レシーブ二郎の音楽日記

レシーブ二郎の音楽ブログにようこそ。マイペースでぼつぼつ更新していきます。

Nick Lowe Live at Billboard Live Osaka

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前回までの記事に書いたように、去年のゴールデンウィークは、久々にニューオーリンズに行ってきましたが、今年は連休後半にちょっとした国内旅行に行きました。5月3日は午前中地元で少し用事があり、午後は福岡の岩田屋デパートで開催されていた「レコードの時代展」のイベントのひとつとして、ピーター・バラカン氏の出張DJがありました。待ち時間を含め長時間立っているのはきつかったけど、王道路線の選曲、エルプの非接触のプレイヤーによるLPのよい音を楽しむことができました。

さて、翌4日ですが、朝から新幹線で小倉を発ち、一箇所より道をして午後2時半頃にJR大阪駅に到着。梅田ナカイ楽器に寄って楽器を眺めてから地下道でビルボードに行きました。かなり距離がありますね。連休中とあってファースト・ステージは16時30分から、セカンド・ステージは19時30分からという非常に早い時間のライブです。予約したら15時30分から案内ということで、その時間に列に並び、ステージ中央よりやや下手の二列目のテーブルという良席を確保することができました。

定刻に客電が落ち、いよいよニック・ロウの登場。紅茶のカップをもってステージにあがります。この日はバンドなし、ニック一人の弾き語りです。目の細かいチェック柄のシャツにスラックス、黒縁の眼鏡というスタイル。ギターはサンバーストのギブソン・ウエスタン・クラシック。おもむろにギターをかかえると1曲目を歌い出します。やはり、「People Change」で幕開け。今回のライブに行く前に「予習」として、ベスト盤『Quiet Please』を聴いたり、DVDを見たりしていましたが、予想どおりDVDとはたくさんの曲がかぶりました。「People Change」はDVDの冒頭に入ってる曲です。曲の途中で簡単に客席にあいさつ。2局目は『Old Magic』の冒頭のナンバー「Stop;ight Roses」でした。胸を打つバラード。3曲目は耳慣れないナンバー「Love Stavation」。アップテンポの曲でした。

3曲続けてやって、あらためて客席にご挨拶です。大阪と会場のビルボードのことを褒めて、今日はとってもいい日だねぇとかなんとか。昔の曲も、さっきやった曲みたいな最新の曲も、それから、少しだけカバーもやるよ。英語でしか話せなくてびめんなさい、自分の曲は短いからたくさんやります、みたいな内容でした。その言葉どおり、次からはほぼノンストップで曲が続いていきます。続いては懐かしい「Ragin' Eyes」。ニックはギターの5・6弦をかならず左手の親指で押さえれるくらい手が大きくて、いわゆるセーハ(バレーともいう。左手人差し指でフレット全体を押さえる一般的な押さえ方)をしなくても、全弦を押さえて心地よくザックザックとカッティングができるのでうらやましいです。こういうノリのいい曲では特に効果的ですね。昔のヒット曲「Without Love」を決めたかと思うと、最新シングルに入っている「Crying Inside」を演奏。その次には「Love Stavation」同様未発表曲の「Blue On Blue」を演奏しました。曲のタイトルはあってるかどうかわからないけど、youtubeに上がっているタイトルにしています。

1曲はさんで、ビージーズのカバーをやります、という感じのMCが入り、やはり最新シングルに入っている「Heartbreaker」を演奏。ニックのセンスの良さを感じます。このあたりからライブは佳境に入り、『The Impossible Bird』収録の「I Live on the Battlefield」で観客を乗せたあと、バラードの「I Read a Lot」でしんみりさせるのですが、この曲は本当に素晴らしかった。サビの部分のリバーブのかかり具合も絶妙でニックの歌の上手さに感じ入りました。そして、待ってましたの「Cruel to be Kind」の登場。客席も大いに盛り上がり、ニックも気を良くしてサビの部分を繰り返し演奏して、エルヴィスのようにポーズを決めていました。最新シングルのタイトル曲「Tokyo Bay」も演奏、アーサー・アレキサンダーの曲をやりますとMCを入れて大好きな「Lonely Just Like Me」をやってくれたのは嬉しかったなぁ。この曲、過去にベスト盤に入れてるんですね。全然知りませんでした。そして、大名曲「Peace, Love and Understanding」が登場。最近のゆったりとしたアレンジは大好き。ただ聞き惚れるのみです。もう時間がきたので、あと1曲だけになったけど、いい曲だよ。というMCのあと、『Quiet Please』のDVD同様「Well,Well,Well〜」と歌い出して「I Knew the Bride」がラスト・ナンバー。ニックらしいロックンロールで締めとなりました。

当然、スタンディング・オーベションで拍手が鳴り止みません。ニックは再び登場し、「When I Wright the Book」を演奏するのですが、サビのところでは客席にコーラスを手伝ってくれというMC。そのとおり、大合唱までなりませんでしたが、客席のサポートを得て無事に演奏終了、最後の最後にコステロのカバー、「Alison」を静かに決めて、素晴らしいライブは終演となりました。

セカンド・ステージもほぼ同じ展開ですが、ビージーズのカバー「Heartbreaker」のかわりに、「Somebody Care For Me」があったり、「House for Sale」がなかったり、「Peace Love and Understanding」と「Lonely Just Like Me」の曲順が入れ替わったりと小さな変更はありました。セカンドも大満足の素晴らしいステージ。「When I Wright the Book」ではセカンドの方がたくさんのお客さんが歌っていたかな。ニックもご満悦の様子でした。

この日は夜10時頃から、ミナミのフォーク・ロック・バー、"Phoe〜be"に行き、ファースト・ステージに来ていた店主の佐藤さんや常連さんたちと楽しく音楽談議ができました。そして、福岡で以前お会いしたことのある懐かしい方との再会もあり、とってもいい夜となりました。翌日は、高校時代の友人に誘われて、服部緑地野外音楽堂で春一番コンサートを楽しむことができました。天候にも恵まれ、充実の小旅行となりました。

1st

People Change
Stoplight Roses
Love Stavation
Ragin' Eyes
Long Limbed Girl
Shakin' on the Hill
Without Love
Crying Inside
Blue on Blue
Has She Got A Friend?
Heartbreaker
I Live on the Battlefield
I Read a Lot
Cruel to be Kind
Heart
Tokyo Bay
House for Sale
Lonely Just Like Me
Peace Love and Understanding
I Knew the Bride
(encore)
When I Wright the Book
Alison


2nd

People Change
Stoplight Roses
Love Stavation
Ragin' Eyes
Long Limbed Girl
Shakin' on the Hill
Without Love
Crying Inside
Blue on Blue
Has She Got A Friend?
Somebody Care For Me
I Live on the Battlefield
I Read a Lot
Cruel to be Kind
Heart
Tokyo Bay
Peace Love and Understanding
Lonely Just Like Me
I Knew the Bride
(encore)
When I Wright the Book
Alison

2017年ニューオーリンズ旅行記10 5月7日 ジャズフェス・セカンド・ウィークエンド最終日

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宿泊しているホテルから、セントラル・ビジネス・ディストリクトの高層ビルを望む

この日乗り込んだシャトル・バスのガイドさんは男性、盛んにジョークを言って笑いをとっています。最終日とあって大半のお客さんは日焼けしているので、「あんたたちは農民だろ?」とかいうのもありました。自分はせっかくのジョークもあまりわかりません。もっと英語を勉強しておけばよかったな思いました。初日は曇っていましたが、2日目、3日目といい天気だったので、自分もけっこう日焼けしておりました。会場に着いて、後ろの方に座っていたので、みんなの列について最後尾で下車するときに、そのガイドさんから「Are you a farmer?」と声をかけられたので、「Yes, I am a farmer.」と応えておきました。

いよいよ最終日です。オリジナル・ミーターズが見られるという期待感と、もう最終日でこれが終わると帰らなければならないという複雑な気持ちです。開門と同時にこの日もゴスペル・テントに行って、ディレクター達のサウンド・チェックを聴きます。この日はまずコンゴ・スクエア・ステージを見に行こうと思っていたので、端の方に腰掛けて聴いていたら、すぐ近くの家族ずれできていた年配の痩せたアフリカン・アメリカンの男性がやさしい目線を送ってきます。彼は敬虔なクリスチャンなんでしょう。サウンドチェックが終わって出ていくとき、「礼拝のつもりできたんだろう?」という感じで、自分の二の腕のところに触れてくれました。なんだか暖かい気持ちになり、コンゴ・スクエア・ステージへと向かいました。

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コンゴ・スクエア・ステージ

コンゴ・スクエア・ステージのトップバッターは、エリカ・フォールズ。ファッションから演奏スタイルから、70年代にタイムスリップしたかのような女性ソウル・シンガーですが、歌唱力は抜群。曲のセンスもとってもよいです。しかし全国的な知名度はないのかな。1番バッターとあって、会場のお客さんはあまり多くないです。彼女のバンドのギタリストは山岸潤史。演奏は悪いわけがないでしょう。1曲目はアップテンポなナンバー。ドラム、ベース、エレピに単音でファンキーなバッキング・フレーズを弾く山岸さん、女性コーラスが二人という布陣です。朝一で聴くのにぴったりなさわやかなナンバー。間奏では「Come on, June!」と声をかけられ、山岸さんが少し歪ませたサウンドでソロをとります。2曲目は心地よいリズムのミディアム・ナンバー。この曲の間奏ではキーボードがピアニカっぽいサウンドでソロ。山岸さんは素敵なフレージングでバッキング。まだまだ見たいのだけど、ニューオーリンズの伝説のシンガー達が出演するジェンティリー・ステージへと向かいました。

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Erica Falls

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Erica & Yamagishi

ジェンティリー・ステージに着くと、ホーン・セクションの入った全員白人のバンドが演奏していて、若い女性がアーマ・トーマスの「It's Rainning」を歌っています。まだ最前列も空いていたので、左手の方の柵前に立って、となりの初老の小柄なレディに「Excuse me, Does Clarence…」と言いかけたら、「そうよ、ここが彼が出るステージよ。スケジュール表は持ってないの? 彼は出てきても、多分2・3曲しか歌わないわ。」と教えてくれました。もう1曲「It's Rainning」を歌っていた女性が古いソウル・ナンバーを歌ったあと、男性メンバーがチャック・ベリーの「Memphis」から「Mabelline」へと繋がるメドレーを歌います。バンドの演奏もタイトで、このバンドならクラレンス達のバックは何も問題ないなと感じます。次はさっきとは別の女性がバーバラ・ジョージの「I Know」を歌います。彼女もパンチのあるいい声をしています。おっ、曲が「Personality」に移った。これはミーターズやネヴィルズのロックンロール・メドレーの後半と同じ展開ですね。つづいてはサム&デイブの「Hold On, I'm Comin'」です。やはり同じ白人女性シンガーか歌います。そしてオーティスの「Try A Little Tenderness」が登場。おそらくボビー・キュアさんと思われる、さっきとは別の男性が歌いますが、彼はブルー・アイド・ソウル・マンですね。渋い喉を聴かせてくれました。それにしても超王道の選曲ですね。彼らは地元では結構知られたバンドなんだろうなと感じつつ、そろそろメインのメンバーが出てこないかなと思っていたら、ジョー・サウスが書きアーロン・ネヴィルが歌った「Greatest Love」が演奏されます。なかなか気持ちいいです。

そして、いよいよ、このステージの主役達が出てきます。まずはロバート・パーカーさんがスーツ姿で登場。オーティスの「Mr.Pitiful」を歌います。すんごい味があります。そして。彼の定番ファンク・ナンバー「Barefootin'」が続きます。文句無くかっこよいです。60年代ソウル、ファンクの生きるレジェンドですね。

Robert Parker
Robert Parker

次に登場するのはアル・ジョンソン。白とブルーの派手な衣装。白縁のサングラス、帽子を王冠を模しています。曲は転がるピアノが印象的な典型的なニューオーリンズR&B。二曲目は彼の代表曲「Carnival Time」です。二人とも衰えを感じさせない、いい喉です。

Al “Carnival Time” Johnson
Al “Carnival Time” Johnson

そして、いよいよの真打ち登場です。MCで1964年にビートルズがニューオーリンズに来たとき、オープニングをしたニューオーリンズのミュージシャンの一人との紹介があって、歩行器を押してクラレンス・フロッグマン・ヘンリーがステージにあらわれました。椅子にもなる歩行器に腰掛け1曲目はボビー・チャールズの書いた「But I Do」です。あのやさしい笑顔のクラレンスがステージで歌っています。素晴らしい瞬間です。曲はそのままスタンダードの「You Always Hurt the One You Love」に続いていきます。このアレンジにクラレンスの歌声、最高ですね。間奏では演奏するボビー・キュアのバンドと先に出演した二人を讃えます。そして、定番カエルの声のモノマネをはさんでの、あの「Ain't Got No Home」が登場します。もちろん、あの裏声も、超低音も健在です。お客さんも大喜び、その部分ではバンドの音も超小さくなって、クラレンスの「芸」を引き立てます。この楽しさこそ、ニューオーリンズ音楽の神髄だと思います。最近の若い人は、あまりノベルティ的な演奏をやらなくなっているように思いますが、こういう雰囲気も引き継いでいってほしいものです。エンディングでは、ロバート・パーカーとアル・ジョンソンもステージに戻ってきて、歌の掛け合いもありました。クラレンスは「See you next year!」と叫んでいましたが、今年のジャズフェスのラインナップにも彼の名前はあがっています。彼らにはいつまでも元気で歌って欲しいものです。メンバーの「New Orleans Legend, Everybody」の声に送られ、クラレンス達は退場していきます。

Clarence “Frogman” Henry
Clarence “Frogman” Henry

Clarence “Frogman” Henry&
Clarence, Robert & Al

この日はお気に入りとなったクロウフィッシュ・エトフェで腹ごしらえをしたあと、コンゴ・スクエア・ステージに行って、ウォールター・ウルフマン・ワシントン&ザ・ロードマスターズのステージを見ることにします。彼は、前回来た時、ハウス・オブ・ブルーズでのライブで、ロバート・ランドルフの前座出演を見ました。その時はオルガンのジョー・クラウン、ドラムのラッセル・バティステ・Jr.とのトリオで渋いブルーズをたくさん歌ってたように記憶します。食事のあと、ステージに着いたらちょうどライブがはじまるところでした。バンドは6人。ドラム、ベース、ギター&ボーカル、キーボード、テナー・サックス、トロンボーンという編成です。ファンキーなインスト・ナンバーで幕開け。ホーンの二人が交互にソロをとります。エンディングが白熱してきて、そのままボーカル・コーラスの入ったナンバーに移行し、ウルフマンもお気に入りであろう赤いセミアコのギターで渋いソロを繰り出します。続いてミディアム・テンポのギター・イントロがはじまりドラムがあわせていきます。これもファンク・ナンバー。この曲ではウルフマンがスモーキーな渋い歌声を聴かせてくれます。その次にやったピアノではじまるバラードがとってもよかったです。次はホーンではじまるアップテンポのファンク・ナンバーです。間奏ではウルフマンのギター・ソロが冴え、短いベース・ソロをはさんでサックス・ソロにうつります。かっこいいです。さらに1曲、ファンク・ナンバーを聴き、次のスロー・バラードがはじまったところで、このステージを離れることにします。まだまだ聴きたかったのですが、今年はキューバとの国交回復を記念して、あちこちでキューバ音楽のステージがあります。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブでキューバ音楽に目覚めた自分としては、ひとつくらいキューバ音楽のステージを見ておきたいので、再びジェンティリー・ステージを目指しました。

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Walter "Wolfman" Washington

ジェンティリー・ステージでは、セプテット・サンチアグエロというグループが演奏しています。ステージに近づいてくると、にぎやかなリズムに乗せてマイナー・キーの曲が聴こえてきます。会場に着くと、曲が終わって、MCの後別の曲がはじまります。ドラムもベースもいないみたいですが、パーカッションは二人、すごいグルーブ感です。メロディ楽器はガット・ギターとトレス、そしてトランペットです。ブエナ・ビスタの路線を継承するキューバのルーツ系のグループのようで、歌も上手いし、メンバーは皆演奏達者、すべてのミュージシャンの息がぴったりあっていて、いいものが見れたと感じました。次の曲はなんと「Chan Chan」でしたが、ギャラクティックを前の方で見るために、アキュラ・ステージに移動します。

Septeto Santiaguero
Septeto Santiaguero

アキュラ・ステージではギャラクティクのサウンド・チェックの途中。会場はすでに多くの人が集まっていますが、ステージに向かって左手前方で見ることができました。デビュー当初はミーターズ・フォロワー的な立ち位置でしたが、20年を経てニューオーリンズの中核的ファンク・バンドに成長したのではないでしょうか。1曲目は近年の定番曲となっているインスト「Karate」です。そんなに和風の要素はないのだけれど、カラテ技のスピード感のある躍動感あふれるファンクです。確かにテーマのメロディなんか、空手の立ち回りのBGMで全く違和感ないです。

galactic
Galactic

2曲目で早くもゲスト・シンガーの登場。今朝、コンゴ・スクエア・ステージで見たエリカ・フォールズが、違った衣装で登場しはつらつとした歌声を聴かせます。曲は最新作で別の人が歌っていた「Right On」です。そして渋いギターのリフではじまる「Chasing Rainbows」と続きます。3曲目は以前からのギャラクティクのレパートリー「Hey Na Na」をエリカが歌います。バンド全員がテクニシャンですが、スタントン・ムーアのドラム、実にいいですね。ここでエリカが一旦退場。インスト・ナンバーに戻り「Ashley's Roachclip」がはじまります。ホーンセクションによるテーマに続いてトランペットが渾身のソロ。オルガンも渋いソロを続けます。心地よい音の渦に巻かれて、いつまでもこの渦に浸っていたい気分です。途中から曲は「Paid in Full」に変わり、ラップも登場、客席とのコール&レスポンスもあり、ドラムとパーカッションの掛け合いも盛り上がります。再びエリカがステージに戻り「You Don't Know」がはじまります。以前のアルバムでグレン・デヴィッド・アンドリュースがゲストで歌っていたマイナー・キーの力強いナンバーです。続いてのナンバーは軽い感じのギター・リフではじまるディランの「Like A Rolling Stone」のカバーでした。こんな選曲があるとは意外ですが、いい感じで70年代風ソウル・チューンにつくりかえています。次の曲はハーモニカ、ボトルネック・ギターではじまるブルージーな曲、「Shibuya」。どうして渋谷なのかわからないけど、まるで「Rollin'&Tumblin'」のようなかっこいいインストです。ブルーズのスピード・ナンバーの後は、三たびエリカがステージに戻り、落ち着いたリズムの「Does It Realy Make A Difference?」が演奏されます。最新作ではメイヴィス・ステイプルスがゲストで歌っていた曲ですね。曲は徐々に盛り上がり、エリカがコーラスを歌い上げ最高潮のままエンディングを迎えます。ホーンセクションが掛け合いを演じ、心地よく曲が終わります。次はまた最新作収録のスピード・ナンバー「Dolla Diva」。エリカのエモーショナルなボーカルにぴったりで、なおかつミーターズの言葉遊びのナンバーの系譜につながるかっこいいファンク・ナンバー。自然と身体が動きます。そして、ハイライトは近年の定番曲「Heart of Steel」。以前のアルバムでアーマ・トーマスやシリル・ネヴィルがゲストとして歌っていた曲ですが、エリカのボーカルもなかなかマッチしていますね。約70分、半数以上の曲でエリカ・フォールズがフューチャーされていましたが、主役はやはり技とノリのギャラクティック。ぶっといファンク最高でした。

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Erica Falls & Galactic

次は、ゴスペル・テントに移動し、前回も見たツァイオン・ハーモナイザーズを見ることにします。テントに着くと古き良き男性コーラスのゴスペルが流れています。素晴らしいですね。次の曲はオルガンとピアノのイントロですぐにわかります。「People Get Ready」です。分厚いコーラスの感動的なこと。こんなゴスペルは本場でないとなかなか聴けないでしょう。最近亡くなったゴスペル・シンガー、ジョー・クール・デイヴィスへのトリビュートも兼ねていて、彼にゆかりのあるメンバーもステージに登場します。次の曲はホーンも入ってぐっとアーシーな曲。そして、サム・クックの「It's All Right」が演奏されます。ハモンド・オルガンがばっちり決まった演奏。素敵でした。このあたりまで聴いたところで、ゴスペル・テントを後にし、今からジェンティリー・ステージでの長丁場に備えて腹ごしらえ。揚げた豚肉をはさんだサンドウィッチを食べました。いかにもソウル・フードという感じで美味かったです。

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The Zion Harmonizers

そして、ジェンティリー・ステージに移動。最後の二組を続けて見ることにします。コンゴ・ステージではニューオーリンズともかかわりが深いパティ・ラベールの演奏もあるのですが、バディ・ガイの方を選びました。50年代から活躍しているバディ・ガイは何度も来日していますが、見るのは今回はじめて。しばらく待つと、MCの後、バディ・ガイの登場です。アップテンポの伴奏にのって、白地に黒の水玉の衣装に身をつつみ、白のハンチングをかぶってナチュラル・カラーのストラト・キャスターをかかえたバディがあらわれます。

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Buddy Guy

曲はすぐミディアム・ブルーズ「Damn Right I've Got The Blues」になって、バディはストラトを弾きまくります。エンディングはピアノがソロを引き受けています。2曲目「Hoochie Coochie Man」でも、バディ・ガイの弾きまくりギターが冴え渡ります。途中からセカンド・ギタリストにソロをまかせますが、彼もなかなかのテクニシャン。いいフレーズを連発します。曲はとぎれなく、マディ・ウォーターズのアップテンポな「She's Nineteen Years Old」に続いていきます。ブルーズだのロックだのという分類が無意味と思える熱い演奏。かっこよすぎでしょう。曲はリトル・ミルトンの「Grits Ain't Grocerties」にそのまま移り、最後は「Who's Making Love」の客席との大合唱となります。そしてMCでギター・スリムの名に触れ、彼の「The Things I Used to Do」をカバー。ルイジアナ出身の彼ですが、ニューオーリンズでのライブとあって、地元のブルーズのかつてのスターに敬意を表したのでしょうか。スロー・ブルースが心地よいです。続いてはマディで有名な「I Just Want to Make Love to You」が飛び出し客席の興奮も最高潮に達します。こういうワイルドな演奏、いいですよねぇ。そして、ジョン・リー・フッカーの「Boom Boom」がはじまったかと思えば、すぐB.B・キングの「Sweet Sixteen」に移ります。イントロでバディのソロが炸裂しますが、この曲もすぐ終わり、大好きなジョン・ハイアットの「Feels Like Rain」がまるごと演奏されます。1番のヴァースはエレピだけをバックに情感たっぷりに歌われます。最高です。間奏ではバディ・ガイらしい弾きまくりから、静かなフレーズに移行してオーディエンスの琴線をゆさぶるのです。バラードの後は定番曲、デニス・ラサールの「Smeone Else is Steppin' In」の登場です。バディのギターが炸裂し、舞台下手の袖から会場に降りてくるパフォーマンス。自分の立っている箇所の10メートルくらいステージ側を通りました。姿を認めることはできましたが、カメラにはとらえることはできませんでした。

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会場を練り歩くバディ・ガイ 自分のカメラは彼の姿をとらえきれなかった。

続く「Skin Deep」では、バディはエレクトリック・シタールに持ち替え、再びしっとりとバラードを歌い上げます。エレシタでも間奏では、一瞬弾きまくってくれますが、それがちっともうるさくないのです。2008年にリリースされたアルバムのタイトル・トラックですが、すごくいい曲ですね。自伝的な内容のようです。

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Buddy with the electric sitar

そして、今は天国にいる相棒、ジュニア・ウェルズの「Little by Little」を女性シンガーとデュエット。彼女もアーシーないい声をしています。いよいよ彼のライブもエンディング。クリームの「Strange Brew」をひと回しだけ歌ったあと、バンドが唸りをあげ「Voodoo Child」がはじまります。客席は再び興奮の坩堝と化します。そして、クリームの「Sunshine of Your Love」のノリに乗った演奏をバックにメンバー紹介。彼のステージは幕を閉じました。はじめて見ましたが、さすがすばらしいパフォーマンスですね。80歳とは思えない若々しいプレイ。今やブルーズ界の長老となってしまいましたが、いつまでも元気で演奏を続けてほしいものです。

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Buddy & The Female Singer

さて、いよいよ、最後のステージです。幕間が45分もありますが、いいポジションでオリジナル・ミーターズを見たいので、このままジェンティリー・ステージで彼らの登場を待つことにします。おかげで、一般席中央最前列を確保することができました。サウンド・チェックがはじまり、いよいよはじめて全員揃ったオリジナル・ミーターズを見ることができます。

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ミーターズの出番を待つ人々

これで終わりかという残念さもありますが、期待感、高揚感がずっとまさっています。ふと目をやると、近くにファンキー・ミーターズにゲスト参加していたライス・アル・サーディステージさんが、あの髭面でステージの方を見つめています。そしてメンバーがステージに登場。客席も大喜びです。ジョージがベースを弾きはじめ、少しの間ゆっくりフリーの演奏。レオがギターでリフを弾き始め「Hand Clapping Song」が始まりました。唯一無二のグルーヴです。サングラス姿のパパファンク、アート・ネヴィルもステージ下手でオルガンをプレイしています。アートの後ろでライブ・ペインティングのアーティストが横長の白いカンバスに何やら描きはじめいます。2015年のフェスの時と同様、今回もホーンズとアイヴァン・ネヴィルがサポート。アイヴァンはエレピで好サポートをしています。エンディングではアーティもオルガンで少しソロをとります。

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The Meters

曲はそのまま「(Doodle Loop)The World Is Little Under The Weather」につながっていきます。レオの弾きまくりソロも堪能できますが、バディ・ガイを見た直後なので、彼のプレイもおとなしく感じられます。ついに、4人揃ったミーターズが見れたという感動と興奮で頭が真っ白になります。曲はとぎれなくジガブーのたたき出す躍動感あふれるセカンド・ラインのリズムに移行します。このドラムだけで「Hey Pocky Way」だということはすぐにわかります。アイヴァンのピアノとアーティのオルガンが入って、歌がはじまります。極上のニューオーリンズ・ファンクですね。自分も周囲のみんなと一緒に「Hey Hey Hey Hey Hey Pocky Way」と合唱。この上もなく気持ちいいです。

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The Meters

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The Meters

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Leo Nocentelli

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Art Neville

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George Porter Jr.

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Zigaboo Modeliste

ここでメドレー形式は一旦途切れ、次の曲はレオのリフからはじまる「You've Got A Change」です。大好きな曲が続きます。たまらないです。間奏ではアイヴァンのエレピのソロも飛び出します。レオも速弾きソロで応酬。ロックでファンキーなジャムですね。次のナンバーは、「Chung A Lug」です。この曲でもレオの熱いソロを堪能。後半、ホーンズをフィーチャーする場面もありました。

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Ivan Neville & Leo

続いて、ワウを効かせたレオのギターリフがはじまります。前夜ジョン・クリアリー達の演奏でも楽しんだ「Just Kiss It Off My Baby」です。ニューオーリンズ・ファンクの神髄、リヴィング・レジェンド達のプレイにしばし我を忘れました。間奏ではリフをワウのかかったアイヴァンのクラビネットが担当し、レオが思い切り歪ませたギターでソロをとります。ひとしきりのプレイのあと、ジガブーが「Bass Guitar, Bass Guitar!」と叫び、ジョージのソロがめいっぱいプレイされます。そして、アーティのオルガン・ソロが登場。少したどだどしくはあるけれど、メンバー全員がアーティを盛りたてているかのようです。セッション形式で1曲が10分近くと長いのですが、なんだかあっという間に時間が過ぎていきます。

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Zigaboo Modeliste

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Art Neville

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Leo & George

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Live Painting

ジガブーのMCのあと、レオ一人がマイナー・コードをしばしアルペジオで紡いでいきます。そして、あのイントロがはじまりました。「Ain't No Use」です。「Ain't No Use」のボーカルも少しジョージに手伝ってもらいながら、アーティはお気に入りのナンバーを心地よさそうに弾いています。最初の間奏はレオのバックでオルガンのコード弾き。少し年上のバディ・ガイに比べると脳梗塞を2回もやっているだけあって、アーティの衰えは隠せませんが、こうしてオリジナル・ミーターズとして全員でプレイしてくれるだけで、胸に熱いものがこみ上げます。2回目の間奏はアイヴァンがエレピでソロ。そのバックでもアーティはオルガンでコードを弾きます。そして、いよいよアーティのソロ。「往年の」とまではいきませんが、なかなか渋いソロを弾いているではないですか。しかし、途中でソロがだんだんおぼつかなくなってきます。と、ジョージが自分のベースをホーンセクションの一人に手渡し、彼がベースを弾き始めます。ジョージはアーティの隣に行ってプレイをサポート。感動的なシーンです。しばしサポートしたあと再びホーンのメンバーからベースを受け取り弾き始めます。

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アートをサポートするジョージ

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曲中サックス奏者からベースを受け取る


続いての曲は、イントロのギター・フレーズですぐにわかる「Fire On The Bayou」です。大好きな曲で嬉しい反面、ああ、これで終わってしまう…、という気持ちもあって複雑です。まだまだ彼らの演奏を聴いていたいですが、だんだん陽が西に傾いて毎年恒例のフェスティバルも終わりに近づいています。その瞬間をオリジナル・メンバーのミーターズのスタンダードを聴きながら過ごせるというのは感無量です。エンディングでひとしきりレオが激しいギター・プレイを聴かせたあと、サックス・プレイヤーがフィーチャーされ、クール・ダウンしたバンドの演奏に乗せてジャジーで渋いソロを奏でます。そしてトランペットがその後を引き継いでいきます。まさにフェスティバルの「有終の美」にふさわしい素晴らしいプレイです。曲が終わると大歓声と惜しみない大きな拍手がメンバーに送られます。ライブ・ペインティングではミーターズの演奏風景が描きあげられています。メンバー紹介のあと、サポート・メンバーが会場を去り、最後の最後に「Cissy Strut」が演奏されました。今も世界中のセッションで演奏され続けられているこの曲の正真正銘のオリジナル・バージョンです。本当に感無量。何も言うことはありません。ボーカルはジョージがとる場面が多かったですが、アイヴァンを含めたメンバー全員で歌うことも多く、「Ain't No Use」と「Fiyo On The Bayou」のリード・ヴォーカルはアーティでした。アーティは、ファンキー・ミーターズの時は「Fiyo On The Bayou」の歌詞を忘れてしまい、ジョージが代役を務めましたが、この日はきっちりと歌っていました。もしかしたら、今回がオリジナル・ミーターズを見ることのできる最後のチャンスだったかもしれません。彼らの迫力たっぷりでファンキーな演奏に浸ることができて幸せな時間でした。

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客席に別れのあいさつ

今回のジャズ・フェスは、前回と違って後半のみの参加だったので、ドクター・ジョン、エアロン・ネヴィル、シリル・ネヴィル、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドといった面々を見ることができませんでした。けれども、オリジナル・ミーターズを筆頭に、アーマ・トーマス、クラレンス・フロッグマン・ヘンリー、マーシャ・ボール、ジョン・クリアリー、アンダース・オズボーン、ギャラクティク、ダンプスタファンク、ロッキン・ドゥプシー・Jr.などなど、地元で活躍するミュージシャンをたくさん楽しむことができましたし、メディスキ・マーティン&ウッド、タワー・オブ・パワー、ウィリアム・ベル、ウィルコ、ノース・ミシシッピ・オールスターズ、バディ・ガイといったゲスト組の演奏もすばらしかったです。次に来る時は、70代後半から80代の面々はリタイアしているかもしれないけれど、中堅組はまだまだがんばってくれていることでしょう。たとえば10年先でも、フェスティバルの期間には、全世界からこの町に腕利きミュージシャンが集まりすばらしい演奏を聴かせていることでしょう。きっといつかまた、この町に帰って来たいとの思いを胸に、たくさん想い出ができたフェアグラウンドを後にしました。

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なぜか、空にパックマン

この日の夜もいろいろな会場でライブが行われていますが、前日睡眠不足、連日立ちっぱなしで、天候も回復して日焼けし疲れがたまっているので、食事をして寝ることしました。夕食は、到着した日に食事をとったオーシャナ・グリルに再び行くことにしました。他に候補もあったのですが、睡眠不足に加え3時間半立ちっぱなしがこたえ、身体はくたくたです。遠くのお店まで歩いていって満席だったときのダメージを考え近場にしました。前回は二階のテーブル席に案内されましたが、この日は1階のバーカウンターでした。中には白人のかわいい小柄な女性がいました。麦酒とカップのガンボ、クラブケーキを頼みます。ガンボは少量でしたが美味しかったし、クラブケーキだけで晩ごはんには十分。こちらも美味でした。ホテルに帰ると朝5時にモーニング・コールを頼み、前夜、あまり寝ていないので約7時間泥のように眠りました。翌朝、モーニングコールを頼んだ時間より少し早く電話がなります。受話器をとってみると飛行機の出発時間が少し早まったという機械音声。前夜に支度をしていましたが、今一度忘れ物がないか確認し、5晩泊まったホテルを後にします。ホテルからタクシーで空港へ直行。帰路は何のトラブルもなく往路と同じヒューストンで乗り換え。やはり長丁場の空の旅は眠れませんでしたが、成田乗り換えで予定通り自宅に帰り着くことができました。

2017年ニューオーリンズ旅行記9 5月7日朝 ストリートカーに乗る

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セント・チャールズ・ストリートカー この写真は4日朝のもの

5月6日は、ホテルに帰り着いたのは午前3時近かったのではないかと思います。前日は6時間くらい睡眠をとったとはいえ、普段からすると全体的に寝不足のはずです。にもかかわらず、ライブの興奮でなかなか寝つけません。少し眠ったと思ったら目が覚めてしまいます。今日最終日でオリジナル・ミーターズが見れるという期待感からでしょうか。そんなこんなで、早朝にもかかわらず、少し出かけることにしました。まだ、朝の6時代だったと思いますが、一度乗ってみたかったストリート・カーに乗ることにしました。ホテルの近くからは3系統の電車を選ぶことができますが、日本では江戸後期にあたる1835年に敷かれたという歴史あるセント・チャールズ・ストリート・カーにしました。停留所で待つことしばし。ダーク・グリーンの電車がやってきました。前に来たとき、ライブハウスでがんがん冷房が効いていたので、今回は少し厚手の上着をもってきていおりました。涼しい5月の早朝にもかかわらず、電車の車内は冷房が効いていました。上着は部屋に置いていたので、持ってくればよかったと少々後悔。車両は第二次大戦前につくられた古いもの。内装は木調です。降りる停留所を運転手に知らせるベルは、窓上に張られた紐を引っ張って、ベルを鳴らすという原始的なものですが、こういう古い電車は、古い町並みが残るニューオーリンズの街にぴったりですね。

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木調のレトロな車内

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降りるときは、窓上方のひもで呼び鈴を鳴らす

電車はしばらく高層ビルのそびえるオフィス街、セントラル・ビジネス・ディストリクトを走ります。このあたりの街路は一方通行で、下りの電車はセント・チャールズ・アベニューを進みます。時折フリー・ライブをやっているラファイエット・スクエアの横を通り、南北戦争の英雄リー将軍の銅像が立つリー・サークルと呼ばれるロータリーを回ります。そして、ハイウェイの高架の下をくぐる直前で道幅がぐんと広がり、道路・電車とも上下線がセットになります。道は片側二車線の広い通りで、中央にストリート・カーの専用線が設けられています。しばらく市街地を進むと、ガーデン・ディストリクトと呼ばれる高級住宅街に道の両側や専用線脇には大木が植えられ、とってもいい雰囲気です。おそらく歴史ある邸宅も多いみたいで、電車を降りて街歩きなどをしてみたくなりますが、時間もないので、それは次回のお楽しみということにします。

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セント・チャールズ・ストリート北側の家並み

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セント・チャールズ・ストリート北側のお屋敷

ネヴィル・ブラザーズやボブ・ディランがダニエル・ラノワとレコーディングをした邸宅もこのあたりなのかなぁと思いをめぐらせつつ、次々に車窓を流れる建物を眺めます。ジャクソン大統領から名前をとったジャクソン・ストリートを過ぎると、アップタウンの中でもネヴィル・ファミリーの根城の地域にさしかかります。日曜の早朝とあって車内は空いていますが、飲食店などへ通勤の方々もちらほらおられるようです。

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セント・チャールズ・ストリート北側の集合住宅

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Academy of the Sacred Heart

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セント・チャールズ・ストリート北側のお屋敷2

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セント・チャールズ・ストリート北側のお屋敷3

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セント・チャールズ・ストリート北側のお屋敷4

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セント・チャールズ・ストリート北側のお屋敷5

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セント・チャールズ・ストリート北側のお屋敷6 アメリカの豊かさを示す建物が並ぶ

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ストリートカーの対向車

しばらく行くとナポレオン・アベニュー。この道を下ると昨夜行ったティピティーナスです。ここから先は昨夜移動のタクシーでも通ったけど、朝日に照らされた街並みは全然違って見えます。しばらく行くと、右手にロヨラ大学のキャンパスが、左手にオーデュポン公園が見えてきます。このあたりも高級住宅街で、アメリカの豊かさを目の当たりにするようです。

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Holly Name of Jesus Church

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ロヨラ大学

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オーデュポン公園

グーグル・マップで見るとプールを備えたお屋敷も多いみたいです。セント・チャールズ・アベニューがミシシッピ川の堤防にさしかかるちょっと手前で、電車は大きく右折してキャロルトン・ストリートを北上。終点のパーマー・パーク前、キャロルトン・クライボーンを目指します。このあたりには昨夜行ったメイプル・リーフ・バーなどライブ・ハウスも数件もあるリバー・ベンドと呼ばれる地域。学生を含めた若い世代に好まれそうな店も多いみたいです。

終点に到着し、数人の乗客はみんな降りてしまいましたが、自分はアフリカン・アメリカンの運転士にキャナル・ストリートに戻りたい旨告げて、「もう1ドル50セント」と言われたので、料金箱にお金を入れ出発を待ちます。帰路は、行きの反対側の窓から、ニューオーリンズの町並みをながめながら、のんびりと電車に揺られました。

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セント・チャールズ・ストリート南側のお屋敷1

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セント・チャールズ・ストリート南側のお屋敷2

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セント・チャールズ・ストリート南側のお屋敷3

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セント・チャールズ・ストリート南側のお屋敷4

中心市街地に近づくにつれ乗客が増え、座席は満席となりましたが、立っている人はちらほら。さすが日曜です。リー・サークルからはハワード・アベニューを1ブロック北上し、カロンデレット・ストリートを西に向かいます。もうすぐキャナル・ストリートに帰り着きます。片道約45分、1時間半で手軽にニューオーリンズ郊外の景色を楽しむことができました。時間はもう9時近く。前日と同じカフェ、ルビー・スリッパーで朝食、ルイジアナン・オムレットを頼みました。エビも入っててなかなかの美味さです。そして、一旦ホテルに戻って支度し、いよいよ最終日のフェスに出発です。

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ルビー・スリッパーのルイジアナン・オムレット

2017年ニューオーリンズ旅行記8 5月6日 Jon Cleary & Absolute Monster Gentlemen at Maple Leaf Bar

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Maple Leaf Bar 外観

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Jon Cleary & Absolute Monster Gentlemen

ティピティーナを出て、さて、ここからが問題の移動です。1キロ半ほど歩けばストリート・カーでも行けなくないけど、夜中の一人歩き、ストリート・カーは危険なので、タクシーを待つことにします。5分も待つうちに1台、フレンチ・クォーター方面からお客を運んできたタクシーが店先に停まりました。手をあげて乗り込み行き先を告げます。若いアフリカン・アメリカンのドライバーですが、彼は無口で挨拶のあとはあまりしゃべりませんでした。メイプル・リーフに着いたのは11時30分くらいだったでしょうか。まだ演奏がはじまってないといいな、と思いながら車を降りると、すでに中から音が聴こえてきます。入り口には「SOLD OUT」の張り紙。少し酔った感じの白人男性が中に入れてくれと頼んでいますが、若い白人のスタッフ二人がかたくなに断っています。そこへ自分がダウンロードして印刷したチケットを見せると入れてくれて、手の甲に再入場可能なようにスタンプを押されます。

この店は普通のショットガン・ハウスを改造したつくりで、ステージば道路に面している側。1階の3部屋程度をぶち抜いて細長い客席にしています。出入り口は二箇所ありますが、会場はぎっしり満員でステージに近い方からの出入りは不可能。後ろ側から入るけど、背の高い観客がたくさんで、ステージを十分見ることができません。ステージではおしゃれなスロー・ナンバー「Help Me Somebody」が演奏されています。大好きな曲なのでとってもうれしくなります。ビッグDは間奏で雰囲気十分の長いソロをプレイ。いいですねぇ。次のナンバーはミディアム・テンポで少しハネるリズムのニューオーリンズ・ファンク・ナンバー。レタスのナイジェル・ホールはメンバーの一員としてオルガンとコーラスをやってます。その次の曲はおしゃれなスロー・ブルーズ「Port Street Blues」です。それにしてもクリアリーさん、いい声ですねぇ。弾いているのはエレピですが、バンドのサウンドも極上でぐぐっと引き込まれます。エンディングにはバンドの演奏を止めて、ピアノソロだけの箇所もあります。ホント上手いし味があります。お客さんは満員ですが、バーに飲み物を買いに行ったり、トイレに行ったりして少しずつ回転するようで、徐々に会場の中程まで進んで来れました。続いての曲は、おしゃれなソウル風ナンバー。どことなくアラン・トゥーサン風です。続いてのナンバーはジョンの定番ミーターズ・カバー「Just Kiss it off My Baby」です。翌日本物が見られるのですが、彼らのバージョンも負けず劣らずかっこいいですね。一気にアドレナリンが出て興奮状態です。エンディングでは息の合ったストップ・タイムとアカペラも見せる彼ら。ナイジェルのオルガンも心地よいです。この曲で前半が終了。自分が入店してから40分くらいでした。

メンバーが休憩を告げてバックステージに立ち去るのですが、 ギターのビッグDはデカ過ぎるせいか、ステージの定位置に座ったままです。その巨体を見るだけでちょっと恐ろしいけど、ニコニコしていてかわいらしい顔をしています。プレーンな音のストラトのプレイはぴかいちですものね。若い白人女性のファンが親しげに話しかけていました。自分は、この日も朝から立ってライブを見ることが多かったので、さすがに疲れて会場両サイドにある板状のベンチに座っていると、隣に30代くらいの白人男性が座って来て話しかけてきました。なんと、オーストラリアのシドニーからジャズフェスに来たとのこと。奥さんと一緒だけれど、このライブには奥さんをホテルに置いて一人で来たみたいです。彼もシドニーでクリアリーのプレイを見てファンになったみたい。自分も福岡で彼の演奏を聞いたけど、全員揃ったバンドで見るのははじめてなので、とっても嬉しいということを伝えました。彼に表の物販を見て来ると告げて外に出ると、物販コーナーで見慣れないクリアリーのCDが売られていました。チッキー・ワー・ワーでのソロ・ライブ盤なので20ドルで購入。あわせてメイプル・リーフ・バーのTシャツも買いました。再入場し、さっきのところに戻ると、シドニーから来た彼の姿は消えていました。その後も見かけなかったので、奥さんから呼び出しがあったのかも知れません。バーなどで飲んでいたお客さんもだんだん戻ってきたので、自分もステージ近く、向かって左手のポジションを確保することができました。

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Jonとベーシスト

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カウベルを叩くJon

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メイプル・リーフのバー・カウンター

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Big D、Nigel、ドラマー

30分以上の休憩後、ステージにメンバーが戻ってきました。ジョンがピアノを少し弾いて、アカペラでサム・クックの有名曲、「Sooth Me」を歌いはじめると、後をついてメンバーが素敵なコーラスで応えます。そしてピアノを合図にバンドの演奏がはじまります。たまりませんね。2曲目はファンキーでブルージーなミディアムのナンバー。この曲もとっても気持ちいいです。間奏のビッグDのギターも決まっています。自分の右手にいる若い集団はジョイントを回しています。自分はこの地に迷い込んだ異邦人だけれども、素敵な音楽でこんなにもハッピーな気分になれるのです。3曲目に最新スタジオ・アルバム『Go Go Juice』から「Bringing Back the Home」が登場。出だしはバラードで、途中からリズミックになり「Jazz,Funk,Rhythm&Blues and Soul」というサビがえんえん繰り返されるところが印象的です。次の曲はおしゃれなミディアム・バラード。サビのところは「In The Moon」と聴こえます。この曲でも、間奏でビッグDのステキなギターソロを聞くことができました。続いてはストレートなブルーズ「Take My Love」…と、思ったのですが歌詞が違うようです。こういう曲でもアーシーな中にセンスの良さが漂ってきます。まさに、ニューオーリンズという「都会」の香りを纏ったバンドですね。ライブはだんだん佳境に入ってきます。次のナンバーでは、ジョンはカウベルでリズムを取りながら「Tipitina」を歌い始めます。もちろん会場からは大歓声。みんな心地よいリズムに身体をゆらせています。ジョンはカウベルを叩きながら歌い、間奏でおもむろに達者なピアノの腕前を披露。途中ピアノとドラムだけになるあたり、とってもスリリングでした。そして次はギターとベースの共演。息の合った二人のプレイに客席から歓声が上がります。ピアノがもどりしばしドラムとラテン的に展開、そしてストップタイムのあとは、ジョンの達者なニューオーリンズ・ピアノ・ソロで締めます。ホントに熱いプレイで大満足。続いてはおしゃれで静かなロッカバラードをクールに決めてくれます。この落差がたまりません。次もクールにミディアム・ブルーズ、「Way Down The Road」という歌詞が頻繁に出てきます。曲の途中からテンポが遅くなりスロー・ブルーズに。変幻自在のバンドですねぇ。そして『Go Go Juice』の冒頭のナンバー「Pump It Up」。コステロのナンバーではありません。レゲエのリズムに乗せて身体がゆれます。そしてラスト・ナンバーは「Mo Hipper」。熱いファンク・ナンバーに会場も大きく盛り上がり8分近い熱演が繰り広げられ、後半には客席とのコール&レスポンスも飛び出します。身体はくたくたなのですが、まだまだ聴きたい、終わらないで欲しいと心底思いました。ホント至福の時間でした。時間は深夜2時を過ぎています。休憩が少々長かったけど、本当にあっという間の2時間半でした。

このあと、午前3時から、スティール・ギターのルーズベルト・コリアーやナイジェル・ホールたちのセッションがあって、別料金を払わずに見れるのだけれど、さすがにくたびたのでタクシーでホテルに帰ることにしました。今回の旅で最も内容の濃い一日が終わりました。

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Jon

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Jon Cleary & Absolute Monster Gentlemen

2017年ニューオーリンズ旅行記7 5月6日 The North Mississippi Allstars at Tipitina's

この日は風もなくなり、いい天気になり結構日焼けしたと思います。ホテルに帰ってシャワーを浴び、夕食にでかけることにしました。キャナル・ストリートをわたってすぐのところにあるジミーズに行き、ビールとハンバーガーを頼みました。なかなか美味しいし、つけあわせのボテトもたくさんで十分お腹がいっぱいになりました。小さなお店ですが、客席はジャズフェス帰りのお客さんでいっぱいです。さて、夜のライブに出発です。この日はホテルのタクシー乗場から乗車。配車係に5ドルのチップをわたします。この日のドライバーは若いアフリカン・アメリカン。もちろんティピティーナは知っていました。車内ではレゲエやなんかをかけています。エチオピアの曲に切り替わって、彼としばし「コブシ」談議。彼は「コブシ」という日本語を知っていました。音楽やっているかどうか聞けばよかったな。この日はノース・ミシシッピ・オールスターズ。昨日と同じ9時開演となっていて、昨日のオープニング・アクトが10時30分頃から演奏がはじまったので、余裕をかまして9時40分くらいに着くように行ったら、すでにオープニングのデスロンデスが演奏をはじめてました。この日はオーブニングとあってか、ドラマーはセットを組まず、スネアと最小限の打楽器でやってました。彼らのデビューCDは少々ライ・クーダーの香りのするブルージーな演奏も含まれていたので、そのあたりを期待していたのですが、ペダル・スティールの音色なども含め、けっこう普通のカントリーだと感じてしまいました。演奏はとっても心地いいんですよ。こちらが勝手な期待をしたもので、ちょっと印象に落差があったのです。

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The Deslondes

夜10時をまわって、いよいよ初めて見るノース・ミシシッピ・オールスターズの登場です。このバンドはそもそもジム・ディッキンソンの息子達、ルーサー(ギター・ヴォーカル)と、コーディ(ドラム・ヴォーカル)、そしてベーシストのクリス・チューによる3人組だったのですが、2年ほど前に長年一緒だったクリスが脱退してしまいました。今回のライブでは白人のベーシストが入っていましたが、サポート・メンバーと思います。ルーサーは一時期ブラック・クロウズにも参加しておりました。この日のライブでは、細身のアフリカン・アメリカンのドラマー、ブレイデイ・ブレイドがゲスト参加。頭3曲は彼が叩きます。

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The North Mississippi Allstars

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Cody Dickinson

1曲目はディッキンソン兄弟のツイン・ギターが心地よいインストナンバー。続いては、コーディが達者にギターを弾きながら歌う曲が続きます。次もコーディが歌う「All Night Long」でした。コーディ、ドラムだけでなく、ギターも歌も上手いですね。そのいい喉を披露したあと、ブレイディに変わって彼がドラム・セットに座ります。曲はアプテンポの「Lordy Lprd」。ルーサーがボトルネックとフィガリングをとりまぜて変幻自在にギターを弾き、歌いながら会場を煽っていきます。こぶしをあげて応える観客も多数。インストなどもはさみながら、ブルージーな演奏が続きます。「K.C.Jones」ではイントロのエレピをコーディが弾き、バンドとともにドラムを叩きはじめると、リードボーカルもとるという活躍ぶりです。もちろん歌はルーサーの方が圧倒的に多いけど、こうして時折聴かせる彼の声もなかなかのものです。おっと、間奏ではバスドラを踏みながら再びエレピヘ。すごいテクですよねぇ。彼らの「K.C.Jones」とってもよいです。トラディショナルなブルーズのメロディを思い起こさせる「Back Back Train」も、バンドが一体になって列車の音を再現したりしてすごくかっこよかったし、フィードバックのサウンドを生かした「Long Haired Doney」とかも渋かったです。ルーツへの敬意をしっかり根っこにおきながら、ときおりハードに、アバンギャルドに展開する彼らの音楽には、父ジム・デッキンソンやライ・クーダー、オールマン・ブラザーズ達のDNAがしっかり刻み込まれていると感じました。

昨日と同じく、ステージ前付近左手で楽しんでおりまして、隣に立っていたお兄さんと曲が終わるごとにイェーッて盛り上がっていたのですが、11時に近づいて次のライブハウスに行くため、後ろ髪を引かれながら店を出ることにします。二日続きで聖地ティピティーナを訪れることができて本当によかったと思います。

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Luther Dickinson

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The North Mississippi Allstars

2017年ニューオーリンズ旅行記6 5月6日 ジャズフェス・セカンド・ウィークエンド3日目

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ゴスペル・テント全景

The Wimberly Family Gospel Singers
The Wimberly Family Gospel Singers

この日も6時間程度の睡眠がとれ、気力は十分です。前日はちゃんとした夕食が摂れず、寝る前にドラッグ・ストアでできあいのサンドイッチですませたので、近所の人気のカフェ、ルビー・スリッパーに朝食を食べに行くことにしました。5年前来たときも、お客さんであふれているのを見て行ってみたかったのですが、チェーン店になってるようで、二日目朝に散歩に行ったマリニー地区にも銀行の建物か何かを利用したお店がありました。さて、この日はちょっと値ははるのですが、サザーン・ブレックファストを注文。グリッツにベーコン、卵は目玉焼きにしてもらいました。パンにつけるココナッツ・バターもとてもおいしかった。店員さんも愛想良く前回も行けばよかったと思いました。

この日も朝10時代のバスに乗って出発です。3日間同じボランティアさん。この日は前日と違って初日のように冗談を交え笑いをとりながら町の解説をされていました。天気は快晴になり前日と違って風もありません。きっと暑い1日になるでしょう。そっちの意味でも体力は重要ですね。この日もゴスペルテントに行って、スタッフさん達のサウンドチェックを聴きます。そして、そのまま最初の出演者、ザ・ウィンブリー・ファミリー・ゴスペル・シンガーズの登場を待ちます。前回はみなさん白いシャツ姿でしたが、今回は3人がジャケットを羽織っている以外はジャージのようなラフな格好にかわっています。しかし、歌声はかわりません。あれから5年の歳月が流れましたが、選曲も同じような感じ。いつも教会で信者を熱狂させているときと変わらないステージなのでしょう。前回もやったサム・クックの「Change Is Gonna Come」は今回も圧巻でした。

彼らの演奏が終わったあと、競馬場の建物に小用にいったついでに建物の中庭にあるラグニアップ・ステージをのぞいてみます。グルッポ・センセーション・NOLAというおそらく地元のラテン・バンドが演奏しています。技術的にはそれほどではないのでしょうけど、ダンサー(と思えば司会者だった)も入れて楽しそうに演奏していました。音楽っていいなぁ、単に上手い下手じゃないよねって思わせてくれます。朝しっかり食べたので、昼ごはんはもう少し後にしてアキュラ・ステージでビック・サム・ファンキー・ネイションのセッティングを待ちます。空を見上げるとはるか上空で小型ジェット機が飛行機雲で何やら描いてます。しばらくすると「ユニティ」という文字が浮かび上がります。こんなパフォーマンス、5年前はなかったぞ。少しずつ色んなものが変わっていきます。

Grupo Sensación NOLA
Grupo Sensacion NOLA

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空に浮かび上がるUNITYの飛行機雲

前回来た時は、ビッグ・サム・ウィリアムスはオバマ支援コンサートのセッションで目にしただけ。ビッグ・サムはダーティ・ダズン・ブラスバンド出身のトロンボーン・プレイヤー。その名のとおり大きな身体で迫力ある演奏を聴かせます。彼らの音楽性はその名のとおりファンク。彼らの曲は全然持ってないけど、ノリノリのファンクで自然と身体が動きます。1曲目は打ち込みを交えた短い導入ナンバー。続いて彼らのテーマ的スピードファンクの「Big Sam's Blues」ホーンは2管、トロンボーンとトランペット、それにドラム、ギター、キーボード、ベースを従えた6人編成です。途中からチョッパーベースが入ったり、フュージョンっぽい展開になったりと、とってもかっこよかったけど10分以上の長さでした。続く「Peace Love/People People」は前曲よりやや重いファンク。メッセージ性は明確で「Peace, Love and Understanding」という歌詞が繰り返されます。間奏はトロンボーン→ギターの順にいい感じで決めてくれます。まだまだ聴きたかったのですが、この曲が終わったあたりで次の会場へと足を進めました。空には誰かからの依頼か、飛行機雲で「FRANK」の文字が浮かんでいました。雲文字は風に流されて遠ざかりだんだん形がくずれていきます。

Big Sam’s Funky Nation
Big Sam’s Funky Nation

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トロンボーンを吹くビッグ・サム

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空にFRANKの文字

この日は短い時間だけど、フェイ・ドー・ドー・ステージを何度かのぞくことにします。まず1回目は、サヴォイ・ファミリー・ケイジャン・バンド。ライ・クーダーが音楽監督をした『Southern Comfort』という映画にも演奏シーンがあり、中心人物のアコーディオン奏者マーク・サヴォイが出演しておりました。1980年代中頃の映画だから、あれからもう30年もたつんですね。そしてアーフーリー・レコード50周年記念のライブ・アルバムにマーク&アン・サヴォイの演奏が収録されておりました。会場につくとフィドルがフィーチャーされた軽快なナンバーをやっておりました。とっても素朴な演奏で、アンの方は古いギブソンのピック・ギターを弾いております。キーボードやフィドル、ベース、ドラムスもいますが最小限のサポートです。この時のMCはアンがやっていました。続いてはダンスをしやすいワルツでアンが歌います。とってもいい感じです。ほんとはのんびり聴いていたいのですが、見たいグループが目白押しで、となりのコンゴ・スクエア・ステージに移動します。

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フェイ・ドー・ドー・ステージ

Savoy Family Cajun Band
Savoy Family Cajun Band

ステージに近づけば、スーザフォンの重い響きとリズム隊によるファンキーな演奏が聴こえてきます。さらに近づくとほかのホーンのサウンドも聴こえてきます。今回見た唯一のブラスバンド、ソウル・レブルです。客席はけっこう人で埋まっていて、通路に近い上手サイドから見たのですが、音の分離が今ひとつでした。正面から見たらきっといい音なんだろうな。次の曲は少しスローなマイナー・キーのナンバー。ラップも入ってとってもいい感じです。次の曲もマイナーですが、よりファンキーでアップテンポ。たくさんのメンバーが太い歌声を聴かせてくれます。スーザフォンが大活躍ですが、途中で他のステージも見たくてまたまた移動です。

The Soul Rebels
The Soul Rebels

次はブルーズ・テントに移動して少しだけジョン・ムーニー&ブルージアナを見るつもり。すでに演奏ははじまっています。ギター&ボーカルのジョンを中心に、ドラム、パーカッション、ベース、オルガンの5人編成。スキン・ヘッドのジョン・ムーニーはストラトでバリバリとボトルネックを滑らせています。どストライクなサウンド。何も文句はありません。ノリのいいナンバーで、なかなかいい喉も聴かせてくれます。今のが1曲目だったのかな。次はボトルネックからはじまるどブルース。彼のギタープレイはエルモア・ジェイムスやライ・クーダーからも影響を受けていそうです。間奏はギターからオルガンへとソロをつなぎ、またギターに戻ってきます。いい感じです。次はアップテンポのブルーズ、間奏とエンディングでボトルネック・ギターが炸裂します。まだまだ聴いていたいのはやまやまですが、このへんでダンプスタファンクを見るためにアキュラ・ステージに移動です。

John Mooney & Bluesiana
John Mooney & Bluesiana

アキュラ・ステージではバンドがサウンドチェック中です。彼らは前回来たときオバマ支援コンサートで、3〜4曲しか聴けなかったので、今回フルステージを見れるのを楽しみにしていました。キーボードとボーカルのアイヴァン・ネヴィル(アーロンの息子)、ギターのイアン・ネヴィル(アートの息子)、ネヴィル・ブラザーズの歴代ベーシストのトニー・ホール(ギターも担当)とニック・ダニエルの二人が役割の異なる二本のベース。そして、前回見たときの女性ドラマーのニッキー・グラスパーは脱退し、新加入のドラマーを加えての5人の中核メンバーにホーンズがゲスト参加です。まさにネヴィルズの次世代バンド。メッセージ性も継承しています。1曲目「Buddy Miles」、2曲目「Just Us」とかっこいいファンク・ナンバーをたたみかけます。ボーカルもアイヴァン、ニック、トニーが順番にまわしていく感じ。渋上手い歌声も演奏も文句無し。自然と身体が動きます。3曲目は少し明るめの「Let's Get At it」です。4曲目は新加入のドラマーのドラム・ソロからはじまるインストのファンク・ナンバー「Dumpstamental」。このあたりはミーターズの正統な継承者の面目躍如といったところ。文句無しのグルーヴです。重いベースはニックが担当し、シンセ・ベースはトニーが弾いていて、いいコンビネーション。それにアイヴァンが宇宙的なシンセでソロを弾いたりします。続く「Sounds」は歌ものに戻りアイヴァンがいい喉を聴かせます。このバンド、マイナーキーの曲の比率がやや高いようで、この曲もそうです。マイナーで激しい演奏になるとハード・ロックに近づいていくのですが、もともとミーターズはブラック・ロックの元祖的な立ち位置。それも悪くないと思います。そして6曲目の「Do U」はトニーのベースによるリフが印象的なやはりマイナーのファンク。ホーンもいい味を出し、ボーカルもアイヴァンとニックが分け合っています。続く「Truth'll Set You Free」はゲストの女性ボーカリストが歌います。なかなか迫力があるし、歌も上手いです。続く「Street Parade」はホーンセクションが参加し、タイトルどおり賑やかなニューオーリンズ・スタイルの演奏を繰り広げます。ミーターズで言えば「They All Ask'd For You」路線といったところでしょうか。こういう曲もレパートリーに入れるようになり、器が大きくなった感じがします。そして、何とニッキー・グラスパーがゲスト・ボーカリストとして登場。彼女も参加したアルバムに収録されている「Dancin' Tooth」が演奏されます。歌はトニーやニックと分け合ったり重なったりです。彼らのステージのラストナンバーは代表作のひとつ「Put it in the Dumpsta」。満員の会場を巻き込んでファンキーに決めてくれました。あっという間の1時間。まだまだ聴きたいぞ、と思わせるプレイに大満足です。

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Dumpstaphunk Tony Hall&Ivan Neville

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Dumpstaphunk Nick Daniels

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Dumpstaphunk Ian Neville

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Dumpstaphunk ゲスト・ボーカリスト

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Dumpstaphunk  ゲストに旧メンバーのニッキーを迎えて

さて、同じ会場では続いて大御所アーマ・トーマスが登場しますが、セットチェンジの間に、フェイ・ドー・ドー・ステージでマイケル・デューセのボーソレイユを少しだけ見ることにします。この日ケイジャン2組目です。会場についたらすでに演奏ははじまっていました。フィドルとボーカルのマイケル・デューセ、ギターはデヴィッド・デューセの二人のフロントにドラムとベースのリズム隊。ケイジャンにつきものの鉦のような楽器の人もいます。タイトで軽快なドラムのリズムに乗って気持ちいい音の波に身体をゆらせます。
デヴィッドのマーティンのOOOタイプのギター・ソロもとってもかっこいいです。燻し銀のプレイですね。まだまだ見たいけど、ここでも2曲ほどで移動です。途中、屋台のジャンバラヤで腹ごしらえ。なかなかいけます。

BeauSoleil avec Michael Doucet
BeauSoleil avec Michael Doucet

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途中で出会ったマルディ・グラ・インディアン・パレードの少女

アキュラ・ステージに戻るとサウンド・チェックがまさに終わろうとするところ。さすが土曜日とあって大群衆がアーマの出演を心待ちにしています。さて、MCの紹介のあと演奏がはじまります。マイナーキーのややアップテンポなナンバー「If You Want it Come And Get it」です。アーマは歌いながら先導者にみちびかれてゆっくりとステージに登場。大物の貫禄十分です。2曲目はエレピの伴奏が印象的な静かなバラード「I Count The Teardrops」です。ホントいい曲で聞き惚れてしまいました。次はガラッと雰囲気を変えファンキーなナンバーを演奏。そして再びバラードになってヴァン・モリソンの「Crazy Love」がはじまります。たまらないですねぇ。彼女のソウルフルな歌声でこの曲が聴けるとは格別です。次はアップテンポのブルーズでアーマの定番曲「You Can Have My Hasband」です。ホーンセクションも大活躍で存分に楽しませてもらいました。そして18番「It's Rainning」がはじまります。やはりアーマといえばこの曲ですね。前回ここへ来たときも聴くことができましたが、何度聴いても飽きることのない名曲です。次はちょっと賑やかなニューオーリンズ・スタイルのホーンセクションがフューチャーされたナンバー「I Done Got Over」です。曲が途中まで進んだところで、曲が止まりアーマがセカンドラインのリズムに乗せてハンカチを振るよう観客に促します。そしてメドレーで曲は「Iko Iko」そして「Hey! Pocky Way」へとつながっていきます。こういう演奏が10人編成のバンドで楽しめるのはニューオーリンズならでは。このあたりがアーマのステージ最大の山場だったと思います。続いては歪んだギターをフューチャーしたロック・ナンバーノリノリでかっこいいマイナー・キーの曲「Heart of Steel」です。続いては初期の代表曲のひとつ「Wish Someone Would Care」を聴くことができました。すばらしいクラシックR&B。アーマ節炸裂です。曲が終わるとドラムが軽快なビートを叩き出し、ころがるピアノがその上に重なり、「Sing It」がはじまります。アーマとマーシャ・ボール、トレイシー・ネルソンの3人のユニットによる同名アルバムのタイトル曲。大好きなナンバーに心が弾みます。けれど、この曲アーマのセットのラストナンバー。本当に楽しい時間はすぐに終わってしまいます。ソウル・クィーン・オブ・ニューオーリンズの歌声に大満足しました。

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Irma Thomas

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空にJFKIDの文字

この場所でしばらく待っていればスティービー・ワンダーを見ることができるのですが、それよりブルーズ・テントでヘンリー・バトラー&ジャンバラヤ・バンドを聴きたいので、そちらに移動することにしました。ヘンリー・バトラーは前回来た時、ティピティーナでのライブでドクター・ジョンの前歌で出演したのですが、会場に着いたとき、ちょうど彼の演奏が終わる頃で全然見ることができませんでした。それで、今回彼のステージが見れるのを楽しみにしておりました。タイムテーブルでは、アーマのステージが終わる頃にはヘンリーのステージははじまっているはずなのですが、ブルース・テントに着いてしばらくしてもライブのはじまる様子はありません。しかし、人気のようでほとんど席は埋まっています。

1曲目「Iko Iko」ついさっきアーマの歌で聴いたばかりなのに、今度はヘンリーの達者なピアノと歌で聴かせてもらえるとは。さすがニューオーリンズです。2曲目頭は長い長いピアノソロ。歌とともにバンドが走りはじめるアッポテンポのブルーズ。ヘンリーの深みと暖かみのあるいい声とあいまって心地よい演奏です。3曲目は典型的なシャッフルのブルーズ。続いてはミディアム・ブルーズ。4曲目はクラシックっぽい流麗なピアノ・ソロから、リズム隊をフューチャーしたジャムへと流れ、セカンド・ラインのリズムの渋い歌ものへと展開します。ギターをフューチャーした間奏の後はドラム・ソロ。見事な演奏。この曲は「Ya-Ya」のような気がします。その次もピアノソロからはじまりますが、今度は美しいバラードかと思わせておいてアップテンポの「Big Chief」でした。ホントにすごいピアノさばき。ニューオーリンズの伝統にどっぷりとはまりながら、ドクター・ジョン達とはまた違った個性が感じられる演奏でした。けれど、きっと予定の1時間よりはずいぶん短い演奏だったと思います。前までのミュージシャンの「遅れ」を調整させられたかもですね。

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Henry Butler

さて、ちょうどアキュラ・ステージではスティービー・ワンダーが演奏している模様。チラッとでも見てみたいとそちら方向に足を進めますが、ステージが見える箇所にあと数十メートルというところで、超満員足止め状態。人の流れも完全渋滞です。ビジョンでもスティービーの勇姿は拝めませんが、耳には「Master Blaster」が聴こえてきます。まぁ少しだけでも歌が聴けたのをよしとして、別のステージに歩を進めます。

2年ほど前だったか、ティン・メンのアレックス・マクマートリーが来日しておりまして、ライブは関東中心だったので行けませんでしたが、彼のソロCDを購入し気に入って聴いております。今回ぜひアレックスを見たかったのですが、ジャズフェスでは前半に出演。後半のアフターダークでも1箇所でファンキー・ミーターズとかぶったので、今回はあきらめておりましたが、この日エコノミー・テントでのデビー・デイヴィス&メズモライザーズの一員として出演することを知り見に行くことにしました。デビー・デイヴィスさんはウクレレを弾きながら、ちょっとノスタルジックなナンバーを歌う女性シンガー。自分がテントに着いた時は、軽快なピアノにのせてマイナーキーのナンバーが演奏されておりました。ベースのかわりにスーザフォン、ドラムレスでギターのアレックスを含めて4人編成です。続いてはじまったのは、スタンダードの「Lullaby of Birdland」です。ファースト・ソロはアレックスのギター、セカンド・ソロはピアノです。アレックスのギターいいですねぇ。次はランディ・ニューマンの大好きなナンバー「Simon Smith and His Amazing Dancing Bear」でした。この曲ではソロはスーザフォンが担当。とってもいい感じです。この曲も古いジャズの雰囲気を感じさせてくれます。次はホーギー・カーマイケルの「Skylark」です。デビーさん、とっても情感豊かでいい声のシンガーですね。この曲で再びアレックスのギター・プレイを楽しむことができました。ダブルストップを交えた流れるような長いソロはとっても気持ちよかった。ここで、アレックスとスーザ奏者が退場。ピアノだけをバックに軽快なナンバー。この曲もジャズをよくご存知の方には知られた曲かもしれません。まだ聴きたい思いはあったけれど、このあたりで別のステージに移動することにします。ここでのアレックスのプレイを聴いて思ったことがあります。それは、彼はブルージーな色合いを持つシンガー・ソングライターですが、ジャズのスタンダード曲で見事なソロを弾きこなしていました。この街で音楽を生業にしていると、クラシックはいざ知らず、他のジャンルでは「専門のことしたできない」というのは通用しない、ということです。カーミット・ラフィンのバンドが、ジャズっぽい演奏を続けていたと思ったら、ノリノリのファンクを演奏したりとか、ルーツ・ミュージックの中で色んなクロスオーバーが自然とあって、一人のミュージシャンが、ジャズ、ブルーズ、ゴスペル、カントリー、フォークからケイジャン、ザディコまで、色んな音楽が自然と演奏できるようになるか、そうでないミュージシャンは淘汰されていくんだなぁ(もちろん、それぞれの専門がありますが)という風に感じました。

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Debbie Davis & the Mesmerizers

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Alex McMurray

この日のフェイ・ドー・ドー・ステージのトリはロッキン・ドゥプシー・ジュニア&ザディコ・ツイスターズ。すでに演奏ははじまっていて、ジェイムス・ブラウンのファンク・ナンバーを熱く演奏してます。しかも、そこそこお年だと思うのですが、スプリットとかやって会場を大いに沸かせています。このステージはかなり規模が小さい方なのですが、多くの聴衆が集まっています。彼のCDも1枚持ってますがライブの方が断然いいですね。なんといっても楽しさあふれるステージです。バンドの演奏もメチャ上手というわけではないですが、タイトでいいです。ホーンも加えたフル・バンドに当然アコーディオン奏者もいます。続いてはファンクからリズムが一転イナたくなって、ザディコのスピード・ナンバー「Show Me To Zydeco」。この曲では、ラブボードをかきむしるように演奏しながら、ステージをところ狭しと駆けまわって盛り上げていきます。口癖は「Somebody Scream!!」と客をあおること。多くの観客が楽しそうに応えています。ザディコ・タイムになってから3曲目にファッツ・ドミノの「Walkin' To New Orleans」をカバー。客席も大合唱です。アップテンポの「Turn Up The Zydeco」も大盛り上がりです。途中、向こうのステージではスティービー・ワンダーが、こっちのステージではスヌープ・ドッグが演奏してるけど、俺たちはここでザディコをやるぜ、みたいなMCがあったり、前年になくなったバックウィート・ザディコを讃えるMCがあったりもしました。そのあと「YA! YA!」をプレイ。ほんと楽しい演奏です。間奏でソロをとるアコーディオンは、後半でワウをかけたりしてます。けっこうベタベタの選曲だったりしますが、そのあたりのB級感も含めてとっても好感が持てます。 オーディエンスとのコール&レスポンスもたっくさんあって、サービス精神がとにかく旺盛。まだまだ演奏は続きそうですが、夜のライブに備えてこのあたりでフェアグラウンドを離れることにします。強者揃いの土曜日のフェスのラスト。彼らの演奏を見れて本当によかったです。

Rockin’ Dopsie, Jr
Rockin’ Dopsie, Jr

Rockin’ Dopsie, Jrrabboard
Rockin’ Dopsie, Jr

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Rockin’ Dopsie, Jr

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空にI LOVE NOLA の文字

2017年ニューオーリンズ旅行記5 5月5日 Funky Meters At Tipitina's

この日は19時半頃ホテルに帰り着き、シャワーを浴びてティピティーナにファンキー・ミーターズを見に行きます。この日は、ダーティ・ダズンやハニー・アイランド・スワンプ・バンド、ジョン・パパ・グロウ・バンド、アレックス・マクマートリーのユニットなど見たいライブがいくつかあって迷いましたが、やはりもう何度も見ることができないであろう、アート・ネヴィルの勇姿をしっかり見ようとこのライブを選びました。ホテルでタクシーを呼んでもらってもいいのだけれど、配車係へのチップを節約するため通りを歩いてみると流しのタクシーがつかまりました。今回は中年の白人のドライバーです。「ティピティーナにお願いします。」といったところ、彼はティピティーナを知りませんでした。それで、「トピチョラス、ナポレオン」と通りの名前を言ったら、その方向に車を走らせてくれました。「日本から来たのか。クレージーだな。」「今日のチャージはいくらだ? 50ドル? クレージーだ。」なんて最初言ってましたが、道すがら、ボスニアで生まれ育ったが、生活のためにカトリーナの年(2005年)にアメリカに来たこと、英語はそれから覚えたこと、最初は兄弟とヒューストンに住んでいたが、ニューオーリンズに移ったこと、でも、ニューオーリンズは6月〜9月は暑くて観光客が激減するので、ヒューストンでタクシー・ドライバーをすることなど、身の上話を語ってくれました。その上、奥さんがヒューストンのカジノにはまって借金をつくってしまったこと、それにひきかえ、息子と娘はとてもいい子達で、息子さんは仕事をしながら、アマチュア・バンドでフレンチクォーターのお店に出ていることなども語ってくれました。彼も自分もネイティブでないので、意思の疎通がけっこううまくいったと思います。

さて、開演時間の9時前にひさびさのティピティーナに到着です。この日、前回のときは人が多すぎて気づかなかったプロフェッサー・ロングヘア(フェス)の像もしっかりカメラに収めることができました。

fes
プロフェッサー・ロングヘアの胸像

tipinside
店内

まだお客さんはまばらで、左手最前方で観ることができました。5年前にここでドクター・ジョンを見たとき、開演遅れるだろうと予想して10時頃行ったら、すでにオープニングのヘンリー・バトラーが終わりかけていたので、今回は定時に着くようにやってきたのですが、なかなかはじまりません。そのうち、活発な若い女性から話しかけられます。彼女は旦那さんとコロラドから来たと言ってました。とってもコミュニケーション好きのようで、まわりのお客さんに次々と声をかけていました。そういえば、前回ドクター・ジョンをここで見たときもコロラド出身の女性に話しかけられたことを思い出しました。10時半をまわったころ、ステージにオープニング・アクトの7come11が登場します。この時間ともなると会場はかなり混雑してます。チケットはソールドアウトだったはず。このグループ、白人キーボードとアフリカン・アメリカンのドラムの二人組、二人とも超凄腕なのですが、キーボードにはたまげました。足ベースを組み、トレモロアームのついたキーボード(オルガン)で、ベース、リズム、メロディの一人三役。しかも、いいところでアーミングを入れ、ギターみたいに聴かせます。こんな人はじめて見ました。すごいです。曲も自分の好きなファンキー・ジャズ・タイプ。とっても気に入りました。こういうタイプの曲にありがちで1曲が長いのですが、あっという間に時間がたちました。曲数は4〜5曲といったところでしょうか。40分ほどのステージが終わりセットチェンジ、いよいよファンキー・ミーターズの登場です。

7comes11
7come11

ドクター・ジョンの時の例にならって後に別のレイトショーも控えているし、12時頃にはステージは終わると踏んでいたのですが、ファンキー・ミーターズの登場は11時40分。これは終演はかなり遅くなりそうと腹を決めました。舞台転換中にサイドの出入り口からアートが登場。スタッフにかかえられてオルガン席にのぼります。コロラドから来た旦那さんのほうが「Living Legend!!」と興奮しておりました。ドラムは初日のランニング・パードナーズのメンバーでもあったテレンス・ヒューストン、ギターはこの日黒衣に包まれたブライアン・ストルツ、そしてベースのジョージ・ポーターは自身のアルバムデザインの黒いTシャツにジーンズと普段着。オルガンの前にはメガネにハットのアーティです。2日後には本家も見れますが、ブライアンのギターのファンだし、このセットでもとっても楽しみです。

funkymeters&fess
ファンキー・ミーターズとプロフェッサー・ロングヘアの肖像

1曲目からアーティの18番「Ain't No Use」でスタート。いきなり10分近い演奏で後半のジャムはとっても力が入っています。2曲目も定番曲「Funky Miracle」。この曲ではストップ・タイムで短いフレーズまわしがありますが、アーティが遅れて「空白」になることもあります。でも、そんなことは問題ではありません。二度の脳梗塞を経て78歳になり、足元もおぼつかなくなった今も、まさに生きた伝説としてステージに立ってくれることだけでもすばらしいのにジャム部分では十分なソロを奏でてくれます。

art&george
アート・ネヴィルとジョージ・ポーターJr.

なんと曲はそのままブライアンの歌うディランの「Rainy Day Woman#12&35」につながっていきます。ファンキーなアレンジでめちゃめちゃかっこいいです。さらに切れ目無く「Cordova」が演奏されます。

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アンコールでグレッチを弾くブライアン

ここで曲を一旦切り拍手が巻き起こったあと、軽快なリズムから「Soul Island」がはじまります。このトロピカルな感じがなんともいえません。曲の終盤、手数の多いテレンスのドラム・ソロ状態に突入。前任のラッセル・バティステJr.のドラムも好きでしたが、テレンスもいいですよねぇ。曲はそのまま代表曲のひとつ「Africa」に突入です。たまりません。このときすでに時間は0時を結構すぎていて、昼夜立ちっぱなしで足がくたくた状態だったのですが、演奏の素晴らしさにその痛みもしばし忘れておりました。曲の後半ジョージの太いベース・ソロ。そして、なんと曲はバディ・マイルズとジミヘンでおなじみの「Them Changes」。ブライアンが歌とワウワウをかけたギターで大活躍です。そして「Cissy Pickup」とタイトルのついた導入曲をはさんで超有名曲「Cissy Strut」の登場です。会場のボルテージもぐんぐん上がっています。曲は切れ目なく、アーティの歌につながります。おやっ? これはアラン・トゥーサンの「Get Out My Life Woman」だ。ファンキー・ミーターズはこんな曲もカバーしていたのですね。

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テレンス・ヒューストン

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アーティとブライアン

アーティの歌が終わると曲はそのまま「Keep On Marching」へ、そして90年代のライブ盤同様「Love Slip Up On Ya'」に続いていきます。最高です。さらに切れ目なく、耳馴染みのあるフレーズへと続き、会場から「Fiyo〜」と声が上がります。そして、どことなくリー・スクラーに似た風貌のギタリスト、ライス・アル・サーディステージさんがに上がりテレキャスターでセッション参加です。

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ライス・アル・サーディステージを加えセッション

最初、アーティが歌い始めますが、「in New Orleans」の後の歌詞を失念したみたい。ジョージが少し下を向いて苦笑して自分で歌い直します。でも、2番はきっちり自分で歌っていましたよ。後半は当然ジャム、ギター二本がからみあう極上のセッションでした。続く「Funkify Your Life」では、さらに7come11の鍵盤奏者もクラヴィネットで参加して6人編成でのど迫力の演奏となりました。エンディングは迫力のテレンスによるドラムソロ、ジョージが吠え、「Doragon」の1フレーズで本編終了です。メンバー紹介のあと、もう1曲のアンコールは「Cabedge Alley」〜「Tipitina」のメドレー。アーティが歌ってくれます。この曲ではブライアンは今までのストラトではなく白いグレッチのフルアコを弾いていましたが、こちらもいい音してました。時間はすでに深夜1時を過ぎています。同じ会場で知り合った日本人の青年を誘って二人でタクシーを拾いホテルに帰りました。

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7come11の鍵盤奏者もサポート

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2017年ニューオーリンズ旅行記4 5月5日 ジャズフェス・セカンド・ウィークエンド2日目

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朝日に映えるキャナル・プレイスとミシシッピ川

openbus
前回の旅では見かけなかったオープンタイプの二階建て観光バス

schoolbus
今回もスクールバス利用のシャトルバス

この日は朝8時30分過ぎまで熟睡できました。5時間30分は眠れたことになります。部屋に備え付けのサーバーで、やはり備え付けのスタバのコーヒーを沸かします。テレビで天気予報やニュースを見て、10時少し前にはホテルの真下のシャトルバス乗場に並びました。スタッフにもお客さんにも昨日を同じ顔を見かけました。解説のボランティアの方も昨日と同じです。客の顔を見回して昨日と同じ客が多いことに気づいたようで、解説は省略したみたいです。天気は快晴。風もあってよい日和です。

入場ゲートに並んでいると、ジェンティリー・ステージのトップバッター、モーテル・レイディオのサウンド・チェック・リハーサルが聴こえてきます。曲はまるでジャクソン・ブラウンみたいで、少し見てみたい気持ちになりましたが、別にジャクソンのそっくりさんを見に来たわけではないので、まずゴスペル・テントまでてくてく歩いて行きます。ゴスペル・テントでは本番前に裏方のみなさんによるサウンド・チェックが行われるのが恒例ですが、裏方の方々はたいてい当日や別の日に出演したクワイヤーのディレクターだったりするので、このサウンド・チェックがなかなか「聴かせる」と評判です。この日は「This Little Light of Mine」が演奏され、続いて、一人のディレクターが「説教」をはじめ、そのままバラードに移っていきます。5年前、亡くなった連れ合いのマルコと一緒にこの場所でゴスペルを聴いたことを思い出し、しばしはんみりした気持ちに浸ります。

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ゴスペル・テントのサウンド・チェック

この日はトップバッターで強くそそるグルーブはなかったので、のんびり座ってニューオーリンズ・スタイルのジャズでも聴こうと、エコノミー・ホール・ステージに移動。ルイス・フォード&ヒズ・ニューオーリンズ・フレイヤーズを見ることにします。クラリネット、トランペット、トロンボーンの三管がフロントで、ピアノ、ベース、ドラムスが伴奏するオーソドックスなスタイルで古き良きニューオーリンズ・ジャズをプレイします。途中「You Are My Sunshine」をお客さんに歌わせて客席と一体感をかもしだそうとするのですが、この曲は今ひとつめりはりのない演奏でノリきることはできませんでしたが、他の曲はさすがの水準のプレイでニューオーリンズにやって来た実感をかみしめることができました。そのあと、ブルーズ・テントに移動。アルヴィン・ヤングブラッド・ハーツのロッキン・ブルーズなステージを少々楽しみました。途中でテンガロンの白人ミュージシャンが登場し、「6 Days On The Road」を歌っておりました。この日のブランチはマフレッタ。ディケーター・ストリート沿いの店が本家らしいけど、ジャズフェスの屋台のもけっこういけました。チーズとベーコンがなんとも美味でした。

Louis Ford and His New Orleans Flairs2
Louis Ford and His New Orleans Flairs

Alvin Younblood Hart
Alvin Youngblood Hart

次は、ジェンティリー・ステージに出演するスゥイート・クルードを見に行きます。全然知らないバンドでしたが、このフェスを見に行くことが決まって、フェスのホームページで出演ミュージシャンのプロフィールとかを見ていて目にとまったグループです。彼らのオフィシャル・ページには「ドラム・ポップ・ルイジアナイス」とサブタイトルが出ております。多くのメンバーが打楽器を演奏し、その迫力もひとつの売りですが、ケイジャンのルーツを感じさせつつも、上手く現代的なポップ・ミュージックに仕立てていること、そして女性ボーカルの透明感あふれる歌声と、男性ボーカルのちょっととぼけた感じの味が売りのバンドだなぁと思いました。ユーチューブ映像などを見ると、メンバーチェンジも少々あるようで、以前いた女性パーカッショニスト(というかドラマー)が抜けたり、ベーシストが交代しているようです。編成はリードボーカルが2人、男性の方はフィドルも弾きます。キーボードが2人、ドラム、ベースの6人で、ベース以外はみんな手近にパーカッションを置いています。たしかにドラムサウンドも魅力ですが、シンセなどで現代的な音作りを導入したポップなケイジャンで若い世代の支持も多いようです。2曲ほど、アフリカン・アメリカンの男性ダンサーズが登場してかっこよく踊り、演奏に花を添えていました。

Sweet Crude
Sweet Crude & Dancers

スゥイート・クルードの演奏が終わると、長い距離を歩いてアキュラ・ステージまでサニー・ランドレスを見に行きます。到着してもまだ演奏ははじまっておらず、セッティング中。わりあいいいポジションでサニー達の演奏を聴くことができました。メンバーは3人なのですが、最初2曲はアクースティック・セット。サニーは、フロントにテスコのゴールド・フォイルっぽいピックアップをマウントしたドブロ、ベーシストはアクースティック・ベース、そしてカホンという編成で、彼のファースト・アルバムのタイトル曲「Blues Attack」がはじまります。この曲が生で聴けるなんて幸せです。2曲目は実に多くのミュージシャンにカバーされている「Key To The Highway」でした。3曲目はマイナー・ブルーズ。この曲でも間奏でサニーのドブロが自在にかけめぐります。とっても気持ちいいです。この後同じ編成でエレクトリック・セットに移行。しばしのセットチェンジの後、スロー・ブルーズを演奏。さすが堂に入ったプレイで楽しませてくれます。彼の編み出したビハインド・ザ・スライド奏法もバリバリ聴かせてくれて、ブルーズ・ギター好きの私にはたまらないステージでしたが、レイク・ストリート・ダイブが見たいので、後ろ髪をひかれながら、ふたたび長い道のりをジェンティリー・ステージに戻ります。

Sonny Landreth
Sonny Landreth

前日の雨で、芝生の部分はまだぬれているので、この日も舗装道路を歩きましたが、それが足にダメージを与えたみたいで、ところどころに靴ずれができてきました。
さて、今回の旅行が決まってからユーチューブなどでチェックして、レイク・ストリート・ダイブがすっかり大好きになってしまったので期待のステージです。会場に着いたら最新作の表題曲「Side Pony」をやってます。2曲目くらいでしょうか。彼らの持ち味がよく出たジャジーなバラード。いい感じじゃないですか。続いてはちょっとロックっぽいけど、ノルタルジックなメロディが彼女達らしい「Saving All My Sinning」。以上2曲で、彼女達の世界にぐいぐい引き込まれてしまいました。女性リード・ボーカルのレイチェルのソウルフルな歌声大好きです。4人のメンバーの他にアフリカン・アメリカンのキーボード奏者がサポートで入って、ひかえめに、けれども的確に彼女達の演奏をもり立てています。次の曲のイントロとしてブリジットのベース・ソロが入ります。彼女、キュートですよね。そんでもって演奏も上手い。なかなか大胆なプレイも飛び出します。そして、マイク・オルソンのジャジーなトランペットが入って軽快にプリンスのカバー「When You Were Mine」がはじまります。すごくセンスのいいカバーです。追っかけコーラスもばっちり決まって、とっても気持ちいいです。次はキーボードが出だしを弾き、「Don't Make Me Hold Your Hand」です。これもとってもメロディがすばらしい。そして畳み掛けるように「Call Off Your Dogs」をはじめす。アップテンポでメロディアスなこのナンバーは野外イベントとぴったりで盛り上がります。次はドラム・ソロ。なかなか芸達者なところを見せてくれます。はじまった曲は、「Seventeen」。テンポチェンジが巧みなのに親しみやすくジャジーでいい感じのナンバーですね。 続いてはロッキンな「Spectaclar Failure」、さらにモータウンビートの「You Go Down Smooth」とノリノリのナンバーを畳み掛け会場を大いに沸かせて終了です。いやぁー、素敵だったです。一発でファンになりました。今時、こういう感覚の音楽をやってくれる若い(といっても30代か?)は希少。今年のははじめは東京・大阪に来日してたんだとか。またライブが見たいです。

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Lake Street Dive 右はベースのブリジット

Lake Street Dive2
Lake Street Dive

Lake Street Dive3
Lake Street Dive  ギターのマイクはトランペットも吹く

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Lake Street Dive レイチェルとドラムのマイク

レイク・ストリート・ダイブ終了後は、続いて同じジェンティリー・ステージでアンダース・オズボーンを見ようと、一般ゾーンの最前列に移動。しばし手持ちぶさた状態でセットチェンジを待ちます。昨日はヴォイス・オブ・ウェット・ランド・オールスターズで彼の勇姿を見たのですが、やはりソロ・ステージもチェックしたいところ。定刻になり、まずアコギをかかえてアンダース登場。ゆったりとした抒情的なナンバー「Tommorrow Is Another Day」で幕開けです。2人の女性コーラスのみがサポート。これはとってもいい曲ですね。2曲目にはマンドリンとベースが参加して「Coming Down」のひきしまった演奏が聴けました。なんともかっこよいですねぇ。3曲目でフルバンド編成になり「Love Is Taking Its Toll」を演奏します。マイナー・キーのアーシーなロック。前曲でマンドリンを弾いていた達者なアフリカン・アメリカンのプレイヤーはエレキに持ち替えです。もちろんアンダース自身も黒のレスポールに楽器を代えています。スェーデン生まれのアンダースですが、ジョン・クリアリー同様、もうすっかりニューオーリンズの人ですね。曲は後半レゲエ調になり「Knocking on A Heaven's Door」へとそのまま続いていきます。続く「Louisiana Gold」は、再びアンダースがアコギ、サポート・ギタリストがマンドリンに戻ってのアクースティックよりの演奏ですが、ドラムもベースも入ってタイトです。マンドリンがバカテクで聴きほれてしまいました。次の「Different Drum」は再びマイナー・キーのエレキサウンドになりました。これもいい曲ですね。アンダースのステージも、もちろんまだまだ見たかったのですが、ここで、ウィリアム・ベルを見にブルーズ・テントに移動です。途中でマルディ・グラ・インディアンのパレードに遭遇します。一度は本当のマルディ・グラにも行ってみたいものです。

Anders Osborne
Anders Osborne

この年はスペンサー・ウィギンスのまさかの来日がありましたが、ニューオーリンズ行きを決めていたために見送りました。かわりにと言っちゃなんですが、同時期に活躍したウィリアム・ベルさんを、この日ブルーズ・テントで見ることができました。なんとなく寝間着に見えなくもないシルバーの上下のお揃いに野球帽にサングラスといういでたち。ホーンも入ったフルバンドを従え、まだまだ全く衰えをみせない喉を聴かせます。なかなか圧巻です。途中で女性ボーカルをフューチャーしてデュエットなども聴かせてくれました。曲は着いてしばらくして代表的バラード「You Don't Miss Your Water」を歌ってくれてとっても嬉しかった。ほかにも「Everybody Loves A Winner」やアルバート・キングの「Born Under The Bad Sign」、「Stand By Me」や「FA FA FA」を含むメドレーなど有名曲でもよい喉を聴かせてくれました。
 この日は夜のライブが比較的早いので、フェスの屋台でクラブミートのポーボーイを食しました。美味くはありましたが、やや塩味がきつかったのが残念。たいていは、なんでも大味なアメリカですから、これくらいはよしとせねばなりません。

William Bell
William Bell

この日のトリはデイヴ・マシューズ、アース・ウィンド&ファイヤー、リアノン・ギデンズなどなかなかのミュージシャンが揃っておりましたが、自分はウィルコを見ることにしました。彼らの『Being There』はとっても気に入っているアルバムだし、何度か来日しているけど、一度も見たことがないもので。とはいっても、そのアルバム以外はもってなかったので、旅行前に何枚かゲットしたんだけれど、『Being There』以上に入り込んでくる盤はなくて、あんまり曲を覚えていけなかったです。それでもコンサートはとっても楽しめました。まず1曲1曲がそう長くないので、たくさんの曲が聴けて目先が変わりました。リーダーのジェフ・トゥイーディはマーティンの6弦と12弦、ペイントのある小ぶりなパーラータイプのアコギ、エレキはSG、ストラトなどを持ち替えてましたし、ネルスは昨晩弾いたジャズマスターのほかにダンエレの12弦やラップ・スティール2本、もう一人のギタリストもグレッチやテレャス、フェンダーのベースVIなどを持ち替え多彩なサウンドで飽きさせません。途中まで普通に演奏してて、突然みんなで一斉に壊れてフリースタイルでノイジーなプレイになって、また一斉に元に戻るというパターンの曲が何曲もあって、こういうライブははじめてなので面白かったです。ジェフは、少し喉をいためているようで、「風邪であまり声がでなくてごめん。風邪となまずのせいだ。」なんて言ってましたが、ちょっとハスキーな感じで味があってよかったように思います。前半にやった『Being There』冒頭の「Misunderstood」がとってもよかったですね。最初はジェフとネルス二人だけ。ネルスはエレクトリック・ラップ・スティールでいい感じのフレーズを紡いで行きます。何コーラスか歌ったところで、この曲でも突然壊れますが、少しのインプロですぐに元に戻ります。近年の佳作『yankee hotel foxtrot』からも数曲やってましたね。ジェフの書く曲はポップなものも多くとっても聴きやすいです。ジェフ・トゥイーディーは最近のメイヴィス・ステイプルスのアルバムのプロデュースを担当していて、それがどれもすばらしいので、一度見てみたかったのです。そのセンスの良さはライブでも十分発揮されていました。
この日は、ニューオーリンズ・ジャズからクラシックR&B、最近のロック、オルタナ・カントリーのビッグネームまで、さまざまなタイプのミュージシャンを見ることができて充実した1日となりました。特に、スィート・クルード、レイク・ストリート・ダイブ、ウィルコと違ったタイプの白人バンドを3組見れたのは収穫でした。帰りは夜のライブもあるし、バス乗場で長時間並ぶのはきつかったので、ウィルコの演奏を最後まで聴かずに会場を後にしました。

Wilco
Wilco

2017年ニューオーリンズ旅行記3 5月4日 Medeski Martin & Wood with Nels Cline at Civic Theater

この日、日中が過ごしやすく、さほど疲れてないと思ったのですが、たくさん歩いたのと睡眠不足とで帰ってシャワーをあびると、どっと疲れが出ました。しかし、夜はシビック・シアターでメデスキ・マーティン&ウッドのコンサートの前売りをおさえているので、気力をふりしぼってでかけることにします。まずは腹ごしらえと、昨日満員で断られたフェリックスに並びます。20分ほどで案内され、カウンターでビールを飲み牡蠣とエビのフライを食します。日本の牡蠣フライと違って、バン粉をつけて揚げてないけど、牡蠣はジューシーでとっても美味かったです。さすが有名店フェリックス。値段もリーズナブルでした。

さて、一旦ホテルに戻り9時30分頃に徒歩で出発。ポイドラス・ストリートに出て北上します。このあたりはオフィス街で夜間は人通りがほとんどなく、少しばかり怖かったですが、何ごともなくシビック・シアターに到着しました。1ドリンクを頼まなければならなかったのですが、アルコールを頼むと眠くなってしまうだろうとソフト・ドリンクにします。なんだか客層がちょっと不良っぽい感じで、彼らの受け入れられ方がちょっと日本と違うように感じました。1階は踊れるようになっており、ネットで確保した2階席に座って開演を待ちます。

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シビック・シアター 二階席から

ステージ上にはメデスキ・マーティン&ウッドとネルス・クラインの楽器が並べられているので、おそらく前座はないだろうと思っていると、定刻を30分くらい押して本人達の登場です。ネルスが参加したアルバム『Woodstock Sessions Vol.2』を持っていますが、正直実験的すぎてついていけなかったのです。ステージは予想どおり、そうした実験的サウンドで幕を開けます。長旅、睡眠不足、昼のジャズフェスと疲れと眠気がピークな中。椅子席で睡魔と戦いながら、そんなサウンドを聴いておりました。何度も寝落ちしそうになりましたが、せっかく念願のメデスキ・マーティン&ウッドのステージなのだからとがまんしながら見ておりました。好きなグループではありますが、申し訳ないですが前半の曲名とかわかりません。と、いうか曲がずっと続いているみたいで、特定の曲でなく、みんなでえんえんインプロをやってたのかも知れません。ウィルコのネルス・クラインはジャズマスターにたくさんのエフェクトをつなげてトリッキーなプレイをしておりました。メデスキさんはコックピットにハモンドを含む4台のキーボード。もちろんレズリーとフェンダーの銀パネのツインリバーブのようなギター・アンプを3台用意しておりました。ウッドさんは、ウッド・ベースとエレキ・ベースを曲によって持ち替えています。マーティンさんはドラム・セットによるタイトなリズムが乗りはじめるまでは、さまざまなパーカッションをガラガラいわせてリズムを演出していました。曲によっては、フリーな感じでドラムがスティディなリズムを刻まない浮遊感あふれるものもあって、さらに眠気が増すのですが、なんとか目を見開いておったような次第です。ファースト・ステージも後半になると徐々に演奏が熱を帯びてきます。ドラムがギターがオルガンがうなり声をあげ、ベースはぐんぐんうねります。前衛的ではありますが、最後の方はかなりファンキーな演奏になってました。

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Medeski Martin & Wood with Nels Cline

約1時間で前半の演奏が終わって、トイレに立ち帰って来たら、隣の席の青年が「いい演奏だねぇ。」という感じて声をかけてきます。「彼らは誰とも違う。だから俺は彼らが好きなんだ。」みたいなことを言われ、答えあぐねて「自分は6〜7年前、日本でMMWを見た。とってもよかったのだが、その時はアコースティック・コンサートでオルガンが聴けなかった。今日はメデスキのオルガンが聴けて嬉しい。」と答えると、彼は「俺もとってもうれしいよ。俺は20年前小さなクラブで彼らを見たんだ。」なんて言ってます。若く見えるけど40歳前後なのかなぁ。彼はジャズフェスには行ってないようで、その隣の友人といっしょに奥方とは別行動の模様。ときおりスマホで連絡をとってるようです。

休憩時間はまるまる40分はあったようです。時刻はとっくに0時をまわっています。後半も何やら実験的な音ではじまりましたが、すぐにファンキーなリズムがうねりはじめます。うん、このサウンドを待っていました。気分が高揚し目も醒めてきました。この曲は「Start-Stop」ではないかと思うのですが、確信がありません。ネルス・クラインもまるでキーボードのようなサウンドでからんできます。

後半2曲目もロック色の強いナンバー。ネルス・クラインもワウペダルを使ったトリッキーなプレイで大活躍です。

3曲目は、出だしにクラビネットで同じコードの長音譜を何度も繰り返すファンキーなナンバー「Sequel」。となりのお兄さんはすぐ曲名に気づいたようで、自分に話しかけ、ノリノリで聴いています。そのお兄さん、後半の演奏も佳境だというのに、電話をかけるポーズをして連れといっしょに会場を出ていき、ついに帰ってきませんでした。夜も遅くなったので奥さんからの厳しい呼び出しでもあったんでしょうかね。このあたりから、曲がずっと繋がった感じになって、どこで途切れるのからわからなくなり、テンポもスローダウンして、フリースタイルの演奏が入ってきます。メデスキのソロではエレピが透明感があっていい音です。つづくウッドのソロはウッド・ベースのボウイング。これもすんごくいい音でした。そしてウッドベースが循環コードを弾き始め、他の楽器がからんできます。このあたりは、「Song」ではなくてインプロなのかも知れません。けっこう長い間インプロが続いた後、メデスキが「Henduck」の印象的なフレーズを弾き始め、ところどころで歓声があがります。ホントかっこいいですね。ネルスもいい感じのカッティングでサポートしてます。曲はまたゆっくりしたテンポになり、次の曲につなぎます。

そして、ウッドがエレキベースに持ち替え、アップテンポの「Where's The Music」になります。メデスキのオルガン、ホントかっこいいですね。続いてウッドのベース・ソロが短めに入り、ネルスのソロに移ります。ネルスもまるでオルガンのようなサウンドを出していますが、演奏にぴったりマッチしてます。そしてマーティンのドラム・ソロ。少々長くても聴き飽きることのない太鼓さばきはさすがです。メデスキがメンバー紹介をして本編は終幕。アンコールに応えてメンバーが再登場し、「Pappy Check」を演奏します。これもかっこいいファンク・ナンバーで大満足です。前半はちょっときつかったけど、後半は大興奮で眠い目をこすりながら見に行った甲斐がありました。

メデスキ・マーティン・ウッドもデビューして20年以上のベテランになりました。後半では初期の曲を演奏してファン・サービスをするわけですが、尖った部分はきっちり残ってます。今回、ウィルコがジャズフェスに出るのでネルスを含んだMCMWの公演となったわけでしょうけど、メデスキは毎日違う企画ライブがあって、しかも一晩2回とかやってます。複数の鍵盤を縦横無尽に弾きまくる超絶テクニックだけでなく、そのバイタリティにも驚かされます。ほかのライブも見たかったなぁ。

会場を出ようとしたら、一人の青年が「コンサートよかったねぇ。」という感じで声をかけてきますが、彼の英語がけっこうなまっていて聞き取りにくかったです。CB(セントラル・ビジネス・ディストリクト)とはいえ、夜中の一人歩きは少し怖かったので、ちょうどよい連れになるとも思って彼と話しながら、ホテルの方に戻ります。来た道とちがってオキーフ・アベニューを北上してキャナル・ストリートに向かいます。コンサート帰りの人々も多くはその道を通っていました。彼はジャズフェスのことも全然知らなかったようで、自分がフェスティバルの少し説明をしました。彼がどうしてこのコンサートを知ったのかと聞いてくるので、satchimo.comだと答えると納得していたようです。彼はアーティスト(画家)のようで、日本の、しかも福岡に一度だけ行ったことがあるとのことでした。帰りにV8で野菜不足を補おうとドラッグ・ストアのCVSに寄り、そこで彼と別れました。さすがにこの日はくたくたで、ホテルにもどるとすぐに熟睡できました。

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John Medeski

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Billy Martin

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Chris Wood

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Nels Cline

2017年ニューオーリンズ旅行記2 5月4日 ジャズフェス・セカンド・ウィークエンド初日

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この日の朝、豪華客船がミシシッピ川を遡上していました。

3日の夜は、ホテルに戻り夜12時頃ベッドに入ったのですが、前夜一睡もしていないにかかわらず、午前2時30分に目が覚めてしまいます。そのあといろいろ努力したのですが、寝付けず、朝7時過ぎに散歩に出かけました。前日の雨もあがり、今日は曇り。ロイヤル・ストリートを東へフレンチ・クォーターを歩きます。前回に歩かなかったところでも、たくさん素敵な建物をみました。

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ロイヤル・ストリート

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高級料理店 ブレナンズ

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ニューオーリンズならではの建物

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こちらの3階建てにもバルコニーが

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ストリートをさらに東へ

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今はホテルになっているお洒落な邸宅

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こちらも

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典型的アイアンレースの3階建て

エスプラネード通りを過ぎてマリニー地区に入り、フレンチメン・ストリートを目指します。ここに来るとアイアンレースの3階建てなどはなくなり、ぐっと庶民的な感じが増してきます。朝のフレンチメン・ストリートでは前日のゴミ回収の車が来ていたり、d.b.a、スナッグ・ハーバー、ブルー・ナイル、Maisonといったライブ・ハウスの外観を見ることができました。

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d.b.a.

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Blue Nile

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移転したルイジアナ・ミュージック・ファクトリー

そのあと、朝食をとろうとフレンチ・マーケットに移動。前回来た時オバマ支援コンサートでケータリングをしていたワールド・フェイマス・ニューオリン・カフェという店がけっこう美味かったので、オープン・カフェで朝食でもと思ったのです。しかし、グーグル・マップのガイドには8時オープンになっているにもかかわらず、周囲の店同様、全く開店する気配なし。時間はすでに8時20分近くになっています。あきらめて、ホテルに帰ることにしました。その間、けっこうな距離を歩いて足も疲れてきたし、チャーターズ・ストリート沿いのそこそこお客さんも入ってるカフェで朝食をとることにします。ブレックファストを頼めば早かったのかもしれないけど、前日カキを食べられなかったので、カキフライのポーボーイをオーダー。ちょっと時間がかかりましたけど美味かったです。付け合わせのポテトフライも大量でした。店員さんもフレンドリーでよかったです。

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この日の朝食

ホテルに戻るとジャズフェスのチケット売り場に少し人が並びはじめています。バウチャーを部屋にとりに戻り、シャトルバス・チケットを入手すべくエレベーターに乗り込むと日本人男性二人組が途中から乗ってこられました。案の定同じ列に並んだので聞いてみると、ジャズフェスは全日程ご参加とのこと。4月29日日曜が荒天で3時からの開催になったけれど、シャトル・バスの出発も3時でドクター・ジョンのステージ開始に間に合わなかったこと、それでも、予定より少し長く演奏してくれたことなどをおうかがいしました。そうこうしてるうちに自分の順番。バスのチケットも同時に申し込んでいるので、どうしたらいいか聞くと、行きはこのバウチャーを見せてバスに乗り、Will Calllの窓口でチケットを受け取ればよいとのこと。一旦部屋に戻って出発の準備をします。

まだ10時前とあって、まだバスの列に並ぶ人は少ないです。キャナル・ストリートにはすでに黄色いスクールバスが何台も横付けされています。バスに乗り込む頃雲ゆきがあやしくなってきました。バスでは白髪の白人女性ガイドさんがニューオーリンズの歴史について話していますが、彼女がガイドするバスには前回来た時にも乗り合わせた覚えがあります。何か冗談を言って乗客を笑わせていますが、ひさびさのジャズフェス会場フェアグラウンドに移動中に雨が降り始めます。天気予報では今日は曇るけど市内では降らないみたいに言ってたのに。バスは会場に到着するも外は本降り。ドライバーも「どうせ開場は11時だから、バスの中で待ってたら」ということでバスの中で待機。隣に座ったおじさんと少し話します。ニューヨークから来たという彼も少し興奮気味。古いジャズのファンのようで、今日のステージではドクター・マイケル・ホワイトが特にお目当てとのこと。自分も前回来た時、彼のライブを見たことを話しました。

雨はやみませんが、時間がせまって来たのでバスのお客さんはみんな降りて入り口に並びます。自分も持参のレインコートを着て靴の上にはビニール袋を二重にかぶせ列に並びました。予定時刻に開場。最初のお目当てのCha Waが出演するアキュラ・ステージを目指します。アキュラ・ステージは会場最大のステージですが、雨の平日の一番手のステージとあってお客さんはそう多くありません。一般ゾーンの中央最前列で雨の中のサウンドチェックを見ていると、キーボードにはコマキケイコさんがおられるではないですか。またトローンボーンの菊池ハルカさんのとなりには、かつてのトローンボーン・ショーティを思わせるチビッコ・トロンボーン・プレイヤーもいます。ラップスティール・ギターもいて、ルーズベルト・コリアーさんかなぁと思って後で調べたらそのとおりでした。さあ、雨の中待望のコンサートがはじまりました。ニューオーリンズに来て一発目のステージが日本人プレイヤー2人を含むマルディグラ・インディアンものなんてたまらないものがありますね。ただ、あの扮装のメンバーがずらりのフロントに並ぶと、ケイコさんもハルカさんも見えなくなってしまうのはちょっと残念。ソロをとる時はビジョンに大映しになるのでそちらで楽しませてもらいます。「Ho Na Nae」「Here Dey Come」「Little Liza Jane」「Indian Red」といった定番曲を演奏したように思います。「Little Liza Jane」では予想どおりハルカさんの渾身のソロが聴けました。コリアーさんも活躍してて、一発目から大満足。彼らのステージの途中で雨もやみました。

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Cha Wa

さて、次はどこに行こうかなと、まずゴスペル・テントに入ります。レイク・エリア・ハイスクールの学生さんによるクワイヤーですがなかなか力強く新鮮。1曲聴いて隣のブルーズ・テントに移動。御年90歳のブルーズマン、ヘンリー・グレイのステージを少し見ます。年齢を感じさせない力強い歌声とピアノ演奏で、「Sweet Home Chicago」とか定番のブルーズをやってました。さらに前回足を踏み入れなかったジャズ・テントに移動。アフリカン・アメリカンの女性シンガー、クイアナ・リネルのバンドの演奏をしばらく聴きます。まぁ、ホテルのラウンジとかで聴けそうなジャズではありますが、なかなかの歌唱力。トランペッターをはじめとする伴奏のメンバーも凄腕です。スタンダードの「All Of Me」もなかなかよかったです。

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Lake Area High School “Singing Leopards”

Quiana Lynell
Quiana Lynell

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出店のギターショップ 面白いギターがたくさん並んでいる

次に前回見たマローン・ブラザーズのデイヴ・マローンの入っているバンドを見に会場の反対の端にあるジェンティリー・ステージまでてくてく歩きます。芝生の部分を歩くと足が疲れないのですが、今日は雨でぬかるんでいるので、アスファルトのところを歩くしかありません。ようやくジェンティリー・ステージに近づいてくると若い女性が「The Weight」を歌っています。次は若い男性がメインボーカルで「Good Vibration」。デイヴさんは地味にエレキ・ギターを弾いています。ファミリーの演奏は素敵なのですが、ナツメロを聴きにきたのではないので、再び移動。少しだけフェイ・ドー・ドー・ステージのイベット・ランドリーをのぞきます。何の変哲もないカントリーですが、なかなか好感がもてるさわやかな歌唱でした。そのあと、フード・テントでクロウフィッシュ・モニカとクラブ・ケーキを食します。どっちも美味しかったです。さすがに睡眠不足で眠気が強くなりますが、立って音楽を聴いていればそれも忘れられます。

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Chilluns with Dave, Darcy & Johnny Malone,Cranston & Annie Clements, and Spencer & Andre Bohren

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Yvette Landry

再びアキュラ・ステージに戻りジョージ・ポーター・Jr.のランニング・パードナーズの出番を待ちます。この時もなかなかよいポジションを確保できました。前回来たときは、結局彼らのステージはあと少しのところで見逃したので、とっても楽しみです。今回は「あえて」なのかミーターズ・ナンバーは1曲も演奏しませんでした。1曲目は「Is Peay」2曲目は「All Do Everyday」。どちらもかっこいいファンク・ナンバーです。3曲目くらいにやったラテン調のリズムをもつ「Nice Very Nice」とか、ギタリストが歌いボトルネック・ギターが活躍するナンバー「Sweetness」とか、とってもよかったです。手数の多いテレンス・ヒューストンのドラムも気に入りました。定番曲「Happy Song」は出だしがピアノ伴奏のバラードになってて、とぎれなく続くラストはボビー・ブルー・ブランドの「Turn On Your Love Light」でした。

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George Porter Jr.

このあと、再びジェンティリー・ステージまでてくてく歩きます。お目当てはマーシャ・ボール姐さん。今回もかっこよく足を組んでピアノを弾きながら歌っています。今回もジョー・クラウンさんがオルガンでサポートです。歌い方にさすがに少々年齢を感じさせますが、むしろブルーズにはその方があっているかも。3曲くらい聴いて、またまた長い道のりをアキュラ・ステージを目指します。この日はもう雨は降らず助かりました。風が強く少し肌寒いくらい。まだ5月なのでこんな日もあるんだなぁと思いました。

Marcia Ball
Marcia Ball 右端はJoe Crown

アキュラ・ステージに戻ると、ヴォイス・オブ・ウェット・ランド・オールスターズの1曲目がはじまっています。テーマ・ソング「Bayou Breeze」ですが、タブ・ベノアさん歌うまいですね。前回入っていたドクター・ジョン、シリル・ネヴィルの二人は今回は不参加。かわりに前回は代役だったベースはさっきも同じステージで演奏していたジョージです。さすがに音の太さが違いますね。2曲目はフィドル奏者のウェイロンが歌うケイジャン・ナンバー「Row Row Row That Progue」。陽気に盛り上がります。この曲では、ハープ担当のジョニー・サンソンはアコーディオンを演奏します。3曲目はそのジョニー・サンソンが歌うハーモニカをフィーチャーしたブルーズ・ナンバー「Find The Lord Before I Find You」。めっちゃ渋い声でなんかチューブ・アンプを通したような音質がまたいい感じです。次のフォーク・ブルーズ調「Louisiana Rain」はアンダース・オズボーンが歌います。アンダースも大好きなシンガーなので素晴らしい演奏と相まって、自分も盛り上がります。ちょっと悩んだけどVOWのステージをみてよかったです。次の曲はベノアが歌いますが曲調は再びアコーディオンがフィーチャーされたケイジャン・ナンバー「We Make Good Gumbo」です。間奏ではウェイロンのラブボードも大活躍です。続いてそのウェイロンが陽気に「Louisiana Man」を歌います。前曲同様VOWのファーストに入っていた曲ですが、ケイジャンのスタンダードですよね。次は1コードで延々ファンキーな演奏が続き、マルディグラ・インディアンの正装でビッグ・チーフ・モンク・ブードローが舞台袖から登場します。「Hold Em Joe」です。めっちゃかっこいいです。前回も同じ展開でしたが、何も言うことはありません。そして、この日2度目の「Little Liza Jane」で彼らのステージは締めとなりました。

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Voice of the Wetlands All-Stars

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Voice of the Wetlands All-Stars

そして自分はまたまた、長い道のりをあるいてジェンティリー・ステージを目指します。次に見に行くミュージシャンはアコーディオンを弾きながら歌うウェイン・トゥープス。前回来た2012年にもフェイ・ドー・ドー・ステージに出ていたみたいですが、今回は出世してジェンティリー・ステージ。しかも、なかなかよい時間です。お客さんは満員というわけではないですが、結構な人数が集まっています。彼の声、スワンプ系の音楽にぴったりの渋い、いい声です。以前組んでいたバンド名がザディケイジャンだったように、ブルーズ系の楽曲にもよくあいます。そして、ドラム、ベース、キーボード、ギター、フィドルからなるバンドがとってもよいです。緩急自在という感じ。ノリのよいロックンロール・ナンバーもアコが入るとケイジャンっぽい楽しさが増しますよね。こういう演奏を聞くとデヴィッド・リンドレーさんも、少ない編成でこういう楽しいノリを出そうと努力していたんだなぁなんて感じます。そして、そのノリノリの曲からそのままヴァン・モリソンの「Tupero Honey」に続いていきます。こういうところが本当にかっこいい。この珠玉のバラードにケイジャン・アコは少し「間抜け」に感じる人がいるかも知れませんが、自分はこのマッチングはとってもすばらしいと思うのです。

Wayne Toups
Wayne Toups

ウェインの歌に後ろ髪をひかれながら、少しはドクター・マイケル・ホワイトの演奏も聴こうとエコノミー・ホール・ステージに移動します。ルイ・アームストロングのトリビュート・ステージのようで、名前は聞いたことのある南アフリカのヒュー・マサケラなる人物も出るようで会場は人であふれていました。昨日から今朝にかけての雨でテント脇には水たまりができています。そのきわに立ってステージを楽しむことにしました。クラリネットはマイケル・ホワイトさん、歌とトランペットはとってもサッチモ風なジェームス・アンドリュースさん。トローンボーン・ショーティのお兄さんですな。バンジョーも入って、オールド・タイミーなディキシーの雰囲気ばっちりです。自分が着いてすぐに「You Rascal You」の演奏がはじまりました。すばらしいです。エンディングではペットとクラリネットのからみがかっこいい。本当にニューオーリンズにやって来たという気持ちになりますね。しかし、マサケラさん体調不良でジャズフェスに来れなかったようで、このステージではニコラス・ペイトンとジェームス・アンドリュースが代役を務めたようです。

Dr Michael White
Dr. Michael White

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James Andrews & Dr. Michael White

さすがにずっと立ちっばなしがつらくなってきたので、ブルーズ・テントでエリック・リンデルをチラ見して、ジャズ・テントへ向かいます。ジャズ・テントは予想どおり座れました。ここではトーケストラというジャズのビッグバンドが演奏し「Great American Song Book」と題して複数のシンガーが出るようで、ジャーメイン・バジル、カーミット・ラフィン、クリント・ジョンソンとスペシャル・ゲストがラインナップされています。自分が会場に着いたとき、ちょうどそのスペシャル・ゲスト登場で、ほかのボーカリストはみんな終わった後だったのだと思います。どうも俳優さんか何かそこそこ有名な方のようで、おしゃれなビッグバンドの演奏に乗せて、懐かしいスタンダード調の曲が続きます。2曲くらい聴いたところで移動。本日、コンゴ・スクエア・ステージのトリをつとめるタワー・オブ・パワーを見に行きます。

Eric Lindell
Eric Lindell

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Torkestra

今日は朝からたくさん歩いたし、睡眠不足なんだけれど、不思議と元気です。曇りで風が強くさほど疲れを感じていないからだと思います。アキュラ・ステージからはサザン・ロックのワイドスプレッド・パニックの演奏、しかもボトルネック・ギターが聴こえてきますが、予定どおりコンゴ・スクエア・ステージを目指します。少しお腹も空いたので、コンゴ・スクエア近くのフード・テントでジャマイカン・チキンを食します。この味付けもGOODでした。

さて、期待のタワー・オブ・パワー。福岡ブルーノート(後ビルボード・ライブ)にも何度も来てますが、見るのは今回がはじめて、リード・ボーカルは最近交代したばかりのメンフィス出身の若手マーク・スコット。彼のMCが堂に入っていて上手い。まさにエンターティナーだし、つきぬけるようなハイ・トーン・ボーカルは初代ボーカリストを彷彿とさせ、それでいて、バラードではサザン・ソウルの香りを醸し出します。気に入りました。そして、1曲目から完全に観客の視線を釘付けにする演奏力。これぞキング・オブ・ベイエリア・ファンクですな。そして、途中で数曲リード・ボーカルをとるサックス奏者のエミリオ・カスティーヨも実によい味の歌声。マークとのかけあいもすばらしく、あっという間に時間が過ぎ去ります。エミリオが「You Got Get Funkifize」歌ったあと、マークが「彼は49年間ファンキファイしてるんだぜ。」みたいな感じのMCです。それにしてもホーン・セクションやギター・カッティングのキレ、リズム隊のうねり。気持ちよすぎます。後半では「Soul Vaccination」「This Time For Real」「I Still Diggin' On James Brown」「So Very Hard To Go」「What Is Hip」とか有名曲をたたみかけます。アンコールもあったようですが、夜のライブもあることだし、立ったまま長時間バスを待つのもつらいので、ちょっとだけ早めに会場をあとにしました。それにしても、今日は過ごしやすい日で助かりました。シャトルバス乗場に向かうとき、この日のジェンティリー・ステージのトリを務めていたダリアス・ラッカーがパープル・レインを歌っていました。彼は去年亡くなったプリンスに歌を捧げていたのでしょう。

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Tower of Power

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Tower of Power

2017年ニューオーリンズ旅行記1

昨年5月、5年ぶりにニューオーリンズに行ってきました。今回は一人旅でジャズ・フェスのセカンド・ウィークエンドだけでしたが、おかげさまで楽しんでまいりました。旅をしてずいぶんたちます。最近、かなり遅筆になり、ぼつぼつ旅行記を書いておりましが、なかなか進まず、blogも長らくごぶさたしておりました。今年もジャズフェスの季節になり、少しでもご参考になればと、ようやくアップしていく次第です。

5月3日連休後半の初日、朝9時前に出発、自宅近くの高速バス停に向かいます。バス停に着くと近くの電光掲示板に「八幡-若宮 7km渋滞」の表示が。高速バスも定時を10分近く遅れております。これを見越して1本早いバスにして大正解。空港行きのバスは時間の保証がないせいか、空席もちらほらありました。古賀インターから先はさらにひどい渋滞のため、高速を降りて3号線を走行。香椎東から都市高速に乗って、予定より40数分遅れで10時50分頃空港に到着します。離陸予定は12時55分ですから十分余裕あり。全日空のカウンターでチェックインをします。ところが、成田からのユナイテッドのチケットがなぜか発券されません。成田でもう一度手続きをしてくれと言われます。「乗り継ぎの時間があまりないのでは?」と聴くと「十分時間はあります。」とのことだったので、のんびり食事をして飛行機に搭乗しました。連休中で臨時便も出ているようで、空港が混雑し離陸がしばし遅れます。成田到着は20分は遅れたと思います。着陸したとき、「ユナイッテッド航空でヒューストンへご出発の●●さま、降りられましたら地上係員にご連絡下さい。」とのまさかの呼び出し。ちょくちょく飛行機で目にするけど、自分が呼び出されたのははじめてです。ただでさえ乗り継ぎ時間が短い上に、飛行機が遅れたせいでしょう。成田では福岡便は搭乗口から離れたところに着陸。バスで空港内を移動するのですが、自分は全日空のワゴンに乗せられ、係員の方に「ESTAの申請はされましたか?」と聴かれます。「しました。」とプリントアウトした画面を見せると、全日空の女性係員さんはタプレットでチェック、ワゴン車で空港内を移動しながら、ユナイテッドのカウンターと連絡をとっています。ユナイテッドの方で自分のESTAが確認できなかったのが原因かな。全日空の係員さんについて空港建物の中を走り、ユナイテッドのカウンターであらかじめ準備されていたチケットを受け取り、荷物検査を済ませ出国、全日空の方にはユナイテッドの搭乗口までアシストしてもらい、離陸15分前くらいに無事16時25分発ヒューストン行きの便に乗り込むことができました。乗り遅れたら今回の旅行を棒にふるところでしたが、それにしても、ひやひやしました。

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機内食

ヒューストンまで12時間のフライト。眠れないし、長いです。機内食は晩ごはん、アイスクリーム、夜食のハンバーガー、朝食とたびたび出てきます。それでも時間がたたないので、目の前のビジョンで映画を2本みたり、kindleで読書したりして時間をつぶします。時間帯が深夜になるけど、ぜんぜん眠れないままほぼ定時にヒューストンに到着。現地は雨とのことでしたが、窓のは外は雲っているもののその時は降ってはいませんでした。久しぶりのアメリカ。テキサス州に降り立ったわけですが、乗り継ぎで一歩も外へ出ず。無事入国審査もすませて、ニューオーリンズ行きの便を待ちます。

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雨のヒューストン国際空港

20170503ニューオーリンズ行き
ニューオーリンズ行きユナイテッド便

この日は荒天で欠航便なども出た模様。搭乗予定便は、飛行機のやりくりで時間が遅れそうです。そうこうしているうちに雨も降ってきました。さすがアメリカ南部、真夏のような土砂降りです。予定時間をかなり過ぎて晴れ間も見えだし、ようやくニューオーリンズ行きの便に搭乗するものの、気流の関係か何かでなかなか離陸できず、結構長い間滑走路近くで待たされ、ようやく離陸。気流が悪いせいで通常のワゴンサービスはなく、水の入った小さなペットボトルが配られただけでした。ニューオーリンズへの着陸態勢に入り飛行機が下降をはじめると気流が悪くグラグラと揺れ、機内はシンとしてしまいます。もういちど揺れる箇所を通過。飛行機でこれだけ揺れたのははじめての経験です。飛行機の外は暗闇。しかしあちこちに稲妻が走っているのが見えます。今日は雨のニューオーリンスに到着となりました。予定より約1時間半遅れ、夜8時頃の到着です。

20170503ニューオーリンズ空港
ニューオーリンズ空港到着


タクシーに相乗りしてホテルに向かい、8時30分過ぎにチェックイン。この日は元気なら、エイフェル・ソサエティというところにハニー・アイランド・スワンプ・バンドのフリー・ライブを見に行こうと思っていましたが、結構な大雨だし、旅の疲れも出ているし、近くで食事して休むことにしました。街は歩道の段差下に結構な水たまりができています。さすがのバーボンストリートもいつもより人通りは少ないですが、ポンチョを着た人、傘をさす人がたくさん歩いてます。ガイドブックでACMEオイスター・ハウスはそれでも少し行列がありますが並ぶ元気がありません。斜め向かいのフェリックスではフリーは受付終了とのことで、当たりをつけていたオーシャナ・グリルで晩ご飯。「Taste of New Orleans」というガンボ、クロウフィッシュ・エトフェ、ジャンバラヤなどの盛り合わせをオーダー。とっても美味かったです。

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大雨の中のオーシャナ・グリル

Pieta Brown / Postcads

postcards御年74歳を迎えていまだに精力的な活動をつづけるデヴィッド・リンドレーさんですが、最近、難聴がひどくなったようで、予定のコンサートをキャンセルされておられます。心配です。スティーヴン・スティルスさんも難聴になり、その後遺症もあってか、2015年の来日公演では少々精彩を欠いていたことを思い出します。

さて、リンドレーさん、もともとラップ・スティール・ギターやフィドルのセッション・プレイヤーとして多くの人に認知されるようになった人です。もちろん、ソロ・パフォーマーとしても超魅力的ですが、その姿は彼が40歳近くなってからの話。ソロ活動により、一時セッションは減りましたが、やはり彼の紡ぎ出す唯一無二の音色にひかれて、彼のセッション・マンとしての仕事は現在に至るまで、ずーっと継続しております。もっとも、近年はその頻度は大幅に減って、おりまして、昨年出たこのアルバム以前のスタジオ・ワークは2014年のジョニー・トゥー・バッグズのアルバム以来なんじゃないかと思います。その前がリッキー・リーの『The Davil You Know』かな。

このアルバムの主人公ピエータ・ブラウンさん。あの、グレッグ・ブラウンのお嬢さんなんですね。これ一枚しか聴いたことがありませんが、父親同様のフォーキーなテイストと透明感あふれる歌声をもった素敵なシンガーです。彼女は2000年頃から音楽活動をはじめているようで、ルシンダ・ウィリアムスのアルバムに参加経験のあるボー・ラムゼイというギタリストが長く彼女をバック・アップしているようです。このアルバムも本人とボー、そしてフレンズによるプロデュースとなっています。

このアルバムですが、まず、大半の曲がドラムレス。落ち着いたフォーキーな雰囲気が全編に満ちています。全曲が彼女の自作曲。そして、各曲にゲスト・プレイヤーを迎えています。リンドレーは8曲目の「Take Me Home」に参加です。この曲はピエータのアクースティック・ギターのコード・ストロークではじまる三拍子のナンバー。リンドレーはワン・コーラス目からワイゼンボーンのオブリで曲に参加します。ボー・ラムゼイもエレキと12弦で参加していすが、決して存在を首長することなく、隠し味的に空間的なプレイに徹しており、リンドレーのギターとピエータの歌をひきたてています。リンドレーのギターも長いソロやトリッキーなプレイはありませんが、彼ならではの味わいは格別です。

他のゲスト・プレイヤーは、キャレキシコ、デヴィッド・マンスフィールド(彼のワイゼンボーンとマンドリンも素晴らしい)、マーク・ノップラー、ニール・ヤングのバックフアップなどで著名なドラマーのチャド・クロムウェルなどなど、ベテランのミュージシャン達は皆、これみよがしのプレイでなく、静かな存在感を示しながら、ピエータの歌をひきたてています。

Various / Woody Guthrie The Tribute Concerts

WGTライ・クーダーの新譜、今年5月11日発売が告知されまして、その日が待ち遠しい今日このごろですが、昨年、1968年1月と1970年9月に行われたウッディ・ガスリー・トリビュート・コンサートの豪華CDボックスセットがベア・ファミリーより発売されておりました。その中に、未発表だったライ・クーダーのギター・プレイが数曲収められてたのでご紹介することにしたいと思います。

このコンサートのライブ盤は当時、CBSとワーナーから1枚ずつ出されていて、その2枚の中から選曲されたダイジェスト盤CDが90年代に発売されています。そのCDのレビューをこちらに書いていますので、既発の音源についてはそっちを見てください。

CDは3枚ですが、3枚目の後半は出演者や関係者のインタビューがたくさん収められています。1枚目は1968年のニューヨーク、カーネギー・ホールでのコンサートの模様を収めたもの、2枚目と3枚目の途中までが、1970年のロサンゼルス、ハリウッド・ボウルでのコンサートの模様を収めたもので、従来のLP、CDより大幅に曲数が増加していますし、音もかなりよくなっているようです。

ライ・クーダーは、1970年のハリウッド・ボウルにバック・バンドの一員として出演。唯一のエレキ・ギター奏者として、またマンドリン奏者として出演者を盛りたてました。他のバンド・メンバーはドブロでジョン・ベランド、ベースでクリス・エスリッジ、ギブ・ギルボー、ドラムでスタン・プラット、アクースティック・ギターでチャド・マックスウェルとジョン・ピラという構成です。

2枚目のCDの冒頭にフルキャストによる「This Train Is Bound For Glory」が入っていますが、1分半ほどでフェイド・アウトします。3枚目の後半にも同じ曲が入っていますが、全く違うテイクので、こちらはアコギとアーロのハーモニカではじまります。同じ曲が冒頭とエンディングあたりの2回演奏されたのかも知れませんし、このCDセットの導入部として選ばれたリハーサルテイクかも知れません。ここでもライははつらつとしたボトルネック・ギターを奏でています。

カントリー・ジョー、アーロ・ガスリー、ジャック・エリオット、ピート・シーガーが歌う「Goin' Down The Road」では、ライは冒頭からマンドリンでリズムを刻んでいますが、ほとんど目立っておりません。でも、ライもブルーグラスが好きだったようで、ビル・モンローのバックをやったこともあったようです。

カントリー・ジョー・マクドナルドの「Pretty Boy Floyd」はアクースティック・ギターの弾き語りではじまりますが、2番の後半からドブロがオブリガードを弾き始め、3番からフルバンドがバックアップ。演奏が疾走します。ライは低音リズム・ギターで演奏を引き締め、間奏最初のソロが、ライのボトルネック。比較的明るめのメロディを美しく奏でると、カントリー・ジョーが「One More Time!」と叫びます。ライによる続きのプレイが聴けるかと思うと、後半はフィドルのギブ・ギルボーがソロを決めます。

ジョーン・バエズによる「Plane Wreck At Los Gatos(Deportee)」は、彼女の卓抜した歌唱力が聴けるワルツです。1番はバエズ一人の弾き語り。2番からライのマンドリンが情感たっぷりに入ってきます。3番からドブロ、4番からベースとドラムが控えめに入ってきます。ソロはありませんが、先に紹介された「Hobo's Lullaby」同様、ライの非凡なマンドリン・プレイを楽しむことができます。

オデッタの「John Hardy」はレッドベリーのナンバー。ウッディも愛唱した曲です。この曲もアコギの弾き語りではじまり、2番からフルバンドが参加。ライはボトルネック・ギターのオブリで曲をひきたてていきます。間奏はライのボトルネックがメロディを奏で、ギルボーのフィドルが彩りを添えます。それにしてもオデッタの力強い歌声、すばらしいですね。

ジャック・エリオット、ピート・シーガー、ジョーン・バエズ、アール・ロビンソン、カントリー・ジョー・マクドナルド、アーロ・ガスリーの「Hard Travelin'」でも、きわめて控えめではありますが、ライのエレキ・ギターが聴こえてきます。ボトルネックもソロもなく存在が確認できる程度です。

アール・ロビンソンとピート・シーガーによる「Roll On Columbia」は、アクースティック楽器中心のバッキング。ドラムとベースは入っていますが、フォーク・マナー。楽器はジョン・ベランドのドブロがフューチャーされ、ライは控えめにマンドリンを奏でています。

3枚目のCDに行きます。

アーロ・ガスリーとジョーン・バエズによる「I've Got to Know」。この曲はアーロがピアノの弾き語りで演奏し、ドラムとベース、そしてライのボトルネックによる控えめなバッキングが入ります。ライのギターはソロこそとりませんが、存在感を十分に見せています。大半をアーロが歌いますが、途中バエズが歌うヴァースもあり、オデッタ、ジョン・ピラ、ギブ・ギルボーが美しいコーラスを加えます。それにしても、ウッディっていいメロディを書きますよねぇ。

2枚目の冒頭にも入っていた「This Train Is Bound For Glory」。イントロからライのボトルネック・リードが登場。終始存在感のあるオブリガードで曲を盛り上げますが、ソロはありません。アーロ、カントリー・ジョー、オデッタ、バエズ、ピート・シーガーがそれぞれヴァースを分け合っています。この曲と「This Land Is Your Land」あたりが、コンサートのハイライトでしょう。

コンサート編のラストに収録されている「This Land Is Your Land」は、オデッタの歌ではじまり、ドブロとフィドルがからんできます。コーラス部分は出演者全員の合唱になります。バエズやアーロもソロを歌いますが、ライは曲の後半あたりから、低音弦を中心としたのバッキングで演奏をひきしめます。一旦演奏が終わっても拍手が鳴り止まず、再びバエズが歌い始めます。今度はライも少しギターの音量をあげてバッキングを奏で、客席とのコール&レスポンスの場面ではボトルネックを使わない指弾きのプレイで独特のオブリを紡いでいきます。ドラムやベースの演奏も熱がこもってきます。曲のラストは、「So Long, It's Good To Know Yuh」がワン・フレーズだけ歌われ、客席への別れの挨拶になります。

以上のように、ライを含めたバンドが参加している曲だけでも、11曲の未発表音源が使われており、この2回のコンサートの様子がかなりわかるようになりました。ライはデビュー・アルバムをリリースしたばかり。むしろ、スタジオ・ミュージシャンとして名が知られた存在で、すでにアーロのレコーディングには2枚ほど参加していましたが、フォーク系の著名ミュージシャンのバック・アップでさらに多くの人に知られる存在となったことでしょう。ライが他人のバックをやっているライブ音源はとても貴重なもので、オフィシャルなものとしては、この時期ではジュディ・コリンズのバックくらいしか思いつきません。

ところで、多くの人が聴きたがるであろう1968年のボブ・ディランとザ・バンドの演奏は既発の3曲のみで1枚目に入っています。実際のコンサートでもこの3曲しか演奏されなかったんじゃないかと思います。

このボックス・セットのもうひとつの魅力は、近年のボブ・ディランのブートレック・シリーズの豪華版と同じように多くの写真が使われた豪華本2冊仕様となっていることです。1冊はソングブックがスコアもついています。まだまったく改造がほどこされていてない例のダフネブルーのストラトキャスター(モノクロ写真なので色は見えませんが)やギブソンF4マンドリンをかかえたライ・クーダーの写真もいくつか確認することができますし、ディランとザ・バンドの写真も興味深いものがいくつかあります。

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豪華本のライ・クーダーの紹介文の中にこんなものがあります。「Thinking of the Hollywood Bowl Band, Cooder remembers: "Pete hated us and wouldn't rehearse. He said, 'I'm going up to my room, boys.!"と、いうことは、ピート・シーガーがバンドと一緒にやってる曲はぶっつけ本番ということでしょう。ニューボート・フォーク・フェスのディランの事件から5年も経過し、多くのフォーク系ミュージシャンもエレクトリック・サウンドを取り入れているのに、ピート・シーガーはピュアリストだったんですね。それでもライはピートを尊敬していたようで、後年自身のアルバム、『My Name Is Buddy』にピートを招いているし、「Good Night Irene」は今に至るまでライの愛唱曲ですよね。このCDを聴いていると、客席に歌わせるために、曲があらぬところから繰り返されたりしますが、バンドは柔軟についていくところがあります。さすがスワンプ・ウォーターを中心とする腕利きミュージシャン達といったところです。

Various / This Ain't No Mouse Music

no mouse musicライ・クーダーのファンのみなさんなら、レス・ブランクが撮影した1987年のライ・クーダーとムーラ・バンダ・リズム・エイセスのサンタ・クルーズでのライブの映像や、音源のことをよくご存知でしょう。日本でも後にNHK-BSで放送されましたし、たくさん海賊盤も出ています。オフィシャルな映像作品としての発売が待たれるところですが、2014年にリリースされた、『This Ain't No Mouse Music! - The Story of Chris Strachwitz and Arhoolie Records』という2枚組アルバムに、1曲だけこのときの音源が収録されたのでご紹介します。オフィシャルな発売はこれが最初と思います。出てすぐに入手していたのですけど、その時は長らくブログをお休みしていたもので。

2012年の11・12月にアーフーリーから出た50周年記念ライブ盤について長々と書きました。詳しくはそのときの記事をご参照いただきたいのですが、アーフーリーはクリス・ストラックウィッツが設立したマイナー・レーベルでブルーズやゴスペル、ザディコ、ケイジャン、コンフント・ミュージックなどをはじめとするルーツ・ミュージックの掘り起こしに大きな功績があります。ライ・クーダーとのかかわりについても、その時の記事に書いています。「クリス・ストラックウィッツとアーフーリー・レコードの物語」というサブタイトルのついたこの2枚組は、まるでアーフーリーの長い歴史のサンプラーのよう。多くのビッグ・ネーム(大半が物故者)にまじって、2枚目の方にライ・クーダー&フラーコ・ヒメネス名義で、上記のライブから、『Get Rhythm』に収録された「Let's Have A Ball」が収録されています。音質はかなりいいブートも出ているので、それとあまり変わらないよう気もしますが、やはりオフィシャル発売は喜ばしいです。

ブックレットに演奏メンバーは記されていませんが、ドラムス・ジム・ケルトナー、ベース・ホルヘ・カルデロン、ピアノ・ヴァン・ダイク・パークス、サックス・スティーヴ・ダグラス、コーラス・ボビー・キンク、テリー・エヴァンズ、ウィリー・グリーンJr.という1988年来日時の豪華メンバーに、トロンボーン・ジョージ・ボハノン、パーカッション・ミゲル・クルーズ、コーラス・アーノルド・マッカラーが加わったすごい面子です。おそらく実際の演奏でも1曲目で躍動感あふれるプレイです。このアルバムのブックレットは全編ストラックウィッツさん自身が書いているようで。この曲のところの解説は以下のとおりです。

「レスとわたしはチュラス(チュラス・フロンテラスというテレビ番組?)で働いていた。ライ・クーダーはそれに加わりサン・アントニオでフラーコ・ヒメネスに魅了された。ライはすぐにフラーコがどれほど才能をもったミュージシャンか見抜いたらしい。わたしはライにフラーコを紹介し、何度かライのツアーにフラーコが参加することになった。レス・ブランクと彼のクルーはカリフォルニア州サンタ・クルーズのカタリストで彼らのパフォーマンスを撮影した。フラーコがライといっしょにロードに出て演奏しているとろで、ライはフラーコをより大きな世界へと紹介することになった。そして、新しいオーディエンスにとって、南テキサスのコンフント・ミュージックにおけるアコーディオンの王者をはじめて聴く機会となった。」

とりあえず、1曲だけ、音だけ、正式に世に出ましたが、いずれ全編が出ることを願っています。

それはそれとして、このアルバム、いいですよ。アーフーリーのアルバムならほとんど集めているという方には不要かもしれませんが、本当にこのレーベルがルーツ・ミュージックの宝庫であることがよくわかります。録音年代も戦前から最近まで、ジャンルも本当に多岐にわたっていて、アーフーリーのカタログの充実度を示しています。2枚組というのはきわめて厳選された内容でしょう。存分に聴きごたえがありますよ。あ、この盤の画像を探していて気がついてのですけど、これってサントラでDVDも出ているみたい。この文章を書きはじめた1月くらい前に注文しました。先日到着。内容はクリス・ストラックウィッツの人となりをおおむね音楽のジャンルごとに追いかけるもの。もちろんライ・クーダーも出演して、インタビューに答えています。上記「Let's Have A Ball」の演奏シーンも少しはありますが、歌の部分はなし。フラーコ・ヒメネスの方がフューチャーされています。あと、若い頃ライがフラーコにアコーディオンを習っているシーンなんかも出てきます。でも、クリスとアーフーリーの歩みが音だけでなく、映像でも追うことのできる興味深い作品です。インタビューにはほかに、リチャード・トンプソン、ボニー・レイット、タジ・マハールも出ています。ブルーズ、ニューオーリンズ・ブラス・バンド、ケイジャン、ザディコ、コンフント、カントリーといったアメリカン・ルーツ・ミュージックの現場に出かけ、ミュージシャンと交流しながら、録音する姿はライさんの姿勢とも重なり合いますね。それにしても、よい音楽に出会ったときのクリス・ストラックウィッツさんの子どものような笑顔がものすごく印象的です。70歳代になっても、本当に音楽が好きなんだなぁと思わせます。もちろん日本盤は出ていません。英語力が貧弱な私にはインタビューの半分もわかりませんけど、ケイジャンのマイケル・デューセやフラーコ・ヒメネス、トレメ・ブラス・バンドなどの演奏シーンもあり、なかなか楽しめるDVDです。この手の音楽好きにはおすすめです。

Allen Toussaint / Motion

motion
一昨日ディランの箱ものを聴き込もうと思っていたら、フェイスブックのタイムラインにアラン・トゥーサン享年77歳。スペインのマドリードで、コンサートの後、心臓発作のため死去との訃報が流れてきました。本当に残念です。それから、ずっとトゥーサンの作品を聴いています。

今日は彼が卓抜したメロディ・メーカーだったことがわかるこの盤をレビューしましょう。

このアルバムにはおおよそ3つのタイプの曲が収められています。まず、甘いバラードです。「With You In Mind」、「To Be With You」、「Motion」、「Declaraiton of Love」の4曲。続いて、ファンキーなナンバーは冒頭の「Night People」、「Just a Kiss Away」、「Viva La Money」、「Happiness」の4曲。残る2曲の「Lover of Love」と「The Optimism Blues」はノベルティ・タイプのナンバーです。どの曲にもトゥーサンらしいプレイがあふれているし、聴きやすさでは彼のアルバム随一で、入門者に一番おすすめだったりします。プロデュースはジェリー・ウェクスラー、演奏しているのは、ジェフ・ポーカロやチャック・レイニー、リチャード・ティーという名うてのセッション・ミュージシャンばかり。ニューオーリンズの「あのノリ」を完全に再現している曲もあって、安心して演奏に身をまかせられます。

アルバムはリー・ドーシーにも提供した「Night People」で幕開け、マイナー・キーのファンキー・ナンバー「Just a Kiss Away」へと続きます。どちらも、なんともカッコイイナンバーですね。そして珠玉のバラード「With You In Mind」が登場。このメロディ・ライン最高です。「To Be With You」や「Declaraiton of Love」もいいですね。けっこうおしゃれなソフト&メロウ路線ですが、凡百のブラコンとは一線を画しています。タイトル・トラックの「Motion」も素敵なナンバー。前作『Southern Night』のタイトル・トラックの路線を継承する名バラードですね。ジェフ・マルダーのカバーもよかったです。

「With You In Mind」と「To Be With You」にはさまれた明るい「Lover of Love」の方は、エイモス・ギャレットが少し後で取り上げます。ジェフ&エイモスがそれぞれソロでこのアルバムからカバーしているわけで、彼らのセンスの良さは並大抵ではありませんね。「Viva La Money」はいかにもニューオーリンズという雰囲気が漂うファンキー・チューン。こちらもとってかっこいいアレンジです。コーラスはローズマリー・バトラーとボニー・レイットが参加しているのでしょうか。

「Happiness」は、ルバートの導入部があって、インテンポからはタイトなリズムになるファンキー・チューンです。ミーターズに比べたらリズムが平板なような気もしますが、ミーターズは独特の個性を持った演奏集団。「比べる」べきものではありません。この曲のポーカロのドラムだって、すんごくかっこいいと思いますよ。ラストは再び明るいノベルティ・ナンバー。ブラック・ミュージックのもつ「楽天的」な一面をとてもいい形で継承しているナンバーだと思います。これからこんな作風を受け継いでくれそうな若い人はいるのでしょうか。

彼のライブに接したのは4回、そのうち1回はニューオーリンズで行われたオバマ大統領支援イベントで、その時は1曲だけピアノの弾き語りを披露しただけでした。2012年のジャズフェスで見たフル・バンドの彼のステージはちょっとやそっとでは忘れられないすばらしいものでしたし、2007年に福岡、2013年に大阪のビルボードで見たライブもとっても素敵でした。彼はいつもにこやかでサービス精神が旺盛でした。自分はあの笑顔を終生忘れることがないと思います。

タイムラインを見ていると、彼は本当に世界中から愛されていたようです。そして、この日本にも毎年のように来てくれていました。年とともに飛行機での長時間移動などは負担となっていったはずですが、彼は聴いてくれる人がいれば世界中どこへでもかけつけるタイプのミュージシャンだったのでしょう。少々キツくてもプロ根性で乗り越えてきたんだと思います。タイムラインには、元気だった彼の突然の訃報を信じられない人であふれていますが、自分は人の命がどれほどはかないものか、よく知っています。今はゆっくり休んでくださいとしか言いようがありません。

最後までステージに命をかけ、ステージで散っていったに等しいアラン・トゥーサンに、本当にありがとうを言いたいと思います。

Bob Dylan / 1965-1966 Cutting Edge Deluxe Edition The Bootleg Series Vol.12

dylan1965-66ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ豪華箱入りデラックス・エディションは、一昨年の『Another Self portrait』、昨年の『Basement Tapes』に続いて、これが3作目です。昨年はこの時期blogを全く更新していなくて、『Basement Tapes』についてはまだ書いてないんですけど、去年の年末はよく聴いていたし、まぁ、いずれは書きたいと思っております。

さて、今回はディラン電化期、60年代中盤の重要作『Bringing It All Back Home』、『Highway 61 Revisited』、『Blonde on Blonde』の時代のアウトテイク集です。個人的に『Blonde on Blonde』は10代終わりの頃、輸入レコードで入手し「ディラン開眼」となった愛聴盤。早いものであれから30年ですか。もちろんアルバムが出てから来年で50年なんですけど、後追いでもすごいインパクトありました。その『Blonde on Blonde』は、後にザ・バンドとなるホークスのメンバーで数曲を録音するも、出来に満足できなかったディランがナッシュビルへ飛び、録音を完成させたことが知られていますが、そのお蔵バージョンの大半は正式には今回初お目見えです。そうそう、20代前半の頃、はじめてブートレッグ・シリーズVol.1〜3が出たときも、この時期の音源目当てにすぐに購入しました。数曲は今回のVol.12ともかぶってますけど、そんなことはいいんです。この時期のディランの歌はギター1本であれ、バンドであれ本当に「魔力」があって、ずっと聴いていても飽きません。いや、力がありすぎて、ちょっと疲れるかな。でも、その若さと自信と勢いたるや、唯一無二のもの。この歴史的なアーティストの一番油が乗っている時期の記録としてだけだなく、エンターテイメントとしても十分に価格だけの価値のある作品だと思います。

もちろん、このデラックス・エディッションでは、同じ曲が3〜5バージョン並び、徐々に肉付けされて完成形に至る過程がたくさん収められているわけで、そういう過程を楽しむことのできる音楽好き、ディラン好き向けには違いないでしょう。そこまでのファンではないけれど、聴いてみたいという方には2枚組のスタンダード・エディッションも用意されています。

バンドを探していたディランが、秘書メアリー・マーティンの進言により、ザ・ホークスの演奏をじかに見に行ったのが、1965年9月。そして、翌月のはじめには最初のセッションが行われています。その1965年10月5日のディランとホークスの邂逅という歴史的録音が収められているのは、なんと素晴らしいことでしょう。この日のセッションでは、まだ、リヴォン・ヘルムが参加していて、後のディラン&ザ・バンドの編成そのままです。「Jet Pirot」はすでに『Biograph』で発表済ですが、その他の初出音源が3曲。「I Wanna Be Your Lover」は2つのバージョンが収められています。これもかっこいいブルーズ・ロックですが、いちばんびっくりしたのは「Medicine Sunday」かな。いきなりロビーの切れ味のいいギターではじまり、ガースならではのオルガンがかぶさって、とってもかっこいいフォーク・ロック調。1コーラスで終わってしまうのがなんとも残念です。あと、曲名のないインストルメンタルも、後のザ・バンドっぽくてとっもグッドです。

11月30日のセッションでは、ドラムスがリヴォンからボビー・グレッグに交代しています。なんでも、ディランの電化によってライブでのブーイングがひどく、リヴォンは嫌気がさして戦列を離れたのだとか。しかし、他の4人ホークスは彼ららしいプレイを聴かせてくれます。この面子では2曲を収録していますが、「Can You Please Crawl Out Your Window?」は1バージョンのみに対し「Visions of Johanna」は5バージョン。バンドでいろいろな試行錯誤の末に、ナッシュビルの面子で録音されたアレンジに近いバージョンができあがっていく様子がわかります。そのうちのひとつはすでにブートレッグ・シリーズVol.7に発表済みなのですが。

さて、その「Can You Please Crawl Out Your Window?」ですけど、今から10年前2005年に出たザ・バンドの6枚組ボックスにも収録されていて、こちらはシングル盤としてリリースされたものですが、1965年10月5日録音でドラムスがリヴォンとクレジットされています。しかし、今回のボックスの解説には「(このセットに収録された)テイク6の後、2つの完全テイクがつくられた。そのうちのセカンド・テイクが1965年12月21日にシングルとしてリリースされた。アメリカではチャート・インしなかったが、イギリスでは17位に達した。」と記されていて、ザ・バンド・ボックスの方も11月30日セッションで、ドラムはボビー・グレッグというのが正解のようです。

年があけて、1966年1月21日のセッションでは、さらにドラムがサンディ・コニコフに交代しています。この面子で「She's Your Lover Now」を録音していて、4つのバージョンがおさめられています。ひとつはディランのピアノ弾き語りのみ、ひとつはブートレッグ・シリーズVol.1〜3に収録済みです。

以上がボブ・ディラン&ザ・ホークスの録音と言えるべきもの。あと、ロビーとリックが参加したニューヨーク録音で「Sooner Or Later」が3バージョン、完奏しないけど「Lunatic Priness」が1バージョン収められています。あとは、ナッシュビル・セッションに同行したロビーのプレイが7曲ほどで聴くことができます。「Like A Rolling Stone」が最初三拍子だったことは、ブートレッグ・シリーズVol.1〜3で知っていましたが、「Stuck Inside of Mobile with The Memphis Blues Again」がリハーサル段階で、三連のロッカバラードだったことには驚かされます。

とにかく6枚組の大作です。ディスク3は、「Like A Rolling Stone」が20バージョンというとんでもない内容です。ほかにも触れたいナンバーはたくさんありますけど、キリがありません。ブルース・ラングホーン、マイク・ブルームフィールド、アル・クーパーをはじめ、この時期のディランを支えた名うてのミュージシャンの名演もたくさん収録。しばらくこのboxにはまってると思います。

それから、もう売り切れたかもしれないけれど、なんでも今回は限定セットで18枚組のものもあるんだとか。6枚組でも聴き通すのにけっこう体力がいるのに、さすがにそんなものまでは不要です。ディランのコアなファンの方、もしくは研究者向けでしょう。自分も、もし、ライ・クーダーだったら買うかもしれませんけどね。彼の盤は日本盤LPのボーナストラックでさえCD化されていないし、再発CDにボートラがついたことなんて一回もないのだから、まず実現しないでしょうね。

あ、余談になってしまいましたが、ディランのブートレッグ・シリーズの近年の3作は、いずれもザ・バンドとの共演が収められていて、ザ・バンド、デビュー前の貴重な音源が収められています。このセットから順逆に聴くことによって、ザ・ホークスがいかにザ・バンドになっていったが理解できるように思います。そして、もちろん、ディランという個性的なアーティストの音楽が、65年から70年までというロック史にとっても激動の時代、電化とそれに伴う軋轢、バイク事故、歌唱方法の変更などさまざまな転換点を経て70年代形のスタイルに至るまでどのような軌跡をたどったか、この3作のボックスセットでかなりわかるようになったのは、個人的にも嬉しいことです。

Los Lobos / Gates of Gold

loslobosgatesロス・ロボスって、このブログでとりあげたのは前のスタジオ作『Tin Cna Trust』だけだったみたいですね。ずーっと好きなバンドなんですけど、ものすごいファンというわけじゃないです。前のレビューのしめくくりに「あぁライブが見たい」なんて書いてましたけど、未だかつてライブを見たことがありません。3年半前にニューオーリンズに行った時、初日に近くのハコに出ていたのですけど、ロバート・ランドルフの方を優先してしまいました。すいません。2013年のライブ盤が出たことは知っていましたが聴いてなくて、今回のスタジオ作は買って聴いてみましたけど、これがやっぱりいいのです。もともと落ちついた味のあるプレイのグループですけど、今作もそんな雰囲気が濃厚。同一メンバーによる長いキャリアが熟成させた他のバンドには絶対出すことのできない息のあったグルーヴが見事です。

もちろんデビューのころからの持ち味であるブルーズ・ロックとメキシカン・ルーツの両方とも健在。前者の典型である「Mis-Treater Boogie Blues」あるいは「Too Small Heart」などは初期のキャリアを彷彿とさせる力強さです。マンドリンの入ったタイトル・トラック「Gates of Gold」もいいですね。このトラックをモチーフとした黄金色の雲のジャケ写真もとっても素敵です。アコースティックのボトルネック・ギターをフューチャーした「I Believed You So」も素敵なブルーズ。間奏ではエレキ・ギターも渋いソロで迫ります。フォーキーな「Song of the Sun」もなかなかすばらしい。リズム隊が入ったときの重いビートは彼らならではでしょう。

メキシカン・ルーツを強く感じさせるのは2曲。マイナー・ラテン「Poquito Pora Aqui」も実に渋いです。また、明るいコンフント・ナンバーの「La Tumba Sera El Final」はフラーコ・ヒメネスのレパートリーでもあります。自分は、1988年にアーフーリーから出た『Flaco's Amigos』の冒頭に収められていたのがとても印象的でした。

アルバムは、落ち着いた三連のロッカバラード「Magdalena」で幕となります。日本盤は、これにボーナストラックが2曲つきます。インストの「Nachas」とメキシカン・ワルツ「Prenda Del Alma」のライヴ・バージョンです。彼らの最高傑作とはいえないながらも、毎回クオリティの高いスタジオ作を届けてくれるロス・ロボスの面々の力量とチームワークには完全脱帽ですね。

今回、メンバーの写真を見て、その年季の入った風貌に驚きました。たぶんみんな60歳前後でしょうから、当然といえば当然ですね。「La Bamba」がヒットしてテレビによく出ていた頃は、30代前半くらいだったんでしょうけど、その頃の印象が全く抜けません。思い起こせば、このバンドを知ったのは「La Bamba」のヒット前だから1986年頃。友人は当時の来日公演を見に行っていて、「客は少なかったけど、とってもよかった。」とか言ってた記憶があります。ミュージック・マガジン誌の評も参考にしてCDを買ったのもそのころだったかなぁ。それから30年近くたっているんだから、メンバーがそれなりの年輪を重ねているのは当然ですね。自分だって、同じ年数分老けてますからね。でも、当時の新進バンドの彼らと一緒に年を重ねてきたという意味では、そのころすでにステイタスを確立していた人々とはまた違った愛着がありますね。それにしても四十数年の長きにわたって、一度も解散することも、メンバー・チェンジもすることなく、地道に活動を続けているというのは本当にすごいことだと思います。

Ry Session 138 Don & The Goodtimes / So Good

don&goodtimesまたまた、ライ・クーダー参加作の重箱の隅つつきレビューです。ライ・クーダー関連のHPをいろいろ検索しておりましたら、1967年リリースのこのアルバムにライが参加しているという情報をゲット。早速ワンクリックで購入して、ワクワクしながら聴いてみました。まず、結果ですが、残念ながら、これぞ、ライ・クーダーのプレイと特定できるようなフレーズはありません。

この盤はREV-OLAからの再発なのですが、細かいクレジットはついておりません。しかし、スティーヴ・スタンレーのライナーの中にメンバーの回想として、ジャック・ニッチェがプロデュースした最初のヒット・シングル「I Could Be So Good To You」のドラムスがハル・ブレイン、ギターがグレン・キャンベルとマイク・ディージー、ベースがジョー・オズボーン、キーボードがラリー・ネクテルで、有名になる前のライ・クーダーがボトルネック・ギターを弾いたと書いてあります。この曲は、モノラルとステレオの二つのバージョンが収められているので、両方ともスピーカーの横で耳をそばだてて聴いてみたのですが、上に書いたように、「これぞ」というプレイは聴こえてきません。サビのところで、印象的なくりかえしのギター・フレーズがのっかってくるのですが、あるいはライがボトルネックで弾いているのかも知れませんけど、自分には普通の押弦のように聴こえます。むしろアコギのストロークの方がライのように思えるけど、ストロークじゃ個人差はあまりでないしなぁ。ライにとっては、ポール・リビア&レイダースに引き続いて参加した、レッキング・クルーとのセッションだったんでしょうけど、あまり個性を出せずに終わったようですね。しかし、このあたりのレコーディングを通じてニッチェの信頼を得ていくだろうと思います。

曲調は典型的なカリフォルニア・サンシャイン・ポップ。ビーチ・ボーイズそっくりさんのコーラスが心地よいです。最初はコーラスなしだったものに、メンバーの提案でコーラスが取り入れられたみたいです。この時期、ロサンゼルス産ポップスの常套手段で、メンバーはボーカルとコーラスのみで、演奏には参加させずプロフェッショナルのスタジオ・ミュージシャン集団レッキング・クルーがバックをやるという手法で録音されています。でも、「メンバーも演奏に参加したい」という欲求を解消させるために、曲によっては一部でメンバーを起用したり、ベースを二人にして、一人をメンバーにしたり、マラカスとかをオーバーダブでメンバーに振らせたりしていたようです。

自分はマイク・ディージーもとっても好きなんですけど、2曲目の「The Music Box」中盤のファンキーなカッティングとそれに続くリード・プレイはおそらくディージーのプレイ。とってもかっここいいですよ。3曲目「I Could Never Be」のリードはキャンベルっぽいです。もう1本カッティングでエレキが入ってるので、イントロから入っているアコギはもしかしたら、ライかも知れません。もっとも、メンバーの回想ではギタリストは5人くらいいたみたいなので、ほかのクルーかもしれないけど。

シングルのみの曲などからなるボーナス・トラックにも、なかなかいい曲があります。16曲目「BAMBI」はとっても気に入りました。きっとソフト・ロック・ファンの人気も高いんじゃないかな。この曲にはシタール(あるいはエレシタ)が少し入っているし、達者なアコギのプレイもあります。なんだか、ディージーが弾いているような気がします。17曲目「May My Heart Be Cast Into Stone」もなかなかかっこいい曲です。この曲のエレキのフレーズはちょっとライっぽいけど、ディージーとかテデスコかもしれません。全体的に隠し味のアコギがいい感じです。12曲目の「Colors Of Life」のイントロとか印象的ですが誰が弾いているんでしょうねぇ。

アルバム・ブロデュースはジャック・ニッチェ。1曲だけ、ジェリー・フラーが担当し、4曲はニッチェに加えてステュ・フィリップスが共同プロデュースに入っています。レッキング・クルーの優秀な演奏を楽しめる一枚ですが、その切り口だと無数のレコードがありますよね。彼ら、ファンキーなスペンサー・デイヴィス・グループの「Gimme Some Lovin'」をカバーしたりしているんですけど、サンシャイン・ポップにほんの少しばかりR&Bテイストが入っているのが彼らの個性のよう。彼らはオレゴン州ポートランド出身で。もともとはブリティッシュ・インベイジョンの影響を受けたビート・グループみたいです。それから、「I Could Be So Good To You」ヒットの後はディック・クラークのテレビ番組にレギュラー出演し、そこそこの人気を誇っていたようです。

Jon Cleary / GoGo Juice

jonclearygogoジョン・クリアリーさん、以前から名前は存じ上げておりましたが、今から3年前にニューオーリンズに行ったとき、レコード・ショップ、ルイジアナ・ミュージック・ファクトリーのインストア・ライブで見てすばらしい演奏にぶっとび、ファンになりました。その場で当時の新作でアラン・トゥーサン・カバー集の『Occapella』を購入しましたが、この作品は約3年ぶりとなる彼の新作です。この盤も、ちょっと前にバラカンさんのラジオでもかかっていましたね。その時にはすでに入手していたのですが、レビューは今頃になりました。

ちょっと、なんとかならなかったのかなぁと思う安っぽいジャケですが、内容の方は申し分ありません。彼のバンドというと、アブソリュートリー・ジェントルメンですが、どうも今回のレコーディングはその面子ではない模様、ギターの"Big D"ことダーウィン・パーキンスは参加していますが、リズム隊の二人は不参加。かわりにテレンス・ヒギンズがドラムス、ベースにはカルヴィン・ターナーが入っています。もう一人のギターがシェイン・セリオット、キーボードもサポート・メンバーがいて、ニジェル・ホール、パーカッションにダニー・サドウニック、トランペット、エリック・ブルーム、サックス、ライアン・ゾイディス、トロンボーン、チャールズ・ハロランという布陣でレコーディングに望んでいます。それに加え、ダーティ・ダズン・ホーンズもゲスト参加。アブソリュートリー・ジェントルメンは分散してバック・ボーカルにゲスト参加。ダンプスタ・ファンクのアイヴァン・ネヴィルも1曲バック・ボーカルで入っています。

1番好きなのはバラカンさんもラジオでかけていた「Brother I'm Hungry」です。このシンガー・ソングライター感覚がたまりません。ファンキーな音楽は大好きですが、自分はもともとこういうところから音楽好きになっているので、ソングライター的センスを持ってる人が一番しっくりくるんです。出だしがソウル・バラードの7曲目「Bringing Back the Home」も、名曲ですね。途中からミディアムのファンク・ナンバーに変身しますが、この曲にもソングライター感覚満載です。同じ系列でも、6曲目「Step Into My Life」は70年代の後半のAOR風。こういう曲でも難なく歌いこなしてしまう歌唱力、すばらしいですね。彼の声、ちょっとしゃがれていて、あまり華やかではありませんが、渋くてとってもいい声と思います。

もちろん、ファンキーな曲も目白押し。タイトル・トラックの「Getcha GoGo Juice」はめっちゃめちゃかっくいナンバー。後期ミーターズを思い起こさせる典型的ニューオーリンズ・ファンク。こういう曲大好きです。8曲目「9-5」も渋いファンクですが、ブリッジのところがバラードみたいになります。巧みな構成力に脱帽です。ラストの「Love on One Condition」は、なんだかリトル・フィートあたりを思い起こさせるちょっと重い感じのファンキー・チューン。いやぁ、とっても気持ちいいですねぇ。2・5曲目も、文句無しにかっこいいファンキーな曲ですよ。そうそう、1曲目を忘れるところでした。乾いたスネアが印象的でレゲエのリズムで料理された楽しい曲。アルバムの導入曲しとてうってつけです。

そんなわけで、ジョン・クリアリーさん、イギリス生まれですが、ニューオーリンズを代表する、いや、アメリカを代表するホワイト・ソウル・マンだと思います。今作は前作とはうってかわって、全曲ジョン・クリアリーのペン(1曲たげ共作)で、そのことを証明する力作になってます。一度聴くと、二度三度と繰り返し聴きたくなる快作ですよ。昨年はバラカンさんのライブ・マジックにバンドで来ました。今度バンドで来たらぜひ見に行きたいものです。

Donnie Fritts / Oh My Goodness

donniefrittsgoodnessなんとドニー・フリッツの新譜の登場です。スタジオ作としては7年ぶり、2009年来日時のライブ盤リリースから数えても5年ぶりです。1942年生まれ、当年とって73歳の彼の長いキャリアのなかでは、わずか4枚目のスタジオ盤です。これを「事件」と呼ばすして何と呼ぶのでしょう。まぁ、確かに、世間にはドニー・フリッツ、誰それ? っていう方が大半なのはわかっていますが、アメリカ南部のシンガー・ソングライターやソウル・ミュージックを愛好する方々にとって「聖地」のひとつである、マスル・ショールズの音楽シーンを語るとき、絶対避けて通れない伝説的人物の一人がこのドニー・フリッツさんなのです。来日はおそらく2〜3度くらいじゃないかと思います。最初はクリス・クリストオァソンのキーボード奏者として70年代に来日、そして、2009年、元カウボーイのスコット・ボイヤーやマスル・ショールズ・リズム・セクション(MSRS)のベーシスト、デヴィッド・フッドら強者達を含むデコイズを率いてヘッドライナーとしての来日公演の素晴らしさは、ちょっとやそっとでは忘れられるものではありません。その模様はDVDとCDになってリリースもされております。

そんな彼の満を持しての新作、涙無しでは聴けない味わい深いバラードがずらり、そしてスワンピーなロックが数曲。少したよりなげなドニーのヴォーカル。何の変哲もないのだけれど、ドニーの人柄がにじみ出ているウーリッツァー・エレピの音色。ここには、ドニー・フリッツというとっても人間臭い人物の持つ滋味のようなものが凝縮されています。個人的にはエリック・カズの新作に並ぶ、今年のお勧め盤です。

1曲目「Errol Flynn」は、ベット・ミドラーが歌った名曲「The Rose」を書いたアマンダ・マクブルームの曲のカバーです。彼女が映画スターだった父のために書いた美しいワルツ・バラードですが、ドニーが歌うと南部の雰囲気がぐんと出てきますね。彼もミュージシャンだった父に対する思いをこの曲に託したのかも知れません。

2曲目「If It's Really Got To Be This Way」は、盟友アーサー・アレキサンダーが1988年にリリースした復活盤の冒頭におさめられていたナンバー。ドニー、アーサーそしてギャリー・ニコルソンの3人による共作。アーサーのこのアルバムは大愛聴盤なので、この曲がはじまると鳥肌が立ってしまいました。アーサーはこの盤のリリースから5年後、53歳の若さで天国に召されてしまいますけれど、ドニーはいつまでも仲の良かった友人に思いを馳せているように思います。

そして、3曲目「Memphis Women & Chicken」も言わすと知れたダン・ペンおよびニコルソンとの共作。ダン・ペンも1999年の来日のときに歌っていましたし、自身のアルバムにも収録されていましたが、ドニーさんは2009年の来日のとき、アンコールのラスト、最後の最後に歌ってくれて、ライブ盤にも収録されています。ここでスタジオ・バージョンが初お目見えですけど、渋いミディアムのロックン・ロール。タイトでいい演奏ですね。

4曲目はセルフ・カバー。1997年の2作目『Eveybody's Got a Song』から、ジョン・プラインとの共作のワルツ「The Oldest Baby In The World」です。このときはウィリー・ネルソンとのデュエットでしたが、今作では自身のヴォーカルのみでしみじみ聴かせています。共作者のプラインはアクースティック・ギターで参加。エンディング部分の室内楽風ストリングスもとっいもいい感じですね。

5曲目がようやく今作のための本人によるオリジナル・ソング。パートナーなしで一人で書いています。これがめちゃめちゃかっこいいスワンプ・ナンバー。スライド・ギターもいい味を出していで、エンディングではニューオーリンズ・スタイルの転がるピアノも出てきます。

6曲目もセルフ・カバーですが、ドニーさん自身は初録音かな。トロイ・シールズとの共作で、ウェイロン・ジェニングスに提供した1970年代中盤のナンバーです。ジェニングスのバージョンはドブロをフューチャーした渋いバラード。ジェニングスの自信に満ちた歌声に比べるとドニーさんの歌はちょっと頼りないですが、それこそがドニーさんの「味」。ドニーさんはエレピ中心のスロー・バラードに仕上げていますが曲の良さは抜群です。

7曲目はジェシ・ウィンチェスターのカバー「Foolish Heart」。彼の2001年のアルバムに収録されていますが原曲は未聴です。ウィンチェスターさんも大好きなシンガー・ソングライターで、2年ほど前に他界してしまったことは残念でなりません。ドニーさんがこの曲を取り上げたのは、きっと彼へのトリビュートの意味もこめてのことでしょう。なんとなく、ニューオーリンズのブラス・バンドを思わせるホーン・アレンジもたまりません。

8曲目はジーン・トーマスというテキサスのシンガー・ソングライターの1972年の曲のカバー。全然知らない人でしたが、ネットというのは便利なもので、すぐにこの曲のオリジナルが聴けてしまいます。少々ハイ・トーンで歌の上手い人です。コード進行にドニーさんの曲との共通点が感じられますね。この曲、エヴァリー・ブラザーズもレパートリーにしています。名曲ですよね。ドニーさんもしみじみと聴かせてくれますが、控えめなホーンやエレキ・ギターも絶妙のサポートです。

9曲目は5曲目同様、今作のための本人によるオリジナル・ソングで、やはりリズムもの。ブルージーですが、ダメ男が「君」の愛の力で立ち直る歌。ファーストにもこんな曲調のナンバーはあったけど、こういう器用じゃない芸風こそドニーさんの持ち味でしょう。

10曲目 ミシシッピー州テュペロ出身のポール・ソーンというシンガー・ソングライターの1997年作のカバー。共作しているビリー・マッドドックスはタニヤ・タッカーやハンク・ウィリアムス・ジュニアに曲を提供しているソングライターです。ポール・ソーンがギター1本で歌っている映像をネットで見ることができますが、この人の音楽もとっても良さそうですね。ドニーさんはストリングスを効果的に使ったバラードに仕上げていて、まるで自分の歌のように、いつくしんでこの歌を歌っています。と、言うかこの曲に関して言えば芸風そっくりですよね。この曲では、ナッシュビルで長く活躍しているギタリストのレジー・ヤングが参加し、燻し銀のフレーズを紡いでいます。

12曲目 その昔ドニー・フリッツがエディ・ヒントンともにボックストップスに書いたナンバーのセルフ・カバーです。この曲も2010年に亡くなった元ボックストップスのアレックス・チルトンへのトリビュートかもしれません。1コーラスはギター1本で歌われますが、これがまた味があっていいんですよねぇ。曲はその名のとおりブルージーなロックで汽車に乗っているようなリズムが心地よいです。

13曲目も今作のための本人とスプーナー・オールダムによるオリジナル・ソング。たった3曲の書き下ろしのうち、たった1曲のバラードです。なんといってもシンプルな歌詞の世界が素敵です。ここではGoodnessを「優しさ」と訳しましたが、「God」の婉曲表現としてももちいられるようです。

わたしの優しさ、それは愛すべき世界 わたしの優しさ、 それは、ひとりの少女からもたらされた
別れが二人を引き裂いても、わたしの優しさは、わたしの心をいまだに暖める
わたしの優しさ、それは、わたしがあるべき姿、わたしの優しさ、それはわたしを愛し、見守るもの
別れが二人を引き裂いても、わたしの優しさは、わたしの心をいまだに暖める

スプーナーがピアノを弾き、ドニーが歌う珠玉のバラードです。ほかに言葉はいりません。

2009年の来日時、デコイズととっても息のあった演奏を聴かせてくれたので、そのメンバーが入っているんだろうなぁと思ったら、デヴィッド・フッドが2曲でベースを弾いているくらいで、他のメンバーは全然入ってませんね。かわりに上に書いたように、レジー・ヤングやスプーナー・オールダムの客演があります。自分の知らない方々がバックをつていますけど、本当に過不足ない素晴らしい演奏。アルバムのプロデュースはジョン・ポール・ホワイトとベン・ターナーで、アラバマ州フローレンスのサン・ドロップ・サウンドで録音されています。マスル・ショールズ周辺のミュージック・シーンの層の厚さを感じますね。エレキ・ギターで、ブライアン・フリッツという方が活躍してるけど、もしかして、ドニーさんの身内でしょうか。

今回は今までの作品に必ず数曲入っていたワン・コードのファンク・ナンバーをあえてはずし、バラード中心の楽曲で勝負に出ています。本人が今もっとも歌いたい歌を集めたらこうなったというタイプのアルバムなんでしょうけど、本人の思いのたけがあふれてくるようなアルバムだと思います。上記のように、今作のために書き下ろした新作は3曲しかなく、あとはセルフ・カバーや他のミュージシャンのカバーですけど、CDのブックレットには小さな字で歌詞が掲載されています。それは、ドニーが自分の思いを正確に聴く人に届けたいがためのものでしょう。そして、ジャケットですが、「老い」をつつみかくさず、そのままの自分をさらけだそうとしているかのような「横顔」のポートレート。この写真もありのままの自分を聴いてほしいというドニーのメッセージのように思えます。おそらく、多くの人には歌があんまり上手くないとか、ちょっと渋すぎるとか、そんな反応もあるかもしれないけれども、きっと噛めば噛むほどに味が出るスルメ・アルバムだと思いますので、このブログをよく見てくださいっている方には、ホントお勧め盤ですよ。
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レシーブ二郎
福岡県内で音楽活動してます。本厄となりましたが、楽器の腕はまだまだ。がんばっていきたいものです。リスナー歴は長いけど、アマチュア・プレイヤー歴は駆け出し。持ってる楽器は多数。おいおい紹介していきます。
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