くろきげんのライブドアブログ

MathJaxを無料ブログで使えることを証明するためにライブドアブログを使い始めました。ライブドアブログで数式を書きたい人は MathJax を使ってみて下さい。

使い始めてわかったのはこのライブドアブログがかなり使い易いこと。ここであれば MathJax で数式を書くことが苦になりません。 MathJax の使い方については「MathJaxの使い方」を見て下さい。
あと「かけ算の式の順序にこだわってバツを付ける教え方は止めるべきである」も読んでもらえるとうれしいです。

東北大学数学教室関係者は東北大学大学院理学研究科 数学専攻臨時ウェブページも見て下さい。
このブログにおける東北大学の大震災被害状況に関する記事は私個人の責任で書いています。問い合わせは私個人宛にして下さい。コメントで質問するのが最も簡単な方法だと思います。

1988年に書いたREDUCEでVirasoro代数を扱うためのコード

フロッピーディスクに入っていたファイルを発掘できたので貼り付けておきます。説明は一切しません。REDUCE 3.7 のマニュアル (PDF現在REDUCEは無料)を見て下さい。

VIRASORO.RDC

clear delta,c,h,l,vech;
order h,c,l;
operator delta,l,vech,ev;
noncom l,vech;
for all m let delta(m)=if m=0 then 1 else 0;
for all m,n such that m>n let l(m)*l(n)=l(n)*l(m)+(m-n)*l(m+n)+c*(m**3-m)*delta(m+n)/12;
for all m let vech(m)**2=1;
for all m,n such that m>0 let l(m)*vech(n)=0;
for all m,n such that 0>n let vech(m)*l(n)=0;
for all m let l(0)*vech(m)=h*vech(m),vech(m)*l(0)=vech(m)*h;
for all x let ev(x)=vech(0)*x*vech(0);
;end;

KACDMAKE.RDC (6次の Kac determinant)

clear kacdet,x;
matrix x(11,11);
array kacdet(6);
for n:=1:6 do begin
for i:=1:11 do for j:=1:11 do x(i,j):=delta(i-j);
for i:=1:p(n,0,0) do for j:=i:p(n,0,0) do      
write x(i,j):=ev((for k:=1:n product l(k)**p(n,i,k))*(for k:=1:n product l(k-n-1)**p(n,j,n+1-k)));
for i:=2:p(n,0,0) do for j:=1:i-1 do x(i,j):=x(j,i);
write kacdet(n):=det(x) 
end;
;end;

PARTNUM.DAT (上のKACDMAKE.RDCで使っている)

clear p;
array p(6,11,6);
p(1,0,0):=1;
p(1,1,1):=1;
p(2,0,0):=2;
p(2,1,1):=2;
p(2,2,2):=1;
p(3,0,0):=3;
p(3,1,1):=3;
p(3,2,1):=1;p(3,2,2):=1;
p(3,3,3):=1;
p(4,0,0):=5;
p(4,1,1):=4;
p(4,2,1):=2;p(4,2,2):=1;
p(4,3,2):=2;
p(4,4,1):=1;p(4,4,3):=1;
p(4,5,4):=1;
p(5,0,0):=7;
p(5,1,1):=5;
p(5,2,1):=3;p(5,2,2):=1;
p(5,3,1):=1;p(5,3,2):=2;
p(5,4,1):=2;p(5,4,3):=1;
p(5,5,2):=1;p(5,5,3):=1;
p(5,6,1):=1;p(5,6,4):=1;
p(5,7,5):=1;
p(6,0,0):=11;
p(6,1,1):=6;
p(6,2,1):=4;p(6,2,2):=1;
p(6,3,1):=2;p(6,3,2):=2;
p(6,4,2):=3;
p(6,5,1):=3;p(6,5,3):=1;
p(6,6,1):=1;p(6,6,2):=1;p(6,6,3):=1;
p(6,7,3):=2;
p(6,8,1):=2;p(6,8,4):=1;
p(6,9,2):=1;p(6,9,4):=1;
p(6,10,1):=1;p(6,10,5):=1;
p(6,11,6):=1;
;end;

以上のサンプルを見れば、もっと複雑な場合にもすぐに対応できると思います。

Windows 7 ユーザーが数式処理ソフト Sage を使い始める方法

目標

たくさんの人に無料で使える数式処理ソフト Sage math で遊んでもらうこと。

目次

1. http://alpha.sagenb.org/ を使う (超簡単)

Windows に Sage math をインストールして使うのは結構大変です。しかしブラウザから http://alpha.sagenb.org/ にアクセスして Sage math を簡単に試してみることができます。

私は Google のボタンを押して、Google アカウント経由の Open ID で Sage profile を作成しました。次回のログイン時には Google ボタンを押すだけですみます。この説明でよくわからない人は "Sign up for a new Sage Notebook account" をクリックして使いたいユーザー名とパスワードを入力して登録しても構いません。

登録がすむと "Active Worksheets - Sage" の画面になります。あとは自由にいじってみて下さい。

最初は、左上隅の Sage のロゴの右下にある "Upload" をクリックして、"Or enter the URL of a file on the web." の欄に以下のワークシートの URL のどれかをコピー&ペーストして "Upload Worksheet" ボタンを押してみましょう。もしくは以下のワークシートを手元にダウンロードしてから、「ファイルを選択」ボタンを押してそれを選択してアップロードしても構いません。

Sage days in Japan (←ここも見ておいた方が良い) より

とにかく恐れずに色々遊んでみましょう。どうせ失敗してもワークシートのアップロードから全部やり直すことができます。ワークシートで遊び終わったら、"Action..." → "Save and quit worksheet" を選択する。

他の人達がどのようなワークシートを作って遊んでいるかを見たければ http://www.sagenb.org/pub/ を覗いてみて下さい。

sage/sageの紹介」と「Sage_introduction」も参考になります。

http://www.math.tohoku.ac.jp/~ishida/ から「2008 年度後半計算機数学 A」の内容をダウンロードできます(PDF)。 これを見ながら Sage で色々遊んでみると良いかもしれません。

線形代数に関する Sage ワークシートを ZIP でまとめたものおよびPDFファイルのまとめhttp://linear.ups.edu/sage-fcla.html からダウンロードできます(ただし英語)。英語が苦手でも数学がわかっていれば困らないと思います。ただしワークシートが細切れになっているので、Sage で線形代数を扱いたい場合には PDF ファイルを見た方が早いかもしれません。

他にも検索すれば Sage の使い方を学ぶために便利なワークシートを大量に見付けることができます。

Windows 7 に Sage math をインストールして使う (結構面倒)

これは結構大変です。

0. http://www.sagemath.org/ の様子を覗いてみる

Download のページは必ず覗くことになります。基本的にあちこちに書いてある指示をよく理解して従えば手元の Windows 7 マシンに Sage math をインストールして使うことができます。

実際には VirtualBox 内で Linux 動かして、その中で Sage サーバーを立ち上げることになります。だから、まず VirtualBox をインストールしなければいけません。

VirtualBox 内で Sage を動かす方法が http://wiki.sagemath.org/SageApplianceInstallationhttp://wiki.sagemath.org/SageAppliance に書いてあります。詳しい方法についてはこれらの文書を見てもらうことにして、以下では簡潔に説明します。

1. VirtualBox をインストールする。

https://www.virtualbox.org/wiki/Downloads から Windows 用のインストーラーをダウンロードして、VirtualBox をインストールする。

2. sage-5.0.ova をダウンロードする

これを書いている時点で Sage のバージョンは 5.0 なので sage-5.0.ova というファイル名になっています。バージョンが上がったら最新のものをダウンロードして下さい。 http://www.sagemath.org/download-windows.html 経由でダウンロードできます。サイズが 1667.90 MB と結構大きいので注意して下さい。

3. sage-5.0.ova を VirtualBox にインポートする

VirtualBox を起動して、ファイル→仮想アプライアンスのインポートと選択して、sage-5.0.ova を VirtualBox にインポートして下さい。

http://wiki.sagemath.org/SageApplianceInstallation#Open_VirtualBox の説明の通りに進めて下さい。説明の英語と手元で動いている VirtualBox の日本語表示の違いが気になるならば、 VirtualBox でファイル→環境設定→言語と選択して、English(内蔵)を選択しておけば良いでしょう。

仮想アプライアンスのインポートの途中で設定をいじる場面がありますが、最初は何もいじらずにデフォルトの設定のまま進んだ方が良いでしょう。後でいくらでも変更できます。

4. VirtualBox 内で Sage 5.0 を起動する

VirtualBox にインポートされた Sage 5.0 を選択して「起動」(緑の右矢印)のボタンを押します。すると Linux が VirtualBox 内で立ち上がります。しばらく待つと真っ黒で大きな窓が現われ、さらに待つとそこに http://alpha.sagenb.org/ で Sage を試したときに最初に現われたのと同じ画面が現われます。

「あとは同じように使って下さい」と言いたいところですが、日本の Windows ユーザーは日本語キーボードを使っているのに、VirtualBox 内で立ち上がった Linux は日本語キーボードの設定にはなっていません。その設定を変えることもできるのですが、面倒なので Windows 上でいつも使っているブラウザで VirtualBox 内で立ち上がっている Sage サーバーにアクセスした方が便利でしょう。

5. Windows 上のブラウザから VirtualBox 内の Sage サーバーにアクセスしてみる

私が一番はまったのはこの段階です。以下を順番に試してみると良いと思います。

(1) Windows 上のブラウザから http://localhost:8000 にアクセスしてみる。

これだけでブラウザに Active Worksheets の画面が現われたなら大成功です。運が良かったことに感謝しましょう。もしもブラウザに Not Found と言われたら次を試してみましょう。

(2) VirtualBox のポートフォワーディングの設定を変える。

まず、VirtualBox が立ち上げた Active Worksheets の窓を閉じて、VirtualBox 内の Sage 5.0 をシャットダウンします。そして、Sage 5.0 について「設定」ボタン→ネットワークと選択して、「割り当て」が NAT になっていることを確認して、「高度(D)」をクリックします。すると「ポートフォワーディング」のボタンが現われるのでそれを押します。するとホストIP 127.0.0.1、ホストポート 8000 の設定が見付かります。ホストポートを 8000 以外の数字(たとえば 8001) に変て、OKボタンを押します。これは、 WIndows のシステムが 8000 番のボートを使ってしまっている場合があるので、それとかち合わないようにするための設定です。他の設定は一切変えません。

再度「起動」ボタンで Sage 5.0 を起動して、Windows 上のいつも使っているブラウザから http://localhost:8001 などにアクセスしてみる。

おそらくこれで成功したはずです。次に説明する別の方法もあります。

(3) ネットワークの「割り当て」を「ブリッジ アダプタ」に変える。

上で、「設定」ボタン→ネットワークと選択したときに、「割り当て」がデフォルトの設定の NAT になっていることを確認できたはずです。その「割り当て」を「ブリッジ アダプタ」に変えます。するとあなたのパソコンが繋がっているのと同じネットワーク内から VirtualBox 内の Sage サーバーにアクセスできるようになります。ただし、以下の手続きが必要になります。

まず、Windows 7 のネットワークと共有センターを開きます。すると VirtualBox Host-Only Network が見付かるので、それをクリックして下さい。すると VirtualBox Host-Only Network の状態の窓が立ち上がるので、そのプロパティボタンを押して、もしも VirtualBox Bridged Networking Driver にチェックが入っていなければ、チェックを入れてOKボタンを押して下さい。

次に、VirtualBox 内の Sage のネットワークの「割り当て」を「ブリッジ アダプタ」に変えた後に、 Sage を起動します。Sage の Active Worksheets の窓が現われたら、右コントロールボタンを押しながらF1 (ファンクションキーの1) を押します。すると Linux のコンソール画面が現われます。元に戻したければ、右コントロールボタンを押しながらF2を押して下さい。右コントロール+F1で開いたコンソール画面で system login: root と Password: sage でログインして下さい。そして ifconfig と打ち込んでリターンキーを押す。すると eth0 の項目の中に inet addr: 192.168.11.10 のように書かれている部分が見付かるはずです。このアドレスにアクセスすれば VirtualBox 内の Sage サーバーに繋がります。

仮に eth0 inet addr: 198.168.11.10 ならば Windows 上で普段使っているブラウザから http://192.168.11.10:8000 にアクセスしてみて下さい。これで繋がれば成功です。同じネットワーク内の他の端末からも同様にアクセスできるはずです。ぼくは WiFi で繋がっているスマートフォンから自宅内の Sage サーバーに接続して遊べることを確認しました。ただし、スマートフォンからのアクセスだとグラフが表示されなくなります。数式処理や数値計算をする分には普通に使えます。

ただし、以上の設定はセキュリティを完全に無視していることには注意して下さい。その点が気になる人は http://wiki.sagemath.org/SageAppliance#Giving_Others_Access_to_the_Sage_Virtual_Machine の指示に従って下さい。

6. 設定をいじる

VirtualBox 内の Sage サーバーがもっとたくさんのメモリを使えるようにするためには、VirtualBox 内で動いている Sage サーバーをシャットダウンしてから、VirtualBox の「設定」ボタン→システムで行ないます。自分の好みに合わせて好きなように変えてみて下さい。失敗してもいくらでもやり直しできます。

VBoxHeadlessTray を利用して、VirtualBox 関係のうざい窓が表示されないようにすることもできます。

Sage の Combinat パッケージ (mailing list) を使いたい人は、右コントロール+F1として、system login: root と Password: sage でログインして、以下を順次実行しましょう:

# su sage
$ cd
$ cd sage
$ ./sage -combinat install
$ exit
# reboot

Combinat は組合せ論的な数学を扱うためのパッケージです。たとえばワークシート Basic Combinatorics intro.sws をアップロードして覗いてみれば雰囲気がわかると思います。

Combinatパッケージの中にはクラスター代数を扱うためのライブラリも入っています(A compendium on the cluster algebra and quiver package in sage)。詳しくは Sage and cluster algebra workshop を見て下さい。ただし、その研究会以後に仕様が変わっているので、直接ソースを覗いてみることが必要になります。たとえば http://wstein.org/home/wstein/www/home/combinat/sage/devel/sage-combinat/sage/combinat/cluster_algebra_quiver/ でソースを見ることができます。

現在の日本棋院ルールのわけのわからなさ

池田敏雄氏の囲碁ルール試案の紹介」にも書いたように、ぼくは池田囲碁ルール試案 (英語版) の支持者です。

この記事では現在の日本棋院ルール(日本囲碁規約)の「対局の停止」後の死活の判定の方法について例を用いて説明します。日本囲碁規約では死活判定のための仮想手順では劫を取り返すためには取り返したい劫を指定したパスが必要だということになっています。さらに「取られても新たに相手方に取られない石を生じうる石」は取られた石数とは無関係に「活き石」だと判定されることになっている。これらの特殊なルールが原因になって、どんなに囲碁が強い人であっても (プロであっても!) それらの特殊ルールを熟知してなければ死活や手入れの要不要を判定できない場合が出て来てしまいます。しかも日本囲碁規約には論理的な不完全さや曖昧さが存在し、どのように解釈したら正しいのか分からない部分が残っている。この記事ではその様子の一端を紹介したいと思っています。

白:大橋拓文四段(当時)と黒:潘善琪七段の対局の事例

この事例に関する簡潔な説明が高尾紳路九段のブログの記事「ルールは難しい・・・」にあります。

第35期日本棋聖戦預選戦 白:大橋拓文四段 黒:潘善琪七段 2009-09-03の対局の停止の局面は次の通り。コミは6目半です。

┌┬┬┬┬┬┬●○○○○●┬┬┬┬┬┐ アゲハマ
├┼●○●┼●●●○○●┼┼┼┼┼┼┤ 白石10
├●┼○┼┼●●○○●┼●┼┼┼┼┼┤ 黒石9
├┼○┼○●●○○●●┼┼┼┼┼●┼┤
├○●●○●○○┼○○●┼┼┼┼┼●●
├┼┼┼●●●○┼○○●┼┼┼┼●●○
├┼┼┼●○○○○●●┼┼┼┼┼●○○
●●┼●●●●○●●●●●┼●●○┼○
●○●●●○●○○●●○○●●○○○┤
●○○●○○●○●●○○○●○●○┼┤
●●○○○┼○○●●●○┼○○┼┼┼┤
├┼●○┼┼○●●○○┼○┼┼┼┼┼┤
●●●●○○○○●○┼○┼┼┼┼┼┼┤
●●●●●●○○○●○┼┼┼┼┼┼┼┤
○○●○○●●●●●○┼┼┼┼┼○┼┤
○┼○●○◇●○●○┼┼┼┼┼┼┼┼┤
├○○●○○○○○○┼┼┼┼┼○┼┼┤
○●●●●●●●○○○┼┼┼┼┼┼┼┤
└○┴●┴○┴●●●○┴┴┴┴┴┴┴┘ ◇に白が226手目を打った局面

問題になったのは左下隅で白の手入れが必要か否かです。白側が手入れ要らずと主張したため、審査会に「勝負預かり」となりました。そして審査会の判定で手入れは必要ということになり、白の一目半負けということになりました。

問題は二つあります。一つ目はどのような理由で審査会が白の手入れが必要だと判断したのか。二つ目はプロであっても手入れの要不要を判断できない理由は何か。実は一つ目の理由を詳しく理解すれば、二つ目の理由もよく理解できます。日本囲碁規約を理解するためには碁の本質から大きく外れた思考を要求されます。

日本囲碁規約第七条に石の死活の定義があります。

第七条(死活)
 1 相手方の着手により取られない石、又は取られても新たに相手方に取られない石を生じうる石は「活き石」という。活き石以外の石は「死に石」という。

ただし、対局の停止後の死活の判断では、通常の碁では許される手が許されなくなり、普通の碁とは大きく異なるルールが採用されることになっています。日本囲碁規約第七条-2より

第七条-2 第九条の「対局の停止」後での、死活確認の際における同一の劫での取り返しは、行うことができない。ただし劫を取られた方が取り返す劫のそれぞれにつき着手放棄を行った後は、新たにその劫を取ることができる。

さらに

3 取り返す劫のそれぞれにつき、着手放棄が必要
取り返しとなる劫が二個以上ある場合は、どの劫で着手するのか指定しなければならない。

とされています。要するに死活確認の仮想手順内では取り返したい劫ごとに劫を指定してパスをしてからでないとその劫を取り返せないわけです。 (個人的にはこれはもはや碁のルールではないと思う。いずれにせよ、通常の碁とは質の異なるヨミが要求されることになります。)

実は日本囲碁規約 Ⅲ 死活確認例 死活例23には上の実戦図と本質的に同じ図があります。引用しておきましょう。

 第七条第1、2項及び第一条の碁の目的により、黒は「活き石」、白は「死に石」。終局前に白がaに打てば「セキ石」であり、さらに黒が着手すれば、黒ハマ九子、白ハマ一子となる。
(死活例 23)

日本囲碁規約第一条によれば囲碁の目的は「地の多少を争うこと」とされています。

第一条(対局)
囲碁は、「地」の多少を争うことを目的として、競技開始から第九条の「対局の停止」までの間、両者の技芸を盤上で競うものであり、「終局」までの間着手することを「対局」という。

さて上の死活例23および上の実戦例で白の手入れが必要なことはどのように導かれるのでしょうか。簡単のため上の実戦例で説明しましょう。

(1) 対局停止の局面の左下の様子

●●●●●
○○●○○
○┼○●○
├○○●○○○○○
○●●●●●●●○○○
└○┴●┴○┴●●●○

もしもこのまま左下隅がセキで白の死石が1つだけならば、
左下隅は黒地1目だと考えられ、白の半目勝ちになる。
(日本囲碁規約ではセキ石の眼は地にならない。)
白が勝つためには左下隅がこのままセキになっていると主張せざるを得ない。

(2) 白が手入れした場合

●●●●●
○○●○○
○┼○●○
├○○●○○○○○
○●●●●●●●○○○
└○┴●2○1●●●○ 白1、黒2、白3(白1の位置)で次図

●●●●●
○○●○○
○┼○●○
├○○●○○○○○
○●●●●●●●○○○
└○┴●●┴○●●●○

白石のアゲハマが2つ増え、さらに上の白3の石も死石になる。
よって左下隅は黒地3目だと考えられ、白の1目半負けになる。

(3) 日本囲碁規約に基いた白の手入れが必要な理由

(3-1) 白が取られる変化

●●●●●
○○●○○
○7○●○
5○○●○○○○○
○●●●●●●●○○○
3○1●┴○2●●●○

黒1、白2、黒3、白4パス、黒5、白6パス、黒7
ここで白のパスは劫を取り返すためのパス。
劫立てがどんなにあっても無意味。
日本囲碁規約第7条-2によれば劫を取り返すためにはパスが必要。

(3-2) 白が無限に粘ろうとする変化

●●●●●
○○●○○
○┼○●○
3○○●○○○○○
○●●●●●●●○○○
2○1●┴○┴●●●○

黒1アテ、白2ツギ、黒3三子を取る、
白4一子の取り返し(2と3のあいだ)、
黒5ホウリコミ(2の場所)、
白6コウトリ(1と2のあいだ)で次図

●●●●●
○○●○○
○┼○●○
├○○●○○○○○
○●●●●●●●○○○
└○●●┴○┴●●●○

ここで黒が劫を取り返すために黒7でパスし、
上の白2以降を繰り返せばまたこの図に戻る。
白はこの方法で無限に粘ることができる。

しかし、一周するごとに白は1目ずつ損をし続けることになる。
日本囲碁規約第一条には「地」の多少を争うことが囲碁の目的だと書いてあるので、
損しながら無限に粘る行為は囲碁の目的に反するので禁止される。
したがって上の手順で白が無限に粘り続けることは許されない。

おそらく以上のようにして日本囲碁規約から白の手入れが必要だという判定を導いたのでしょう。しかしアゲハマで損をし続けながら無限に粘ることの禁止を日本囲碁規約第一条にある囲碁の目的から導き出せることは自明ではありません。やはり日本囲碁規約の説明の仕方は曖昧で問題ありだと思います。

ちなみにドイツの囲碁ルール研究科の Jasiek さんが日本囲碁規約から曖昧さを無くしたらどうなるかを示しています。それは Japanese 2003 ルール (解説) と呼ばれています。非常に複雑でわけがわからないものになってしまっています。

そもそも、碁の基本は着手禁止点と同形反復を除けばどこに石を打っても良いことです。碁は可能な手が極めてシンプルなルールで定義された美しいゲームであったはずです。現在の日本棋院ルールでは対局の停止後の死活判定では碁の基本ルールは通用しないことにしてしまいました。これじゃあ、碁のプロであっても石の死活(したがって手入れの要不要)を判断できないのも仕方がありません。碁のプロは碁のエキスパートであり、碁とは異なるゲームのエキスパートではないのですから。

補足。ちなみに池田囲碁ルール試案では盤上に同じ石の配置が生じることを禁止しているので、上の(3-2)の白6はルール違反になってしまいます。さらに白の手入れがないと劫材をすべて消してから(3-1)と同様の手順で黒は白石を取りに行けるので、白は手入れが必要になります。このように池田囲碁ルール試案を採用すれば地とハマによる日本式計算法のもとでも手入れが必要な理由の説明に碁の根本原理以外の要素を持ち込む必要が無くなります。

取らず三目

次に取らず三目について説明しましょう。本因坊秀和は「取らず三目はそのままで三目の地」と判定していたのですが、日本囲碁規約 Ⅲ 死活確認例 死活例1によれば


黒の四子、白の一子はともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。

となってしまいました。「セキ石」は日本囲碁規約第八条で次のように定義されています。

第八条(地)
一方のみの活き石で囲んだ空点を「目」といい、目以外の空点を「駄目」という。駄目を有する活き石を「セキ石」といい、セキ石以外の活き石の目を「地」という。地の一点を「一目」という。

セキになると白にとって損なので、日本囲碁規約のもとで白は黒4子を抜かなければいけません。しかしそれだと高々白地2目にしかならない。本因坊秀和にしたがえば黒4子を抜くという無駄な手を省いてそのまま白地3目になります。さらにその3目という数字を碁の根本原理に基いて説明することも可能。たとえば池田囲碁ルール試案の日本式ルールでは例外的な場合を除いて取らず三目がそのまま3目の地になることを証明できます。この数字は中国ルールとも一致しています。日本囲碁規約だけが例外的におかしな結果を導く。

日本囲碁規約では取らず三目を残したまま終局すると単なるセキになってしまい、白地2目にもなりません。そうなってしまう理由は死活の仮想手順で「活き石」かどうかを確認するときに取られた石の数は考慮されないからです。仮想手順内でどんなに無駄に石を取られて損をしても第七条にしたがって「取られても新たに相手方に取られない石を生じうる石」が単に「活き石」だと判定されて終わりになります。地の損得は考慮されません。個人的にこれもまた日本囲碁規約の奇妙な点だと思っています。日本囲碁規約第一条によれば囲碁の目標は地の多少を争うことのはずなのに、「対局の停止」後の石の死活判定ではその目的が無視されてしまう場合があるのです。

碁の根本原理に基けば例外的な場合を除いて「取らず三目は白地3目」になるので、実用的簡便法として本因坊秀和判定には価値があったと思います。しかし、日本囲碁規約では問答無用でセキになってしまいます。この点でも日本囲碁規約は碁の道を大きく外れてしまったと考えられます。本因坊秀和のような大棋士の判定であってもその理由について深く考えなかったということなのでしょう。

余談:碁の根本原理に基けば例外的な場合を除いて (手入れで劫材を全て消せる場合には「劫尽くし」で) 「隅の曲がり四目は無条件死」になります。例外の存在を無視して「隅の曲がり四目は無条件死」としていたことには、例外の存在を無視して「取らず三目は3目の地」とすることと同様に、簡便法として価値があったと思います。しかし、優れた能力を持つ棋士にとって必要な簡便法だとは思えません。

日本囲碁規約の死活例17

日本囲碁規約 Ⅲ 死活確認例 死活例17より


 隅の黒三目は「活き石」、白十子は「死に石」。以上から上の白十子も「セキ崩れで「死に石」。
(死活例 17)

Jasiek さんの解釈ではこの死活例17の説明を日本囲碁規約は再現できません。詳しくは Commentary on the Japanese 1989 Rules の Example II.17 を見て下さい。

Jasiek さんによれば日本囲碁規約のもとで黒は隅の曲がり四目の白を取りに行けません。

  • たとえば隅の曲がり四目を取るために黒が劫を取ったとします。
  • すると白は両劫の方の劫を取ります。
  • 黒はアタリを防ぐためにその隣の劫を取らなければいけない。
  • そこで白は日本囲碁規約第七条-2にしたがって両劫の方の劫を取るためのパスを行ないます。
  • すると黒も日本囲碁規約第七条-2にしたがって両劫の方の劫を取るためのパスをせざるを得ません。 もしもそうしなければ次に白に両劫の方の劫を取られるとアタリを防ぐことができなくなるからです。
  • このあと白と黒は両劫の方の劫取りとパスを交互に繰り返すことになります。 これによって白の隅の曲がり四目は永久に取られずにすみます。

この問題に気付いたJasiekさんは解決法も考えているようです。しかし、個人的な意見ですが、日本囲碁規約は曖昧さを無くすと複雑過ぎて汚ないルールになってしまうので、適当な修正によって論理的に存続させる必要はないと思います。ゲームのルールは論理的に正確であればそれで十分というわけではありません。

曖昧さや複雑さを無視したとしても、死活判定のためのヨミがもはや普通の囲碁からかけ離れたものになってしまっていることはこの記事で示した例を見るだけでも明らかだと思います。日本棋院の囲碁のルールは大変なことになってしまったものだと思います。

補足:池田囲碁ルール試案では上のような例のように消せない劫材がある場合には隅の曲がり四目は盤上での戦いで解決することになり、必ずしも無条件死になるとは限りません。個人的な意見では、隅の曲がり四目が必ずしも無条件死にならないことは碁の根本原理に基けば当然のことです。

P.S. 以上の記事に意見やコメントがある人はブログのトラックバックもしくは twitter の genkuroki 宛のメンションをお願い致します。

付録:放置された万年劫

池田囲碁ルール試案には二つの日本式ルールがあります。日本式Iではセキの眼も地になり、日本式IIではセキの眼は地になりません。実は後者の日本式IIルールは放置された万年劫に関する日本棋院囲碁規約1949と日本囲碁規約1989の結果を再現してくれます。

次の図の形で万年劫が放置されたままになってしまったときどうするべきか。

┌●○┬●○┬
●○○┼●○┼
●●●●●○┼
○○○○○○┼
├┼┼┼┼┼┼

白が劫と取って接げば次の形でセキになります。

○○○┬●○┬
●○○┼●○┼
●●●●●○┼
○○○○○○┼
├┼┼┼┼┼┼

日本棋院囲碁規約1949判例でも、日本囲碁規約1989 (死活例12) でも、最後まで放置された万年劫は上の手順で単なるセキ扱いになります。セキにする過程で黒石を1つ取るので白地1目ということになります。

地と盤上の石の数による中国式計算法であれば、盤上の黒石が1目減り、白石が2目増えるので、放置万年劫は白地3目相当だということになります。

池田囲碁ルール試案の日本式Iルールでは仮終局以後は片方が一方的に損することを防ぐために終局までに両対局者は同じ数の石を盤上に打たなければいけないことになっています(パスには1目のペナルティが課される)。だから仮終局後に白がセキにするまでの2手のあいだ黒石が1目取られ、黒には2目分のパスのペナルティが課されることになり、放置万年劫は白にとってやはり3目の価値があるという結論が出ます。詳しくは池田囲碁ルール試案の放置万年劫に関する解説を見て下さい。

池田囲碁ルール試案の日本式IIルールでは仮終局後に打たれたセキ中の石数の分だけ得点から引かれることになり(これはセキの中の眼や一方ダメを得点としないための特殊ルール)、日本式Iの場合よりも点数が2目減ります。つまり、日本式IIで放置万年劫は白地1目相当になります。このように日本式IIルールでは日本棋院囲碁規約1949や日本囲碁規約1989と同じ結果が得られます。

池田敏雄氏の囲碁ルール試案の紹介

池田敏雄著「囲碁ルールについて」(英語版)の囲碁ルール試案の5つのルールの簡単な解説。

中国式Iは本質的に王銘エン九段が「週刊碁」で連載していた「純碁」と同じです。原始囲碁ルール。盤上にある石の数がそのまま得点になる。コミ無し純碁では終局時に盤上にある石の数が多い方の勝ちになる。

中国式IIは通常の中国ルールとほぼ同じ。盤上の石の数と地の総和で勝敗を決するルールです。数学的には原始囲碁ルール(=純碁=中国式I)に「二眼を持って活きた石はそれ以後囲まれても盤上から取り除かれなくなる」というルールを付け加えたものと同値。

通常の中国ルールでは最後に残った駄目の個数が奇数個ならば先着した方が日本式の感覚では1目得することになり、最後に残った駄目の個数が偶数個ならば不必要な手入れを自分の地に入れても損になりません。中国ルールでは白と黒の得点の総和が19×19に等しくなるのでセキがないとき白と黒の得点差は必ず奇数になってしまいます。だから中国ルールでは5目半と6目半のコミの違いが勝敗にほとんど影響しなくなってしまいます(現在の中国ルールでの互先のコミは7目半)。

中国式IIIはこれらの欠点を解消した中国ルールです。解消の仕方は極めて簡単。盤上への最後の着手が黒(先手)だったときに白の得点を1目増やすというルールを付け加えるだけ。極めて面白いことに中国式IIIは次の日本式Iと得点計算が同値なルールになります。

日本式Iはセキの中の眼や一方ダメも得点とみなすことを除けば日本ルールとほぼ同じです。ただし通常の日本ルールと異なり、(仮)終局図で珍形や棋力が原因で石の死活について対局者双方が合意できない場合には(仮)終局以降の盤上での戦いで決着を付けることができるように工夫されています。

まず、両対局者の連続したパスで仮終局になります。仮終局図における死活で両対局者が合意できない場合には仮終局後に「終局までに対局者双方が同じ数だけ盤上に石を置く」という仮終局後のルールのもとで決着を付けることになります(パスしたい場合には盤上に置かれるはずだった自分の石をアゲハマに追加する)。仮終局後に盤上に置かれる石の数が白黒双方同じなので何も事件が起こらなければ得点の差は不変なまま。自分だけが一方的に自分の地に手を入れて損をせずにすみます。極めてシンプルな解決策。

日本式IIはセキの中の眼や一方ダメを得点とみなさない通常の日本ルールとほぼ同じです。日本式Iとの違いはセキの中の眼と一方ダメに関わる得点計算法の違いだけ。日本式Iと同様に仮終局図での死活で合意できない場合には盤上での戦いで決着を付けることができます。

ここからはぼく自身の考察。

池田試案における日本式ルールは「両対局者の連続したパスで仮終局とし、それ以後も打ち続ける場合には終局までに両対局者が盤上に同じ個数だけ石を置かなければいけない」というルールが追加された日本ルールに他なりません。しかし、この意味での仮終局図は日本伝統の無駄な着手が一切省かれた「美しい終局図」にはなりません。

たとえば池田試案の日本式ルールの仮終局図におけるダメの個数が奇数だと、仮終局後に盤上に置かれる石が白黒同じにするというルールによって、仮終局後に先着した側が1目得してしまうことになります。仮終局図で必要な手入れがされてなかった場合にも問題が発生します。池田試案の微妙な点を理解していない人は池田試案の日本式ルールの仮終局図はダメ詰めと手入れがすべて終わった局面だと思っておいた方が無難です。

このように池田試案の日本式ルールの意味での仮終局図は通常の日本ルールにおける「美しい終局図」とは全く異なります。最近では棋聖戦第3局終局図では、半目勝負であるにもかかわらず、右上の境界線が確定されていなかった。「美しい終局図」の実現にはもう一工夫必要になります。

答は簡単です。白と黒のどちらが先着しても得点の差が同じになる局面ではパスをしても結果に影響しません。両対局者の棋力が十分に高く、無駄な着手で棋譜を汚したくなかったり、時間の無駄をしたくなれば、そのような局面で両者がパスしたくなるに違いありません。そのような局面で終局しても良いことにすれば「美しい終局図」が実現されます。ただし、そのような「美しい終局図」におけるパスパスによる終局と日本式IIルールの意味での「仮終局」を混同しないようにしなければいけません。

「美しい終局図」を可能にした池田試案の日本式ルールではゲームの流れは以下のようになります。

1. 通常の対局。両対局者の連続したパスで終局壱。(両対局者が間違いを犯していなければこの意味での終局図は白と黒のどちらが先着しても得点の差が変化しない局面になっているはず。無駄な着手が完全に省かれた「美しい終局図」)

2. 終局壱後に死活などについて両対局者が合意できなければそのまま打ち続ける(すぐにパスしても構わない)。両対局者の連続したパスで終局弐。(実用的にはこの意味での終局図はダメ詰めと手入れがすべて終了した局面だと思っておいて困らない。)

3. 終局弐後に死活などについて両対局者が合意できなければさらにそのまま打ち続ける。ただしその後は両対局者は盤上に同じ個数の石を打たなければいけない。盤上に石を打たずにパスをする場合には自分の石をアゲハマに追加する。両対局者の連続したパスで終局参。(この意味での終局図では盤上のすべての石は活きているとみなされ、機械的に得点を計算するアルゴリズムが存在する局面になる。これは原始囲碁の終局図に近い。)

この方式が普及すれば終局手続きにまつわるトラブル(特にインターネット上での対局では死活や手入れでもめて不愉快なことになる場合があるようだ)をほとんど無くせると思います。

池田試案の日本式ルールを採用すれば終局手続きで相手に理不尽なことを言われたら盤上での戦いでやっつけることによって解決することができます!

関連ツイート

P.S. コメントは受け付けない設定にしてあります。上のリンクをたどればわかるようにツイッターにいます。

追記2012年2月7日 背景の説明

このブログ記事に関連した発言をツイッターの #囲碁ルール タグでしています。(こちらも見て下さい。)

「美しい終局図」にこだわってみた背景の説明。ドイツのJasiekさんによる International Go Rules Forum の第3回会合 (2005年7月、日本)レポート第4回会合 (2005年10月、韓国)レポートで「日本(棋院)代表」が何を言っていたかを知ることができます。「日本囲碁規約1989において死活は部分的に判定されること」と「無駄な手を完全に省略した終局の美」について語っていたようです。特に日本伝統の「美しい終局図」へのこだわりが強いことがわかります。そこで、この記事では、池田囲碁ルール試案の日本式IもしくはIIを採用すれば、死活を部分的に判定するようにしなくても、日本伝統の「美しい終局図」が可能になるという事実を説明しています。

率直に言って、現在の日本棋院ルール(日本囲碁規約1989のこと、これを「日本ルール」とは呼びたくないし、呼ぶべきではないと思う)で定められた死活判定の仕方は碁の原理原則を無視した内容になっており、碁の美しさを殺してしまっていると思う。

囲碁における可能な手はパスもしくは盤上の空点に石を打つことのどちらかであり、

  1. 石を打つことによって囲まれた相手の石は盤上から除去される(石の除去)。
  2. 自分の石が相手の石に囲まれるように(囲まれたかどうかの判定は相手の石の除去後)石を打ってはいけない(自殺手の禁止)。
  3. 同形反復は禁止される(同形反復の禁止)。

という3つのルールで定義されます。これは碁の宇宙の物理法則のようなものです。この単純な物理法則だけから驚くほど複雑な現象が碁盤の宇宙に生じるわけです。実際に碁を打つとこれらの物理法則が本当によくできた法則であり、単純で美しいことを納得できます。これが碁の原理原則です。

ところが、現在の日本棋院ルールでは「対局の停止」後の「死活確認の際における同一の劫での取り返しは、行うことができない。ただし劫を取られた方が取り返す劫のそれぞれにつき着手放棄を行った後は、新たにその劫を取ることができる」(第七条-2)と碁の原理原則とは異なる別の物理法則を設定してしまっています。その上、日本棋院ルールの条文は曖昧で不完全です。それらの欠点を無くす努力をするとどれだけ複雑で汚ないルールになってしまうかについては Jasiek さんの囲碁ルールのウェブページで Japanese 2003 ルールについて調べればわかります。死活を部分的に判定できるようにするためには「部分的」という概念の正確な定義が必要になるのですが、結果的にものすごく面倒なことになってしまっています。

さすがにこれはひどいと思ったので池田囲碁ルール試案を紹介しようと思ったのです。池田氏は、碁の原理原則を保ったまま、パスの役割や得点計算法を工夫することによって合理的な囲碁のルールを作り上げています。

日本棋院の囲碁のルールは1949年に制定された日本棋院囲碁規約以降着実に悪化して来ています。決して進歩ではない。この事実は日本国内で碁を打っているだけなら意識せずにすむことですが、海外の囲碁ファンが日本の囲碁のルールのことをどう思っているかを調べてみると、ひどく評判が悪いことに気付きます。これは日本の囲碁ファンとして非常に残念なことです。池田囲碁ルール試案の日本式ルールを採用すれば無駄な着手を完全に省略した美しい終局も含めて完全に合理的に正当化できるのに!

ちなみに、日本棋院囲碁規約が定められた1949年10月まで本因坊秀哉名人時代の日本棋院内規が活きており、劫材の数に関する全局的な判断によって終局時に手入れを省略できるようになっていました。その本因坊秀哉裁定は日本棋院囲碁規約以降は日本棋院内部で否定されてしまいました。

さらに、「取らず三目」は三目の地になるという本因坊秀和裁定は日本棋院囲碁規約の日本棋院判例ではそのまま活きていました。しかし現在の日本棋院ルールでは「取らず三目」に関する本因坊秀和裁定は完全に否定されています。

この流れは果たして「進歩」なのか?「伝統」を守っていることになっているのか?

これに対して、池田囲碁ルール試案の日本式ルールでは本因坊秀哉判定がそのまま再現され、手入れで解消不可能な劫材が存在しないという仮定(「劫尽くし」が可能という仮定)のもとで「取らず三目」に関する本因坊秀和裁定も再現されます。同じく「劫尽くし」が可能だという仮定のもとで「隅の曲がり四目」も無条件死になることも再現されます。「劫尽くし」の仮定のもとでの歴史的判例の再現性はかなり高い。

これはある意味当然のことです。本因坊家の偉大な棋士たちの裁定は必ず碁の原理原則と関係しているはずです。池田ルールは碁の原理原則を重視しているので「劫尽くし」の仮定のもとで歴史的判例の再現性が高くなるのは当然のことでしょう。 (もちろん重要なのは歴史的判例よりも碁の原理原則の方。)

「劫尽くし」の仮定が成立しない稀なケースでは再現されるとは限りませんが、それは碁の原理原則に基けば当然のことです。そのことに違和感を感じている人は碁の原理原則よりも人為的に勝手に作られた規則の方が優先すると思っていることになります。

Javaで書かれた手書きでノートを書くためのソフトJarnal

結論: Jarnal を使えば手書きのノート作成とPDFに手書きの注釈を付けることができます。 Jarnal は Java で書かれており Java Standard Edition が入っているパソコンであればどこでも使えます。無料で使えるとても便利なソフトなので紹介することにしました。

さて、現在、私は手書きのノートをタブレットPCで書くことを検討しています。そのために使えるソフトにどのようなものがあるかを調べてみました。

Windows 7 が入ったタブレットPCを買えば WIndows Journal が付いて来るので、それを使えば手書きのノートをタブレットPCで書くことができます。しかし、次の二点が気になりました。

  • Windows でかつ Windows Journal が入っているパソコンを使わないと編集できない。
  • WIndows 以外で読むためには PDF などに変換しなければいけない。

そこで複数のOSで動くソフトでファイル形式がSVGのような公開された標準的なフォーマットになるものを探してみました。 Google で色々検索しているうちに AlternativeTo というサイトで Windows Journal を検索すると Windows Journal に似たソフトのリストが得られることがわかりました。これは便利です。

そのリストを参考にしながら、XournalJarnalNoteLabGournal を試してみました。まずそれらを手もとの WIndows XP にインストールすることを試みました。 Xournal、Jarnal、NoteLab は簡単でしたが、 Gtk2-Perl で書かれている Gournal のインストールには挫折。 Xournal のファイル形式はXMLを使った独自の形式なので候補から外すことにしました。 Jarnal と NoteLab はどちらも Java で書かれており、出力ファイル形式はSVGです(より正確に言えば複数の SVG ファイルをZIPでひとつのファイルにまとめたもの)。両方を試してみたところ Jarnal の方が使い易そうに思えました。以下ではこの Jarnal について紹介することにします。

1. 日本語のWindows環境へのインストールの注意

すでに Java Standard Edition が入っているパソコンであれば Jarnal のインストールは簡単です。 Jarnalのダウンロードページ (もしくは http://jarnal.wikispaces.com/Downloads) から必要なパッケージをダウンロードして支持にしたがうだけです。 WIndows であれば jarnal-setup.exe をダウンロードして実行すれば必要なパッケージを自動的にダウンロードしてインストールしてくれます。

ただし私のように日本語の Windows 環境で使う場合には注意が必要です。スタート→すべてのプログラム→Jarnal→Jarnal で jarnal.cmd を実行するとメニューが文字化けしてしまいました。私は文字化けを回避するためには jarnal.cmd がインストールされているフォルダを開いて、jarnal.cmd の start javaw の行を次のように変更しました。

start javaw -Duser.language=en -Duser.country=US -Dfile.encoding=UTF-8 -Xmx192m -jar jarnal.jar -t templates/default.jaj %1 %2 %3 %4 %5

オプション -Duser.language=en -Duser.country=US を追加してあります。

2. 使い方について

Jarnal を使えば手書きでノートを書けます。PDFを背景に読みこんで手書きでコメントを付けることもできます。

使い方を手っ取り早く知るためにはビデオによるチュートリアル集を見るのが良いと思います。 Windows 7 が入っているタブレットPCでのおすすめの設定の解説もそこにあります。

色々遊んでいるうちに大体の使い方はわかると思いますが、注意するべきだと思った点について簡単にまとめておきます。

  • ページの削除は Select アイコンをクリックしてから、削除したいページをクリックして選択し、Edit → Delete (もしくは Delete キー) とする。
  • Select Rectangle もしくは Select で選択した部分を Copy して Paste するとき、コピー&ペーストの手続きを終了するためにはペースト先の位置をクリックしなければいけない。クリックするまで何も起こらないので注意すること。
  • Insert → Insert Image で画像を挿入する場合にも同様の注意が必要である。読み込むべき画像ファイルを選択しただけでは画像は挿入されず、画像を挿入する場所をクリックして指定しないと画像は挿入されない。
  • 画像の縮小拡大は画像の操作なのに Text (Tアイコン)で行なう。
  • PDFファイルは File→Open Background で開く。
  • Jarnal が出力する jaj ファイルはページごとの複数の SVG ファイルおよび挿入した画像などを ZIP でまとめたものになっている。背景に読みこんだファイルも一緒にまとめたければ保存するときに Save Background With File オプションにチェックを入れる。
  • 不具合かなと思ったら jarnal - Known Problems and Limitations を見る。結構不具合が残っている。

もっと詳しい使い方を知りたい人は Jarnal - Documentation を読んで下さい。

東北大学数学教室の資料室の復旧

宮城県仙台市の青葉山の上にある東北大学数学教室情報です。 (もしかしたら正式名称は「東北大学大学院理学研究科数学専攻」なのかもしれませんが、昔ながらの「東北大学数学教室」という言い方をしています。)

数学教室に限らず、こちらでは復旧が急速なピッチで進んでいます。一昨日には「惨状」について報告したのですが、今回は「復旧」の話をします。

東北大学数学教室資料室では地震で数万冊の本が落下散乱し、足の踏み場もない状態になってしまいました。しかし、ついに今日、ほとんどの本を書棚のあるべき位置に戻すことができました。

今日の時点の様子を写真で紹介しましょう。

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↑ピンボケで申し訳ないのですが、ゲルファント全集も書棚の下にはさまってしまっていました。
救出するためにはおそらくジャッキなどが必要になります。

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↑このように破損してしまっている本もあります(泣)。
しかし、このように破損してしまった本はほんの一部に過ぎません。

↓以下の2つの写真は今日(3/30)の午後4時くらいの様子です。
本が整然と書棚におさめられています!

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↑数学教室の資料室には以上の2つの写真に写っている分(手前の書棚の分だけを考える)の50倍程度の本があります。さらにスペースの都合で他の部屋に置いてある本も相当数あります。それらすべてが数学の本です。

以上の写真には「人」が写っていませんが、実際には多くの人が資料室での復旧作業に参加しています。特に仙台に残っている学生の方々による多大なる協力が無ければこのように素早い復旧は不可能だったでしょう。

東北大学に限らず、毎日のように急速なピッチで復旧が進んでいます。仙台市の水道はもうすぐ完全に復旧します。さらにガスの供給をすでに始めている地域もあります。私の自宅にもあと数日でガスの供給が始まるはずです。

この勢いは半端ではありません!

この勢いを持続することによって、単なる「復旧」で終わらずに、「復興」を実現するように努力して行きたいと思います。

東北大学数学教室の資料室の惨状

東北大学数学教室の資料室(数学棟3階ぶちぬき!)には数学の専門書と雑誌(論文を掲載する雑誌)が数万冊置いてあります。3月11日の大地震で本は落下し大散乱状態になってしまいました。

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↑こんな感じに本が落下して散乱してしまっています。

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↑一見何も壊れてなさそうに見えるのですが(次に続く)

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↑こんな感じに壊れてしまっていて危ない状態になってしまっています。

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↑これはかなり整理が進んだ場所です。きれいになったでしょう。
でも、あれ?! よく見て下さい。かわいそうに本がまだ落ちています。棚に入れて上げなくては!(つづく)

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↑よく見ると超重い本棚の下にはさまってこの本は身動きが取れなくなってしまっています。
地震のときにできたすきまに落ちた本がはさまってしまったようです。(つづく)

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↑問題:この本のタイトルは何でしょうか?
あまりにもぴったりのタイトルだったのでみんなで大笑いしました。(つづく)

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↑これが答です。アーノルドの『カタストロフィー理論』! あまりにもぴったりなタイトル!

以上です。この資料室は東北大学数学教室の自慢のひとつです。オープンキャンパスのときに来てくれてとある高校生は「ハリーポッターの世界みたい!」と言っていました。数学は現代の魔法のひとつなのでその印象は極めて正しいのではないかと思いました。早く復活させなければ!

東北大の数学棟の様子

東北大学大学院理学研究科の合同棟の研究室の様子をひとつ前の記事で紹介しました。数学棟の方の写真も何枚か携帯電話で撮って来てあったので公開することにします。3月23日の写真です。

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↑入口です。数学棟無事でした。

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↑入口のドアの写真。貼り紙に注目。トイレを使えることが自慢です。

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↑5階の大部屋の写真。本棚が見事に倒れている

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↑掲載の許可を得てあったHさんの研究室の惨状。本人曰く、意外に大したことがなかった

以上の数枚しか写真を撮っていませんでした。すみません。

大学院理学研究科(理学部)の他の被害については http://www.sci.tohoku.ac.jp/kyoutsuu.html の建物ごとの注意を見て下さい。

次はついさっき自宅で撮った写真です。

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↑ホットプレートで洋風野菜スープを作っています。カラフルでおいしそうでしょう。おいしいです。ミロの袋とマグカップが見えているのは気にしないで下さい。

研究室の惨状

東北大学大学院理学研究科情報

今日は立ち入り禁止だった合同棟の被害調査の仕事をして来ました。そして自分の研究室の惨状も見て来たのでその写真を載せることにします。

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↑倒れた本棚。床にボルトで固定してあったのですが、何の意味もありませんでした。倒れた本棚でできたトンネルの向こうに椅子が見える。そしてよーく見ると机の上にあったはずのパソコン本体らしきものが見える。

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トンネルの向こうはこうなっていた。やはりパソコン本体が床に落ちていた(泣)。ディスプレイとプリンターは落下してませんでした。しかし、液晶ディスプレイの右下に大きな傷(泣)。ちなみに仙台は大きめの地震が結構多いのですが、パソコンが落ちそうになったことは一度もありませんでした。

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↑ハードディスクドライブも落下していた(泣)。

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トンネルを逆側から撮った写真。

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↑よいしょっと倒れた本棚を立て直した後の様子。数学の本の上に論文のコピーの山。

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↑倒れた本棚はこんなことになっていました。曲がってる(泣)

あ、また揺れている。ぐらぐらぐらぐら。あ、それなりに大きく揺れ始めた。げげげ。よし揺れが小さくなった。ふう。いや、まだ揺れている。震源地はどこだ? ううう、まだ揺れている! 揺れている時間がテラ長す!

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↑液晶ディスプレイの右下に大きな傷(泣)。しかし落下して壊れたかと心配したパソコンは問題なく起動した。良かった!助かった! (ハナコアラは気にしないように!)

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↑ディスプレイのキズの拡大写真(泣)。

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↑ディスプレイの電源を切って撮ったキズの拡大写真(泣)。指でこすった跡が見える。
指でこすってもキズは消えません(泣)!

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↑マウスの写真。問題:変なところはどこか?

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USBのプラグがぐにゃと曲がっている(泣)。でも正常に使えた!

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↑無事だったプリンターの写真。しかし……

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↑古い携帯電話での写真なのでピンボケで申し訳ないが、USBのプラグ部分がひしゃげて差し込めなくなっている。別のケーブルで代用した。

以上楽しんで頂けたら幸いです!

はっきり言ってこの手の被害は大したことがありません。
みんなで楽しむべきです。楽しむべきです。楽しむべきなんです!

今日は精神的にも肉体的にも疲れた感じなので散乱した本をまったく片付けずに帰宅することにした。

あ、また揺れてる。何かやっているとすぐに何度でも揺れるのだ。
この記事を書いているあいだに体感できる余震が二度もあった。

東北大学数学教室関係のリンク集

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