芳ちゃんのブログ さんのサイトより
http://yocchan31.blogspot.com/2020/07/blog-post_8.html
<転載開始>
アフガニスタンではタリバンは有力な政治勢力である。アフガニスタンの将来を論じる際にはもはやタリバンの存在を無視することはできない。今年の229日、米国とタリバンは18年間も続いた戦争に終わりを告げる和平に合意した。米軍とNATOの同盟軍は14カ月以内に撤退を終了させることになった。それと共に、米軍とNATO軍の撤退を安全に進めるために条件を設定し、お互いに了承した。
アフガニスタンにおける米軍の作戦はタリバンによる攻撃の目標となることが多かった。米諜報機関の専門家(もちろん、匿名)はこれはロシアがタリバンに対して米兵の殺害に報奨金を秘密裏に支払っているからだとの結論を導いた。
627日付けのガーディアン紙によると(原題:Outrage mounts over report Russia offered bounties to Afghanistan militants for killing US soldiers: By Guardian staff, Jun/27/2020)、ニューヨークタイムズがこの考えを最初に報道したとのことだ。626日のことであった。それを受けて、ワシントンポストが後追い記事を流した。
ところで、「依然として続くタリバンとアルカイダの関係」と題された岡崎研究所の報告(去年の1030日付け)によれば、約半年前に下記のような状況が報告されていた。
 約300人のアルカイダの戦闘員がタリバンの部隊に属し、米国を標的にしている。アルカイダはタリバンに爆発物の作り方、特殊工作の計画、洗練された攻撃などを教え、タリバンを訓練している。
 アルカイダがタリバンの部隊にいることがタリバンの穏健派と強硬派の対立の重要な要素になっている。強硬派は戦争を終わらせる政治的解決に関心が無いようである。
 米国とタリバンの和平交渉中、タリバンによるテロ攻撃が何度となく行われている。タリバンがその総意として米国に揺さぶりをかけるためにテロ攻撃をしていたというよりも、強硬派の独走であった可能性がある。
これらの3項目を読むと、軍の組織ではこういった状況、つまり、強硬派の独走が起こり得ることはわれわれ日本人は満州事変の経緯からよく承知している。そして、歴史を紐解くと、他国でも大なり小なり同様のことが繰り返して起こっている。
ここに、「米兵を殺害するタリバンにはいったい誰が資金提供をしてきたのか」と題された記事がある(原題:Who REALLY funded the Taliban to kill Americans?: By Sreeram Chaulia, Jul/03/2020)。組織犯罪の捜査では資金の供給ルートを暴くことが鉄則であると言われているが、まさにその鉄則を髣髴とさせるような表題である。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
Photo-12017年の保存写真。アフガニタンのローガル州の空港で待ちうける米兵たち。© AP Photo/Rahmat Gul
米兵を殺害するためにロシアはタリバンに報奨金を支払ったとしてロシアを非難する一方で、米国の政治家はアフガニスタンでそもそもテロ組織を武装し、資金を提供して来たのはいったい誰であったのかという事実については、好都合にも、すっかり忘れてしまっている。
米兵を殺害するためにロシアはタリバンに報奨金を支払ったとの一部の米諜報組織の主張はワシントンでは党派間に怒りに満ちた論争を引き起こした。これはドナルド・トランプ大統領はロシアに対してあまりにも柔らか過ぎるとする民主党側の長広舌の非難演説をもたらし、ロシアには新たな経済制裁を要求させる始末となった。
米大統領選を真近に控えて、トランプは国家の安全保障については米軍の最高司令官として極めて無能な大統領であるとか、ロシアと結託して米軍に血を流させるとは破廉恥そのものであると描写することは政治攻撃のためには非常に手っ取り早い道具となっている。
米国の自由主義者陣営にとってはロシアやロシアが関与する邪悪な行為ほどにゾクッとするような感情や情熱を掻き立てる物は他にはないのだ。ロシアとタリバンの両者はそのような協力関係を否定し、トランプ政権の国家安全保障問題担当補佐官のロバート・オブライエンはタリバンに対するロシアからの報奨金については何の裏付けもないと明確に述べている。そして、ロシアがタリバンに対してインセンティブを与えたとするCIA情報は国家安全保障局(NSA)に疑惑の念をもたらしたが、ちょうど今はワシントンでは政治的ナイフを持ち出す季節でもある。 
この深刻な誤解は米国の国内政治から来たものであって、ロシアの対外政策とは何の関連性もない。トランプは無知だ、ナイーブだと言ってトランプを非難する米国の政治家たちは、多面的で複雑な社会を持ったアフガニスタンで2001年の米国の侵攻から始まった20年にも及ぶ戦争ではいったい誰がタリバンや他のいくつものテロ集団に武装を施し、資金提供を行ってきたのかに関しては諸々の事実を都合よく無視してしまっている。 
パキスタンを忘れたのか? 
何年間にもわたって米国の戦略専門家や諜報機関ならび軍司令官たちの間ではタリバンの聖域と資金源はパキスタン軍部と絡んでおり、パキスタンとアフガニスタンの国境をまたいで活動する同盟関係を持った聖戦戦士の集団によって維持されているとする見方が一様に行き渡っていた。
ジョージWブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージは「2002年から2004年にかけてパキスタン政府はタリバンに対して直接的な支援を与えたとする重要な情報」に関して喋っている。あの当時はタリバンが組織を再編成し、長期にわたる反米蜂起行動を再開した時期であった。
2011年、バラク・オバマ大統領の下でアメリカ統合参謀本部議長を務めたマイク・マレン提督は手強いハッカーニのテロリスト・ネットワークを「パキスタンの国内諜報機関の本物の支部である」と称した。同ネットワークは米軍に対していくつものテロ攻撃を行い、タリバンからは切っても切れない関係を維持していた。
2018年には、トランプ大統領の下で米陸軍参謀長であったマーク・ミリー将軍は「アフガニスタンにおける反政府活動を一掃することは実に困難である」と愚痴をこぼした。なぜかと言うと、「ハッカーニや他の武装集団はパキスタン国内の国境地域で安全地帯を享受していたからだ。」 
タリバンを支える外国からの支援ではパキスタンこそがもっとも重要であるということに関しては米国家安全保障機関によって山のように多くの証拠が収集されていたにもかかわらず、ワシントン政府はこの結びつきを破壊することには成功しなかった。現場で何が起こっているのかについては十分に知っていながらも、米国は、2002年から憤慨し切ったトランプ大統領がこの支援を断ち切り、アフガニスタンで米兵を殺害する「混沌の代理人」に安全な避難場所を提供するパキスタン政府を非難した2018年までの間に、パキスタンに対して330億ドルもの支援を提供した。
米国がパキスタンに軍事援助や民間に対する支援を与え、それらの資金はタリバンやハッカーニ・ネットワークへと流されたのであるが、封筒の裏面で簡単に計算してみると極めて率直な結論を導くことができる。つまり、複数の米国政府がアフガニスタンにおける米兵に対する凶暴な攻撃に対して間接的に資金援助をしていたのである。民主党員はロシアやタリバンに関してしゃがれ声で叫び声をあげているが、なぜか責任の本質をここまで詳しく分析しようとはしない。
米国の戦争経済
しかし、真実はパキスタンが単に隣国のアフガニスタンへ介入しているとか、米国はパキスタンを慎重に扱っているといった見方よりも遥かに複雑で曖昧でもある。タリバンを抑え、暴動に対処する策の一部として、アフガニスタンにおける米国の占領部隊はあらゆる種類の地方軍閥や民間警備勢力、民兵組織および個々の民族グループの起業家らを贔屓にしてきたが、彼らはすこぶる乱暴であって、口汚く、無法者揃いであった。
ワシントンポストが引用した法廷会計士によると、1060憶ドルにも相当する米国務省が与えた諸々の契約の「約40%の金は反政府派や犯罪組織または腐敗しきったアフガニスタン政府の要人のポケットへと消えて行った」。そして、「契約金額の18%がタリバンやハッカーニ、その他の反政府派組織へ流れた」と調査官はさらに詳細を述べている。 
米国には駆け出しのアフガニスタン政府を支援し、タリバンやアルカイダといった聖戦士集団からの脅威を回避しようと試みる外交官や軍人がいる。その一方では、アフガニスタンには戦争経済や頭を悩ませる汚職が横行している。そこでは、米国の国家構造のさまざまな要素が地方の軍閥を育て、中央政府を弱体化させ、国家全体を統治することはできないままだ。
アフガニスタン復興担当特別監察官(SIGAR)は2016年に「米政府は悪質な政治ブローカーとの協力関係を抑制し、これらの勢力が組織的な崩壊を招きかねないリスクに鑑みて、これらの勢力から得られる短期的利益は如何なるものもバランスよく調和させるべきである」と述べて、やんわりと批判した。
振り返ってみると、2,400人近くの米兵と救数の同盟国からの1,100人以上もの兵士を殺害することになった、この長期化したアフガニスタン戦争は大失敗である。その中核的な理由は米国の誤った政策と米国が採用した危険極まりない同盟関係である。この悲惨な米国の戦争の終わりに当たってロシアもしくはイラン(西側の諜報機関によってタリバンを秘密裏に支援しているとしてしばしば言及されている)を非難することはまったく筋が通らない。
トランプはすでにタリバンとの和平合意を実現し、米国のアフガニスタン戦争後の展望が用意されつつある折からも、地域の利害関係のある各国は何れも前もって計画を練り、タリバンならびにアフガニスタンにおける他の勢力との接触を図り、自国の安全保障のための緩衝地帯と救命ネットとを形成しようとしている。
しかしながら、米国人将兵を攻撃するためにロシアがタリバンへ金を払ったとして未確認の主張をかき集めることは極めて偽善的であり、これは歴代の米国政府の責任から世間の関心を逸らせるためのものである。これらの政府には民主党選出の大統領であったバラク・オバマも含まれる。彼らはアフガニスタン戦争で大きなヘマを仕出かして、何千人もの米兵の命を危険にさらした。もしもロシアがルール違反をしたとして大声を張り上げている批評家や党の幹部が自分自身の考えを熟考するならば、米国はこの長期の戦争において、結局、それほど自由主義的でもなく、高貴な振る舞いもしなかったことを彼らは自から認めることであろう。
著者のプロフィール:スリーラム・チョウリアはインドのソーニーパトに所在するジンダル・グローバル大学の教授で、国際関係学部長を務める。近著: Trumped: Emerging Powers in a Post-American World
注:この記事に述べられている主張や見解、意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。
これで、全文の仮訳が終了した。
米ロ間の国際関係についてはその詳細を知れば知るほど米政治がもたらす不条理や偽善性に直面させられる。われわれ素人は辟易とさせられるのが落ちだ。特に米国においてはメディアが絡んで来て、多くの場合状況をさらに悪化させる。今回の「米兵を殺害するためにロシアはタリバンに報奨金を支払った」とする根拠のない主張は、またもや、ニューヨークタイムズが言い出したものであった。そして、ワシントンポストがそれに続いた。
米国のメディアはかっては言論の自由を標榜し、理想を追求するジャーナリストの世界観によって支配されていたものだ。ニクソン大統領を辞任に追い込んだウオーターゲート事件はその典型的な出来事であったと思う。われわれ素人は映画「大統領の陰謀」を思い出してしまう。盗聴事件に関してワシントンポストの二人の記者が次々と謎を解いていく姿が見事に描かれていた。ところが、今はフェークニュースに次ぐフェークニュースだ。大手メディアのジャーナリズム精神の劣化は見るに忍びないほどである。
メディア界もさることながら、基本的には、質の悪い素人政治家が多くなったということであろうか?日本でもまったく同様の課題をわれわれ自身が抱えているわけであるが、この政治家の質の問題はブーメランの如くわれわれ選挙民に跳ね返ってくることを忘れないでおこう。日本では政治の失敗は国民ひとりひとりにとっては12千万分の1に薄められて、個人としては痛痒も感じられないのが現実だ。だからこそ、そのような現実は国民という集合全体にとっては潜在的に非常に大きな危険性を孕んでいるのである。
この引用記事はそんなことを思わせてくれた。



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