12a22586.jpgランディ・ニューマンの新作です。いやぁ、こちらも待ちました。ノンサッチからの2作目ですが、前作『The Randy Newman Songbook Vol.1』は全曲新録ながら、過去の作品の焼き直し。純粋な意味での新作は1999年の『A Bad Love』以来実に9年ぶりです。もちろん、その間にサントラはあります。『When She Loves Me』、『If I Didn't Have You』、『Our Town』といった映画やTVの音楽でグラミーを受賞しているし、今年も新しい映画音楽のサントラを出したばかり。もちろん『Bugg's Life』に続いて『Toy Story』や『Monster's INC.』といったディズニーものでの仕事も定評があり、彼は今や映画音楽家として押しも押されぬ存在となっています。けれど、このアルバムを聴くと、やはり、時には彼も「自分の歌」を歌いたくなるんだな、と感じました。

そして、今回驚くべきはそのサウンドです。バーバンク・サウンドが復活しています。「『Sail Away』と『Good Old Boys』の間のオクラ入りアルバムだよ。」と誰かにいわれたら、「おかしいな、ライが弾いてないなぁ。」とか思いつつも信じ込んでしまいそうな、そんなサウンド。まさしく、70年代のランディ・ニューマンが帰ってきた感じなんです。プロデュースは、前作、前々作同様ミッチェル・フルームですが、今回はなんと旧友のレニー・ワロンカーも共同プロデュースに参加。このことが大きく影響しているのは必至でしょう。ランディ・ニューマン自身によるアレンジと指揮によるストリングス。そして、きわめて風刺の効いた歌の数々。『Bad Love』以上に、その表情は70年代当時を髣髴とさせます。

その意味では、ランディ・ニューマンって、40年間、全く音楽性が変わってないとも言えます。ライ・クーダーがさまざまな音楽に触れるたびに自己の音楽を少しずつ変容させていたのに対し、この新作は1968年のファーストとならべて聴いても、さほど時間差を感じられないくらいですから、ランディの音楽はすでに40年前に完成されていたとも言えます。

ノンサッチのアルバムですから、CDケースに上に紙のケースカバーがついています。そこには、トタンのボロい倉庫のある古いバイクを並べた中古屋の中で古いアップライト・ピアノを弾きながら歌う正装したランディの姿があります。しかし、ブックレットの表紙には、、布製の「書き割り」で美しい木々を描いたものをバックに歌うランディがいます。この2枚の写真から、現実を「書き割り」で覆い隠して、いかにも美しいように繕っている現代社会がアルバムのテーマであるようにも感じられるのです。

1曲目「Harps and Angels」は、まさに亡くなった人を天上に案内する「ハープを持った天使」がタイトル。心臓発作が何かで死にかけている人が主人公という、いかにもランディらしい作品です。英語が堪能でないので、彼の歌の皮肉な部分がちゃんと理解できているかわからないので、深くは掘り下げませんけど、ランディが65歳になった今だからこそ書ける作品かもしれません。ストリングスではじまる2曲目「Losing You」も、やはり彼らしい切ないメロディを持ったバラード。はじめて聴くのに、以前聴いたような気持ちになります。どこかに入ってないか調べたのですが、どうやら正真正銘の新作のよう。「Dayton, Ohio-1903」あたりを連想させます。つづくノスタルジックなサウンドにのった軽快な「Laugh and Be happy」あたりから風刺がどんどんきつくなっていく様子。グレッグ・リースのペダルスティールをフィーチャーしたカントリー調の「A Few Words in Defense of Our Country」はタイトルどおり、ブッシュ大統領に少しばかりものを申している曲です。さすがランディ・ニューマン、ニール・ヤングのようにストレートに弾劾するのでなく、「われわれは、スペインのアルメイダ号のように、故郷である自由と勇気の国にいて、世界を漂流している。グッドバイ」なんて言ってます。

「A Piece of the Pie」も、1950年代のミュージカル風な大仰なオーケストレーションにのって歌われる風刺ナンバー。格差社会がテーマで、世の中全体のことを考えず、「僕らはみんなパイの一切れを求めている。」と歌うこの曲で、「リッチなヤツは、よりリッチになっていく、僕らが金持ちになろうが、貧乏になろうが誰も気にはしないさ。ジャクソン・ブラウン以外はね。」って、ジャクソンさん、褒められてるんだか、けなされてるんだかよくわかりません。ほかにも「ジョニー・クーガーが今ジェネラル・モーターズの歌を歌ってるけど、秋までにはトヨタの歌を歌うだろう。」とかけなしてます。以前にも「And The name of this young man is Mr.Bruce Springsteen That's Right」とかありましたけどね。

そういった感じで、ランディ・ニューマン節全開の新作。全部で約34分というのもLPサイズ。おそらく、多くの評論家が今年に傑作にエントリーすることは必至でしょう。でもね、今のところ日本盤になる予定はないみたいですよ。まだわかりませんけど。サントラであんなに活躍してるのに、日本ではなかなか若いファンが増えてないようですね。

アルバムのラストには「Feels Like Home」が入っています。この曲、『Faust』でボニー・レイットに歌わせていましたが、ボックスセット『Guilty』では自分の歌のバージョンを収録し、今回は新録の別バージョンで収録しているお気に入りナンバー。故郷への思いを強く打ち出したこのラブ・ソングは、彼の故郷であるアメリカへの愛着を表した曲とも言えます。彼の屈折した表現は、根底にある故郷への思いをベースにした、愛情の別の表現ととらえることができるののかも知れません。