先月20日、韓国海軍が日本の自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされる問題、韓国は追跡目的でレーダーを使用していない(一般的な捜索用のレーダーに過ぎない)とし、さらに24日には日本側が低空で威嚇飛行してきたと主張した。日本側は、複数回レーダーが照射されたこと、威嚇飛行などはしていない、として哨戒機が撮影した動画を公開した。この動画の公開は、防衛省ではなく、安倍さんの意向が働いたと韓国側では考えているようだ。

意外なところで田母神さん

 ここで、右翼が「閣下」として尊敬する田母神さんが、どこの国もやっていることであって、ミサイルが発射されるまでに複数の安全装置があるから、危険な行為ではない、と指摘している。田母神さんの歴史認識ををさんざんけなしていた人たちは、歴史認識は幼稚でも軍事知識は正確だ、と持ち上げているようである。

 詳しいことはわからないが、おそらく双方とも危険を感じているわけではなさそうで、自衛隊の現場でも、一言お詫びしてくれればそもそも問題にならない行為だった、と言っているようである。だから、危険のないことは自衛隊側もわかっていたようで、その点では専門家たちの見解は一致していると言えそうだ。

こじらせたいだけなのか

 ということは、防衛上大事だとすれば、韓国側の行為が危険か危険でないか、だけであって、一言詫びがない、などと難癖をつけるのは、"おまえらどこの中学じゃい"レベルの話になってしまう。おそらく、危険が発生したとすればまず最前線に立つことになる自衛隊などは、そのあたりは慎重な対応をしたいと思っているところだろう。本来ならば、何事もなかったことにして、上への報告もしたくなかったかもしれない。

 その"上"に報告したために、政治問題化してしまい、映像や音声の公開などという、軍事上の秘密(相手方のレーダーのこと、日本軍がどこを飛んでいたか、さらに日本側の探知能力)を明らかにするような大人気ないことを政府側主導で行うとすれば、おそらく軍人たちにとっても迷惑千万な行為ということになるだろう。シビリアンコントロールといいながら、軍人よりも先走っていることになる。ひょっとすると、自衛隊がイラク駐在の日誌などを隠したりするのも、"上"にはその情報を適切に扱う能力が欠けている、という配慮もあるのかもしれない。

 辺野古問題もあり、森友も加計も首相が潔白などと思っている人がいない状態で、求心力低下に悩みながら、憲法改正をやるとすれば、当然周辺をきな臭くする必要がある。現場を無視して政治問題化したいというのも政治家の本能かもしれない。

 韓国側も、国内的な求心力低下に悩んでいるだろう、ここで南北融和、民族の団結を演出したいなら、多少外に対する緊張感を演出したほうがよいのかもしれない。実際、北朝鮮と中国、さらに二回目の米朝首脳会談という流れの中で、南北の一体感を醸成するには多少敵がいたほうがありがたい。

 そのあたりで利害が一致すれば、双方の政治ショーの側面もありうることになる。もちろん、こじらせたいのは韓国側だけ、もしくは安倍さん側だけ、ということもありうる。結果としては、安倍さんは南北の統一の推進のため、憎まれ役を勝って出た形と見ることもできる。それにいずれ気がついて、バカバカしくなってやめるかもしれない。

本当は何が起こったのか

 当然このあたりのことは我々にとっても重要である。もしも日本が低空の威嚇飛行をしているとすれば大問題だ。一方、韓国側の行為が何だったのか、一般的なレーダーで周りの状況を探るのに加えて、ひょっとすると新しい、日本側にバレないだろうと予測した新型のレーダーでも使って実験をしていたとしたら、これもまた危険な行為であることになる。

 まだわからないけれども、よくテレビゲームで、敵戦闘機を「ロックオン」し、続いてミサイルを発射する、というようなタイプのレーダー照射を韓国側がしていないことは間違いないだろう。テレビゲームのやり過ぎで、ミサイル発射寸前と勘違いした人が、撃ち返せ、などと絶叫するのもわかるが、これは違うだろう。自衛隊側の反応を見ていてもそのことは明らかである。

 ただ、駆逐艦の中には、飛行してくる物体に対して、何十もの目標を同時に捕捉し、迎撃するシステムを持っているものがある。その場合には、接近する飛行物体に対してはほぼ自動的に継続的に追尾が行われることになるだろうから、日本側は低空で威嚇飛行しているつもりがなくとも、向こう側が設定した守備範囲内(これが日本側から見て広すぎるかどうかは別として)に入り込んできたのなら、韓国側は照射していないつもりでも、機械が照射している可能性はある。そのあたりの探り合いが行われ、というかそれは常に行われており、たまたま報告を受けてしまった素人が、珍しい物(本人にとっては)を見つけて騒いだ、という事態なのかもしれない。

 いずれにしてもお互いに、レーダーの詳しい情報(発射側も、探知側の能力も)を公開する、など、仮想敵(それ自体存在するかどうか怪しいが)が大喜びするような間抜けなことはしないほうがいいだろう。そんなこともわからない人たちに防衛大臣などを選んでいては、国民はいずれ本当の危機に直面するだろう。