれら 10人の赤ちゃんの臍帯血には農薬、消費者製品成分、及び燃焼石炭やガソリン、ゴミからの排出物が含まれていた。

臍帯血から検出した 287種類の化学物質のうち、180種類がヒト又は動物に発ガン性があり、 217種類が脳や神経系に有毒で、 208種が動物テストで先天異常または発達異常を引き起こすことが知られている。

これは、2005年に行われた調査ですので、結構古いものなのですが、「その時でこの状況」ですので、さらにさまざまな汚染状況が悪化している今だと、どういうことになっているのかなとも思います。

そして、今回のベルギーでの研究は、「大気汚染と妊娠中の赤ちゃんの関係」に焦点を当てたもので、その結果、

「大気汚染は、胎盤を通じて、直接赤ちゃんに影響を与える可能性がある」

が明らかになったといっていいものかと思います。

大気汚染が、人間のさまざまな健康に影響を与えることは知られていますけれど、最近クローズアップされているのが、精神あるいはメンタルに対しての影響です。

先日、以下の記事で、1億5000万人分の膨大なデータから、「大気汚染の度合と精神疾患が関係している」ことを示したアメリカとデンマークでの研究をご紹介しました。

この研究によれば、大気汚染の最もひどい場所で 10年間暮らした子どもは、大気が最もきれいなレベルの大気の中で 10年間暮らした子どもに比べて、

・統合失調症が 148パーセント多い

・パーソナリティ障害が 162パーセント多い

・うつ病が 51パーセント多い

・双極性障害が 29パーセント多い

ということが示されました。

つまり、他の要因等を考慮したとしても、「大気汚染が、特に幼少期の子どもの精神に影響を与える」ことは、ある程度は間違いないものだと思われるのです。

ということは、今回のベルギーでの大気汚染と女性の胎盤の中に、いわゆるスス(煤)、あるいは黒色炭素の粒子が見出されたということは、最も若い人間の生体である赤ちゃんの時期に大気汚染の影響が与えられてしまう可能性があるということになります。

もちろん、現在の世の中は、都市部でも、あるいは車社会のため、地方部でも大気汚染は深刻であり、現代の世界はどこでも大気汚染状況にあることは確かだと思いますけれど、しかし、それでも、今のシンガポールのような異様な大気汚染の状況の中で生きることは、少なくとも小さな子どもや、そして、お腹の中の赤ちゃんにとっては大変なリスクになると思われます。

お腹にいるうちの初期の段階の赤ちゃんというのは「脳が成長していく途中にある」わけですから、そこに直接、大気汚染が達するとするならば、特に影響は甚大だと思われます。

なお、「なぜ、大気汚染が脳に影響を与えるか」ということについては、いろいろな説があるのですが、最も納得できるのは、PM2.5などを含む微細な粒子は、

・鼻の中にある嗅神経を通過できる(嗅神経は脳につながっている)

・気管支のマクロファージ(白血球の一種)が、微細粒子を細胞内に取り込むことで、血液内を移動できる

という特性があるようで、鼻から匂いを嗅ぐ嗅神経から脳に到達する、あるいは、白血球などを通して血液内に混入するというように移動、拡大している可能性があるようです。

嗅神経からダイレクトに脳に移動した PM2.5などの微細粒子は、それそのものが、脳、特に記憶や認知を司る脳の海馬という場所を炎症させる原因になり得ます。

あるいは、血管内に粒子が取り込まれる件に関しては、Wikipedia の「粒子状物質」に、以下のような説明があります。

PM2.5は非常に粒子が細かいため人体内の肺胞の中に入り込み、炎症反応や血液中に混入するなどの恐れがある。

このように血液に取り込まれた微細粒子に関しては、「血液は脳の松果体を通っていく」ということから、松果体に影響を与える可能性もあると思われます。松果体の炎症や石灰化の要因となり得る場合もあるのではないかと。

大気汚染が脳に影響を与えるメカニズムが明らかになっているわけではないですが、上のようなことが、多少なりとも関係していることは間違いないようです。

そして、妊娠中のお腹の中の赤ちゃんも大気汚染をダイレクトに受けてしまっている可能性があるわけで、現在のように、世界中で大気汚染の状態が悪化していく中では、妊娠されている方や、される予定のある方は、妊娠の期間を過ごす環境や過ごし方も重要になってくるかもしれません。

しかし、現実として、先ほどの大気汚染マップが示すように、多かれ少なかれ、アジアはどこもほとんどが大気汚染下にあることは事実で、これからの子どもたちにも、さまざまな健康やメンタルの問題が増加してしまうのかもしれません。

どうすりゃ解決できるのでしょうかね。


<転載終了>