こんにちは、左です

僕がツイッターを頻繁にやるようになってからまだ2年位なんですが、漫画仲間のツイートやブログ等見てちょくちょく気になってたことがあります。それは、念願だった週刊や月刊での連載をやっと持てた漫画家さんが、しばらくすると身体のダルさを訴えだすケース。漫画家志望者の方でも、ネタをあれこれ考え過ぎて、具合が悪くなったことのある人も少なくないと思います。
単に「肉体疲労の蓄積、頑張ってる証だ」などと片付けていてはいけません。そのダルさはうつ病の前段階、うつ状態の徴候かもしれません。そんなわけで、今日は頭脳労働者である漫画家・漫画志望者の方々に、是非知っておいてもらいたい「うつ病のこと」について書きます。
かく言う僕は、まだうつ病と診断を受けた経験はありません。でも無縁でもありません。実は親戚身内にうつ病経験者が2人程おります。僕にもその血が幾分入っているわけです。そんなわけで「どうしてうつ病になるんだろう?何をしたらいけないんだろう?」ということが、僕の大変気になる一つのテーマにもなっているわけです。
もちろんうつ病は遺伝する病気ではありません。でも、僕個人の考えでは「なりやすい性格的・思考的傾向」がありそうです。また、そうした性格的傾向は、多少遺伝しそうですし、本人が意識的に注意しないと変わらないのではないかと思います。
で、それはどんな性格的傾向かと申しますと、「同じことを何度も考えてしまう傾向」です。
「同じことを何度も考える」(結論が出ないままループするような思考)というのは、生真面目な性格でそうなる人もいますし、くよくよする性格で考える人もいるでしょう。また、漫画描きのような頭脳労働者は、あーだこーだとネタを試行錯誤することが多く、職業的に「同じことを何度も考えてしまう」機会が増えやすいとも言えます。
いずれにしろ、うつ病に限らずPTSD等多くの精神疾患は、「何かを忘れられなくなること」が共通した原因・症状であるとも言われており、「同じことを何度も考える」ことは「忘れられなくなっている」状態に移行しやすいわけです。
このことについて、脳の構造的な話から、少し大ざっぱな説明をしてみます。人の脳というのはニューロン・ネットワークと言われるように、神経回路が網目状に張り巡らされた構造になっています。人が何かを考える時、この網目の中の特定のルートに微弱電流が走ることで、一つの思考が成立します。同じ考えを繰り返し考えるとは、網目の中に無数にあるルートのうち、特定の思考に関わる特定のルートだけに連続して長時間、電流が流れるということです。
僕個人の考えでは、これがマズいのだと思います。脳は筋肉と似た性質があるようですが、1つの筋肉だけ集中して使い過ぎると肉離れとか腱鞘炎とかになりますよね。恐らく脳にもそうした、一か所ばかり使い過ぎて傷んでしまう状態、が起きるのではないかと思います。実はうつ病には様々なタイプがありますが、中には特定の作業(仕事とか)の時だけうつ状態になり、それ以外の時は全く健康に動けるという、ピンポイントな出方をする場合もあるそうです。
脳の同じ所ばかり酷使して傷んできた時のダルさを、「私、ただの怠け者なんじゃないか、もっと頑張らなきゃ」などと無視してさらに続ければ、当然神経のダメージは深くなり、治りにくくなり、本格的な疾患になってしまうかもしれません。
ですから「ダルいな」と感じたら、ちゃんと休みましょう。休むというのは「脳神経の中の、使い過ぎたルートを休める」ということです。眠って脳全体を休めるのももちろんいいですし、全く違うことをすることで使い過ぎたルートに電気が流れない時間を作るのでもいいでしょう。頭を使い過ぎたら身体を使うことに切り替えて、その間頭を休める、というようなことです。後頭部が異常に熱くなってきたりしたら、十分注意して下さい。
あと、人間の身体というのは所詮「ただの物体、臓器」ですから、物理的限界というものがあります。これは根性だの精神論でどうにかなるものではありません。単純に使い方が物理的に耐用限界を越えれば壊れるだけです。また、肉体には個体差がありますから、「あの人が大丈夫だったんだから、私も大丈夫」という考えは通用しません。あなたの限界は他人とは違います。鍛え方やその蓄積年数、年齢、遺伝子によってもパーツの頑丈さは違うのです。
頑張らなきゃいけない人ほど注意が必要です。生真面目で純粋な人ほど、それが裏目に出てしまうこともあるのです。自分個人の今の物理的限界を見極め、それを越えない範囲の中で、適当に休みも取り入れながら、脳を傷めないように上手に頭脳を運用して下さい。あらかじめ休みを考えてスケジュールを組んだり、契約をするようにしましょう。漫画のことに限らず、すぐに解決できない問題を、焦って考え続けてはいけません。段階を分け、少しずつ、やりやすい所から処理していきましょう。
僕の知る限り、本当にうつ病を悪くしてしまうと、何年という単位でその人本来のパフォーマンスを出せなくなります。普通には働けなくなり、一日のほとんどを寝てるだけ、歩くこともできなくなる人さえいます。そうなると家族やパートナーにも負担をかけ、自分だけの問題ではなくなります。人生において、その影響は計り知れないのです。若い人でも、決して「疲れ」を甘くみないでください。疲れは身体に休息が必要なサインなのです。
(↓画像はうつ病とは関係ないですが、先日購入したびろ~んエコバッグのイラスト:お里湯さん画 です。)

[2017.2.2追記]
2つほど脳の使い方の注意事項を追記します。
1.ループから抜け出すには新しい要素や組み合わせ、挑戦が大事。
同じことを繰り返し考えても結論が出ない時、それは「今の自分の中には答えが無い」ということかもしれません。「自分の外」を探しましょう。漫画のことなら新たな情報や技術を仕入れて使えるものが無いか探してみるとか。ダメだと思ってやらなかったことがあったら、もう一度確認もかねて少しずつ試してみるとか。ループしてた時とは何か違った新しい要素を取り入れて、あるいは何か多すぎる要素を一時的に削って、突破口を作り、繰り返しのループから抜け出さねばなりません。休みながらでも時間をかけて試行錯誤しているうちに、ある時ポンッと出来ることもあります。焦らずたゆまずです。
2.パフォーマンスは急には伸びない、継続が大事。
スポーツ選手でもシーズン前は調整期間がありますが、脳にも実は調整期間が必要なようです。漫画のネタを考える時、2~3日考えて全然出ないのに、それでもあきらめずにあれこれ試してたら4日目に急にポコッと浮かんだ、という経験はありませんか?脳には筋肉と似た性質があると先述しましたが、こういう所、逆上がりや自転車が乗れるようになる時にちょっと似てます。また、漫画が上手になる、集中して長く描けるようになる、同じ作業が早く出来るようになる、といったことも筋肉同様急に出来るわけではありません。何度も繰り返しているうちに徐々に出来るようになっていくようです。上達の速度は筋肉が育つ速度みたいなもので、気ばかり焦ってもある程度物理的に決まっているように思います。その速度に合わせて継続しましょう。