2010年07月19日
ジャズトロニック「ボン・ヴォヤージ!」、インコグニート「トランスアトランティック RPM」
ぼくはジャズトロニックの野崎良太さんの「ライフ・シンコペイション」や「バード・オヴ・パッセージ」といったピアノ・ソロ・アルバムをよく好んで聴いている。集中したいような夜に聴けば、すっとその雰囲気に入っていけるのだ。それらのアルバム、とくに「バード・オヴ・パッセージ」の曲たちをチル・アウトふうに再構築したアルバムが出ると聴いては、心待ちにしていた。それが「ボン・ヴォヤージ!」である。
半数は「バード・オヴ・パッセージ」からの曲で、ほかに「ライフ・シンコペイション」やジャズトロニックの「七色」からの曲も収録してある。一聴してあの曲だ、とわかるやつもあれば、メロディがフェイクされている曲もあれば、まったく原曲がわからないものもあった。それは新曲なのかもしれないけれど。まさかのアレンジが施されているやつもあれば(ぼくにとっては「サイン・オヴ・トゥモロー」なんて衝撃だった)、原曲のよさをさらに際だたされている曲もあった。
とまあ、こんなふうに元ネタと比べる楽しみもあったりするのだけれど、ただ純粋にアルバム単位での素晴らしさはいうまでもない。浮遊感のある音像に乗せて、歌のような美しいメロディがピアノの音色によって奏でられている。清涼感があって静謐で、ひとりで静かに夜に聴きたくなるようなアルバムなのではないかと思う。
そしてインコグニートの2年ぶりのアルバム、「トランスアトランティック RPM」である。今年結成30年を迎えたとのこと。え、じゃあおれとそんなに年変わらないってこと? といったことになる。サザン・オール・スターズといい、すごいものである。
そんな彼らの新作といえば、いままでの路線はもちろん同様で、ぶれのない演奏といろんな声の重なりと、満ちたハッピー・フィーリングは健在である。しかしそのなかでも違う点を挙げるとすれば、音圧であろうか。アコースティックなアルバムでは決してなく、逆にグルーヴに満ちた曲が多いのだけれど、音が丸く、やわらかく響いているのだ。それは円熟とか過去回帰的な印象をも思わせるのだけれど、ぼくは逆に、これこそが彼らの最新鋭の音像だと解釈する。前作の「テイルズ・フロム・ザ・ビーチ」を考えれば、もっとエッジの聴いた音は出せたと思うのだ。そしてぼくはどちらかといえば、こういう音のほうが好みだったりする。
