日韓関係が戦後最悪だ、などと言われる。日本が韓国に対し、半導体製造品目の優遇(ホワイト国の待遇)を廃止し、米中貿易戦争の縮小版のような事態が発生していることを根拠とするものだろう。

 実際には、そうセンセーショナルに騒ぎ立てるほどの状態かどうかは、お互いに冷静になるべきで、いわゆる「李ライン」(1952年)と言われ、韓国が一方的に日本海に線引きをし、海洋資源に対する自らの主権を主張して、日本の漁船を大量拿捕した時代もあったことを考えると最悪かどうかはわからず、両国は近づいたり遠ざかったりしている、というのが本当のところだろう。

 今回の措置については、別に経済制裁でも輸出禁止でもなく、ホワイト国という扱いをやめて、通常の輸出手続にしただけのことであり、多少手間がかかるけれども原則に戻っただけだ、という評価もある。もしそうなら、反発している韓国側が過剰反応していることになる。

 この規制は7月1日に経産相が発表したものであり、軍事転用の可能性ある品目について相手国が兵器拡散の恐れのない国(ホワイト国)であれば別として、それに当たらない国に対しては個別に事前の輸出許可を得る必要がある。その場合、個々の手続に大体90日かかるようになるというものである。今回半導体などの3品目(半導体の洗浄などに使われるフッ化水素、スマホのディスプレイに使われるフッ化ポリイミド、半導体の基盤に塗る感光剤「レジスト」)について、輸出規制が強化されたものだ。その個別の手続について実際に許可が同じように出るのであれば、多少めんどくさいだけであるし、政権に近い読売新聞によると許可しない方針だというのだが、もしそれが本当ならやはり輸出禁止に近い規制ということになるだろう。

 この規制について、安倍さんは、「国と国との約束を守らないことが明確になった。貿易管理でもおそらくきちんと守れないと思うのは当然だ」と、徴用工問題に関する政治報復であることを明らかにしている。日本の一部世論調査では、この規制に賛成する見解が80%であり、明らかに筋違いの意趣返しと見られる行為がどうも支持されているようである。

 中国が思い通りにならないと、筋違いでも何でもいいからなにかいじわるをしてやるというトランプさんのやり方に似ているとも言える。ファーウェイについては安全保障上の懸念と言いながら、中国の態度次第で規制を緩めるというが、本当に安全保障上の懸念があるなら、中国の態度と関係なく締め出すべきだし、安全保障上の懸念がないなら、中国の出方とは関係なく、差別はおかしいことになるのに、トランプさんは交渉材料にしているからだ。

 トランプがおかしいことを言っていることがわかっている日本人は多いのに、自分の国が同じことをするとそのおかしさに気が付かないというのは、「ウチの子に限って」などと言っているお母さんと同じ状態なのだろう。

徴用工の問題自体無理筋

 国同士で解決したといっても、個人の補償請求については別問題である。このことは、旧ソ連抑留問題で日本自身が言ったことだ。元徴用工の人たちは、まさに日本のいう通りにしているだけ、とも言える。ブーメランとはこのことだろう。その論理に従って、韓国の裁判所が補償請求を認めたとしても、三権分立が行われている近代国家では文在寅政権がどうこうできるものではない。文在寅さんが裁判所その他の司法機関に裏から手を回して今回の判決を引き出したのだ、というのであれば文在寅政権の責任を追及すべきだが、見たところ文在寅さんがそうしている様子もなさそうだ。どうも彼は何もしていない、と言っていい状態のようで、その何もしない点が日本側からは許せないらしい。韓国側からすれば何を非難されているのか、唖然としてしまうところだろう。韓国人でなくても、日本人である私からも、一体何を言っているのか、文在寅さんが何をすれば満足というのか、さっぱりわからない。日本の常識からすれば、強姦犯人であっても政権が手を回して不起訴にするのは朝飯前であり、裁判なども政権の思い通りに操作するのが当然なのに、どうしてそれをしないのか、という文句なのかもしれないが、法治国家に向かって日本の常識をぶつけても無理だろう。

韓国に何度謝ればいいのか

 徴用工問題について合意したではないか、というのはわかるが、日本政府はそれをも人間の良心に従って見なおしたほうが日本の利益になるかもしれない。

 1965年、たしかに日本と韓国は4つの条約を結んで、補償、賠償問題について合意、解決したことになっている。日本は、個別に補償しようとしたのに、拒否したのは韓国であり、国と国との間ですることになったという見解もある。しかし、日本が主張したのは、補償や慰謝料ではなく、「未払金」に過ぎない。例えば残業代だとか労災に当たる事実を個別の労働者がきちんと立証すれば支払いますよ、ということである。タイムカードなどないし、会っても押させるわけがない環境で、個別の労働者に立証など出来ないことを知ってわざとそう言ったと見るしかない。日本が韓国に出すお金にしても、補償の意味はない、韓国の未来の発展のために援助するものであると当時の日本側担当者も言っている。それにしてもたくさん払ったじゃないか、ということもできるけれども、実はそのとき、アメリカやドイツなど、関係のない国々も援助している。今からは信じられないことだが、1970年位までは、韓国よりも北朝鮮のほうがよほどいい国であると思っていた人は多く、社会主義のほうがいいんだ、などと思われてはならないため、西側陣営がありとあらゆる出費を惜しまなかった時代である。つまり、補償も慰謝料も払っていないし、謝る意思もないどころか、ないことを念押ししているほどである。にもかかわらず、日本人の中には「何度謝れというのか」という人もいるのだが、残念ながら全て誤解というしかない。本当に事態を解決したいのであれば、その経過も踏まえて、両国国民が本当に納得する形で仕切りなおすほうが、実は日本のためにもなるかもしれない。

レーダー照射問題もちょっと無理か

 もうひとつは、2018年12月に起こった、日本の哨戒機に対する韓国軍艦のレーダー照射問題である。テレビゲームをやり過ぎている人は、戦闘ゲームで「ロックオン」などと言いながら遊んだりしていると思うが、あれは、「イルミネーター」と言われる特殊な光を捕捉した対象物に当て、その照射を頼りに、ミサイルが目標物までたどり着くというものである。もしもそのイルミネーターを韓国側が照射したのであれば、演習でもない限り、相当な問題になる。日本側の哨戒機機内では上を下への大騒ぎになっているはずであり、これもテレビゲーム的には機内に大音量でアラームが鳴り、赤色灯が点滅して、自動的に全エンジン全開、緊急離脱に加えて、目くらましのためのアルミ箔を撒くような事態になるはずだ。

 ところが、日本の自衛隊機の機内では、普段と違うレーダー校の探知に対して、乗組員が、いつもと違う事態であることは認めつつ、一応上に報告するかな、などと迷うような事態であり、一触即発でもなんでもなく、悠然と韓国軍艦の周りを飛び続けている。おそらく、素人の集団である、自民党には報告しないというのが正解だったのだろう。その報告を受けた途端に、意味もわからず大騒ぎし始め、韓国側がちゃんと事実を全部解明しようと言っているのに、話してもムダだ、と打ち切ったのは日本側である。一旦拳を振り上げては見たものの、冷静に考えれば勝ち目のないことに気がついたように見える。シビリアンコントロールと言いながら、むしろ軍人よりも冷静さを欠き、こんな人たちに報告なんてしたら、事態を混ぜっ返すだけだ、と現場の軍人たちに思われているのかもしれない。多少同情するなら、イラクへの派兵で、現地での日誌を隠したのもわけわからない人に言ってもしょうがない、という配慮が会ったのかもしれない。

 その上、日本の哨戒機というのはB737と同じぐらいの大型機で、実は哨戒機と言いながら、ミサイルなどの攻撃能力もあるようである。それが150メートルの上空を行ったり来たりしていたら、空港で見ればわかるが、ほとんど自分にぶつかりそうに見える程の近くを飛んでいる。だから韓国は日本の行為のその点を問題にしているのだが、日本側は国際的に見て問題ないという。だが、日本がいうのは民間機についての基準であり、軍用機ではどうも簡単ではないらしい。現に、アメリカはつい数日前、イラクの無人機が900メートルにまで近づいた、として攻撃を正当であると主張している。日本側の150メートルというのがどんな距離であるか、日本と韓国の言い分のどちらに分があるか、日本人は怒る前に考えてみたほうがいいだろう。

 何をいう、お前それでも日本人か、とも言われそうだが、日本人だからこそ考えなければならない。アウシュビッツの問題は、外野より誰よりドイツ人が一番考えなければならないのと同じである。