財務省近畿財務局が、豊中市にある8770平方メートルの土地をある学校法人に1億3400万で売却した。ところが隣接する9492平方メートルの土地は14億2300万円で豊中市に売却され、現在は公園になっているという。この二つの土地、面積は1割も違わないのに、この学校法人への売却価格は10分の1となっている。その上、土地浄化の費用として国が1億3000万円負担するというから、差引400万円で売却したことになる。14億円と400万円では10分の1どころではない。後者は実質上ただたと言ってもいいくらいだ。「実質0円」は禁止ではなかったのだろうか。

 この売却先の学校法人とは、森友学園。現在は、塚本幼稚園という幼稚園を運用しているが、新たに、小学校を開校するために用地を求めたものという。明らかにおかしいこの取引に、昨年9月にある豊中市議が情報公開を求めると、財務局は非公表であるとした。
 これもおかしな話で、1999年の旧大蔵省通達では、国有地の売却は透明性の観点から原則公表となっている。そこで、地元市議が、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴したという。
 役人たちは、基本的にいざこざを避けたがる。本能的に、という方が正しいかも知れないくらい。こんなことをすれば面倒なことになり、自分の責任を問われ、キャリアに傷がつくかもしれない。それどころか場合によっては刑務所送りも考えられる。なのに、こんな不公正な売却をしたということは、今回の出来事は、なにか大きな力が外からかかって取引を歪めたと考えるのが妥当だろう。情報公開を求められて、非公開であると言ったのは、最初から公明正大な取引ではなく、悪いことと知っていたということである。そこまでしてもやったということは、いうことをきかないほうが帰って面倒なことになる、という判断が働いたことになる。しかも、この金額から考えて相当大きな力だろう。知り合いであるとか、親戚である、という程度の関係ではない。いったいこの学校法人は何者なのだろう。

日本初の『神道小学校』

 この開講予定小学校は、同学園が認めている通り「日本初で唯一の神道の小学校」らしい。しかも、名誉校長に安倍昭恵さんの名がある。安倍昭恵さんといえば、夫にブレーキをかける役割を果たす、一部では家庭内野党だとか家庭内参議院などといわれ、いわば良識の人と思われてきた。夫の晋三さんが、キーセンは韓国の日常などと他国の文化を貶める発言をするのに対し、自分は韓流ファンであるとして、多少なりとも日韓の橋渡しになる役割を買って出ているようにも見えた。だが、ここで馬脚を現してしまった形だ。いままでの振る舞いは、ただのガス抜きに過ぎず、芸能ネタを提供し、あとは自分の存在をアピールする場だったのかも知れない。夫とは違う意味で国政を、そして日本を私物化していると言われても仕方がないだろう。

 実際、寄付金集めの書類には「安倍晋三記念小学校」と書かれていたという。さすがに無断で名前を使うことはないだろう。安倍さん自身が、これに関わっている可能性が極めて高い。
 そしてこの学園は、2015年の運動会で、子供に選手宣誓で「日本を悪者にする韓国や中国は心を改めて。安倍首相頑張れ」と叫ばせる、ただの「神道」とは思えない教育方針の学校だ。それに、副校長はある生徒の母親が在日韓国人であることがわかると、「韓国人と中国人が嫌いです」とわざわざ肉筆の手紙を書くほどの偏りよう。そんな学校に首相夫人が名誉校長、首相も関係者どころか主宰者かも知れないとなると、この取引がここまで不正に行われた理由も意味もわかってくる。国自体がカルト教団に乗っ取られていっているということである。

マスコミはきちんとこの問題を取り扱うべき

 先日、3年連続で家計支出が減っているという報道があったばかり。消費税が上がって、どこの家庭も爪に火をともすような生活をしている。非正規ばかりが増えて、人の生活もどんどん苦しくなってきている。一方で、非正規の元締めである派遣業界は最高益を記録しているという。でも、嘆いてばかりもいられない、いくら文句を言ってもどんどん悪くなる経済の中で、少しでも現実の生活をよくしたほうがいいと思って、私もこのブログでこうすれば節約できる、というようなことを書いてきた。月数千円でも余裕ができて、同時に便利さも損なわない生活について考えてきた。だが、そんなときでも税金は節約などできず、有無を言わせずとられるわけだが、国がこんなお金の使い方をしているとなると、なんだか虚しくなってしまう。

 みんなこれで本当にいいと思っているのか、というと、実はマスコミ等はこの問題をほとんど報道していないらしい。知って対処が追いつかないというのならまだ我慢のし甲斐もある。例えば震災直後などで、被害はわかっているが、救助が追いつかない、というのならやむをえない面もある。だが、知らないうちに無駄遣いされ、気がついたら取り返しがつかない状態になってしまっていた、というほとんど太平洋戦争みたいな状況の場合、我慢したり待っていたりしても何も解決しない。多少の節約や、「ぜいたくは敵だ」などという標語でごまかされていたらもっとひどくなる。
 前の日銀総裁は、政府の言いなりになったら国家財政の健全性が損なわれる、として任期をあと3週間残して辞任したという。潔いといえばそのとおりなのだが、それを受けて、やりたい放題の日銀総裁になりました、というのでは、彼の潔い決心もムダになってしまう。そこから先はある意味で国民のシゴトだったはずなのに、それを放置してしまった。そういう問題を意識している人たち、経済学者たちは、日本の財政は持ってあと2,3年という。あたってほしくない予言だ。

 今回のニュースは、カネだけの問題ではなく、カルト教団と国の結びつき、というよりはカルト教団に乗っ取られつつある国の問題点に光を当てた。なんだか、アラ探しをしているように一つの問題に飛びつくようで申し訳ない気もするのだが、いま秘密保護法のもとで、何もかもが暗闇に閉ざされてしまっている。政治家たちは、「かわいそうに、情報がないからこんな小さなネタに噛み付いているのか。こんなものいま行われていることに比べれば、全然大したことないのに、何も知らないで哀れなやつだ」とほくそ笑んでいるかも知れない。オリンピックといい豊洲と言い、いやそれですら大したことのない問題が日本全体を覆っているだろう。だからこの問題は氷山の一角どころか、地球の一かけらにもならない、悪事のごく一部だろう。だが、少なくともわかったことについてはきちんとした対処ができないと、本当に終わりかも知れない。
 ここまで悪質で重大、そして深刻なニュースなのに、マスコミがあまり取り扱わないというのは、マスコミまで乗っ取られてしまっているということなのだろうか。マスコミで働いている人たちは、こんなことをしたくてマスコミに入ったのだろうか

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新党憲法9条
植草一秀の『知られざる真実』