ひさびさの大塚まさじさんのライブに行ってきました。昨年、佐賀の基山で開催された「月のまつり」以来ですから、ほぼ1年ぶり。フル・ステージはずいぶんしばらくぶりのような気がします。会場につくと、お客さんと談笑していた大塚さんの方から声をかけていただきました。いつものにこやかかな笑顔に接して安心し、ライブの開演を待ちました。
まずは、大塚まさじさんが一人で登場。「月のまつり」でライブはスタートしました。2曲目は『風のがっこう』に収録の「一人旅」。最新の『OSAKA LIVE』にも収録されていますし、お気に入りの曲のよう。まさにギターを抱えて全国を一人でまわるまさじさんのテーマ曲のよう。「何をしても同じなら、好きなことでいきたい。」うん。本当にそうだ。と共感します。
ここで、先週亡くなった塩次伸二さんの話題。ウエスト・ロードのことを日本ではじめての本格的なブルース・バンドと紹介していました。その塩次さん、まさじさんが、1982年に上京して結成したバンド、「ラヴ・コラージュ」のメンバーでもありました。二人のコラボレーションは『ラヴ・コラージュと屋上のバンド』、『ハーフムーンにラブ・コラージュ』の2枚でじっくり聴くことができます。まさじさんと塩次さん二人だけのツアーというのもあったそうで、そんなステージもぜひ見たかったな、と思います。
塩次さんの話題に続いては、先月末に亡くなった、石川県小松市のバンド、めんたんぴんのギタリスト、飛田一男さんの話題。まさじさんは、最近飛田さんとは仲がよさそうで、そういえば春一番に一緒に出演していたこともあったなぁと思っていました。北陸ツアーのとき、まさじさんは珍しく、ギタリストの飛田さんが作曲した曲のサイド・ギターを弾いたりしたそうで、その曲に歌詞をつけて、飛田さんと、富山県八尾(やつお)にUターンしてNPOを立ち上げた飛田さんの彼女に捧げたのですが、3曲目にはその曲を演奏してくれました。「歌だけが残ってしまったという感じです。」というコメントが妙に悲しかったなぁ。
飛田さんは石川県で毎年行われている夕焼けまつりのプロデューサーでもありました。9月14日に行われたそのイベントに飛田さんは、車椅子に乗っての演奏だったそうで、その2週間後に力尽きてしまったとのことです。
4曲目は、おそらく自分はライブでは初めて耳にする「北の果て行き特急列車」。けっこう好きな曲なので、聞けて嬉しかったです。当時のツアーはほとんどが列車で、北海道に行くのもB寝台の最上段だったとか。大阪から北陸線で青森に向かう寝台特急がテーマのワルツ。まさじさんは声を枯らしながら熱唱してくれました。
ここで、まさじさんと長年のつきあいになる田川律さんの話題。自分も学生時代に読んだ田川さんのエッセイ集の影響もあって、まさじさんの歌に深くのめり込むようになったのですが、時折、ライブのMCで田川さん話題が出ることがあります。その田川さんのドキュメンタリー映画が完成したそうで、そのサウンド・トラックになってる田川律作詞、大塚まさじ作曲の「うた」を演奏してくれました。この曲は、80年代のライブ盤に収められたりしていますが、自分は生で聴くのははじめてです。
ここで、ゲスト・ギタリストの葛原清剛さん登場。最近はまさじさんバックではエレキは弾かず、ガット・ギターでバッキングを担当しているそうです。そのガット・ギターでブルースを演奏するというのも、なかなか乙なもの。「ブルースをもう一度」でグイグイ乗りまくる演奏、清剛さんのソロも冴えており、客席から歓声が飛びます。ぐっとしずかにまさじさんがイントロを弾きはじめると、曲は「天王寺思い出通り」とすぐわかります。この曲も、まさじさんのライブの定番曲ですが、何度聴いても聴き飽きることはありません。続いてジャジーなイントロで「アフリカの月」がはじまります。このあたりのブルージーかつジャジーな魅力もまさじさんならではですね。つづく「風のがっこう」「男らしいってわかるかい」「街唄」と畳みかけられると、ただただ聴き惚れるしかありません。ラストは、「コミュニケーション」。西岡恭蔵さんとの共作のこの曲を、まさじさんはとっても大切に歌っています。
当然のようにアンコールの拍手で、会場は沸きます。まず、まさじさんが一人で登場し「一輪の花」を歌います。このシンプルな曲の歌詞には本当に深いです。「歩いてきた道を愛せるなら 何も迷わず この道を行こうよ 探しものは 遠くになくて 探しものは足下にある」自分も何かに迷いそうになった時、このフレーズを口ずさんでいきたいと思っています。ここで葛原さんが再び登場し、「プカプカ」そして「On the Sunny Side Of The Street」の定番2曲でライブは締めくくられました。
清剛さん、「初日はやっぱり緊張するなぁ」とのこと、いやいやどうして、いつもながらバッチリ決まったプレイでした。まさじさんとの息もぴったりで羨ましいかぎりです。
まさじさん、以前パニック障害を患ってから、少し声がかすれ気味になっていますが、ライブのすばらしさは、全くかわりません。暖かい人柄がにじみでるMCも流暢だし、ライブが終わったあと、心に暖かい火が小さく灯ったような気持ちになります。彼の言葉に「一日一生」という言葉がありました。この日のMCでも二人の大切な友達を失った話題が出ましたが、彼の年齢になると、「残された時間」を意識しないわけにはいかなくなるのかも知れません。兵庫県篠山市の農村集落に転居した話題でも「終の棲家」という言葉が出ていました。「今日一日を一生のつもりで生きる。今日のステージを今生最後のステージのつもりでつとめあげる。」こうした姿勢は、50代後半の彼でなくても、また、どんな仕事に携わるものであってもプロフェッショナルであるならば、不可欠な姿勢でしょう。彼の言葉「一日一生」、そのままを感じさせてくれる、素敵なライブでした。
