レシーブ二郎の音楽日記

レシーブ二郎の音楽ブログにようこそ。マイペースでぼつぼつ更新していきます。

Gaby Moreno & Van Dyke Parks/ iSPANGLED!

gabymorenoみなさん、サブスクやってますか? 自分もついに流行の波にあらがえず、amazon musicを始めています。かゆいところに手が届かない感はありますが、結構重宝しています。60〜70年代音源で、そこそこメジャーなミュージシャンの音は大抵聴けてしまうので、購入に及ばなかった盤などをちょこちょこ聴いています。sportifyとかApple Musicとか色々あるけど、どこが一番充実してるのかなぁ。そこで悩ましいのが、「パッケージ」を手に入れるかどうか。サブスクで聴けるものも、メイヴィス・ステイプルスの新譜とか、何枚かはCDでも購入しました。

さて、このガビー・モレーノのヴァン・ダイク・パークスの共演盤も、ジャクソン・ブラウンとライ・クーダーが参加しているという情報を手に入れ、10月ころ、すぐにサブスクで聴けてしまったのですが、CDを注文しました。ほんというとLPも欲しいのだけれど、聴く回数を考えると躊躇します。音楽は「所有」から「使用」の時代へと移り変わっているのをひしひしと感じます。ヴァン・モリソンもロビー・ロバートソンも新譜までサブスクで聞けちゃうし。それに自分は決して整理がきっちりしているタイプの人間ではないので、CDラックを探し回る時間を考えれば、検索をかけたら一発で「音」が出てくるいう意味でも、サブスクはとっても便利なのですが、LP時代から「パッケージ」に親しんできた時代遅れの自分としては、ジャケットやブックレットを含めた「パッケージ」を簡単に捨て去る気持ちにはなれないのです。

もっとも、いくらサブスクが発達したからといって、過去の音源全てが聴けるようになるわけではないし、パッケージでしか聴けない音源も残っていくわけで、そういうのを追求する少数の「マニア」と、サブスクがあれば満足の多数、そして「youtube」で十分の大多数、という具合に「棲み分け」が進むのでしょうね。自分は、当然「マニア」ですが、サブスクのおかげで、「パッケージ」の購入ペースは明らかに減っております。

さて、ここから本題です。グアテマラ生まれ、37 歳の女性のシンガー・ソングライター、ガビー・モレーノのノンサッチからの新作アルバムなのですが、あの、ヴァン・ダイク・パークスとの共同名義・共同プロデュースになっていて、アルバム全曲のオーケストレーションをパークスが担当しているのです。パークスは今年76歳。まだまだ創作意欲が旺盛なのは嬉しいことです。ツイッターでも積極的に発信してるしね。パークスさん、21世紀の全曲オーケストレーション、バックアップ作品というと、ローウェル・ジョージの娘、イナラ・ジョージの作品を思い出しますが、今作は、その作品に勝るとも劣らない傑作。モレーノのラテン風味と、パークスの独特の「弦」の世界が有機的に絡み合って、えも言われぬ心地よいサウンドを生み出しています。

何と言っても、1曲目、ライ・クーダー、ジム・ディッキンソン、ジョン・ハイアットによる不朽の名曲、「Across The Borderline」の登場です。これがもう、ヴァン・ダイク・サウンドそのもの。耳に馴染んだ名曲で、ウィリー・ネルソン、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーンはじめ多くのミュージシャンが取り上げているのですが、こうまで雰囲気が変わるとは。それでいて、曲の本質的な美しさは全く失われていないところがすごいです。2コーラス目はジャクソン・ブラウンが歌うのですが、あまりカバーはやらない彼ですが、かなり昔にライブでこの曲を取り上げていて、その時の歌い方と基本的には変わりません。しかし、ガビーによるカウンター・ヴォーカルのアレンジがまさにヴァン・ダイク。どこか異世界の楽園を思わせるサウンドです。2コーラス目が終わってすぐにライ・クーダーによるボトルネック・ギター・ソロが登場です。出だしだけ聴くと、「あれ、『Get Rhythm』のヴァージョンのソロの流用かな、とか思うのですが、途中からフレーズも変わり、さらにはもう1本のボトルネック・ギターのオーバー・ダビング。アレンジの美しさに作者自ら花を添えています。

そして、おそらくこの曲でドラムを叩いているのが、ジム・ケルトナー御大。ライのギターはオーバー・ダビングでしょうけど、盟友との久々の共演になりますね。ケルトナーのドラム、いいですよね。ホント、ドラムが歌ってるし、職人技全開ですよね。もう一人、ドラムスでクレジットされているのはセバスチャン・アイマンズという方。過去にドラムやパーカッションでガビーをバックアップしてきた人物です。そして、エレクトリック・ベースには、かのリー・スクラーが参加しています。もう一人、アップライト・ベースではデヴィッド・ストーン、マーカス・ビューザーの二人がクレジットされております。

パーカッションでは、他にマリンバやクイーカが参加しており、ラテン風味の味付けで活躍しています。そして、ヴァン・ダイクによる七色の音世界を体現する弦楽器は、ヴァイオリンが2名、チェロ1名、そしてハープ、それに先のベース奏者が加わります。さらに、ピッコロ、フルート、オーボエ、バス・クラリネットをこなす管楽器奏者1名と、トランペット、フレンチ・ホルン各1名でホーンセクションを構成。全般的に参加しているギター&マンドリン奏者はベテラン・ジャズ・ギタリストのグラント・ガイズマンです。この他、ゲストでアイラ・イングバーがアレックス・ハーヴェイ作の「I’ll Take a Tango」に、アンソニー・ウィルソンが「O, Cantador」にゲスト参加しています。ボトルネックのエレキ・ギターを弾いているアイラは、リトル・フィートとも繋がりの深かったエリオット・イングバーの弟。やはりヴァン・ダイク人脈です。

これだけ豪華な編成ですが、キーボード奏者は見当たりません。ピアノもオルガンも入っていないようですが、曲によってはアコーディオンを聴くことができます。これはおそらくヴァン・ダイクが弾いているのでしょう。

もちろん、「Across The Borderline」以外の曲も、ガビー・モレーノとヴァン・ダイクが織りなす美しい音世界が満載。3曲目、「The Immigrants」は、トリニダードのソカの人気ミュージシャン、デヴィッド・ラダーの作品。上記の「I’ll Take a Tango」は、ニルソンがカバーしたことでも知られています。哀愁を帯びたアコースティック・ギターの響きが美しい4曲目「Historia de un Amor」はパナマの曲です。

アンソニー・ウィルソンが素敵なギターを弾いている「O’ Cantador」はボサノバ。ヴァン・ダイクのアレンジで一味も二味も違うボサノバになっていますが、さすがにおしゃれですね。アルバムのラストに収められているプエルトリコのマイナー・キーの曲、「Esperame en el Cielo」ではグラント・ガイズマンのガット・ギターが大活躍。ガビーとヴァン・ダイクのコーラスも聴くことができます。

特に気に入ったのがブラジルのジルベルト・ジル曲「Esperando Na Janela」。とってもキャッチーなサビのメロディにウキウキします。隠し味のアコーディオンもいいですねぇ。5曲目のペルーの曲、「Nube Girl」も同系統で少々優雅な感じ。素敵です。

以上のようにアメリカの曲が2曲のほかは、中南米各国の曲が散りばめられていて、英語、スペイン語、ポルトガル語で歌われているわけですが、オーケストレーションは全曲ヴァン・ダイク印で極めて統一感、躍動感のあるアルバムに仕上がっています。南米とヴァン・ダイクというと、彼のセカンド・アルバムでカリプソへの大接近が思い出されます。このアルバムにも同じ香りが漂います。もっとも、今作にはスティール・ドラムは入っていませんけどね(部分的にはマリンバが代役を務めているところがあります)。ベット・アーコス氏によるライナーのタイトルは「全アメリカ大陸賛歌 21世紀の吟遊詩人」というもの。このアルバムの特質を見事に言い表していますね。

さて、サブスクでは細かなレコーディング・データとか、ブックレットとか見れないですが、CDではアートワークも含めて楽しめます。こういうのもデジタル・データで購入する方法もあるんでしょうけどね。

上記のように、このアルバムは、ミュージシャンもヴァン・ダイク人脈のオールスター・キャストといったところですが、裏方にも懐かしい名前がちらほら。エンジニアのダグ・レイシーは、かつて「ダグ・レガシー」の名前でライやヴァン・ダイクの協力を得て、2枚のアルバムを発表している人物。ミキサーのアル・シュミットは、70年代から活躍しているエンジニアで、そのサポートに入っているマーティン・ブラウドラーは、ライ・クーダーの信任の厚いエンジニア。この盤でもライのギター・ソロのレコーディング・エンジニアはマーティンが担当しています。

そして、ジャケットやブックレットのイラストを担当したのが、かのビートルズ『リボルバー』のアルバム・ジャケットを手がけ、ベーシストとしてもジョン・レノン始め数々のセッションに参加し、ヴァン・ダイクとも親交の深いクラウス・フォアマンなのでした。こんな感じで、大半が70代の超技巧派のスタッフやミュージシャンが、37歳のラテン・アメリカ出身の才媛のアルバムで、その職人技を余すところなく発揮している名盤です。とっても濃密な世界ですが、ガビーの爽やかで人懐っこい歌声と相まって、何度でも繰り返し楽しむことができます。

ニューオーリンズからの帰路

日付が変わって5月6日月曜、ダンプスタファンクのライブ会場からタクシーをつかまえ、無事に午前2時半頃ホテルに帰り着きました。一息入れてから荷物のパッキングです。30分少々で終了。チェックアウトの予約を午前4時に、タクシーの予約を4時30分に入れているので、時間は余裕。かと言って眠ってしまっては大変なので、ベッドに横になってしばし疲れを癒します。

朝4時にフロントに降りてチェックアウト。ホテルの前にはすでにアーリーバードのタクシーが来ていて、それに乗ってニューオーリンズ国際空港へ。10日間滞在したニューオーリンズの街ともこれでお別れです。もう3回も来ているので町並みはすっかりおなじみとなりましたが、しばし、この景色も見られないのかと思うと少々切なくなります。それだけ、この街の魔力にはまっているわけなんですね。

前回はセカンド・ウィークエンドだけでしたが、最終日は昼のフェスが終わった後疲労困憊し、夜のライブには行けずにホテルでぐっすりと7時間睡眠をとって帰路につきましたが、今回はなんとか体力を温存し、最終日は夜中2時近くまでライブハウスで楽しんで、早朝6時発のダラス行きの飛行機で帰ることができました。当初の予定では9時20分、ニューオーリンズ発、ロサンゼルス行きで帰る予定だったのですが、なぜかロサンゼルス行きの便が運航停止となってしまい。ニューオーリンズ→ダラス→ロサンゼルスに変更。ニューオーリンズ出発は朝6時に変更で、貴重な朝の3時間が消滅してしまったのは残念でした。

まだ真っ暗なニューオーリンズ国際空港に到着したのは朝5時前。それでも多くの人が搭乗手続き、保安検査に並んでいます。自分は自動発券機にパスポートを読み込ませて手続きをするも、ダラス→ロサンゼルスのチケットは出て来るものの、ニューオーリンズ→ダラス便が発券されません。係員にお願いして発券してもらいましたが、ロサンゼルスから先はロサンゼルスでチェックインの時に発券してもらってくれとのことでした。保安検査を無事に済ませて空港内に入ります。もう出発まで30分ほど、行きは機内持ち込みOKだった荷物もちょっとかさばるので、荷室行きに。搭乗直前に係員に渡すことになりました。

予定通り朝6時過ぎにニューオーリンズ国際空港をテイクオフ、8時前にはダラスに到着です。ここで1時間ほどの待ち合わせ。まず、到着したターミナルから出発便でるターミナルへと無人列車スカイリンクで移動します。来た時は到着と出発のターミナルが同じだったので、スカイリンクには乗らなかったなぁ。出発ロビーに着いてから空港内のコンビニでマフィンを買い朝食にします。ダラスからロサンゼルスまでは4時間ほど。9時過ぎの便で一路ロサンゼルスヘ。前日一睡もしなかったので、さすがに機内で睡眠をとりました。

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ダラス・フォートワース空港にて、ニューオーリンズから乗ってきた便

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ダラス・フォートワース空港にて、スカイリンクのステーション

午前11時頃、ロサンゼルス国際空港に無事ランディング。約4時間飛んだのですが時差の関係でこの時間です。お腹が空いたので、到着したターミナルで軽いものを思ったのですが、モーニングセットの時間はすでに終了。ヒザ・マルガリータを食べました。空港内にしては割合美味しかったです。憧れの街ロサンゼルス。でも、乗り換えで立ち寄っただけなので、広大な空港の外へは出られません。しかし、この街は、ライ・クーダー、ジャクソン・ブラウン、デヴィッド・リンドレー、昨日見たばかりのリトル・フィートを始め、敬愛する多くのミュージシャンが住んでいる街。その土地にいるというだけで、少しばかり胸が躍ります。空港の北側、サンタモニカにはライ・クーダーが住んでいるのだけれど、今回は空港の南側、エル・セグンドの方しか見えません。

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空港の南側、エル・セグンド地域を望む

到着ターミナルから国際線ターミナルに移動します。途中長い地下通路を通ったら、今日本で話題になっているエルトン・ジョンの映画「ロケット・マン」のプロモーションがびっしりでした。矢印の通りに、トム・ブラッドレー国際線ターミナルに向かおうとするも、下へと書いてあるところのエスカレーターは点検中。他に階段もなく、尋ねる相手もいなくて仕方なく直進し、迷子になってしまいました。ようやく、ラウンジ入り口の係員に訪ねて、出発ロビーの場所を確認しました。トム・ブラッドレー国際線ターミナルの一番端っこが自分が搭乗するJALの出発ゲートでした。

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トム・ブラッドレー・ターミナル外観

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トム・ブラッドレー・ターミナルの免税品店

出発時間まではかなり時間がありますが、まだ、チェックインをしていないので少々不安です。搭乗ゲートを確認し、チェックイン・カウンターにいるアジア系の地上係員に話しかけたら、どうも中国の航空会社のスタッフだったようで、自分はJALのスタッフではないからわからない、JALのスタッフが来るまで待ってくれと言われました。彼女が持ち場を離れ、しばらくするとJALの女性係員が到着。チケットを発券してもらうべく通路側を希望しました。すると、どうもパーソナルモニターが壊れている席らしいのとのこと。キンドルもあるし、たくさん音源もあるし、それで構わないと言って、チケットを発券してもらいました。あと、離陸が少し遅れるので乗り継ぎ便に影響が出るかも、とのことでした。少し経って、その係員から呼び出しがあり、パーソナルモニターの故障が直ったとのこと。長時間のフライトなので、映画とかも見たいので、一安心です。チェックインした後は、免税品店巡りとかは一切せず、ひたすら椅子に座って音楽を聴いたりして旅の疲れを癒します。

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ロサンゼルス国際空港にて、帰路のJAL 777

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帰りの機内食

いよいよアメリカ大陸ともお別れです。13時過ぎの出発が30分以上遅れたでしょうか。長時間フライトはいつも疲れます。行きは楽しい旅の始まりで心がはやりますが、帰りはとにかく疲れを癒すことに専念せねばなりません。たいてい機内では眠れないのですが、機内食が出た後、少し眠れたような気がします。わざわざ係員から故障が直ったと言われたモニターですが、自分と窓側の二人を含め3席はフライトマップ以外は見れなくて乗務員の方から丁寧むな謝罪を受けました。成田には定刻より遅れて到着しましたが、福岡への乗り継ぎ便には影響なし。ただ時間があまりなかったので、空港ビルでのんびり夕食をとることができず、売店のカレーで済ませました。福岡便は5月7日夜9時の定時到着。小倉行きの最終バスは夜8時50分発だったので、地下鉄で天神まで出て、高速バスに乗り換え、夜11時前には無事に自宅に帰り着くことができました。

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成田空港にて 福岡行き 737

もともとニューオーリンズ音楽の大ファンではありましたが、2012年に亡き妻と一緒にニューオーリンズを旅して以来、この街に対する愛着は何倍にも増しました。7年間に3回、合計で20日ほどではありますが、フェスを訪れることができて充実した日々を送ることができました。自分のような「音楽バカ」には、「見たいステージがかぶりすぎる」というジレンマはありますが、フェス期間が最もお得感があっていいと思います。でも、年齢とともに体力が落ちてきて、今回も風邪はひかなかったものの、体力的には限界感がありました。フェスにしても、多くのライブにしても、「長時間立ったまま我慢する」というのがかなりきつくなってまいりました。これで、前回のようにアキュラ・ステージとジェンティリー・ステージを日に何往復もしてたら、確実に持たなかったなぁ。後、町歩きをするなら、足をちゃんと守ってくれるスニーカーが必須だと思います。

さて、昨年のジャズフェス期間中には、チャールズ・ネヴィルが天に召され、今年のジャズフェス後には、ドクター・ジョン、デイヴ・バーソロミュー、スペンサー・ボーレン、リル・バック・シネガル、そしてアート・ネヴィルが他界しました。そもそも、2012年は大好きなニューオーリンズのミュージシャンの多くが70台に達し、今行っておかないと、見れなくなってしまうかもという危機感もあって、意を決して初めてフェスに行ったわけですが、その時見たミュージシャンは、シュガーボーイ・クロフォード、ジョー・クール・デイヴィス、バックウィート・ザディコ、アラン・トゥーサン、そしてドクター・ジョン、アート・ネヴィルが鬼籍に入ってしまいました。ニューオーリンズ以外の人ではジェイムズ・コットンが亡くなっています。2012年はネヴィル・ブラザーズが揃ってジャズフェスに出た最後の年になり、2017年はオリジナル・ミーターズがジャズフェスに出た最後の年となりました。この2回に足を運べたのは本当にラッキーだったと思います。今回も50回記念ということで、様々なトリビュート・ステージがあったり例年以上に豪華なゲストが集まったりして、有意義なフェスでした。アフター・ダークやデイズ・ビットウィーンでも、ずっと見たかったザ・ワードやデッドフィートが見れたり、フィルモア・ニューオーリンズでFOFが見れたり、フレンチメンでアレックス・マクマリーやトレメ・ブラス・バンドが見れたり、カーミット・ラフィンズのお店に行ったりなど、充実した時間を過ごすことができました。

音楽以外にも、食べ物、古い歴史が残る町並み、郊外に行けばワニなどのいるスワンプ地帯に広がる大自然やプランテーションなど、本当に見所はたくさん。フレンチクォーター周辺だけでも、まだまだ行きたいところはたくさんあります。でも、今回は結構奮発して行き帰り入れて12日間もの旅行をしちゃったので、しばらく自重しないといかんですね。でも、また、きっといつか、この街を再訪したいと思います。素晴らしい音楽は若い世代に脈々と受け継がれているし、面白そうなバンドはまだまだたくさんいそうです。願わくば、アーマ・トーマス、エアロン・ネヴィルはじめとする先達の皆さんも、元気で永く音楽活動を続けてほしいものです。

今回、基本1ステージ1記事にしたので、もっと短くサラッと書こうと思ったのですが、ダメでした。記事が70近く、5月から9月までかかってしまいました。冗長な記事に目を通していただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

Ivan Neville’s Dumpstaphunk at Tipitina’s 2019.5.5

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ニューオーリンズ・サスペクツとトライバル・ゴールドの演奏が終わったのは夜11時頃だったと思います。それから休憩が延々と続き、ダンプスタファンクのメンバーがセッティングをはじめたのは、11時40分頃。演奏がスタートしたのは11時50分頃だったでしょうか。いよいよ、ニューオーリンズで見る最後のステージです。ステージには、ニックとトニー二人のベーシストだけが残っています。

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ニックとトニーによるダブル・ベース

ニックとトニーの二人だけで、ダブルベースのインプロが始まります。ニックが低音、トニーがチョッパーを含めた高音部を担当しますが、ニックもベースにエフェクトを掛けたりチョッパーで応戦したり、二人の熱い掛け合いが続きます。その間に他のメンバーがステージ上に登場。スタンバイします。ひとしきりニックにベース・ソロを任せた後、トニーの合図で、「Dancin’ To The Truth」のキメのリフ。それに合わせてバンドの演奏がスタートします。ニッキー・グラスピーは今回は不参加ですが、ニック、トニー、アイヴァンの3人のリード・ヴォーカルが1フレーズずつを歌いまわし、ダンプスタファンクらしいライブの幕開けです。今回もフェスのときと同じくトロンボーンとトランペットの二人のホーンズがサポートし、7人編成。次の曲も聞き覚えのあるフレーズのリフで始まる「Do You」。いかにもダンプスタファンクらしい演奏です。

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ベースを弾くトニー

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イアン

続くアップテンポの「I’m Gonna Make It」では ニックがリードを歌います。この曲ではトニーがリードギター。白いストラトで渋いフレーズを決めてくれます。アイヴァンも負けじとエレピのソロを決めます。この曲の後、ドラムのアルヴィンが結構長いドラムソロ。なかなかの凄腕です。今朝見たテレンス・ヒューストンと双璧の若手ドラマーでしょう。曲はインストの「Dumpstamental」。トニーはベースに戻ってエフェクトを掛けた渋いフレーズを紡ぎます。アイヴァンはシンセを交えて現代的なソロでグッとモダンに迫り、ホーンズも交互にソロをとり曲を盛り上げていきます。

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アルヴィンのドラムソロ

ここまで、イントロと4曲を続けてやってから、アイヴァンが客席へ挨拶。「ティピティーナ ニューオーリーンズ! 来てくれてありがとう」という感じです。続いての曲はカーティス・メイフィールドのカバー「Superfly」。アイヴァン が歌います。そういえば、行かなかったけど、7月26日の夜はハウリン・ウルフで、モータウンやらアイズレーやらをカバーするイベントがあり、ダンプスタファンクは「ダンプスタフライ」の名前で、カーティスのスーパーフライの曲をたくさんカバーしたんだと思います。その片鱗を1曲でも聴けてよかったで椅子。 リード・ギターはイアンが決めていました。

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ホーン隊

続いても定番カバー、バディ・マイルズの「United Nation Stomp」の登場です。この曲ではベースを弾きながら、 トニーがいい喉を聴かせます。こちらでもイアンがリードギターを弾きます。そして、曲は「Justice 」。この2曲はフェスでも続けてやっていましたが、リタ・クーリッジを見に行っていたので聴けなかったのです。ここで聴けてラッキーです。感想ではトロンボーン奏者が活躍(そういえば、スタジオ・バージョンではショーティをフィーチャリングしていました。)そして、エンディングではトニーの早弾きギターを聞くことができました。

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ストラトを抱え熱唱するトニー

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「Street Parade」で客席で演奏するホーンズ

ここで雰囲気を変えて、アール・キングのカバー「Street Parade」。間奏では ホーンの二人が間奏で会場を練り歩いて盛り上げます。まさにニューオーリンズならではの雰囲気。めちゃめちゃ楽しいです。通常運転のダンプスタファンクはここまでです。アイヴァンがメンバーを一人一人紹介しますが、冗談でトニーをミシシッピ出身と言って、トニーがちょっと憤慨しています。そして、スペシャルゲスト、マーカス・キングを紹介。上手からハットを被り赤い335を抱えたマーカスが登場します。

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マーカス・キング登場

天才ギタリストと言われるマーカス・キングの名前を最近よく聞くなぁと思っていたら、なんとまだ若干22歳というではありませんか。どんなパフォーマンスをするのか、とっても楽しみです。ニックが舞台袖に消え、トニーがベースを担当。始まったのは「I’d Rather Be Blind, Crippled & Crazy」。O.V.ライトのナンバーでデレク・トラックス・バンドのレパートリーでもあります。曲はマイナー・キーのソウルで、高音がよく出て、少しハスキーでエモーショナルなマーカスの歌声にぴったりです。

マーカスはやや小柄で少々ぽっちゃりしていますが、色白で童顔。「ベイビー」の愛称で呼ばれるのがよくわかります。しかし、ステージングは堂々たるもので歌もギターも自信たっぷり。両腕はタトゥーがびっしりで、スティービー・レイ・ヴォーンを思わせるカッコいいソロを決めてくれます。

次はコテコテの3コードのブルーズで、B.B.キングのカバー「It’s My Own Fault」。 1回目の間奏アイヴァンのオルガン・ソロ、2回目の間奏でマーカスとイアンのギター・バトルになります。やはりマーカス先、イアン後でコール&レスポンスですが、やはりイアンの方が少し大人しい。でも、イアンも頑張ってます。3回目の間奏ではマーカスがここぞとばかり弾きまくりです。曲が終わると「Baby, You are great!」の声が飛んでいました。続いては、オールマン・ブラザーズのカバー「Don’t Keep Me Wonderin’」が登場。ボトルネックは弾きませんが、サザン・ロックマナーの熱いギターと歌声を聴かせてくれました。以上3曲がマーカスのヴォーカルでした。

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マーカスとイアンのギター・バトル

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マーカス&ダンプスタファンク

ここで、ニックも戦列に復帰、次の曲はトニーが歌うレッド・ゼッペリンのカバー「Ramble On」です。すごくかっこいいです。間奏ではマーカスが速弾きを決めます。この曲で本編終了。時間は夜中の1時30分くらいになっていました。その後、アンコールがありました。まずは、ニックが歌うアイズレー・ブラザーズの「Take Me To The Next Phase」。すごくかっこいいです。自分は朝の4時にホテルを立つ予定にしていたので、あまり遅くなってもまずいと思い、このあたりで引き上げることにしました。後ろ髪をひかれる思い。アンコール2曲目は、トニーがリードボーカルで、タワー・オブ・パワーの「Soul Vaccination」で締めとなったようです。

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本編ラストはみんなでゼッペリン・ナンバー

ジャズフェスの最終日。とってもいいライブで有終の美を飾ることができました。ダンプスタファンクの強力なサウンドはいつ聴いても気持ちがいいし、テキサスのオースティンからやって来たマーカス・キングは、サザン・ロックの明日を担う若きギター・ヒーローです。ここで、マーカス・キング・バンドのレパートリーでなく、彼のルーツを知ることのできる南部音楽のスタンダードとも言える曲で、マーカスとダンプスタファンクとのコラボを目にすることができたのも大きな収穫でした。ダンプスタファンクはミーターズ直系のニューオーリンズ・ファンクの雄ではありますが、カーティスやアイズレーからゼッペリンに至るまで、影響を受けた先達のカバーを色々聴けたのも楽しかったです。

1.Intro
2.Dancin’ To The Truth
3.Do You
4.I’m Gonna Make It
5.Dumpstamental
6.Superfly
7.United Nation Stomp
8.Justice
9.Street Parade
10.I’d Rather Be Blind, Crippled & Crazy(with Marcus King)
11.It’s My Own Fault(with Marcus King)
12.Don’t Keep Me Wonderin’(with Marcus King)
13.Ramble On(with Marcus King)
(Encore)
14.Take Me To The Next Phase
15.Soul Vaccination

以下のアドレスで、今のところニューオーリンズ・サスペクツを含め、このときのライブ全編を見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=oKtPDFltb8E

New Orleans Suspects Tribal Gold at Tipitina’s 2019.5.5

ジャズフェスが終わり、一旦ホテルに帰還。シャワーを浴びた後、今回の旅では初めてのティピティーナへ出かけます。チュピトーラス通りのちょうどいい時間の路線バスに乗り遅れたので、タクシーで行ったのですが、今思えばマガジン線で行くという手もあったかも知れません。ドライバーは若いアフリカ系の男性、少しだけ会話を交わします。タクシーは途中でバスを追い抜きました。

最終日の夜のライブも様々な選択肢があり、少し迷ったのですが、ダンプスタファンクのフル・ステージを見たいと、このライブに決めていたら、前々から見たかったニューオーリンズ・サスペクツがオープニングにアナウンスされ、余計に嬉しくなりました。サスペクツのドラマーはウィリー・グリーン。ネヴィル・ブラザーズのドラマーです。2012年のジャズフェス最終日の時のように、ダンプスタファンクのライブにネヴィル兄弟の誰かがゲスト参加するのではないかな、とか期待してしまいました。

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ティピティーナスに到着したのは、夜8時40分頃、ダンプスタファンクの大ファンである静岡のIさんはすでに到着していました。まだフロアはガラガラの状態。ショウは9時からのインフォですが、まだ全然始まる気配がありません。Iさんと話しながら開演を待ちます。このハコには合計4回来ましたが、スタート時間は全く謎。ほぼ定時に始まったのが2回、開演時間を1時間も遅れたのが2回です。多くのファンは開演時間くらいに集まってくるので、どこかで情報を得ているんでしょうね。

ニューオーリンズ・サスペクツは2012年にジャズフェスに来たときに、アキュラステージのトップバッターだったのですが、もたもたして見逃してしまい、2017年の時も見れず、今回もフェスでは4月25日出演で半ば諦めていましたが、ようやく見ることができます。自分はウィリー・グリーンのドラムの大ファンなので、彼のプレイに久々に接することができるのが楽しみでした。

バンドのホームページを見ると、以下のようなインフォがあります。
「ニューオーリンズ・サスペクツは、2009年にニューオーリンズのメープルリーフでピックアップバンドとして一緒に演奏を始めました。 NOLAで最も尊敬されるプレイヤーの数人で構成されたグループは、自身をThe Unusual Suspectsと名付けました。彼らの化学反応は素晴らしく、2011年の夏までにフルタイムでツアーを行うことを決め、バンドNew Orleans Suspectsに改名しました。彼らはすぐにサンフランシスコからニューヨークに大勢の人を集め始めました。5年間で彼らは4枚のCDをリリースし、ニューオーリンズの最高のスーパーグループの1つとしての地位を確立しました。」

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夜9時半を過ぎてようやく簡単なサウンドチェックが始まり、サスペクツのショウが始まったのは、9時50分近かったと思います。まず、ギター、ベース、キーボード、サックス、ドラムスの5人のメンバーでインストを演奏しますが、ドラマーがウィリー・グリーンではありません。かつてジョン・クリアリーのアブソリュート・モンスター・ジェントルメンのメンバーだったエディー・クリスマスです。ウィリーのドラミングを期待していた自分には肩透かしでしたが、エディのドラムもかなりかっこいいです。曲は彼らのファースト・アルバムに収録されている「Swampthang」。「Fire on the Byou」風のイントロから、この曲独自のリフをギターが紡いでいきます。すごいテクニックで、キーボード、サックス、ギターがソロを回し、サスペクツだけの演奏は1曲で終了します。長い曲で7〜8分は演奏したようです。

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キーボードがクラヴネットでファンキーなリズムを奏で、トライバル・ゴールドの3人のマルディ・グラ・インディアンが登場します。ビッグ・チーフ、ファン・パルード&ゴールデン・コマンチェ・マルディ・グラ・インディアンです。曲は「Injuns, Here Dey Come」。インディアンの登場の際によく使われるマルディ・グラ・ソング。もちろんファンキーに決めてくれます。続いてはギターが感じのいいフレーズを弾いてマイナー・キーの「Sew Sew Sew」が始まりました。マルディ・グラ・インディアン・ソングは単純なコードで同じフレーズの繰り返しが多く、単調になりがちですが、そこはニューオーリンズ・サスペクツ。極上のテクニックと緩急をわきまえた演奏で場を盛り上げていきます。バックの演奏が消えかけて、観客に歌わせる場面もあれば、一転して怒涛のサックス・ソロで盛り上げインディアンの一人がステージ下の花道に降りて踊り演奏を盛り上げます。

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曲は「Shallow Water」、「Early In The Morning」と続きますが、いずれも同じスレーズを延々と繰り返すマルディ・グラ・インディアン・ソング。しかし、それこそがアフリカン・ルーツの証しです。退屈になるどころか心がどんどん高揚していきます。「Round Up Dem Suspects」は、2016年のスタジオ・アルバム『Kaleidoscoped』に収録されていました。曲は定番の「Ooh Na Ney」へと続き「Flambeaux」で終了。約1時間のステージ、圧巻でした。

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今回、インディアンものは、ニューオーリンズ・ジャズ博物館でたまたま遭遇したCha Waくらいだったので、最後に訪れたティピティーナスでマルディ・グラ・インディアンを見れたのはラッキーでした。でも、ニューオーリンズ・サスペクツの普通の演奏ももう少し見たかったな。もちろん、ギターもキーボードもサックスも、いろんな曲でソロをとって盛り上げてくれたので、サスペクツの力量は十分伝わったのだけど、彼らの歌物とかも聴いてみたかったし、やっぱりウィリーのドラムが見れなかったのは残念。次回、この街を訪れるまで、ウィリーが現役でやってくれていることを祈ります。

1.Swampthang
2.Injuns, Here Dey Come
3.Sew Sew Sew
4.Shallow Water
5.Early In The Morning
6.Round Up Dem Suspects
7.Ooh Na Ney
8.Flambeaux

Trombone Shorty & Orleans Avenue at New Orleans Jazz Fest 2019.5.5

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ジャズ・テントを出て、近くのアキュラ・ステージに向かいます。アキュラではジミー・バフェットとコラル・リーファー・バンドが演奏中。スチール・ドラムも入ってとっても心地よい演奏です。ジミー・バフェットは日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは大人気。多くの支持者がいます。見渡しても、彼の孫娘のような10代の女の子も身体を揺すって音楽に乗っています。自分が足を踏み入れた時やっていたのが、ちょうど代表曲「Margaritaville」だったというタイミングだったせいもあるでしょう。この曲がラスト・ナンバーでアンコールの拍手に応えて始まったのはローリング・ストーンズの「You Can’t Always Get You Want」。やはり、今回ストーンズがジャズフェスに来る予定だったことをみんな意識していますね。周りの観客は一緒に口ずさんでいます。この曲を聴きながら人混みをぬって前列の方へ進みます。続いて「Love and Luck」。スティール・ドラムがとても効果的で南国でのリゾート気分にぴったりな楽曲ですね。演奏も素晴らしく人気のわけがわかりました。曲は途中からボブ・マーリーの「One Love」に移行。おそらく、このナンバーは後でネヴィルズもやるだろうなぁと思いながら聴いていると、あまり長くやらずに全編の演奏は終了となりました。

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ジミー・バフェット

ここで、静岡のIさんと無事合流することができ、一般ゾーンのほぼ最前列でトロンボーン・ショーティ達を観ることができます。ジェンティリーのジョン・フォガティにも念が残らないでもないですが、ネヴィルズも出るとあっては、こちらが優先でしょう。長いようで短かったジャズフェス。全8日の日程のうち7日の参加ですが、もうおしまいか、という思いが強いです。本当に退屈なステージは一つとしてなく、どこに行っても音楽が生き生きと躍動していました。

トロンボーン・ショーティは2012年のジャズフェスに来たとき、アキュラ・ステージの2番バッターだったのを見ました。その後がドクター・ジョン、ブルース・スプリングスティーンだったから、2番と言えどもかなり重要な役どころ。その年がアキュラ・ステージの大トリをネヴィル・ブラザーズが務めた最後の年になり、翌年からショーティがその大役を現在まで引き受けています。2018年のステージでは、ジャズフェス期間中に亡くなったチャールズ・ネヴィルをトリビュートし、シリル、アイヴァン、イアンのネヴィル一家をゲストに迎えたそうです。今年は、プログラムにも「With Nevilles」と銘打っているので、エアロンが出るかどうかはわからないけど、上記の3人は絶対出るだろうと、早くからこのステージを見る予定にしていました。すると、前日のテレビでエアロンもこのステージに登場するとの情報が入ってきたのでした。

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ショーティ熱演

静岡のIさんと、しばし雑談をしているといよいよジャズフェス最後のステージが幕を開けます。SEは最新作の冒頭に入っている「Laveau Dirge No.1」。ブードゥー教の伝説の司祭マリー・ラヴォーをテーマにした曲でしょうか。下手からショーティが姿を表すと割れんばかりの声援が巻き起こります。マイナー・キーのファンクが炸裂。定番曲「Where It At?」です。7年ぶりに見るショーティのステージですが、歌もいいですよねぇ。続くナンバーもマイナー。インストのファンク「Backjump」です。ショーティは思いっきりトロンボーンを吹き鳴らしていて、その姿には神々しささえ感じます。曲は途切れなくミーターズのカバー「Ain’t No Use」に続いていきます。この曲は最新作に収録されていたので、演奏してくれるだろうと思っていました。原曲より少しテンポを上げて爽快感を演出しています。今や世界的な売れっ子となったショーティですが、先達に対するリスペクトを忘れない姿勢にはとっても好感が持てます。

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こちらも熱演

次の曲はミディアム・テンポで切ない歌物「The Craziest Thing 」。間奏では自らのトロンボーン・ソロをたっぷり聴かせます。しかも、後半はパーカッションと二人だけで熱演。そういえば出だしから4曲連続でマイナー・キーの曲を並べてきましたね。と、思うと次のナンバーの出だしは少しの間マルディ・グラ・インディアン・ソングによく出てくる「Un na-ne」を繰り返した後、聞き覚えのあるホーンのフレーズに。曲は「Here Comes The Girl」です。こちらも原曲よりスピードアップして、カッコいいダンスチューンに模様替えしていますが、原曲の楽しさはそのままです。間奏ではエフェクトをかけて残響音を強調したバリトンサックスが大活躍です。続く「Suburbia」もマイナー・キーのインスト。テーマはホーンズが決めますが、間奏ではエレキギターが速いパッセージのソロ、その後はホーンズだけでフレーズを紡ぐという起伏のある展開。息もつかせぬ熱演です。最後はショーティが無伴奏でトロンボーンのソロを決めてエンディング。力量を見せつける演出です。

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トランペットも上手い

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アイヴァン、イアンを加えて「Fire On The Bayou」

ここで、ゲストを紹介。アイヴァン・ネヴィル、イアン・ネヴィル、トニー・ホールを呼び出し、「Fire On The Bayou」が始まります。イントロにはショーティが「Do You Wanna Funk It Up」という歌詞をかぶせ、リード・ヴォーカルはアイヴァン。続いての登場はシリル・ネヴィル。曲はミーターズ・ナンバー「No More Okey Doke」。この1曲で袖に引っ込もうとするシリルをショーティが押しとどめ、始まったのはネヴィルズ・ナンバーの「Brother Jake」が始まります。リードはアイヴァン。シリルがカウンターを歌い、叔父甥のデュエットになります。ショーティのバンド+ネヴィルズで、こんな曲が聴けるなんて感激です。このフェスの締めくくりに、このステージを選んで大正解でした。

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シリル登場

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シリルとトローンボーンを吹くショーティ

ここで一旦シネルが引っ込み、もう一人のゲストを紹介します。ショーティの「夢が叶ったよ」というMCで登場したのはエアロン・ネヴィル。前日も聴けた曲ではあるけれど、この編成でのバックもたまりません。代表作の一つ「Yellow Moon」の登場です。チャールズが吹いていたサックスの箇所はショーティがトロンボーンで奏でます。これまた感動です。曲が終わると、すかさずエアロンがスキャット。キーボードだけをバックに「Amazing Grace」が静かに始まります。西の方が赤く染まり始めたニューオーリンズの青空に溶けてゆくような歌声です。一節が終わるとギターがカッティングでリズムを取り始めます。曲は言わずと知れたボブ・マーリーの「One Love」です。舞台袖からシリルが再び登場。シリルがリードを、エアロンが高音部を歌い、久々の兄弟競演に目頭が熱くなりました。曲はごく短い間でしたが歌い終わった後、二人はガッチリと握手をしていました。

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エアロン登場

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「Yellow Moon」のエンディングではチャールズのフレーズをショーティが

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ついに兄弟競演

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そして、ショーティのトロンボーン

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自分のバンドだけになって再び熱演

これで有終の美かと思われましたが、ショーティはアンコールに応えます。アップテンポのインスト「Hurricane Season」を短くプレイした後、「Do To Me」が登場、途中でホーンズだけで「When the Saints Go Marching In」へと展開。コーラス隊も絡んできます。ひとしきりオーディエンスに歌わせた後、再びに「Do To Me」に戻ってエンディング。メンバーを一人一人紹介して大団円です。7年ぶりのショーティのステージ、大きく成長した彼の姿を見ることができてよかったと思います。そして、本当に久々のエアロンとシリルのネヴィル兄弟の競演。わずか2分くらいでしたが、この瞬間に立ち会えて幸せでした。2019年、第50回のジャズフェスを締めくくるにふさわしい素晴らしいステージでした。

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いよいよ大団円

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サングラスを外しイケメンを少しだけ披露

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客席に別れのポーズ

1.Where It At?
2.Backjump
3.It Ain’t No Use
4.The Craziest Thing
5.Here Comes The Girls
6.Suburbia
7.Fire On The Bayou (with Ivan, Ian, Tony)
8.No More Okey Doke (with Cyril, Ivan, Ian, Tony)
9.Brother Jake (with Cyril, Ivan, Ian, Tony)
10Yellow Moon (with Aaron, Ivan, Ian, Tony)
11.Amazing Grace(with Aaron, Ivan, Ian, Tony)
12.One Love(with Aaron, Cyril, Ivan, Ian, Tony)
13.Hurricane Season
14.Do to Me
15.When the Saints Go Marching In

例によってシャトル・バスでホテルに戻りますが、その後、最後のライブに出かけるので腹ごしらえです。クロウフィッシュ・エトフェは売り切れだったので、クロウフィッシュ・ソーセージのポーボーイとブレッド・プディングで夕食にしました。朝からずっと食べていなかったというのもあるでしょうけど、とても美味しかったです。

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クロウフィッシュ・ソーセージのポーボーイ

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ブレッド・プディング

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バス乗り場に沈みゆく夕陽

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町はいつものアフター・フェスト・パーティ

John Boutte at New Orleans Jazz Fest 2019.5.5

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ジョージ・ポーター・Jr.、ジョン・クリアリー、リトル・フィートと朝から充実のライブを3組ジェンティリー・ステージで楽しむことができましたが、4時間ずっと立ちっぱなしだったので足はガクガクです。その前に水分補給を、ということでコンゴ・スクエア・ステージの近くにある屋台のレモネード売り場に並びます。ステージでは間も無くチャカ・カーンのショウが始まりますが、最終日曜とあって多くの人が訪れておりレモネード売り場の前にも長い列ができています。ところが、MCがチャカの登場を告げた途端に、列に並んでいた多くのアフリカ系の方々が、列を離れステージの方に行ってしまったのには驚きました。おかげであまり並ばずレモネードを手に入れることができましたが、チャカはやっぱりすごい人気なんですね。せっかくなので、レモネードを飲みながら遠くから少し聴いてみました。

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豆粒のようなチャカ・カーン

1曲目は「This Is My Night」。シンセなどを多用した現代的なサウンドが今ひとつ好みではないですが、マイナーキーの曲はかっこよくチャカの歌唱力には圧倒されます。2曲目はルーファス時代の「Do You Love What You Feel」、3曲目も同じく「Tell Me Something Good」。この曲ではワウ・ギターがフィーチャーされていて、カッコいいアレンジでした。そろそろ座りたくなったので、コンゴ・スクエア・ステージを離れエコノミー・ホール・ステージを目指します。途中、ジャズ&ヘリテージ・ステージでは本格的なメキシカン・バンドが気持ち良い演奏を繰り広げています。

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通りがかりにちら見したメキシカン・バンド マリアッチ・ハリスコ

少し歩いてエコノミー・ホール・ステージに着きました。素敵なドクター・マイケル・ホワイトのクラリネットが聴こえてきます。しかし空席はなく立ち見の人もいる模様。ステージの中ではちょうサイス・クラークという女性シンガーがゲストに登場するところでしたが、自分は座席を求めて移動です。ジャズ・テントではこれからジョン・ブッテのステージが始まるところ、どうかな、と思いながら会場に行くと、最後列に1席空席がありました。そこに座りましたが、自分の両側とも日本の方でした。とにかく、これで一息つくことができます。

ジョン・ブッテは、ハリケーン・カトリーナの襲来後に結成されたニューオーリンズ・ソシアル・クラブのアルバムでその名前を知り、ドクター・ジョンのトリビュート・ライブ盤に参加していたり、ピーター・バラカンさんがラジオで時折かかったりしてずっと気になっていた人物。遡って聴いたジョン・スコフィールドのゴスペル・アルバムにもジョン・クリアリーとともに参加し、4曲を歌っていました。彼はゴスペル・ファミリーに生まれ、家族ぐるみでゴスペルを歌っていましたが、随分前に独立し、ソロ・シンガーの道を歩んでいます。

ライブは今年3月リリースされた最新作『A Well Tempered Boutte』収録曲を中心に演奏されました。1曲目は「Nevertheless I’m in Love with You」。美しいピアノをバックに静かに始まり、インテンポからは軽快な4ビートになり、ホーンも絡んできます。シナトラのナンバーのカバーです。2曲目は「Do You Know What I Mean to Miss New Orleans」が登場。言わずと知れたサッチモのレパートリー。しっとりとした4ビートのバラードで歌っています。

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次の曲は「My Indian Red」。ブッテ自らタンブリンを振りながら「Indian Red」をジャジーに料理したマルディ・グラ・ソングを楽しそうに歌っています。「Big Chief」という歌詞も出てきます。間奏ではホーンズからピアノ、ギターへとソロを回していきます。ピアノはニューオーリンズ・スタイルというよりも、通常のジャズ・スタイル。でも、とっても心地よいです。続いてブッテが「50回おめでとう」とジャズフェスを讃え、続いてはトランペットのイントロで始まる「La Vie en Rose」は、誰でも知ってるスタンダード。もちろんサッチモのバージョンが有名です。

次のナンバーは「Little Red Rooster」。スリー・コード・メインのブルーズで、ギターもブルージーなプレイ。間奏ではアルト・サックスがエモーショナルなソロを聴かせ、続いてギター・ソロになります。自分の好きなタイプのジャズ・ギタリストです。5曲目はナット・キング・コールの「Nature Boy」が登場。この曲はエアロン・ネヴィルがアルバム・タイトル曲にしてカバーしていましたが、ブッテさんも挑戦です。もともと甲高い声のジョン・ブッテですが、この曲ではファルセットも織り交ぜて、その高音がかなり生かされていました。

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7曲目は、ハリケーン・カトリーナ襲来後のニューオーリンズを題材にしたテレビ・ドラマ、『Treme』の挿入歌「Sisters」。イントロで「私には6人の姉妹がいるよ。」なんて言ってたように思います。軽快なボサノバ調のアレンジとなっていました。まだ聴いていたいのですが、大トリ、トロンボーン・ショーティとネヴィルズをいい場所で見るためにこの曲を最後に席を立ちます。この後3曲の演奏がありました。ジャズフェスの演奏の一部はmunkmusic Live Recordingからオフィシャルで音源を買うことができるので、全曲のセットリストを知ることができました

全体的にオーソドックスなジャズ・アレンジではありますが、「My Indian Red」などニューオーリンズ風味もあって楽しめたライブでした。座ったポジションが最後列とあって、ちょっと周りの雑談の声が大きく、少し気が散ったのが玉に瑕でしたが、朝から3バンドを立ちっぱなしで見たあと、ジョン・ブッテを座って聴けたというのはとってもありがたかったです。選曲は、ポール・サイモンのカバー「American Tune」とドラマ・トレメの挿入歌「 Sisters」と「Treme Song」を除く7曲が新作アルバムからのレパートリーとなっていました。

1.Nevertheless I’m in Love with You
2.Do You Know What I Mean to Miss New Orleans
3.My Indian Red
4.La Vie en Rose 
5.Little Red Rooster
6.Nature Boy
7.Sisters
8.Fly Me To The Moon
9.American Tune
10.Treme Song

ニューオーリンズの音楽とは直接関係はないのですが、数日前、ドニー・フリッツの訃報を知りました。今年4月に久々の来日が予定されていましたが、直前になって体調不良でキャンセルとなりました。5月に心臓の手術を受けていたようです。7月には昨年行ったカナダのバンクーバー・アイランド・ミュージック・フェストにも出演がアナウンスされていましたが、こちらもキャンセルとなっていましたので、体調は良くないのだなぁと思っておりました。享年76歳。大変残念です。2009年の来日公演で、ミーターズの「Jungle Man」をカバーしていたことを思い出します。ご冥福をお祈りしたいと思います。

Little Feat at New Orleans Jazz Fest 2019.5.5

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次は、いよいよリトル・フィートです。リトル・フィートの大ファンなのですが、今まで一度も彼らのステージを見たことはありませんでした。ようやく悲願が叶います。1978年の彼らの初来日の時は、中学生になったばかりで彼らの存在すら知りませんでした。1987年にはブルース・バスターズで来日したポール・バレールを京都の磔磔で見ることができました。この時ポールは「All That You Dream」と「Dixie Chicken」を歌ってくれましたし、渋くカッコいいギターをたくさん聴かせてくれました。1988年にリトル・フィートは再結成し、89年、99年、2000年、2012年と4回も来日公演があったのですが、いずれも東京、大阪 (名古屋もあったかも)ばかりで、仕事の都合などもあり、どれも見ることができませんでした。2010年にはドラマーのリッチー・ヘイワードが逝去し、オリジナル・メンバーはビル・ペインだけになってしまいましたが、1973年に加入したポール、ベースのケニー・グラッドニー、パーカッションのサム・クレイトンはみんな元気に活動を続けています。オリジナル・アルバムは、2012年の『Rooster Rag』以来出ていませんが、活動は継続しており、今年は結成50周年を祝うツアーを行っています。

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ビル・ペイン

今回のジャズフェス出演もそのツアーの一環のようですが、ジャズフェス自体の50回ともリンクしているし、ニューオーリンズ音楽をベースにしているフィートの音楽性を考慮すると、今回の出演者に選ばれたのは妥当なところでしょう。彼らは過去何回かジャズフェスに出演していますが、おそらく2006年以来の久々の出演ではないかと思います。ポール・バレールとフレッド・タケットは毎年のようにやってきて、主にリパブリック・ニューオーリンズで「Dead Feat」ギグをやっているのですが。

そんなわけで、個人的にはとっても期待しているリトル・フィート。1時間と言わず2時間くらいやって欲しかったのですが、このイベントの持ち時間は基本1時間。それ以上演奏するグループは例外的のようです。ステージ上ではセッティングが進んでいます。楽器の音出しもしているようですが、中音だけでやっているようで、外にはほとんど聞こえてきません。でも、キーボードの配線がトラブっている模様。なんだかスッキリしない状態ですが、こういうフェスなのでセッティング時間もタイムリミット。MCが登場してリトル・フィートを紹介します。ステージ最前列は下手からフレッド・タケット、ポール・バレール、ケニー・グラッドニー、ケニーとポールの間、ひな壇の下にサム・クレイトン、ひな壇上は下手からビル・ペイン、ドラムのゲイヴ・フォード、そしてサムの背後には3人のホーンズも参加しています。トランペット、アルト、テナーという編成です。

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「Spanish Moon」を歌うサムとポール

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ポール、サム、ケニー、そしてホーンズ

ポールが、「ハッピー・ジャズフェスト」と挨拶。「ジャズフェスも50回だけど、僕らも50周年だよ。」と言って1曲目がスタートします。イントロで聞き覚えのあるベースライン、そしてクレイトンのコンガ、ホーンズのイントロが始まります。曲は「Spanish Moon」。サムが渋い喉を聴かせます。サムはまだ67歳ですが、ちよっと年齢を感じさせる風貌になっています。ところで、演奏では、ビル・ペインの弾くキーボードの音量がかなり小さくて聴き取れません。途中、長い鍵盤の電子オルガンに向うと、今度は爆音が出てしまいます。ビルはかなり不機嫌そうです。曲はそのままポールの代表作「Skin It Back」に繋がっていきます。定番とは言えワクワクします。

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ポール、フレッド、ゲイヴ

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「Oh Atlanta」間奏のツイン・ギター

ビル・ペインが「ジョン・クリアリーは素晴らしいねぇ。」とコメントしてから始まったのは「Oh Atlanta」。これも生で聴きたかったナンバー。あのライブ盤でのローウェルとポールのギターの絡みは、フレッドとポールでバッチリ再現してくれています。この曲でのボトルネックはおそらくフレッドだったと思いますが、二人ともフィガリングもボトルネックもどちらも凄腕ですよね。続いてのナンバーは予想していなかったローウェルのソロ・アルバムからの「Honest Man」。この曲、ローウェルとフレッドの共作だったんですね。それでフレッドがリードを歌うわけだ。タイトなサウンドが素晴らしいです。

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「Honest Man」を歌うフレッド

次の曲の前にフレッドがギターをマンドリンに持ち替えます。「50年前、このバンドはこの曲でスタートした。」というMCの後、始まった曲はもちろん「Willin’」。先日の「Dead Feat」でやらなかったので、きっと今日はやってくれるだろうと思っていました。ピアノとマンドリンが織りなす美しいアンサンブル、そしてポールのエレクトリック・ボトルネック・ギターによる静かなリード。ポールがゆったりと歌いだします。前サビではトランペットも加わり盛り上がっていきますが、自分の周りの人たちはみんな一緒に歌っています。間奏ではビル・ペインのエレピが宙を舞う蝶のような見事なフレーズを聴かせた後、フレッドが素朴なマンドリン・ソロ。2番の前サビから、サビに行かず、「Don’t Bogart That Joint」に展開。周りのオーディエンスは大喜びです。1フレーズだけで「Willin’」のサビに戻って終了。ここからあとのリード・ボーカルは全部ポールが担当です。

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フレッドがマンドリンに持ち替え「Willin’」

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ジャズフェス名物 数々ののぼり

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ゲスト・ジョン・パパ・グロウを迎えて

続いてのナンバーは「Fat Man in the Bathtub」。この唯一無二のアンサンブルはリトル・フィートの真骨頂です。「Dead Feat」ももちろん素晴らしかったのですが、やはりビル・ペインのピアノ、キーボードはフィートに不可欠なサウンドですよね。当然聴衆のボルテージも上がっていきます。ここでゲストの登場。ビルがジョン・グロウを紹介し、グロウはオルガンの席へ。始まった曲は「Dixie Chicken」です。やはりオルガンの調子がイマイチで時折大きな音が出たり、ノイズが乗ったりします。しかし、ジョン・パパ・グロウもいい感じのソロを奏でてくれます。ビルは人声コーラスのようなシンセサウンドや早いパッセージのピアノで応戦します。この曲ではオーディエンスも大合唱。ラスト・ナンバーは予想どおり「Feats Don’t Fail Me Now」。もちろん、この曲でもフィートの粘りのある真骨頂サウンドが繰り広げられます。ホーンズも熱演です。

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長年夢見ていた素晴らしいステージでした。最高でした。欲を言えば2時間くらいのフルステージを見てみたかったのですが、フェスという性格上それは仕方ないことでしょう。そのかわり先日、他の地域ではまず見れない「Dead Feat」セッションを見れたのだから良しとせねばなりません。キーボードのトラブルは何とも残念。今まで3回訪れたジャズフェスではほとんど機材トラブルに遭遇したことがなかったので、よりによってフィートの時に起きるとは。でも、それも含めて「ぶっつけ」のフェスなんですよね。選曲は申し分ありません。1曲を除き、ローウェル在籍時の大ヒット・ライブ盤『Waiting For Columbus』収録の代表曲ばかり。除く1曲もローウェルのソロ作収録作ですから悪かろうはずはありません。メンバーの半数は70代に突入ですが、まだまだ元気に活躍を続けてもらいたいものです。

ところで、ジャズフェスのホームページからリンクがあるmunkmusic Live Recordingからオフィシャルで音源を買うことができるのですが、ライン入力の編集となっています。ここではオルガンなどのノイズをかなりカットしています。その分キーボード類の音量が全体的に押さえられているようです。

1.Spanish Moon
2.〜Skin It Back
3.Oh Atlanta
4.Honest Man
5.Willin’ 〜Don’t Bogart That Joint〜Willin’
6.Fat Man in the Bathtub
7.Dixie Chicken
8.Feats Don’t Fail Me Now

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フィートが終わったあと、少しアコーディオンとラブ・ボードのお店をのぞいてみる

Jon Cleary at New Orleans Jazz Fest 2019.5.5

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ジェンティリー・ステージの二番手は、昨晩フル・ステージを堪能したジョン・クリアリー&アブソリュート・モンスター・ジェントルメンです。もちろん、ナイジェル・ホールも参加。ジャズフェス会場で彼らのステージを見るのは、実はこれが最初だったりします。2012年に来たとき、レコード・ショップ、ルイジアナ・ミュージック・ファクトリーのインストア・ライブでクリアリーを初めて見てファンになりました。その年のジャズフェスはアフリカ勢シェイク・ローの方を優先してしまい、2017年はセカンド・ウィークエンドのみだったので、ファーストに出たクリアリーを見ることはできませんでした。もっとも、この時は、初めてメープル・リーフ・バーに行き、アブソリュート・モンスター・ジェントルメンの演奏を楽しむことができたのですが。

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ビッグ・Dとアブソリュート・モンスター・ホーンズ

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A.J.ホール、クリアリー、コーネル

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コーネルとナイジェル・ホール ナイジェルは野球のユニフォームがお気に入りのよう

ジェンティリー・ステージの中央にクリアリーがエレピとノードを2段に積み上げ、観客の方を向いて演奏します。下手にはギターのビッグ・Dとその背後に3人のホーンズ、上手にはベースのコーネルとハモンドのナイジェル、クリアリーの背後にはドラムのA.J.ホールがスタンバっています。

昨夜のセカンド・ステージ同様、短いテーマに続いて「When You Get Back」で幕開けです。ライブ・ハウスで聴くのも良いけれど、開放的な野外で彼らのさわやかな演奏を聴くのもまた格別ですね。よく見るとホーンズは、昨夜はテナーとアルトにトランペットだったのが、今日はペットに代わってトロンボーンが入っています。曲目、曲順とも昨夜のセカンドとほぼ同じでしたが、「Funky Monkey Business」だけは、この日はやりませんでした。「Boneyard 」と「21 Century Gypsy Singing Lover Man」では、この日もデューセンバーグの赤いエレキ・ギターを気持ちよさそうに弾いていました。彼はもともとギタリストで、若い頃、ニューオーリンズに旅に来てジェームズ・ブッカーのプレイを目の当たりにし、ピアノにめ目覚めたのだとか。ギターね達者なわけですね。そうそう「Just Kissed My Baby」のエンディング近くでは、メンバーがドゥーワップ調のコーラスを入れていました。こういう演出も昨晩同様でした。

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クリアリーとビッグ・D ギター競演

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こんな人も見ている

ジョン・クリアリーのステージは何度見ても飽きません。クリアリーの歌や鍵盤さばきもさることながらバンド全体の一体感も格段と上がっているように思います。近年は、なかなかアブソリュート・モンスター・ジェントルメンでの来日は叶わないけれど、ぜひまた来てほしいものです。昨年10月のライブ・マジックでは、ビッグ・Dを除いたメンバーで来日しています。ライブ・マジックは毎回仕事と重なるので一度も行ったことがありませんが、ライブ・マジックでの招聘の前後に、ぜひ全国ツアーをやってほしいものです。

1.When You Get Back
2.So Damn Good
3.Dyna-Mite
4.Boneyard
5.21 Century Gypsy Singing Lover Man
6.Mo Hippa〜Pump It Up
7.Big Greasy
8.Just Kissed My Baby
9.I’m not Mad

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George Porter Jr. at New Orleans Jazz Fest 2019.5.5

いよいよ最終日の朝が明けてしまいました。この日はお気に入りのカフェ、ルビー・スリッパーで朝食をとります。明朝は早い飛行機で出発しなければならないので、この店に来るのも今回はこれが最後です。いつも通り10時のシャトルバスで会場入り。お目当てのジェンティリー・ステージの前には誰もいません。今行けば最前列を確保できるのですが、やはり日曜の朝はゴスペル・テントに行かねばと思いたち、ディレクター達スタッフによるサウンド・チェックを聴きました。この日の選曲は「Jesus on the Mainline」でした。たいていこの曲か「This Little Light of Mine」のようなコード進行が簡単で繰り返しの曲が選ばれるようです。

ジャズ・フェス最終日のジェンティリー・ステージのトップバッターは、なんとジョージ・ポーター・Jr.とランニング・パードナーズ。朝一から大物の登場です。2年前は木曜でしたが、アキュラ・ステージで3番目だったのですが、この日は朝からスペシャルなプログラムで、こちらも気合を入れて見なければなりません。そんなわけでいつになくジェンティリー・ステージでは観客が多いようです。木曜と金曜に声をかけてくれた白人女性スタッフを見つけ、感謝を伝えにいきました。「楽しい時間はすぐに過ぎてしまうね。あなた達スタッフには本当に感謝している。」と言ったら、軽くハグしてくれました。

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さて、いよいよステージにはジョージとバンド・メンバーの登場です。ジョージのステージを見るのはこれが3回目。今回は彼が完全に主役です。「グッド・モーニン」とジョージが挨拶して演奏が始まります。軽快なミーターズ・ナンバー「Liver Splash」です。テレンス・ヒューストンの手数の多いドラム、ノセンテリそっくりのギター、味のあるオルガンにサックス、トランペット、トロンボーンの3管が加わってえもいわれぬグルーヴを紡ぎ出します。後半はサックス・ソロが活躍。曲はそのまま歌物「Let’s Get It」に続いていきます。ジョージのぶっといベースのリフが印象的なナンバー。彼らのアルバム『Funk ’N’ Go Nuts』の中で一番好きな曲なので演奏してくれて嬉しかったです。後半にはジョージのベース・ソロも聴くことができました。

この後にMC。ジョージが第1回目のジャズフェスを回想します。ステージ2にはミーターズやスティービー・ワンダーが出演し、ステージ1にはプロフェッサー・ロングヘアやB.B.キングが出た話をしていました。

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この後には、ミーターズ・ナンバーの「Grass」と「Rigor Mortis」を続けてやってくれました。この日のミーターズ・ナンバーは1曲目の「Liver Splash」を含め全3曲でしたが、いずれも彼らのミーターズ・カバー集『Can’t Beat The Funk』に収録されている曲ばかりで、アレンジもそのアルバムのものを踏襲しているように感じました。テレンスのドラムもジガブーに肉薄しているし、他のメンバーも猛者ばかり。そういえばサックス奏者は、2年前のオリジナル・ミーターズのステージでもサポート・メンバーとして演奏していました。さらに、歌物の「A Police State」が途切れなく続きます。どうも最近のレパートリーでメッセージ性の強い曲のよう。曲調はゆったりした渋いファンクです。

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続いてのナンバーはギターのカッティングが心地よい「Everybody’s Searchin’(for a Joyride)」。ジョージがミーターズ解散後に組んでいたジョイライド時代のナンバーです。そしてバラード調のピアノに乗せたMCに続いてラスト・ナンバー「Pallet on Your Floor」が始まります。この曲では前半をピアノ・バラードにしてジョージがたっぷりと思いを込めて歌っていましたが、後半テンポアップしてホーンズをフューチャーしたインストになっていました。原曲ではテンポの早い歌物なのですが、ライブならではのアレンジになっていました。

朝一番からジョージ達の重厚なファンクが聴けるなんて、とっても幸せでした。ジョージは先月フジ・ロックに来日し、ダンプスタファンクの3人とランニング・パードナーズの2人という豪華メンバーで、ミーターズ・ナンバーばかりを演奏するというステージを繰り広げました。直前に亡くなったアート・ネヴィルをトリビュートするという意味もあったようです。台風に伴う大雨で大変だったようですが、見にいきたかったなぁと思いました。またいつか、ジョージのステージが観れるチャンスがあると信じています。

1.Liver Splash
2.Let’s Get It
3.Grass
4.Rigor Mortis
5.A Police State
6.Everybody’s Searchin’(for a Joyride)
7.Pallet on Your Floor

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Jon Cleary at Maple Leaf Bar 2019.5.4

この日もホテルに帰ったのは午後8時近い時間です。アメリカは夏時間ですから、この時間でも少し明るいです。シャワーを浴びるともう8時半。この日はジョン・クリアリーのメイプル・リーフ・バーでのライブを予約しています。夜8時45分頃、セント・チャールズ・ストリート・カーに乗って出かけます。この時間になるとすっかり陽が落ちていますが、セントラル・ビジネス・ディストリクトでは信号や車の通行も多く。電車はなかなか進みません。ハイウェイの下をくぐり専用線に入ると快調に走り始めます。ライブ・ハウスにほど近いキャロルトン・オークの停留所についたのは、9時20分頃だったでしょうか。この夜の食事はメイプル・リーフ周辺のお店で、と思っていたのですがこの時間からレストランに入ると、開演時間には超満員になってしまいそうです。路肩ではいくつか露店が出ていますが、カキを焼いているお店もあって、炎が上がり美味しそうな香りが漂ってきます。道路を横切って注文に行くと、なんと、もう売り切れで今焼いている分は待っているお客さんの注文分とのこと。仕方なく再び道路を横切り、メイプル・リーフのすぐ前の露店でポーク・ポーボーイを食べましたが、これがなかなかおいしかったです。

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メイプル・リーフ・バー

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通りの反対側 右の方でカキを焼いている。

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こちらの屋台でポーク・ポーボーイを購入 右端で女性と話しているのがクリアリーさんご本人

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ポーク・ポーボーイ

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開演前のひととき 店の前の情景

メイプル・リーフに入店したら、ステージ前にかなりお客さんが集まっていました。この日もアビタを注文します。すでにビッグ・Dはステージ上にいます。彼の真ん前の最前列は空いていたので、そこを陣取りますが、すぐ横のステージ中央にはステージに上がる2段くらいのステップがあります。しばらくすると、そのステップを他のメンバーが上がって楽器のセッティングを始めます。2年前も同じジャズフェスのセカンド・サタデーの夜にこの場所で彼らのライブを見ましたが、直前にティピティーナズでノース・ミシシッピ・オールスターズを見ていたので、彼らのライブは最初の方を見逃したのですが、今回は最初から見ることができます。前回はクリアリーはステージ上手、ビッグ・Dは下手にいましたが、今回は二人のポジションが入れ替わっています。メンバーはアブソリュート・モンスター・ジェントルメンに加えてナイジェル・ホールが参加しているのも2年前と同じです。そのナイジェルは開演時間直前の夜10時頃に到着。私の方に触れて、「Excuse me」と言いながらステップを登ってステージに上がりました。

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ジョン・クリアリー

開演は夜10時10分頃だったでしょうか、1曲目は「Sometimes I Wonder」。静かでおしゃれなナンバーで幕開けです。バンド・メンバーを紹介した後、2曲目「Fools Game」が始まります。1999年リリースのアルバム『Moonburn』の冒頭に収録されていたファンキーなナンバーです。3曲目は、『Pin Your Spin』収録の「Smile in While」。ちょっとアラン・トゥーサンを思わせるミディアム・バラード。とっても粋な曲ですよね。4曲目でブルーズが登場。クリアリーが演奏するとブルーズもちょっとお洒落に料理されます。この曲は割合ストレートな方で、ビッグ・ Dもシャッフルのリズムに乗せて泥臭いフレーズを弾いています。ローウェル・フルソンのカバー、「Reconsider Baby」でした。

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カウベルを叩くクリアリー

ミディアム・テンポでファンキーな『Moonburn』収録作「Unnecessarily Mercenary」に続いて、「Help Me Somebody」が始まりました。ビッグ・ Dのギター・ソロが結構長くフューチャーされているメロウな演奏です。次の曲ではクリアリーが定番のイントロを奏で始めます。「Tipitina」の登場です。歌に入る頃にはピアノの演奏をやめカウベルを叩き始めます。これも、彼の定番のパフォーマンスですね。間奏でギターとベースがユニゾンのフレーズを奏でる部分はライブ盤ほどは長くありませんでした。エンディングはやはりラテン調になりました。次もノリのよいファンク「Beg Steal or Borrow」を挟んで、ファースト・セットのラスト・ナンバーはファンキーな「Gatcha Go Go Juice」。前作のタイトル・トラックです。この3曲が前半の大きな山場でした。

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ベースのコーネル

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ビッグ・D

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ナイジェル

インターミッションの間も場所を取られないようにステージ前に立ったままです。休憩時間は30分程度でしたが、右隣におられた日本人ご夫妻と少しだけお話をすることができました。彼らも火曜からのお仕事に備えて明日の早朝の便で帰国されるとのこと、このステージがニューオーリンズ最後のライブだそうです。

セカンド・セットが始まるころになると、3人のホーン・セクションが入場。その内一人は元パパ・グロウズ・ファンクのテナー・サックス奏者ジェイソンでした。あとはアルト・サックスとトランペットという編成で、総勢9人の大所帯になります。1曲目、短いオープニング・テーマに続いて始まったのは、大好きな「When You Get Back」。前回聞きそびれたので、正直嬉しい選曲。ホーンも入って音も厚くなっています。続いては「So Damn Good」。古くからのレパートリーですが、A.J.ホールのドラムはカントリーやゴスペルなどによくある速いツービート。ホーンも絡んでかっこいいアレンジに生まれ変わっています。

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ドラムのA.J.ホールとアブソリュート・モンスター・ホーンズ

次に、最新作から1曲目のタイトル・トラック「Dyna-Mite」が登場。アルバムではレオ・ノセンテリが弾いていたカッティングをビッグ・Dが忠実に再現、ホーンズも入ってアルバムと変わらないダイナミックなアレンジです。続いてドラムが速いリズムを刻んでいる間に、クリアリーが赤いデューンバーグのギターを抱えます。キーボードはナイジェルのオルガンに任せて、クリアリーもギターを弾きながら「Boneyard」が始まります。とってもファンキーなアレンジ。もともとギタリストだっただけあって、ギターの腕前も確かです。曲が終わると「アブソリュート・モンスター・ホーンズ」とホーンセクションを紹介し、そして「以前タジ・マハールに提供した曲で、最新作にも入っている曲をやるよ」という意味のMCの後、ブルーズ・ナンバー「21 Century Gypsy Singing Lover Man」を歌います。さらにはボニー・レイットに提供した「Funky Monkey Business」を渋く決めます。このあたりまで、クリアリーは赤いギターを愛おしそうに弾いていました。

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ギターを弾くクリアリー

続いて定番のファンク・ナンバー「Mo Hippa」が始まり、ライブは最大の山場を迎えます。曲は『Go Go Juice』収録の「Pump It Up」に続いていき、メンバーを紹介しながら短いソロを回しへと展開します。続いては『Dyna-Mite』収録の「Big Greasy」です。ニューオーリンズの別名「Big Easy」と食べ物やなんかが脂っこい「Greasy」をかけたニューオーリンズ参加なんでしょう。アルバムではレゲエにアレンジされていましたが、ここではラテン風味を残しながらミディアムの8ビートになっていました。メンバーのコーラスが印象的でした。

そして、ミーターズのカバーで彼らのステージでは定番となっている「Just Kissed My Baby」が登場。クリアリーのキーボードがワウのかかったリズムを刻みます。最後は、やはり『Dyna-Mite』収録の「I’m not Mad」でした。こちらもアルバムとはアレンジが大幅に変わり、よりファンキーでダイナミックな演奏になっていました。

休憩を含めて約2時間少々。前半も後半も1時間弱。トータルで約20曲演奏してくれて大満足のライブでした。ホーン入のステージは初体験だったし。クリアリーさん、ニューオーリンズ・スタイルのピアノにおいては押しも押されぬ第一人者だし、もちろん、ニューオーリンズ・ファンクやブルーズの正統な継承者だし、それに加えてメロウな歌声、お洒落なコードを加えて、どんな曲でもクリアリー・カラーに染めてしまう「粋人」。日本ではピーター・バラカンさんなどがイチオシでライブ・マジックに呼んだりして、そこそこの知名度がありますが、もっともっとメジャーになっていい存在ではないかと思うのですが。

夜1時前にライブが終わった後、ETAのアプリを使って、ストリート・カーでホテルに帰ろうかとも思ったのですが、流しのタクシーが通りがかったので、それに乗って帰りました。ドライバーはパキスタンの方でした。

1st

1.Sometimes I Wonder
2.Fools Game
3.Smile in While
4.Reconsider Baby
5.Unnecessarily Mercenary
6.Help Me Somebody
7.Tipitina
8.Beg Steal or Borrow
9.Gatcha Go Go Juice

2nd

1.When You Get Back
2.So Damn Good
3.Dyna-Mite
4.Boneyard
5.21 Century Gypsy Singing Lover Man
6.Funky Monkey Business
7.Mo Hippa〜Pump It Up
8.Big Greasy
9.Just Kissed My Baby
10.I’m not Mad

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ビッグ・Dの足元の機材

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コーネルの足元の機材

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クリアリーの足元の機材

Diana Ross at New Orleans Jazz Fest 2019.5.4

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ダイアナ・ロスは、ニューオーリンズ・ジャズフェス初出演だそうです。グラディス・ナイトは過去にも出たことがあるのですが、過去にもオファーはしなかったのかな。昨年、アリーサ・フランクリンが亡くなったため、R&B界の大物女性アーティストを呼んでおこうという考えだったのかもしれません。一番最初にジャズフェスのラインナップが紹介された時は、ダイアナの名はなく、ボブ・シーガーがアナウンスされていました。しかし、シーガーの名前は、日付別のラインナップではどこにも見当たらず、しばらくすると、シーガーの出演がキャンセルされ、ダイアナの出演が発表されました。彼女の出演はジェンティリー・ステージ、ちなみに最大規模のアキュラ・ステージにはデイヴ・マシューズ・バンドが出ています。

実を言うと、ブルーズ・テントに出演予定だったジョン・プラインもとっても見たかったので、半分半分見ようかとか、悩んだのですが、ジョン・プラインの出演が5月1日にキャンセルされ、代わりにエルヴィン・ピショップが出演することになりました。前日の3日には加えてロバート・ランドルフ・ファミリー・バンドがブルーズ・テントのトリを務めることになり、そちらにもかなり食指が動いたのですが、今回は当初の予定通りモータウン出身のダイアナ・ロスをじっくり見ることにしました。

エアロン・ネヴィルが終わってから約40分のセットチェンジ。メンバーがステージ上に登場します。ステージ下手袖にはいつの間にか前日にはなかった小型のテントが据えられています。バンド・メンバーは、ドラム、パーカッション、ギター、ベース、キーボード2台、コーラス3人とほぼグラディス・ナイトのバック・バンドと同じ編成ですが、ダイアナのバックにはサックス奏者も参加しています。バンドが演奏を始めるとテントから、黄色のドレスに身を包んだダイアナが登場。大きな歓声が上がります。曲はオープニング・テーマのような短い「I’m Coming Out」。すぐにスパイラル・ステアケースの「More Today Than Yesterday」が始まります。ジャズファンク系のギタリストがよく取り上げている大好きな曲なので嬉しくなります。

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3曲目から7曲目は、スプリームズの代表曲を続けざまに畳み掛けます。こんなに早い段階で超有名曲をみんな歌いきってしまってもいいのか、とも思ったのですが、数々の大ヒットナンバーを持つダイアナのことですから問題ないでしょう。60年代のヒット・ナンバーはみんな短いしアップテンポなので、どんどん曲が進んでいきます。途中70年代のソロ作からの「Touch Me in the Morning」をはさみ、「Love Child」のエンディングが長いなぁと思ったら、その間にダイアナはテントの中に消えます。そして、赤い衣装に「お色直し」。ダイアナが登場するとお姉さまたちは「ギャー」と絶叫に近い喜びの声をあげて迎えていました。この後は、ソロ時代の名曲中心の進行となります。

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「The Boss」に続いてはライオネル・リッチーとのデュエットでヒットした「Endless Love」。そしてディスコ・ヒットとなった「Upside Down」の登場。まわりのお客さんはみんな大きな声で歌っています。この曲の途中で、「私ねぇ、47歳になっちゃったの」なんてMC。もちろん観客は「うそばっかりー」という反応。「本当は75歳よ。信じられる。」なんて言ってました。遠目ですが、本当にそんな歳には見えません。声も若々しいです。続くナンバーも、曲名は覚えていないけど、70年代のヒット曲はラジオなどで時折耳にしたのでしょう。記憶に残っていて懐かしいですね。15曲目にはマイケル・ジャクソンとのデュエットでヒットした「Ease on Down the Road」が歌われます。

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続いての曲では、テナー・サックスが情感たっぷりにメロディを歌い上げます。おっ、これはバート・バカラックとハル・デイヴィッドが書き、ダスティ・スプリングフィールドが歌った007・カジノロワイヤルのテーマ曲「The Look of Love」ではないですか。ダイアナの姿が見えないと思ったら、サックス・ソロが終わると同時にシルバーの衣装にお召し替えで登場。歌い始めます。続くポップな「Why Do Fools Fall in Love」のエンディングではサックスとギターが掛け合いを演じ、ステージは佳境に入っていきます。

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次は誰でも知っているバラード、1975年のヒット曲「Theme From Mahogany (Do You Know Where You’re Going To)」をしっとりと聴かせたあと、途切れなくマーヴィン・ゲイとタミー・テレルのヒット・ナンバーで、彼女自身もNo.1に送り込んだ「Ain’t No Mountain Hight Enough」が始まります。この曲で3度目のお召し替え、白のドレス姿で登場です。続いての曲はグロリア・ゲイナーの「I Will Survive」。どうやらこの曲が最後のナンバーのようです。エンディングでは、コーラスのメンバーに一人ずつソロをとらせ、続いては楽器の短いソロ回しとなります。メンバーはもちろん超絶テクニックの持ち主ばかり。その間にダイアナはまたまたテントに消えます。演奏が終わり観客の拍手が鳴り止みません。

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しばらくすると、ダイアナは黒のスポーツウェア姿で登場。バンドは「I Will Survive」のサビを何度も繰り返し終演となりました。素晴らしいエンターティナーぶりです。歌唱力でいうと、そりゃあグラディスやメイヴィスには及ばないけれど、75歳という年齢を物ともせず、こんなにたくさんのファンに夢を見させる力を持っているというのは、本当に稀有な才能だと思います。写真撮影はジャズフェスのオフィシャルなカメラマンも一切ダメ(だから、ジャズフェスの公式フェスイブックなどにも写真は掲載されていない)。両サイドの大型ビジョンには全身の姿以上のアップは禁止などなど、観客の夢を壊さない措置もきっちり取られたようです。もちろん演奏・アレンジのクォリティは言わずもがな。モータウン最大のヒットメーカーが織りなす約1時間20分のステージを十分楽しませていただきました。

この日は雨で開演が遅れましたが、亡き妻が愛したゴスペル、そしてスプリームズのダイアナ・ロス、それに加えてゴスペル曲は少なかったけれど、7年前に妻と一緒に見たエアロン・ネヴィルのステージをじっくり見れて充実したセカンド・サタデイとなりました。

1.I’m Coming Out
2.More Today Than Yesterday
3.My World Is Empty Without You
4.Baby Love
5.Stop! In The Name of Love
6.Come See About Me
7.You Can’t Hurry Love
8.Touch Me in the Morning
9.Love Child
10.The Boss
11.Endless Love
12.Upside Down
13.It’s My House
14.Love Hangover
15.Ease on Down the Road
16.The Look of Love
17.Why Do Fools Fall in Love
18.Theme From Mahogany (Do You Know Where You’re Going To)
19.Ain’t No Mountain Hight Enough
20.I Will Survive

Aaron Neville at New Orleans Jazz Fest 2019.5.4

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シャーリー・シーザーのステージは50分ほどで終了。まだ、少し時間があるとはいえ、間も無くエアロン・ネヴィルがジェンティリー・ステージに登場します。 急ぎ足でステージに到着したらセッティング中で開演に間に合いました。昨年のジャズフェス直前に彼のバンドにも参加していた兄でサックス奏者のチャールズ・ネヴィルが亡くなってしまいました。それ以降、サックスのメンバーは補充せず、ドラム、ベース、キーボード、ギターの4人のバックバンドがエアロンを支えています。

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MCが元気よくエアロンを紹介し、袖からエアロンの登場。自分は7年ぶりに彼の勇姿を見ます。外見はほとんど変わっていないのですが、彼も今年で78歳になるのですね。バンドが聞き覚えのあるリズムを刻み始めると、エアロンは「Stand By Me」を歌い出します。曲は同じリズムのまま、サム・クックの「Cupid」そしてドリフターズの「There Goes By My Baby」へと続き、また、サム・クックの「Chain Gang」、再び「Stand By Me」に戻るメドレーでした。2曲目もドリフターズの「This Magic Moment」をカバー。この曲はドリフターズ・ナンバーを数曲取り上げた2013年作『My True Story』に収録されていました。

次は、アラン・トゥーサンが書いたナンバー「Hercules」。今回ボズ・スキャッグスも歌いましたが、もちろんエアロンのバージョンがオリジナルです。前から生で聴きたいと思っていましたが、ようやくその夢が叶いました。

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続いては、ネヴィル・ブラザーズでやった曲を次々と畳み掛けます。サニー・ランドレスの作品「Congo Square」と「Voodoo」はメドレー。レナード・コーエンの「Bird On The Wire」。ドビー・グレイの「Drift Away」は1987年のドクター・ジョンとの来日公演の際、大阪の御堂会館で確かに聴きました。32年ぶりに生で聴くことができたわけです。続くサム・クックの「A Change Is Gonna Come」もエアロンの定番曲ですが、ネヴィル・ブラザーズの『Yellow Moon』に収録されていたバージョンをよく聴いたものです。

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次に始まったイントロでオールマン・ブラザーズの「Midnight Rider」であることは、すぐにわかりました。ファウンデーション・オブ・ファンクでも、この曲を聴くことができましたが、エアロンも2年前に亡くなったグレッグ・オールマンに捧げる意味で、この歌を時折歌っているようです。続いては「Yellow Moon」の登場。7年前、ジャズフェスのアキュラ・ステージでネヴィル・ブラザーズの演奏で聴いて以来です。エンディングのスリリングなサックスとギターとの掛け合いは、キーボードとギターで見事に演じ切っていました。

続いては静かなバラード、ランディ・ニューマンの「Louisiana 1927」です。エアロンのソロで一番好きな『Warm Your Heart』に収録されています。よもや、この曲をやってくれようとは思いもよりませんでした。感激です。そして、定番の「Down By The Riverside」から「When The Saints Goes Marching In」へと続くメドレー。後者ではニューオーリンズ・セインツの応援歌のフレーズを織り交ぜて歌い、観客は大喜びです。そして間髪を入れず最大の山場、「Tell It Like It Is」が登場。まわりのお客さんはみんな一緒に歌っています。エアロンのソロ・ステージですから、この曲をやっくれないと、ですよね。しかし、2012年にゴスペル・テントで見た彼のステージでは、「Tell It Like It Is」はやってくませんでした。曲が終わると、エアロンがファルセットで「Woo〜」と歌いだします。シンセだけが静かにコードを弾き「Amazing Grace」が始まります。大観衆も水を打ったように静かに聴き入っています。感動です。

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曲が終わるとメンバー紹介。このまま終わると思ったら、スパニールズの「Goodnight Sweetheart Goodnight」が始まりました。エアロンが愛した素敵なドゥー・ワップ・ナンバー。バンド・メンバーが巧みなコーラスを聴かせます。そして、この曲のエンディングにミッキー・マウス・マーチを美しいアカペラにアレンジして少し付け足し、聴衆の笑いと喝采をさらっていました。

約1時間のステージ。ほとんど知っている曲ばかりのぜいたくなセットリストです。たくさんやってくれたので、ほとんどMCはなく、次々と曲を演奏してくれました。7年前の時は当時ゴスペル・アルバムを続けて出していたこともあり、また、会場もゴスペル・テントだったので、ゴスペル中心の選曲でした。最近はドゥー・ワップ中心の選曲でツアーを回っているようです。この日はフェスだし、もしかしたらチャールズの追悼の意味も込めて以下のようなセットリストになったのでしょう。自分のように1987年から2012年まで、ネヴィルズのライブを見れなかった者にとってはありがたい選曲でした。近年、ドゥー・ワップ寄りのステージをやっていることもあってか、バンド・メンバーはみんな歌が素晴らしいです。エアロン一人のアカペラの印象が強かった「Amazing Grace」でも、いい感じのコーラスになっていました。

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2年前に来た時は、セカンド・ウィークエンドだけだったので、ファースト・ウィークエンドに出たエアロンは見れなかったのですが、今回エアロンのステージを堪能させてもらいました。


1.Stand By Me/ Cupid / There Goes By My Baby / Chain Gang / Stand By Me
2.This Magic Moment
3.Hercules
4.Congo Square / Voodoo
5.Bird On The Wire
6.Drift Away
7.A Change Is Gonna Come
8.Midnight Rider
9.Yellow Moon
10.Louisiana 1927
11.Down By The Riverside / When The Saints Goes Marching In
12.Tell It Like It Is
13.Amazing Grace
14.Goodnight Sweetheart Goodnight / Mickey Mouse March

Shirley Caezar at New Orleans Jazz Fest 2019.5.4

ジョンソン・エクステンションの演奏が終わった後、女性の司会者がステージ上手に登場してジャズフェスのスポンサーの紹介を始めます。演奏の合間には、時折こういう紹介が入ります。そして、フェスのオリジナルTシャツの紹介。帽子やバンダナなどお土産にいいわよ、みたいなことも言ってます。

ここで彼女が、アメリカ国外から来た人いる? と会場に呼びかけます。最前列下手側にいた自分は「Japan!」と叫びましたが、しばらく気づいてもらえません。ロンドン、ブラジル、カナダと続いた後、周りの人達も立ち上がって指差してくれたりして、ようやく気づいてもらい、「日本からなの? 遠いところから来たわねぇ。」みたいに紹介してもらってしまいました。

そうこうしているうちに、ステージの準備も整ったようで、司会者が次に登場するシャーリー・シーザーの紹介を始めます。オルガンがメロディを奏で始め、紹介が終わるといよいよシャーリー達の演奏です。バンドはキーボード、オルガン、ギター、ベース、ドラムスというオーソドックスな編成。シャーリーの他に、男性2名、女性1名のコーラス隊がいます。シャーリーは黒いドレス、他のメンバーは白中心の衣装で揃えています。

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シャーリー・シーザーと彼女のグループ

彼女はノースカロライナの生まれ。シャーリーの歌声は、ゴスペル的歌唱の鏡です。今まで何度も「割れんばかり」という表現を使ってきたのですが、その形容が彼女ほど当てはまるシンガーもなかなかいないのではないでしょうか。アリーサ・フランクリンとも親交があり、彼女の葬儀で歌ったそうですが、さもありなんですね。彼女は1938年生まれで81歳ですが、とてもその年齢とは思えないパワーと歌唱力です。彼女自身牧師であり教会を持っていますが、「ゴスペル界のファースト・レディ」「ゴスペル・クィーン」と呼ばれるように、アメリカのゴスペル界では最も有名なシンガーの一人です。初の録音は12歳の時。そのキャリアはもう70年にも及ぼうとしており、グラミー始め数々の賞の受賞歴があります。

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メンバーもすごい歌唱力

1曲目からシャッフルの典型的なゴスペル・ナンバー。シャーリーと男性ヴォーカルの力強い歌声に気分が高揚していきます。2曲目は8ビートの心地よい「It’s Alright, It’s OK」です。どちらも単純なコード進行の繰り返しなのですが、タイトなバンドの演奏と分厚いコーラスのコール&レスポンス、シャーリーだけでなく、コーラス要員も魅力的なソロを聴かせ、単調さとは全くかけ離れた演奏です。そして、静かにバラードの「Jesus I Love Calling Your Name」が始まります。中盤からどんどん盛り上がり、「ジーザス ジーザス ジー ジー ジー」何度も繰り返すフレーズが耳についてしばらく離れませんでした。

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ステージに向かって歌いかける

次は三連のロッカバラード。そして、途切れなく、激しいシャッフルのナンバー「Heaven」に続きます。この曲はスタジオ録音のものはシンセなどが入って現代的な味付けですが、ここではトラディショナルな味わいが濃厚なアレンジ。曲の途中でシャーリーが会場に降りてきます。自分は最前列なので、少しだけ彼女の生声も聴くことができました。本当に小柄な女性なのに、あれだけのバワーが出てくるのが不思議です。信仰と鍛錬の賜物でしょう。後半、「Jesus I Love Calling Your Name」同様、「ジーザス ジーザス ジー ジー」とキリストを讃えるフレーズがコール&レスポンスで繰り返されます。男性コーラスが声を限りにシャウトします。

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ギタリスト熱演

次は、ゆったりしたシャッフル・ナンバー「Mary Don’t You Weep」。エレキ・ギターがまるでブルーズ ギターのようにオブリカードで寄り添います。ラストは、やはりシャッフルの「Don’t Drive Your Momma Away」。バンドも変幻自在。シャーリーの指揮でジェットコースターのように曲を盛り上げたり、静かにトークをサポートしたり。聴いているこちら側も手に汗を握ります。もちろん、コーラス隊の息のあったメロディラインに乗せて、シャーリーのシャウトが会場に響き渡りました。エンディングではバラードになります。本当に感動、興奮のステージでした。

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朝雨が降らなければ、彼女のステージを見ることはなかったと思うと、偶然の不思議を感じずにはいられません。年齢を感じさせないパワフルなシャーリー・シーザー。ゴスペル・クィーンの名にふさわしい歌声を聴けて本当にラッキーでした。メイヴィス・ステイプルスに比べれば、日本では全く無名ですが、もっともっと世界中に名が知られていい名シンガーだと思います。

The Johnson Extension at New Orleans Jazz Fest 2019.5.4

キム・シェリーのステージが終わると、すぐになんらかのセレモニーが始まりました。中央に自分と同年輩のご夫婦、その両側にハイティーンのお嬢さんたち、きっとご夫婦の娘さんたちなのでしょう。そして、ご夫婦の間には牧師さんと見られる男性が立っています。自分の英語聞き取り力にはかなり疑問があるので、もしかしたら大きく間違っているかもしれませんが、ご夫婦はニューオーリンズの音楽スクールに多額の寄付した人達のよう。このセレモニーは銀婚式のように思えます。ご夫婦の名前はジョンとサンディ。結婚式の時のように、牧師さんが一人ずつ「健やかなるときも病める時も、相手を守ることを誓います」というような意味のことを復唱させています。こういう場で多くの人に銀婚式を祝ってもらえるなんて素敵ですね。まさにテレビに出てきそうな絵に描いたように幸せそうな白人のアメリカン・ファミリーですが、25年の間には様々な紆余曲折もあったに違いありません。けれども、家族でこういう日を迎えられるというのは無上の喜びでしょう。まさに、ゴスペルテントは、ジャズフェストの教会の役目を果たしていますね。

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さて、銀婚式の背後では着々と準備が進んでいたようで、また、銀婚式を彩っていたオルガンを弾いていたのは、次に登場するジョンソン・エクステンションのオルガン奏者みたいで、すぐに彼らのステージが始まりました。なんだかメンバーの顔に見覚えがあるなぁと思ったら、7年前、同じゴスペル・テントで彼らのステージを見ていました。お目当ては彼らの次に出たエアロン・ネヴィルでしたが、早めに来て席を確保したかったので、彼らのステージも何曲か見ることができました。ジョンソン・エクステンションはルイジアナのグループらしく、先ごろ発売になったジャズフェス50回記念のボックス・セットでも紹介されています。その記事には以下のように書かれています。

「ジョンソン・エクテンションは、1991年に観客を魅了するステージ・パフォーマンスをフェアグラウンズ(ジャズフェスの会場である競馬場)にもたらし、それ以来、ほぼ毎年登場しています。ジョンソン・エクステンションは、その家長であるロイス・デジャン牧師に率いられた3世代にわたる1つの拡大家族であり、グループの名前は拡大家族を反映しています。ロイス・デジャン牧師自身は、1977年に、彼女のグループ、ゴスペル・インスピレーションズで、初めてゴスペル・テントに出演しました。」

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メンバーは白い衣装で揃えています。おそらく車椅子に座っている女性がロイス・デジャン牧師なのでしょう。彼らのテーマ曲のような短いナンバーに続いては、いい声の年配の男性が割れるようなシャウトで歌います。まさに教会での興奮を彷彿とさせるような演奏です。次は大柄の女性メンバーがリードをとります。

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次は、さっきの方より若い男性がリードをとるバラード。しみじみといい声で歌い上げます。もちろんサビではメンバー全員の合唱になります。この曲の後半では、女性メンバーがジーザスを讃える言葉を紡いでいきます。

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再びノリのいいナンバーとなり、男性シンガーがやはり割れるようなシャウトを聴かせます。ものすごい迫力です。コンガも効果的です。客席もだんだん興奮に包まれてきている模様。この曲が一段落すると、先ほどの女性シンガーが感情を抑えきれないように再びメッセージ。素敵なメロディを持つバラードが始まります。車椅子に座っていたデジャン牧師もメンバーの助けを借りて立ち上がります。さっきとは別の男性シンガーがリードをとっていい声を聞かせ、大きく盛り上がってエンディングを迎えると、司会者が登場してMC、メンバーがステージを去り、バンドがひとしきり曲を盛り上げて、彼らのステージを締めくくります。

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現代的な曲もありましたが、トラディショナルなスタイルを残している、いい感じのゴスペル・グループでした。

TBC Brass Band at New Orleans Jazz Fest 2019.5.4

ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティバルは、時折荒天に見舞われ、中断を余儀なくされることがあります。自分は今まで一度も中断にあたったことはなかったのですが、2年前に来た時は、ファースト・ウィークエンドの最終日に大雨と雷・竜巻警報で開演がかなり遅れたし、今回も初日の4月25日が雨で開演が遅れました。少し前の天気予報では5月3日、4日に雨の予報が出ていました。3日は上天気でしたが、4日は朝からひどい雨です。

ニューオーリンズは亜熱帯なので、5月といっても、降る時はまとめてドシャドシャ降るし、積乱雲が発達し落雷もあります。竜巻が発生することもあり、巨大なステージやテントのプレハブが倒壊したら多数の死亡事故にもつながりかねません。2016年にはセカンド・ウィークエンドの土曜日に大雨で中断。スティービー・ワンダーがフェスでは演奏できませんでした。そのときの写真を見ると、会場内でも結構水浸しのところがありました。自分も2年前、到着した日がひどい雨で、飛行機も遅れ、夜のライブを見に行くのを断念しました。

この日、朝目覚めてテレビをつけると、大雨のニュースをやっています。前日はアップタウンで100年以上前の水道管が破裂し、周囲が水浸しになったり通行止めになったりするニュースをやっていましたが。窓のない部屋なのであまりわかりませんが、外では雨が降っています。雷警報もあって、ジャズフェスの開場時間は延期になりそうです。

この日、アキュラ・ステージのトップバッター、ジョン・パパ・グロウのステージは残念ながら見れそうにないですね。昨夜はフェスのステージで見れるから、と、彼のライブに行かなかったのですけど、まぁ、こういうこともあるでしょう。日夜、ライブに明け暮れていたので、たまには休養も必要と、ベッドに寝転がってテレビを見ながら過ごします。チャンネルはもちろんニューオーリンズのローカル局です。

ジャズフェスのニュースでは、最終日のトローンボーン・ショーティのステージにエアロン・ネヴィルが出るという情報も得られました。そして、当日4日のステージ案内では、シャーリー・シーザー、エアロン・ネヴィル、ダイアナ・ロスが紹介されていました。シャーリー・シーザーってどんな人だろうって、スマホでYoutubeを見てみると、素晴らしいゴスペル・シンガーではないですか。その時間はギャラクティック と被っているのですが、どちらにせよ、エアロン・ネヴィルを見るために途中抜けしなければならないし、急遽、シャーリー・シーザーを見ることに変更です。この日が雨でなければ、そういう選択にはならなかったと思います。

スマホの雨雲レーダーを見ると、お昼頃にひどい雨雲の帯は市街の東側へ抜けそうです。雨も小やみになってきました。この調子ならフェスのゲートも開くかも、と、シェラトン・ホテルに行くことにします。足元は一昨日買ったビーチ・サンダルにして、折りたたみ傘をさしてホテルを出ようとすると、仲良くなったドアマンが「ちょっと待て」と言い、ポンチョを渡そうとしてくれます。自分はデイバッグの中に100均のレインコートを入れているので、丁寧に断りましたが、優しい心遣いに少し胸が熱くなりました。

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シェラトンの前には、スクール・バスのシャトルが3台くらい停車していて20人くらいの人が、発車を待っています。ロビーではさらにたくさんの人が待っているようです。ロビーに席がないので、柱にもたれて、しばらく窓の外の様子を見ていると、シャトルバスへの乗車が始まりました。IさんやA君に情報をメールで送り、自分もバスを待つ人の列に並びました。運良く2台目くらいのバスに乗ることができました。バスの中では日本から来られたSさんという方のお隣に座らせてもらってしばし雑談。ファースト・ウィークエンドの間はニューオーリンズからシカゴまで車で往復し、シカゴではバディ・ガイのクラブで本人の歌を聴かれたとのことでした。

会場に到着したのは、12時30分は回っていたと思います。フェアグラウンズでは、すでにあちこちで演奏が始まっています。雨も上がり、曇り空です。この日の朝は、ホテルのロビーでテイク・フリーだったバナナとコーヒーだけだったので、まずは腹ごしらえ。アフリカ料理のジャマジャマのセットをいただきました。初めて食べる味でしたが結構口に合いました。

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ジャマジャマのセット

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TBCブラス・バンド

食事が終わると、アキュラ・ステージを目指します。プログラムでは2年前に少しだけみたソウル・レブルが演奏しているはずです。近くとかっこいいブラスバンドが演奏中だったので、ソウル・レブルかなと思いきや、彼らの出演はキャンセルとなり、代わりにTBCブラス・バンドが演奏していました。彼らの演奏もハツラツとして心地よかったです。若いバンドで、もちろんヒップホップ的な要素も持ち合わせているのですが、十分にポップで聞き応えがあります。1曲が長いのですが、自分が着いてから2曲くらいで演奏が終わってしまいました。この日は大雨だったので、ソウル・レブルのメンバーも、自分たちのステージはキャンセルになったと考えたのでしょう。TBCブラス・バンドは急遽の代役だったようですが、素晴らしいプレイに触れることができて良かったと思います。彼らは毎日曜、カーミット・ラフィンズのマザー・イン・ロウ・ラウンジに出演しているようで、演奏の終わりに自信のfacebookページともども紹介していました。

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メンバーがラップを歌う

次に何を見ようかと考えたのですが、やはり疲れもたまっていたのでしょう。座って見れるところへ、とゴスペル・テントに移動します。テントでは雨の影響でこの日一番バッターとなったキム・シェリーが演奏中。最近のゴスペルでよく歌われる「Fire」をレゲエ調で歌っています。彼女のステージは7年前の2012年のジャズフェスでも見たのですが、当時と変わらぬ迫力のある歌声でした。あともう1曲で彼女のステージは終わりました。

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キム・シェリーと彼女のバンド

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右端のタンバリンの女性は、よくゴスペル・テントに登場する有名な方のようです。

New Mastersounds at The House of Blues New Orleans 2019.5.3

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この日は、d.b.a.でリッキー・リー・ジョーンズを見る予定でした。彼女のライブは19時からだったので、グラディスのステージを途中で切り上げて行くつもりだったのですが、彼女のライブはキャンセルとなってしまいました。d.b.a.は予約制を取っていないので、払い戻しとかはありません。さて、空いた時間を無駄に過ごしたくはないのですが、誰を見に行くかは悩ましいところ。気になっていたイベントはいくつもあります。

一つは、ハウリン・ウルフで行われる第17回バイユー・ランデブー。10時半からはジョン・パパ・グロウがドクター・ジョンをトリビュートするステージで、ここには山岸さんやエリカ・フォールズも参加します。夜中の2時からはドクター・クロウもあります。他にもメイソンではダーティ・ダズン・ブラス・バンド、カフェ・イスタンブールではジョーン・オズボーン、オフュウム・シアターではカール・デンソンによるアリーサ・フランクリン・トリビュート、マルディ・グラ・ワールドではストリング・チーズ・インシデントなどなど、他にもたくさんのライブがあって、どれも質が高そうなのです。さすが音楽の都です。

色々迷った挙句、ホテルからほど近いハウス・オブ・ブルーズで開催されるニュー・マスターサウンズのライブに行くことにしました。その前に腹ごしらえです。ホテルに近い「ルーク」というお店をマークしていたのですが、ヒルトン・ホテルの中の高級料理店でした。店内には行列ができていて、待っている暇はないだろうと別のお店へ行くことにします。時間は夜8時半を過ぎています。セントチャールズ・ストリート沿いのデイジー・デュークスがオープン・カフェみたいな形で雰囲気が良かったので入ってみました。ポークのサンドイッチとクロウフィッシュ・エトフェ、コーヒーを頼みました。サンドイッチはまあまあだったのですが、エトフェはいけませんでした。これは、今までに食べたエトフェとは全く別物。ほとんど食べずに残しました。残念でした。

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入り口のところに、こんなものが。ダン・エイクロイドが経営者に名を連ねていたと思います。

食事を終え、ハウス・オブ・ブルーズヘ。当日券を購入しますが、ちょっとばかり列ができており少々手間取りました。入店した時間は夜10時を少し過ぎていたでしょうか。すでにオープナーのCha Waの演奏は終了し、ニュー・マスターサウンズが演奏を始めていました。彼らは何度も来日経験がありますが、まだ見たことはありません。2年前のジャズフェスの時にもライブがありましたが、夜中の2時とか演奏時間が遅かったので見ませんでした。今回は、夜10時と早めなので、ライブに足を運んでみたわけです。

彼らは、イギリスのジャズ・ファンク・バンド。このところ毎年のようにジャズ・フェス期間はニューオーリンズでライブをやっています。ギターのエディ・ロバーツがグラント・グリーン、メルヴィン・スパークス、ブーガルー・ジョー・ジョーンズなどなど、60年代後半から70年代のジャズ・ファンク系ギタリストに大きな影響を受けており、その手の音楽が大好きな自分としては一度は見ておきたかったのです。

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ホールに入ると、アフリカ系の男性ヴォーカリストが歌っています。ニュー・マスターサウンズはインスト・バンドだとばかり思っていたので、ちょっとびっくり。音は極上、2曲目は結構ハッピーな感じのナンバーでした。フロアはほとんど人で埋まって、最も後ろからですが、ビールを飲みながら心地よいサウンドに身を任せられるのは最高ですね。ヴォーカリストはゲスト扱いのようで、自分が入ってから2曲で去り、あとはメンバー4人がインストを奏でていきます。前半で彼らの代表曲のひとつ「Yokacoka」もプレイされていました。

上に書いたように、エディ・ロバーツはグラント・グリーン達の影響を強く受けていますが、彼らの演奏を聴いていると、ミーターズからもかなり影響を受けているようです。もちろん、追求しているのは心地よいファンク・サウンドです。エディはセミアコのギターをクリーン・トーンでな奏でていますが、曲によってはワウやオーバードライヴを駆使しています。速弾きのテクニックもなかなかのもので、スピード・ナンバーの佳境になると、左手が自在に指板上を動き回ります。キーボードはピアノもオルガンも優雅に弾きこなし、エディに負けず劣らず曲を盛り上げていきます。

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ホーンズとパーカッションを加えて

自分の大好きなファンク・グループの影響を受けた素敵な演奏が次々と続くのですが、知っている曲がないというのは、いまひとつ入り込めない理由になりますよね。風邪とかひいてないですが、さすがに睡眠不足、立ちっぱなしの日々がこれだけ続くと身体も疲れてきます。この日は疲れのピークだったのかも知れません。インストの3曲目くらいからホーンズとパーカッションが参加して、さらに音に厚みが加わります。心地よいです。再びヴォーカリストが登場して、少しスキャットの入ったインスト・ナンバーをやったあと、フルートの入ったちょっとおしゃれなソウル・バラードを演奏。続くファンキーなナンバーともども、とってもカッコよかったです。ラストはスピード・ナンバーのインストでした。彼らのステージは自分が入場してから1時間半ほど、夜11時30分過ぎには終演しました。

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ヴォーカリストを迎えて

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ハウス・オブ・ブルーズの前に駐車してあるニュー・マスターサウンズのツアー・バス

ホテルに帰る路上で、下の写真のような三輪自転車をこぐ、アフリカ系のご婦人に出くわしました。最近、アフリカ系の若者の間で、電飾を施したオープン三輪などで、ヒップホップをガンガンかけながら街を流すのが流行っているようで、フレンチメン・ストリートなどで複数回出くわしましたが、こんな自転車は初めて見ました。

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Gradys Knight at New Orleans Jazz Fest 2019.5.3

ブルーズ・テントから、ジェンティリー・ステージを目指しましたが、結構な距離があります。ステージに近づくとイキのいいブルーズ・ロックが聴こえてきます。ステージでは赤いセミアコのエレキを持った男性が歌っています。しまった、こちらはゲイリー・クラーク・ジュニアのステージだった。勘違いしていました。フェイ・ドー・ドー・ステージの前を通り過ぎ、コンゴ・スクエア・ステージに向かいます。

コンゴ・スクエア・ステージではステージ上手側の園内通路から、斜め方向にステージが見えます。ステージの正面はかなりの人だかりなので、ここからステージを眺めることにします。到着した時にやっていた曲は大好きな『Imagination』収録の「You’re the Best Thing That Ever Happened to Me」でした。初めて見るグラディス、すごい歌唱力です。もう75歳くらいだと思うけど、まったく衰えを感じさせません。彼女は黒のパンツスーツ姿。ハンドマイクを片手に、ステージの上手から下手まで広く使って、客席に歌いかけています。ビジョンに大写しになる彼女の顔には、さすがに年輪は刻まれているけれども、どう見ても10歳以上は若く見えます。

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バンドはドラム、パーカッション、ベース、ギター、各1名、キーボードが2人で、うち1人が日本人女性。コーラスは男性1人と女性が2人という編成です。もちろんその力量たるや、圧倒的です。続いての曲は、イギリスの若いシンガー・ソングライター、サム・スミスの「Stay With Me」です。とってもいいメロディを持ったゴスペル的なバラードで、グラディスがチョイスするのも頷けます。次は、待ってましたの代表曲、マーヴィン・ゲイ・バージョンも売れた「I Heard It Through The Grapevine」が登場。文句なくカッコ良かったです。

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曲は再びバラードになり、ジョージ・ガーシュインの古いナンバー「Someone to Watch Over Me」を客席に静かに語りかけていきます。彼女は緩急をわきまえていて、次はノリのいい「On and On」。『Claudine』収録曲です。曲が終わったあと、作者のカーティス・メイフィールドの名前を告げていました。次も同じアルバムに入っているカーティス作「The Makings of You」が続きます。こちらはバラードでしっとり聴かせます。

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グラディスを見る大群衆

続くバラードも若い歌手メイジャーの「Why I Love You 」。この曲では、途中から若い女性コーラスにリード・ヴォーカルを譲りますが、彼女の歌唱力も抜群。素晴らしいデュエットです。続いての曲ジェームズ・イングラムの「One Hundred Ways」では男性コーラスがフューチャーされ、最初のソロをとります。

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バラードが続きます。次は、キャロル・キングが書きアリーサ・フランクリンが歌った「(You Make Me Feel Like)Natural Woman」です。昨年なくなったアリーサの思い出の多いこの曲を、グラディスの歌声で聴けるなんて感無量です。素晴らしいカバーでした。そして、バーバラ・ストライサンドの「The Way We Were」。日本では「追憶」のタイトルで著名です。グラディス・ナイト&ザ・ピップスのカバー・バージョンもそこそこのヒットを記録したと思います。ここではかなりメロディを崩し、かなりのスローバラードにしていました。

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そして、やはりピップス時代のヒット・ナンバー、「Neither One of Us (Wants to Be the First to Say Goodbye)」、ラストには、ずっと生で聞きたかった「Midnight Train to Georgia」をやってくれました。素晴らしい歌声、素晴らしい演奏であったことは言うまでもありません。

グラディスのステージは思った以上に、バラードが多かったです。後、MCも結構長かった。時折客席を大いに笑わせるあたりはエンターテイナーとしての素晴らしい才能を感じます。1曲1曲はバラードでも全然長くないのですが、英語を十分解せない身には、MCが少々冗長に感じられました。もちろん、悪いのは不勉強な自分なのですが、もうちょっと歌を長く聞きたいなと思いました。MCは歌のイントロにかぶせて、歌と一体にはなっているんですけどね。

アリーサ亡き後、ソウル界きっての実力派女性ヴォーカリストというと、グラディスということになるのではないでしょうか。今年のジャズフェスは、グラディス、メイヴィス、そしてダイアナ・ロスと、ソウル、ゴスペル界の大物女性シンガーを集めたのは、アリーサのことを意識した結果だと思います。そう言えば、舞台下手側に座ってグラディスのステージを見つめていたのは、メイヴィス・ステイプルスだと思います。遠目で確認はできなかったのですが、髪型といい、体型といい間違えないと思うのですが、1曲くらいデュエットしてほしかったな。でも、グラディスの素晴らしい歌声を堪能できたステージでした。

他のステージでのセットリストを参考にすると、大抵1曲目は「I’ve Got Use My Imagination」で始まっています。「You’re the Best Thing That Ever Happened to Me」は4曲目くらいでやっているので、最初の3曲くらいを聞きそびれてしまったのでしょう。おそらく、4曲目以降のセットリストは以下の通りです。

You’re the Best Thing That Ever Happened to Me
Stay With Me
I Heard It Through The Grapevine
Someone to Watch Over Me
On and On
The Makings of You
Why I Love You
One Hundred Ways
(You Make Me Feel Like)Natural Woman
The Way We Were
Neither One of Us (Wants to Be the First to Say Goodbye)
Midnight Train to Georgia

Sonny Landreth at New Orleans Jazz Fest 2019.5.3

この日は、巧まずしてギタリスト三昧の日となりました。しかも、ルイジアナのギター・ヒーローと言えば、存命のミュージシャンでは、リオ・ノセンテリとサニー・ランドレスということになるのではないでしょうか。その二人を相次いでフェスで見れるなんて幸せです。その二人の間にクリス・スミザーが入っているのですからたまりません。スミザーが終わってからブルーズ・テントに移動しましたが、すでにランドレスの演奏は始まっており、予想通りテントの座席は満席。上手側で立ち見となりました。

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2012年は同じブルーズ・テント、2017年はアキュラ・ステージで見ましたが、いずれも3〜4曲程度しか見られず他のステージに移動したので、今回はじっくり見るつもりです。着いたときに演奏していた曲は「It Hurts Me Too」で、サニーが歌っています。後で、この曲は2曲目だったことがわかりました。バンドはいつもと同じ3人編成。ドラムのブライアン・ブリグナック、ベースのデヴィッド・ランソンとサニーだけです。それで、これだけ厚みのある音、飽きのこないフレーズが繰り出されるというのは、3人の力量が卓抜しているからに他なりません。サニーはサンバーストとブラックの2本のストラトを使い分けています。おそらくオープンG系とオープンD系にチューニングされているのでしょう。

3・4曲目は、インストが続きます。確かに自分はブルーズが好きだし、ボトルネック奏法が大好きですが、こんなシンプルな編成で、心地よい演奏を延々と続けられるというのは尋常なテクニックではありません。今から三十数年前、ジョン・ハイアットと一緒に来日した時の演奏も素晴らしかったですが、さらに磨きがかかっているように思います。『From The Reach』収録の「The Milky Way Home」はマイナー・キーのモダンなナンバー。美しいメロディがサニーのストラトから紡ぎ出される様は圧巻です。続く「Firebird Blues」は ジョニー・ウィンターに捧げられた、ミディアム・ブルーズです。

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5曲目は歌物に戻って、スキップ・ジェイムズの「Cherry Ball Blues」を披露。続くシャッフルの「All About You」も歌物。アルバム『The Road We’re On』収録曲です。7・8曲目はインストのメドレー。「Brave New Girl」はインスト・アルバム『Elemental Journey』収録の印象的なメロディを持つモダンなナンバー。サニーのフレージングがとっても美しい。曲はそのままマイナー・キーでファンキーな「Native Stepton」に続きます。昔よく聴いたアルバム『South of I-10』収録の素敵なインストです。

9〜10曲目もメドレーで、このステージで最高の盛り上がりを見せます。『Levee town』収録の「Zydecoldsmobile 」から、大好きなアルバム『Outward Bound』収録の「Back To Bayou Tech」でした。スピード感あふれるザディコ・ナンバー「Zydecoldsmobile 」に続いて「Back To Bayou Tech」のイントロが流れだすと、自分の心の中のメーターも振り切れ状態です。多数の観客も大興奮状態。拍手が鳴り止まず、アンコールで1曲。『Levee town』収録の「Pedal to the Metal」。とってもかっこいいインストでした。

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2年前はアクースティック・セットもありましたが、今回は全編エレクトリック。不動の3人による息のあった演奏は素晴らしいの一言です。若々しく見えますが、ランドレスはもう68歳なんですね。ジョン・ハイアットより年上だったわけです。彼にしか出せない独特の音色、ザディコ、ブルーズといったルーツに根ざしながらも、とてもモダンな感覚も持ち合わせている彼のギター・プレイ、そして、味のある歌声に接することができて幸せでした。ぜひ、また見たいと思います。

4月28日にはボニー・レイット、前日5月2日にはアンダース・オズボーンにポール・バレールにフレッド・タケット、この日はハニー・アイランド・スワンプ・バンドとサニー・ランドレス。それぞれ個性的なボトルネック奏法を堪能することができました。

1.Walking Blues
2.It Hurts Me Too
3.The Milky Way Home
4.Firebird Blues
5.Cherry Ball Blues
6.All About You
7.Brave New Girl - Native Stepton
8.Zydecoldsmobile - Back To Bayou Tech
(Encore)
9.Pedal to the Metal

サニーのステージの最後の方で座席を確保することができましたので、しばし座って休憩を兼ね、少しだけロス・ロボスを見ようと思います。ロス・ロボスも2012年の時に、アフター・ダークのクラブ・ギグをやってましたが、別のライブを優先してしまいました。この日もグラディス・ナイトを見たいので、途中抜けするのですが。25分くらいのセットチェンジの後、ロス・ロボスのメンバーが出てきました。ギタロンやチャランゴを含むアクースティック・セットです。トラディショナルなテックス・メックス・スタイル。もちろん歌はスペイン語です。「Canto a Veracruz」「Colas」「El cascabel」まで聴いたところで、後髪を引かれながら、ブルーズ・テントを後にします。自分より何列か後ろに、昨日シャトル・バスに乗り合わせたNさんがいらっしゃいました。後で、後半はエレクトリック・セットになり「Don’t Worry Baby」や「Kiko and Lavender Moon」などをやったことを知りました。

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Chris Smither at New Orleans Jazz Fest 2019.5.3

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ジェンティリー・ステージから全ステージのうち最も小さい部類に入るラニャップ・ステージに移動します。競馬場の建物の中庭。パドックにあるこのステージにはパイプ椅子なども設置してあります。この巨大フェスにあってはかなりミュージャンに近いところで演奏を楽しめるスペースです。しかも、2階のバルコニーからもステージを見ることができます。

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スーザン・カウシル・バンド

さて、リオ・ノセンテリのステージが早めに終わったので、スーザン・カウシルのステージの最後の2曲に間に合いました。オハイオ州生まれの彼女は、なんと1967年、8歳のときにカウシルズのメンバーとしてプロ・デビューしていたんですね。当年とって60歳だそうです。バンドのギタリストとして、昨日も見たアレックス・マクマレーも参加している5人編成のバンドの演奏はとっても気持ち良いです。結構人気があるようで立ち見も出ています。ラストにやったノリの良い「Love Train」が良かったです。

彼女の演奏が終わって、観客が入れ替わるのを狙って1階の椅子席を確保します。自分の右となりには、同年輩か少し年上くらいの白人女性が腰かけました。話をしてみると、アリゾナのツーソンから、旦那さんと義弟と一緒に来られたとのこと。義弟はギター・プレイヤーだと言っていたようです。「あなたの国の気候はどう?」と聞かれたので「ここより少し涼しいですよ。」と応えると、「私たちのところは、ここより暑いわ。ここより乾いているけど。私たちは砂漠に住んでいるの。」と言ってました。彼女も結構音楽好きのようで、クリス・スミザーが70年代前半にはボニー・レイットに曲を提供していたこと、ボストンの音楽シーンで一緒に活動していたことを知っていました。

今年75歳になるクリス・スミザーの初期のアルバムは、80年代にはコレクターズ・アイテムになっていました。ファースト・アルバムは、ちょっと高かったけど、その昔LPで入手しました。数年後にセカンドと2in1でCD化されました。90年代のクリスのソロ・ライブ盤などは超絶テクニックと低音の魅力の彼の歌声を楽しむことができる好盤でよく聴いたものです。後、ローウェル・ジョージ参加のオクラ入り盤なども90年代にCDでリリースされました。最近でもニューオーリンズ録音のものを含め、精力的にライブ活動を行なっています。そんなわけで、一度生演奏を見てみたかったのです。この時間帯には、ノース・ミシシッピ・オールスターズやカーミット・ラフィンズなど見たいアーティストが他にも何組かあるのだけれど、この機会を逃すと、クリスのライブを見れる機会はそうそうないだろうと思い、このステージを選択しました。

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ステージは、クリスのほか、ドラム、エレキ・ギター、フィドルの4人編成。メンバーはみんな控えめなプレイでクリスを盛り立てます。1曲目はクリスの軽快なフィンガー・ピッキングが冴える「Open Up」。フィドルも活躍してクリスを盛り立てます。2曲目もラグタイム調のギターがご機嫌です。「こちらではエレキ・ギターがソロをとります。ここで、曲の雰囲気が変わりマイナー・キーになって「Don’t Call Me Stranger」。テンポの良いフォーク調は変わりませんが、フィドルもギターも悲しげな表情になります。次は「Time Stands Still」。2009年のアルバムのタイトル曲、メジャー・キーに戻りますが、フォーキーな雰囲気は続いていきます。クリスは昔から低音が魅力的でしたが、いい感じにしわがれてブルージーな曲にはぴったりになっています。

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左端のギタリストは名称不明の民族楽器を奏でている。

続いて、ややテンポアップし「Nobody Home」の登場です。客席の反応の上々。エレキ・ギタリストが何やら弦の本数が少ない民族楽器のようなネックの長い楽器に持ち替えボトルネック奏法でクリスを盛り上げています。次は「Down To The Sound」。再びマイナー・キーで落ち着いた演奏に戻ります。続いてはマイナーはそのままで、ややテンポアップして「Train Home」が演奏されます。印象的なメロディを持ったナンバーです。

次はスロー・ブルーズ「What It Might Have Been」。短いですが、クリスのギター・ソロも堪能することができました。続いてのナンバーはチャック・ベリーの「Maybellene」のカバーなのですが、なんとマイナー・キーになっております。これはこれでカッコいいです。10曲目「Everything on Top」はちょっとスローな味わい深いナンバー。この曲もフォーキーで、素敵なメロディを持っています。続く「The Blame’s on Me」は再びマイナー・キーの曲。クリスのギターのドライブ感がたまらないです。「Change Your Mind」は、フォーク調の軽快なナンバー。サポート・メンバーのネックの長い楽器が民族楽器のようなサウンドを出していて、結構楽しい演奏です。後半の曲で、サポート・ギタリストはエレクトリック・マンドリン(マンドキャスター)も弾いていましたが、あまり音が目立たなかったです。

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左端のギタリストはマンドキャスター(or マンドストラト?)を弾いている。

ここで、クリスが観客に謝意を述べ、ラスト・ナンバー「Statesboro Blues」が始まりました。かなり気合の入った演奏です。テンポもやや速く、ステージ上のメンバーも、観客も最高の盛り上がりを見せます。

1曲1曲が短いので、たくさんの曲をやってくれましたが、あっという間の1時間でした。クリス自身のギター・ソロはそれほどありませんでしたが、歌伴でも。後、しばしばチューニングを変えてオープン・チューニングやドロップ・チューニングを駆使していたようです。思えば、これだけたくさんのステージを見て、アコギメインのアーティストは、クリスだけなのです。ボニー・レイットに提供した「Love You Like A Man」を聴くことはできませんでしたが、最新作『Call Me Lucky』から6曲を演奏するなど、近作からの選曲を中心に、スミザーらしい歌とギターで楽しませてくれました。贅沢を言えば、サポート・メンバー無しで、クリス一人の弾き語りのステージも見てみたかったな。いつか、そんな機会があれば、と思います。

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1.Open Up
2.Make Room for Me
3.Don’t Call Me Stranger
4.Time Stands Still
5.Nobody Home
6.Down to the Sound
7.Train Home
8.What It Might Have Been
9.Maybellene
10.Everything on Top
11.The Blame’s on Me
12.No Love Today
13.Change Your Mind
14.Statesboro Blues

Leo Nocentelli at New Orleans Jazz Fest 2019.5.3

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アキュラ・ステージから、ジェンティリー・ステージへ、またまた長い移動です。途中でフェスのTシャツを購入。ジェンティリーに着くと、サウンド・チェック中でした。中央にリオ、その上手側にベースのビル・ブッダ・ディケンズ 白い7弦ベースを抱えています。彼は2012年のオバマ支援コンサートの時のミーターズ&ネヴィルズ&ドクター・ジョン・セッション(アートとエアロンはいなかったけど)の時も出演していました。リオの下手側には女性コーラスが3人並んでいます。

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リオの孫娘 妹の方はママのところへ逃げ帰る

1曲目はフュージョンっぽいインスト・ナンバーでした。もちろんリオはソロを弾きまくり、サックスも吹きまくりでした。2曲目で、ミーターズの代表作のひとつ「Fire on the Bayou」が登場。この曲の時に、6歳くらいと3歳くらいの小さな女の子が二人、リオの前に置かれたマイクの前に進みでます。同じデニムのオーバーオールのスカートをはいているので、おそらく姉妹でしょう。最初は二人が並ぶのですが、妹の方が大観衆に怯えたのか、舞台袖近くにいた母親のところに逃げ帰ってしまいます。姉の方はリオと一緒に最後まで、「Fire on the Bayou」を歌いきりました。リオのリード・ヴォーカルは初めて生で聴きましたが、なかなかいい声だと思います。ミーターズはメンバー全員歌うわけですが、オリジナル・ミーターズでは、彼がリードを歌うことは、ほとんどなかったと思います。もちろん、この4人の中では全盛期のアートがダントツで歌は上手いのですが、他のメンバーもそれぞれに味のある声をしていますね。できれば、アート以外の3人、ミーター・メンで共演して欲しかったけど、ファウンデーション・オブ・ファンクとリオのライブが見れて3人全員の歌声が聴けてよかったと思いました。そして、曲が終わった後、小さな女の子二人はリオの孫娘だと紹介していました。ちょっと強面な感じのするリオですが、好々爺ぶりを発揮していました。

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颯爽と歌う姉

3曲目の前にしばしMC。「Great day, Men」の呼びかけの後、ジャズフェスの50回開催を讃え、初回、コンゴ・スクエアで行われたフェスにマヘリア・ジャクソンやリー・ドーシーがカウント・ベイシーが出ていたこと、そのフェスにミーターズで出演したことを振り返っていました。そして、マルディ・グラの曲と言って2008年にシングルでリリースしている「Say Na Hey」を演奏。白人二人、アフリカ系一人の女性コーラスが三人いるのですが、それぞれに1コーラスずつリード・ヴォーカルを振っていました。みんな素晴らしいヴォーカリストですね。白人の一人はデューシー・マローン。デイヴ・マローンのお嬢さんでした。やっぱり、ニューオーリンズに来たらマルディグラ・インディアン・ソングは欠かせませんね。

4曲目は、ミーターズで一番知られているであろうナンバー「Cissy Strut」の登場です。イントロは例の掛け声でなく、リオのギターがしばらくリズムを刻んでから例のリフに移ります。ホーンズもテーマの演奏に参加しますが、トロンボーンを吹いているのはビッグ・サムだったりします。途中でソロ回しがありベース奏者の超絶フレーズも登場します。7弦ベースだけあって、複弦のフレーズを織り交ぜ、後半は早弾きで圧倒します。続くドラム・ソロも白熱。まさにお手本セッションでした。最後の曲、と言って始まったのは「Hey Pocky Away」の登場。もちろん、客席も大合唱です。コーラス隊も活躍し、ソロをとる場面もありました。この曲でも孫娘ちゃんが登場し、コーラスを歌っていました。将来有望ですね。

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リオ・ノセンテリさん、手数の多いギター・ソロを弾きまくるので、2005年にオリジナル・ミーターズが再編されたころも、「もう少しおとなしめに弾いてくれんかなぁ」みたいな声が上がっていたように思います。確かに70年代に比べるとスタイルも変わったし、ある種の「スキマ」がミーターズの魅力だったので、その「スキマ」を埋め尽くすようなギターに異を唱える向きがあることは理解します。でも、彼のプレイは問答無用のカッティングを含め、聴いていて気持ち良いです。たった5曲で、フェス向きの選曲だったのかも知れませんが、ミーターズのメンバーとして、数々の歴史的リフを生み出したオリジネーターであるリオのステージは自分にとっては、とても魅力的でした。もう、アーティを交えてのオリジナル・ミーターズの再編は叶わなくなってしまったけど、例えばアイヴァンを交えたオリジナル・メンバー3人を含むミーターズ再編なんかがあったら、ぜひ見たいですよね。
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