レシーブ二郎の音楽日記

レシーブ二郎の音楽ブログにようこそ。マイペースでぼつぼつ更新していきます。

Various / This Ain't No Mouse Music

no mouse musicライ・クーダーのファンのみなさんなら、レス・ブランクが撮影した1987年のライ・クーダーとムーラ・バンダ・リズム・エイセスのサンタ・クルーズでのライブの映像や、音源のことをよくご存知でしょう。日本でも後にNHK-BSで放送されましたし、たくさん海賊盤も出ています。オフィシャルな映像作品としての発売が待たれるところですが、2014年にリリースされた、『This Ain't No Mouse Music! - The Story of Chris Strachwitz and Arhoolie Records』という2枚組アルバムに、1曲だけこのときの音源が収録されたのでご紹介します。オフィシャルな発売はこれが最初と思います。出てすぐに入手していたのですけど、その時は長らくブログをお休みしていたもので。

2012年の11・12月にアーフーリーから出た50周年記念ライブ盤について長々と書きました。詳しくはそのときの記事をご参照いただきたいのですが、アーフーリーはクリス・ストラックウィッツが設立したマイナー・レーベルでブルーズやゴスペル、ザディコ、ケイジャン、コンフント・ミュージックなどをはじめとするルーツ・ミュージックの掘り起こしに大きな功績があります。ライ・クーダーとのかかわりについても、その時の記事に書いています。「クリス・ストラックウィッツとアーフーリー・レコードの物語」というサブタイトルのついたこの2枚組は、まるでアーフーリーの長い歴史のサンプラーのよう。多くのビッグ・ネーム(大半が物故者)にまじって、2枚目の方にライ・クーダー&フラーコ・ヒメネス名義で、上記のライブから、『Get Rhythm』に収録された「Let's Have A Ball」が収録されています。音質はかなりいいブートも出ているので、それとあまり変わらないよう気もしますが、やはりオフィシャル発売は喜ばしいです。

ブックレットに演奏メンバーは記されていませんが、ドラムス・ジム・ケルトナー、ベース・ホルヘ・カルデロン、ピアノ・ヴァン・ダイク・パークス、サックス・スティーヴ・ダグラス、コーラス・ボビー・キンク、テリー・エヴァンズ、ウィリー・グリーンJr.という1988年来日時の豪華メンバーに、トロンボーン・ジョージ・ボハノン、パーカッション・ミゲル・クルーズ、コーラス・アーノルド・マッカラーが加わったすごい面子です。おそらく実際の演奏でも1曲目で躍動感あふれるプレイです。このアルバムのブックレットは全編ストラックウィッツさん自身が書いているようで。この曲のところの解説は以下のとおりです。

「レスとわたしはチュラス(チュラス・フロンテラスというテレビ番組?)で働いていた。ライ・クーダーはそれに加わりサン・アントニオでフラーコ・ヒメネスに魅了された。ライはすぐにフラーコがどれほど才能をもったミュージシャンか見抜いたらしい。わたしはライにフラーコを紹介し、何度かライのツアーにフラーコが参加することになった。レス・ブランクと彼のクルーはカリフォルニア州サンタ・クルーズのカタリストで彼らのパフォーマンスを撮影した。フラーコがライといっしょにロードに出て演奏しているとろで、ライはフラーコをより大きな世界へと紹介することになった。そして、新しいオーディエンスにとって、南テキサスのコンフント・ミュージックにおけるアコーディオンの王者をはじめて聴く機会となった。」

とりあえず、1曲だけ、音だけ、正式に世に出ましたが、いずれ全編が出ることを願っています。

それはそれとして、このアルバム、いいですよ。アーフーリーのアルバムならほとんど集めているという方には不要かもしれませんが、本当にこのレーベルがルーツ・ミュージックの宝庫であることがよくわかります。録音年代も戦前から最近まで、ジャンルも本当に多岐にわたっていて、アーフーリーのカタログの充実度を示しています。2枚組というのはきわめて厳選された内容でしょう。存分に聴きごたえがありますよ。あ、この盤の画像を探していて気がついてのですけど、これってサントラでDVDも出ているみたい。この文章を書きはじめた1月くらい前に注文しました。先日到着。内容はクリス・ストラックウィッツの人となりをおおむね音楽のジャンルごとに追いかけるもの。もちろんライ・クーダーも出演して、インタビューに答えています。上記「Let's Have A Ball」の演奏シーンも少しはありますが、歌の部分はなし。フラーコ・ヒメネスの方がフューチャーされています。あと、若い頃ライがフラーコにアコーディオンを習っているシーンなんかも出てきます。でも、クリスとアーフーリーの歩みが音だけでなく、映像でも追うことのできる興味深い作品です。インタビューにはほかに、リチャード・トンプソン、ボニー・レイット、タジ・マハールも出ています。ブルーズ、ニューオーリンズ・ブラス・バンド、ケイジャン、ザディコ、コンフント、カントリーといったアメリカン・ルーツ・ミュージックの現場に出かけ、ミュージシャンと交流しながら、録音する姿はライさんの姿勢とも重なり合いますね。それにしても、よい音楽に出会ったときのクリス・ストラックウィッツさんの子どものような笑顔がものすごく印象的です。70歳代になっても、本当に音楽が好きなんだなぁと思わせます。もちろん日本盤は出ていません。英語力が貧弱な私にはインタビューの半分もわかりませんけど、ケイジャンのマイケル・デューセやフラーコ・ヒメネス、トレメ・ブラス・バンドなどの演奏シーンもあり、なかなか楽しめるDVDです。この手の音楽好きにはおすすめです。

Allen Toussaint / Motion

motion
一昨日ディランの箱ものを聴き込もうと思っていたら、フェイスブックのタイムラインにアラン・トゥーサン享年77歳。スペインのマドリードで、コンサートの後、心臓発作のため死去との訃報が流れてきました。本当に残念です。それから、ずっとトゥーサンの作品を聴いています。

今日は彼が卓抜したメロディ・メーカーだったことがわかるこの盤をレビューしましょう。

このアルバムにはおおよそ3つのタイプの曲が収められています。まず、甘いバラードです。「With You In Mind」、「To Be With You」、「Motion」、「Declaraiton of Love」の4曲。続いて、ファンキーなナンバーは冒頭の「Night People」、「Just a Kiss Away」、「Viva La Money」、「Happiness」の4曲。残る2曲の「Lover of Love」と「The Optimism Blues」はノベルティ・タイプのナンバーです。どの曲にもトゥーサンらしいプレイがあふれているし、聴きやすさでは彼のアルバム随一で、入門者に一番おすすめだったりします。プロデュースはジェリー・ウェクスラー、演奏しているのは、ジェフ・ポーカロやチャック・レイニー、リチャード・ティーという名うてのセッション・ミュージシャンばかり。ニューオーリンズの「あのノリ」を完全に再現している曲もあって、安心して演奏に身をまかせられます。

アルバムはリー・ドーシーにも提供した「Night People」で幕開け、マイナー・キーのファンキー・ナンバー「Just a Kiss Away」へと続きます。どちらも、なんともカッコイイナンバーですね。そして珠玉のバラード「With You In Mind」が登場。このメロディ・ライン最高です。「To Be With You」や「Declaraiton of Love」もいいですね。けっこうおしゃれなソフト&メロウ路線ですが、凡百のブラコンとは一線を画しています。タイトル・トラックの「Motion」も素敵なナンバー。前作『Southern Night』のタイトル・トラックの路線を継承する名バラードですね。ジェフ・マルダーのカバーもよかったです。

「With You In Mind」と「To Be With You」にはさまれた明るい「Lover of Love」の方は、エイモス・ギャレットが少し後で取り上げます。ジェフ&エイモスがそれぞれソロでこのアルバムからカバーしているわけで、彼らのセンスの良さは並大抵ではありませんね。「Viva La Money」はいかにもニューオーリンズという雰囲気が漂うファンキー・チューン。こちらもとってかっこいいアレンジです。コーラスはローズマリー・バトラーとボニー・レイットが参加しているのでしょうか。

「Happiness」は、ルバートの導入部があって、インテンポからはタイトなリズムになるファンキー・チューンです。ミーターズに比べたらリズムが平板なような気もしますが、ミーターズは独特の個性を持った演奏集団。「比べる」べきものではありません。この曲のポーカロのドラムだって、すんごくかっこいいと思いますよ。ラストは再び明るいノベルティ・ナンバー。ブラック・ミュージックのもつ「楽天的」な一面をとてもいい形で継承しているナンバーだと思います。これからこんな作風を受け継いでくれそうな若い人はいるのでしょうか。

彼のライブに接したのは4回、そのうち1回はニューオーリンズで行われたオバマ大統領支援イベントで、その時は1曲だけピアノの弾き語りを披露しただけでした。2012年のジャズフェスで見たフル・バンドの彼のステージはちょっとやそっとでは忘れられないすばらしいものでしたし、2007年に福岡、2013年に大阪のビルボードで見たライブもとっても素敵でした。彼はいつもにこやかでサービス精神が旺盛でした。自分はあの笑顔を終生忘れることがないと思います。

タイムラインを見ていると、彼は本当に世界中から愛されていたようです。そして、この日本にも毎年のように来てくれていました。年とともに飛行機での長時間移動などは負担となっていったはずですが、彼は聴いてくれる人がいれば世界中どこへでもかけつけるタイプのミュージシャンだったのでしょう。少々キツくてもプロ根性で乗り越えてきたんだと思います。タイムラインには、元気だった彼の突然の訃報を信じられない人であふれていますが、自分は人の命がどれほどはかないものか、よく知っています。今はゆっくり休んでくださいとしか言いようがありません。

最後までステージに命をかけ、ステージで散っていったに等しいアラン・トゥーサンに、本当にありがとうを言いたいと思います。

Bob Dylan / 1965-1966 Cutting Edge Deluxe Edition The Bootleg Series Vol.12

dylan1965-66ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ豪華箱入りデラックス・エディションは、一昨年の『Another Self portrait』、昨年の『Basement Tapes』に続いて、これが3作目です。昨年はこの時期blogを全く更新していなくて、『Basement Tapes』についてはまだ書いてないんですけど、去年の年末はよく聴いていたし、まぁ、いずれは書きたいと思っております。

さて、今回はディラン電化期、60年代中盤の重要作『Bringing It All Back Home』、『Highway 61 Revisited』、『Blonde on Blonde』の時代のアウトテイク集です。個人的に『Blonde on Blonde』は10代終わりの頃、輸入レコードで入手し「ディラン開眼」となった愛聴盤。早いものであれから30年ですか。もちろんアルバムが出てから来年で50年なんですけど、後追いでもすごいインパクトありました。その『Blonde on Blonde』は、後にザ・バンドとなるホークスのメンバーで数曲を録音するも、出来に満足できなかったディランがナッシュビルへ飛び、録音を完成させたことが知られていますが、そのお蔵バージョンの大半は正式には今回初お目見えです。そうそう、20代前半の頃、はじめてブートレッグ・シリーズVol.1〜3が出たときも、この時期の音源目当てにすぐに購入しました。数曲は今回のVol.12ともかぶってますけど、そんなことはいいんです。この時期のディランの歌はギター1本であれ、バンドであれ本当に「魔力」があって、ずっと聴いていても飽きません。いや、力がありすぎて、ちょっと疲れるかな。でも、その若さと自信と勢いたるや、唯一無二のもの。この歴史的なアーティストの一番油が乗っている時期の記録としてだけだなく、エンターテイメントとしても十分に価格だけの価値のある作品だと思います。

もちろん、このデラックス・エディッションでは、同じ曲が3〜5バージョン並び、徐々に肉付けされて完成形に至る過程がたくさん収められているわけで、そういう過程を楽しむことのできる音楽好き、ディラン好き向けには違いないでしょう。そこまでのファンではないけれど、聴いてみたいという方には2枚組のスタンダード・エディッションも用意されています。

バンドを探していたディランが、秘書メアリー・マーティンの進言により、ザ・ホークスの演奏をじかに見に行ったのが、1965年9月。そして、翌月のはじめには最初のセッションが行われています。その1965年10月5日のディランとホークスの邂逅という歴史的録音が収められているのは、なんと素晴らしいことでしょう。この日のセッションでは、まだ、リヴォン・ヘルムが参加していて、後のディラン&ザ・バンドの編成そのままです。「Jet Pirot」はすでに『Biograph』で発表済ですが、その他の初出音源が3曲。「I Wanna Be Your Lover」は2つのバージョンが収められています。これもかっこいいブルーズ・ロックですが、いちばんびっくりしたのは「Medicine Sunday」かな。いきなりロビーの切れ味のいいギターではじまり、ガースならではのオルガンがかぶさって、とってもかっこいいフォーク・ロック調。1コーラスで終わってしまうのがなんとも残念です。あと、曲名のないインストルメンタルも、後のザ・バンドっぽくてとっもグッドです。

11月30日のセッションでは、ドラムスがリヴォンからボビー・グレッグに交代しています。なんでも、ディランの電化によってライブでのブーイングがひどく、リヴォンは嫌気がさして戦列を離れたのだとか。しかし、他の4人ホークスは彼ららしいプレイを聴かせてくれます。この面子では2曲を収録していますが、「Can You Please Crawl Out Your Window?」は1バージョンのみに対し「Visions of Johanna」は5バージョン。バンドでいろいろな試行錯誤の末に、ナッシュビルの面子で録音されたアレンジに近いバージョンができあがっていく様子がわかります。そのうちのひとつはすでにブートレッグ・シリーズVol.7に発表済みなのですが。

さて、その「Can You Please Crawl Out Your Window?」ですけど、今から10年前2005年に出たザ・バンドの6枚組ボックスにも収録されていて、こちらはシングル盤としてリリースされたものですが、1965年10月5日録音でドラムスがリヴォンとクレジットされています。しかし、今回のボックスの解説には「(このセットに収録された)テイク6の後、2つの完全テイクがつくられた。そのうちのセカンド・テイクが1965年12月21日にシングルとしてリリースされた。アメリカではチャート・インしなかったが、イギリスでは17位に達した。」と記されていて、ザ・バンド・ボックスの方も11月30日セッションで、ドラムはボビー・グレッグというのが正解のようです。

年があけて、1966年1月21日のセッションでは、さらにドラムがサンディ・コニコフに交代しています。この面子で「She's Your Lover Now」を録音していて、4つのバージョンがおさめられています。ひとつはディランのピアノ弾き語りのみ、ひとつはブートレッグ・シリーズVol.1〜3に収録済みです。

以上がボブ・ディラン&ザ・ホークスの録音と言えるべきもの。あと、ロビーとリックが参加したニューヨーク録音で「Sooner Or Later」が3バージョン、完奏しないけど「Lunatic Priness」が1バージョン収められています。あとは、ナッシュビル・セッションに同行したロビーのプレイが7曲ほどで聴くことができます。「Like A Rolling Stone」が最初三拍子だったことは、ブートレッグ・シリーズVol.1〜3で知っていましたが、「Stuck Inside of Mobile with The Memphis Blues Again」がリハーサル段階で、三連のロッカバラードだったことには驚かされます。

とにかく6枚組の大作です。ディスク3は、「Like A Rolling Stone」が20バージョンというとんでもない内容です。ほかにも触れたいナンバーはたくさんありますけど、キリがありません。ブルース・ラングホーン、マイク・ブルームフィールド、アル・クーパーをはじめ、この時期のディランを支えた名うてのミュージシャンの名演もたくさん収録。しばらくこのboxにはまってると思います。

それから、もう売り切れたかもしれないけれど、なんでも今回は限定セットで18枚組のものもあるんだとか。6枚組でも聴き通すのにけっこう体力がいるのに、さすがにそんなものまでは不要です。ディランのコアなファンの方、もしくは研究者向けでしょう。自分も、もし、ライ・クーダーだったら買うかもしれませんけどね。彼の盤は日本盤LPのボーナストラックでさえCD化されていないし、再発CDにボートラがついたことなんて一回もないのだから、まず実現しないでしょうね。

あ、余談になってしまいましたが、ディランのブートレッグ・シリーズの近年の3作は、いずれもザ・バンドとの共演が収められていて、ザ・バンド、デビュー前の貴重な音源が収められています。このセットから順逆に聴くことによって、ザ・ホークスがいかにザ・バンドになっていったが理解できるように思います。そして、もちろん、ディランという個性的なアーティストの音楽が、65年から70年までというロック史にとっても激動の時代、電化とそれに伴う軋轢、バイク事故、歌唱方法の変更などさまざまな転換点を経て70年代形のスタイルに至るまでどのような軌跡をたどったか、この3作のボックスセットでかなりわかるようになったのは、個人的にも嬉しいことです。

Los Lobos / Gates of Gold

loslobosgatesロス・ロボスって、このブログでとりあげたのは前のスタジオ作『Tin Cna Trust』だけだったみたいですね。ずーっと好きなバンドなんですけど、ものすごいファンというわけじゃないです。前のレビューのしめくくりに「あぁライブが見たい」なんて書いてましたけど、未だかつてライブを見たことがありません。3年半前にニューオーリンズに行った時、初日に近くのハコに出ていたのですけど、ロバート・ランドルフの方を優先してしまいました。すいません。2013年のライブ盤が出たことは知っていましたが聴いてなくて、今回のスタジオ作は買って聴いてみましたけど、これがやっぱりいいのです。もともと落ちついた味のあるプレイのグループですけど、今作もそんな雰囲気が濃厚。同一メンバーによる長いキャリアが熟成させた他のバンドには絶対出すことのできない息のあったグルーヴが見事です。

もちろんデビューのころからの持ち味であるブルーズ・ロックとメキシカン・ルーツの両方とも健在。前者の典型である「Mis-Treater Boogie Blues」あるいは「Too Small Heart」などは初期のキャリアを彷彿とさせる力強さです。マンドリンの入ったタイトル・トラック「Gates of Gold」もいいですね。このトラックをモチーフとした黄金色の雲のジャケ写真もとっても素敵です。アコースティックのボトルネック・ギターをフューチャーした「I Believed You So」も素敵なブルーズ。間奏ではエレキ・ギターも渋いソロで迫ります。フォーキーな「Song of the Sun」もなかなかすばらしい。リズム隊が入ったときの重いビートは彼らならではでしょう。

メキシカン・ルーツを強く感じさせるのは2曲。マイナー・ラテン「Poquito Pora Aqui」も実に渋いです。また、明るいコンフント・ナンバーの「La Tumba Sera El Final」はフラーコ・ヒメネスのレパートリーでもあります。自分は、1988年にアーフーリーから出た『Flaco's Amigos』の冒頭に収められていたのがとても印象的でした。

アルバムは、落ち着いた三連のロッカバラード「Magdalena」で幕となります。日本盤は、これにボーナストラックが2曲つきます。インストの「Nachas」とメキシカン・ワルツ「Prenda Del Alma」のライヴ・バージョンです。彼らの最高傑作とはいえないながらも、毎回クオリティの高いスタジオ作を届けてくれるロス・ロボスの面々の力量とチームワークには完全脱帽ですね。

今回、メンバーの写真を見て、その年季の入った風貌に驚きました。たぶんみんな60歳前後でしょうから、当然といえば当然ですね。「La Bamba」がヒットしてテレビによく出ていた頃は、30代前半くらいだったんでしょうけど、その頃の印象が全く抜けません。思い起こせば、このバンドを知ったのは「La Bamba」のヒット前だから1986年頃。友人は当時の来日公演を見に行っていて、「客は少なかったけど、とってもよかった。」とか言ってた記憶があります。ミュージック・マガジン誌の評も参考にしてCDを買ったのもそのころだったかなぁ。それから30年近くたっているんだから、メンバーがそれなりの年輪を重ねているのは当然ですね。自分だって、同じ年数分老けてますからね。でも、当時の新進バンドの彼らと一緒に年を重ねてきたという意味では、そのころすでにステイタスを確立していた人々とはまた違った愛着がありますね。それにしても四十数年の長きにわたって、一度も解散することも、メンバー・チェンジもすることなく、地道に活動を続けているというのは本当にすごいことだと思います。

Ry Session 138 Don & The Goodtimes / So Good

don&goodtimesまたまた、ライ・クーダー参加作の重箱の隅つつきレビューです。ライ・クーダー関連のHPをいろいろ検索しておりましたら、1967年リリースのこのアルバムにライが参加しているという情報をゲット。早速ワンクリックで購入して、ワクワクしながら聴いてみました。まず、結果ですが、残念ながら、これぞ、ライ・クーダーのプレイと特定できるようなフレーズはありません。

この盤はREV-OLAからの再発なのですが、細かいクレジットはついておりません。しかし、スティーヴ・スタンレーのライナーの中にメンバーの回想として、ジャック・ニッチェがプロデュースした最初のヒット・シングル「I Could Be So Good To You」のドラムスがハル・ブレイン、ギターがグレン・キャンベルとマイク・ディージー、ベースがジョー・オズボーン、キーボードがラリー・ネクテルで、有名になる前のライ・クーダーがボトルネック・ギターを弾いたと書いてあります。この曲は、モノラルとステレオの二つのバージョンが収められているので、両方ともスピーカーの横で耳をそばだてて聴いてみたのですが、上に書いたように、「これぞ」というプレイは聴こえてきません。サビのところで、印象的なくりかえしのギター・フレーズがのっかってくるのですが、あるいはライがボトルネックで弾いているのかも知れませんけど、自分には普通の押弦のように聴こえます。むしろアコギのストロークの方がライのように思えるけど、ストロークじゃ個人差はあまりでないしなぁ。ライにとっては、ポール・リビア&レイダースに引き続いて参加した、レッキング・クルーとのセッションだったんでしょうけど、あまり個性を出せずに終わったようですね。しかし、このあたりのレコーディングを通じてニッチェの信頼を得ていくだろうと思います。

曲調は典型的なカリフォルニア・サンシャイン・ポップ。ビーチ・ボーイズそっくりさんのコーラスが心地よいです。最初はコーラスなしだったものに、メンバーの提案でコーラスが取り入れられたみたいです。この時期、ロサンゼルス産ポップスの常套手段で、メンバーはボーカルとコーラスのみで、演奏には参加させずプロフェッショナルのスタジオ・ミュージシャン集団レッキング・クルーがバックをやるという手法で録音されています。でも、「メンバーも演奏に参加したい」という欲求を解消させるために、曲によっては一部でメンバーを起用したり、ベースを二人にして、一人をメンバーにしたり、マラカスとかをオーバーダブでメンバーに振らせたりしていたようです。

自分はマイク・ディージーもとっても好きなんですけど、2曲目の「The Music Box」中盤のファンキーなカッティングとそれに続くリード・プレイはおそらくディージーのプレイ。とってもかっここいいですよ。3曲目「I Could Never Be」のリードはキャンベルっぽいです。もう1本カッティングでエレキが入ってるので、イントロから入っているアコギはもしかしたら、ライかも知れません。もっとも、メンバーの回想ではギタリストは5人くらいいたみたいなので、ほかのクルーかもしれないけど。

シングルのみの曲などからなるボーナス・トラックにも、なかなかいい曲があります。16曲目「BAMBI」はとっても気に入りました。きっとソフト・ロック・ファンの人気も高いんじゃないかな。この曲にはシタール(あるいはエレシタ)が少し入っているし、達者なアコギのプレイもあります。なんだか、ディージーが弾いているような気がします。17曲目「May My Heart Be Cast Into Stone」もなかなかかっこいい曲です。この曲のエレキのフレーズはちょっとライっぽいけど、ディージーとかテデスコかもしれません。全体的に隠し味のアコギがいい感じです。12曲目の「Colors Of Life」のイントロとか印象的ですが誰が弾いているんでしょうねぇ。

アルバム・ブロデュースはジャック・ニッチェ。1曲だけ、ジェリー・フラーが担当し、4曲はニッチェに加えてステュ・フィリップスが共同プロデュースに入っています。レッキング・クルーの優秀な演奏を楽しめる一枚ですが、その切り口だと無数のレコードがありますよね。彼ら、ファンキーなスペンサー・デイヴィス・グループの「Gimme Some Lovin'」をカバーしたりしているんですけど、サンシャイン・ポップにほんの少しばかりR&Bテイストが入っているのが彼らの個性のよう。彼らはオレゴン州ポートランド出身で。もともとはブリティッシュ・インベイジョンの影響を受けたビート・グループみたいです。それから、「I Could Be So Good To You」ヒットの後はディック・クラークのテレビ番組にレギュラー出演し、そこそこの人気を誇っていたようです。

Jon Cleary / GoGo Juice

jonclearygogoジョン・クリアリーさん、以前から名前は存じ上げておりましたが、今から3年前にニューオーリンズに行ったとき、レコード・ショップ、ルイジアナ・ミュージック・ファクトリーのインストア・ライブで見てすばらしい演奏にぶっとび、ファンになりました。その場で当時の新作でアラン・トゥーサン・カバー集の『Occapella』を購入しましたが、この作品は約3年ぶりとなる彼の新作です。この盤も、ちょっと前にバラカンさんのラジオでもかかっていましたね。その時にはすでに入手していたのですが、レビューは今頃になりました。

ちょっと、なんとかならなかったのかなぁと思う安っぽいジャケですが、内容の方は申し分ありません。彼のバンドというと、アブソリュートリー・ジェントルメンですが、どうも今回のレコーディングはその面子ではない模様、ギターの"Big D"ことダーウィン・パーキンスは参加していますが、リズム隊の二人は不参加。かわりにテレンス・ヒギンズがドラムス、ベースにはカルヴィン・ターナーが入っています。もう一人のギターがシェイン・セリオット、キーボードもサポート・メンバーがいて、ニジェル・ホール、パーカッションにダニー・サドウニック、トランペット、エリック・ブルーム、サックス、ライアン・ゾイディス、トロンボーン、チャールズ・ハロランという布陣でレコーディングに望んでいます。それに加え、ダーティ・ダズン・ホーンズもゲスト参加。アブソリュートリー・ジェントルメンは分散してバック・ボーカルにゲスト参加。ダンプスタ・ファンクのアイヴァン・ネヴィルも1曲バック・ボーカルで入っています。

1番好きなのはバラカンさんもラジオでかけていた「Brother I'm Hungry」です。このシンガー・ソングライター感覚がたまりません。ファンキーな音楽は大好きですが、自分はもともとこういうところから音楽好きになっているので、ソングライター的センスを持ってる人が一番しっくりくるんです。出だしがソウル・バラードの7曲目「Bringing Back the Home」も、名曲ですね。途中からミディアムのファンク・ナンバーに変身しますが、この曲にもソングライター感覚満載です。同じ系列でも、6曲目「Step Into My Life」は70年代の後半のAOR風。こういう曲でも難なく歌いこなしてしまう歌唱力、すばらしいですね。彼の声、ちょっとしゃがれていて、あまり華やかではありませんが、渋くてとってもいい声と思います。

もちろん、ファンキーな曲も目白押し。タイトル・トラックの「Getcha GoGo Juice」はめっちゃめちゃかっくいナンバー。後期ミーターズを思い起こさせる典型的ニューオーリンズ・ファンク。こういう曲大好きです。8曲目「9-5」も渋いファンクですが、ブリッジのところがバラードみたいになります。巧みな構成力に脱帽です。ラストの「Love on One Condition」は、なんだかリトル・フィートあたりを思い起こさせるちょっと重い感じのファンキー・チューン。いやぁ、とっても気持ちいいですねぇ。2・5曲目も、文句無しにかっこいいファンキーな曲ですよ。そうそう、1曲目を忘れるところでした。乾いたスネアが印象的でレゲエのリズムで料理された楽しい曲。アルバムの導入曲しとてうってつけです。

そんなわけで、ジョン・クリアリーさん、イギリス生まれですが、ニューオーリンズを代表する、いや、アメリカを代表するホワイト・ソウル・マンだと思います。今作は前作とはうってかわって、全曲ジョン・クリアリーのペン(1曲たげ共作)で、そのことを証明する力作になってます。一度聴くと、二度三度と繰り返し聴きたくなる快作ですよ。昨年はバラカンさんのライブ・マジックにバンドで来ました。今度バンドで来たらぜひ見に行きたいものです。

Donnie Fritts / Oh My Goodness

donniefrittsgoodnessなんとドニー・フリッツの新譜の登場です。スタジオ作としては7年ぶり、2009年来日時のライブ盤リリースから数えても5年ぶりです。1942年生まれ、当年とって73歳の彼の長いキャリアのなかでは、わずか4枚目のスタジオ盤です。これを「事件」と呼ばすして何と呼ぶのでしょう。まぁ、確かに、世間にはドニー・フリッツ、誰それ? っていう方が大半なのはわかっていますが、アメリカ南部のシンガー・ソングライターやソウル・ミュージックを愛好する方々にとって「聖地」のひとつである、マスル・ショールズの音楽シーンを語るとき、絶対避けて通れない伝説的人物の一人がこのドニー・フリッツさんなのです。来日はおそらく2〜3度くらいじゃないかと思います。最初はクリス・クリストオァソンのキーボード奏者として70年代に来日、そして、2009年、元カウボーイのスコット・ボイヤーやマスル・ショールズ・リズム・セクション(MSRS)のベーシスト、デヴィッド・フッドら強者達を含むデコイズを率いてヘッドライナーとしての来日公演の素晴らしさは、ちょっとやそっとでは忘れられるものではありません。その模様はDVDとCDになってリリースもされております。

そんな彼の満を持しての新作、涙無しでは聴けない味わい深いバラードがずらり、そしてスワンピーなロックが数曲。少したよりなげなドニーのヴォーカル。何の変哲もないのだけれど、ドニーの人柄がにじみ出ているウーリッツァー・エレピの音色。ここには、ドニー・フリッツというとっても人間臭い人物の持つ滋味のようなものが凝縮されています。個人的にはエリック・カズの新作に並ぶ、今年のお勧め盤です。

1曲目「Errol Flynn」は、ベット・ミドラーが歌った名曲「The Rose」を書いたアマンダ・マクブルームの曲のカバーです。彼女が映画スターだった父のために書いた美しいワルツ・バラードですが、ドニーが歌うと南部の雰囲気がぐんと出てきますね。彼もミュージシャンだった父に対する思いをこの曲に託したのかも知れません。

2曲目「If It's Really Got To Be This Way」は、盟友アーサー・アレキサンダーが1988年にリリースした復活盤の冒頭におさめられていたナンバー。ドニー、アーサーそしてギャリー・ニコルソンの3人による共作。アーサーのこのアルバムは大愛聴盤なので、この曲がはじまると鳥肌が立ってしまいました。アーサーはこの盤のリリースから5年後、53歳の若さで天国に召されてしまいますけれど、ドニーはいつまでも仲の良かった友人に思いを馳せているように思います。

そして、3曲目「Memphis Women & Chicken」も言わすと知れたダン・ペンおよびニコルソンとの共作。ダン・ペンも1999年の来日のときに歌っていましたし、自身のアルバムにも収録されていましたが、ドニーさんは2009年の来日のとき、アンコールのラスト、最後の最後に歌ってくれて、ライブ盤にも収録されています。ここでスタジオ・バージョンが初お目見えですけど、渋いミディアムのロックン・ロール。タイトでいい演奏ですね。

4曲目はセルフ・カバー。1997年の2作目『Eveybody's Got a Song』から、ジョン・プラインとの共作のワルツ「The Oldest Baby In The World」です。このときはウィリー・ネルソンとのデュエットでしたが、今作では自身のヴォーカルのみでしみじみ聴かせています。共作者のプラインはアクースティック・ギターで参加。エンディング部分の室内楽風ストリングスもとっいもいい感じですね。

5曲目がようやく今作のための本人によるオリジナル・ソング。パートナーなしで一人で書いています。これがめちゃめちゃかっこいいスワンプ・ナンバー。スライド・ギターもいい味を出していで、エンディングではニューオーリンズ・スタイルの転がるピアノも出てきます。

6曲目もセルフ・カバーですが、ドニーさん自身は初録音かな。トロイ・シールズとの共作で、ウェイロン・ジェニングスに提供した1970年代中盤のナンバーです。ジェニングスのバージョンはドブロをフューチャーした渋いバラード。ジェニングスの自信に満ちた歌声に比べるとドニーさんの歌はちょっと頼りないですが、それこそがドニーさんの「味」。ドニーさんはエレピ中心のスロー・バラードに仕上げていますが曲の良さは抜群です。

7曲目はジェシ・ウィンチェスターのカバー「Foolish Heart」。彼の2001年のアルバムに収録されていますが原曲は未聴です。ウィンチェスターさんも大好きなシンガー・ソングライターで、2年ほど前に他界してしまったことは残念でなりません。ドニーさんがこの曲を取り上げたのは、きっと彼へのトリビュートの意味もこめてのことでしょう。なんとなく、ニューオーリンズのブラス・バンドを思わせるホーン・アレンジもたまりません。

8曲目はジーン・トーマスというテキサスのシンガー・ソングライターの1972年の曲のカバー。全然知らない人でしたが、ネットというのは便利なもので、すぐにこの曲のオリジナルが聴けてしまいます。少々ハイ・トーンで歌の上手い人です。コード進行にドニーさんの曲との共通点が感じられますね。この曲、エヴァリー・ブラザーズもレパートリーにしています。名曲ですよね。ドニーさんもしみじみと聴かせてくれますが、控えめなホーンやエレキ・ギターも絶妙のサポートです。

9曲目は5曲目同様、今作のための本人によるオリジナル・ソングで、やはりリズムもの。ブルージーですが、ダメ男が「君」の愛の力で立ち直る歌。ファーストにもこんな曲調のナンバーはあったけど、こういう器用じゃない芸風こそドニーさんの持ち味でしょう。

10曲目 ミシシッピー州テュペロ出身のポール・ソーンというシンガー・ソングライターの1997年作のカバー。共作しているビリー・マッドドックスはタニヤ・タッカーやハンク・ウィリアムス・ジュニアに曲を提供しているソングライターです。ポール・ソーンがギター1本で歌っている映像をネットで見ることができますが、この人の音楽もとっても良さそうですね。ドニーさんはストリングスを効果的に使ったバラードに仕上げていて、まるで自分の歌のように、いつくしんでこの歌を歌っています。と、言うかこの曲に関して言えば芸風そっくりですよね。この曲では、ナッシュビルで長く活躍しているギタリストのレジー・ヤングが参加し、燻し銀のフレーズを紡いでいます。

12曲目 その昔ドニー・フリッツがエディ・ヒントンともにボックストップスに書いたナンバーのセルフ・カバーです。この曲も2010年に亡くなった元ボックストップスのアレックス・チルトンへのトリビュートかもしれません。1コーラスはギター1本で歌われますが、これがまた味があっていいんですよねぇ。曲はその名のとおりブルージーなロックで汽車に乗っているようなリズムが心地よいです。

13曲目も今作のための本人とスプーナー・オールダムによるオリジナル・ソング。たった3曲の書き下ろしのうち、たった1曲のバラードです。なんといってもシンプルな歌詞の世界が素敵です。ここではGoodnessを「優しさ」と訳しましたが、「God」の婉曲表現としてももちいられるようです。

わたしの優しさ、それは愛すべき世界 わたしの優しさ、 それは、ひとりの少女からもたらされた
別れが二人を引き裂いても、わたしの優しさは、わたしの心をいまだに暖める
わたしの優しさ、それは、わたしがあるべき姿、わたしの優しさ、それはわたしを愛し、見守るもの
別れが二人を引き裂いても、わたしの優しさは、わたしの心をいまだに暖める

スプーナーがピアノを弾き、ドニーが歌う珠玉のバラードです。ほかに言葉はいりません。

2009年の来日時、デコイズととっても息のあった演奏を聴かせてくれたので、そのメンバーが入っているんだろうなぁと思ったら、デヴィッド・フッドが2曲でベースを弾いているくらいで、他のメンバーは全然入ってませんね。かわりに上に書いたように、レジー・ヤングやスプーナー・オールダムの客演があります。自分の知らない方々がバックをつていますけど、本当に過不足ない素晴らしい演奏。アルバムのプロデュースはジョン・ポール・ホワイトとベン・ターナーで、アラバマ州フローレンスのサン・ドロップ・サウンドで録音されています。マスル・ショールズ周辺のミュージック・シーンの層の厚さを感じますね。エレキ・ギターで、ブライアン・フリッツという方が活躍してるけど、もしかして、ドニーさんの身内でしょうか。

今回は今までの作品に必ず数曲入っていたワン・コードのファンク・ナンバーをあえてはずし、バラード中心の楽曲で勝負に出ています。本人が今もっとも歌いたい歌を集めたらこうなったというタイプのアルバムなんでしょうけど、本人の思いのたけがあふれてくるようなアルバムだと思います。上記のように、今作のために書き下ろした新作は3曲しかなく、あとはセルフ・カバーや他のミュージシャンのカバーですけど、CDのブックレットには小さな字で歌詞が掲載されています。それは、ドニーが自分の思いを正確に聴く人に届けたいがためのものでしょう。そして、ジャケットですが、「老い」をつつみかくさず、そのままの自分をさらけだそうとしているかのような「横顔」のポートレート。この写真もありのままの自分を聴いてほしいというドニーのメッセージのように思えます。おそらく、多くの人には歌があんまり上手くないとか、ちょっと渋すぎるとか、そんな反応もあるかもしれないけれども、きっと噛めば噛むほどに味が出るスルメ・アルバムだと思いますので、このブログをよく見てくださいっている方には、ホントお勧め盤ですよ。

The Word / Soul Food

the word soul food3年前のニューオリンズ・ジャズフェスに行ってから、毎年、その季節になるとどんなミュージシャンが出るのかチェックするようになってしまいました。それで、今年の3月ころだっけか、ジャズフェスのホームページをつらつらとみておったところ、The Wordという名前にぶちあたりました。そうです。今を去ること14年前、ロバート・ランドルフ、ジョン・メディスキとノース・ミシシッピ・オールスターズのコラボによって登場したゴスペル・インスト・グループのThe Wordが、ひさびさにジャズフェスに出演とあって、とっても行きたくなりましたが、そうそう簡単にニューオリンズとか行けるもんじゃないですもんね。

そんな記憶もおぼろげになっていた8月頃でしたっけか、毎週土曜の朝に聴いているピーター・バラカンさんのラジオ番組ウィークエンド・サンシャインで、The Wordが14年ぶりのニューアルバムを出しているということを知り早速購入。けっこう前に届いてよく聴いていたのですが、なんやかや忙しく更新が滞り、レビューが今頃になってしまいました。それで肝心の内容ですが、まず結論は、めっちゃかっこいいです。前作を引き継いでいる部分と、前作と少々変わっている部分がいいバランスで並んでいて、唯一無二のスーパーグループ、The Wordのアルバムとして存分に楽しめます。お勧めです。

前作が超有名ゴスペル曲のオンパレードで、ある意味ゴスペル入門的な内容だったのですが、今回はゴスペル色が幾分薄まっているように思えます。全13曲中10曲がメンバーのオリジナル。しかも、そのうち6曲が複数のメンバーによる共作で、セッションで生まれた曲のように思えます。作曲は1曲目はコーディ(ドラムス)、9曲目はメディスキ、10・11曲目はランドルフ、2・4・5・6・8・12曲目が共作で、トラディショナルなゴスペルは3・13曲目しかありません。

1曲目「New Word Order」は前作の路線を引き継いでいる爽やかな曲。オープニングにぴったりです。タイトルからして今作のテーマ曲みたい。中盤でランドルフのスチールが大暴れ、ルーサーも負けてませんよ。2曲目、ちょっとダークでブルージーな雰囲気の「Come By Here」は、前作には1曲くらいあったタイプかな。ここでは、サビの部分だけノース・ミシシッピのベーシスト、クリスのシンプルなボーカルも入ってます。

ゲスト参加のルーシー・フォスターが歌う「When I See The Blood」は前作のゴスペル有名曲にボーカルが入ったような内容で、スカッと爽快なプレイを聴くことができます。それにしても彼女のヴォーカルいいですねぇ。メイヴィスの後継者になれると思うんだけど、このままゴスペルの世界に飛び込んじゃうことはたぶんないでしょう。彼女は教会でゴスペルを覚えたのではなくて、ラジオでゴスペルやブルーズを覚えた世代。ますます活躍してほしいもんです。オフ気味のギターではじまる4曲目「Play All Day」は、ライブで聴いたら大興奮間違えなしのファンク・チューン。メディスキのオルガンも存分に存在感を見せています。

タイトル・トラックその1「Soul Food I」はうってかわって、ドリーミーな雰囲気のバラード系インスト。美しい旋律が聴くものの胸を打ちます。ワウがかかったボトルネックを弾いているのはたぶんルーサーでしょう。彼のスライドもとってもセンスいいですね。さすが幼少の頃からライ・クーターのプレイを目の当たりにして学んだだけのことはあります。続いて「Soul Food II」は、雰囲気をかえてセカンド・ラインのリズムに乗ったファンキー・チューン。この曲もメディスキのオルガンがとっても気持ちいいです。

7局目は80年代からアル・グリーンにも曲を提供しているエルバニータ・クラークという人のナンバーで「You Brought The Sunshine」。タイトルどおり元曲はゴスペルなんでしょう。ちょっとレゲエっぽいリズムで、ここでもランドルフのスティールがフィーチャーされていますが、ルーサーとのツイン・ギターの部分もあって気持ちいいですよ。8曲目「Early In The Mornin' Time」は、タイトルとは裏腹に、かなりおどろおどろしいスライド・ギターが全編にフィーチャーされているナンバー。メンバー全員の共作ですが、やっぱりこれはランドルフが弾いてるんだろうと思います。

9曲目「Swamp Roard」は、作曲者のメディスキのオルガン・プレイにつづいて、ルーサーによる普通のフィガリングの速弾きギター・ソロが登場、続いてランドルフのソロが続き、再びメディスキのはじけたプレイに戻ります。なんとなくミーターズを思わせる曲調ですね。10曲目は軽快な「Chocolate Cowboy」。南部には今でもアフリカン・アメリカンのカウボーイは健在だと思います。ルイジアナに行ったとき、プランテーションで見た数人のカウボーイの中に黒人さんもいたもんなぁ。彼らをテーマにランドルフが書いた曲。なんか、曲名のとおりブルーグラスをファンキーなエレキ・バンドでやっている風です。リズムといいランドルフのフレーズとグラスっぽいもんな。面白いです。ばっちり決まったエンディングの後には誰かの満足そうな笑い声も入っています。

続く11曲目もランドルフの「The Highest」。今度はゆったりしたバラードで、アンサンブルの美しさを堪能することができます。とってもよいです。12曲目はとってもブルージーでスリリングなナンバー。前作にはなかった肌合いですね。メディスキのオルガンが活躍して、ギターはあまり自己主張をしていません。ラストの「Glory Glory」はアクースティックなアレンジで、ランドルフはドブロを弾いています。ゲスト・ボーカルはエイミー・ヘルム。彼女もソウルフルな声をしておりますね。血は争えません。クリス・チュウもデュエットでいい喉を聴かせてくれます。それにしても、ランドルフのドブロもとっても気持ちいいですね。なんでこんなに速く弾けるんだろう。ここではメディスキはエレビを弾いてますが、こちらもいい感じですね。

いろいろ書いてきましたが、前作と今作を続けて聴くと、14年という歳月が経過しているようには思えないです。それだけ、当時から彼らのプレイが完成されていたということでもあります。どっちが好きか聞かれると、とっても難しいです。でも、やっぱり出会いの鮮烈さで僅差で前作かな。今作もそれほど完成度の高い一枚ということです。おそらく、ボーカルも入って、聞き飽きないという意味では今作がお勧めかも。ダンプスタ・ファンクとかブークー・グルーヴとかギャラクティックとかと続けて聴いても違和感ないですよ。それに、録音技術はやはり進歩してますね。今作の方がより立体的に聴こえます。彼ら、来年3月のオーストラリア・バイロンベイで開かれるブルーズ・フェスにすでにエントリーしています。時間とお金のある方はぜひ見に行ってほしいと思います。ついでに日本にも寄ってくれないかなぁ。

Various / 40!!!Years Bear Family Records

bear family 40
ちょっと色々忙しくて更新が滞っておりました。その間に、何とライ・クーダーが1曲だけ新作をオフィシャル・リリースしていました。リチャード・ワイズさんという方が設立した、ドイツのカントリーやロカビリーの再発専門レーベル、ベア・ファミリー・レコードの40周年記念盤(CD3枚・DVD1枚のボックス・セット)の2枚目1曲目に収録されています。このレーベルのことは、「西部劇となつかしのカントリー&ウェスタン日記」というホームベージに詳しく掲載されていますので、そちらを参考にして下さい。勝手にリンク貼らしてもらいます。


http://blog.goo.ne.jp/kantoridaisuki/e/07c9e59baf8fec62c25de34cc7d4af95


それにしても、ライさんの完全にギター1本のみ弾き語りというのは、日本のみでシングル発売され、1982年にリリースされた『Slide Area』の日本盤のみに追加収録された「Big City」以来、なんと33年ぶりなんですよ。今回も「Big City」と同じくノン・スライドですが、もっと明るく軽快な感じです。しかも、同様に本人のオリジナル。あ、「Big City」はジム・ディッキンソンとの共作でしたか。曲調はよくあるフォークブルースです。自作曲とはいえメロディは借り物ですが、そんなもの、昔のブルーズはみんなそうだし、ライ御大の『My Name Is Buddy』なんかもそうなので気にすることはありません。歌詞は他のミュージシャンと同じくベア・ファミリー讃歌ですが、ライの歌詞は彼らしくちょっとシュールでヒネリが効いています。ボックスセット付属の豪華解説本に歌詞が掲載しれているので訳してみましょう。

俺が死んだら、ベア・ファミリーになりたい
だんだん、ベア・ファミリー・マンになっていきたい
俺が死ぬときには、リチャードに準備しておいてほしい
スキーツ・マクドナルドやレフティ・フリゼル、そして、ハンク・スノウじいさんのように、
冷たい冷たい土の中に横たわっても、きっとホットになれるだろう
アルバムのライナー・ノートはコリン・エスコットが書いて
みんなはレコード・ショップで飛び跳ねて喜ぶ
俺が死んだら、ベア・ファミリーになりたい

俺は本当にベア・ファミリーになりたい
なぜなら、死ぬときに手厚くケアしてくれるから
君を梱包し、発送して
コレクターのやつらは飛び上がって叫ぶ
値札は他のレコードよりほんの少し高いだけ
イーベイに出したら、だんだん値が上がって儲かるよ
俺が生きてようが死んでようが、レコードがケツを蹴り上げて君を踊らせる
俺が死んで、偉大なベア・ファミリーになるのが待ち切れない

エンディングの部分では、ライ・クーダーならではの素敵なギターワークを楽しむことができます。本当に上手いよなぁ。最近でも、さっきにあげた『My Name Is Buddy』なんかに「ギター1本の弾き語り」に限りなく近いスタイルはあったけど、完璧なものはさっき書いたように33年ぶりですよね。彼のギター1本のインストはサントラ盤などにも点々とあるけれども、「ギター1本の弾き語り」はオフィシャルではそんなにないですよね。ファーストの「Police Dog Blues」、セカンドの「Vigilante Man」、『Get Rhythm』の「13 Question Method」そして、「Big City」と今回の「Bear Family Song」くらいだと思います。たぶん。あぁ、そうそう。『Show Time』の「Jesus On The Mainline」と『Jazz』の「Nobody」は、「ギター1本の弾き語り + コーラス隊」で、ライのアコギをたっぷり味わえますけどね。

ライ自身は、ソロ・キャリア初期の頃は1人でプロモーション・ツアーをやっていたけれど、本当はアンサンブルの音楽の方が好きなんじゃないかな。1988年のマウラ・バンダ・リズム・エイセスとの来日の時は、中盤で3曲くらいソロのコーナーがあったけど、その後の来日では一人っきりで演奏することはなかったと思うし…。でも、こうして、ずいぶん久しぶりに完全ソロの弾き語りが聴けてうれしいです。

解説本には以下のようにライの紹介文が綴られています。

「ライ・クーダーはサンタモニカで生まれ、妻のスーザンと、猫のパンプキンと一緒に、今もそこに住んでいます。彼は人生のすべてにおいてギターをプレイしており、それを止める理由はみあたりません。」

このボックス・セット、ライさん以外にもさまざまなミュージシャンが、ベア・ファミリー讃歌を寄せています。ほとんど知らない人達のカントリーやロックンロールばかりですが、心地よい演奏が多くてとっても楽しめますよ。スゥインギーなものも含め、オールド・タイミーなスタイルの曲がほとんどです。それからドイツ語の曲も、英語の曲も入ってます。気になったのは1枚目に収録されているリチャード・ベネットというミュージシャンのアコギのボトルネック奏法中心のインスト曲が、かなりライのプレイに肉薄しています。きっとライさんのフォロワーだろうと思いましたが、解説にさらっと目を通してみると、ライに近い世代。70〜80年代にはニール・ダイアモンドのバックでプレイしていた凄腕セッション・ミュージシャンのようです。あと、2枚目にチップ・テイラーが2曲入っていますが、彼の歌、枯れてて渋いですね。かつてヴァン・モリソンのバックをやっていたジョン・プラタニアも入っています。そういえば、去年か一昨年、この二人トムス・キャビンの招聘で来日したんですよね。見たかったなぁ。

ライ・クーダーのオフィシャル・リリースといえば、3月頃にもこんなものが公開されています。


https://soundcloud.com/obon-city


そうです。ストーンズの「Under My Thumb」のカバーです。ずっと前から知っていたのだけど、なんだか挙げそびれていました。古い人間なもので、パッケージがないと、どうもタイトルにしづらいんです。こちら方はアフロ・キューバンな雰囲気。バーカッションではじまり、ホーンも入ってます。マリンバであろう木琴系の隠し味がよいですね。キューバやメキシコのサウンドを意識しているようで、たくさんのパーカッションが入っているようです。エレキ・ギターは本人が2本をダビングしています。右がリズム、左がリードのスライド。とっても心地よいです。さまざまなワールド・ミュージックの奥義を体得したクーダーならではの極上のバンド・サウンドですね。

それから、ちよっと防備録的に付け加えますが、先週のピーター・バラカンさんのFM番組ウィークエンド・サンシャインにゲスト出演していた渡辺三郎さんが、ライ・クーダーは60年代の一時期、一週間だけビル・キースの代役でビル・モンローのバンドでバンジョーを弾いていたという情報がありました。それに対して、バラカンさんは「ライ・クーダーがバンジョーを弾いているのは聴いたことないなぁ。」と返しておられました。初期のオフィシャル・アルバムにセッション参加作にはほとんどバンジョーのクレジットがあるものがないですけど、70年代初期のインタビューで、確か「バンジョーはもう弾いていないんだ。」みたいな回答があったと思います。それから、マンドリンはクラレンスのお兄さんのローランド・ホワイトに倣っていたとか。ライさん、自分のアルバムではブルーグラスはまずやりませんが、やっぱりそっち方面の音楽も好きだったようですね。ライさん、今はリッキー・スキャッグス、シャロン・ホワイト夫妻と全米ツアー中、ピーターさんもラジオで言ってましたが、自分もとっても見たいです。

Ry Session 137 Jerry Yester and Judy Henske / Farewell Aldebaran

farewell aldebaranザル・ヤノフスキーに続いては、この方がたのアルバムをレビューしましょう。こちらも、ライ・クーダー参加作とされているものですが、全くライらしいプレイは聴こえてきません。これもまさに重箱アイテムで、切手収集並みの意欲のある方にしかおすすめできません。

自分の持っている盤は日本盤紙ジャケCD。原盤に忠実と思われるダブル・ジャケットをみまわしても、あるいはAllmusicを見ても演奏者クレジットは記載されていませんが、ウイキペディアなど複数のサイトにミュージシャン・クレジットが掲載されています。それによると、ライ・クーダーはマンドリン、デヴィッド・リンドレーはボウド・バンジョーとなっていて、ほかに、ドラムスにトキシー・フレンチ、ベースにジョー・オズボーンやジェリー・シェフなど、マーク・リヴァインやパット・ブーンなどのレコーディングで、ライと共演した面々の名前が並んでいます。ほかに、ギターの名手として知られたディク・ロスミニの名前もあります。そして、ジェリーがレコーディングに協力したザル・ヤノフスキーは、共同プロデューサーであり、2曲にベースとギターで参加しています。

こうした情報を得た上で、必死で「ライらしい音」をさぐってみたのですが、全然ひっかからなかったです。いくつかのネット情報で、「rhythm mandolin」と記載されたものもみつけたのですが、この盤ではライ独特のマンドリン・プレイは全く聴こえてきません。もしかしたら、どこかの曲でひっそりとマンドリンを弾いているのかもしれませんが、自分にはわからなかったです。

それで、デヴイッド・リンドレーの方ですが、ボウド・バンジョー、弓でひくバンジョーとなっているのに、カントリー・タッチの6曲目「Raider」には普通のバンジョーしか入っていません。しかし、この曲で聴こえてくるエモーショナルなフィドルはリンドレーのプレイのように思えます。そうすると、オーバーダブしたものでないとすると、バンジョーを弾いているのがライ・クーダーなのか? それともベースを弾いているのか、と疑問がつきません。ちなみにこの曲でフィーチャーされているハンマー・ダルシマーを弾いているのは、ウィキではリンドレーの友人というクレジットがあり、カレイド・スコープのソロモン・フェルドハウスでは?と推測されています。一方、8曲目のピアノ・バラード「Rapture」を聴いていると、出だしから「ふにゃーん」と変な音を出す弦楽器が出てきます。これぞボウド・バンジョーだ。リンドレーはこの曲でも存在感を醸し出しています。

それに比べ、ライ・クーダーはこの盤では存在感薄いです。60年代、アッシュ・グローヴの客として、ブルーズ・リヴァイバルの巨人達を肩を並べてみていた二人ですが、オフィシャルな初共演盤はおそらくこの盤と思われます。この後リンドレーは渡英し、テリー・リードのバンドに加入するので、次なる共演は1973年のマリア・マルダーのファーストに収録された「Any Old Time」まで飛んでしまいます。

自分がジュディ・ヘンスキの名前を初めて知ったのは、1982年にクロスビー・スティルス&ナッシュのアルバム『Daylight Again』に提供したクレイグ・ダーギとジュディ・ヘンスキの共作「Might As Well Have A Good Time」という素敵なバラードでした。それから1989年にはデヴィッド・クロスビーのソロにも二人は「In The Wide Ruin」という、やはりすばらしいバラードを書いています。そんなことから彼らに興味を持ち始めたのですが、クレイグ・ダーギの年上の奥さんのジュディ・ヘンスキは1960年代の前半から歌っているフォーク・シンガーだったんですね。そして、この盤のエクスキューティヴ・プロデューサーでもあるハーブ・コーエンは、ジュディの歌に惚れ込んで、音楽業界のプロデュース業へと進出してきた人なんだそうです。

ジュディ・ヘンスキとジェリー・イエスターは60年代はじめに出会い結婚しますが、彼女はソロで、ジェリーはモダン・フォーク・カルテットからラヴィン・スプーンフルへとバンド活動と二人別々の音楽活動をしていましたが、60年代後半頃から一緒に活動をするようになり、1969年には二人の名義のこのアルバムをリリースします。ジャケットはサイケなネガを使っていますが、裏ジャケがポジ。二人の間には小さな子どももいて幸せそうなショットです。

しかし、2年後二人を中心に結成したローズバッドというグループに加入したクレイグ・ダーギとジュディは恋仲になってしまい、ジュディはジェリーと離婚してクレイグと再婚します。もちろんバンドは解散です。それから、ジュディは主婦業に専念するかたわらときおり詞を書いて夫の音楽活動に協力していたようですが、2000年には突然の復活をし、2枚のアルバムをリリースしています。

このアルバムは、1969年という時代にしては、サイケディリックなカラーが強いですね。時代はすでにアーシーな方へと流れていましたからね。アシッド・フォークの名盤にも数えられますが、モンド感がすばらしい一枚です。曲はバロック調から、カントリー調、バラードからロックまで変化に富んでいるし、ラスト・ナンバーでは開発されて間もないムーグ・シンセサイザーも使われていて、どの曲にも一風かわったヒネリが入っていますが、ザル・ヤノフスキーも演奏に参加しているラスト・ナンバーあたりは特に興味深いですね。かわいらしい作風の2曲目も気に入っていますが、この手の音楽に慣れていない方がいきなり聴くと疑問符がたくさん並んでしまうかもしれません。フランク・ザッパのストレイトからのリリースです。

そうそう、ライ・クーダーさん、数年後やはりジェリー・イエスターがプロデュースしたビリー・マーニットのアルバムにも1曲参加していますね。なかなか彼らしいサウンドは出てきませんが、こういう人脈からいっても、この盤に参加している可能性はけっこうありそうですね。

Ry Session 136 Zal Yanovsky / As Long As You're Here

zal aliveライ・クーダー参加作、重箱の隅つつきはまだ続きます。続いては、1968年にリリースされたザル・ヤノフスキーのシングル盤です。ザル・ヤノフスキーと言えば、ラヴィン・スブーンフルのギタリストとして活躍した人で、この曲がボーナス・トラックとして収録されている唯一のソロ・アルバムでもちょっとサイケディリックなエレキ・ギターを弾きまくっております。最初聴いたときから、この曲のエレクトリック・ボトルネック・ギターは、なんだかライ・クーダーくさいなぁと思っていたのですが、さすがにギタリストのレコードだから本人が弾いているのだろうと判断していたました。

しかし、ジャック・ニッチェのコンピレーションにこの曲が収録され、同曲がニッチェのプロデュースであることがわかったり、1968年録音のニッチェがらみのライ参加曲が以前より明らかになってきて、あらためて聴き直してみると、このギター・フレーズはライ以外ではありえないと、今さらながら確信がもてるようになってきました。

曲はアップテンポでポップな感じですが、ライの弾くひずんだ粘っこいエレクトリック・ボトルネック・ギターが全編にオブリガードでからんでいて、なんとなく南部風味をただよわせています。ソロはありませんが、キレのあるかっこいいプレイを楽しむことができます。中盤あたりの女声コーラスはなんとなく、ヴァン・ダイク・パークスが書くコーラスを連想してしまいますが、こちらはあくまでもジャック・ニッチェによるものでしょうね。この曲はビルボードでは10位まで上がるヒットを記録したそうです。なお、B面には、この曲のテープ逆回転バージョンが収録されておりました。

ザルは、1944年カナダのトロント生まれ。10代からトロントのコーヒー・ハウスで歌っていたようですが、デニー・ドハーティと知己を得たことから、キャス・エリオットらとマグワンプスを結成します。デニーとキャスはのちにママス&パパスを結成しますが、1965年、ザルは一時期マグワンプスに加わっていたジョン・B・セバスチャンとラヴィン・スプーンスルを結成することになります。スプーンフルはのっけから「Do You Believe In Magic?」が大ヒットし成功をおさめ、「Day Dream」など次々にヒットを飛ばしますが、1967年ザルはバンドを脱退します。わかりにモダン・フォーク・カルテットにいたジェリー・イエスターが加入します。

ザル・ヤノフスキーが1968年に発表したアルバム『Alive and Well in Argentina』は、この時代の空気を反映したサイケディリックなアルバムで、結構凝ったつくりになっています。
動物の鳴き声に続いて式典などで使われる荘重なブラスバンド曲がはじまったかと思うと、突然回転数が下がるというオープニング。そしてアップテンポのごきげんなロック・ナンバーがはじまります。ザルの人懐っこい歌声も曲もキャッチーでいい感じです。2曲目は前半とエンディングにザルの心地よいエレキ・ギターがフューチャーされている、ラヴィン・スプーンフルを思い起こさせる、ちょっととぼけた感じのナンバー。中盤はサックスやホーン・セクションが活躍します。フロイド・クレイマーのインスト曲をエレキ・ギターでカバーした「Last Date」やフランキー・ライモンで知られる「Little Bitty Pretty One」などのカバー曲にも独特のセンスが感じられます。また、タイトル・トラックはバンジョーも入ってカントリー調。ザルのひょうきんなキャラクターを前面に押し出したとびきり楽しいアレンジになっています。演奏やアレンジにはスプーンフルからジェリー・イエスターやジョー・バトラーが参加している模様です。

そんなわけで、この時代らしい好盤だと思うのですが、セールス的にはふるわなかったようです。1971年、カーマストラから上記のジャケットで再発になった際、「As Long as You're Here」も追加収録されました。上のジャケットは、その時のもので、下のジャケットがオリジナルです。

参考までに、ライ・クーダー参加作でジャック・ニッチェが関わっている作品を列記しておきます。

1967
Don & The Good Times 『So Good』

1968
Pat Boone 『Departure』
Neil young『Neil Young』
Monkees 『Head』
Honey ltd. 「Loui Loui」(single)
Zal Yanovsky「As Long as You're Here」(single)
Rolling Stones 『Beggar's Banquet』
Marianne Faithful「Sister Morphine / Something Better」(Single)
Everly Brothers「Mr. Soul」ほか(当面未発表)

1969
Rolling Stones 『 Let It Bleed』
Harpers Bizarre 『4』(ニッチェ編曲作品にはライ不参加)

1970
Various 『Performance』
Ron Nagle 『Ron Nagle 』

1971
Crazy Horse『Crazy Horse』
Buffy Sainte-Marie 『She Used to Wanna be a Ballerina』
Rolling Stones 『Sticky Fingers』(この中の1969年録音分)
David Blue 『Stories』(ニッチェ編曲作品にはライ不参加)

1972
Cooder, Jagger,Hopkins, Wyman & Watts 『Jamming With Edward』(録音は1969年)

1978
Various 『Blue Color』

zal

Ry Session 135 Ruthann Friedman / The Complete Constant Companion Sessons

ruthann今回も、ライ・クーダー参加作の重箱の隅をつつく内容です。はじめに断っておきますが、この盤ではライ・クーダーらしいプレイは一切聴けません。きっと彼は1曲でベースをプレイしているんだろうと思いますが、確証はありません。ライ参加作には違いないと思うのですが、この頃、ライが「弦楽器なら何でもござれ」のミュージシャンとして重宝されていたことを示す一枚です。むしろ、ヴァン・ダイク・パークスのマニアの方は、持っていなければいけない一枚でしょう。

さて、ワーナーに「新・名盤探検隊」というシリーズがありまして、埋もれた名盤を安価でリイッシューしてくれるので重宝しています。この元シリーズは、1998年頃スタートして、LPで持っているものも結構買ったりしていたのですが、今回はそのとき出なかった盤もずいぶん出て、やはりシンガー・ソングライターものなどを中心に数枚入手しました。そうすると、関連作品ということで、某通販サイトは下の方に「これもお勧め」という感じでアルバム・ジャケットが出てくるのですよね。それで、2年近く前にこのシリーズで出ていたルーサン・フリードマンなる女性シンガー・ソングライターの69年盤『CONSTANT CONPANION』が気になって、解説を読んだりしていたところ、60年代ものの貴重な再発をしているNOW SOUNDSから、この盤をまるまる含んでいる上に、12曲もの追加テイクを収録した盤が存在していることを知りました。それで、そのサイトのウェブ・ページで裏ジャケを拡大して見ていたら、なんと、「Some of these tracks feature the participation of Ry Cooder, Van Dyke Parks, and Byrds members Clarence White and Gene Parsons.」の文字が飛び込んできました。もちろん、ワン・クリックで購入したことはいうまでもありません。

CDには、24曲収録されていて、1〜12曲目までがオリジナルの『CONSTANT CONPANION』、13曲目から24曲目までが、近い時期に録音されたシングル曲及び未発表曲集です。『CONSTANT CONPANION』は、ほとんどギター1本のみをバックに演奏される、フォーク調の作品。1969年という時期には、すでに『Singer and Song Writer』という言葉は出始めていましたが、まだ一般化する以前。彼女のようなスタイルは、フォークとみなされていたと思うけれど、近い時期にデビューしたジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロ達と同じように、ロックの息吹を感じさせる名盤ですね。奔放さを感じさせる歌唱は、それまでのフォークやカントリーとは一線を画するものでしょう。

彼女は1944年プロンクスの生まれ。心臓を患っていた父の転地療養のため、10歳のとき家族でノース・ハリウッドに引っ越してきます。彼女は10代の頃から歌い始め、ギタリストでソングライターのスティーヴ・マンと知己を得ます。彼を通じて、ジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、ジャニス・ジョップリン、フランク・ザッパらを紹介されますが、そうした中の一人がヴァン・ダイク・パークスでした。ルーサンはヴァン・ダイクと一時期つきあっていたようで、1965年頃、ヴァン・ダイクは彼女をワーナーに紹介するのですが、そのつてのおかげで、彼女の作品「Windy」がアソシエイションの取り上げられ、ナンバー・ワン・ヒットとなりました。この成功を受けて、ワーナーはルーサンのアルバムを制作するため、レッキング・クルーのメンバーを集めてレコーディングを行いますが発売には至りませんでした(『Windy : A Ruthann Friedman Singbook』として近年NOW SOUNDSからCD化されています)。1967年といえばサマー・オブ・ラブの年、サイケの波が押しよせサンシャイン・ポップはすでに時代遅れとなっていたのでしょう。それより、ルーサンの持つフォーキーな資質を活かした作品方が可能性があると判断され、それはリプリーズからリリースされた『CONSTANT CONPANION』として結実しました。

しかし、このアルバムは全く売れず、彼女は音楽業界からリタイア、文房具店を経営します。私生活では結婚して娘二人をもうけ「普通の人」として長く生活していました。ところが、2006年に『CONSTANT CONPANION』がCD化され、デヴェンドラ・バンハートが彼女をフェスティバルにひっぱりだした頃から彼女の「再評価」がはじまります。同年には、1965年から71年までのホーム・デモを『Hurried Life』としてリリース。彼女は再び表舞台に立って歌うようになり、2013年にはセカンド・アルバムを発表するとともに、編集盤『Windy : A Ruthann Friedman Singbook』も発売されます。そして、この編集盤『The Complete CONSTANT CONPANION Sessions』が2014年にリリースされるのです。

この盤の追加トラック13曲目から24曲目の中で、バンド・サウンドは2曲のみ。あとは本編と同じくアクースティック・ギターのみの伴奏です。まず、シングルとして発売された13曲目「Carry ON Through (Guttering Dancer)に驚かされます。まるっきり『Songsycle』の雰囲気のヴァン・ダイクのサウンドであるだけでなく、出だしから彼のヴォーカルまでしっかり聴けるのですから。彼独特のオーケストレーション。打楽器はドラム・セットではなくコンガが強調され、カリビアンな雰囲気も醸し出されています。それにしても素敵なナンバーですね。今までどんなコンピレーションにも収録されなかったのが不思議なくらいです。この曲のプロデュースとアレンジ、指揮はカービィ・ジョンソンで、ヴァン・ダイクはエクスキューティヴ・プロデューサーのクレジットがあります。1970年4月から7月にかけて録音されており、多重録音で手間をかけてつくられたものと思われます。

もう1曲、ヴァン・ダイクとカーヴィのコンピでプロデュースされているのが23曲目の未発表曲「Have A Good Time」です。こちらは1970年の4月28日と5月8日にレコーディングが行われています。こちらは打って変わって、ピアノ、ギター、ドラム、ベースによるロック・コンボ・スタイルの演奏。スティーヴ・スタンレーのライナーによると、この録音に参加したのが、ジーン・パーソンズ、クラレンス・ホワイト、ライ・クーダーと記されています。何度も耳をこらして聴いても、ライ・クーダーらしいプレイは聴こえてきません。ドラムはジーン、ピアノはヴァン・ダイク、うっすら聴こえてくるアクースティック・ギターがクラレンスなんでしょう。この面子だと、この時期、たいていライル・リッツがベースで参加しているのですが、その名前が見当たらないところをみると、エレクトリック・ベースをプレイしているのがライということになるんでしょうか。曲はシンプルな弾んだフォーク・ロック・ナンバーで、この面子ならではのタイトな演奏に、ルーサンのしっかりしたヴォーカルがのっかって手堅い作品に仕上がっています。

この時期、ライはスタジオ・ミュージシャンとしてさまざまな作品に参加していて、まだまだ知らないナンバーが隠れているような気がします。今回は先にクレジットを確認していたので、相当期待してしまいましたが、少しがっかりです。けれども、やや大きく録られた弾むベース・ラインがライのものとすれば、その個性を知る上で貴重な1曲だと思います。彼は自身のファーストやアーロ・ガスリーの『Running Down The Road』、キャプテン・ビーフハートの『Safe as Milk』などでベースをプレイしていますが、曲ごとのクレジットはほとんどありません。そろそろ、この時期に少しばかりみられる「ライ・クーダーのベース」もしっかり聞き分けてみる必要がありますね。

Ry Session 134 Rolling Stones / Beggars Banquet

rollingstones beggars最近、『Rolling Stones Gear』(ローリング・ストーンズ楽器大名鑑)なる本を入手しました。フル・カラー672ページもある大著です。ストーンズのファンでも、きっと購入を躊躇するであろう高額な本ですが、ライ・クーダーの情報を得るために買いました。最近、老眼が進んで寝る前とかに読むには、ちょっと字が小さいですが、冒頭から読んでもなかなか文章が面白そうです。それに、楽器好きの私としては、自分が所有している二本のVOXの楽器(ワイマン・ベースとマンド・ギター)の写真が紹介されているのも嬉しいところですし、ストーンズが使った数々の名器の中には、興味深いものもたくさんあるので、これからぼちぼち楽しませてもらおうと思っております。

さて、肝心のライ・クーダーとストーンズの関わりについては、すでに『Let It Bleed』、『Sticky Fingers』、『Jamming With Edward』『Performance』のレビューで詳しくふれてきたところですが、この本を読んで、いままで知らなかったいくつかの事実が判明してきましたので、それを中心に書いていきたいと思います。ずっと以前、ライ・クーダーに関連するメイリング・リストの情報や、右のリンクにもあげている「rylanders」のページで、ライ参加作としてストーンズの『Beggars Banquet』があがっておりまして、購入して聴いてみるけど、どうもライらしいプレイが入っていなくて、自分で何かの間違えなんだろうと思っておりました。そもそもライがストーンズとセッションしたのは、1969年の『Let It Bleed』のレコーディングの時が著名で、前年にマリアンヌ・フェイスフルの「Sister Morphine」のレコーディングに客演しているとはいえ、これはロサンゼルス録音で、ライがストーンズとのセッションのために渡英したのは1度だけなんだろうと思っていたのでした。こうした謎が、この本のおかげで解けました。

まず、今までライが渡英したのが、1969年4〜5月の一度だけだと思っていましたが、それは間違えでした。上記の本によれば、1968年の6月25日、キースのレッドランズ邸で行われたセッションの際、ジャック・ニッチェに連れられてライ・クーダーが参加したというのです。その日録音されたナンバーは、ジャガー=リチャーズの「Highway Child」、そしてマディ・ウォーターズの「Still A Fool」だったといいます。両曲とも未発表ですが、ブートレッグが出ておりyoutubeでも聴くことができます。前者はブライアンは不参加で、ボーカルはミック、ギターはキース一人で、チャーリーとビルがリズム隊です。後者にはこの面子に加えて明らかにライ・クーダーが参加していて、エレクトリック・ボトルネック・ギターを弾いています。出だしはキースのギターではじまりますが、すぐにボトルネックで裏メロを弾いているのがライです。以前、1969年に録音され『Sticky Fingers』に収録されたストーンズ・バージョンと、マリアンヌ・フェイスフル・バージョンの「Sister Morphine」を比較したことがありますが、確かに、このプレイは69年頃の「冴え」はまだみせておらず、1968年頃のライのプレイに思えます。この曲には、ニッキー・ホプキンスも参加していて、彼らしいブルーズ・ピアノを決めているし、ミックのハーモニカも入っています。まさにエドワード・セッションの前哨戦のような雰囲気です。キースはこのとき、ライ・クーダーのオープンGチューニングを目の当たりにし、自らのプレイに取り入れはじめたといわれています。

上記の本では、「クーダーは今回の滞在中、オリンピック・セッションの最終段階に短期間だが参加した。クレジットに名前はないが、彼は明らかに「Prodigal Son」でギターを弾いている。」と記されています。また、ビル・ワイマンのメモには「1968年の3月から6月に何回も「あの曲」(「Prodigal Son」のこと)に取り組んだ、ライ・クーダーがキースと一緒にアコースティク・ギターを弾いた」とあるそうです(この引用も同書から)。たしかに、この曲のアコギは出だしからめちゃめちゃ上手いです。2本のアコギ、単純なドラムス、ハーモニカのシンプルなカントリー・ブルーズ・ナンバーで、リード・ボーカルはミックです。ギターのうち1本はストローク中心で、こちらがキース。見事なフィンガー・ピッキングで大きめ録音されているギターを弾いているのがライでしょう。『Rolling Stones Database』というホームページでは、この曲のセカンド・テイクが1968年の6月24日にオリンピック・スタジオで録音されたことになっています。それが事実ならば、レッドランズ邸でのセッションの前日にオリンビック・スタジオで「Prodigal Son」が録音されていたわけで、つじつまは合いますね。もっとも『Rolling Stones Database』には、レッドランズ邸のことは全く触れられていないのですが。今まで、この盤にライが参加していないと思っていたのは、自分の思い過ごしでした。以上のことは、ストーンズのコアなファンのみなさんには周知の事実だったのかも知れませんが、『Rolling Stones Gear』のおかげではじめて知ることができました。なお、この頃ブライアンはめったにスタジオに姿を見せなくなっており、来ても30分ほどプレイすると気絶するような状況になっていたそうです。このアルバムにニッキー・ホプキンスかイアン・スチュアートによるピアノの参加率が高いのは、実質一人になっていたギタリストの穴を埋めるためとのことです。ただし、「No Expectation」のアクースティック・ボトルネック・ギターはブライアンによるもので、ギブソンのハミングバードを使って見事なフレーズを弾いていたことを、ミックが鮮明に覚えています。なお、「Factory Girl」のマンドリンはデイヴ・メイスン、フィドルはリック・グレッチによるものと同書では述べられています。というわけで、『Beggars Banquet』収録曲でライが参加しているのは「Prodigal Son」1曲だけのようです。

時系列を追っていくと、この翌月、1968年7月にはロサンゼルスのRCAスタジオで、『Beggars Banquet』の最終ミックス・ダウンが行われるのですが、この間を利用して、マリアンヌ・フェイスフルの「Sister Morphine」と「Something Better」の録音が行われます。この録音メンバーは、ミックス・ダウンでアメリカに来ていたブライアンを除くストーンズの面々に、ロス在住のライが加わった形でした。さらには、このころすでに撮影がはじまっていた映画『Performance』の主題曲「Memo From Turner」の録音も同じ面子で行われたようです。もっとも、「Memo From Turner」はじめ、『Performance』収録のライのプレイは、マリアンヌ盤の演奏よりずいぶん「キレ」があるので、『Performance』リリース時までに差し替えられた可能性もあるのでは、と個人的には思っています。

Richard Thompson / Still

richard thompson stillリチャード・トンプソンの新作『Still』が届きました。こいつはすばらしいです。2月にビルボード大阪に見に行ったライブの記憶がよみがえります。もっとも、自分が見たファースト・ステージでは、アルバムのラストに収められた「Guitar Heros」だけしかやりませんでした。けれど、セカンド・ステージの方では、この新作から7曲もやったみたいでうらやましいのですが、たぶん予習なしなので、何がなんだかわからなかったでしょう。けれども、未発表の新作からそれだけの曲を演奏するというのは、よほどの自信がなければできないこと。リチャードのこの最新作は、「それだけのことはある」充実作です。

自分が入手した盤は、本体の『Still』12曲に『Variation EP』5曲がついた2枚組。『Still』の方は、ウィルコのジェフ・トゥイーディがプロデュースです。リチャードの前作は、自作の名曲を基本的にアコギ1本でカバーしたものでしたが、今作はライブの時と同じドラムスのマイケル・ジェローム、ベースのタラス・プロダニュク、そして、リチャード自身の3人が核となっています。『Still』の方では、リチャードがギターだけでなく、アコーディオンやマンドリンも演奏。プロデューサーのジェフもギターやメロトロンなどを担当。ほかにジム・エルキントンがギターとピアノで参加しているほか、女性コーラス3人が5曲の録音に加わっています。

一方、『Variation EP』の方は、リチャードのセルフ・プロデュース。ドラムスのマイケル・ジェローム、ベースのタラス・プロダニュク、リチャード自身の3人で基本的な音をつくっており、息子のテディ・トンプソンがバックグラウンド・ボーカルで参加しています。

アルバム・タイトルが静寂を意味する『Still』で、1曲目がアクースティク・ギターではじまる三連のロッカバラード。リチャードにしては珍しい曲調です。2コーラス目からバンドが入って徐々に盛り上がっていき、間奏ではエレキ・ギターでソロが弾かれます。2曲目もアクースティック・ギターが目立つナンバーです。フォーク調というかトラッド風というか、ルーツを感じさせる佳曲です。3曲目はマイナー・キーのエレクトリックなミディアム曲。いかにもリチャードならではのロック・ナンバーです。

4曲目も抒情的なメロディが印象的なリチャード独特の曲調が展開します。抑制の効いたプレイが印象的。間奏の空間的なリードギターは、ちょっとリチャードっぽくないように思えます。リズミックな5曲目もやはり、リチャードにしか表現できない音世界。ダイナミックな展開で、何度もある短い間奏ではまぎれもないリチャードのギュインギュインという感じのギターが活躍します。6曲目はうってかわってアクースティック・ギター2本だけで伴奏される美しいナンバー。セカンド・ギターを弾いているのはジェフなんじゃないかと思います。以上6曲中5曲が、大阪公演のセカンド・ステージで披露されたようです。

後半に行って、7曲目はノリがよくメロディアスなロッキン・ナンバー。続く8曲目はトラッド調でメロディアスな曲。マンドリンとエレキ・ギターが主旋律をユニゾンします。リチャード&リンダの時代を思わせる曲調ですが、ジェロームのドラミングは激しく、リアルタイムのロックの息吹にあふれています。

9曲目、ミステリアスな雰囲気ではじまるリチャードらしいマイナー・バラード。10曲目、来日公演でもセカンド・ステージで演奏されたアップテンポなナンバー。絶対ライブでは盛り上がるだろうタイプの曲ですね。こういうロックでも、出だしのギターのフレーズにバグパイプの音色や音づかいを感じさせるのがリチャードならではの技。11曲目、「Wall of Death」タイプのおおらかな曲。こんな風にバラエティにあふれる選曲で全く飽きない内容ですが、ラストは、よりサービス精神が旺盛な曲です。

そのラスト・ナンバーとは、来日公演で目の当たりにした、「Guitar Heros」。リチャードのギター・ヒーロー達のフレーズを曲間に織り込んで彼らに対するリスペクトを歌っていく曲です。ライブのときは、ギター・テクニシャンの方が、リチャードのアコギで達者なバッキングをしていて、リチャードは全編ストラトで演奏しておりました。スタジオ・バージョンの方は、「Melodie Au Crepscule」と「Caravan」がアコギ。「Brenda Lee」、「Suzie-Q」と「FBI」がエレキのプレイになっています。この曲でも、ジェフ・トゥイーディがアコギでサポートしているのかもしれませんね。

ジェフ・トゥイーディといえば、個人的にはメイヴィス・ステイプルズの近作のアコースティックなプロデュースが印象に残っています。リチャードの作品でどのようなプロデュース・ワークを見せるか興味がありましだたが、やはり、シンプルに、「3人のバンドの良さ」を全面に出しています。それと、アクースティック・ギターを使った曲を冒頭、中盤、ラストに配して、リチャードのアコギの良さを強調した作りになっているのは、ジェフらしさのあらわれと思います。企画ものの前作は別としても、その前のバディ・ミラー・プロデュースによる『Electric』に勝るとも劣らない名盤に仕上がっているように思います。

さて、本人プロデュースの5曲入りEPの方も、なかなか充実した内容です。5曲中4曲はエレクトリック、ラスト1曲がアクースティックという構成。冒頭は、やはり来日公演のセカンド・ステージで披露されたらしいアップテンポの「Fork In The Road」。比較的オーソドックスなフォーク・ロックですが、さわやなメロディがグッドです。2曲目「Wounding Myself」は、マイナーキーではじまりながら、独特なコード展開をみせるリチャードらしいナンバー。こんな曲もライブで聴けたら気持ちいいだろうなぁ。3曲目は雰囲気を変えてマイナーのスロー・ナンバー。こういう落ち着いた曲でも、リチャードの歌もギターも味わい深いですよね。4曲目もマイナーではじまるけれども、曲調はやや明るい「Don't Take It Laying Down」。こちらの盤のラストは「Fergus Laing」。マンドリンをフューチャーしたアクースティックなロックで、これもリチャードの独壇場。

両開き3面からなる中ジャケは草原に倒れるリチャードの胸の部分に赤いストラトキャスターのヘッドが突き刺さっているといシュールなのものですが、歌詞カードを記したブックレットでは、ダンエレクトロ製シルバートーン・プランドのエレキ・ギターをかかえています。見開きジャケの右側ではfホールのビザールっぽいエレキを持っているし、リチャードもやっぱりギター・マニアなんだろうなぁってちょっと親近感を感じます。ブックレットの中の写真にもたくさんのギターが置かれているスタジオのような場所で、テレキャスターを弾くリチャードの姿もあります。

リチャード・トンプソン。なかなかの多作家だと思います。これだけ長くやっていると、どのアルバムも似たような雰囲気ななるのはいたしかたのないところでしょうが、このアルバムは絶対「買い」だと思います。かなりの力作です。そういえば、大阪でのライブの際に、このページにも時折コメントをいただくBrown Sugarさんから、トンプソン・ファミリーによるアルバムが今年のはじめに出ているとのご教示を得ました。自分も注文して聴いていますが、こちらはアクースティックでアット・ホームな内容です。この盤も力作。いずれレビューせねばなりませんな。

The Fame Gang / Grits & Gravy The Best of The Fame Gang

fame gangちょっと更新が滞ってしまいましたが、今年の5月頃に入手してよく聴いているアルバムを紹介しましょう。リック・ホールのフェイム・スタジオで1960年代後半から70年代前半の全盛期に活躍したスタジオ・ミュージシャン集団のインスト・アルバムです。彼らは1969年にキャピトルからLP『Solid Gold From Muscle Shoals』を出しているのですが、お恥ずかしながら未聴です。フェイム・スタジオといえば、アラバマ州、マスル・ショールズにあり、ウィルソン・ピケットやアリーサ・フランクリンはじめ、さまざまなソウルの名盤を生んだスタジオとして著名です。ところが、そこで活躍したミュージシャンとして最初に名前があがるのが、バリー・ベケット、デヴィッド・フッド、ロジャー・ホーキンス、ジミー・ジョンソンというマスル・ショールズ・リズム・セクション、別名スワンパーズの面々です。彼ら白人ミュージシャンは白人離れした力量を持つことでもつとに有名で、1969年にリック・ホールの元を離れ、アトランティックのジェリー・ウエクスラーの肝いりで、マスル・ショールズ・サウンド・スタジオを設立します。このあたりの経緯は、最近DVD化された映画『黄金のメロディー マスル・ショールズ』にも描かれているところです。

手塩にかけて育て上げた腕利きミュージシャン達に去られたフェイムですが、それなりの痛手はあったにせよ、以前とそうかわらない勢いで、数多くの録音を続けていきます。近年、ジョージ・ジャクソン、クラレンス・カーター、ジェイムズ・ゴヴァン等々のフェイム録音の未発表音源が多数リリースされていますが、それを聴いても、以前と変わらぬ勢いでフェイムが良質な録音を続けていたことがわかります。その中心となったのが、このアルバムの主人公、フェイム・ギャングです。ドラムスのフリーマン・ブラウンとベースのジェシー・ボイス二人が繰り出す安定したソウルフルなリズムこそ、マスル・ショールズ・サウンドの要でしょう。音楽評論家の鈴木啓志氏などは、逆にフリーマン・ブラウンこそが、ロジャー・ホーキンスの手本となったドラマーであるとし、アトランティックなどのクレジットには偽りがあって、フリーマンやボビー・ウォマックなどの黒人ミュージシャンの名前が意図的に抹消されているという論を展開しています。

そのことの真偽はさておき、フェイム・ギャングのプレイが素晴らしいのは言うまでもありません。『Solid Gold From Muscle Shoals』が1969年にリリースされているのも、アルバムのヒットを狙ったというよりは、スワンパーズ独立後も、フェイムの演奏力十分に高いことを業界に示す狙いがあったのかもしれません。

さて、この編集盤。アルバム・タイトルが「グリッツ&グレイヴィ」。肉汁ソースをかけた南部独特のとうもろこし粥。なんともうまそうじゃありませんか。そうです。このフェイム・ギャングによる未発表曲中心のコンピは、ジャック・マグダフの『ホット・バーベキュー』とか『ダウン・ホーム・スタイル』とか、かの有名な『グリーン・オニオン』とか、南部アフリカン・アメリカンの食文化を感じさせますね。せっかくなら、ジャケットも食べ物系にしてくれたらよかったのにとか思います。

そのジャケットですが、テネシー川にかかる鉄橋でのメンバーの集合写真です。同じアングルでジョージ・ジャクソンも撮影しております。川向こうに写る白い屋根は、川港ポート・オブ・フローレンスの資材置き場。左側に並走するのはリー・ハイウェイとも呼ばれる州道2号線のオニール橋です。余談ですが、現在この鉄橋、老朽化のためか、フローレンス側のトラス部分が取り壊され、川の真ん中で途切れています。行ったわけじゃないんですけど、グーグル・マップ見てたら発見してしまいました。

肝心のアルバムの内容ですが、これがもう、なんとも素晴らしいインスト集です。上記のLPから3曲、あとシングル発売されたものが4曲。それ以外は未発表で全25曲収録。1曲目の表題作からして、ファンキーでグルーヴィ。フェイム・ギャングの演奏力の高さを見せつけてくれるナンバーです。2曲目はサックスが活躍のファンキー・チューン。ギタリストのトラヴィス・ウォマックが書いた曲です。3曲目は、この時代を感じさせるファズ・ギターをフィーチャーしたナンバーですが、このギターを弾いているのもトラヴィスのようです。

4曲目にスライの「Stand」のカバーが入っています。そういえばミーターズも「Sing A Simple Song」をカバーしていたけれども、やはり、この時代のスライの影響力たるや、かなり大きなものだったんでしょうね。もちろん、フェイム・ギャングの演奏も本家の良さを十分に活かしながらも、マスル・ショールズらしい南部風味が出ていますね。より南部らしいのが続く「Shortnin' Bread」。すっとぼけたような、田舎風味がとっても心地よいのです。

ホーン・セクションではじまり、サックスのソロとギターが冴える6曲目「Groove Killer」も、文句なくかっこいいですよ。7曲目「Crime Don't Pay」は、絶対的にミーターズを意識したナンバーですね。オルガンやワウ・ギターが効果的でホーン・セクションはお休みのようです。ギターはカッティングのバックとリードの2本が入っています。

サックスがメロディを奏でるソウル・バラードのインスト版「Your Good Thing」は、LP『Solid Gold From Muscle Shoals』に収録曲。このオリジナルLPは未聴ですが、どうやら、聴きやすい名曲のインスト・カバーが多いようですね。「Soul Feud」も、「Shoalin'」も、やはりミーターズを連想しますね。後者のミディアム・スロー・ナンバーは、テクニカルなオルガンがいい味を出しています。

エレキ・ギターのブラッシングではじまる「Turn My Chicken Loose」もグルーヴィなファンク・ナンバーですが、タイトルといいニワトリの声真似といい、やっぱりミーターズを思い起こさずにはいられません。「It's Your Thing」はアイズレーズの、「Choice of Colors」はインプレッションズのカバー。もちろんどちらもインスト・ナンバーです。両曲ともLP『Solid Gold From Muscle Shoals』に収録されています。文句なくかっこいいです。

14曲目にジミ・ヘンで著名な「Hey Joe」が入っていますが、サックスをフューチャーし、ぐっと落ち着いた感じのソウル・バラードにリメイクしています。15曲目は「Soul Strutterin'」と、またまたミーターズを思い起こさせるタイトルですが、曲調、ギターのリフ、スキャットなど、ほとんど、「まんま」の演奏。でもめちゃめちゃかっこよく決まっています。フリーマン・ブラウンのドラムのすごさがよくわかるナンバーです。

16曲目はがらっと雰囲気が変わって美しいバラード。この曲だけとりだすと、ソウルフルなバンドの演奏とは思えないのですが、フェイム・ギャングの演奏力の幅広さを感じさせます。17曲目、「Walk Tall」も、ファンキーでかっこいいメロのナンバー。この曲ではクレイトン・アイヴィーのエレピがいい味を出しています。18曲目「Twenty Five Miles」はエドウィン・スターのナンバーをインスト化していますが、これもファンキー度は抜群です。

19曲目の「Rangs Thang」も、ギター、ベース、ドラム、オルガンのシンプルな編成のミーターズ風。本家に負けない熱演です。20曲目「Smokestack Lightning」も、ミーターズ風にはじまりますが、途中からホーン・セクションがからんできます。21曲目は「Sax Appeal」と、その名のとおり、サックスのソロが全編でフィーチャーされています。バックではピアノがいい味を出していますが、この盤で、クレイトン・アイヴィーのプレイにやられてしまいました。すごいプレイヤーだと思います。

22曲目の「Shufflin'」もまた、ミーターズ風の軽快でシンプルな曲。この曲には、作者クレジットがあり、ベースのジェシー・ボイス、ドラムのフリーマン・ブラウン、キーボードのクレイトン・アイヴィー、ギターのジュニア・ロウの4人になっています。ホーンが入らない4人編成のナンバーは、この面子中心に録音されているんだろうと思います。

23曲目「Canteloupe Island」は、ハービー・ハンコックのナンバー。彼はこの時期、「カンタルーブもの」をよく書いていたみたいで、フェイム・ギャングの演奏にもぴったりマッチしています。

24曲目は「Muscle Soul」と、ご当地をテーマにしたファンキーなミィディアム・チューン。それにしても、この曲でもフリーマンのスネア・ロールはすばらしいですね。抑制の効いたホーンとエレピがいい雰囲気を出しています。ラストにおさめられている「Twangin' My Thang」も出だしはミーターズを強く感じさせますが、タイトルどおりトゥワンギーなエレキ・ギターが大活躍します。曲を書いたトラヴィス・ウォマックが弾いているのでしょう。

このアルバムには、コアのメンバーとなる、ドラム、ベース、キーボード、ギターの4人ないし5人で録音されたと思しきナンバー、それにサックスがかぶる曲、ホーン・セクションがフル編成で入る曲と、おおよそ3種類の録音があります。全体的に、この時代に流行のサウンドであった、ミーターズやスライ&ファミリーストーンのファンクの影響を感じさせますが、それだけにとどまらず、「フェイム・ギャングらしさ」が随所に感じられます。3年前、ニューオーリンズに行って、ギャラクティック、ダンプスタ・ファンク、ジョー・クラウン、今は解散したパパ・グロウズ・ファンクらの演奏に触れましたが、ミーターズやフェイム・ギャング達がつくった伝統は、現在も脈々と受け継がれているように感じました。アラバマの地にも、きっと、その血統を継いだ自分の知らない素晴らしいファンク・バンドがいるのだろうと思っています。

Rickie Lee Jones / The Other Side of Desire

rickie lee desire6月下旬、リッキー・リーの新譜とローウェル・ジョージのラスト・ツアーのライブ盤が一緒に届きました。ローウェルのは最近よくある放送用音源をCD化したやつで、違法でもないけどミュージシャンのHPにも掲載されないような、オフィシャルと言っていいんだかわからないタイプのもの。CD盤面の写真がどうみてもジャクソン・ブラウンという代物です。昔、同内容のブートCD持ってたけど、音は相当よくなってます。この盤にも「Easy Money」が収録されております。あ、余談になってしまいました。

それはさておき、リッキー・リー・ジョーンズの新譜よいです。なんだか、初期の頃の雰囲気がいくぶん蘇っています。でも、それだけじゃない。今のリッキー・リーのいいところも十分出ています。前作のカバー集もよかったですが、今作はそれを上回る快作だと思います。なんでも、彼女は自分にとっても思い出深いニューオーリンズで暮らしているようで、この盤もニューオーリンズ録音です。異国情緒あふれるニューオーリンズは、ヨーロッパでも暮らしていたリッキー・リーにとってはお似合いの街だと思います。ミュージシャンの層の厚いし、今作のようにさまざまなタイプの曲が並ぶ盤にはうってつけの環境でしょう。

1曲目がキャッチーです。彼女の少し甘えたような、コケテッシュな歌い方。ひさしぶりのような気がします。オルガンがとってもいいなぁと思ったら、ジョン・クリアリーが弾いています。2曲や3曲目は初期のリッキー・リーならけして歌わなかったであろうタイプの曲。2曲目の「Valz de Mon Pere」は、マンドリンやフィドルがフィーチャーされた、カントリー・ナンバー。3曲目はR&B風三連のロッカバラード。しかし、彼女が歌うと独特のカラーに染められてしまいますね。

フォーキーな4曲目「Blinded By The Hunt」は、「Last Chance Texaco」あたりを思い起こさせます。時計の針のようなハイハットが間断なくリズムを刻み、ゆったりしたピアノを中心とした浮遊感漂う伴奏で歌われる「Infinity」もリッキー・リーらしさがあふれるバラード。このアルバムでは一番のお気に入りです。6曲目、かわいらしいワルツの「I Wasn't Here」も、彼女の持ち味が遺憾なく発揮されています。ストリングスの響きが素敵です。

7曲目の「Christmas In New Orleans」は、フォーキーなバラードで間奏にチラリとボトルネック・アクースティック・ギターが顔を出します。8曲目「Haunted」は、おそらく地上式のお墓が多く「精霊の街」で幽霊屋敷もあるニューオーリンズらしい歌詞なんだろうと思います。間奏あたりのおどろおどろしいアレンジと不思議チックなリッキー・リーのキャラがこういうナンバーにはよくマッチしていますね。

9曲目、ドラムレスのピアノ・バラードかと思ったら、サビが突如として三拍子でリズムも入る「Feet On The Ground」は、とってもよく練られたナンバーで、この盤の中でもかなり気に入っている逸品です。ごぐごく短いバラードの「Juliette」をはさんで、ラストの「Finale」は、ニューオーリンズ録音らしくバンジョーやホーンを活かしたバラードなんですが、ブラス臭さが全くといっていいほど感じられない不思議な曲。アレンジの妙だと思います。

アルバム・タイトルの『The Other Side of Desire』ですが、ニューオーリンズを舞台にした作品「欲望という名の電車」と関係あるんじゃないかなと思っています。今は廃線ですが、かつてニューオーリンズには「Desire」行のストリート・カーがあったそうです。このアルバム、近作のフォーキーな要素を十分に残しながら、初期の頃のジャジーでコケティッシュな雰囲気がずいぶん蘇ってきました。バラエティあふれる内容ですが、「リッキー・リーらしさ」という一本の筋が通った好盤。自分は断然支持です。

Eric Kaz / Eric Kaz

eric kazエリック・カズって地味なミュージシャンですよね。ボニー・レイットやリンダ・ロンシュタットが歌った名曲「Love Has No Pride」の作者として有名ですけど、自身のアルバムが「売れた」ことは一度としてありません。というわけで、パフォーマーというよりはソングライターとして知られている人です。歌もそんなには上手くなく、とつとつと歌う感じの人ですが、シンガー・ソングライター好きには、本人の誠実な人柄が伝わってきて、一度はまると抜けられない「味わい」をしみじみと感じてしまうのです。非常に寡作な人で、オリジナルのソロアルバムは70年代初期に2枚だけ。その後、アメリカン・フライヤーというユニットや、クレイグ・フラーとのデュオ・アルバムでも少々歌を披露していましたが、80・90年代には完全に雌伏していたような印象です。

2002年になって、まさかの来日公演があり、ツアーで山口まで来てくれたので聴きにいきました。最初数曲はギターの弾き語り、あとはピアノの弾き語りで、とっても心温まるライブであったことを覚えています。そういえば、2002年9月11日がライブの日だったので、客席から、同時多発テロからちょうど1年だという声が飛んだのに対し、エリックはたんたんと、「特別な日は9月11日だけじゃない、8月6日だってそうだろう。」という意味の回答をしていたのが印象的でした。このツアーにあわせるように、京都のレコード・ショプ、プー横丁さんが主催するスライス・オブ・ライフから、未発表曲やデモ音源などを集めた編集盤がリリースされました。

彼の70年代のソロ2作はLP時代に入手して愛聴しており、アメリカン・フライヤーやクレイグとのデュオ作もよく聴いていたので、21世紀になっての復活は大歓迎でしたが、それから後は再び沈黙期に入り、来日公演も全くありませんでした。ところが、今年4月頃に13年ぶりのアルバムが、全曲新曲でリリースされるとのインフォが入りました。オリジナルのソロ・アルバムとしては何と41年ぶりです。これはファンとして興奮しないわけにはいきません。到着を心待ちにしておりましたら、6月末に届きました。

内容は、本当に素晴らしいの一言です。それ以外に言葉はいらないくらいです。大半がエリックによるピアノの弾き語りで、今の時代の音とかそんなものは微塵もなくて、しみじみの心にささる歌が8曲おさめられています。歳後の1曲は、収録曲のデュエット・バージョンですので、実質7曲。少し物足りない気もしますが、エリックが妥協を許さず、41年ぶりに世に問うた自信作だけに、内容の方はそれはそれは充実しています。より多くの音楽好きの方の耳に届いてほしいです。

個人的には冒頭の「Just Wanna Be Home」からして悶絶のキラーチューン。なんの飾りもないピアノの弾き語りですが、胸をかきむしられるような思いになります。2曲目はプロデューサー、アレンジャーでありレコーディングも担当した、ニック・ジェイムソンのマンドラではじまるフォーキーなナンバー。2まわし目からバンド演奏になりますが、エリックのピアノ以外はニックの多重録音。ドラムやオーケストラは打ち込みっぽいですが、そんなことは全然気になりません。これも曲の良さが光ります。3曲目は美しいワルツの「Sanctuary」。ラストにゲストのメアリー・モラレスとのデュエット・バージョンを別におさめていることからも、自信作であろうことがうかがえます。美しいバイオリンも効果的に使われている素敵な曲でとっても気に入っております。

4曲目「I Remember」は、1曲目同様ピアノだけを伴奏に歌われる失った恋を歌った曲ですが、個人的にも身につまされる内容です。エリックのたたえる情感はこういう曲にもっともマッチしているように感じます。5曲目は打って変わってにぎやかでさわやかなフォーク・ロック調。ニックのアクースティック・ボトルネックもなかなかいい感じ、エンディングにはマンドリンも入っています。6曲目「Some Bridges Don't Burn」は4曲目と同じタイプの曲調。というか、エリックのお家芸ともいえるタイプの落ち着いたバラードですが、バイオリンとメアリーのコーラスも入って、いい感じに仕上がっています。

7曲目「Old Love Letters}が、ピアノだけで歌われる実質的なラスト・ナンバー。この曲も別れを歌ったもので、4曲目同様身につまされる内容です。自分の場合、愛する人はドアから出ていったのではなく天に召されたわけで、オールド・ラブ・レターではなく、オールド・メールはたくさん残っています。たわいのないメールひとつとっても、涙なしでは読めないです。こういったことは、普段心の奥底に沈めているのですが、こういう音楽や詩に触れると、せつなくもどかしく思い起こしてしまうのです。

ラストは「Sanctuary」の再演。セカンド・ヴァースがメアリー・モラレスの独唱になっていて、エリック・カズがかつて実力派女性ミュージシャン達にいくつもの名曲を提供したことを思い出させます。こちらにはバイオリンは入っていませんが、しみじみ曲の良さをかみしめることができます。

以上珠玉の全8曲。わずか30分少しですが、たまらない充実度のアルバムです。今のところ日本のみでの発売。エリックの意向によりダウンロードでの販売もないそうです。本国アメリカでは、もう完全に「過去の人」なのかも知れないけど、これほどの内容のものが、世界発売されないのは、とってももったいないように思います。

Jim Kweskin and Samoa Wilson with Their Friends Live at Gate's 7 in Fukuoka

jim kweskin2ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドって、個性的なミュージシャンがたくさんいて、中心人物のジムさんが、実は一番地味なんじゃないかと感じていました。ジャグ・バンドの音源を聴いても、ジェフ・マルダーやマリア・ダマートの歌や、ビル・キースのバンジョー、リチャード・グリーンのフィドルに耳を奪われてたし。ジム・クゥエスキンさんのソロ作もけっこう最近まで持ってませんでした。トムス・キャビンは結構前からジムさんを招聘しているようで、近年印象に残っているのは、ウォッシュ・タブ・ベースやジャグを担当していたフリッツ・リッジモンドが亡くなったあと、東京で追悼コンサートが行われたとき。2006年だから、もう9年も前になるんですね。この時は、ジョン・セバスチャンやジェフ、ジムさん達がこぞって来日していて、行きたかったんだけど、仕事とかで余裕がなかったですね。そして、2年前は、フリッツを除く全盛期のメンバーがみんな来日して、ジム・クウェスキン&ザ・ジャグバンドとして、東京・大阪でライブを行い、横浜のジャグ・バンド・フェスティバルにも出演しました。この頃は、本当に公私ともにいろいろあって大変でした。とっても行きたいと思っていたはずなのに、実はこの時の来日があったかことが記憶から抜け落ちていました。それほど、プライベートの方が大変だったということなんですけど。

6月15日月曜、仕事が終わったあと、福岡までライブを見に行きました。今回、ステージ挨拶でも、トムス・キャビンの麻田さんが「ジムは福岡は2回目かな、はじめてかもしれないなぁ。」なんてコメントをしておられましたが、自分の記憶の中では、福岡ははじめてだと思います。1980年、最初にトムスがジムを呼んだときのことは知らないので、その時にもし来ていれば2回目になるのかもしれません。とにかく、自分にとってはジムさんのライブは初体験なのです。ゲイツ7はおそらく3回目くらいなのですが、この日は200人近いお客さんが入る大盛況。レトロっぽいフッションに身を包んだおしゃれな若者のお客さんが多いのも印象的でした。

定刻になると、オープニング・アクトのマドカ・プレイボーイズが登場。ギター&ボーカル、ウッド・ベース、アコーディオンの3人編成で、3人のコーラスも抜群なアコースティック・スゥイングのグループです。なんでも、この日のために3年半ぶりの再結成なんだそうですけど、まったくそんなブランクを感じさせない息の合った演奏でした。アコーディオンの方はトランペットも達者です。ベースの方もとっても迫力のある演奏。ギターの大石さんは戦前のものらしきいい音のエピフォンのアーチトップをかき鳴らしながら、なかなかいい声で歌います。MCもとっても面白かったし、「口トランペット」や「口トロンボーン」も素敵でした。5曲、30分ほどのステージでしたが、また聴きたいと思いました。

ジムさんは1940年生まれの74歳。来月で75歳を迎えます。ジョン・レノンと同い年で、今年見た来日ミュージシャンの中では最高齢ですが、そんな年齢を感じさせない若々しい歌とギターを聴かせてくれました。さすがに多少枯れた印象はありますが、矍鑠としていて、孫ほども歳が離れているであろう、サモア・ウィルソンと息の合ったデュエットを聴かせてくれました。サポートはスタンリー・スミスの時などでもおなじみの井上太郎(マンドリン)、岩見継吾(ウッド・ベース)、近藤哲平(クラリネット)の3人でした。

ライブは軽快な「Eight More Miles To Louiville」でスタート。リード・ボーカルは、おおむねジムさんとサモアさんが交代でとってました。途中2曲披露されたジム・クウェスキン・ジャグ・バンドのナンバーの時だけはサモアさんは舞台袖に引っ込んでいましたが、他の曲ではジムさんの歌に素敵なハーモニーをつけたりデュエットしたりしていました。とにかく、ジムさん、歌もギターもすばらしいです。それに、来日してからの短時間のリハしかなかったでしょうけど、バンドがすばらしい。とってもスゥイングする演奏で、ノリのいい曲などえもいわれぬグルーヴが生まれていました。サモアさんとの最新作が会場で売られていたので、買って聴きましたが、この盤では数曲でサックスが入っていたけれど、クラリネットにして大正解だと思います。ジャグ・バンド的な楽しい演奏から、ジャジーなナンバーまでばっちりはまっていました。もちろん、太郎氏のマンドリンもいつもながら超絶テクニック。ベースもソロをふられたら大熱演で大いに盛り上がっていました。

曲は、ブルーズやカントリーに留まらず、オールドタイミーなジャズ・ナンバーも交えて実に粋なステージが展開されていました。これぞ、アメリカン・ルーツ・ミュージックというステージです。クウェスキン・ジャグ・バンドの曲は「Blues In The Bottle」と「Papa's on the Housetop」が披露されました。あと、「Diamond Joe」や「There'll Be Some Changes」なんかも演ったと思います。サモアさんは透明感あふれる美しい歌声。カーター・ファミリーのフォークソング「Single Girl, Married Girl」を歌ったかと思えば、ジャジーにバンバンバザールもレパートリーにしている「I'm Gonna Sit Right Down and Write Myself A Letter」を決めたりとか、幅広く色んなタイプの曲を歌えます。ノリのいい曲、ジャジーな曲、静かな曲とりまぜ、緩急自在、楽しいライブであっという間に1時間半がたち、ラスト・ナンバーではマドカ・プレイボーイズのメンバーが全員参加してのにぎやかなセッション。アンコールはミシシッピ・ジョン・ハートの曲で静かに幕となりました。おしゃれな若い観客の二組ほどが、舞台下手前方で優雅にダンスを踊っていて、途中ノリのいい曲の前では「Dancers, Are you ready?」とクウェスキンさんから声をかけられ、その曲では男性のダンサーが中央に出てきてソロ・ダンスを踊り喝采を浴びたりとか、会場の方も大いに盛り上がっていました。きっと、クウェスキンさんもご機嫌だったことでしょう。

いやぁ、食わず嫌いはいけませんねぇ。自分が生まれる前から第一線で活躍している大御所ですし、個性派が集まったクウェスキン・ジャグ・バンドの大黒柱だけのことはあります。ちょっと迷ったけど、見に行って本当によかったと思います。今年もおおむね半分過ぎたけど、この前半だけで5本もの来日公演を見に行ったのは、近年稀にみる豊作。好きなミュージシャンが立て続けに来るなんてことは、この先はもうないかも知れません。そのうち地元福岡は2本だけ、あとの3本は遠征です。見れるうちに見ておかなくちゃね。見たミュージシャンの年齢はジョン・ハイアットが一番若くて62歳、ジム・クウェスキンが一番高齢で74歳ですが、今回見た方々はみんな元気でまだまだ演れそうに感じました。クウェスキンさんにも、また福岡に歌いに来てほしいと思います。
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全員でセッション
マドカプレイボーイズ
マドカ・プレイボーイズ

Lindley Session 16 John Eddie / John Eddie

john eddieリンドレー・セッションは、最近作は別として、70年代中頃あたりを書いております(ずっとご無沙汰ですが)。それで、これは完全に順番を無視したことになるのですが、このところ、ハイアットさんのところにつづけてコメントをいただいてるjohnjohnさんが、この方の大ファンのようなので、ちょっとイレギュラーですが、1986年のこの作品をとりあげてみました。

allmusicをみると、彼は1959年バージニア州リッジモンド生まれ、後にニュージャージーに移ったようです。アルバムを一聴すると、この頃絶大な人気を誇っていた同州出身のブルース・スプリングスティーンのフォロワーであることはすぐにわかります。笑ってしまうほどそっくりです。しかも、ドラムスはEストリート・バンドのマックス・ワインバーグです。本人の意思はともかくレーベルとしては二匹目のどじょう狙いのプロダクションでしょうね。このアルバムから「Jungle Boy」がビルボードの52位まで上がるヒットを記録しました。それ以降はヒットに恵まれていないようですが、地道な音楽活動をずっと続けておられるようですね。

このアルバムは、ギターでマイク・ランドゥ(マイケル・ランドゥか?)、キーボードに昨年末に亡くなったイアン・マクレガンとミッチェル・フルーム、そしてドラムにワインバーグといった著名ミュージシャンが脇を固めていて、当時エディさんが結構期待されていたことがわかります。ヒットチャートに入ったのも、本人の実力はもちろんですが、それなりのプロモーションがなされたという側面もあるのかも知れません。おかげで、すっきりとした演奏で、いかにも80年代らしいアメリカン・ロック・サウンドを楽しむことができます。ゲストも豪華で、当時Eストリート・バンドに加入していたニルス・ロフグレンが1曲リード・ギターを弾いていますし、クラプトンやクインシー・ジョーンズ、マイケル・ジャクソンらとも共演した著名ピアニスト、グレッグ・フィリンゲインズも1曲参加しています。

内容は上にも書いたように、とってもスプリングスティーンしていて、これなら本家を聴いていればいいや、と思わなくもないのですが、彼よりずっと甘い声をしていて、どちらかというとプレスリーを思わせます。自分もストレートなロックンロールは大好きですが、9曲目と10曲目がリズムもテンポも全く同じだったり、『Born In The U.S.A.』に入っていそうな曲がズラリと並んでいて、ちょっとばかり食傷気味になります。今となっては、もう少し違った売り方もあったのではないか思わなくもないですが、今ではアウトロー系の重鎮となったスティーブ・アールなんかも、この時期はスプリングスティーン系のさわやかロックンローラーとして売り出されようとしていたのだから、仕方ないのかもしれませんね。

当初のアルバムは全12曲。ラスト2曲がアクースティックなナンバーで、ラスト・ナンバーの「Living Doll」は相方のJoe Sweeneyのピアノだけをバックに歌われるシンプルな曲です。その前、11曲目「Buster」にデヴィッド・リンドレーが参加しています。少しカントリー・タッチのナンバーで、右側のスピーカーにフィドル、左側のスピーカーにスライド・ギターをオーバー・ダブで吹込んでいます。クレジットにはドブロとありますが、この音色はワイゼンボーンで間違えないです。フィドルはイントロなどのメロディを奏でますが、ワイゼンボーンの方はオブリカードのみでソロはありません。この手のアクースティックなナンバーでは、スプリングスティーン的なカラーはぐっと薄れますね。

自分が持っているのは2007年に出た再発CDで、2曲のボーナス・トラックが入っています。1曲はピアノのみをバックに歌われる「Marys Ghost」、もう1曲は「Waste Me」のライブ・バージョンです。

ちょっと興味をもったので、Youtubeでいろいろ映像を見てみましたが、プレスリー直系のロックンローラーであり、シンガー・ソングライターですね。最近の映像ではペダル・スティールなどを交えたカントリー・ロックをやっているみたい。90年代はじめ頃のライブ映像では、達者なメンバーにアコギをまかせて、ブルージーな「Daddy Said」という曲を踊りながら歌っているものが気に入りました。数年前のギタリストと二人だけのアクーステイックなステージではこのアルバムに入ってる「Living Doll」で、観客が一緒に歌っていたりとか、根強いファンがいらっしゃることがわかります。最近ではけっこう渋いおじさんになっているようで、近作の方を聴いてみたい気がします。

John Hiatt / Terms of My Surender

john hiatt: termsせっかくライブを見てきたので、大変遅ればせながら、昨年夏にリリースされたジョン・ハイアットさんの最新作を行きましょう。およそ2年ぶり、23作目のアルバムです。このところ、ストレートの直球勝負を続けてきたジョン・ハイアットさん。今回は少し変化球できました。まぁ、変化球といっても、彼は、たいしてたくさんの球種をもっているわけではありません。今作は十数年ぶりにアクースティック感を前面に出したアルバムとなっております。といっても、ドラムも入ってるし、エレキもけっこう入っているのです。それでも、あえてアクースティック・アルバムというのは、ハイアットさんのアコギによる弾き語りが、1コーラスまるまるとか、時には2コーラスとか続いたあとに、バンドが入ってくる曲が多いのです。中にはブリッジからバンドが入ってくるのもあったりして、ちょっと変則的なつくりなのですが、それが全く違和感を感じさせなかったりします。

アルバムのプロデュースをまかされているのは、『The Open Road』以来ハイアットのアルバムでギターを弾いているダグ・ランシオ。もちろん、このアルバムでも随所で光るギター・プレイを聴かせています。彼の経歴をみると、ハイアットのバンドに入る前は、ナッシュビルでカントリー系シンガーのバックアップを中心に活動してきたみたいで、エレキだけでなく、アクースティック・ギターもかなり達者なようです。ハイアットさん、必ずステージでアクースティックなセットを披露してると思うんですけど、ランシオさんは、今回、その部分に大きく光りをあてようとしたんでょうね。

アルバムの中で一番気に入っているのが、6曲目「Baby's Gonna Kick」。変わらぬハイアット節です。この曲はアタマからバンド演奏ですが、とっても抑制がきいております。歌詞の中にジョン・リー・フッカーやハウリン・ウルフが出てくるし、自身によるブルージーなハーモニカがいい味を出しています。曲は典型的なブルーズではないんですけど。そういえば、今回の作品はなんとなくブルージーなナンバーが目立つような気がしますねぇ。それから、珍しくバンジョーをフューチャーした「Wind Don't Have To Harry」も秀逸。スタイルは古いマウンテン・ミュージックみたいなんですが、ブルーズ・フィーリングがあふれる演奏。ルーツ系好きにはたまらないプレイであります。

タイトル・トラックは、非常によくあるジャジーなスロー・ブルーズ進行のナンバー。トム・ウェイツなんかもよくとりいれているスタイルです。ハイアットさんにもぴったりだと思うのですが、今まであえて、この進行の曲はやってこなかったようです。しかし、このナンバー、ハイアットさんの声にばっちりマッチしてますねぇ。すばらしいです。
ほかにもブルーズ調やら、カントリー・ロック調やらの秀作がずらり。ハイアットさんの作品のクオリティの高さを物語る好盤となっています。バンド・メンバーは前作からベーシストが交代。バックグラウンド・ボーカルに専念する1名も加えて、基本5人編成。キーボードの1名はゲスト参加扱いです。

自分はDVD付2枚組をゲットしたのですが、このDVDにも本作を解くカギが隠されているようにも思えます。全10曲入りのライブで編成は上記のバンド・メンバー5名。この新作の中からも2曲が収録されていますが、残り8曲のうち4曲が1988年の『Slow Turning』から。このアルバムを聴きかえしてみると、けっこうアクーステイックなつくりなんですよねぇ。ランシオさんもプロデュースにあたって、『Slow Turning』を強く意識したんじゃないでしょうか。

先日、ビルボードライブ東京でみたハイアットさんのライブでは、このアルバムから冒頭の「Long Time Comin'」しかやりませんでした。別の会場ではタイトル・トラックもやったようだし、ラストに収録されている「Come Back Home」もセットリストにのっていましたが、みんなシンプルなナンバーですね。そのシンプルさの極みみたいな曲もハイアットさんの「味」で、ぐっとくる演奏になるんだからたいしたものだと思います。「Long Time Comin'」は旧友が車の中で、「ずいぶん長い時間が過ぎたな。」とつぶやき、若かった頃を振り返る内容。「Come Back Home」は、遠くで暮らしている家族か旧友に帰郷してほしいと願う内容のナンバーです。タイトル・トラックは、夜の静寂の中で、過去を振り返り失った恋に思いを馳せています。ハイアットさんは今作で、「歳を重ねること」をひとつのテーマにしているように感じます。

このアルバムの9曲目に「Here To Stay」という曲が入っていますが、たくさんある彼のコンピレーションの最新盤、2013年の『Here To Stay』に1曲だけ未発表曲として入っています。こちらは、John Hiatt & Joe Bonamassaのクレジットになっていて、全くの別バージョン。こちらはボナマッサによるエレクトリック・ボトルネック・ギターが大々的にフューチャーされていますが、『Tearms of My Surrender』収録のバージョンの方はアクースティック・ギターの響きがより強調されたアレンジになっています。

近作の中で頭抜けた傑作、というわけではありませんが、ハイアットさんのアクースティックな良さが十二分にあらわれた良盤だと思います。
Amazonライブリンク

レシーブ二郎ライブ情報
●2015.11.15 (日)

【場所】D-Studio (北九州市戸畑区)
【時間】18:50 open 19:00 start
【料金】1500円(1ドリンク付)
【出演】アフターアワーズ ミックスシェイカー レイアンビション ほか

●2015.11.28 (土)

【場所】Live Bar Andy (北九州市八幡西区)
【時間】19:00 open 19:30 start
【料金】1500円(要1ドリンク)
【出演】Wild Fancies アフターアワーズ Anfang New Jam Soul
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レシーブ二郎
福岡県内で音楽活動してます。本厄となりましたが、楽器の腕はまだまだ。がんばっていきたいものです。リスナー歴は長いけど、アマチュア・プレイヤー歴は駆け出し。持ってる楽器は多数。おいおい紹介していきます。
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