ジャズフェスの期間は、フェス終了後のアフター・ダーク、「デイズ・ビットウィーン」と呼ばれるフェスのない3日間、それに加えてフェスの前後2日間くらいは、非常に充実したライブが市内のシアターやライブ・ハウスで行われています。そのため、2月くらいからネットの情報からは目が離せません。2012年はセカンド・サタデイにオリジナル・ミーターズの久々のライブ・ハウス公演があったのですが、情報をキャッチするのが遅く、気づいた時にはソールド・アウトで悔しい思いをしました。ライブの情報は、「Jazzfest Grids」か、「Sutchmo.com」の「New Orleans Concert Line」のいずれかのページでチェックしておりますし、ジャズフェスのオフィシャル・ページのフォーラムでも、以上のページより早く情報が入ってくることがあります。

4月28日日曜の夜には、ティピティーナでサブデューズを見ようか、そのほかのイベントに行こうかとか考えていると、3月も終わり頃になって、ジョイ・シアターにザ・ワードがでるという情報が入って来ました。これは本当に嬉しかった。このブログでも触れていますが、ザ・ワードは2001年に最初のCDが出たときから大好きなグループですが、メンバーはそれぞれメインのバンドを持っているため、活動は限定的です。2015年に、なんと14年ぶりのセカンド・アルバムが出て、その年のジャズフェスにも出演、翌年のジャズフェス期間にもジョイ・シアターに出演しています。その頃、ノース・ミシシッピ・オールスターズのベーシスト、クリス・チューはワードのベースも務めていたのですが、彼がオールスターズを脱退したことから、ザ・ワードの活動はどうなっていくのだろうと思っていたところです。

メンバーのジョン・メデスキ、ノース・ミシシッピ・オールスターズ、そしてロバート・ランドルフは、ジャズフェス期間は、フェスへの出演がなくても、ニューオーリンズで過ごすことが多く、ライブ・ハウスなどで様々なギグに参加していますが、今回はジョイで、「ザ・ワード」をやろう、ということになったのでしょう。

ロバート・ランドルフ・ファミリー・バンドは、前日、シーンガー・シアターで行われたトロンボーン・ショーティのコンサートにゲスト出演しましたが、この日はルイジアナ州ラファイエットに移動、フェスティバル・インターナショナル・デ・ルイジアナで19時30分までステージを務めています。演奏終了後、車を飛ばしてニューオーリンズに向かっていることと思います。

ジョイ・シアターは、キャナル・ストリートに面した劇場。斜め向かいのシーンガー・シアターよりはかなり小さいですが、なかなか面白そうなイベントが多く、前から一度来てみたかったのです。この近くには、オフィウム・シアターやシヴィック・シアターもあって、劇場街となっています。規模は2年前にメディスキ・マーティン&ウッドを見たシヴィック・シアターとあまり変わらず、2階席からステージがかなり近く見えます。 1階はスタンディングのフロア、2階は椅子席、なかなか綺麗なホールです。チケットは発売日にすぐ買ったのですが、2階の最前列は取れませんでしたが、なかなか良い席でした。

ヴァン・モリソンを最後まで見たので、フレンチ・クォーターに帰り着いたのは20時を過ぎていたと思います。ホテルに戻らず、前回夕食をとったジミーズに行きます。こちら、基本ランチのお店なのですが、前回夕食の時間も開いていて、食べた記憶があったのですが、日曜の夜とあってもう店を閉めているようです。隣のデイジー・デュークスもお客さんが多いようで、仕方なく近くのドラッグストア、ウォルグリーンで小さなパン、野菜ジュースのV8などを買い、ホテルに戻ります。

シャワーを浴びると昼の疲れがどっと出て、しばし休憩。少々開演は遅れるだろうとタカをくくって、9時を過ぎてからジョイ・シアターを目指します。と、言っても歩いて5分くらいなのですが。ジョイ・シアターに到着すると、金属探知機があり、ウェスト・バッグの中身も調べられました。やはり、パリのテロ以降、こういうところでもチェックが厳しくなっているんですね。入場しようとするお客さんも多くて、少々待たされました。中から漏れ聞こえてくる音は、生演奏が始まっている様子です。

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ジョイ・シアター

客席に着くと、オープナーのサザン・アベニューが明るい感じの曲を演奏中です。サブタイトルが「First Sunday Sermon」なのに、女性ボーカリストは、黒の下着の上にスケスケのキャミソールでちょっとエッチな感じで踊りながら歌っています。確実にアイク&ティナ・ターナーの影響を受けてますよね。バンド編成は、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードでみんな凄腕。曲もキャッチーです。ドラムとボーカルが若いアフリカ系女性で、キーボードはアフリカ系男性、あと2人は白人男性。なかなかソウルフルな演奏です。続いて演奏されたのは、ファンキーな「Jive」。とってもカッコいい曲で気に入りました。この曲のオルガンは特によかった。自分が入ってから3曲目で、ゲストにノース・ミシシッピのルーサーとコーディが登場。彼女たちのファースト・アルバムの冒頭に収められている「Don’t Give Up」が始まります。同じフレーズの繰り返しですが、ルーサーとコーディが参加することで、まるでブラインド・ウィリー・ジョンソンの曲の焼き直しのように響きます。若く、溌剌としたプレイ、ソウルフルなヴォーカルでとっても好感の持てるバンドでした。

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サザン・アベニュー

約30程の幕間にランドルフの楽器が運び込まれます。時間は10時を15分ほど過ぎていたのでは、と思います。いよいよメンバーが登場し、ザ・ワードの演奏が始まります。隣の若い白人青年が「このバンド見たことある?」と聞いてくるから「ノース・ミシシッピとランドルフとメデスキは見たことあるよ。」と応えました。彼は途中から憑かれたように踊り狂っていました。

1曲目が始まります。出だしはフリー・テンポ、ランドルフは低音部を強調したフレーズ。メデスキはエレピとオルガンでサポートします。おそらく曲は「Early in the Moanin’ Time」でしょう。インテンポで8ビートのリズムで走り出ます。ファンキーでブルージー、ランドルフのスティールが唸り声をあげ、メデスキやコーディが絡んでいきます。1曲目は10分以上ジャムっていました。

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ザ・ワード

2曲目「Blood the Rock」 はファーストに収められた小品ですが、シャッフルのリズムで結構長く演奏します。出だしからメデスキのキーボードがいい感じです。3曲目はファースト・アルバムの冒頭のナンバー「Joyful Sound 」 。大好きなナンバーで気持ちが高ぶります。ランドルフのワウのかかったスティール素敵 ルーサーはリズムを刻みますが、途中でソロをとる場面もあります。ランドルフ達が着いてすぐセッティングし、開演したので全くノーリハなのに、この息の合い方は何でしょう。プロは違いますねぇ。やっぱり、中心人物はランドルフですね。彼がバンドを引っ張っていってるのがよくわかります。

3曲目終了後にメンバー紹介をします。ベーシストはロバート・ランドルフ・ファミリー・バンドのメンバーです。4曲目はバラード風の落ち着いたナンバーですが、曲名が分かりません。ここでもランドルフのスライドはエモーショナルです。5曲目は、見事なカントリー調のスピード・ナンバー「Chocolate Cowboy」。セカンド・アルバム収録曲でライブで好んで演奏されている曲です。  前半、メデスキのソロが気持ちいいです。もちろんランドルフは大活躍。 カントリーとゴスペルに共通するズンタッ、ズンタッというリズムで疾走します。アルバムタイトルは、実際にいたアフリカ系のカウボーイのことでしょう。タジ・マハールも初期はカウボーイ・フッションでしたね。

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演奏が徐々に熱くなる

ここで、長身でハットを被った人物が登場。ゲストのG.Loveです。抱えているセミアコのエレキ・ギターはコーディのもののようです。ファンキーなナンバーで、ラップ風のボーカル。彼の持ち歌「Cold Beverage」間奏ではランドルフのワウ・スライドがかっこいいし。Gはハープでも活躍。コーディによる短いドラム・ソロもエモーショナルでした。

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G. Love登場

そして、ここでランドルフはスティール・ギターを変えます。6弦の赤いボディで足元には少ないペダルが付いているタイプです。ここで、サザン・アベニューの女性二人が呼び出され、セカンドに収録の歌もの「Come By Here」が始まります。この曲はきっとやるだろうと思っていました。前半、シンセも使ったメデスキのソロ、後半はランドルフとルーサーの絡みもなかなか渋いです。女性ボーカルが後半で短いソロをとりますが、なかなかいい声です。G. Loveは少しハープを吹いたあと、何度も「Come In the my house」のフレーズを歌い、ラップ風のボーカルで客席を煽ります。

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サザン・アベニュー、G. Loveとのコラボ

8曲目は、そのままの編成で、ゴスペルの超有名曲「Glory Glory」。アルバムではアクースティックですが、当然エレキでの熱い演奏。ボーカル陣も熱演です。時折、ランドルフはスティールを傾け、全く指板を見ないでアクロバット風にプレイ。いやぁ、この楽器でその奏法。なんで正確な音程がとれるのか。恐れ入ります。サザン・アベニューとG.Loveのゲスト・コーナーはここまで。ボーカル曲もこのコーナーだけでした。彼らが退出した後、再びメンバー紹介。ここでランドルフは、ルーサーのことを「Bishop」と冗談で紹介していました。

9曲目はブルーズ調の曲です。ちょっとゆっくり目で始まりますが1コードのよう。曲名がわかりませんが、ただのジャムでしょうか? かなりダイナミックな展開です。続く10曲目、リズムが変わり、シャッフルの横揺れするリズムに乗ってランドルフのスライドが切り込んできます。ブルーズのようにも聞こえますが、ゴスペルにもよくあるリズム。ランドルフは、「Somebody feel wonderful? Somebody feel good?」と客席に呼びかけます。後半、ルーサーがブルージーなソロを決めます。この曲が「Church Jam」なのかも知れません。このあたりで、ランドルフの楽器がまた交代しています。

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ザ・ワード

11曲目はセカンド・アルバム収録曲「Play All Day」。マイナー・キーで熱いナンバーです。ランドルフのスティールも熱いですが、後半のソロで盛り上げるルーサーのギターも負けないくらい熱いです。曲の流れが止まらないまま、途中でドラムがファミリー・バンドのドラマーに交代。一方、コーディがウォッシュ・ボードを抱え、電気信号で増幅してエフェクトを加えています。まるで、電子楽器のようでめちゃめちゃカッコいいです。「Washboard Jam」に突入です。後半、ランドルフのソロもエモーショナル。

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ウォシュボードをプレイするコーディ

13曲目は日倉士歳朗氏のプレイでもおなじみの「Without God」が始まります。出だしのフレーズだけで鳥肌が立ちます。前半、フリーテンポで例の超絶スピード・プレイを聴くことができました。 後半、インテンポからリズムが入ってきますが、まさにゴスペル・トレインに乗っているかのよう。スティールは疾走音であったり警笛であったりします。この曲の途中でファミリー・バンドのギタリストも参加しジャム状態に。ランドルフは「How do you feel?」と客席を煽ります。エンディングは「All Right」 のコール&レスポンス。ライブはまさに佳境です。そして、彼らの曲の中で1番好きな部類に入る「I’ll Fry Away」を最後の最後にやってくれました。もちろんランドルフが引っ張って行きますが、メデスキも負けじとエモーショナルなソロを繰り出し、興奮のうちにエンディングを迎えます。

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ギタリスト参加

素晴らしいライブでした。ゴスペル教会の興奮を楽器だけで表現するザ・ワード。もともと教会の伴奏楽器として始まったセイクリッド・スティールですが、若き鬼才ロバート・ランドルフによって、その名が世界に知れ渡りました。彼がメジャーになる原点の一つ、ザ・ワード。新世紀が幕を開けようとしていた当時、すでに定評あるプロのミュージシャンであった、メデスキやノース・ミシシッピ・オールスターズが、無名だったランドルフを中心に据えて立ち上げたユニット、ザ・ワード。滅多に見られない彼らのライブに遭遇できたことは無上の喜びです。このあと、ジョン・メデスキのマッド・スキレットのライブがD.B.A.であるのですが、この余韻に浸りたいのと、昼、長時間立ちっぱなしで疲れがたまっているので諦め、部屋に戻って休むことにします。

さて、この日フェス会場で知り合ったIさん。おそらくほとんど1番乗りでフロアの最前列中央で演奏を楽しんでおられました。ライブが終わってから階下に降りて声をかけると、なんと、セットリストをもらったとのこと。後日、写真を送ってもらったのが下の画像です。セットリストというよりレパートリー・リストですね。順番もバラバラだし、やらなかった曲もたくさん。「Without God」やったのに書いてないけど、「At The Cross」が二つ書いてあるから、その内の一つが「Without God」を書き間違えたのかと思います。おそらく、曲順はランドルフが気分で決めていって、最初の何小節かでバンドに伝えた後、バンドが演奏に参加してくるという手法だったのではないかと思うのですが。それにしても、Iさん、貴重な写真をありがとうございました。

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The Word
1. Early in the Moanin’ Time
2. Blood on the Rock
3. Joyful Sounds
4. (Unknown)
5. Chocolate Cowboy
6. Cold Beverage (with G.Love)
7. Come By Here (with G.Love, Southern Avenue)
8. Glory, Glory (with G.Love, Southern Avenue)
9. (Unknown)
10. (Unknown)
11. Play All Day
12. Washboard Jam
13. Without God
14. I’ll Fry Away