ブルース・コバーンのことを知ったのは高校1年生の時。購入したばかりのアクーティック・ギター教則本を学校に持っていくと、同級生のM君が(彼が一番ギターが上手かった。)その中の一枚の写真を見て「ブルース・コバーンだ!」と声をあげました。写真には、まったくクレジットがありませんでしたが、ヒゲ面の男性が、当時はまだ珍しかったカッタウェイのアクースティック・ギターをかかえて演奏している写真が掲載されています。カッタウェイを除けば、まるでクラシック・ギターのようなシェイプ。そのギターが、カナダ産のラリビーという手工ギターであることを知るのは、もうしばらくたってからでした。
次にブルース・コバーンを意識したのは、住んでいた街の小さなギターショップで、中川イサトさんのライブが開催された時でした。彼のレパートリーの大半はオリジナルでしたが、2曲コバーンのナンバーが含まれていました。うち1曲は、「Rouler Sa Bosse」というインスト、邦題の「さすらい」と紹介していたような気がします。そして、もう1曲は「Mama Just Want To Barrelhouse All Night Long」でした。その「Rouler Sa Bosse」は大好きな曲で、イサトさんの楽譜出版社から出たソングブックに、ジョン・レンボーンやリチャード・ラスキンらの楽曲といっしょに紹介されていのしたので、せっせとコピーし、いまだにレパートリーにしています。しかし、ブルース・コバーンのレコードは90年代に日本盤でCD化されるまではなかなか入手できませんでした。最近になって70年代の彼の作品は一通り揃えたけれども、80年代以降のアルバムは未入手のままです。
ブルース・コバーンは、カナダでもっとも重要なシンガー・ソングライターの一人です。90年代にカナダ出身の音楽ジャーナリスト、マーク・ラパポート氏がミュージック・マガジン誌のコラムで、やたらとブルース・コバーンのことを持ち上げていたのを覚えています。特に、80年代以降は、歌詞が非常にラディカルになり、アメリカの国家体制や大企業を鋭く批判した作品を発表するようになります。そういう意味ではジャクソン・ブラウンに通じるところもありますね。ただ、サウンドはアクースティックなものから、エレクトリックなものへ変化したようで、そういう意味でも、ブルース・コバーンのレコードに手が出ない日々が長く続いてしまったのです。
しかし、今年の新譜には「Live Solo」というサブタイトルがついています。アクースティック・ギターの名手、ブルース・コバーンが長い音楽遍歴の末にどのような境地に達したか確認してみたくなって、このCDを入手することにしました。一聴した感想ですが、それはもう素晴らしいの一言です。2枚組25曲、合計120分にも及ぶ大作であり、ほとんどギター1本の弾き語りでありながら、聞き手に飽きることなく最後まで一気に聴き通させるパワーがこの作品にみなぎっています。もう60歳を過ぎているブルースの歌声もとっても力強く自身に満ちあふれています。
1986年のアルバム「World of Wonders」のタイトル曲で幕開け。予想どおり、ほとんど80年代〜00年代の曲で占められています。その時期のオリジナル・アルバムを全く聴いていないので、オリジナルの形態がどうのかはわかりませんが、楽曲として完成度の高いものばかり。ホントに質の高いシンガー・ソングライターなんだなぁと実感させられます。ところどころ、アップテンポな曲では、リチャード・トンプソンを連想させるダウンストロークが連続するタイプのナンバーも数曲あります。また、近年の作品では2003年の『You've Never Seen Everything』が気に入っているようで、特にDisk2でこのアルバムから多くの曲を取り上げています。
Disk2冒頭の「Want No Mre」は、まるで琴のような不思議な響きをもつギターで伴奏。写真に写っているリゾネーター・ギターを使っているのかもしれません。続く「The City Is Hungry」はどこかDavid Crosbyを思わせるプレイだったりします。唯一のカバーはデヴィッド・リンドレーも取り上げたブラインド・ウィリー・ジョンソンのナンバー「Soul of A Man」。すでに91年のソロ・アルバムにも収録しています。リンドレーは微分音が出るようにフレットを追加したブズーキで弾いているのですが、リンドレーさんの方がオリジナルに近いような気がします。もちろんブルースさんのプレイも華麗です。
もともと、ジャジーなインプロっぽいブレイが得意な人で、そのギター・スタイルはとにかく洗練されていました。「Soul of A Man」なんかが比較的土臭い方で、インストの「The End of All Rivers」などはデジタルの器材を多用して、ディレイの残響音を重ねたりしていますし、他の曲でも自己のプレイをループさせてバッキングにし、その上にのっかてリードを弾いているような曲もあります。こういうギター・スタイルはけして自分の好みではないのですが、彼の場合、まず曲や歌の良さがあるので、洗練の極みとも言えるギター・スタイルがけっして鼻につかないのです。もちろんギタリストとしても超一流ではあるけれども、このアルバムを通して、「シンガー・ソングライター」ヒューマニスト、ブルース・コバーンを堪能することができました。
あと、このアルバムでは、どうにでも編集できただろうに、チューニングする音が入っていたり、曲の途中でどういうわけか演奏をとめてしまうところとか、タイトルどおり12弦ギターのウォーム・アップのアドリブとか、もちろんライブ途中のおしゃべりとかも入っていて、とっても臨場感が溢れています。プロデューサーはアメリカ南部出身のコリン・リンデン。ステージ・サイドでラップトップのPCを操る彼の姿も写真におさめられています。
ブルース・コバーンの歌やギターを聴いていると「凛とした響き」というのが最もぴったりくる表現のように思えます。おそらく今年レコード・デビュー40周年。けれども、原点も戻ったような、このピュアなライブ盤は、きっと彼の代表作の一枚に数えられる筈です。
次にブルース・コバーンを意識したのは、住んでいた街の小さなギターショップで、中川イサトさんのライブが開催された時でした。彼のレパートリーの大半はオリジナルでしたが、2曲コバーンのナンバーが含まれていました。うち1曲は、「Rouler Sa Bosse」というインスト、邦題の「さすらい」と紹介していたような気がします。そして、もう1曲は「Mama Just Want To Barrelhouse All Night Long」でした。その「Rouler Sa Bosse」は大好きな曲で、イサトさんの楽譜出版社から出たソングブックに、ジョン・レンボーンやリチャード・ラスキンらの楽曲といっしょに紹介されていのしたので、せっせとコピーし、いまだにレパートリーにしています。しかし、ブルース・コバーンのレコードは90年代に日本盤でCD化されるまではなかなか入手できませんでした。最近になって70年代の彼の作品は一通り揃えたけれども、80年代以降のアルバムは未入手のままです。
ブルース・コバーンは、カナダでもっとも重要なシンガー・ソングライターの一人です。90年代にカナダ出身の音楽ジャーナリスト、マーク・ラパポート氏がミュージック・マガジン誌のコラムで、やたらとブルース・コバーンのことを持ち上げていたのを覚えています。特に、80年代以降は、歌詞が非常にラディカルになり、アメリカの国家体制や大企業を鋭く批判した作品を発表するようになります。そういう意味ではジャクソン・ブラウンに通じるところもありますね。ただ、サウンドはアクースティックなものから、エレクトリックなものへ変化したようで、そういう意味でも、ブルース・コバーンのレコードに手が出ない日々が長く続いてしまったのです。
しかし、今年の新譜には「Live Solo」というサブタイトルがついています。アクースティック・ギターの名手、ブルース・コバーンが長い音楽遍歴の末にどのような境地に達したか確認してみたくなって、このCDを入手することにしました。一聴した感想ですが、それはもう素晴らしいの一言です。2枚組25曲、合計120分にも及ぶ大作であり、ほとんどギター1本の弾き語りでありながら、聞き手に飽きることなく最後まで一気に聴き通させるパワーがこの作品にみなぎっています。もう60歳を過ぎているブルースの歌声もとっても力強く自身に満ちあふれています。
1986年のアルバム「World of Wonders」のタイトル曲で幕開け。予想どおり、ほとんど80年代〜00年代の曲で占められています。その時期のオリジナル・アルバムを全く聴いていないので、オリジナルの形態がどうのかはわかりませんが、楽曲として完成度の高いものばかり。ホントに質の高いシンガー・ソングライターなんだなぁと実感させられます。ところどころ、アップテンポな曲では、リチャード・トンプソンを連想させるダウンストロークが連続するタイプのナンバーも数曲あります。また、近年の作品では2003年の『You've Never Seen Everything』が気に入っているようで、特にDisk2でこのアルバムから多くの曲を取り上げています。
Disk2冒頭の「Want No Mre」は、まるで琴のような不思議な響きをもつギターで伴奏。写真に写っているリゾネーター・ギターを使っているのかもしれません。続く「The City Is Hungry」はどこかDavid Crosbyを思わせるプレイだったりします。唯一のカバーはデヴィッド・リンドレーも取り上げたブラインド・ウィリー・ジョンソンのナンバー「Soul of A Man」。すでに91年のソロ・アルバムにも収録しています。リンドレーは微分音が出るようにフレットを追加したブズーキで弾いているのですが、リンドレーさんの方がオリジナルに近いような気がします。もちろんブルースさんのプレイも華麗です。
もともと、ジャジーなインプロっぽいブレイが得意な人で、そのギター・スタイルはとにかく洗練されていました。「Soul of A Man」なんかが比較的土臭い方で、インストの「The End of All Rivers」などはデジタルの器材を多用して、ディレイの残響音を重ねたりしていますし、他の曲でも自己のプレイをループさせてバッキングにし、その上にのっかてリードを弾いているような曲もあります。こういうギター・スタイルはけして自分の好みではないのですが、彼の場合、まず曲や歌の良さがあるので、洗練の極みとも言えるギター・スタイルがけっして鼻につかないのです。もちろんギタリストとしても超一流ではあるけれども、このアルバムを通して、「シンガー・ソングライター」ヒューマニスト、ブルース・コバーンを堪能することができました。
あと、このアルバムでは、どうにでも編集できただろうに、チューニングする音が入っていたり、曲の途中でどういうわけか演奏をとめてしまうところとか、タイトルどおり12弦ギターのウォーム・アップのアドリブとか、もちろんライブ途中のおしゃべりとかも入っていて、とっても臨場感が溢れています。プロデューサーはアメリカ南部出身のコリン・リンデン。ステージ・サイドでラップトップのPCを操る彼の姿も写真におさめられています。
ブルース・コバーンの歌やギターを聴いていると「凛とした響き」というのが最もぴったりくる表現のように思えます。おそらく今年レコード・デビュー40周年。けれども、原点も戻ったような、このピュアなライブ盤は、きっと彼の代表作の一枚に数えられる筈です。