ry cooder live in sanfranライ・クーダーの新譜は、2011年8月31日と9月1日、『Pull Up Some Dust And Sit Down』リリース直後に、サンフランシスコのグレイト・アメリカン・ミュージック・ホールで行われたライブ盤です。

まず、ジャケットが素敵ですね。メキシコ風の衣装に身をつつみ、タンバリンを持った女性が、クラシックな雰囲気のライブ告知ポスターの横に立っている。全体的に情熱の「赤」を基調としたカラーが、アルバムの熱い雰囲気を表しているように感じます。

ライ・クーダー自身なかなかライブをやることが少なくなっているのに、このようなクオリティの高いキャリアの集大成的ライブ盤がリリースされるとは大変な驚きです。これは全ロック・ファン必聴の大名盤と断言してしまいましょう。彼がライブをやる時は、新曲はとっても少なくて、昔ながらの曲をたくさん選曲するようですが、この時のライブもそういった方針で70〜80年代のオリジナル盤に収められ、当時のライブでよく演奏された曲中心に選ばれています。収録曲は全12曲。2日間のライブからチョイスされています。ライ・クーダーのライブ盤、そして、この会場、しかもフラーコ・ヒメネス参加しなると、どうしても1977年にリリースされた『Show Time』を連想してしまいますが、本人もそれは意識していたみたいで、同作との重複も4曲。35年を経た聴き比べも面白いところでしょう。

アルバムの核となるメンバーは、ギターのライ・クーダー、ドラムスのヨアヒム・クーダー、ベースのロバート・フランシスのトリオ。これにゴスペル・コーラス隊でテリー・エヴァンズとアーノルド・マッカラーの二人がからみます。曲によってはアコーディオンでフラーコ・ヒメネス、そしてラ・バンダ・フヴェニールと名付けられた豪華なホーン・セクションとパーカッション隊、ゲスト的にボーカルでジュリエット・コマジェアも参加して、総勢17人の大所帯てす。

冒頭のナンバーは2009年のニック・ロウとの日本公演でも演奏された「Crazy 'Bout An Automobile」。よくライブで演奏されている本人お気に入りのナンバーでしょう。間奏で低音のホーンがからんできますが、バリトン・サックスでしょうか。2曲目は同じく『Borderline』から「Why Don't You Try Me」。ホーン・セクションが前面参加となり、スーザフォンもベース・ノートを吹いています。3曲目に収録されているのは、なんと「Boomer's Story」。言わずと知れた彼のサード・アルバムのタイトル・トラックですが、アルバム発表当初は別として、ほとんどライブで再演されたことがないように記憶します。原曲ではエレクリック・ボトルネック・ギターとマンドリンのからみが印象的でしたが、ここでは、ボトルネックのないエレキ・ギターで伴奏され、二人のゴスペル・コーラス隊が味のあるコーラスを加えています。この曲と次曲ではホーン・セクションはお休み。4曲目に『Pull Up Some Dust And Sit Down』収録の「Lord Tell Me Why」が登場です。スタジオ・バージョンに比べて、リズムがけっこう跳ねていて、よりブルージーな感じがします。とっても締まったカッコイイ演奏ですが、この曲もノンスライドだったりします。

5曲目でフラーコ・ヒメネス登場。曲も『Show Time』収録の「Do Re Mi」です。この曲前半ではバホ・セスト、後半ではエレキ・ギターが聴こえてくるのですが、ライさん、途中で楽器を持ち替えたのかな。スーザホンも入ってベース・ラインを吹いていて、『Show Time』バージョンとは少しおもむきを変えています。次は『Show Time』の冒頭にスタジオ・バージョンが収録されていた「School Is Out」です。『Show Time』のものと比べて、ドラムのリズムが跳ねてなくて、ストレートなロック調になっていますが、フラーコのアコーディオンもコーラス隊もホーンも活躍していて、とっても楽しい雰囲気です。間奏とエンディングでライのソロが出てきますが、エンディングの方ではボトルネックをばっちり決めています。そして、7曲目が「The Dark End of the Street」です。『Show Time』のときは、ボビー・キング、テリー・エヴァンズ、エルドリッジ・キングの3人が歌っていましたが、今回はテリー・エヴィンズとアーノルド・マッカラーが歌います。そして間奏のソロはまずライ・クーダー。今回はノンスライドのプレイ。後半はフラーコのアコーディオンが奏でます。至福の演奏ですね。

8曲目で、『Pull Up Some Dust And Sit Down』収録の「El Corrido de Jesse James」の登場です。この曲でもフラーコは大活躍ですが、間奏とエンディングでホーン・セクションとパーカッション隊を交えたメキシカン・タッチの大合奏になりますが、この音圧のすごいこと。間奏が終わったあとは拍手大喝采です。生で聴けたら天国だろうなぁ。9曲目は1990年頃からライ・クーダーが時折レパートリーにしている「Wooly Bully」。サム・サミューディオ&ファラオスのナンバーで、昨年リリースされたアーフーリー・レコード50周年記念ライブにも収録されていましたが、こっちの方はフラーコとホーンズ、コーラスも参加した豪華な演奏です。間奏のソロはバリトン・サックスでしょうか。10曲目は「Volver Volver」が登場。『Show Time』同様フラーコが歌うのかと思ったら、なんとジュリエット・コマジェアが全編を歌います。しかも、この曲が本編ラスト。この曲でも「El Corrido de Jesse James」と同じくラ・バンダ・フヴェニールによる大音圧のプレイとフラーコのアコーディオンを楽しむことができます。

11曲目の「Vigilante Man」と12曲目「Goodnight Irene」は、アンコールで演奏されたナンバー。「Vigilante Man」もアーフーリー・レコード50周年記念ライブに入っていて、その時と同じクーダー父子とロバート・フランシスのトリオによるプレイ。こちらも鬼気迫る演奏ですね。そしてラストは「Goodnight Irene」。再びフラーコとホーンセクションを交えてのほのぼのとした演奏です。1988年、はじめて見たライ・クーダーのコンサートのラストナンバーがこの曲だったことを思い出しました。ここでもスーザホーンのベースノートが印象的で、間奏ではテーマをホーンズが力強く吹いたあと、フラーコのソロそして、クーダーのソロが続きます。

渡米して、このライブを二日ともご覧になったY.S.さんが、2011年9月の『Pull Up Some Dust And Sit Down』の記事にコメントを下さっていて、二日間のライブの演奏曲とプレイヤーがわかります。たいへん貴重な情報です。大半の曲が2日間とも演奏されたのですが、当時の新作『Pull Up Some Dust And Sit Down』収録曲で二日とも演奏されたのは「El Corrido de Jesse James」のみ。収録されている「Lord Tell Me Why」は2日目の2曲目で演奏されたようです。1日目ではアンコールで「No Banker Left Behind」が演奏され、2日目には「If There's a God」もプレイされましたが、これらは収録されていません。あと、2日間もと演奏された「He'll Have To Go」も収録されていません。

『Show Time』としてリリースされた35年前のチキン・スキン・レビューによるツアーは、テキサスのメキシカン・バンドと、アフリカン・アメリカンのゴスペル・コーラス隊をミックスさせたはじめての試みとして、クーダー本人も本当にうまくいくかどうか気を揉んだと思います。しかし、アメリカ国内とワールド・ツアーは成功し、アルバムとして記録が残りました。それからクーダーは世界中を音楽で旅し、自らの幅を広げてきましたが、2011年の『Pull Up Some Dust And Sit Down』では、再び『Chicken Skin Music』や『Show Time』の頃の音楽性に回帰しています。今回は、それに加えてホーンズやバスドラ&スネアのパーカッション隊も加え、さらに厚みのある音世界を形成しています。とっても素晴らしいコンサートにもかかわらず、おそらくアメリカ国内を回ることもなく、二日間だけの演奏だったでしょうから、こうしてオフィシャルのライブ盤として発売され、世界中の多くの人々の耳に届くことは嬉しいことです。35年前に比べると確かに円熟の境地に達したかにみえるライ・クーダーですが、音楽への熱い想いは当時と全く変わっていないように感じられます。