レシーブ二郎の音楽日記

レシーブ二郎の音楽ブログにようこそ。マイペースでぼつぼつ更新していきます。

Various / From The Big Apple To The Big Easy

ed7823fd._AA240_SCLZZZZZZZ_V60819985_いやぁ〜。すばらしい。久々にエネルギッシュに歌い演奏するライ・クーダーさんの姿を確認できて、非常に嬉しいです。

昨年夏のハリケーン・カトリーナ来襲によるニューオーリンズの被害は記憶に新しいところですが、その年の9月20日に「From The Big Apple To The Big Easy」というベネフィット・コンサートがニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われました。このライブに出演したミュージシャンが、まず、すごい。アラン・トゥーサン、ネヴィル兄弟、ミーターズ、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドといったニューオーリンズ勢をはじめ、エルヴィス・コステロ、ジミー・バフェット、シンディ・ローパ、エルトン・ジョン、ジョン・フォガティ、サイモン&ガーファンクルといった面々です。そのDVDが今年8月にアメリカで発売されていたんですねぇ。

こうした面々にまじって、ライ・クーダー、バックウィート・ザイティコ、レニー・クラヴィッツの3人を中心とするブルース・バンドの演奏が4曲収められています。まだ、この部分しか見ていないのですが、すごくかっこよかったので、早速書き込むことにしました。

ステージ中央には3人のミュージシャンが腰掛けて並び、左端がレニー・クラヴィッツ、中央がバックウィート・ザイティコ、右端がライ・クーダーです。ライは、「Chavez Ravine」に収められていた写真でもかけていた黄色縁のサングラスをかけ、帽子をかぶり、カントリーシャツを着てグリーンとパープルに光る2本のネックレスを首にかけています。まず、ライが例の改造ストラトで調子のいいリフを弾き始め「My Girl Josephine」を歌い始めます。おそらくザイティコ・ナンバーでしょうが、ノリがよくてとにかくかっこいい。ライの歌もパワーがあってとてもいいし、間奏でもライのボトルネックを十分堪能できます。バックウィート・ザイティコのアコーディオンも本当に気持ちいいです。レニクラのギターはほとんど聴こえません。

2曲目「Rock Me Baby」はバックウィート・ザイティコが歌うブルージーなナンバー。間奏のソロまわしがあり、最初のソロはライ、二番目のソロはレニクラなのですが、ここへきてもレニクラのレスポールの音量がなかなか上がらない。間奏の半ばになって、少し音量が上がるもまだ不十分。こういったアラも急遽開催されたイベントだけに仕方ないところでしょう。

やはり軽快な3曲目「When The Levee Breaks」では、ライがグレッチに持ち替え、ノン・スライドでイントロを奏ではじめ、レニクラが歌います。ソロはありませんがライの個性が反映されたバッキングです。

4曲目「Backwater Blues」で、ニューオーリンズの歌姫、アーマ・トーマスが登場。ライは再びストラトに持ち替え、ボトルネック奏法でスロー・ブルースをじっくりサポートします。ここへきてレニクラのギターもきちんと聞き取れるくらいの音量になります。ドラムとベースを担当するアフリカン・アメリカンの二人の演奏も的確です。

いやいや、こういう縁があって、ベネフィット・アルバム「Our New Orleans」が録音されたんですな。しかし、これだけエネルギッシュなプレイを見せられると、来日を期待したくなりますな。ニューアルバム発表後に本当に来日してほしいものです。これから他のミュージシャンの演奏を見るのも楽しみです。さて、このDVDは日本発売はないのかな。本当にリージョン1で、リージョン・フリーのプレイヤーでないと再生できません。購入予定の方はご注意を。

西岡恭蔵 / X'mas Song At Banana Hall 1997

9443392f.jpg西岡恭蔵さんのこと知ったのは、たしか中学生の時。FMの音楽番組をエアチェックしていて、あの名曲「プカプカ」のライブ・バージョンがかかったのが出会いでした。ヒットしたディランIIのバージョンでなく、作者のバージョンに先に出会ったのです。たぶん、「春一番」のライブでゾウさんの弾き語りだったように思います。それまで知っていた、いわゆる、ニューミュージックと呼ばれる一群の人たちとは、同じジャンルでありながら、どこか違うホンモノの香りがしたのを強烈に覚えています。

大学生になるころには、たまにライブ・ハウスに行くことができるようになり、はじめて、KYOZO&BUNのステージに接したり、友人に中川イサトさんの「鼻歌とお月さん」のLPをテープにコピーしてもらったり少しずつゾウさんの世界に惹かれていきました。

90年代になって、ゾウさんの昔のLPが少しずつCD化されるようになってきました。「西岡恭蔵とカリブの嵐」「ろっかばいまいべいびぃ」はかなりの愛聴盤でした。後者では細野さんとの深いつながりを知り、中古のLPで入手した「YO-SORO」でその関係を追認しました。しかし、そのころ福岡に移住していた自分はなかなかゾウさんのステージを見る機会がありませんでした。1997年、懇意にしている直方の居酒屋のオーナーが新しいクッキング酒房を出すことになり、年が明けた98年の3月に大塚まさじさんのライブを、その店、れんぴっかで開催することになりました。

大塚さんとゾウさんの二人は切っても切れない関係です。もともとザ・ディランのメンバーには蔵さんも入っていたし、お互いが詞や曲を提供しあう関係です。そのころ作詞家でゾウさんの奥さんのKUROちゃんが若くしてガンで亡くなったことを大塚さんの話でうかがいました。その年、ゾウさんが陣頭指揮をとり「KUROちゃんを唄う」というトリビュートCDが発売されました。その7月、大塚さんと蔵さんが山口県防府市沖の瀬戸内海に浮かぶ小島、野島にやってきました。このときのライブが自分にとってゾウさんの最後のステージになりました。翌年、1999年の4月。KUROちゃんの三回忌の数日後、ゾウさんが自らの命を断ったからです。テレビ番組のインタビューで息子さんが「父は一日も早く母のところに行きたかったのだと思います。」と涙ながらに語っていたのが忘れられません。早いものであれから7年もたってしまったのですね。

クリスマス・イヴの今日。ゾウさんのクリスマス・アルバムを聴いています。ゾウさんはクリスマス・ソングを毎年1曲ずつ書いて12曲たまったらアルバムとして発表することにしていたそうです。98年まで10曲のクリスマス・ソングを書いたところで、その計画は消えてしまったかに見えました。しかし、ゾウさんが亡くなった後、大塚まさじさんがプロデューサーとなり、1997年12月、大阪バナナホールで行われたクリスマスコンサートのライブ録音をCD化したのがこのアルバムです。中には「真冬のアロハ・パーティ」など、すでに発表されていたものもありますが、大半ははじめて耳にする曲ばかりです。ゾウさんの卓抜したメロディ・メーカーとしての力量、のびやかで素直な歌声を堪能することができます。また、ゾウさんが信頼するミュージシャン達による確実で暖かいサポートも素晴らしいものがあります。ゾウさんには、その名も「南米旅行」というタイトルのアルバムがありますが、彼はラテン・タッチの曲が得意でした。ここでもパーカッションをフィーチャーし、ラテンのノリが心地よいクリスマス・ソングがたくさん収められています。「Banana X’mas Tree」「クリスマスはカリプソで」はハバネラのリズム、「真冬のアロハ・パーティ」はレゲエのリズム、「X’masは家にいて」はルンバのリズムなどといった感じです。そんな一曲「Soul X’mas」は踊りだしたいほどのビートに哀愁のメロディが印象的なナンバーです。

97年のクリスマス・ソング、「Gloy X’mas」はKUROちゃんが亡くなったあとで書かれた曲。「お前がいない 今年のX’mas 二人で書いた X’masの唄を 一つ一つ心込めて唄うから 天国のお前の 魂に届け」これほど、聴く人の魂を打つ曲はないでしょう。そう唄ったゾウさんは、本当に愛妻のKUROちゃんを追いかけ、この世を後にしてしまいました。二人の愛は間違えなく伝説になるでしょう。ゾウさんは、このころのきっとありったけの力を注いで唄を書いたのでしょう。

このアルバムのラストを飾る「X’mas Dreamin」がいつ書かれた曲かはわかりませんが、この時すでに二人で天国へハネムーンに行くことを人知れず心に決めていたのかもしれません。「はてないロマンス 胸に抱けば 今宵X’mas Dreamin Wonderful Greetin’ 君と二人 君と二人」

Ry Session 69 Mike Seeger / The Second Annual Farewell Reunion

acdc6682.jpgライ・クーダーの新しいアルバムが出るという情報が飛び込んできました。タイトルは「My Name Is Buddy」。空想上のネコ〈バディ・レッド・キャット〉についてのストーリーを、音楽やイラスト付きのブックレットで物語るというもので、フォーク・ミュージックの発展に多大な影響を与えてきた大御所アーティスト、ピート・シーガーとマイク・シーガー兄弟や、ヴァン・ダイク・パークスといった豪華ミュージシャンが参加しているとのこと。リリースの予定は2007年3月だそうです。楽しみですね。しかも、4月にはライがプロデュースするメイヴィス・ステイプルスのアルバムもリリースされるとのこと。還暦を目前に、活動が活発になってきたのは嬉しいことです。

さて、ライは今から33年前に、その、マイク・シーガーのアルバムに参加しているので、紹介しましょう。ライがはじめて親しんだ音楽はウッディ・ガスリーらのフォーク・ソングだったそうですが、ピート・シーガーの弟、マイクが組んでいたニュー・ロスト・シティ・ランブラーズからはかなりの影響を受けており、セカンド・アルバム『Into The Purple Valley』では、「How Can You Keep On Moving」「Taxes On The Farmer Feeds Us All」をとりあげているだけでなく、アルバム自体がランブラーズの『Songs From The Depressions』の構成を下敷きにしています。

マイク・シーガーが1973年に発表したこのアルバムには、ほぼ1曲ごとにゲスト・ミュージシャンが参加しているスタイルです。ライ・クーダーのほかの参加メンバーは、マリア・マルダー、エリザベス・コットン、ペギー・シーガーなどなど。フィドル、ダルシマーなどをゲストに迎え、マイク自身はバンジョーやマンドリンでフォーク・スタイルの曲を演奏しています。中にはブルージーな曲もあって、ライが参加しているのも、そんな曲のひとつです。

「The Train That Carried My Girl From Town」は1920年代に活躍した白人ブルース・スライド・ギタリスト、フランク・ハッチソンのナンバーです。ブルースによくあるトレイン・ソングで、オリジナルでは、スライドのみで汽笛の音を表現していましたが、ここではマイクがブルース・ハープとフィドルを弾き、ライがアコースティック・ギターのボトルネックで演奏しています。アルバムではマイクが各曲を解説しており、この曲については次のように書いてます。「私はライの新しいアイディアを使った古い曲やサウンドの味わい深いリメイクやミックスを楽しみました。彼のアイディアは古いものを新しく聴かせるベストのもので、ソースはフランク・ハッチソンのものです。」この言葉が、ここでのライの演奏を語り尽くしています。「Vigilante Man」で聴かれるような複雑なベース・ノートを挟みつつ、ギター一本だけでモダンかつブルージーな伴奏を成立させているのです。

ライは、前年に自分のアルバムにスリーピー・ジョン・エステスを招聘したのを皮切りに、リスペクトするミュージャンとの共演に積極的に取り組むようになります。このアルバムは、マイクの方からライに声をかけたのかもしれませんが、ライにとっては嬉しい体験だったに違いないでしょう。ほかにも70年代にはよく知られた、ハワイのギャビー・パヒヌイや、テキサスのフラーコ・ヒメネスとの共演だけでなく、ジョニー・キャッシュのアルバムにも客演しています。

平田達彦ライブ at Tatopani inKOKURA

4a4a447a.JPG平田さんのライブを最初に見たのは、久留米の発心コンサートだったか、波戸岬の夏の野外コンサートだったか。いずれにせよ、もう7〜8年も前のことになります。大塚まさじ、加川良など、並み居る強豪に混じって、強く印象に残る歌を聞かせてくれました。彼の姿を見るのは、たいてい野外イベントですが、先日の日曜17日、はじめて彼の単独ライブに足を運びました。会場は小倉北区紺屋町のTATOPANIというカレー屋さん。こちらは、まさじさんのライブもよく主催しており、以前、お目にかかったことのあるマスターが最近はじめたお店です。

ライブの30分前にはオーダーストップということで、早めにお店について、キーマカレーで腹ごしらえ。定刻になると、少し赤い顔の平田さんが登場。タカミネのエレアコを爪弾きながら静かな曲を弾き語りはじめました。彼はもともとボブ・ディランに強い影響を受けているフォーク・シンガーですが、こんなに叙情的な曲があったかな、と思っていたら3曲目で、「ヒラタのブルース」登場。初めて聴いたころからすでにやっていた自己紹介ナンバー。現住所を部屋番号まで歌いこんで笑いをとるのは同じ。「オークスタウン……」「アサダソウ…..」のところで口エコーをかけていたのが目新しかった。しかし、彼のちょっと情けないMCは最高です。ホント笑えます。プロと称する人の中には、生活のためにバイトする人はたくさんいます。かなり名前が売れている人でもそうなんだから、厳しい世界です。たいていの人は、そのことをステージでしゃべったりはしません。しかし、平田さんは、逆にそれをネタにお客さんを楽しませている。これはなかなかできることではありません。エネルギッシュに歌ったあと、「気持ちエエわぁ。これで飯食えたら最高なんやけどな」と言って笑いをとる。でも、本当に歌うことが好きなんだなと、伝わってきます。
前半はフォークスタイルということで、インド三部作「カーニャクマリまで」「ブッダガヤへの道」などを演奏。「ブッダガヤへの道」は以前耳にしたことがありますが、なかなか自分好みのナンバーです。

後半はブルーススタイルということで、いきなりアォーンと吠える「野良犬のブルース」。客席も一緒に吠えていい感じです。それに、この曲はコンスタントベースながら、ギターの腕も只者ではないことを見せつけてくれます。大塚まさじのカバー「ポートメリーのスー」や「赤毛の女」でけだるい雰囲気をだしたかと思ったら、西岡恭蔵さんバージョン、KUROちゃん作詞の「What A Wonderful World」や、自作の日本語詞の「I Shall Be Released」なども披露してくれました。1部と2部で雰囲気を大きく変えている上、MCも楽しくてあっというまに2時間近くを経過。沖縄系のメロディを持つラストソングでは、突然ステージにあがってきた目玉君におじけづくことなく、逆に余裕たっぷりに客席に紹介し、いっしょに歌いながら踊ってました。いやぁ、プロですね。アンコールは唐津リキハウスのリキさんなど、九州音楽界の先駆者を歌い込んだナンバー。偉大なる先人へのリスペクトを忘れない彼の姿勢はすばらしいです。全国に熱心なファンがいるはずですね。

Ry Seesion68 The Everly Brothers / CHAINED TO A MEMORY

f85de7d7.jpgエヴァリー・ブラザーズというと、「Bye Bye Love」「Crying In The Rain」といったポップスのアーティストというイメージが強くて、もちろん、そのルーツにはカントリー・ミュージックがあるんだろうけど、そんなにまじめに聴いてきませんでした。ライ・クーダーのセッション参加作品を集めたり、バーバンク・サウンドにはまったりしてドンのソロを含め数枚アルバムを購入しましたが、エンターテイメント性の高いポップスのミュージシャンという認識はかわりませんでした。しかし、やはりライ・クーダーのセッションを追いかけて、このボックスセットを買って聴いてみてビックリする面がたくさんありました。

まず、60年代中盤、彼らはかなりタイトなフォークロック・サウンドをつくっていたということ。バーズのデビュー作、「Mr.Tambourine Man」の演奏が、ロジャー・マッギンの12弦ギターを除くと、あとはスタジオ・ミュージシャンでかためられていた、というのは有名な話ですが、ほぼ同じスタジオ・ミュージシャンが、同時期エヴァリー・ブラザーズをバックアップしていました。ドラムにジム・ゴードン、ベースとキーボードにラリー・ネクテル、キーボード、レオン・ラッセル、ギターにはグレン・キャンベル、ジェームス・バートンらが主な顔ぶれです。彼らの紡ぎだす演奏とエヴァリー兄弟のコーラスはかなりホット。ストリングスなどでシュガー・コーティングしなくても、きわめて音楽性の高い演奏が確立されていたことを教えてくれます。バーズより上の世代で、ブリティッシュ・インベイジョンやフォーク・ロックによる新しい音楽に克服される側ととらえられがちな彼らですが、60年代には十分バーズやビーチ・ボーイズと肩を並べる音楽をつくってきていたんですね。特にグラハム。ナッシュを擁したホリーズには、かなり強い影響を与えたんだなとか、今さらながら驚いている次第です。

さて、9枚組のこの大作BOX。1965年から73年までの彼らの足跡をかなり克明に追っています。LP大の分厚い本にはアンドリュー・サンドヴァル氏による詳しいクロニクルと写真が満載で、これだけでも1万円くらいしそうです。当然ながら全部英文なので、サラサラとは読めませんが、日記風になっており、GIG, TV, SESSIONなどアイコンでその日の行動が読める仕組み。SESSIONには可能なかぎり収録した曲と参加ミュージシャンも記載されています。これで、Ry Cooderのかかわりも詳しく知ることができます。

エヴァリーズにとってワーナーでの最後のスタジオ・アルバムとなった「ルーツ」は1968年11月リリースされました。レニー・ワロンカーとアンディ・ウイッカムがプロデュースし、ロン・エリオットやランディ・ニューマンらが参加したバーバンク・サウンドの作品でしたが、リリース直後に新たなレコーディングが行われます。ひきつづきレニーがプロデュース、ロン・エリオットとサム・マックーがギター、ラリー・ネクテルがキーボード、テリー・スレーターがベース、ジム・ゴードンがドラムスという布陣で、「Omaha」「Human Race」が吹き込まれました。そして、12月も押し詰まった27日と30日、同じくレニーがプロデューサーを務め、ジャック・ニッチェがアレンジを担当したセッションが行われました。ここではメンバーが大きく入れ替わり、ライ・クーダーがギター、ジェイ・ディー・マネスがスチール・ギター、ジェイムス・カーマイケルとヴァン・ダイク・パークスがキーボード、ジェリー・シェフがベース、アール・パーマーがドラムス、マイク・ボッツがパーカッションというメンバーで、「Mr.Soul」「In The Good Old Days」「Down In The Bottom」「Love with your Heart」が録音されました。これらは、いずれもドンがリードをとっています。この4曲の中では特に「Mr.Soul」と「Down In The Bottom」でのライの活躍が光ります。前者のmix1では、ライのマンドリンが印象的、ギターはサビの部分に薄く入る程度。しかし、mix2では、これに泥臭いエレクトリック・ボトルネック・ギターがかぶさってくるのだからたまりません。ニール・ヤングが書いたバッファロー・スプリングフィールドのロックンロール・クラシックですがテンポを落とし、まるでブルースのように仕上げているのですが、エヴァリーズのボーカルはさわやか。このあたりのアレンジの妙が楽しみどころ。一方後者はウィリー・ディクソンのブルースのテンポをあげたロックナンバーでライのボトルネックギター・フレーズは、「Rolling and Tumblin’」を想起させます。でmix1もmix2もライのギターに関しては同じフレーズのようです。エンディング部分のカッティングはストーンズとのセッションを思わせるかっこよさです。ドリー・パートンのナンバー、「In The Good Old Days」のmix2ではアコースティック・ギターとともに左チャンネルでイントロからシタールを弾いているもよう。サビからはペダル・スティールの活躍でライはあまり目立ちませんが、アコースティック・ギターのフレーズのはしばしにライらしいひらめきが感じられます。あと、「Love with your Heart」で聴かれるボリューム奏法を多用したギミック性の高いエレクトリック・ボトルネク・ギターもライの手によるものでしょう。このようにみると、このときのライのプレイには、土臭さとともにサイケディリックな要素も求められていたようです。
結局、このときのセッションは長く陽の目をみることがなく、1984年、アウトテイク集に収められリリースされますが、ここにはそこにも収録されなかったmix違いのものが含まれています。

アルバム「ルーツ」の売り上げは芳しくなく、その後、ルー・アドラーをプロデューサーに迎え、シングル用の曲数曲を吹き込みますがこれも売れず、エヴァリーズはワーナーを離れることになります。1970年、ドンは、ライはじめ腕利きスタジオ・ミュージシャンを起用しソロ・アルバムをレコーディング。オードから翌71年にリリースされますが、このときの音源は、このボックスには収録されていません。このアルバムについてはすでにレビュー済みですのでそちらを参考にして下さい。

グループとしてのエヴァリーズは1971年、ポール・ロスチャイルドをプロデューサーに起用。多数のゲストを迎えてRCAから「Stories We Could Tell」をリリースすることになります。このときのセッションにもライは参加。8月25日から27日の間に行われた「Sylvie」「Old Kentucky River」「Green River」の3曲に参加したあと、12月20日に再び単独でスタジオに入り、「Green River」と「Del Rio Dan」のエレクトリック・ボトルネック・ギターをオーバー・ダビングします。前者のセッション参加者はギターにウェイン・パーキンス。リズム隊はエスリッジ&バーバタノL.A.ゲッタウェイ・コンビ。キーボードはバリー・ベケット、ペダル・スティールがバディ・エモンズでした。このアルバムには「Green River」と「Del Rio Dan」しか収録されませんでしたが、それについてはすでにレビューしています。そのとき「Del Rio Dan」の間奏のギター・ソロはウェイン・パーキンスではないかと推測しましたが、ダニー・ワイスだったようです。「Old Kentucky River」はオクラ入りしていましたが、このボックスセットで初めて紹介されました。ライはアコースティック・ギターでバッキングしており、リードはウェイン・パーキンスが弾いています。「Sylvie」の方はレッドベリーの曲で、エヴァリー兄弟が参加していないインストのようですが、そのためか今回のボックスにも収録されていません。Unissued/lostとクレジットされているので聴くのは難しそうですが、興味深いです。

まだ、全部聴いていないのですが、エヴァリーズのすばらしさだけでなく、当時のロサンゼルスのセッション・ミュージシャンの優秀さをひしひしと感じることのできるセットでもあります。上にあげた以外でも、マイク・ディージー、クラレンス・ホワイト、ジーン・パーソンズ、ラス・カンケル、ハル・ブレインらのプレイを耳にすることができます。8枚のCDに1枚のDVDという分量ですが、意外にすんなりと聞きとおせそうです。

このボックスセットの情報を教えていただいたkura_moさんに感謝します。彼のブログ、スバラしいですよ。愛読してます。http://blog.livedoor.jp/kura_mo/

Jazz Ja Night vol.2 at Big Band in KOKURA

37345b28.JPG13日水曜の晩は友人でバンド仲間のマイク小緑氏に誘われて、小倉Big Bandにでかけました。Big BandはJazzの店で、普段はそうそうたるジャズ・ミュージシャンが出演してます。今年も日野テルマサ氏が出たりとか、つい先日は村上ポンタ秀一さんが、本田しのぶさん、吉田次郎さんと出演したり、10月には大熊ワタルさんとジンタラムータがあったり…..と、とにかくすごい店なのです。

そんなお店で、この日はマイク小緑氏主催の「Jazz Ja Night vol.2」が開催されました。なんとノーチャージで4人の弾き語りミュージシャンが出演。まずは、歌い方が結構今風な元気くん。ギルドのドレッドノートを爪弾き、ラブソングを数曲披露。2番手はママチカのマイコちゃん。今相方が産休中ということで、一人のステージは緊張するとのこと。その気持ちよくわかります。彼女の飾らない歌声は結構好きです。3番手はヘリッシュ・アキラくん。テイラーのギターをかきならし、なかなかいい喉を聴かせてくれました。

この日の出演者で一番印象に残ったのがラストに出演した魚座フジイくん。とにかく個性がきわだっていました。まず見た目からして狙ってますが、かぎりなく昭和を感じさせるスタイルなのです。使ってるギターもスズキの70年代前半と思しきモデル(ライブ終わったあと少し触らせてもらったのですが、わざとサビた弦を張ってました)。そして、詩も昭和の文士を思わせるスタイルです。そう書くと、高田渡さんのことを思い浮かべる人がいるでしょう。確かに、日本的なところ、ボーカルの音程が不安定なところを逆に味にしてしまっているあたりは共通するのですが、フジイくんの音楽の背景にはずっとおしゃれなところにあるのは明白です。自分の個性をみきわめることのできるミュージシャンはなかなかいないけれど、彼はそのあたりをよくわかった上でキャラをつくりあげているようです。彼のバンドもぜひみてみたいですね。

来月は自分も呼んでいただけるみたいです。18日だそうです。よかったらぜひ。今から緊張してます。

Ry's Instrument4 gibson F-4 mandolin

222b1bed.このマンドリンは、ライが70年代を通じてレコーディング、およびステージで愛用していたもので、ギブソンのF-4です。ロイド・ロアーが製作したF-5が出る前は、ギブソンの最高峰モデルで、オーバル・ホールでスクロールが設けられています。

ライは、ライジング・サンズのレコーディングですでに、マンドリンとボトルネック・ギターをオーバー・ダビングさせており、独自のサウンドを編み出していますが、そのサウンドには、スリーピー・ジョン・エステスといっしょにやっていたブルース・マンドリン弾き、ヤンク・レイチェルの影響が色濃く感じられます。タジ・マハールのファーストの1曲や、ストーンズの「Love In Vain」で聴けるライのマンドリン・プレイも同様です。しかし、ポール・リヴィア&レイダースやバーバンク系のポップスなどでも、ライはマンドリンを多様し、誰にも真似できないサウンドを作りだしていました。

ソロ・アルバムや、ステージではやはり敬愛するスリーピー・ジョンの曲を演奏する時にマンドリンを用いています。ファーストの「Going to Brownsville」やサードの「Ax Sweet Mama」といった曲だけでなく、ステージでは「Clean Up Home」「Blind Man Messed up in Tear Gas」といったレコードに未収録の曲をマンドリン一本の弾き語りで演奏していました。スリーピー・ジョンの曲以外では南北戦争頃の古い曲「Billy The Kid」やワシントン・フィリップスの「Denomination Blues」もこのスタイルで演奏していました。後者は、レコードでは「一人マンドリン・オーケストラ」で演奏していましたが、この件はマンドセロの解説の時にでも、詳しく述べましょう。
このほか、「F.D.R. in Trinidad」「Tattler」「Money Honey」「I Got Mine」などの曲でも、マンドリンを上手くアンサンブルに用いていました。

ライのマンドリン奏法は、普通のマンドリン奏者がフラットピックを用いるのと異なり、サムピックを用い、フィンガー・ピッキングをするのが特徴です。それにもかかわらず自然なトレモロ奏法とフィガリングがとけあっており、なおかつクリアで力強いサウンドになっているのは驚異的ですらあります。マンドリン1本の弾き語りで、これだけ素晴らしい音楽を生み出せるミュージシャンはそうそういるものではありませんが、最近はあまりマンドリンを弾かなくなったようで、少し寂しい気がします。

来日公演では、78年のソロと79年のリンドレーと二人の時には持ってきていましたが、その後は一度も持ってきていません。今も持っているかどうかは不明です。そのかわり90年の来日の時にはリッケンバッカーのエレクトリック・マンドリンを弾いていました。

Ry Session 67 Claudia Lennear / Phew

887d6a74.jpgクロウディア・レニーは、一時期アイク&ティナ・ターナーのバックコーラス、アイケッツの一員だったことのある女性シンガーです。その声はまさしくソウルフルでパンチが効いています。70年代には白人のロック・シーンに接近。ジョー・コッカーのマッドドックス&イングリッシュ・メンに参加。ここでは、かつてシングル盤のB面に収録され、現在リリースされているデラックス・エディッションに収録されている「Let It Be」でリード・ボーカルをとっています。同じツアーで「スーパースター」を歌ったリタ・クーリッジが大スターになったのに、クラウディアにはスポットライトは当たらず、バックコーラスとして様々なアルバムに参加します。私生活では、この時期ドン・ニックスの奥さんでした。

そんなクラウディアは、1972年にリリースされたライ・クーダーのセカンド・アルバム「Into The Purple Valley」に参加。特に「Money Honey」で、いい喉を聴かせてくれます。その縁からでしょうか、翌年の唯一の彼女のソロ・アルバムでは本作「Phew」にライが客演することになります。

このアルバムは、A面とB面が別々のコンセプトで、A面はL.A.スワンプ・セッションとでも呼びたい内容。ライさんはもちろんこちらに参加です。B面は全曲アラン・トゥーサンの曲が使われていて、きわめて洗練されたソウルになっています。

A面をサポートするのは、ライのセカンド・サードに参加した面々、ジム・ディッキンソンがピアノとギター、トミー・マックルーアがベース、マイク・アトレイがハモンド・オルガンというディキシー・フライヤーズの面々。それにミルト・ホーランドがパーカッション、ドラムはジョン・クラヴィオッタ。この人はライのセカンドのほか、アーロ・ガスリーの「Hobo's Lullaby」に参加していたりバフィ・セント・メアリー、クリス・ダロウらのアルバムに参加しているドラマーです。あと、ジョン・リー・フッカーをサポートしたブルース・ギタリストのチャーリー・グライムスも入っています。

A面は、ミルトのコンガにライのファンキーなエレクトリック・ギターで幕を開けるロン・デイヴィス作の「It Ain't Easy」が1曲目。クロウディアのシャウト、そして間奏のライのギターも心地よいです。2曲目ものっけからライのエレクトリック・ボトルネック・ギターが存分に存在感を発揮しているナンバー。やはりロン・デイヴィスの作品。3曲目のバラード「Sister Angela」にはライは参加していない模様。トレモロの効いたギターを弾いているのは、ジム・ディッキンソンでしょうか。こういう味わい深い歌もいいですね。ブルージーでラウドな16ビート・ナンバー「Not At All」ではファンキーなベースラインにのって2本のギターがからみあいます。片側のボトルネックがライで、もう片方はチャーリー・グライムスでしょう。A面ラストは、ドン・ニックスと仲のよかったブルース・マン、ファリー・ルイスのナンバーで「Casey Jones」。この曲はジム・ディッキンソンも取り上げてていて、ここでアコースティック・ギターを弾いているのもジムと思われます。以上のようにライの参加は3曲のみと思われますが、自己のアルバムと共通する気心の知れたメンバーとセッションを楽しんでいる様子で内容の濃いプレイがレコードの溝に刻み込まれています。

B面に行くと、ホーンも入って特徴的なアラン・トゥーサンが全開。A面とは全く違う雰囲気。気分は完全にニューオリンズです。アラン自身の声もコーラスで聞こえてきます。脇を固めるミュージシャンがまたすごい。ドラムはジム・ケルトナー、ベースはチャック・レイニー、キーボードにスプーナー・オールダムとウィリアム・スミス、そして、アラン・トゥーサン自身。ギターはアーサー・アダムズとマーリン・グリーン。これに重厚なホーンセクションがつきます。曲は「Goin' Down」「From a Whisper to a Scream」「Everything I Do Gonna Be Funky」「What'd I Do Wrong」「Goin' Down」。これらをメドレー調に続けて演奏します。この時期、フランキー・ミラーやリトル・フィート、そしてロバート・パーマーなどのミュージシャンに絶大な信頼を得ていたアラン・トゥーサン。ここでもいい仕事を残しています。

というわけで、A面は荒削りなスワンプ・ロック・サウンド、B面は洗練されたニューオリンズ・ソウルと二つの味わいが楽しめるアルバム。その分印象が散漫になってしまうという面もなきにしもあらずです。が、しかし、そんな細かいことにこだわらず、上に書いたような面々のサポートの上にクロウディアの上手いボーカルがのっかってるのだから、これは楽しまなくっちゃ損です。




JANUARYTYME / FIRST TIME FROM MEMPHIS

8f0ad5bd.jpgかつて、P-Vineレーベルから「スワンプ〜サザン・ロック裏名盤発掘シリーズ」というのが出ていて、何枚か買いましたが、その中でも特に気に入っている一枚が、このジャニュアリー・タイムの「ファースト・タイム・フロム・メンフィス」です。

1970年、エンタープライズからリリースされた、5人組。ボーカル&キーボードのジャニュアリー・タイムを中心に、ギター2本、ドラムス、ベースからなる5人組。ブリンズレー・シュワッルツ同様、バンド名とリーダー名を兼ねている模様です。とにかく謎の多いバンドで、日本盤ライナーにも、「アルバム・タイトルからメンフィス出身と推測しているが、推測の域をでない。」みたいなことが書いてありますし、メンバーはかなりの凄腕と見受けられるものの、他のアルバムには一切クレジットされていません。ジャニュアリー・タイムは、スリー・ドッグ・ナイトの「One Man Band」の作者として、トーマス・ジェファーソン・ケイ、ビリー・フォックスとともにクレジットされている程度。AMGを検索すると、このバンドはニューヨークで結成されたとあります。

「ファースト・タイム・フロム・メンフィス」を一聴して感じられるのは、ファンキーなジェファーソン・エアプレインというのが一番わかりやすいかもしれません。ボーカルはグレイス・スリックにかなり近く芯の強さを感じさせる張りのある声です。サウンドは16ビートを消化しきっており、ベース・ラインなどかなりファンキー。ギターのカッティングもなかなかのもの。2曲目あたり、かなり気持ちいいです。こうしたファンキー・ナンバーに書いてるベーシストのスティーブ・シアントロ。ベースの腕前も含め只者ではない模様です。
あと「Take This Time」あたりを聴いているとメロディやリード・ギター、男性ボーカルにスティーブン・スティルスの影響も顕著に感じられれます。

要するに60年代末から70年代初頭のアメリカン・ロックのおいしいところがいっぱいつまったアルバムなのですが、このアルバム1枚だけを残して、メンバー全員がシーンから忽然と消え去ってしまったのはなぜなのでしょう。セールス的にはふるわなかったでしょうけど、もったいない話です。

ジャニュアリー・タイムはその名のとおり1月生まれなんでしょうけど、きっと山羊座なんでしょうね。だってジャケットが山羊座の神話で、音楽好きの牧羊神パーンが変身した上半身がヤギで下半身が魚の姿の獣の背に、5人のメンバーが乗っている、すてきなイラストですからね。ジャケットをひっくりかえすと、メーテル帽にサングラス姿の彼女が人差し指を片方の鼻の穴につっこんでいる写真。うーん。どういう性格の人なんだろう。どんなステージやってたんだろう。興味はつきません。

マッドワーズ Live at アルク カフェ in 飯塚

b392a49c.JPG一昨日は飯塚でマッドワーズのライブを見てきました。

マッドワーズと言えば、一昨年、全国的に著名な芝居小屋、嘉穂劇場で、「嘉穂劇場 meets Jug Band」なるイベントにかかわらせていただきました。この時は主催者の一人、大坪さん率いるアルゴ探検隊に入れてもらってマンドリンやラップ・スティールを弾いたり、昼からマッドワーズとともに商店街の呼び込み演奏に行ったり、パンフの原稿を書かせてもらったりとスタッフとして参加させていただきました。しんどい面もあったけど、とっても楽しい思い出です。今回は会場も小さくなり、客としてゆっくり楽しませてもらいました。

会場はガラス張りのすてきなカフェ、アルク・カフェです。そういえば、前にここで、魅音という素敵なユニットを見たなぁ。今日は2度目です。
春待ちファミリーバンドの沢村社長と「にこにこ楽団」がオープニング。ギターの山田さんと、コカリナの林恵子さんがサポート。林さん、今回は、コカリナだけでなく、オート・ハープ、パーカッション、ボーカルと大活躍。子供がおかあちゃんに10円をねだる内容のロックンロール・ナンバーでは、社長とのボーカルのかけあいが実にスリリングでした。いやぁ、すごいなぁ。社長もギター、ノコギリ、櫛カズー、ハープ、レジ袋、と、いつもながら多芸なところ見せてくれました。山田さんも1曲エレキ・ベースを弾いたし、みなさん多才ですね。「ぞうさんだぞ」はやったけど、今回は「ブランコ」はなし。(なくて、ホッとしましたが)かわりに「ともだち」などしっとりとした、いい曲を聞かせてくれました。葛原さんがエレキ・ギターで、大坪さんがタブ・ベースで客演しました。

さてさて、真打のマッドワーズは今年で結成10年だそうです。なんか、ついこないだのような気がするんだけど、10年たつのって早いですね。メンバーがそれぞれ個別に活動してるし、音楽以外の仕事の方もいらっしゃって、ライブがあっても関東圏が大半。彼らのステージを見るのはとっても貴重な機会です。たしか、2年前は九州発お目見えじゃなかったかな。それぞれがキャリアのある面々ですが、ジャグ・バンドというリラックスできる音楽をたまに会ってやるってのが長続きの秘訣かも。でも、演奏の息はぴったりで、クオリティの高い演奏を楽しむことができました。

その面子をご紹介せねばなりません。司会・ギター・ボーカル・手品・鳴り物の杉原徹、80年代はてつ100%で活躍してました。バンジョー・ギター・ボーカルのMooneyさんはアンクル・ムーニーなどのバンドを経てソロ活動へ。この手のサウンドの重鎮。最近サッチモやファツ・ウォーラーに捧げるアルバムを制作しています。日倉士さんは言わずと知れた、ボブズ・フィッシュマーケット出身の日本のトップ・スライド・ギタリスト。彼が敬愛するRy Cooder同様、フラット・マンドリンも巧みに操ります。そして、すばらしいブルース・ハープ吹きの石川二三夫さん、JugとWash Tab Bass担当はYONOさんです。

ルーフトップ・シンガーズでヒットしたガス・キャノンの「Walk Right In」で幕を開け、続いて、やはりキャノンの「Whoa Mule Get Up In The Alley」の改作「恋するラバ」は、ラバとポニーの恋物語に置き換えた歌詞が楽しいです。Loverを「ラバ」にしちゃうセンス。敬服します。しかし、サビの「I’m Just a Lover」の下りなんか原曲そのままと思ったら、違う歌詞なんですね。ロバの唄をラバの唄にしちゃったわけですな。3曲目はtetsu&Mooney作曲のオリジナル「Chapman Boogie」。大人のラブ・ソングです。やや卑猥な歌詞のお茶づくしのなかにご当地の「八女茶」や「嬉野茶」を歌い込んで受けをとっていました。そしてインストの「Mad Rag」。テツが繰り出す小物や手品に会場は大喜び。「つかみ」はばっちりですね。ここまでは3年前のステージと同じ構成です。

ここからはニュー・アルバム紹介コーナー。メンフィス・ジャグ・バンドの「Cocain Habit Blues」の「みんなでしようよ里帰り、一度はなろうよ、かなしばり、Hey Hey Everybody 朝帰り」なんていい加減な日本語詞が楽しい。次はカリプソ・ナンバー「Marry Ann」。ジャグ・バンドでカリプソが聴けるとは思いませんでした。すかさずハワイアンの「Ukulele Lady」では日倉士さんのボーカルをフューチャーしています。この次は、Mooneyさんの唄でエリザベス・コットン作「Freight Train」。「Ukulele Lady」はアーロ・ガスリー、「Freight Train」はタジ・マハールでおなじみのナンバーですな。

ノリのいい「Boodle Am Shake」あたりから、ライブはぐんぐん盛り上がっていきます。この曲でのMooneyさんのウォッシュボードはいつ聞いても気持ちいい。カウベルとシンバルのタイミングが絶妙です。このあとテツの大味、じゃなくて大技のイリュージョン・タイムがあり、おとぼけ曲「頭ハッピーちゃん」の登場。テツは頭にアヒルのかぶりものをして盛り上げます。そして簡易ウォッシュボードで沢村社長も参加しての「ねこは屋根」、ラストは、大坪さんがタブ・ベースで参加して「Stealin’」。アンコールはティーブかまやつの「ジャパニーズ・ルンバ」。オーラスはジョン・ハートの「My Creole Bell」でした。

日倉士さんは、前に来たときはFタイプのマンドリン2本とドブロでしたが、今回はマンドリンのうち1本がリゾネーター・タイプになり、ワイゼンボーン・レプリカのカノウプスも持って来てました。カノウプスは「ジャパニーズ・ルンバ」で弾いてました。

いやはや、楽しいライブでした。それぞれの演奏力の高さもすごいですが、音楽を自ら楽しみ客も楽しませようという姿勢がすばらしいです。彼らはジム・クエスキン&ザ・ジャグ・バンドの影響を強く受けているようで、今日のやったナンバーでも「Whoa Mule Get Up In The Alley」「Ukulele Lady」「Boodle Am Shake」がこのバンドのレパートリー。ほかにもたくさんの曲をとりあげています。ジム・クエスキン&ザ・ジャグ・バンドのオリジナル・メンバーで、ウォッシュ・ダブ・ベースの第一人者、フリッツ・リッチモンドがせん昨年11月に亡くなりましたが、YONOさんの使ってるウォッシュ・ダブは、フリッツにいただいたものなんだそうです。フリッツといえば、3年ほどまえにジェフ・マルダーと来日したのが最後になりましたが、そのジェフやジョン・セバスチャン、ジム・クエスキンを招いてのフリッツのトリビュート・コンサートが今年4月、東京で行われました。このライブは、今年、行けなくて残念だったライブNo.1なのですが(ちなみにNo.2はハッピー&アーティ・トラウム)、このライブにもマッドワーズは参加したんですよね。最新アルバムはフリッツに捧げるアルバムになってます。それぞれ活動中のメンバーが集まって年に何度かのライブしかやらないバンドですが、ホント楽しいバンドです。また、飯塚で見れる日を楽しみにしてます。

FUNGO LIVE!

b7f51330.jpg23日は、遠賀町に今年はじめにできた素敵なライブスポット、Cafe rit.でライブがありました。メイン・ステージはFUNGO。最近結成されたばかりの女性4人のコーラス・ユニットです。個人的には身内が加入しているので、あまり客観的には見れないのですが、一糸乱れぬコーラスが魅力的。なおかつ、選曲が素晴らしい。ローラ・ニーロ、ジャニス、グルートナ、ポインター・シスターズ、ヴォイセズ・オブ・イースト・ハーレムらのカバー。ゴスペル・ソングを交えながら、けっこうポジティブなメッセージ・ソングを集めて統一感ある選曲だったと思います。

バックは福岡県内で活躍中の凄腕プロばかり。中でも圧巻だったのが、ポインター・シスターズのカバー、「Yes We Can Can」〜「Love In Them There Hills」のメドレー。アラン・トゥーサンが書いた前者、ベースの村上さんのかもし出すグルーヴ感がたまらないですね。メドレーのつなぎの部分のスリリングなこと、この上ないです。ボーカルの面々もアフロチックなスキャットをバッチリ決めます。こんな難曲をほとんど1回の練習だけでモノにしてしまうバックのメンバー、すごいですね。ボーカルのみなさんも、それぞれが高い技量を持っています。この路線で定期的にやってほしいものです。

メイン・ステージの2部は、結成したばかりとあって、1時間弱のステージとなったので、1部は4人のメンバーが2曲ずつソロで歌いましたが、わたくしのパートナーは、ふだんやってる金さん銀さんで出演。「すけったーず」はギターのわたくしとパーカッションのエロリの二人のみの「プチすけったーず」で、「Loving You」と「アハハン・ブルース」をやりました。曲が終わったところで、「待てぃ!」とちりめん75g氏が乱入。金さん銀さんの宣伝を兼ねて「Yes No 枕」をさわりだけ演奏しました。はじめて見るお客さんも多かったようで、けっこう受けてました。

自分の出演もありましたが、この日はお客さん気分で、楽しませてもらいました。出演者のみなさんお疲れさまでした。


Captain Beefheart / Spotlight Kid

5e95c24b.jpgキャプテン・ビーフハートは、ライ・クーダーを通じて知りました。ライが参加した「Safe as milk」ほか何枚かの音源は持っていましたが、今年になって彼の評伝本が出版されたので、興味を持ち何枚か買ってみたところ、はまってしまいオリジナル・アルバムは全部集めちゃいました。いやぁー。決して大好きなタイプではないと思っていましたがわからないもんですねぇ。

ビーフハートのすばらしさというのは、ブルースの模倣を出発点としながらも、模倣にとどまらない独自の音楽性を築き上げたことだと思うんですよね。それでいて、どの曲もしっかり根っこの部分がブルースに結びついているんです。本当の意味でのリアル・ブルースマンだったと思いますよ。画家に専念し隠遁生活に入って長いけど、そんな生活態度もいかにもブルース的・伝説的でカリスマ化されちゃった部分もあるけど、芯のところは絶対アンダーグラウンド。レコード会社の方針で売れ線に振れても、逆に売り上げが伸びず、やはり破天荒な路線に戻るあたり、ホント彼らしいな、と思います。

全キャリアを聴いてみて、やっぱり一番好きなのは、72年のリプリーズ時代後半です。このアルバムと次作の「Clear Spot」ですね。「Clear Spot」の方はテッド・テンプルマンがプロデュースしててかなり聞きやすくなってるけど、この2枚はビーフハートの狂気の部分とメロディックな部分とがほどよくブレンドされてると思うんですけど、コアなファンの方には「甘いね」って言われるんでしょうかね。まして「Trout Mask Replica」「Lick My Decals Off, Baby」という2枚の怪作の直後ですしね。ファンの評価はあまり高くないかもしれません。

このアルバムは、かなりかっこいい「I’m Gonna Boogiarize You Baby」で幕を開けます。ファンキーなリズム・ギターとボトルネックのからみかたが素晴らしい。つかみは十分といった感じ。「White Jam」は妙なコード進行になる比較的静かな曲。ビーフハートのボーカルとハープからは強烈なブルースフィーリングが漂ってきます。「Blabber ‘n Smoke」「The Spotlight Kid」「Grow Fins」は、ブルース的な演奏を下敷きにしながらも、マリンバを交えた革新的な演奏が魅力的。同時期のリトル・フィートやランディ・ニューマンとライ・クーダーのコラボレーションにも同種の香りを感じます。「Click Clack」は、ブルースに昔からある列車の音の模倣ですが、ジョン・フレンチのドラムスが見事に複雑な機関車とリズムを叩き出し、ボトルネック・ギターとハープがユニゾンで汽笛の音を出し臨場感は抜群です。一方、「Alice in Blunderland」はアバンギャルドなインスト。後半でエリオット・イングバーのギターが大活躍します。ほかの曲にもブルージーなものばかり。ビル・ハークルロードのボトルネック・ギターもかなりこなれてきていい感じだし、ドラム、マリンバ、ピアノと活躍するアート・トリップのプレイも聞きものです。

ブルースは形式だけ真似していても、決してハートには来ないのですが、性格も行動も破天荒だったビーフハートの叫びのようなものが、このアルバムからは感じられるのです。
と、いうわけで、自分にとってはこのアルバムは紛れもないホワイト・ブルースの名盤と思うのだけれど、やはり、「Trout Mask Replica」とかの方がすごいのかな。客観的評価は評論家の方々にお任せしたいと思います。

Ruth Brown / black is brown brown is beautiful

1d7f9a9d.jpgR&Bの女王と謳われたルース・ブラウンの訃報をいつもお世話になってるlyleさんのChicken Skin Musicの掲示板で知りました。78歳だそうですから、エルヴィスより7歳年上、チャック・ベリーやBBキングに近い世代です。まぁ、言ってみればアレサの大先輩といったところでしょうか。やはり子供のころからゴスペルで鍛えた喉を持ち、アトランテックのドル箱スターだったようです。いきつけのライブハウスによく出てた福岡の女性ブルース・シンガー(最近はごぶさたですね)も、レパートリーにしてた「Mama,He treats your daughter mean」などで有名ですが、彼女のことはあまりよく知りません。ライ クーダーが書いた「Mama,Don't treat your daughter mean」が、この曲のアンサーソングだなんて聞いて、ちょっと興味をもったくらい。R&Bのコンピにも入ってたかなってくらい。しかし、この盤だけは、最近某大手外資系CDショップで視聴して買いました。

1969年にVAMPIというJazz系レーベルから発売された1枚ですが、南部風味がたっぷりつまったソウルの名作です。彼女をバックアップする面子がすごい。ベースがチャック・レイニー、ピアノとオルガンがリチャード・ティー、ギターがエリック・ゲイルとビリー・バトラー、ドラムがハービー・ラブリーという布陣。結構泥臭いナンバーが並びますが、彼らの持ち味を存分に発揮した演奏と、ルースの円熟した歌唱を楽しむことができます。

まずもってタイトルがいいですね。ジェームズ・ブラウンやスライの主張と呼応しながら、自らの名前とアフリカン・アメリカンの誇りを同時に讃えています。
冒頭はビートルズの「Yesterday」これをソウル・バラードに作り変え完全に自家薬籠中にしてしまっています。2曲目はパーシー・メイフィールドの定番曲「Please SendMe Someone to Love」。このあたりからエリック・ゲイルが存在感を増し、続くバラード「Lookin' Back」できわめつけの演奏になります。ソウル・バラードの見本みたいな作品です。冒頭からバラード系を3曲続けるあたり余裕の表れですが、4曲目「Try Me And See」は、この盤唯一のファンキーなジャンプ・ナンバー。とにかくかっこいい。サビが終わったあとのブリッジ、ベースとドラムだけになるところなんかチャック・レイニーのフレーズがたまりません。5曲目は自作の大作ブルース・ナンバー「Miss Brown's Blues」。同じ言葉を何度も何度も繰り返し感情をたかぶらせていく歌唱が印象的。それにピアノが熱演してます。つづく6曲目はジャズのスタンダード「My Prayer」。こういう曲ではやはりのちのちスタッフを結成する面々は強いですな。この曲の美しさを存分に引き出してます。7曲目「Since I Feel For Yu」は再び歌い上げるタイプのブルース。こちらのブルースでは2本のギターとホーンが活躍。最後は間奏のギター・ソロがここちよいバラード「This Bitter Earth」で締め。いや、R&Bのすばらしさをかみしめられる名盤だな、と思います。

このアルバムがリリースされたのはウッドストックが行われた年、ルース41歳、余裕と貫禄をうかがわせる歌唱です。これからほかの盤も聴いてみたいと思います。ご冥福をお祈りします。

Gordon Waller / ...and Gordon

37f21776.jpgゴードン・ウォーラーは、1945年、スコットランドのブレーマー生まれ。学校の友人だったピーター・アッシャーと1963年にデュオを結成。ピーターの妹、ジェーンが女優になり、ポール・マッカートニーのガールフレンドになったことから、二人はマッカートニーの未発表曲を入手してレコーディングし、一躍スターの座を手に入れます。彼らは68年頃まで活動しますが、ピーターはシンガーとしての活動に見切りをつけ、アップル・レコードからデビューしたアメリカ人シンガー、ジェームス・テイラーをプロデュースする道を選びます。そして、ビートルズの解散劇に遭遇、ジェームスとともにアメリカに渡ることになります。一方のゴードンはソロで活動を始めるのですが、彼もアメリカで録音し1972年に、このアルバムを発表します。

自分はピーター&ゴードンを全く聞いたことがないのですが、このアルバムは、アメリカもののシンガー・ソングライターの名盤と断言できる作品です。テッド・クーパーとトーマス・ジェファーソン・ケイのプロデュースでニューヨークの914サウンド・スタジオでレコーディングされました。

「Side one of Gordon」と題されたA面は、抑制の効いた曲が並びます。「The Saddest Song」が始まると、「このアルバムはいいな」と予感がよぎりましたが、それは最後まで裏切られることがありませんでした。「I Won't Be Your Ruin」はとにかくメロディが美しいバラード。「At the End of The Day」はちょっとリズムが強調されたやや都会的なナンバー。エレピとアコースティック・ギターのみの簡潔で美しい演奏にのって歌われる静かなバラード「Before You Go To Sleep」も佳曲。ペダル・スティール・ギターで始まる「Where This Whole Things Begin」は少しカントリー風味があります。A面の曲はすべてゴードンのペンによる曲です。

「Another side of Gordon」と題されたB面は、比較的おとなしい曲が並んだA面と違ってバラエティに富んだ曲調が楽しめます。まず1曲目から軽快なバンジョーのサウンドで幕を開けますが、この「Rocky Road to Clear」はトーマスとジョアンヌ・ヴェントの共作。この盤ではもっともカントリーっぽい作品です。続く「Be Careful, There's a Baby in the House」は粘っこいナンバーで、まるでブルースのようにアコースティックのボトルネック・ギターが活躍しますが、ラウドン・ウェインライト(ルーファスの父親です)の作品です。「Stranger with a Black Dove」は、かつての僚友ピーターと共作したバラードです。そしてアルバムの最後を飾るのはトーマスとジョアンヌ・ヴェントの共作になるファンキーな大作「Collection Box」です。

彼をバックアップした面子は、ギター、チャーリー・ブラウン(ドリフターズ、カントリー・ジョー・マクドナルド、ラウドン・ウェインライトらをバック・アップ)、ペダル・スティール、ドブロ、バンジョーを担当した東部のスタジオ・ミュージシャンとして著名なエリック・ワイズバーグの他は、トーマス・ジェファーソン・ケイが在籍したホワイト・クラウドのメンバー。彼らが実にいい演奏を聴かせてくれるのです。

床が一部抜けた、廃墟になった講堂のような建物の中で撮影されたジャケット写真も実に味わい深く、アルバムの内容を物語っています。ご存知のようにピーター・アッシャーは、アメリカでプロデューサーとして大成功を収めますが、ゴードン・ウォーラーはずっとシンガーとして活動を続けていたようです。なんと今年の春、ピーター&ゴードンが39年ぶりに再結成したそうですね。

Ry Session 66 Brenda Patterson / Brenda Patterson

ef2bd33d.jpgブレンダ・パターソンの名を知ったのは、フレディ・フェンダーと同じ、「The Border」のサントラ。
ライ・クーダーのボトルネック・ギターが美しいバラード「Building Fire」で抑制の効いた少しハスキーなボーカルを聴かせていました。

そのブレンダさんは、アーカンソー州出身。子供の頃からホーリー・ローラー教会や綿摘み畑で歌っていました。20歳頃にメンフィスのクラブで歌っていたところを見いだされ、1971年にエピックより「Keep on Keep'n on」でメジャー・デビューしました。続いて、ドン・ニックスが主催したアラバマ・ステイト・トゥルーパーズにマウント・ツァイオン・クワイヤーの一員として参加。その時のライブ・アルバムは翌72年に発表されており、この中でブレンダも、かのJesus on the mainlineでリード・ボーカルをとっています。

さて、本作は1973年にブレンダがプレイボーイ・レコードに移って発表した2作目。とにかく、すんごい声です。「The Border」で聴かれたしっとりした歌声を想像していたら、1曲目からガツンとやられました。ライ・クーダーのエレクトリック・ボトルネック・ギターのねばっこいイントロのあと、強烈なダミ声のシャウトで曲がはじまります。これぞモノホンのスワンプ。ソウルフルなホーンズのサポートを得て間奏で舞い上がるライのボトルネックもなんとも言えない味わいです。そして、この曲のプロデュースはジム・ディッキンソンではないですか。

この盤は曲ごとにプロデューサーが異なってますが、4曲をジム・ディッキンソンが担当(うち2曲は前作担当のラリー・コーンと共同プロデュース)。そのすべてにライ・クーダーが参加してます。その4曲の基本的な編成はドラムスにL.A.ゲッタウェイやCSNYのサポートで著名ジョニー・バーバタ、ベースに元FBBのクリス・エスリッジ。このリズム隊はライのファーストにも参加していましたね。ピアノはジム自身、もう一人のギターには、マスル・ショールズでセッション・マンとして活躍し、アラバマ・ステイト・トゥルーパーズのサポートも担当したウェイン・パーキンス。なんとも理想的な編成じゃございませんか。

A面ラストに収められたのは、ライさんの定番曲でもある「Jesus On The Maineline」。上述のようにアラバマ・ステイト・トゥルーパーズでは唯一ブレンダがフィーチャーされていた曲です。ここでライさんはリードのボトルネック・スライドを相方のウェインさんに任せ、自身はけっこう味のあるバッキングに徹しています。アラバマ....バージョンよりすこしのんびりした感じがするのは、ライ独特のシンコペーションの効いたリズム・パターンのせいかもしれません。このパターンはそのまま「パラダイス&ランチ」のライ・バージョンに用いられていますが、ここでも、ブレンダさんの強烈なダミ声とぶあつい混声のゴスペル・コーラスが曲のイメージを決定づけています。

B面トップもライのギターで幕開け。ジェリー・リー・ルイスの「End Of The Road」を、なんともかっこいいファンキーなロック・ナンバーにしています。ここでも、ライはバッキングにまわり間奏ではウェインがなかなかエモーショナルなリード・ギターを奏でているんですが、ライのリズム・ギターも至ってハイセンス。実に味のあるプレイを聴かせてくれます。個人的には、曲もいいし裏方ライがとってもいい仕事をしていてゾクゾクくるんですけどね。B面5曲目の「In My Girlish Days」では、メンフィス・ミニーのブルース・ナンバー。ライがマンドリン、ウェインがアコースティック・ギターでハープもからんできます。ライのプレイは自身のアルバムに比較的近い感じですが、この手のブルース・マンドリンを弾かせてもライの右に出る人はそうそういないでしょう。

その他の曲ではボブ・スケールのプロデュース作が5曲、ラリー・コーンの単独プロデュースが1曲、ジョン・カーン、ラリー・コーン、そしてブレンダ自身がそれぞれ1曲のプロデュースを担当しています。ボブ・スケールのプロデュース作ではドラムがエド・グリーンかポール・ハンフリー、ベースがウィルトン・フェルダーもしくはキャロル・ケイ、ピアノにクラレンス・マクドナルドなどなど、こちらも超一流ミュージシャンを集めてます。かといって、フュージョンっぽくなるわけでなく、それぞれの曲調にあわせた的確な演奏を楽しむことができます。ドナ・ワイス作の「Hold An Old Friends Hand」など佳曲も多いです。

73年にはライ参加作に出来の良いアルバムが多いですが、当然、この盤もその一枚。ライ・クーダー自身のプレイの素晴らしさもさることがら、ライが弾いていない曲でも聴きどころの多いアルバムです。

このあと、ブレンダは、ボブ・ディランが音楽を担当した「パット・ギャレット&ビリー・ザ・キッド」のサントラにコーラスで参加。73年にはさらに、もう一枚のソロ・アルバムを発表し、77年にはクーン・エルダー・バンドの一員となります。そして80年の「The Border」サントラ作成に参加、おそらくライからブレンダに出演要請があったのでしょう。今、彼女はどうしてるんでしょうかねぇ。

JOHNSON PARTY OF FOUR / FALL OUT

61ec5bae.gifどなたか教えて下さい。素性がわかりません。

先日購入した、えらいかっこいいLP。
1977年作の自主制作盤らしいです。SWANN RECORDSというレーベル。カリフォルニア州のマンハッタン・ビーチのダイナスティ・スタジオというところで録音されております。プロデュースとエンジニアリングはKach Phillipsさんという方ですが、メンバーの名前も全然のってません。


ジャケットには農夫とおぼしき、それほど若くなさそうな白人の3人の男女。髭面の男2人、エプロンをした女性一人。表ジャケットは逆光気味で今ひとつ顔がはっきりしないけど、レトロな車と白馬、裏ジャケにも同じ3人が納屋の中で干し草を積んだトラックとともに写ってます。

そんな思いっきり土臭いジャケットなのに、1曲目はとってもファンキーでダンサブル。コーラスはゴスペル風味。16ビートの動き回るベース・ライン。うーん、かっこいい。2曲目は、ソウル・バラード。両曲でリード・ボーカルをとる女性もなかなかいい声です。3・4曲目はちょっとアップチャーチ風エレキ・ギターがメロディを奏でるインスト。3曲目はスライ・ストーン、4曲目はバカラック-デイヴィッドですぜ。めちゃめちゃ上手いわけでもない演奏が妙に和めます。

ひっくり返してB面に行っても同じようなインスト。ギターとホーンのユニゾンが心地よいです。2曲目になると今度は男性ボーカル。ここでもゴスペル風コーラスがいい味を出していて、ギターはキュイーンキュイーンとオブリガードをからめてくるけど、リズム隊がのどかな演奏だったりするのがまたいいです。3曲目も同じく男性ボーカルのミィディアム・ナンバー。曲がとってもいいです。ラスト・ナンバーはホーンをフューチャーしたファンキーなインスト。テープの逆回転風のフレーズをうまく使い、コンガがエモーショナルだったりします。

全8曲25分と少しくらい。77年という年代の割には、60年代末から70年代始めの香りただようソウルっていう感じですが、ジャケに写ってる人々が演奏してるのかなぁ。そうするとホワイト・ソウルなんだろうか。試聴させてもらって買ったのですが、「当たり」ですな。

でも、このユニットの背景が気になって仕方ありません。どなたか教えて下さいませ。




金さん銀さんライブ at Live Bar Andy

08284195.gif11月11日は黒崎のバー、「A HARD DAYS NIGHT」の7周年記念パーティ。この店はたいてい春と秋に年2回のライブ・パーティを開催しています。我らが金銀も、前身のCA'テーテル時代から通算すると3回の出場となります。そう言えば、今年、金銀は3回ANDYに出演していますが、7月に出た時も、「A HARD DAYS NIGHT」のオーナー、山根さんの前座を勤めさせていただきましたっけね。

開場時間前から、「A HARD DAYS NIGHT」の常連さんが客席を埋めはじめ、ライブのはじまる頃にはほぼ満席。定刻になると山根さん本人のMCでライブがはじまりました。トップバッターはTHE CABTAXの4人。メインのギター&ボーカルのチャッピーは他のメンバーよりかっこう若め。しかしながらビートルズに対する愛着が感じられる好感度抜群のグループでした。

2番手がわれわれ、金さん銀さん&すけったーず。最初のMCで金さんがなんとグラス1杯の牛乳を一気飲み。調子が悪くなっている間、自分がギターソロで「Here,There & Everywhere」を演奏。やはり普段と違ってたくさんのお客さんの中では緊張気味。何箇所かとちってしまいました。バンドが登場したあとは、ちょっとハードロック調にアレンジした「A Hard Days Night」最初のバンドとかぶっちゃったけど、それはまあご愛嬌。すかさず続けて「ナイス・ダディ」。16ビートのファンキーなナンバーにスライドをからませ独特なサウンドをつくってるつもりだけど、みなさんどうお感じになられましたか。そして、「アハハン・ブルース」。この曲は生ギターで弾いたのですが、いまいち自分の音が聞きづらかったです。
そして、定番「Yes No 枕」では、朋ちゃんがダンサーとして、ちりめん君がいろもので登場。場を盛り上げてくれました。続いてレゲエ・アレンジの「Twist & Shout」この曲で、自分初めてベースを演奏しましたが。」まあ、あんなもんでしょうかねえ〜。そして、盛り上がる会場をさらに興奮状態にする「プラウド・金銀」ラストは「おそうじおばちゃん」でした。

今日、ギターのエロチカ6.9と話す機会がありましたが、彼いわく「金さん銀さん」では「昨日が最高のでき」なんだそうです。年に4回程度しかライブをやらないバンドのわりには最近一体感がけっこう出てきているようだし、本当に楽しんで演奏できる貴重なバンドではあります。公序良俗に反するパフォーマンスが一部見受けられますが、それが楽しみというお客さんもおられることでしょう。これからも、このままの「金銀」をよろしくおねがいしたいと思います。山根さん、栗田さんありがとうございました。

われわれのあとは、男前でクラプトンそっくりの歌唱が売りのエリック宮本バンド。トリは、最近演奏力がますます向上したワイルド・ファンシスでした。彼らは各人がビートルズを深く愛していることがありありと伝わるすばらしいアンサンブルを聞かせてくれました。

小坂忠 with MA-SAN SUPER SESSION LIVE in KOBE

2a6a5c7b.JPG11月9日に京都出張が決まりました。仕事が終わったあとの夜に磔磔で何か面白いライブがないかなぁと、HPをのぞいてみると、8日に小坂忠 with MA-SAN SUPER SESSIONなんてあるじゃないですか。なんとスライド・ギターはTACOさんこと、長田和承さんですよ。惜しいなぁ。一日違い。しかし、待てよ.....と、忠さんのHPに飛ぶ。スケジュールのところを見ると。やっぱり、翌9日は神戸でライブがあるじゃないですか。メインの出演は20時から。仕事終わっても充分間に合うなぁと、予約の電話を入れました。

JRの神戸駅を降りて南口を出ると、近未来都市のような光景。少し道を迷いながらハーバーランドからポートタワーの方に歩くこと数分。目指す本日のライブ会場、James Blueslandが見えてきました。とてつもなく、昭和の香りのする海運倉庫の3階がそのライブハウス。ネオン・サインは神戸らしいおしゃれな感じ。入り口の表示を見ると、なんと、Openningは光玄さんじゃないですか。間に合う時間についてよかった。

階段を上がってチャージ料を払い、前の方の席を確保。ゆったりくつろげるソファーに身をしずめ店内を見回すと、ちょっと日本離れした感じ。イルミネーションなんかカリフォルニアにでもありそうな素敵な感じ。しかし、建物は年季はいってますね。暖かい木の床ってのがいいですね。ストンプできるし。

そうこうしているうちに光玄さんが登場。「今年も小坂忠さんの前で歌わせてもらえて光栄です。」なんてあいさつして、3曲をしみじみと聴かせてくれます。自分にとって光玄さんは、ディラン系シンガー・ソングライターでは、日本一信用できるミュージシャン。とにかくじっくり歌詞が聴きたくなるタイプです。学生の頃はよくフリー・コンサートで彼の歌を聴きましたが、福岡に就職したため、なかなか彼のステージに接することができませんでした。2002年には、大阪の春一番、同年夏には長崎県諫早市のフォークウィンドといったイベントで彼のステージを久々に見れました。たしか、その翌年には福岡市のドリームボートで金森幸介さんとごいっしょのステージを楽しませてもらったりしました。今日は知らない歌ばかりだったのですが、いかにも光玄節で嬉しくなりました。新作のCDにおさめられてる曲ばかりで「地団駄」「黄昏」「星のきらめき」の3曲だったように思います。

さてさて、ちょっとの休憩をはさんで、本日の主役。小坂忠さんの登場です。ギターに仲豊夫、ラップ・スティールに長田'TACO'和承、キーボードはふうちゃんと呼ばれていた新井正美、ベースは山本正明、ドラムが浅川ジュンというスペシャル・セッションバンド。メンバーが位置につくと、忠さん自身がアコースティック・ギターをつま弾きまじめます。なんと、クラプトンの「Tears in Heaven」。うん、素晴らしいアンサンブルだ。バンドとの一体感が感じられます。そして、仲さんのギターソロがいい味を出してます。2曲目は忠さんと細野さんの共作「He comes with the glory」。メロディがいかにも細野さん風。ちょっと黒っぽさんが増し、間奏ではTACOさんの活躍が目立ちはじめます。3曲目は自分の知らない曲「さよならから」。どちらかというとフォークロック調の演奏です。

このバンドは3年前、大病をわずらって大手術を受けたベーシスト、MA-SANこと山本正明氏を元気づけるため始めたスペシャル・セッション・バンドだそう。MA-SANは忠さんのバックバンドだった「ウルトラ」のメンバーでした。年に一回しか集まらないけど、そんな仲間意識が、テクニックだけでない暖かいサウンドを生み出している所以なのでしょう。という関西勢のメンバーの中に、忠さんがひとりまじっているので、忠さんのMCも「変な関西弁」。客席からもやじが飛んでましたが、なかなかどうして、本人も「今日はいけてるなぁ」というようにネイティブの私が聞いても、そんなに違和感なかったですよ。

「歳をとると昔みたいに、夢を語り合う時間もなくなったし、友達もそれなりに成功して夢もなくなったけど、自分はいつまでも夢を見つづけていたい」というような意味のMCで「夢を聞かせて」をしんみり聞かせました。続く「きみはすばらしい」は、2年前に出たアコースティック・ゴスペル・アルバムの表題作。忠さんが3連符のギターフレーズをつまびきながらはじまったのは、「機関車」。これは希代の名曲ですね。この曲のサビの部分。忠さんの熱唱にTACOさんのスティール・ギターがからんでくると、涙腺がやばくなりました。曲が終わると、すかさず、MA−SANがファンキーなベースラインを弾きはじめます。これも代表曲の「HORO」。なんてかっこいいんだろう。

「今日誕生日の人いますか?」の問いかけに、1人の手があがります。忠さんは彼をステージ横に座らせ、会場みんなで「ハッピー・バースデイ」を彼のために合唱。「名前なんていうの?」「ヨシアキです。」「僕は小坂忠っていうんだけどね。本名はマサユキって言うんだよ。マサユキとヨシアキってなんか似てない? 兄弟みたいだなぁ。」なんて言うと、MA-SANが「僕、マサアキなんですけどね。」「おっ、ホントだ3兄弟みたい。」という感じて軽妙にMCがはずむ。ヨシアキくんに捧げる形で「Happy Birthday」が演奏されましたが、これも、とってもファンキーでかっこいい。TACOさんのスライドは、珍しくディレイなどのエフェクターがかかってましたが、曲の雰囲気にばっちりマッチしてます。心に沁みるメッセージをもつ「I believe in you」をはさんで、本編ラストはロッドの「Sailing」でした。忠さん、この曲好きみたいですね。昨年のハイドパークコンサートでのセットリストにも入ってました。あまり目立たないながらも的確なバッキングをつとめてきた仲さんのギターもこの曲ではぐっと存在感を増してました。

アンコールの1曲目は、「What a wonderful World」。カバーものはけっこうベタな選曲ですが、確かにいい歌ばっかりの選択。しかも忠さんの歌がすこぶる上手いんだから文句のつけようがありません。アカペラで「Jesus loves me......」と導入部を歌う「Amazing Grace」は圧巻。以前見た時は佐藤博さんのピアノが印象的でしたが、今日はバンド全体がブルース調に盛り上げていきます。最後の最後に、「しらけちまうぜ」を決めてコンサートは終了。

本当にタイミングよく、出張に忠さんのスペシャルなライブが重なりました。今年は、細野さん、John Miller、Lonesome Stringsなどなど、なかなか見れないライブをたくさん見れて満足ですが、今回の忠さんも、そんなライブのひとつになりました。




Lonesome Strings Live at 博多百年蔵

57664101.JPG11月5日日曜、待ちに待った 寂寥弦楽団=ロンサム・ストリングスのライブがいよいよ九州上陸。しかも、雰囲気抜群の博多百年蔵で開催です。会場は、石蔵酒造という素敵な空間。福岡高校に隣接した大きな造り酒屋の酒蔵です。以前ここでは木村くんと有山くんのライブを観ましたが、気になるライブによく使われている模様。

さてさて、開場時間を少しすぎて到着。一番前の桜井さんと差し向かいの席がポツンと空いてたので、そこに陣取ることにしました。実行委員長と思しきクリサブさんが「日本が世界に誇る....」とご挨拶。7時の定刻ちょうどにライブがはじまりました。会場は満員です。

リーダーの桜井さん、今まではMartinのフルアコGT-75を弾いてるところしか見たことがないのですが、今日はそれに加えて、MartinのO-18とワイゼンボーン・レプリカの計3本を使用されておられました。
スライド系担当の田村玄一さんは、Sierraのペダル・スティール、Fenderの6弦ラップ・スティール、ワイゼンボーンStyle-3、ナショナル・トライコーンと「すべりもの」好きにはたまらないラインナップです。原さとしさんのバンジョーも結構年季が入ってそう。どこのメーカーなんでしょうかねぇ。松永さんは今日はウッド・ベースです。

一曲目は「パール・ハーバー・ブルース」。ゆったり、じんわりとロンサム・ストリングスの世界に引き込まれていきます。桜井さんはO-18、田村さんはペダル・スティールを演奏。二曲目では桜井さんがエレキに持ち替えます。ん、このメロディはどこかで聴いたことあるぞ....と思ったら、キャロル・キングがCITYでやってた「Snow Queen」ではないか。なんとしゃれた選曲。しかも、曲がとぎれないまま、バンジョーが、あの「Deja Vu」のイントロを弾き始めます。わたしにとっては至福のメドレーですよ。このあたりで、すでに自分はノックアウト状態でございました。特に「Deja Vu」。桜井さん→田村さん→松永さんと主役が交代していくあたりゾクゾクものです。

その後「捨てられたギターのプレリュード」トラディショナルの曲から続けた「誰が荒野を目指すのか」「旅行」といった曲が前半で演奏されました。前半、バンジョーの原さんは、テンガロンにカントリー・シャツといかにもカントリーというファッションで登場でしたが、プレイは多彩。パーカッション的にヘッドを叩いてリズムをとったり、金属の棒で鐘のような音を出したりといった具合。田村さんのスティールもフッと浮いたような空間的なフレーズが素敵です。バンジョーのスティールが組合わさると、いかにも「カントリー」というサウンドになりがちですが、ここのお二人のセンスには脱帽です。

後半の幕開けはセカンド・アルバム収録曲の中でも印象的な「Jessica」。軽快なバンジョーのフレーズで幕開け。原さん、テンガロンを脱ぎ、普通のシャツを羽織ってます。なんでカントリースタイルやめたのかな?少しハワイアンっぽい「Hoopii Street Blues」では田村さんがトライコーンとFender両方を演奏されてました。
このあと、「フランクリン再訪」「ケルン・コンサート」などが演奏されましたが、キース・ジャレット作の組曲風大作「ケルン・コンサート」の演奏は圧巻でございました。第一楽章?では桜井さんのワイゼンボーンのプレイも楽しませてもらいました。あっという間に本編ラスト・ナンバーとなったのは、最新作の表題曲「カンデラ」。アンコールではやはり最新作から「Some Happy Day」。最後の最後にセカンドから「Mountain Hymn」が演奏され、ホットなライブは幕を閉じました。

ロンサム・ストリングスのCDを聴いたとき、その名のとおり、ぐっとくる寂寥感がありました。しかし、それはアメリカの砂漠地帯の風景でなく、日本の荒野の風景が浮かんできたものです。冬枯れした高原の山並みとか、それこそ最新作のジャケットのような荒れた北の海とか。どこか湿った風を感じるのです。曲名に海外の地名がついているような曲でさえそうなんです。このバンドの演奏には、根底には「わび・さび」の世界があるようです。そういう意味では、ピーター・バラカンさんのおっしゃるように「日本人にしかできない」演奏なのでしょう。ライブはCDを聴くより、幾分ホットな演奏ですが、その「根っこのところ」を確認できた素晴らしい演奏でありました。また、この会場で見たいです。メンバーのみなさん、実行委員のみなさん、お疲れさまでした。ありがとうございました。

Peter Gallway / Peter Gallway

8dd1a72c._SS500_SCLZZZZZZZ早いもので、あっという間に11月です。先月は忙しかったもので、ブログあんまりアップできませんでした。今月は、少しだけ時間もできそうなので、先月よりたくさん書きたいなぁと思ってます。

で、秋も深まってまいりましたが、秋はシンガー・ソング・ライターの季節ということで、家や車で聴く機会が増えております。一口にシンガー・ソング・ライターといっても千差万別。ただ、生ギターの音....というのは必須条件のようですね。ここで、シンガー・ソング・ライターを、詩の内容とか、誰かの影響とか、細かいことを抜きにして、ごくごくおおざっぱに二つに分けてしまうと、出自に関係なく、「都会的なサウンド」の人と、「田舎的なサウンド」の人に分けられるような気がするんです。「南部的サウンド」も「田舎的」に包括されると思うので、自分は当然、どちらかというと「田舎派」になるのですが、今日は、「都会的なサウンド」の代表格の一人、ピーター・ゴールウェイさんを紹介しましょう。

彼の名前を知ったのは、約20年前。大好きなジョン・セバスチャンと当時メジヤー・デビューしたばかりのピーター・ケースがいっしょに来日するというので、前売り券を買ったのです。ところがしばらくすると、ジョンが喉の病気で歌えなくなった模様。ピンチヒッターでピーター・ゴールウェイが来日するというのです。もちろんチケットの払い戻しはOKだったのですが、ジョン・セバスチャンと同じ資質を持ったシンガー・ソング・ライターということと、ピーター・ケースにも興味があったので、ライブに行くことにしました。幸い友人が当時の最新盤を持っていて、そのテープコピーだけの予備知識を持ってライブに行きました。

会場は大阪の近鉄劇場小ホール。先にピーターさんの登場でした。ギター1本だけの簡潔な演奏。10数曲を演奏しましたが、予備知識が少なく、「Shorty is a bad boy」「Sunday Basketball」くらいしかわかりませんでした。その当時まだレコーディングされていなかった「Boston Is Burning」をやっていたのは覚えています。とても印象に残ったので。それと、「Like A Rolling Stone」もやっていましたので、おそらく「Land of Music」からのメドレーだったのでしょう。ギター1本だったのですが、とてもおしゃれで、心温まるライブでした。その後、ピーターさんは何度か来日の機会があったと思うけど、福岡には来てないんじゃないかな。もう一度見てみたいなぁ。

そんなピーターさんの最高傑作と思えるのは、1972年発表の、この自己名義のファースト・アルバム。前作「OHIO KNOX」は、彼が完全にイニシアティブをとったアルバムなのだけれども、バンド名義だし、サウンドも大半の曲がバンド・サウンドだったのに比べて、本作「Peter Gallway」は、シンプルな典型的なシンガー・ソング・ライターのアルバムに仕上がってます。とにかくアコースティック・ギターやピアノの響きが美しいです。でも、上の方に書いたようにカントリー臭さはほとんど絶無。都会的なセンスの良さがちりばめられています。それは、ジェイムス・テイラー、キャロル・キング、City、ジョー・ママあたりに通じるセンスと言ったらわかっていただけるでしょうか。さりげないコードの響きにセンスを感じさせ、けしてわざとらしくない、そんな都会の香りなんです。だから、ピーターさんの温かい人柄とも相性がいいんだと思います。

全曲、名曲といっても過言ではないんだけれど、「Decidely Fun」「Twelve Day Lover」「Come on In」あたり、ホント素晴らしい。「Watch Yourself」「Come Forever Now, My Son」では、アコースティックのボトルネック・ギターがいい味を出してます。「My Sweetheart Was My Friend」は少しペダル・スチールを意識したようなリードギターがカントリー風味を感じさせますが、それでいて都会的香りを失わない演奏。「Running, Walking, Kicking the Ball」などは前作の延長線上のバンド・サウンド。こうした楽曲がバランスよくおさめられていて、何度聴いても心地よいのです。
ギャラリー
  • Dan Penn & Spooner Oldham Live at Billboard Live Osaka
  • Dan Penn & Spooner Oldham Live at Billboard Live Osaka
  • David Lindley & El Rayo-X / Live at Winnipeg Folk Festival
  • Afro Cuban All Stars / A Toda Cuba le Gusta
  • Terry Talbot / Cradle of Love
  • Terry Evans / Come To The River

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