「今度、名古屋市科学館の夜間観望会の抽選に申し込んであったのが当ったので、十何年ぶりに行って来ますよ。」
と言う話をしていたら、知人が、
「何も わざわざ そんな大都会の環境の悪いところへ行かなくてもいいでしょうに。」
と、呆れてました。
まぁ、確かに、言う事、ごもっともでして。
大気は悪いわ、光害はあるわ、で、星を見るには最悪の環境へ飛び込む必要はないのですが。
何せ、地元の70cm反射式望遠鏡で 撮影し放題、観望し放題、なのですから。
この話をした日も、月の撮影会の後に、M97 ふくろう星雲や、NGC2392 エスキモー星雲などを観望して 徐々に遠ざかりつつある火星を見ました。
そんなんですから、わざわざ名古屋くんだりまで行くのが不思議だったようです。
そーゆー知人は愛知県の北部から この天文台へ撮影に通っているのです。
「星を見るのではなく、まっ、カールツアイスの投影機も 65cm反射式望遠鏡も 後少しでご引退ですから、機材を見に行くようなものです。」
と言うのが筆者の本音だったのですよ。
H22年2月27日。
天気予報では週末は 土曜日も日曜日も雨になっていましたが、運良く? 27日の天候は回復して昼間は青空でした。
午後から鉄道で名古屋市へ。
PM3時半くらいに名古屋市科学館へ現着。
夜間観望会は PM5時半から受付なので 中途半端な時間ですが、これは予定通り。
PM4時からのプラネタリウム投影時間を狙っての事。
27日のプラネタリウム投影としては最終上映時間。
お目当ては、1962年11月に名古屋市科学館に導入されて以来、現役で営業稼動している ドイツ製の2球式光学式投影機 カールツアイス IV型。
光学式投影機の世界最高峰とも言える カールツアイス製。
この国に7台しか輸入されなかったカールツアイス製プラネタリウム投影機で、現在、大型機は 名古屋市科学館のIV型と 兵庫県の 明石市立天文科学館のカール・ツァイス・イエナUPP23/3 の2基しか稼動していません。
この カールツアイス IV型 が 今年の秋までの営業運転で引退します。
現在、名古屋市科学館は リニューアル工事中。
今秋から5ヶ月間休館して 来年、2011年の春から 新しいプラネタリウムと 屋上天文台が稼動します。
観客動員数日本一を誇る名古屋市科学館の新しいプラネタリウムには 新型の カールツァイス製ユニバーサリウム9型投影機が導入されます。
引退する カールツアイス IV型 は 館内に展示されて静態保存(ライトは燈るようにするそうですが)するそうですから 廃棄処分にはなりませんが、光学式投影機としての名機だけに残念ではあります。
ですから、営業運転している今のうちに 今一度、カールツアイス IV型 のシャープな星空の投影を観ておきたかった訳です。
光学機器はドイツ製と言われていた時代の カールツァイス製光学式プラネタリウム投影機の名機です。
見るのなら今のうちですよ。
でないと、明石まで行かないと見れなくなってしまう。
ちなみに、カールツァイス製のポロ・タイプ双眼鏡とかが 某ヤベーオークションに出品されると レンズに曇りがあっても カビが生えていても 結構 いい値段で落札されたりしてます。
それくらい カールツァイスは凄いのですよ。
日本海海戦で東郷平八郎元帥が使用してた双眼鏡もカールツァイスだったと記憶してます。




2球式光学式プラネタリウム投影機 カールツアイス IV型
ZEISS の文字が貫禄です。


カールツアイス IV型 の操作席。
さすがに古めかしい。
ちなみに、筆者ですが 地元の科学館も含めて よくプラネタリウムへ行ってます。
どこのプラネタリウムに行っても 季節の話題の星空の解説の内容は 同じです。
ですから 同じ話を何度も聞いている訳です。
ただ、解説員によって 星座の神話解説に使われるネタが違っていたりは します。
オリオン座のオリオンは神話ですが、サソリに殺された話の他に、月の女神アルテミスがオリオンに惚れて それを妬んだアポロンの策略によつてアルテミスが誤ってオリオンを射殺してしまった話とか、元ネタの違いはありますね。
で、そんなにプラネタリウムに行って何を見ているのかというと、投影機の作動状況と星空を見比べていたりもします。
大多数の観客はプラネタリウムが映し出す星空を見て喜んでますが、夜空が動けば投影機も角度を変えてます。
月の満ち欠けなど 解説に合わせて 投影機も角度を変化させたりしてます。
沈む夕日の太陽も投影機が赤いライトを調整して夕焼けを投影しているのです。
そーゆーのを観察しているのですよ。
プラネタリウム投影機は、コニカミノルタ、後藤光学、カールツアイス、と各メーカーありますし機種によっても動作音の 静かさ の違いがあります。
それから解説員の錬度ですかね。
昨今のプラネタリウムは生解説が流行りですが、殆どのプラネタリウムは、半分が生解説で 残り半分はプラネタリウム用既製品番組の上映ってのが大半です。
まぁ、名古屋市科学館の場合、プラネタリウムは50分の投影時間全てが生解説ですから 解説員の錬度も重要なのですよ。
PM4時からのプラネタリウム上映を見終えると、PM5時の閉館時間になります。
そこで一端退場してから、PM5時半に受付開始の夜間観望会の行列に並びました。
順番は前から50人目くらいだっったでしょうか。
そして また プラネタリウムで約1時間の冬の夜空の星の解説と 観望対象の火星の解説を聞いてから、屋上にある65cm反射式望遠鏡で火星を見てきました。




屋上にある 65cm反射式望遠鏡
鏡筒は 三鷹光器株式会社 で 赤道儀はドイツ式という風変りな代物。
1つの鏡筒で ニュートン式と カセグレン式 の2種類の使い方ができるという変り種でもあります。
まぁ、実際、便利そうに思えて 無駄なんですけどね。
この大きさでフォーク方赤道儀ではなく ドイツ式赤道儀というのも 面白いとは思いますが。
面白いのは、接眼部が二股になっていて2人同時に見れるようになってます。
そうでもしないと 人数をさばけないのですよ。
何せ 観望会は抽選で250名の定員で開催されますので。
実際には300名ちかくいるでしょう。
で、お題のとおり「火星をみる会」だったのですが、昼間は晴れてましたが、夕方から曇り、順番が早かった人だけが 薄雲越しに火星を見れただけでした。
一応、筆者は 見れましたが、あれじゃ 見た とは とても言えませんけどね。
で、この65cm反射式望遠鏡も 名古屋市科学館のリニューアル工事により 今年の7月で引退します。
引退後は 新築された科学館の館内に静態展示保存されるそうで。

屋上広場に設置されていた 観望用の既製品望遠鏡。
鏡筒は タカハシ FC75
赤道儀も タカハシ EM-1S
さすが大都会の科学館ですかね、観望用の既製品望遠鏡は タカハシ製が5台くらい出てました。
昭和機械製作所の10cm屈折望遠鏡と タカハシの EM-200の組合せで1セット出てましたね。
それも EM-200 の足はピラー脚でしたから重いですよ。
ボランティアの方々、ご苦労様です。
以前にも書いておりますが、名古屋市科学館の夜間観望会は ボランティアが運営参加しております。
まぁ、今回は 一部の人達が雲越しに火星を見れただけで 後はまったく見れず、屋上広場の小型望遠鏡も 星を見るかわりに 名古屋のビル街の夜景を見せるしかなかったようです。
望遠鏡の品評会じゃあるまいし、夜景見ても仕方ないので 65cm反射式望遠鏡 の撮影をして 適当に撤収してきました。
ですが、望遠鏡についていたボランティアの方ですが、望遠鏡について質問してもちゃんとした返事がこなかった。
タカハシのFC75は ツァイスサイズのアイピースでしたが 用意した望遠鏡については 知識がないようでした。
さて、超久しぶりの 大都会での観望会でしたが、学校の授業みたいでつまらなかったです。
人数が多すぎ、環境は最悪。
天候が良くて星を見れたとしても 授業みたいで堅苦しい。
まぁ、公立の科学館ですから、それは全国どこでも言える事ですが 科学の布教活動とでも言いましょうか、科学を一般民にも振興させるのも使命というのは理解してはおりますが 物を教えるという立場が出過ぎると どーもいけません。
筆者が住んでいるような田舎と違って 大都会の組織ですから 規律や決り事などで お硬くなるのでしょうけど。
冒頭に書きましたが、知人の発言のとおり
「何も わざわざ そんな大都会の環境の悪いところへ行かなくてもいいでしょうに。」
なんですよね。
今回のメインの目的は 引退が迫っているカールツァイス投影機を再度見るのと、これまた引退する65cm反射式望遠鏡を撮影する、なのでミッションとしてはコンプリートです。
それから これは どこの公立の科学館とかの 天文台やプラネタリウムのある施設に言える事なのですが、建物が複雑過ぎです。
名古屋市科学館の場合は、3階のプラネタリウムで説明後に徒歩で館内を9階屋上まで移動、もちろんエレベーターはありますが、そして 屋上の65cm屈折式望遠鏡のある天文台ドームに入って見てから、また違う隣棟の屋上広場に出されている小型望遠鏡を見に行くという複雑さ。
これは実話なのですが、天文台に詳しい知人が ある公共の施設に天文台とプラネタリウムを作るので 相談を受けた際に、
「天文台とプラネタリウムは別の建物にするか、直接出入できるように通路やドアを考慮した方が良い」
と助言したところ、
「防犯上の理由でそれはできません」
となったそうです。
まぁ、科学館みたいな施設を新設した時の話だそうですが、夜空のロケーションの問題から天文台はどうしても屋上に作らざる負を得ないとしても、そのすぐ近くにプラネタリウムは隣接させておかないと徒歩での移動距離が長くなる。
施設の規模にもよりますが、夜間観望会で星を見る屋上広場も 天文台と隣接していないと不便でしかない。
それに、星は基本的に夜に見るものです。
科学館などの施設は 夕方には営業を終えます。
それなのに 建物の正面出入口からしか出入できず、入場ゲートを通って エレベーターなり エスカレーターなりで屋上まで上がったり降りたりしていては、営業している時と同じ通路を使用する事になる。
だから警備の人出がいる事にもなる。
そもそも 観望会が夜9時で終了では 本当の星空は望めない。
夜10時、欲を言えば夜11時を過ぎると夜空も観測条件が違ってきます。
ですから 本当なら それくらいの時間にやらないと意味ないのですけどね。
天文台のドーム1つを上げても 変なところはあります。
名古屋市科学館の65cm反射式望遠鏡のドームもそうですが、出入口が小さいので頭をぶつけます。
「頭に気をつけてください」
などといちいち注意するくらいなら 大人が普通に入れるくらいの大きさの出入口にすればよいのですよ。
筆者は 複数の天文台に出入してますが 立ったままで普通に出入りできる天文台は 案外 少ないです。
もう一つ言える事は 天文台施設では バリアフリーは難しいです。
中央光学とかが バリアフリーの天体望遠鏡をナインナップしてますが、それは 望遠鏡の周りだけの事。
エレベーターで屋上に上がるから車椅子でもOKとしても 建物の屋上ってところは 継ぎ接ぎがあったりして段差があります。
天文台のドームでも上記に書いたように入り口が狭くて大変とか。
それに天文ドームってのは 構造的にどうしても段差が発生しますし。
残念ながら 筆者の知っている天文台で 車椅子のまま 難無く観望会に参加できる所は ありません。
名古屋市科学館のリニューアルですが、リニューアル後には上記にも書いたとおり、プラネタリウムは 新型の カールツァイス製ユニバーサリウム9型投影機が導入されます。
天文台の方は、80cm反射式望遠鏡が新設されるそうです。
鏡筒は日本製で80cm反射式。
赤道儀は またドイツ式だとか。
日本製の鏡筒のメーカーは 今日現在の段階では まだ公表不可能だそうです。
後、太陽望遠鏡も新設されますが、これは 特に問題ないでしょう。
太陽は 昼間に天気さえよければ 燦々と輝いてますから。
問題は、80cm反射式望遠鏡です。
現在のところ 安八町にある 西村製作所製70cmカセグレン反射式望遠鏡が 東海地区最大の望遠鏡です。
ですから、大都会 名古屋市としては その上を行く80cm反射式望遠鏡を設置して、観客動員数日本一のプラネタリウムとセットで 目玉にしたいのでしょう。
しかし、あの環境の悪い場所で80cmの望遠鏡ですか。
観望会で250名も人を集めて、と言うよりも 告知すれば抽選しなければいけないほどの人が来る観望会は それこそ観望だけで手一杯でしょうに。
ある意味、流れ作業で星を見せているようなものです。
観望をメインとした望遠鏡なら それこそ クーデ式屈折望遠鏡とかの方がよさそうなものです。
同じ様に夜空の環境が良くない東京の某科学館は 国産最大のクーデ式25cm屈折望遠鏡を使用してます。
80cm反射式望遠鏡を新設して東海地方最大を誇りたいのでしょうが、あの空では 税金の無駄使いのような気がしなくもないが。
ちなみに クーデ式の欠点は 写真撮影には不向きって事です。
観望に特科した望遠鏡と思っておけばいいでしょう。
観望に主体をおいた運営というのなら クーデ式はお勧めですね。



